大阪地方裁判所 平成15年(行ウ)115号 判決 2005年10月27日
甲事件原告
X1
(ほか22名)
乙事件原告
X2
(ほか1名)
丙事件原告
X1
(ほか31名)
丁事件原告
X3
(ほか1名)
全事件原告ら訴訟代理人弁護士
村田浩治
西晃
戸谷茂樹
城塚健之
有村とく子
平山敏也
全事件被告(以下「被告」という。)
枚方市
同代表者市長
中司宏
同訴訟代理人弁護士
森島徹
同訴訟復代理人弁護士
吉川法生
主文
1 甲事件原告らの請求及び丙事件原告らの請求をいずれも棄却する。
2 乙事件原告らの訴えを却下する。
3 丁事件原告らの保育所廃止処分の取消しを求める訴えを却下し、その余の請求を棄却する。
4 訴訟費用は甲、乙、丙及び丁事件原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 甲事件及び乙事件
被告が、「枚方市児童福祉施設条例の一部を改正する条例」(平成15年枚方市条例第27号。以下「本件条例」という。)の制定及び公布によってした枚方市立c保育所(以下「本件保育所」という。)の廃止処分(以下「本件廃止処分」という。)を取り消す。
2 丙事件
被告は、丙事件原告らに対し、それぞれ110万円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 丁事件
(1) 被告が、本件条例の制定及び公布によってした本件廃止処分を取り消す。
(2) 被告が、平成16年4月1日、本件条例の施行によってした本件廃止処分を取り消す。
(3) 被告は、丁事件原告らに対し、それぞれ110万円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 本件は、枚方市に居住する原告らが、その監護する別紙原告ら児童の入所年月日等一覧記載の各児童(以下「本件各児童」という。)を本件保育所に入所させ、保育を受けてきたところ、被告が本件条例によって本件保育所を廃止したため、原告らの入所選択権等が侵害されたとして、本件廃止処分の取消しを求めるとともに、同処分及びそれに関連する被告の行為が公法上の契約義務違反及び国家賠償法上の違法行為に該当するとして、被告に対し、それぞれ慰謝料100万円及び弁護士費用10万円並びに上記各金員に対する本件保育所が廃止された日の翌日である平成16年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。
2 児童福祉法(以下「法」という。)の定め
(1) 市町村による保育所の設置・廃止
法35条3項は、市町村は、厚生労働省令(旧厚生省令)の定めるところにより、あらかじめ、同省令で定める事項を都道府県知事に届け出て、保育所を含む児童福祉施設を設置することができると規定する。また、同条6項は、市町村は児童福祉施設を廃止し、又は休止しようとするときは、同省令で定める事項を都道府県知事に届け出なければならないと規定し、上記省令に当たる児童福祉法施行規則38条1項2号は、上記事項の1つとして入所させている者の処置を挙げている。
(2) 保護者による保育所の選択と保護者に対する情報提供
ア 平成9年法律第74号による改正(以下「平成9年改正」という。)は、近年の少子化の進行、夫婦共働き家庭の一般化、家庭や地域の子育て機能の低下、児童虐待の増加など児童や家庭を取り巻く環境が大きく変北している中、保育需要の多様化や児童をめぐる問題の複雑・多様化に適切に対応し、子育てしやすい環境の整備を図るとともに次代を担う児童の健全な成長と自立を支援するため、児童家庭福祉制度を再構築する趣旨で行われた。そして、この平成9年改正の中で、児童保育施策等の見直しとして、保育所について、市町村の措置による入所の仕組みを保育所に関する情報の提供に基づき保護者が保育所を選択する仕組みに改めることとされた。
イ 平成9年改正後の法24条1項は、市町村は、保護者の労働又は疾病その他一定の事由により、その監護すべき乳児、幼児等の保育に欠けるところがある場合において、保護者から申込みがあったときは、それらの児童を保育所において保育しなければならないと、同条2項は、前項に規定する児童について保育所における保育を行うこと(以下「保育の実施」という。)を希望する保護者は、入所を希望する保育所その他一定の事項を記載した申込書を市町村に提出しなければならないと、同条3項は、市町村は、一の保育所への希望者が多く、その児童のすべてが入所すると当該保育所における適切な保育の実施が困難となるなどの事由がある場合は、当該保育所に入所する児童を公正な方法で選考することができると規定する。そして、同条5項は、市町村は、同条1項に規定する児童の保護者の保育所の選択及び保育所の適正な運営の確保に資するため、その区域内における保育所の設置者、設備及び運営の状況等に関し情報の提供を行わなければならないと規定する。
(3) 保育の実施解除の手続
法33条の4は、保育の実施を解除する場合においては、市町村長は、あらかじめ、当該保育の実施に係る児童の保護者に対し、当該保育の実施の解除の理由について説明するとともに、その意見を聴かなければならないと規定する。
3 前提事実(争いのない事実及び証拠(書証番号は特記しない限り枝番を含む。)により容易に認められる事実)
(1) 被告は、法35条3項の規定に基づき、枚方市児童福祉施設条例(昭和44年枚方市条例第24号)を制定し、昭和51年10月1日、大阪府枚方市宇山東町〔番地略〕所在の本件保育所の設置認可を受け、本件保育所において保育に欠ける児童の保育を実施していた(〔証拠略〕)。
(2) 原告らは、枚方市に居住し、その監護する本件各児童につき、枚方市長から本件保育所への入所承諾等の決定を受け、別紙原告ら児童の入所年月日等一覧の入所年月日欄記載の各日に、本件各児童を本件保育所に入所させていた(〔証拠略〕)。
(3) 被告は、平成13年6月1日、地方自治法174条に基づく専門委員として就学前児童対策検討委員を委嘱した。同委員で構成する就学前児童対策検討委員協議会は、同年8月18日、中間まとめの報告をし、私立保育所よりも運営経費がかかっている公立保育所の財源を見直すとともに、民間活力の導入や民間活力による保育事業の拡充を行うことを提言した(〔証拠略〕)。被告は、上記提言を受けて、同年12月、第2次行政改革推進実施計画を策定し、3か所程度の公立保育所を社会福祉法人へ委託する方針を示した(〔証拠略〕)。そして、平成14年11月28日、枚方市議会厚生委員協議会において、当面の計画として「平成16年4月に公立保育所1か所を民営化し、平成20年4月までに2か所の合わせて3か所を民営化する」ことが報告された(〔証拠略〕)。
(4) 平成15年4月27日に施行された枚方市長選挙において、現職の中司宏市長は公立保育所の民営化を公約として掲げ再選された(〔証拠略〕)。同年6月5日、上記厚生委員協議会で平成16年4月1日から民営化する保育所を本件保育所とすることが報告された(〔証拠略〕)。
平成15年9月2日、同協議会で本件条例案を同月の枚方市議会に上程することが報告され、同月17日、審議を付託された枚方市議会厚生常任委員会で本件条例案が審議され、同月26日、枚方市議会本会議で賛成多数で可決された。これを受け、同月30日、本件条例が公布された。本件条例は、平成16年4月1日から施行され、同日午前零時をもって本件保育所は廃止された(〔証拠略〕)。
なお、この9月議会では、本件保育所の民営化に反対し保育の充実を求める請願署名が9万7846名分提出されたが、上記本件条例の可決とともに、みなし否決された。
(5) 本件条例公布後、本件保育所の運営法人を選考するため、平成15年10月6日、枚方市立保育所民営化に係る運営法人選考会議が設置された。上記運営法人の募集及び選考会議における選考の結果、同年11月21日、社会福祉法人a団(以下「a団」という。)を選考する旨の報告がされ、被告は、a団を新しい保育園の運営法人にすることを決定した(〔証拠略〕)。
(6) 被告は、平成16年2月2日、大阪府知事に対し、法35条6項に基づき本件保育所の廃止を届け出た。a団は、同月18日、大阪府知事に対し、同条4項に基づき設置認可申請を行い、同年3月31日付けで認可を受けた。a団は、同年4月1日からb保育園(以下「新保育園」という。)を開園した。被告は、本件保育所の廃止により本件保育所の土地建物及び付属施設等を普通財産とし、保育所の土地は、財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例(昭和39年枚方市条例第10号)4条1項により、a団に無償貸付し、建物及び保育所の物品は、同条例3条1項及び7条1項により、いずれもa団に譲与した(〔証拠略〕)。
(7) 被告は、新保育園への入所に当たり、他の公立保育所と同様、保護者に対し、毎年度行われる入所継続手続として入所継続確認書(〔証拠略〕)により、保護者の入所継続の意思の確認を行った。
(8) 甲事件原告らは、平成15年12月2日、甲事件を提起した。乙事件原告らは、平成16年2月5日、乙事件を提起した。丙事件原告らは、同年5月17日、甲乙事件に関連する丙事件を追加的に併合提起した。丁事件原告らは、同年6月30日、丁事件を提起した。
4 争点及び当事者の主張
(1) 本案前の争点(本件条例の制定等の処分性及び出訴期間)
(甲乙丁事件原告らの主張)
本件条例は、平成16年4月1日午前零時をもって、本件保育所を廃止するものであるが、廃止当時、原告らは、その監護する児童について本件保育所において保育を受ける地位にあった。よって、本件条例の制定及び施行によって、原告らは上記保育を受ける権利を失ったのであるから、本件条例の制定又は施行が、原告らの具体的な権利利益を侵害する処分であることは明らかであり、本件条例の制定又は施行は抗告訴訟の対象である処分に該当する。
(被告の主張)
法において、原告らが主張する入所選択権や特定の保育所において保育を受ける権利は保障されていない。よって、本件条例の制定又は施行は、特定人の権利義務に具体的な影響を及ぼす行為ではなく、一般的・抽象的な法規範を定める立法作用であり、処分性はない。また、乙事件及び丁事件の処分の取消しの訴えは、本件条例の公布から3か月を経過した後に提起されており、出訴期間(平成16年法律第84号による改正前の行政事件訴訟法14条)を経過した不適法な訴えである。
(2) 本件条例の違法性
ア 入所選択権の侵害
(原告らの主張)
平成9年改正により、保育所の入所方式は、保護者が希望する保育所等を記載して市町村に申し込むという意思表示に対し、市町村が保育に欠ける児童であるかの事実確認をし、その保育所の受け入れ能力がある限りは、希望どおりに保育所入所を承諾しなければならないことにして、保護者に入所選択権を制度上保障した。入所選択権が保障されたことにより、保護者が希望した保育所以外の保育所に入所させること、入所後就学前までの間に保護者の意に反して他の保育所へ転園させることは違法となる。
原告らは、平成9年改正後に、枚方市長から、本件各児童について就学前まで本件保育所に入所させるとの承諾の通知を受けた。よって、原告らは、本件各児童について就学前まで本件保育所における保育を受ける権利を有する。しかし、本件条例は、本件保育所を廃止するものであり、原告らの入所選択権及び就学前まで本件保育所で保育を受ける権利を違法に侵害するものである。
また、保育所は、各児童にとって生活の場、人格形成の場、発達保障の場であり、保護者にとって生活・コミュニケーションの場であるから、保育運営の主体の交代は、本件各児童及び保護者が享受している継続的に保育を受ける権利を侵害するものである。さらに、新保育園への移行後、<1>保育士の経験不足・人員不足等により、児童の危険について目配りが行き届かず、擦り傷などのけがをする児童が増えたり、午睡が不十分であったり、<2>障害児保育が不十分になったり、<3>保育方針が変更したり(新保育園では、お絵かき、生活発表会などの場面で見せるという側面に力点を置いている。)、<4>保護者との連絡が不十分になる(児童に事故が起きた場合、結果の大小を問わず、そのことを保護者に伝えるべきであるのに、新保育園ではこのような連絡が行われないことがあった。)などの変化が生じた。これらの変化も、原告らの権利利益を侵害するものである。
(被告の主張)
(ア) 法24条1項は、保育所への入所の仕組みを、同条2項は、保護者の入所希望を考慮するよう規定したものであり、同条3項で定員以上の入所希望があった場合、「入所の優先順位の判断を行った上で選考し、保育所入所を決定する」のであるから、すべての保護者が入所を希望する保育所において必ず保育を受けられるものではない。また、同条1項は、「保育所において保育しなければならない。」と規定しているが、特定の保育所において保育を受ける権利を保障したものではない。
そもそも、保育所を利用する保護者と市町村との法律関係は、公法上の附合契約であり、保護者は契約内容や給付方法について変更できず、市町村の定めた内容の契約を承諾するか否かの選択が残されているにすぎない。よって、入所選択権は法律上保障されていない。
(イ) 仮に、入所選択権が法律上保障されているとしても、本件保育所の廃止には十分な合理性があり、被告に裁量権の逸脱濫用はないから、本件条例は適法である。
すなわち、枚方市就学前児童対策検討委員協議会において、待機児童の解消、民間活力の導入及び民間活力による保育事業の拡充などが提言された。そして、<1>枚方市の北部地域は待機児童が多いこと、<2>定員増を行うために増築を行う広い敷地があること、<3>他の公立保育所が近接していることを理由に、本件保育所を民営化することに決定した。
また、被告は、本件保育所の民営化に係る運営法人の募集要項において、看護師の配置、障害児保育の実施、給食のアレルギー対応など本件保育所における保育内容の継続を条件として、運営法人を募集し、適正な選考手続を経て、a団を運営法人として選考した。
さらに、枚方市からa団への引継ぎについては、平成15年12月22日から平成16年3月17日まで計11回の引継会議が開催され、障害児保育、巡回相談、年間行事について重点を置いた事務面の引継ぎがされた。また、新保育園の保育士は、引継期間3か月、延べ3312時間、実際の保育を行い、引継ぎをした。
よって、新保育園に移行した後も、本件保育所の保育水準は維持されており、原告らの入所選択権は侵害されていない。
イ 保育の実施の解除における説明義務違反
(原告らの主張)
法33条の4は、市町村が保育の実施を解除する場合、あらかじめ、当該保育の実施に係る児童の保護者に対し、保育の実施の解除の理由について説明するとともに、その意見を聴かなければならないとし、同条の規定に基づき、「福祉の措置及び保育の実施等の解除に係る説明等に関する省令」(平成6年9月27日厚生省令第62号)は、具体的な説明等の手続きを定めている。
本件条例により、原告らは本件各児童について本件保育所における保育を受けられなくなる。法24条が保育所の入所選択権を保障した趣旨や、児童が保育士や他の児童らとともに成長・発達していくという保育の本質からすると、保護者が入所を希望する保育所を選択して、現に特定の保育所において保育の実施を受けていたにもかかわらず、当該保育所が廃止され当該保育所において保育の実施を受けられなくなることは、法33条の4の「保育の実施の解除」に当たる。
したがって、枚方市長又は枚方市福祉事務所長は、法33条の4及び上記省令に基づき、あらかじめ、本件各児童の保護者である原告らに対し、保育の実施等の解除の内容及び理由並びに説明等の期日及び場所を通知した上で、説明等の期日において、実施等の解除の内容及び理由を当事者に説明し、保育の実施等の解除についての当事者の意見を聴かなければならず、その説明等の経過を記載した調書を作成した上で、その内容を十分に斟酌して保育の実施等の解除の決定をしなければならない。
しかし、被告は、本件保育所の民営化を決定する過程の中で、公立保育所を民営化する目的として、保育所の運営経費を削減し、待機児童対策・子育て支援をすると説明したが、その他、曖昧な答弁・態度に終始した。原告らの意見聴取もしないまま、本件条例案は平成15年9月26日に可決された。また、移管先の運営法人選定の選考委員会に、保護者の代表1名が参加したが、保護者の意見が十分に反映されるものではなかった。
(被告の主張)
法24条は、入所選択権や特定の保育所において保育を受ける権利があることを定めたものではないから、法33条の4の「保育の実施の解除」とは、現に保育所で保育されている児童について、今後保育所での保育を行わないことを意味するものである。本件の場合、本件保育所の運営主体が、被告から社会福祉法人に変更されたが、本件各児童に対する保育の実施は継続されるのであるから、保育の実施の解除に該当しない。
(3) 損害賠償請求について
ア 違法行為の有無
(丙丁事件原告らの主張)
本件保育所の廃止を内容とする被告の本件条例の制定、公布及び施行は、原告らとの間の保育所利用契約に違反するとともに、国家賠償法(以下「国賠法」という。)上の違法行為でもある。
また、被告は、長年にわたって国の施策基準を上回る公的保育の拡充を積極的に推進し、高い水準の保育を実施してきた。原告らは、本件保育所の保育内容や保育水準を信頼して、本件保育所を選択し、本件各児童について保育を受けてきた。そして、被告は、本件保育所の廃止に際し、議会などで繰り返し、本件保育所の保育水準を下げないこと、保育内容を引き継ぐことを明言したり、a団との間で覚書を作成したりした。
したがって、被告は、原告らに対し、<1> 本件保育所の保育内容を可能な限り正確に新保育園に引き継ぐこと、<2> 新保育園の保育が開始された後も、本件保育所の保育内容が承継されているか確認し、承継されていない疑いがあるときは適切な措置を採ること、<3> 本件保育所の廃止後に、原告らが他の保育所又は保育園を選択し得るように十分な説明の機会を持つことなどの法的義務がある。
しかるに、新保育園での保育が開始されて以降、本件各児童の一部について午睡が十分できていない問題、児童のけがが多くなったという問題などが発生した。これは、本件保育所の保育水準を維持できていない結果である。これらの問題について、被告は、a団との間に締結された保育所運営に関する覚書(以下「覚書」という。)2条に基づいて、新保育園を実地調査したり、新保育園に対し報告を求めたりするなどして、事実確認や原因究明を行い、必要な措置を採るべきであるにもかかわらず、何もしなかった。また、本件保育所の廃止後、原告らが適切に入所選択権を行使できるように、新保育園を入所選択する機会を与えなかった。
以上の被告の行為は、国賠法1条1項の違法行為であるとともに、公法上の契約である保育所利用契約の義務違反に当たり、原告らに対し、後記損害を賠償する責任がある。
(被告の主張)
被告は、a団への引継ぎについて、平成15年12月22日から平成16年3月17日まで計11回の引継会議を開催し、障害児保育、巡回相談、年間行事に重点を置いた事務面の引継ぎを行った。また、新保育園の保育士は、引継期間3か月、延べ3312時間という十分な引継時間の中で、本件保育所の保育を行い、保育内容の引継ぎを行った。被告は、新保育園の開園後も、保育所専門職等による新保育園の訪問や保育の引継ぎの補助を行い、保育内容の継続について確認した。
また、本件条例制定後の平成15年10月10日から平成16年3月25日まで計6回、保護者への説明会が開催された。
したがって、被告に国賠法上の違法行為や保育所利用契約の義務違反はない。
イ 損害
(丙丁事件原告らの主張)
(ア) 本件条例制定後、本件保育所の廃止に至るまでの精神的苦痛
原告らは、本件保育所の廃止により児童がなついていた保育士が交代すること、新保育園の保育士は経験が少ないこと、保育内容の引継期間が短いこと、障害児保育の水準低下、増設工事による被害などについて、大きな不安を抱えていた。
(イ) 新保育園の保育の開始以降の精神的苦痛
新保育園の保育士の専門性又は経験不足から、児童のけがが多くなったこと、午睡が十分取れていないこと、保育士と保護者とのコミュニケーションが少なくなったことや、障害児保育の継続が不十分であること、保育方針の変更など様々な問題が顕在化したが、被告はこれらの問題について誠実に対応しようとせず、原告らは大きな精神的苦痛を被った。
(ウ) 損害額
上記各精神的苦痛を金銭に換算すると、原告1人当たり100万円を下らない。そして、弁護士費用はこの1割が相当である。
(被告の主張)
争う。
第3 当裁判所の判断
1 本件廃止処分の取消請求訴訟の適法性について
(1) 条例の制定は、通常、一般的、抽象的な規範を定立する立法作用の性質を有するものであり、原則として、個人の具体的権利義務に直接影響を及ぼすものではないから、抗告訴訟の対象となる処分には当たらない。しかし、他に行政庁の具体的処分を経ることなく、当該条例自体によって、その適用を受ける特定の個人の具体的な権利義務に直接影響を及ぼすような場合には、当該条例の制定行為は行政処分に該当すると解するのが相当である。
(2) 前記第2の2(2)のとおり、平成9年改正後の法24条は、保育所に関する情報の提供に基づき保護者が保育所を選択する仕組みを採用しており、市町村が、保護者の希望した保育所への入所を承諾した場合には、市町村と保護者との間に、保護者が当該保育所における保育を受けることを内容とする利用契約(公法上の契約)が締結されたものと解される。そして、この契約に基づく権利は、原則として利用契約の存続期間中、すなわち通常は就学するまで保護されるものと解される。
したがって、原告らは、被告との間で締結した各利用契約に基づき、本件各児童について、原則として就学するまでの期間、本件保育所において保育を受ける権利を有するというべきである。
(3) しかるに、本件条例は、他に行政庁の具体的処分を待つことなく施行日をもって本件保育所を廃止するものであり、これにより、本件各児童が本件保育所における保育を受けられなくなるものであるから、原告らの上記権利利益に直接影響を及ぼすものというべきであり、本件条例の制定行為をもって行政処分に当たると解するのが相当である。
したがって、甲事件原告らによる本件条例の制定行為の取消しを求める訴えは適法である。
(4) もっとも、乙丁事件原告らの本件条例の制定行為の取消しを求める訴えは、本件条例の公布から3か月以上が経過した平成16年2月5日及び同年6月30日にそれぞれ提起されたものであるから、出訴期間を経過した不適法な訴えである(平成16年法律第84号附則4条、同法による改正前の行政事件訴訟法14条1項)。
(5) また、丁事件原告らは、選択的に本件条例の施行による本件保育所の廃止を行政処分として、その取消しを求める訴えを提起しているが、条例の施行は、行政庁の具体的な行為を伴うものではなく、取消訴訟の対象となる処分とはいえないから、上記訴えは不適法である。
2 本件廃止処分の適法性
(1) 適法性の判断基準
本件保育所は、地方自治法244条1項にいう住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設(公の施設)であって、条例に基づき、枚方市内に居住する児童を保護し、その健全な育成を図るために地方公共団体たる被告が設置するものである。この点、同法244条の2第1項は、地方公共団体は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、公の施設の設置及びその管理に関する事項は条例でこれを定めなければならないと規定し、また、同条第2項は、地方公共団体は、条例で定める重要な公の施設のうち条例で定める特に重要なものについて、これを廃止する場合には、議会において出席議員の3分の2以上の者の同意を得なければならないと規定している。さらに、同法149条7号は、公の施設を設置し、管理し、及び廃止することを、地方公共団体の長の担任事務の1つとしている。
以上によれば、地方公共団体ないしその長は、当該地方公共団体が現に行い、あるいはこれから行おうとする様々な施策の内容や、当該地方公共団体の財政状況、その他当該地方公共団体を取り巻く様々な要因を総合的に勘案し、公の施設を設置し、管理し、あるいは廃止することができるものと解すべきであって、公の施設の設置、管理及び廃止については、地方公共団体ないしその長の裁量的判断にゆだねられていると解される。そして、公の施設である本件保育所を廃止するか否かについても、就学前児童数、待機児童数、保育サービスの需要及び地方公共団体の財政状況などの諸事情を総合的に勘案して判断されるべき事柄であり、被告の裁量にゆだねられた事項というべきである。
そうすると、平成9年改正後の法において、保育に欠ける児童の保護者と市町村との間で締結された保護者の選択した保育所において保育を受けることを内容とする利用契約は、あくまでも当該保育所が存続することを前提とするものであり、市町村がその有する裁量により当該保育所を廃止することがあり得ることは、当該保育所の公の施設としての性格からくる制約として前提とされているものと解される。法35条6項及び児童福祉法施行規則38条1項2号が、保育所等の児童福祉施設に入所者がいる時点でも、同施設を廃止する場合があることを前提とした廃止手続を定めていることも、この解釈を裏付けるものである。
もっとも、本件保育所の廃止が、入所児童の保護者の前記権利に直接影響を与えるものである以上、上記地方公共団体ないしその長の上記裁量権も全くの自由裁量ということはできず、その裁量権の行使に逸脱ないし濫用がある場合には違法になるものと解される。
そこで、以下、この判断枠組みに従い、本件廃止処分に、被告の有する裁量権の逸脱ないし濫用があったか否かを判断する。
(2) 認定事実
〔証拠略〕及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア 平成13年度決算における公立保育所の児童1人当たりにかかる年間運営経費は、私立保育所の約1.7倍であり、公立保育所は約187万円であるのに対し、私立保育所は約117万円であり、年間約70万円の差があり、本件保育所の入所児童が90名であったことから、本件保育所の廃止及び民営化により、約6300万円の経費削減が見込まれた(〔証拠略〕)。
平成13年10月1日現在の枚方市における保育所に入所できない待機児童数は475人であり(〔証拠略〕)、平成15年9月1日現在の待機児童数は275人であり(〔証拠略〕)、待機児童の解消が枚方市の重要な課題となっていた。
イ 被告は、平成15年6月5日、枚方市議会厚生委員協議会において、平成16年4月に民営化する保育所を本件保育所とすることを報告した。民営化する保育所を本件保育所とした理由は、枚方市の北部地域は私立保育所による定員増の予定がなく、同地域は待機児童が多い地域となっているところ、北部地域にある本件保育所は、<1>定員増を行うための増改築が可能な広い園庭を有しており(敷地面積2306平方メートル、建物延床面積700.05平方メートル)、<2>建物の耐用年数があり(昭和51年建築)、<3>市立阪保育所が近接しており、<4>起債が償還済みで国庫補助金等の返還が不要であるからである(〔証拠略〕)。
ウ 被告は、平成15年10月27日から同年11月4日までの間で、本件保育所の民営化により、新保育園を運営する社会福祉法人を募集した。新保育園の運営法人については、<1>枚方市において、平成16年4月1日現在、法7条に規定する保育所を引き続き10年以上現に運営している社会福祉法人であること、<2>保育所を運営するために必要な経営基盤及び社会的信用を有していること、<3>移譲前の保育内容を継続することを基本とし、「保育所運営の条件」を厳守することなどの応募資格及び条件を定めた。そして、「保育所運営の条件」として、看護師の配置、障害児保育の実施及び給食のアレルギー対応等を保育内容の継続事項とした(〔証拠略〕)。
エ 被告は、枚方市立保育所民営化に係る運営法人選考会議を置き、応募のあった6法人について書類審査をしたり、理事長及び施設長予定者に対しヒアリングを行ったりして、評定結果の最も高いa団を選んだ。なお、同選考会議の委員には枚方市立保育所の保護者で構成される団体の代表者として本件保育所保護者会会長も含まれていた(〔証拠略〕)。
オ 本件保育所とa団は、平成15年12月22日から平成16年3月17日まで合計11回にわたり、引継会議を開催した。引継会議の具体的内容は、<1>保育内容(保育方針、年間保育目標、保育方法など)、<2>行事(年間の保育所行事についての目的、内容、留意点)<3>障害児保育(巡回相談)、<4>保健関係(看護師業務の引継ぎ)、<5>給食関係(食物アレルギーの対応)、<6>保護者との連携、<7>安全管理、<8>延長保育、<9>地域とのかかわり、<10>備品の引継ぎ、<11>各クラスの引継ぎなどであった(〔証拠略〕)。
カ 保育現場における引継ぎは、平成16年1月5日から同年3月31日まで、a団の保育士が本件保育所に出向き、実際に保育を行った。引継ぎのため本件保育所に出向いたa団の保育士は合計19名であり、保育を実施した時間は64日間、延べ3312時間であった(〔証拠略〕)。
キ a団は、平成16年1月21日時点で、新保育園の保育士として21名を採用した。採用した保育士のうち、c保育所経験者は5名、その他の公立保育所経験者は9名、民間保育園経験者7名であった(〔証拠略〕)。同年4月1日現在のa団の保育士は19名であり、そのうち12名は5年以上の保育経験を有するものである。また、a団は保育士の他に、看護師、調理師等を採用した(〔証拠略〕)。
ク 枚方市福祉部子育て支援室のAと保育専門職B(以下「B」という。)は、平成16年4月1日の新保育園の入園式に出席し、保育の状況や児童の様子を確認した。その後、Bは、同月23日、30日、5月25日、7月13日に新保育園を訪問し、保育の様子を見学した上、園長や主任と意見交換したり、助言を与えたりした。また、同子育て支援室のC前c保育所長らが、同年5月21日、同月22日、10月5日に新保育園を訪問し、意見交換や助言を行ったり、新保育園の行事に参加して児童と交流を図った(〔証拠略〕)。
ケ 新保育園の定員は120名であり、平成16年4月1日現在で108名が入所していたが、その後随時入所を受入れ、平成17年2月1日現在では133名の児童が入所している。平成17年4月の入所希望者も124名であった。新保育園の定員増、その他私立保育園の増築等により、枚方市全体で201名の定員増を実現したことで、枚方市における待機児童数はゼロとなった(〔証拠略〕)。
また、平成10年度の公立保育所職員数は保育士258名を含む346名であったが、行政改革や保育所の民営化を見越して削減し、平成14年度は保育士239名を含む323名、平成15年度は保育士235名を含む316名となった。これにより、本件保育所の元職員が過員となることなく、他の市立保育所等へ異動した(〔証拠略〕)。
コ 被告は、本件保育所の入所児童が希望する場合は、新保育園に継続入所ができることにした(〔証拠略〕)。被告は、本件保育所の民営化決定後の平成15年6月11日、本件保育所を廃止し民営化することについて保護者に説明会を開催し、以後、保護者の求めに応じ、同年7月6日、8月2日及び9月9日に説明会を開催した。また、被告と保護者との話合いの場を同年10月10日、11月3日及び12月7日の3回設けた。その後、同月11日、平成16年1月30日、3月25日にも説明会が行われ、同月5日には、a団による懇談会が行われた(〔証拠略〕)。
(3) 本件廃止処分の適法性
ア 前記前提事実及び認定事実のとおり、被告は、就学前児童対策検討委員協議会による公立保育所の財源見直しと、民間活力による保育事業の拡充の提言を踏まえ、本件保育所の廃止及び民営化を決定したもので、本件保育所の廃止及び民営化により、年間約6300万円の運営経費の削減と公立保育所職員数の削減を図り、かつ、民営化後の施設整備による定員増員によって枚方市北部において特に多かった待機児童の解消を図ることを目的としたものであった。そして、新保育園の運営法人は、実績のある社会福祉法人の中から、保育内容の継続を基本的な条件として、公正な方法により選考され、本件保育所の職員とa団の職員との合計11回の引継会議や合計64日間の保育内容の引継ぎが行われたことなどに照らせば、被告は、本件条例の制定に当たり、新保育園において、本件保育所での保育内容と継続性があり、かつ保育として必要とされる一定の水準を保持した保育が行われるための準備行為を行うことを予定していたものと推認できる。
イ 原告らは、新保育園に移行後、<1>保育士の経験不足・人員不足等により、児童の危険について目配りが行き届かず、擦り傷などのけがをする児童が増えたり、午睡が不十分であったり、<2>障害児保育が不十分になったり、<3>保育方針が変更したり(新保育園では、お絵かき、生活発表会などの場面で見せるという側面に力点を置いている。)、<4>保護者との連絡が不十分になる(児童について転落事故が起こった場合、結果の大小を問わず、その事故のことを保護者に伝えるべきであるのに、新保育園ではこのような連絡が行われないことが、あった。)などの変化が生じたと主張し、それに沿う証拠もある(原告X4、同X5及び同X6。しかし、新保育園の保育に対し不満を示す保護者は、全体としてみれば少数にとどまること(〔証拠略〕)、障害児保育について、前記のとおり保育内容の引継ぎが行われ、保育士が加配されているほか、臨床心理士が保育所を訪れ、障害児を監護する保護者の相談に応じる巡回相談や障害児グループ(ノンタングループ)における行事等を継続していること(証人A、原告X5)、及び保育士の変更やそれに伴う保育内容の変更は、本件保育所が存続しても生じることに照らせば、原告らの上記主張事実は、被告が本件条例の制定に当たり、新保育園において保育内容と水準が保持されるための準備行為を予定していたという前記認定を覆すに足りるものとはいえない。
ウ 以上によれば、本件廃止処分には、経費削減及び待機児童解消という合理的な理由があり、しかも本件保育所の入所児童及びその保護者への配慮として、新保育園において本件保育所での保育内容と継続性があり、かつ、保育として必要とされる一定の水準を保持するための手続を予定していたと認められるから、本件廃止処分に裁量権の逸脱、濫用があるとは認められず、違法ということはできない。
(4) 保育の実施解除の手続違反について
原告らは、被告による本件保育所の廃止は、法33条の4にいう保育の実施の解除に当たると主張する。
しかし、法24条2項は、「前項に規定する児童について保育所における保育を行うこと(以下「保育の実施」という。)」と規定しており、法33条の4は、「都道府県知事、市町村長(省略)は、次の各号に掲げる措置又は保育の実施等を解除する場合には、あらかじめ、当該各号に定める者に対し、当該措置又は保育の実施等の解除の理由について説明するとともに、その意見を聴かなければならない。」とし、その3号で「母子保護の実施及び保育の実施 当該母子保護の実施又は保育の実施に係る児童の保護者」と規定している。このように、法は、「保育所における保育を行うこと」をもって「保育の実施」と定義付けているから、法33条の4にいう保育の実施の解除も、保育に欠けることの要件等を欠くことを理由として、市町村が保育所における保育を行うことを解除する場合をいうものと解するのが相当である。
したがって、本件保育所の廃止は、保育の実施の解除には当たらず、本件廃止処分に原告らが主張するような手続違反はないというべきである。
3 損害賠償請求について
(1) まず、本件廃止処分が適法であることは前記判示のとおりであるから、丙丁事件原告らによる同処分の違法を理由とする損害賠償請求は理由がない。
次に、丙丁事件原告らは、被告又は被告の担当者が、本件廃止処分の前後にわたり、保育内容を可能な限り新保育園に引き継ぐ義務があるにもかかわらず、その義務を履行しなかったことが違法であると主張する。
ここで、国賠法上の違法行為とされるのは、公務員が具体的状況の下、職務上尽くすべき注意義務に違反した場合をいうが、前記認定事実のとおり、被告は、本件保育所の廃止、民営化に当たって、本件保育所の保育内容を引き継ぐことを基本的な条件として、運営法人の選考から実際の保育の引継ぎに至るまで手続を進めており、また、民営化後に子育て支援室の職員が新保育園を訪問し、保育の状況を見学し、意見交換や助言を与え、本件保育所の保育内容の継続を図ろうとしていたものである。確かに、新保育園において、児童が午睡を十分取れていないという問題や児童のけがの問題(保護者への連絡不十分)が生じたことはあるが、これらの問題は保護者と保育士との認識のずれに起因する要素が大きく、今後新保育園における保育の継続の中で十分対処し得る問題であるといえるし、新保育園の保育に対して不満を述べる保護者は全体からみれば少数にとどまることも前記のとおりである。
したがって、被告は、本件保育所の保育内容を継続し、保育に必要な一定の保育水準を保持するために通常必要な手続を履行してきたものというべきであり、その担当者において職務上尽くすべき注意義務に違反したということはできない。なお、被告は、a団との覚書2条に基づいて、新保育園に赴いて調査したり、報告を求めたりしたことはない(証人A)が、同条は、被告に対し、実地調査や報告を求めることを義務付けるものではない上、前記認定事実に照らし、そのような調査をしていなかったことが、原告らとの関係で義務違反になるともいえない。
(2) また、丙丁事件原告らは、被告は、本件保育所の廃止後に、原告らが他の保育所又は保育園を選択し得るように十分説明の機会を持つ義務があったにもかかわらずこれを履行しなかったと主張する。しかし、被告が本件保育所を民営化することを決定した以降、本件保育所に児童を入所させている保護者との間で、公立保育所の民営化の考え方、新保育園の運営法人の選考結果及び民営化に伴う引継ぎなどについて説明会や話し合いの機会を設けてきたこと(〔証拠略〕)、保護者が公立。私立保育所の紹介文書を入手できること(〔証拠略〕)、現に本件保育所の民営化に伴い、他の保育所に転所した児童が8名いたこと(証人A)からすれば、原告らは本件保育所の廃止により、新保育園又は他の保育所に入所できることを理解できたと認められ、この点について被告担当者に職務上尽くすべき注意義務違反があったとは認められず、また被告に契約違反の事実も認められない。
(3) 以上のとおり、丙丁事件原告らの国賠請求及び保育所利用契約に基づく損害賠償請求はいずれも理由がない。
4 以上のとおり、乙事件原告らの訴え及び丁事件原告らの本件廃止処分の取消しを求める訴えは不適法であるから却下することとし、甲丙事件原告らの請求及び丁事件原告らの損害賠償請求は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 廣谷章雄 裁判官 山田明 芥川朋子)