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大阪地方裁判所 平成16年(モ)2259号 決定 2004年3月31日

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申立人(本案原告)

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同訴訟代理人弁護士

井上耕史

東京都目黒区三田1丁目6番21号

相手方(本案被告)

GEコンシューマー・ファイナンス株式会社

上記代表者代表取締役

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同訴訟代理人弁護士

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主文

相手方は,本決定送達の日から10日以内に,別紙文書目録1記載の文書を当裁判所に提出せよ。

理由

第1申立ての趣旨

主文同旨

第2申立ての理由

1  申立人は,遅くとも平成5年1月4日から株式会社レイク及びジー・イー・コンシューマー・クレジット株式会社との間で,金銭消費貸借取引を開始したところ,申立人と株式会社レイク及びジー・イー・コンシューマー・クレジット株式会社との取引経過は,訴状添付の別紙計算書5記載のとおりである。

2(1)なお,申立人が相手方に文書提出命令の申立てをした別紙文書目録2記載の文書(以下「本件文書2」という。)については,平成15年11月7日に,当裁判所において,その提出が命じられ(当庁平成15年(モ)第5709号),平成16年2月25日,その抗告審において,相手方の抗告が棄却された(大阪高等裁判所平成15年(ラ)第1228号)が,相手方は,本件文書2を提出しない。

(2)したがって,申立人が平成5年1月4日から株式会社レイクとの間で,金銭消費貸借取引をしていたことを真実と認めることができるものである。

3  株式会社レイクは,平成10年11月2日,ジー・イー・コンシューマー・クレジット株式会社に申立人に対する契約上の地位を譲渡し,ジー・イー・コンシューマー・クレジット株式会社は,平成14年12月2日,GEコンシューマー・クレジット有限会社に吸収合併され,GEコンシューマー・クレジット有限会社は,平成15年10月1日,相手方に吸収合併された。

4  別紙文書目録1の文書(以下「本件文書1」という。)は,申立人と株式会社レイク及びジー・イー・コンシューマー・クレジット株式会社との取引開始以降の取引経過が記載されたものであり,民事訴訟法220条3号後段の文書に該当する。

5  相手方は,本件文書1を所持している。

6  申立人と株式会社レイク及びジー・イー・コンシューマー・クレジット株式会社との取引経過が訴状添付の別紙計算書5記載のとおりであることを立証するためには,本件文書の提出が必要である。

7  よって,申立人は,相手方に対して,本件文書1を提出するように申し立てる。

第3相手方の主張

相手方は,貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業規制法」という。)19条に定める帳簿(以下「19条帳簿」」という。)として,「コキャク トリヒキ リレキ リスト(以下「本件リスト」という。)」を作成・保管しているものである。そして,本件リストについては,その保存期間を,コンピューターの容量を考慮して,過去に逆上って10年間とし,これを超えた19条帳簿は,平成15年1月から順次コンピューターから完全に削除しており,申立人の要求する期間の19条帳簿を所持していない。そして,本件リスト以外の19条帳簿は存在しない。

第4当裁判所の判断

1  一件記録によれば,申立ての理由3の事実が認められる。

2(1)一件記録によれば,申立人が本案事件において申立ての理由1のとおり主張し,相手方に対し,利息制限法に引き直した場合の過払金の返還等を求めていること,これに対して相手方は,本件リストを提出して,その範囲で申立人との間の取引経過(すなわち,申立人については,平成7年6月1日以降の各取引)を認めていること,しかし,相手方は,申立人についての上記各日の前の取引経過(本件リスト)については,平成15年1月から10年を経過したものを順次コンピューターから完全に削除したために存在しないと主張し,本件リスト以外の19条帳簿は存在しないと主張していることが認められる。

(2)ところが,一件記録によれば,本件文書2の文書提出命令の申立てについての経緯が申立ての理由2(1)のとおりであることが認められるところ,本件文書2が提出されれば,申立人と株式会社レイクとの取引開始日が容易に判明するにもかかわらず,相手方が本件文書2を敢えて提出しないものであるから,本件文書提出命令の申立てにおいて,民訴法224条により,申立人は,平成5年1月4日から株式会社レイクとの間で金銭消費貸借取引を開始したと認めるのが相当である。

(3)上記(1)(2)によれば,相手方は,本決定日である平成16年3月31日現在で,申立人の平成6年3月31日から平成7年5月31日までの間の本件リスト(本件文書1)を所持していることは明らかであるというべきである。

3  そこで,次に,平成5年1月4日から平成6年3月31日までの本件文書1の存在等について判断する。

(1)証拠(乙17)中には,次のような記載(以下「本件記載」という。)がある。

相手方は,19条帳簿として,取引履歴をコンピュターによって保存していたが,平成14年12月13日,近畿財務局を訪問し,取引履歴の保存期間について,過去10年に遡って保存し,これを超えた取引履歴は破棄することとし,これを平成15年1月1日から開始する旨を説明したところ,近畿財務局の見解は,問題はないというものであったため,同年1月以降,順次,取引履歴の削除を開始している。

(2)本件記載によれば,平成15年1月1日以前においては,申立人の株式会社レイクとの全取引履歴が存在していたと認めるほかない。

(3)そして,証拠(甲E1)によれば,相手方(当時は,ジー・イー・コンシューマー・クレジット株式会社)は,平成14年11月25日に申立人に対し,平成7年6月1日以降の取引経過を開示していることが認められる。

(4)そうすると,本件記載による取引履歴の削除が開始された平成15年1月1日以前において,既に相手方(当時は,ジー・イー・コンシューマー・クレジット株式会社)と申立人との間に,継続的金銭消費貸借取引契約に基づく債務の内容ないし過払金の発生が問題となっていたものであるから,相手方(当時は,GEコンシューマー・クレジット有限会社)がその取引経過を示す重要な証拠である本件リストないし19条帳簿を抹殺してしまうような暴挙に出るとは考え難いところである。

(5)したがって,本件記載が事実であったとしても,少なくとも申立人に関する平成5年1月4日から平成6年3月31日までの本件リストないし19条帳簿は,依然として存在していると認めるのが相当である。

4  そして,平成5年1月4日から平成7年5月31日までの期間における本件文書1については,相手方には,民訴法220条3号後段に基づく提出義務があるというべきであり,その必要性も認められるから,申立人の本件申立ては理由がある。

第5結論

よって,本件申立ては,理由があるので,主文のとおり決定する。

(裁判官 塚本伊平)

文書目録

1 株式会社レイク及びジー・イー・コンシューマー・クレジット株式会社の業務に関する帳簿(貸金業の規制等に関する法律19条に定める帳簿)又はこれに代わる同法施行規則16条3項,17条2項に定める書面のうち,申立人と株式会社レイク及びジー・イー・コンシューマー・クレジット株式会社との間の平成5年1月4日から平成7年5月31日までの期間内における金銭消費貸借取引に関する事項(包括契約年月日,貸付年月日,貸付金額,返済年月日及び返済金額)が記載された部分(電磁的記録を含む。)

2 申立人が株式会社レイクに提出した「エントリーカード」と題する書面

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