大阪地方裁判所 平成15年(ワ)5880号 判決 2005年1月13日
大阪府<以下省略>
原告
X
原告訴訟代理人弁護士
齋藤護
大阪市<以下省略>
被告
洸陽フューチャーズ株式会社
被告代表者代表取締役
A
被告訴訟代理人弁護士
田中博
主文
1 被告は,原告に対し,1227万0636円及びこれに対する平成12年12月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,2411万1272円及びこれに対する平成11年12月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1 本件は,原告が,被告の従業員から勧誘を受け,被告との間で商品先物取引を行ったが,これが違法で不法行為(使用者責任又は被告自身の不法行為)に当たるとして,損害賠償の請求(不法行為後の日である平成11年12月22日以後の遅延損害金の請求を含む。)をした事案である。
2 争いのない事実等(後記括弧内掲記の証拠により容易に認定することのできる事実を含む。)
(1) 当事者
原告(昭和22年○月○日生。平成11年6月1日当時51歳)は,被告との間で,平成11年6月3日から平成12年12月25日までの間,商品先物取引をしていた者である。
被告は,商品取引所法の適用を受ける商品取引所における上場商品の売買,その受託,媒介,取次等を業とする商品取引員である。
B(以下「B」という。)は被告の従業員であり,平成11年6月1日,原告に電話をかけて,商品先物取引を勧誘した者である。
Cは被告の従業員であり,同月3日から同年7月23日ころまでの間,原告と被告の間の商品先物取引を担当した者である。
Dは被告の従業員であり,同月12日ころ以降,原告と被告の間の商品先物取引を担当した者である。
(甲18,乙6の1・2,7,26~28,証人D,原告本人)
(2) 取引経過
原告と被告の間の商品先物取引の建玉及び反対売買による決済の状況は,別表記載のとおりである(ただし,「直」,「途」,「日」,「両」,「不」の各欄の記載を除く。)。
(乙7,弁論の全趣旨)
(3) 原告に生じた損失
ア 原告は,被告に対し,商品先物取引委託証拠金等として,次のとおり,合計2356万円を預託した。
平成11年6月3日 160万円
同月4日 40万円
同日 112万円
同月17日 160万円
同日 120万円
同年7月6日 40万円
同月8日 532万円
同月22日 440万円
同年10月4日 400万円
同年12月6日 252万円
同月22日 100万円
イ 原告は,被告から,次のとおり,返金を受けた。
平成11年6月22日 6万1050円
平成13年1月9日 117万7678円
ウ 原告は,売買損金と委託手数料の合計2232万1272円の損失を被った。
(乙6の1・2,8,10,23)
3 争点及びこれに関する当事者の主張
本件の争点は,被告の従業員による原告に対する商品先物取引の勧誘及び取引の継続が違法なものとして不法行為となるか,その場合,原告にどの程度の過失が認められるかというものである。これらの点に関する当事者の主張は次のとおりである。
(1) 原告の主張
商品先物取引は,現物売買と異なり,ある商品について将来の価格がどのように変動するかを予測することが必要となる投機取引であるが,取引市場に上場されている商品の価格は,国際的な政治,社会,金融,軍事等の諸状況や気象その他の影響による複雑な需給関係,思惑といった種々の要因によって,絶えず変動している。そして,これらの要因に関する情報は様々なメディアによりもたらされるが,一般の委託者がこれらの情報に接する方法は,日刊新聞や商品取引員経由の情報に限られることが多い。また,価格決定に関する要因を的確に分析するには相当に高度な知識と経験が必要である。
商品先物取引には,売買約定を最終的に決済しなければならない期限(限月)が定められており,委託者は,利益・不利益に関わりなくこの限月までに反対売買をせざるを得ない。さらに,商品先物取引は,差金決済システムによりわずかな資金で大きな取引ができる相場取引であり,商品価格の推移により大きな利益が出ることもある反面,時として不測の損金が発生する危険のある投機取引である。また,委託者は商品取引員に手数料を支払わなければならず,手数料幅を抜けて評価益が出る割合は小さいため,一般委託者にとっては利益よりもむしろ損失に終わる確率の高い取引である。
商品先物取引の受託業務を専門とする業者と,一般委託者との間には,組織力,資金力のほか,当該商品の取引の仕組みや相場動向等についての知識,経験,情報,情報分析力等において大きな格差が存する。商品取引員には,取引に参加しようとする者の適格性を判断し,不適格な者を取引から排除するとともに,取引参加者には商品先物取引の仕組み及び危険性等を十分に説明し,理解させる義務を負う。したがって,商品先物取引に関し委託者の自己責任を強調すべきではなく,先物取引の適格性に欠ける者が,業者の甘言や誤導によって取引に参加させられ,その後の売買も業者の主導又は業者への一任によりなされたのであれば,その結果についての責任は業者が負うべきである。
本件においては,被告の行為は,次の点で不法行為と評価されるべきである。
原告は,最終学歴が高等学校の夜間部卒業であり,学習塾のマイクロバス運転のアルバイトを職としていた者である。また,家族に3人の障害者を抱えていた。投資経験は,現物株式と外国債券を購入したことがそれぞれ1回あるのみで,商品先物取引の経験はなかった。原告が有していた資金は,外国債券を含め,投機に充てることのできる資金ではなかった。したがって,原告は商品先物取引には不適格であった。
被告従業員のBは,電話により,無差別に原告を商品先物取引に勧誘した。その際,Bは,原告に対し,商品先物取引の仕組みや危険性,当該商品の特性等,新規顧客を勧誘する際に当然告知説明すべき重要事項を説明しなかったばかりか,「今現在のとうもろこしの相場状況は,数年前に高騰したときのパターンと全く同じ曲線をたどっています。」と言ってけい線を示しながら「ですから,間もなく上がり始めます。高騰します。」「こんな状況ですから,私の和歌山の親戚にも積極的に勧めて買ってもらっています。」「私どものお客さんの中で学校の先生をやっておられる方がいて,この方はわずか50万円から始めて1億円も儲けられましたよ。その方はもう学校も辞められて,もっぱら先物取引をやっておられます。」等と告げて必ず利益を得られるとの認識を抱かせるような断定的判断の提供をした。
平成11年6月3日の取引開始後,原告の建玉枚数は,当初とうもろこしの買い建玉20枚,翌日に同じく買い建玉19枚,10日後に売り立て玉20枚,その3日後に買い建玉15枚というように矢継ぎ早の建玉をし,約1か月後の7月6日には売残,買残各70枚の140枚に達し,7月16日には160枚,7月22日には200枚,7月29日には219枚となっており,被告は,新規委託者の保護義務に反する過大な取引を勧誘した。
建玉を仕切って利益が出ると,その利益を加算してさらに大きな建玉をすることを扇形建玉というところ,これは帳簿上利益が出ているように見えても,一度相場が予想に反した方向に進むと,帳簿上の利益をすべて失ってしまう危険をはらむものである。被告は,平成11年6月21日にとうもろこし15枚の買い建玉を仕切るとその利益分でとうもろこし18枚の買いを建てた。原告を,このように危険な扇形建玉へ誘導した。
原告は,そもそも先物取引やとうもろこしという商品に関心があって商品先物取引を始めたわけではなく,商品知識にも相場情報にも疎かったから,被告従業員らの言うところに従わざるを得ず,被告主導の取引にならざるを得なかった。
被告は,売り直し・買い直し,途転,日計り,両建,手数料不抜け等多額の手数料を要する一方で委託者にとっては無意味な取引を短期間に頻繁に反復した。特に両建の頻度,回数が突出している。
これらの被告の具体的違法事実は,それらが独立して分断的に存在するのではなく,連続的,重層的かつ一連の不法行為をなすものであるから,当初の勧誘からその後の一連の取引行為全体を不可分一体のものとして把握し,違法性の有無を評価すべきものである。
(2) 被告の主張
原告は,商品先物取引の適格者であり,被告従業員は,その勧誘に際し,取引の仕組みや危険性等について資料を交付し,時間をかけて十分に説明したし,断定的判断の提供など不当な勧誘は一切していない。被告は,社内規則に照らし新規委託者保護義務に違反もしていないし,取引に際し,原告に一任関係を利用した売買や無意味な両建等,「客殺し」と言われるような商法を実行したことは断じてなく,もちろん仕切等の指示を拒否したこともない。
原告は,自らの判断に基づき,取引を開始し,継続していたものである。
本件訴訟は,何とかしてもうけたいという初心から取引に参加した原告が,所期の成果が得られなかったことから,その損失を被告に転嫁しようとしているにすぎない。
仮に被告に不法行為責任が存するとしても,本件の全過程に照らし,原告に過失が存することは明らかであって,相応の過失相殺がなされるべきである。
第3争点に対する判断
1 当裁判所の基本的な考え方
一般に商品先物取引は,買い建玉を反対売買により決済(手仕舞い)する際における相場が建玉の時における相場より上昇していること又は売り建玉を手仕舞いする際における相場が建玉の時における相場より下落していることによる差益の獲得を目的として行われるところ,委託者が利用しようとする相場は,気象その他の需給に関する事情,内外の政治経済情勢等多くの不確定な要素により変動するものであるから,商品先物取引は本来的に相場の変動に起因する危険を伴う取引である。したがって,あえて商品先物取引に入ろうとする者が相場の変動による損失をも負担するのは当然であるから,委託者においては,取引の仕組み,商品の特性等必要な事項について十分理解した上で,自らの判断と責任において,当該取引の危険性及び自己がその危険に耐えるだけの相当の財産的基礎を有するかどうかを判断して取引を行うべきである(自己責任の原則)。
しかし,商品先物取引が委託者の自己責任の下に行われるべきものであるとしても,それは商品取引員の行う投資勧誘がいかなるものであってもよいことを意味するものではない。商品取引員は,前記の相場を左右する諸要因等についての高度の専門的知識,情報並びにこれらを総合して相場の動向を予測する能力及び経験を有している。他方,多くの一般委託者にとっては,必ずしもこれらの知識,情報並びに能力及び経験を取得することは容易でなく,商品先物市場に参入しようとする多数の一般委託者は,もっぱら商品取引員から得る情報等を信頼して取引の判断をせざるを得ない。しかも,委託者が商品先物取引により利益を得るには,手仕舞いの時において,建玉の時と比較して単純に差益が生じるだけでは足りず,その額が商品取引員に支払う手数料の額を上回らなければならない。このような状況の下において,専門家としての商品取引員又はその従業員には,委託者の年齢,職業,財産状態,投資目的,投資経験等に照らして,当該委託者にとって明らかに過大な取引を積極的に勧誘したり,委託者が投資するか否かを判断するための重要な要素である当該取引に伴う危険性について,正しく認識するに足りる情報を提供しなかったり,虚偽の情報や断定的情報を提供して取引に伴う危険性についての顧客の認識を誤らせるなど,委託者の自由な判断と責任において決定することが期待できないような,社会的に相当性を欠く手段または方法によって投資を勧誘することを回避すべき法的な注意義務があるというべきである。
そして,右勧誘時の注意義務違反の有無等は,顧客の投資経験,知識,職業,年齢,判断能力,当該取引の勧誘が行われた際の具体的状況,現に行われた商品先物取引の期間,回数,態様等に照らして判断されるべきである。
この観点から,原告と被告の間で行われた商品先物取引が違法で,不法行為と評価すべきものかという点について,以下検討する。
2 委託者たる原告の属性
原告は,昭和22年○月○日生まれであり,本件商品先物取引の勧誘を受け,取引を開始した平成11年6月当時51歳であった。原告の最終学歴は定時制高等学校卒業であり,その職業は天理教の分教会に属する布教師として,分教会に居住し分教会の仕事をする傍ら,学習塾のスクールバスの運転手として収入を得ている。原告の家族としては,妻と3人の子があるところ,このうち妻は体幹機能障害による身体障害者(2級)で車いすにより生活しており,長女及び長男は知的障害者(長女は第1種,長男は第2種)である。
本件の商品先物取引に先立つ原告の投資経験としては,平成3年ないし4年ころ,野村證券で神戸製鋼株式を購入し,1か月ほど保有した後売却した経験のほか,平成8年ころ,外国債券(ノルウェー国債,オーストラリア国債)を購入した経験があるが,本件に至るまで商品先物取引の経験はなかった。
原告は,前記の運転手として月額22万5000円程度,年収320万円程度の収入を得ていた。その保有する資産としては,預金約200万円,有価証券(前記ノルウェー国債,オーストラリア国債)約1000万円のほか,生命保険の解約返戻金約1000万円を有していた。
原告は,利殖のため知人から440万円ほどの金員を預かり,運用していた。また,原告は,被告との間の商品先物取引を終了するのと前後して,平成12年12月25日,商品取引員であるエグチフューチャーズ株式会社との間で商品先物取引を開始し,平成13年6月ころまで取引を続けていた。
(甲18,19,乙1,24の1・2,原告本人,弁論の全趣旨)
3 勧誘の経過
Bは,平成11年6月1日午前10時ころ,原告に電話をかけ,商品先物取引を勧誘したところ,原告はBの訪問を受けることを応諾し,同日午後1時ころ,Bがもう一人の被告従業員とともに原告を訪問した。この日,Bは,受託契約準則を記した冊子や商品先物取引委託のガイドといったパンフレットを原告に交付し,これに基づいて商品先物取引の仕組みやリスクを説明した。その際,Bは,相場の動向をけい線で示したグラフを示しつつ,「今現在のとうもろこしの相場状況は,数年前に高騰したときのパターンと全く同じ曲線をたどっています。とうもろこしは,今,底値で,間もなく高騰します。」等と説明して取引を勧誘したが,原告は,グラフの曲線が数年前と同じパターンになっているからといって,今回も同じように相場が上昇するとはいえないのではないか,との疑問を抱き,相場が下落することもあるのではないかと,Bに尋ねたり,社運をかけるぐらいの営業活動をしているのか,と質問したりもした。原告は,この日は取引を開始することを決断せず,翌日,もう一度電話をするように告げて,この日の面談は終了した。
Bが,翌日である同月2日,原告に電話をした際,原告は被告との間で商品先物取引を始めることを告げた。そこで,同日午後2時ころ,Bが来訪し,原告はBの持参した取引事前申込書,第1回お客様アンケート・カード,約諾書に必要事項を記入の上,署名押印し,さらに便箋に自筆で記載した申出書を作成した。この申出書には,取引に当たり受託契約準則の内容等についても十分に理解していること,損益が発生することも承知していること,預託する証拠金はすべて自己資金であること,売買は自身の判断にて行うこと等の記載がある。
こうして,原告は被告との間で商品先物取引を開始することとなり,同月3日,委託証拠金160万円を預託し,東京穀物商品取引所におけるコーン20枚の買い建玉から取引を開始した。
(甲18,乙1~4,9の1・2,20~22,26,原告本人)
4 取引の経過
原告の建玉及び手仕舞いの状況は,別表記載のとおりであった。
原告は,取引を開始した翌日である平成11年6月4日,被告の店舗を訪れ,委託証拠金として,152万円を更に預託した。その後の委託証拠金の預託の等の状況は,第2の2(3)ア及びイに記載のとおりであった。
原告の取引は,建玉について,原告が積極的に個別的な指示することはなく,概ね被告従業員の勧めに応じて行われ,コーンのほか,ゴムや大豆の取引を開始したのもDの勧めによるものであった。他方で,原告自ら,被告の店舗に出向いたり,同年10月初旬ころには,知人からの預り金を運用することを持ちかけたりもした。
(甲18,19,乙27,28,証人D,原告本人)
5 取引の終了
原告は,平成12年2月3日,被告の顧客サービス室を訪れ,Eと面談し,利益が上がらないことについて苦情を述べた。Dは,同年3月23日,原告の近隣のレストランで原告と面談し,複数の書面を作成した。原告は,同年12月25日,被告との取引を終了した。
(乙6の1,17,証人D)
6 検討
(1) 不法行為責任の成否
これまでに認定した事実を前提として,被告の不法行為責任の成否について検討すると,原告の最終学歴は定時制高等学校卒業であり,天理教分教会の布教師をする傍ら,学習塾の運転手として収入を得ている者であって,被告との間の本件商品先物取引を開始するよりも前に商品先物取引をした経験を有しなかった。収入は年収320万円程度(被告への申告額によっても500万円ないし1000万円程度である(乙1)。)にすぎず,家族に3人の障害者を抱えて将来の生活のため,資産の蓄えをしていたものである。本件の商品先物取引は平成11年6月3日から開始されたが,建玉及び手仕舞いは,総体として被告従業員の勧めにより行われているところ,その後1か月のうちに592万円の委託証拠金を預託し,同年7月には更に1012万円の委託証拠金を追加することとなっている。原告の売買回数は,平成11年6月から平成12年12月までの約19か月の間に291回の多数に上り,その過半は平成11年中に集中的に行われている。しかも,取引全体に占める売り直し,買い直しが65回,途転が31回,両建が76回,手数料不抜け売買が17回に及ぶといったように頻繁な売買が短期的に集中して行われ,取引損金(売買差損金と委託手数料(消費税を含む。)の合計額)2232万1272円に対する委託手数料(1403万2080円。消費税を含まない。)の割合は,62.86パーセントに達している。
以上の諸点に照らすと,被告従業員による原告に対する本件商品先物取引の勧誘及び継続は,原告の職業,投資経験等の属性を考慮すると,新規委託者に対するものとしては過大なものであったと言わざるを得ず,社会的相当性を欠くものというべきであるから,全体として不法行為を構成し,被告は使用者責任に基づく不法行為責任を負う。
(2) 過失相殺
本件商品先物取引により原告に生じた損失は,前記不法行為と相当な関係にある損害というべきであるが,既に認定したとおり,原告には一切の投資経験がないわけではなく,株式投資や,為替相場の影響を受けうる外国債券への投資経験があり,原告は知人から資金を預かり運用したり,被告との取引を終了した後にも他社において商品先物取引をする等,その投資態度には積極性も認められること,商品先物取引には益が生ずることも損が生ずることもあることを理解した上で取引を行っていること(原告本人),被告従業員の勧誘ないし説明内容及びこれに対する原告の態度ないし理解の度合に照らし,その違法の程度も著しいとはいい難いことを考慮すると,2232万1272円の損失につき,5割の過失相殺をした1116万0636円をもって,本件取引により生じた損害とするのが相当である。
(3) 弁護士費用
原告は,本件の提訴を弁護士に依頼せざるを得なかったと認められるところ,そのために要した費用として111万円を本件と相当な関係にある損害と認めるのが相当である。
(4) 遅延損害金
本件においては,被告従業員による勧誘に始まり,継続的に行われた取引を総体として不法行為とし,その間に生じた損失をもって損害と捉えているものであるところ,これによれば民法所定の年5分による遅延損害金は取引の終了時,すなわち平成12年12月25日から生ずるものと解するのが相当である。
7 結論
以上の検討により,原告の請求は1227万0636円及びこれに対する平成12年12月25日から民法所定の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,主文のとおり判決する。
(裁判官 齋藤聡)
<以下省略>