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大阪地方裁判所 平成16年(ワ)2555号 判決 2006年1月26日

甲事件原告

富士火災海上保険株式会社

被告

Y1

乙事件原告

三井住友海上火災保険株式会社

被告

サン工芸印刷株式会社

ほか二名

丙事件原告

Y2

被告

Y1

丁事件原告

あいおい損害保険株式会社

被告

Y1

主文

一  被告Y1は、原告富士火災に対し、金四六万四六五〇円及びこれに対する平成一六年一月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告サン工芸印刷、被告Y2、被告山善は、原告三井住友海上に対し、連帯して金三四八万三四九〇円及びこれに対する平成一五年一二月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告Y1は、被告Y2に対し、金一四万三〇〇〇円及びこれに対する平成一五年一〇月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  被告Y1は、原告あいおいに対し、金八万三七三七円及びこれに対する平成一六年一月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

五  原告ら及び被告Y2のその余の請求をいずれも棄却する。

六  訴訟費用は、原告富士火災と被告Y1の間においては、これを三分して、その一を被告Y1の、その余を原告富士火災の負担とし、原告三井住友海上と被告サン工芸印刷、被告Y2及び被告山善の間においては、これを二〇分して、その九を被告サン工芸印刷、被告Y2及び被告山善の、その余を原告三井住友海上の負担とし、被告Y2と被告Y1の間においては、これを二分して、その一を被告Y1の、その余を被告Y2の負担とし、原告あいおいと被告Y1の間においては、これを二〇分して、その九を被告Y1の、その余を原告あいおいの負担とする。

七  この判決は、第一項ないし第四項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

【甲事件】

被告Y1は、原告富士火災に対し、金一四一万二九八七円及びこれに対する平成一六年一月二四日(保険金支払日の翌日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

【乙事件】

被告サン工芸印刷、被告Y2、被告山善は、原告三井住友海上に対し、連帯して金七六六万六九八〇円及びこれに対する平成一五年一二月一九日(保険金支払日の翌日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

【丙事件】

被告Y1は、被告Y2に対し、金二八万五〇〇〇円及びこれに対する平成一五年一〇月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

【丁事件】

被告Y1は、原告あいおいに対し、金一八万三四七五円及びこれに対する平成一六年一月七日(保険金支払日の翌日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、次に述べる前提事実記載のとおり、高速道路上において、Y2車、B車、A車の三台が関与する軽微な第一事故が発生し、その三台が本件事故現場に停車していたところ、第一事故から約三三分後に本件事故現場を通過しようとしたY1車が、停車中のY2車、B車、A車にそれぞれ衝突する第二事故が生じ、この第二事故によって生じた四車の各損害について、車両保険金を支払って保険代位した保険会社二社及び被告Y2の第一事故グループ側と被告Y1に車両保険金を支払って保険代位した被告Y1側保険会社とが、相互に、相手側運転者又はその使用者に対し損害賠償(保険代位)を請求(遅延損害金の請求も含む。)する事件である。

一  前提事実(争いのある点については証拠を掲記する。)

(1)  第一事故

ア 発生日時 平成一五年一〇月一日午後七時一〇分ころ

イ 発生場所 大阪市福島区大開二丁目府道高速大阪西宮線神上二・六キロポスト先路上(以下「本件事故現場」といい、高速道路を示す場合は、「本件高速道路」という。)

ウ 関係車両 Y2車 普通乗用自動車(<番号省略>)運転・所有 被告Y2

B車 普通貨物自動車(<番号省略>)運転 B所有 被告サン工芸印刷

A車 普通乗用自動車(<番号省略>)運転 A所有 被告山善

エ 事故態様(争いのない範囲)

本件事故現場(片側二車線の高速道路)において、B車の後方から第二車線を同方向に進行していたY2車が、B車と接触しながらその右側を追い越し、A車の後部に追突した事故

(2)  第一事故の結果(乙一、八、丙二、弁論の全趣旨)

ア Y2車 修理を要するような損害は生じなかった。

イ B車 右ドアミラーのガラスが破損した(なお、乙八の「お見積書」は右ドアミラーを除外した修理費用見積となっている。)。

ウ A車 修理を要するような損害は生じなかった。

(3)  第二事故

ア 発生日時 平成一五年一〇月一日午後七時四三分ころ

イ 発生場所 本件事故現場

ウ 関係車両 Y1車 普通乗用自動車(<番号省略>)運転・所有 被告Y1

B車、Y2車、A車

エ 事故態様(争いのない範囲)

第一事故の後、A車、Y2車、B車が、この順序で本件事故現場第二車線上において約三三分間停車していたところ、第二車線を進行してきたY1車が、B車、Y2車、A車に順次衝突した事故

(4)  使用関係

ア 本件各事故当時、被告サン工芸印刷は、その事業のためにBを使用しており、Bはその事業の執行につきB車を運転していたものである。

イ 本件各事故当時、被告山善は、その事業のためにAを使用しており、Aはその事業の執行につきA車を運転していたものである。

(5)  保険関係

ア 原告富士火災は、被告山善との間で、A車を被保険自動車とし、保険金額車両一五五万円(免責一〇万円)、保険期間平成一四年一二月二〇日から一年間とする自動車保険契約を締結した。

イ 原告あいおいは、被告サン工芸印刷との間で、B車を被保険自動車とし、保険期間平成一五年九月一日から一年間とする自動車保険契約を締結した。

ウ 原告三井住友海上は、被告Y1との間で、Y1車を被保険自動車とし、保険期間平成一四年一二月二一日から一年間とする自動車保険契約を締結した。

二  争点

(1)  責任原因及び過失割合

【原告富士火災及び被告山善の主張】

被告Y1は、道路を進行するに当たっては、停車している車両に衝突しないよう、前方を注視するとともに、適切な回避措置をとる義務が存しているにもかかわらず、これを怠り、漫然とY1車を進行させた過失により、A車に衝突したものであり、民法七〇九条により損害賠償責任を負う。

過失相殺割合については争う。

【被告Y2の主張】

被告Y1は、自動車運転に従事するものとして、高速道路上の見通しの悪い曲線道路を走行するに当たっては、前方車両の動静に注意し、速度を適宜減速したり、先行車と適切な車間距離を取るなどして、前方道路に停止する車両に自車を衝突させることのないよう安全に運転する義務があるのにこれを怠り、漫然時速一〇〇kmを超える速度で走行し、先行車との車間距離を二〇m程度しか取らず、停止表示器材を見落とすなどの前方に対する注意を欠いた過失により、Y1車をB車ら三台に衝突させたものであり、Y2車の損害について民法七〇九条により損害賠償責任を負う。

第一事故の後、被告Y2は、後方から来る車両に注意を喚起するため、B車の後方約二〇ないし三〇mの右側路肩に、三角形の停止表示器材を設置した。

被告Y2は、本件事故現場手前の道路がやや左にカーブしていることにかんがみ、後方車両からでも十分に分かる位置に停止表示器材を設置したものであり、被告Y1がこれに気付かなかったとは考えられず、被告Y1の前方不注視の過失は著しい。また、被告Y1が先行車との車間距離を約二〇mしかとっていないということも本件事故の原因となっており、この点も合わせると、被告Y1の過失は重大なものというべきである。

第一事故後約三三分もの間、複数の他の車が本件事故現場で一切事故を起こさず無事に通過していっていることも以上の点を裏付けている。

なお、被告Y1は、第二事故の際、ノーブレーキのままB車ら三台に衝突しているのであり、被告Y2の認識では、Y1車が時速約一〇〇ないし一一〇kmの速度で衝突してきたという感覚である。

【原告あいおい及び被告サン工芸印刷の主張】

被告Y1は、速度違反と前方不注視の過失により、B車に衝突したものであり、民法七〇九条により損害賠償責任を負う。

第一事故は、第一車線を進行していたA車が、第二車線を走行していたB車の前に進路変更してきたため、B車が速度を落としたところ、第二車線の後続車であるY2車が、B車の右ドアミラーに接触しながらその右側を追い越し、B車ら三台が、後方からB車、Y2車、A車の順で本件事故現場に停車するに至ったというものである。

B車ら三台は、右側側壁に寄せて停車し、三台とも駐車灯を点灯し、ハザードランプを点滅させていたほか、B車の後方には停止表示器材を設置しており、警察に第一事故を通報していた。

また、第一事故から約三三分の間、本件事故現場を通過した車は、B車ら三台と衝突事故を起こすことはなかった。

以上のような事情から、Bには何らの過失もなく、被告サン工芸印刷には責任がない。第二事故の原因は、専ら被告Y1の速度違反と前方不注視にある。

【原告三井住友海上及び被告Y1の主張】

A、被告Y2、Bは、いずれも以下で述べるとおり、高速道路上での駐停車禁止に反するなどの過失により第二事故を招いたものであり、民法七一九条一項前段の共同不法行為としてY1車に生じた損害を連帯して賠償すべき責任がある。

また、Aの使用者である被告山善及びBの使用者である被告サン工芸印刷は、それぞれ民法七一五条一項本文の使用者責任を負う。

被告Y1の過失は認めるが、大幅な過失相殺を主張する。

Y1車は、本件高速道路を東に向け、車の流れに乗って時速約六〇ないし八〇kmで走行していた。

本件高速道路は、本件事故現場の手前では三車線で直線の道路となっており前方の見通しもよい。

Y1車は、三車線部分では追越車線(第三車線)を走行していた。

本件高速道路は、海老江出口を過ぎると、二車線で左カーブの道路となり、前方の見通しが悪くなる。また、車線が減少するためいつもこの辺りから少し車が混むような状況になる。

Y1車は、車線が減少した後も追越車線(第二車線)を走行していたが、車線減少後のY1車と、第二車線の先行車との車間距離は約二〇mであった。もっとも、第一車線側の車も二〇m程の車間距離で走行していたので、Y1車だけが極端に車間距離を狭めて交通の流れを乱して走行したことはなかった。

海老江出口を過ぎてしばらくして、本件事故現場手前の左カーブを曲がりきる直前で、Y1車の先行車が突然第二車線から第一車線に進路変更した。このとき初めて、被告Y1は、第二車線前方の左カーブ出口付近にB車、Y2車、A車を確認した(ただし、停止表示器材には全く気付かなかった。)。しかしながら、被告Y1には直線の三車線道路では先行車の前方は車がスムーズに流れているのが見えていたため、被告Y1はB車ら三台も動いているものと思われた。高速道路の見通しの悪いカーブの出口付近で三台もの車が停止しているとは、被告Y1には思いもよらなかった。

被告Y1は、その直後、B車ら三台が停車していることに気付き、すぐにブレーキを踏み、左にハンドルを切り、B車ら三台との衝突を避けようとしたが、避けきれなかった。

その結果、Y1車は、その右前部を、順次、B車、Y2車、A車の左後部に衝突させた後停止した。

B車ら三台との衝突地点は、本件事故現場の第二車線の左寄りであった。

本件高速道路の、本件事故現場付近の第一車線の外側には、非常駐車帯が設置されていた。

被告Y1には、より大きく左にハンドルを切る余裕はなかったし、もし大きく左にハンドルを切っていたとするとY1車が第一車線側の側壁に衝突し第一車線後続車との事故が生じた可能性があり、いずれにしてもそのような回避措置は不可能であった。

第二事故は、高速道路における第一事故により本線車道上に駐停車中の自動車への追突事故であり、第一事故におけるB車ら三台のそれぞれの過失の有無にかかわらず、基本過失割合は、追突車であるY1車が六〇%、被追突車であるB車ら三台が四〇%というべきである。

その上で、<1>本件事故現場は、左カーブ出口で後続車からの見通しが極めて悪い場所であることから、Y1車の過失を一〇%減算し、<2>B車ら三台は、第一事故の後第二事故までの間、いずれも自走可能であったにもかかわらず、安全な場所へ移動させることなく一〇分以上も追越車線上に停車していたものであり、道路交通法(以下「道交法」という。)七五条の八第一項が定める高速道路上での駐停車禁止違反に当たる(同項の例外に当たらない。)し、第一事故の軽微さから本件事故現場に停車を継続する必要性も相当性も欠いており、B、被告Y2、Aはそのことを認識していたと考えられ、停止表示板が設置されていたか否かは定かでない(少なくとも見やすい位置に設置していない。)ほか、B車ら三台の停止状況は、道交法七五条の一一の「故障その他の理由により本線車道等において運転することができなくなったとき」に当たらないことから、B車ら三台の重大な過失として二〇%加算すべきである。

以上からすれば、被告Y1に速度超過、前方不注視等の過失が認められるとしても、B車ら三台の側について五〇%以上の過失相殺がなされるべきである。

(2)  損害及びその額(保険会社関係は保険代位も含む。)

ア A車

【原告富士火災】

車両損害(修理費用) 一五一万二九八七円

代車費用 四万二〇〇〇円

レッカー費用 二万七三〇〇円

損害合計 一五八万二二八七円

保険代位 原告富士火災は、平成一六年一月二三日に、保険契約に基づいてA車の所有者に、一四一万二九八七円を支払い、同額について保険代位した(なお、上記損害額を前提とした代位の範囲については所有者との合意がある。)。

【被告Y1】

車両損害 A車は、平成一四年一月初度登録のファミリアであり、本件事故当時の中古車小売市場価格は八六万円であったところ、これは原告富士火災主張の修理費用よりも低額であるから、いわゆる経済的全損であり、本件事故と相当因果関係のある損害賠償額の上限は、八六万円である。

イ Y2車

【被告Y2の主張】

車両損害(全損) 二〇万〇〇〇〇円

レッカー費用 二万三七〇〇円

買替諸費用 被告Y2は、第二事故により車を買い替えざるを得なくなり、そのため次のとおり、合計三万六三〇〇円の買い替え諸費用を要した。

検査登録手続き代行費用 一万四四〇〇円

車庫証明手続き代行費用 一万〇〇〇〇円

納車費用 六〇〇〇円

新規検査登録手数料 三三〇〇円

車庫証明手数料 二六〇〇円

弁護士費用 二万五〇〇〇円

【被告Y1の主張】

車両損害 認める。

レッカー費用 不知。

買替諸費用 Y2車は平成五年式の車両であり、その費用と本件交通事故との相当因果関係が認められない。

弁護士費用 争う。

ウ B車

【原告あいおいの主張】

車両損害(修理費用) 一四万〇〇〇〇円

レッカー費用 二万七四七五円

保険代位 原告あいおいは、平成一六年一月六日に、保険契約に基づいてB車の所有者に、前記損害の合計額一六万七四七五円を支払い、同額について保険代位した。

弁護士費用 一万六〇〇〇円

【被告Y1の主張】

車両損害 認める。

レッカー費用 認める。

弁護士費用 否認する。

エ Y1車

【原告三井住友海上の主張】

車両損害(修理費) 六九六万六九八〇円

保険代位 原告三井住友海上は、平成一五年一二月一八日に、保険契約に基づいて被告Y1に、前記六九六万六九八〇円を支払い、同額について保険代位した。

弁護士費用 七〇万〇〇〇〇円

【被告山善の主張】

保険代位により損害賠償請求権を代位取得した場合には、支払保険金の範囲内で代位するものであり、弁護士費用部分はその範囲を超えるものであって請求できない。

第三争点に対する判断

一  責任原因及び過失割合について

(1)  証拠(甲一三、乙一、二、丙二)によれば、以下の事実が認められ、これを覆すに足る証拠はない。

本件事故現場は、対向車線とは分離帯で区画された片側二車線(第一車線三・二m、第二車線三・三m)の高速道路で、環状線方面に向かい、海老江出口付近から左カーブとなっているカーブの終わり付近であり、制限速度は時速六〇kmであった。

前提事実記載の第一事故が発生した後、B車ら三台は、別紙図面(乙二の第二事故図面と同じ)のB車、Y2車、A車の順で<4><う>のとおり、第二車線上に停車した。この時点ではB車ら三台はいずれも自走可能であり、B車は第一事故後Y2車に寄せて数m前進している。

本件事故現場の第一車線外側には非常駐車帯が設けられているが、A車は後退しなければその非常駐車帯に待避できる位置ではなかった。

B車ら三台は、別紙図面のとおり停車した際には、各自ハザードランプを点滅させた。また、被告Y2は、携行していた停止表示器材を最後尾のB車の後方約二〇mの第二車線中央分離帯側に設置した。

第一事故後、A、被告Y2、Bは、A車とY2車の間くらいの中央分離帯寄りに集まり、第一事故の処理について話し合い、事故現場を保存するためそのままの状態で、警察の到着を待つことにした。

被告Y2は、午後七時一七分ころ、携帯電話で警察に第一事故について連絡した。

第一事故から第二事故まで約三三分の間、B車ら三台の横を通過する車の通行量は普通以上にあったが、事故は生じなかった。

他方、Y1車は、海老江出口を過ぎた辺りから第二車線を、同車線の先行車との車間距離を約二〇m取りながら、時速約六〇ないし八〇kmで環状線方面に進行した。第一車線は渋滞し、第二車線は第一車線よりも流れていた。

被告Y1は、被告Y2の設置した停止表示器材に気付かず進行し、Y1車の先行車が左に移ったとき、B車の約一〇m前でB車を発見したが、当初は停止していると思わず、その直後にブレーキを掛けながら左にハンドルを切ったが停止しきれず、Y1車は、B車、Y2車、A車に順に衝突して停止した。

(2)  責任原因

以上の認定事実及び前提事実によれば、被告Y1には、前方不注視、車間距離不保持、速度違反の過失が認められ、被告サン工芸印刷(B車)、被告Y2(Y2車)及び被告山善(A車)に対し、それぞれ民法七〇九条の損害賠償責任を負う。

他方、B、被告Y2及びAは、いずれも、B車ら三台が、安全な場所(本件事故現場横の非常駐車帯も含むがこれに限られない。)まで自走可能であるにもかかわらず、漫然と、約三三分間にわたり駐停車禁止(道交法七五条の八第一項(同項の例外に当たらない。))の高速道路上に停車した過失があり、これらが被告Y1の過失と競合して第二事故を招いており、各自民法七〇九条の損害賠償責任を負いかつ、三者が話し合って停車していた状況等から同七一九条一項前段の共同不法行為にあたる。

(3)  過失相殺割合

本件の事案では、第二事故は第一事故から約三三分も後であり、B、被告Y2及びAは第一事故後話し合って停車していたことから、第二事故と第一事故は別の事故というべきで、同人らの第一事故に関する過失の軽重を第二事故の被告Y1との過失相殺割合の考慮に反映させることは相当でないと考えられるので、B、被告Y2及びA側と被告Y1側との過失相殺割合として検討する。

B車ら三台が自走可能であるにもかかわらず漫然と高速道路上の追越車線で停車していたこと(これは、道交法七五条の一一の「故障その他の理由により本線車道等において運転することができなくなつたとき」に当たらない。)の危険性は重大であること、被告Y1の前方不注視の程度は著しいこと(停止表示器材の見落とし、約三三分間は事故が発生していないこと)その他前記の事情を総合的に考慮すると、過失相殺割合は、B、被告Y2及びA側が五〇%、被告Y1側が五〇%と認めるのが相当である。

二  損害及びその額(保険会社関係は保険代位も含む。)について

(1)  A車(甲事件)関係

前記前提事実及び証拠(甲一、五~一一(各枝番号も含む。)、乙三)及び弁論の全趣旨によれば、以下のとおり認められ、これに反する原告富士火災の主張は採用できない。

車両損害(経済的全損) 八六万〇〇〇〇円

代車費用 四万二〇〇〇円

レッカー費用 二万七三〇〇円

損害合計 九二万九三〇〇円

過失相殺(五〇%)後 四六万四六五〇円

保険代位 原告富士火災は、平成一六年一月二三日に、保険契約に基づいてA車の所有者に、前記損害合計額を超える一四一万二九八七円を支払い、前記過失相殺後額四六万四六五〇円について保険代位した。

(2)  Y2車(丙事件)関係

前記前提事実、争いのない事実及び証拠(丁一~三、買い替えの必要性につき乙九)及び弁論の全趣旨によれば、以下のとおり認められ、これに反する被告Y1の主張は採用できない。

車両損害(全損) 二〇万〇〇〇〇円

レッカー費用 二万三七〇〇円

買替諸費用 三万六三〇〇円

検査登録手続き代行費用 一万四四〇〇円

車庫証明手続き代行費用 一万〇〇〇〇円

納車費用 六〇〇〇円

新規検査登録手数料 三三〇〇円

車庫証明手数料 二六〇〇円

損害小計 二六万〇〇〇〇円

過失相殺(五〇%)後 一三万〇〇〇〇円

弁護士費用 一万三〇〇〇円

総計 一四万三〇〇〇円

(3)  B車(丁事件)関係

前記前提事実、争いのない事実及び証拠(丙一)によれば、以下のとおり認められる。保険代位訴訟における弁護士費用については、第二事故と相当因果関係のある損害と認められず、これに反する原告あいおいの主張は採用できない。

車両損害(修理費用) 一四万〇〇〇〇円

レッカー費用 二万七四七五円

損害合計 一六万七四七五円

過失相殺(五〇%)後 八万三七三七円(円未満切捨)

保険代位 原告あいおいは、平成一六年一月六日に、保険契約に基づいてB車の所有者に、前記損害合計額一六万七四七五円を支払い、前記過失相殺後額八万三七三七円について保険代位した。

弁護士費用 〇円

(4)  Y1車(乙事件)関係

前記前提事実及び証拠(乙六、七、一〇)によれば、以下のとおり認められる。保険代位訴訟における弁護士費用については、第二事故と相当因果関係のある損害と認められず、これに反する原告三井住友海上の主張は採用できない。

車両損害(修理費) 六九六万六九八〇円

損害合計 六九六万六九八〇円

過失相殺(五〇%)後 三四八万三四九〇円

保険代位 原告三井住友海上は、平成一五年一二月一八日に、保険契約に基づいて被告Y1に、前記損害合計額六九六万六九八〇円を支払い、前記過失相殺後額三四八万三四九〇円について保険代位した。

弁護士費用 〇円

三  結論

以上によれば、原告らの被告らに対する請求は、主文一項ないし四項の限度で理由がありその余は理由がなく、被告サン工芸印刷が求める仮執行の免脱の宣言については相当でないから付さないこととし、主文のとおり判決する。

(裁判官 池田聡介)

当事者目録<省略>

(別紙) 第2事故

<省略>

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