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大阪地方裁判所 平成15年(ワ)3154号 判決 2003年9月03日

反訴原告

反訴被告

Y1

ほか一名

主文

一  反訴被告らは、各自、反訴原告に対し、六二九四万一三三一円及び内金六一七四万九八五五円に対する平成一二年四月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  反訴原告のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを九分し、その一を反訴原告の負担とし、その余を反訴被告らの連帯負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

反訴被告らは、各自、反訴原告に対し、七三二八万一一三三円及び内金七二〇八万九六五七円に対する平成一二年四月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、反訴被告Y2(以下「被告Y2」という。)運転の普通乗用自動車(以下「被告車両」という。)が、赤色信号表示を看過して交差点に進入したため反訴原告(以下「原告」という。)運転の普通自動二輪車(以下「原告車両」という。)と出合頭に衝突した交通事故(以下「本件事故」という。)につき、原告が、被告Y2に対しては、民法七〇九条に基づき、被告車両の保有者である反訴被告Y1(以下「被告Y1」という。)に対しては、自賠法三条に基づき、損害賠償金七三二八万一一三三円及び内金七二〇八万九六五七円(確定遅延損害金を除いた損害額)に対する不法行為の日である平成一二年四月二三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。

一  争いのない事実等

(1)  本件事故の発生(各当事者間に争いがない)

ア 発生日時 平成一二年四月二三日午前二時五五分ころ

イ 発生場所 大阪市浪速区難波中三―五―一七先交差点(以下「本件交差点」という。)

ウ 被告車両 普通乗用自動車(大阪○○は○○○○)

運転者 被告Y2

保有者 被告Y1

エ 被告車両 普通自動二輪車(なにわ い○○○○)

運転者 原告

オ 事故態様 交通整理の行われている本件交差点において、対面信号表示が赤色であるのを看過して交差点内に進入した被告車両が、対面信号青色表示に従って交差点内に進入した原告車両と出合頭に衝突した。

なお、被告Y2は、本件事故前、缶ビール二本を飲酒して、運転していた。

(2)  原告の傷害及び入通院経過

ア 原告は、本件事故によって、外傷性クモ膜下出血、右上腕骨頸部粉砕骨折、右大腿骨転子間骨折、右大腿骨骨患部骨折、左大腿骨内顆部開放骨折、鼻中隔骨折、顔面多発骨折、鼻出血、外傷性鼻内瘢痕、左眼外傷性脈絡膜破裂、左眼涙小管断裂、左眼下眼瞼裂傷の傷害を負った(甲三ないし五、同七、同二一及び乙一)。

イ 原告は、上記傷害の治療のため、次のとおり、済生会泉尾病院に入通院した(甲八及び同一八ないし二〇)。

(ア) 平成一二年四月二三日から同年七月二九日まで入院(九八日間)

(イ) 平成一二年七月三〇日から平成一三年八月五日までの間通院(実通院日数一四八日)

(ウ) 平成一三年八月六日から同月二二日まで入院(一七日間)

(エ) 平成一三年八月二三日から同年一〇月一七日の間通院(実通院日数九日)

ウ 原告は、整形外科関係の傷害については、平成一三年九月一九日、耳鼻咽喉科関係の傷害については、同年一〇月二日、眼科関係の傷害については、同月一七日、症状固定と診断された(甲二一ないし二三、乙二、三)。

(3)  原告の後遺障害の等級認定(乙五)

損害保険料率算定機構は、原告の後遺障害を、次のとおり、後遺障害等級を認定し、それらを併合して併合八級と判断した。

ア 左眼 併合九級

(ア) 視力低下(矯正〇・一〇) 一〇級一号

(イ) 調整力測不 一二級一号

(ウ) 視野変状(絶対暗点) 一三級二号

(エ) 左涙小管断裂に伴う流涙 一四級相当

イ 右下肢一cm以上の短縮 一三級九号

ウ 鼻骨骨折に伴う外鼻の偏位 一四級一一号

エ 右上腕骨頸部粉砕骨折に伴う右肩の疼痛 一四級一〇号

オ 右大腿部転子間及び骨幹部骨折に伴う右股の疼痛 一四級一〇号

(4)  損益相殺等(各当事者間に争いがない)

ア 損害から控除すべき既払額 一二五七万四九六八円

(ア) 自賠責保険金 八一九万〇〇〇〇円

(イ) 被告車両付保の任意保険会社の支払

a 入院雑費として 一万四九六八円

b アルバイト料として 三八一万六〇〇〇円

c 慰謝料(学費)として 五五万四〇〇〇円

イ その他の既払額(既に填補されたとして原告が本件で請求していない損害に対する支払)

(ア) 治療費 一八六万二二〇六円

(イ) 看護料 五四万七一二八円

(ウ) 通院交通費 二〇万〇〇〇〇円

(エ) 原告両親の渡航・滞在費用 六二万三〇四一円

二  主たる争点(原告の損害)

【原告の主張】

(1) 入院雑費 一七万二五〇〇円

1500円×115日=17万2500円

(2) 文書料 三万二五五〇円

(3) 休業損害 九八六万一二〇〇円

ア アルバイト料

原告は、a大学に通学する傍ら、夜間アルバイトをし、一日当たり九〇〇〇円(毎週木曜日休み)のアルバイト料を得ていたが、本件事故によって、その収入を絶たれた。

(ア) 平成一三年八月まで 三八一万六〇〇〇円

(イ) 平成一三年九月から平成一四年三月まで 一六三万八〇〇〇円

9000円×182日=163万8000円

なお、被告らは、留学生である原告には、就労資格がないと主張するが、「留学」の在留資格を付与されている留学生が、学費その他の経費を補う目的をもって、アルバイトをすることは可能である。そのためには、資格外活動の許可が必要であり、原告は、このような許可を受けていなかったが、このような場合でも、休業損害については、日本における収入額を基礎として計算するのが判例である。また、原告のような留学生の場合に、公的証明書をもってアルバイト収入を立証せよというのは不可能を強いるものである。

イ 就職後の給与

原告は、本件事故によって、一年間の休学を余儀なくされた。本件事故がなければ、原告は、平成一四年三月に大学を卒業し、同年四月から就職して収入を得ていたはずであるのに、この一年分の収入を得ることができなくなった。したがって、平成一三年の賃金センサス産業計・企業規模計・男子大卒二五歳から二九歳の年収四四〇万七二〇〇円が損害となる。

(4) 後遺障害逸失利益 五二五四万四三七五円

原告は、平成一五年三月、a大学を卒業した。したがって、平成一三年の賃金センサス産業計・企業規模計・男子大卒・全年齢平均の年収六八〇万四九〇〇円を基礎収入として、平成一五年四月原告は二七歳であるから、就労可能年数六七歳までの四〇年間、労働能力喪失率四五%(八級)として、年五%の割合によるライプニッツ方式によって中間利息を控除すると、次のとおり、五二五四万四三七五円となる。

六八〇万四九〇〇円×〇・四五×一七・一五九〇=五二五四万四三七五円

被告らが指摘するように、本件事故当時の原告の在留資格は、「留学」であったが、その後の平成一二年一二月二〇日、日本人女性と婚姻し、それに伴い、平成一三年七月二三日付けをもって、在留資格は、「日本人の配偶者等」に変更になった。原告は、平成六年一〇月一二日に来日してから既に八年が経過し、その間、日本人女性と婚姻し、平成一五年三月にはa大学を卒業したのであり、日本で働くことを当然のことと考えている。したがって、中国での平均収入を基礎とすべきとの被告らの主張は明らかに失当である。

(5) 入通院慰謝料 五〇〇万〇〇〇〇円

原告は、本件事故によって、意識不明の状態が続く重傷を負い、奇跡的に回復したものである。入院期間は一一五日、通院期間は四二八日(実通院日数は一五七日)に及び、通院期間中の二か月間は松葉杖を使用せざる得ない歩行困難な状態であった。また、原告は、一年間休学することを余儀なくされた。

(6) 後遺障害慰謝料 一〇〇〇万〇〇〇〇円

ア 本件事故は、被告Y2の飲酒の上の赤信号の見落としという重大な過失によって惹起された非常に悪質な事故である。原告は、左眼に重篤な後遺障害を負ったほか、後遺障害診断書によれば、「右肩、右股とも一部に骨壊死を思わせる部位がある」、「障害内容は永続する可能性が高い。右上腕骨及び大腿骨の骨頭壊死発生の可能性は完全には否定できない」とされており、将来、手術や更に重篤な後遺障害が発生することが危惧される。

イ 被告らは、被告Y2の飲酒量が僅かで、本件事故の原因と関係しないと主張しているが、本件事故後の被告Y2の飲酒検知の結果は、呼気一リットル中〇・二mgと〇・二五mgの間(乙一・四一頁)であって、これは、当時の道路交通法(呼気一リットル中〇・二五mg以上)では酒気帯び運転とはならないものの、現行法(呼気一リットル中〇・一五mg以上)では酒気帯び運転に該当する量であり、赤信号の表示を看過するような注意力散漫な状態に陥ったことは正にアルコールが影響していたといえる。

次に、被告らは、救護と見舞いについて指摘しているが、いずれも加害者としては当然の行為であり、見舞いも、入院後一か月前後は何回かあったが、その後は全く連絡もなかった。見舞金は一〇万円ではなく、三万円であった。

さらに、被告らは、原告が「強い調子で架電し請求してきた」とするが、原告にしてみれば、被告Y2による悪質な交通事故のせいで、大変な肉体的、精神的苦痛を強いられているにもかかわらず、保険会社任せで、一日一秒でも早く被害者との関わりをなくそうとする被告らの気持ちが許せない思いであり、また風俗習慣等の違いから、「強い調子の請求」と受け取られたとしても、それを、慰謝料の減額事由とされることなどあり得ない。

(7) 弁護士費用 六五〇万〇〇〇〇円

(8) 確定遅延損害金 一一九万一四七六円

原告は、平成一五年三月二〇日、自賠責保険金八一九万円の支払を受けたが(乙四)、本件事故(平成一二年四月二三日)から上記支払日までの一〇六二日間の遅延損害金は、次のとおり、一一九万一四七六円となる。

819万円×0.05×1062日/365日=119万1476円

【被告らの反論】

(1) 休業損害について

原告の国籍は、「中国」であり、本件事故当時の在留資格は、「留学」とされており、就労資格は有していなかった。また、原告の請求するアルバイト料についても、その収入を証明する公的証明書も存在しない(乙八)。

よって、原告の休業損害は認められない。

(2) 後遺障害逸失利益について

原告の後遺障害逸失利益についても、その国籍を有する「中国」での平均収入(日本の約三分の一程度)を基礎収入とすべきである。

(3) 慰謝料について

確かに、本件事故の責任原因は被告Y2に存する。しかしながら、本件事故当時の被告Y2の飲酒量は僅かで、本件事故の原因とは関係しない(刑事事件においても、公訴事実とされていない(乙一)。)。

そして、被告Y2は、本件事故直後から、直ちに、原告を救護するとともに、何度も両親らとともに、病院を見舞って、最大限の誠意をもって対応している。被告らは、既払金に含まれない見舞金として一〇万円も支払っている。それにもかかわらず、原告は、休業損害の算定問題等から、度々被告らに対して強い調子で架電し請求してきたため本訴を提起せざるを得なかったものである。

また、留学のための来日中の事故であるから、慰謝料も、その本国の物価水準も考慮されるべきである。

第三当裁判所の判断

一  被告らの責任

前記第二の一(1)に争いのない事実によれば、被告Y2には、本件交差点に進入するに当たっては対面信号表示に留意しこれに従って進行すべき注意義務があるのにこれを怠り、対面信号赤色表示を看過して本件交差点に進入して原告車両と出合頭に衝突した過失が認められ、また、被告Y1は、被告車両の保有者として、その運行供用者責任が認められることから、被告Y2は、民法七〇九条に基づき、被告Y1は、自賠法三条に基づき、次項に認定する原告の損害を賠償すべき責任を負担する。

二  原告の損害額

(1)  損害

ア 入院雑費 一四万九五〇〇円

前記第二の一(2)に認定の事実によれば、原告は、本件事故によって、外傷性クモ膜下出血等の傷害を負って、その治療のため、済生会泉尾病院に、平成一二年四月二三日から同年七月二九日までの九八日間及び平成一三年八月六日から同月二二日までの一七日間入院したことが認められるところ、この間の入院雑費としては、日額一三〇〇円と認めるのが相当である。

よって、入院雑費は、一四万九五〇〇円(一三〇〇円×一一五日)となる。

イ 文書料 三万二五五〇円

乙七及び弁論の全趣旨によれば、原告は、診断書代として三万二五五〇円の支払をなしたことが認められ、同支払は、本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。

ウ 休業損害 四一八万五〇〇〇円

(ア) 前記第二の一(2)に認定の事実と乙一、同八、同一〇及び原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告は、中国籍であるところ、平成六年一〇月一二日に来日し、「留学」の在留資格で、a大学に通学していたこと、平成一一年一二月からは海鮮居酒屋「天秤棒」でアルバイトをしていたこと、アルバイトは時給一〇〇〇円で、午後六時から午前三時までの九時間であるが、原告は週一回の休みを除いて、連日アルバイトをしていたこと、本件事故前三か月間のアルバイト料は、平成一二年一月が二四万三〇〇〇円(二七日勤務)、同年二月が二二万五〇〇〇円、(二五日勤務)同年三月が二三万四〇〇〇円(二六日勤務)であったこと、原告は、本件事故当時(平成一二年四月二三日)、大学三回生になったばかりで、平成一四年三月に卒業予定であったこと、本件事故による傷害を負うことがなければ、原告は、平成一二年四月二三日から平成一三年八月末までの間に三八一万六〇〇〇円、同年九月一日から症状固定日である平成一三年一〇月一七日までの間には三六万九〇〇〇円(九〇〇〇円×四一日)のアルバイト料の支給を受けることが見込まれたこと、本件事故による傷害によって、原告は、一年間休学し、平成一三年四月から大学に復学はしたものの、アルバイトには復帰できなかったことが認められる。

これらの事実によれば、原告の休業損害は、本件事故日から症状固定日までの間(平成一二年四月二三日から平成一三年一〇月一七日まで)の得べかりしアルバイト料四一八万五〇〇〇円(三八一万六〇〇〇円+三六万九〇〇〇円)と認められる。

(イ) この点、原告は、休業損害として、上記卒業見込みであった平成一四年三月までのアルバイト料と平成一四年四月から平成一五年四月までの就職後の給与相当額を請求をしているが、症状固定後は後遺障害逸失利益の問題であって、休業損害を認めることはできない。

また、他方、被告らは、原告に就労資格がないこと、アルバイト料に公的証明書がないことを問題とするが、乙八及び原告本人尋問の結果によれば、前記(ア)に認定の収入が認められ、これを否定すべき事情は認められず(留学生について、所得の申告等を行っていないことをもって、その収入の事実に信憑性がないとまでは言えない)、現に収入をあげている以上、休業損害は認められるというべきである。

エ 後遺障害逸失利益 五二九五万七七七三円

(ア) 原告の後遺障害の程度

前記第二の一(2)(3)に認定の事実と甲二一ないし二三、同二四の一及び二、同二五、乙二、三、同五、同一一、一二及び原告本人尋問の結果によれば、原告の整形外科関係の傷害については、平成一三年九月一九日、耳鼻咽喉科関係の傷害については、同年一〇月二日、眼科関係の傷害については、同月一七日、症状固定と診断されたが、右下肢一cm以上の短縮(後遺障害等級一三級九号)、右上腕骨頸部粉砕骨折に伴う右肩の疼痛(同一四級一〇号)、右大腿部転子間及び骨幹部骨折に伴う右股の疼痛(同一四級一〇号)、鼻骨骨折に伴う外鼻の偏位(同一四級一一号)及び左眼の障害(視力低下(同一〇級一号)、調整力測不(同一二級一号)、視野変状(同一三級二号)及び左涙小管断裂に伴う流涙(同一四級相当)の併合九級)を後遺しており、これらは、後遺障害等級併合八級と評価され、これらによれば、原告は、将来にわたって、その四五%の労働能力を喪失したものと認められる。

(イ) 原告の基礎収入

前記ウに認定の事実と乙六、同九、一〇及び原告本人尋問の結果によれば、原告は、昭和○年○月○日生まれの中国籍の男性であるが、平成六年一〇月一二日来日し、「留学」の在留資格で本邦に在留し、a大学商学部で経済を学んでいたが、本件事故当時には既に、同大学卒業後も、そのまま日本に残って日中貿易の仕事に就くことを希望し、A(後に原告と婚姻)とも半同棲の状態であったことが認められる。

これらの事実によれば、原告は、本件事故当時、将来にわたって、在留資格を得て、本邦に在留して収入を上げていく高度の蓋然性が認められたというべきであり、現に、原告は、平成一二年一二月二〇日上記Aと婚姻し、その在留資格も、平成一三年七月二三日、「日本人の配偶者等」に変更されている。

よって、原告の後遺障害逸失利益の算定に当たっては、症状固定時の平成一三年の賃金センサス産業計・企業規模計・男子大卒の全年齢平均の収入である六八〇万四九〇〇円を基礎収入とするのが相当である。

(ウ) 算定

前記(ア)(イ)によれば、原告の後遺障害については、六八〇万四九〇〇円を基礎収入として、症状固定日(平成一三年一〇月一七日)当時、原告は二六歳であるから、就労可能年である六七歳までの四一年間(年五%のライプニッツ係数は一七・二九四)にわたって、四五%の労働能力を喪失したものとして、その逸失利益を認めるのが相当である。なお、前記ウに認定のとおり、原告の卒業予定は(本件事故に遭遇しない場合)、平成一四年三月であり、症状固定時からは五か月程度の期間があるものの、前記ウに認定の原告のアルバイトの収入は年収に換算すると二八〇万八〇〇〇円(大卒男子二〇ないし二四歳の八五%以上に当たる)となることから、上記症状固定時から逸失利益を認めるのが相当である。

よって、原告の後遺障害逸失利益を症状固定時の現価に換算すると、次のとおり、五二九五万七七七三円となる。

680万4900円×0.45×17.294=5295万7773円

オ 入通院慰謝料 三五〇万〇〇〇〇円

前記第二の一(2)に認定の受傷内容及び入通院期間と乙一二及び原告本人尋問の結果によって認められる一切の事情を斟酌すると、原告の入通院慰謝料としては三五〇万円が相当である。

カ 後遺障害慰謝料 八〇〇万〇〇〇〇円

前記(4)の判示の原告の後遺障害等級の内容・程度、その他本件に顕れた一切の事情に鑑み、後遺障害慰謝料は八〇〇万円が相当である。

キ 確定遅延損害金 一一九万一四七六円

前記第二の一(4)のとおり、原告が自賠責保険金八一九万円の支払を受けたことは各当事者間に争いがなく、乙四によれば、その支払日は、平成一五年三月二〇日と認められる。

よって、本件事故(平成一二年四月二三日)から上記支払日までの二年三三二日間の遅延損害金は、次のとおり、一一九万一四七六円となる。

819万円×0.05×(2+332日/365日)=119万1476円

(2)  既払控除

前記第二の一(4)アのとおり、前記(1)の損害から控除すべき既払額が一二五七万四九六八円であることは各当事者間に争いがないことから、これを、前記(1)アないしカの合計額六八八二万四八二三円から控除すると、その残額は、五六二四万九八五五円となる。

(3)  弁護士費用

上記損害認容額、本件事案の難易、その他本件に顕れた一切の事情に鑑みれば、原告の弁護士費用中五五〇万円を被告らに負担させるのが相当である。弁護士費用を加算した後の損害額は六一七四万九八五五円となり、さらに、前記(1)キの確定遅延損害金一一九万一四七六円を加算した金額は六二九四万一三三一円となる。

三  以上によれば、原告の請求は、損害賠償金六二九四万一三三一円及び内金六一七四万九八五五円に対する不法行為の日である平成一二年四月二三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これを認容し、その余はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 比嘉一美)

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