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大阪地方裁判所 平成16年(ワ)2900号 判決 2007年2月21日

原告

X1

ほか二名

被告

被告補助参加人

東京海上日動火災保険株式会社

主文

一  被告は、原告X1に対し、一億八〇七〇万〇五三六円及びこれに対する平成一三年七月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告X2に対し、三五〇万円及びこれに対する平成一三年七月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告は、原告X3に対し、三五〇万円及びこれに対する平成一三年七月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

五  訴訟費用は、これを二分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。

六  この判決は、第一項ないし第三項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告は、原告X1に対し、四億〇七四四万三八二二円及びこれに対する平成一三年七月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告X2に対し、一〇六六万五七三二円及びこれに対する平成一三年七月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告は、原告X3に対し、一七一五万四八〇一円及びこれに対する平成一三年七月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  本件は、原告X1運転の普通乗用自動車(以下「原告車両」という。)と被告運転の普通乗用自動車(以下「被告車両」という。)が衝突した事故(以下「本件事故」という。)につき、原告X1並びにその父である原告X2及び原告X1の母である原告X3が被告に対し、民法七〇九条に基づき(原告X2及び同X3の固有の慰謝料については、民法七〇九条、七一〇条に基づき)、損害賠償(本件事故日の翌日からの遅延損害金を含む。)を求めた事案である。

二  前提事実(当事者間に争いのない事実、実質的に争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実。証拠によって認定した事実については括弧内に用いた証拠を記した。)

(1)  事故の発生

次の交通事故が発生した(本件事故)。

ア 日時 平成一三年七月一五日午前三時五〇分ころ

イ 場所 大阪市淀川区東三国三丁目一二番一二号先路上(以下「本件事故現場」という。)

ウ 事故車両 (ア) 原告X1が運転し、Aが助手席に同乗していた普通乗用自動車(自動車登録番号<省略>、原告車両)

(イ) 被告が運転し、Bが同乗していた普通乗用自動車(自動車登録番号<省略>、被告車両)

(ウ) Cが運転していた普通貨物自動車(自動車登録番号<省略>、以下「C車両」という。)

エ 事故態様 国道四二三号線(新御堂筋)の南行片側二車線の道路に吹田市内からの上り勾配の一車線道路が合流した後の片側三車線道路(各車線(車両通行帯)を進行方向に向かって左から順に以下「第一車線」「第二車線」「第三車線」とそれぞれいう。)において、第一車線を走行し、第二車線に進路変更した被告車両の右前部と第三車線を走行し、第二車線に進路変更した原告車両の左後部が衝突し、両車両とも南東に向けて逸走し、原告車両は、第一車線東側の導流帯に停止していたC車両の荷台後部に衝突し、その下に潜り込む形で停止し、被告車両は、導流帯の東側の側壁に衝突して停止した。

(2)  原告X1の傷害及び診療経過

ア 原告X1は、本件事故後、搬送された大阪府立千里救命救急センターにおいて、平成一三年八月七日、脳挫傷、急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫、頭蓋底骨折、右鎖骨骨折との診断を受け(甲八)、同月一三日、大阪脳神経外科病院において、重症頭部外傷後遷延性意識障害との診断を受けた(甲九)。

イ 原告X1の本件事故後の入院治療の経過は次のとおりである。

(ア) 大阪府立千里救急救命センター(以下「千里センター」という。)

平成一三年七月一五日から同年八月六日まで(二三日間)

(イ) 大阪脳神経外科病院

平成一三年八月七日から平成一四年一月七日まで(一五四日間)

(ウ) 藤田保健衛生大学病院

平成一四年一月八日から同年六月一八日まで(一六二日間)

(エ) 医療法人赫和会杉石病院(以下「杉石病院」という。)

平成一四年六月一九日から同年一二月二九日まで(一九四日間)

(オ) 藤田保健衛生大学病院

平成一五年六月一〇日から同月二七日まで(一八日間)

(カ) 医療法人明和会辻村外科病院(以下「辻村外科病院」という。)

平成一五年一〇月四日から同月八日まで(五日間)

平成一六年一月一〇日から同月一一日まで(二日間)

ウ 症状固定の診断

原告X1は、平成一四年一二月二七日、杉石病院において、次のとおり、同日症状固定した旨の診断を受けた(甲一〇)。

傷病名:脳挫傷、遷延性意識障害

自覚症状:意識障害、四肢麻痺

他覚症状:脳性の不完全四肢麻痺を認める。四肢腱反射が亢進し、不完全拘縮を認める。CT、MRI上、脳挫傷(脳幹を含む)を認める。

耳介の損:二分の一未満

醜状障害:頭部に外減圧骨欠損及び耳介損傷があり、頸部に気管切開痕がある。

関節機能障害:肩、肘、手、股、膝、足各関節に認められる。

障害内容の見通し:今後、頭蓋骨形成術をはじめ、右耳介、胃ろう痕の形成術を予定している。

エ 後遺障害の等級認定

(ア) 原告X1の後遺障害は、平成一五年三月二〇日、自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)の事前認定手続において、次のとおり認定され、<1>につき平成一三年政令第四一九号による改正前の自賠法施行令別表一級三号(以下、等級は同改正前のもの)に該当するとされた(甲一一)。

<1> 脳挫傷、遷延性意識障害による神経系統の機能または精神の障害については、現在寝たきり状態、常に失禁失便状態にあり、常に他人の介護が必要な状態にあることから「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」として一級三号に該当する。

<2> 耳介の醜状並びに頭部及び頸部の醜状については、医証上、数値等の記載はなく、認定は困難である。

(イ) 以上からすると、原告X1は、本件事故により、前記の後遺障害を負い、その後遺障害等級は、前記のとおりであると認められる。

(3)  各当事者の関係等

ア 原告X2(昭和○年○月○日生)は原告X1(昭和○年○月○日生)の父、原告X3(昭和○年○月○日生)は、原告X1の母である(甲二)。

イ 原告X1は、平成一四年九月二日、名古屋家庭裁判所岡崎支部において、後見開始の審判を受け、原告X2が原告X1の成年後見人として選任された(甲一)。

ウ 被告補助参加人日動火災海上保険株式会社(以下「日動火災」という。)は、被告車両につき、被告との間で自動車保険契約を締結していたものである。同訴訟承継人東京海上日動火災保険株式会社は、平成一六年一〇月一日に東京海上火災保険株式会社(以下「東京海上」という。)が日動火災を合併したものである。日動火災と同訴訟承継人東京海上日動火災保険株式会社を以下まとめて「被告補助参加人」という。

(4)  損害のてん補(争いのないもの)

ア 被告補助参加人は、平成一三年九月二一日、原告X1に対し、任意保険金として、二〇万円を支払った(甲五七)。

イ 東京海上は、平成一五年三月二六日、原告X1に対し、自動車損害賠償責任保険金(以下「自賠責保険金」という。)として、三〇〇〇万円を支払った(甲五八)。

三  争点及び争点についての当事者の主張

(1)  被告の責任及び過失相殺(争点一)

【原告らの主張】

ア 原告車両は、国道四二三号線を北から南に向けて走行し、第三車線から第二車線に進路変更した。その後、被告車両が一般道路から新御堂筋に合流するため、第一車線から第二車線に進路変更したところ、原告車両の左後部と被告車両の右前部が衝突した。原告車両は、被告車両と衝突後、第一車線東側の導流帯に停止していたC車両の後部に衝突した。

イ 被告は、原告車両の動静に十分注意を払い、原告車両の進路変更が終わった後、原告車両との間に一定距離を保ち、減速するなどして、安全に第二車線内に進入を開始することにより、原告車両との衝突を回避すべき注意義務を負っていた。

しかしながら、被告には、本件事故当時、飲酒により判断能力が著しく低下した状態で、原告車両の動静に十分な注意を払わず、安易に進路変更を行った重大な過失があり、民法七〇九条により、本件事故により生じた損害につき賠償する責任を負う。

被告のかかる重過失のため、被告車両は、原告車両の進行を妨げたのであり、原告X1には過失がない。

【被告の主張】

ア 本件事故は、被告車両が第一車線から第二車線へ進路変更したところ、原告車両は、後続していた車両から加速走行をあおられたため、後続車両に自車を追い越させるために第三車線から第二車線へ急激に進入したことにより、被告車両の右前部と原告車両の左後部が衝突した。

原告車両が第二車線に進入する直前、Aが原告X1に対し、進路変更をしても大丈夫であるという趣旨の発言をしたことから、原告X1は、自ら左後方の安全を確認することなく、方向指示器による合図を出さずに第二車線に進入した。

イ 本件事故は、原告車両が突然進路変更をしたことにより発生したものであり、被告には何ら過失がない。本件事故現場周辺において、第一車線は間もなく国道四二三号線から分岐する状況にあったのであるから、第一車線を走行する車両が国道四二三号線の本線に合流するためには、第二車線に進路変更をする必要がある。他方、第三車線を走行する車両としては、本件事故現場周辺においてあえて第二車線に進路変更をする必要はなく、進路変更を行う場合には第一車線から第二車線に進路変更する車両の安全確認をする必要がある。原告X1は、以上のような状況下で、必要とされる安全確認を行わず、合図も出さずに進路変更をしたのであって、被告においてそのような運転がなされることを予見することは不可能である。

仮に被告に過失があるとしても、原告車両は、被告車両と衝突後、導流帯に駐車していたC車両に衝突しており、原告X1の損害と被告の過失との間には相当因果関係がない。

仮に被告に過失があるとしても、原告X1が進路変更をしても大丈夫であるというAの言葉を鵜呑みにして車線変更したことにより、本件事故が発生したのであるから、原告X1につき、一〇〇%に極めて近い過失相殺をすべきである。

また、Aも、本件事故発生に対する寄与度及び過失割合において、相当の負担をすべきであり、合流地点前方の出口地点という最も危険な場所にC車両を違法駐車していたCの寄与度及び過失割合も大きい。

【被告補助参加人の主張】

ア 本件事故は、被告車両が第一車線から第二車線に進路変更を開始し、既に第二車線内に進入していたところ、被告車両の前方の第三車線を走行していた原告車両が第二車線に進入し、被告車両の進行方向を塞いだことから、原告車両の左後方と被告車両の右前方とが接触したものである。

また、原告車両は、被告車両と接触後、C車両と衝突した。

イ 原告X1は、原告車両の進路を変更するに際し、被告車両が第一車線から第二車線に進路変更を開始し、既に第二車線に進入していたのであるから、被告車両の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは進路を変更しない義務及び既に第二車線に進入していた被告車両の動向を確認する義務を負い、本件事故現場は国道四二三号線が一般道路と合流する地点にあるから、合流車両の有無及び動向に慎重に注意し、安全確認をすべき義務を負っていたのに、これらを怠って進路変更をしたものであり、本件事故の全責任は、原告X1にある。

Cは、駐車禁止の規制がなされた、歩道の設置されていない本件道路左側の導流帯にC車両を駐車し、本線上で事故が発生した際に事故車両がC車両に衝突して損傷が拡大することを予見するのは容易であるから、本件事故の発生には、Cの過失も少なからず寄与している。

したがって、本件事故は、原告X1の過失にCの過失が加わって発生したものであり、被告は無過失であるし、仮に被告に過失があるとしても五〇%を上回ることはない。

(2)  損害の発生及び損害額(争点二)

【原告らの主張】

ア 脊髄後索電気刺激療法(以下「DCS療法」という。)の必要性

原告X2らは、藤田保健衛生大学病院において、原告X1について、脳萎縮が進行していないこと、脳血流が少なくないことなどのDCS療法の適応を原告X1が満たしていること、DCS療法を行った場合、原告X1が回復する可能性が十分あることの説明を担当医から受け、同療法を受けさせることとし、その後、DCS療法が実施された。

原告X1は、DCS療法実施後、意識レベルが向上し、経口摂取訓練を開始し、良好な経過をたどった。また、原告X1は、現在、ポータブルスプリングバランサーを使用して食事を手元から口まで運ぶことができるようになり、簡易なコミュニケーションがとれる程度にまでなっており、これもDCS療法の効果である。

したがって、DCS療法実施後の原告X1の意識レベルの改善は、DCS療法の効果であるから、同療法のために要した費用は、本件事故と相当因果関係がある。

イ 原告X1の損害

(ア) 治療関係費用 九八〇万一八〇五円

本件事故による治療関係費用としては、次のとおり、九八〇万一八〇五円が相当である。

a 治療費 九〇一万七七七〇円

b 脊髄刺激装置(以下「DCS装置」という。)費用 七六万八〇七五円

c 人工鼻 一万五九六〇円

なお、被告補助参加人が千里センター及び大阪脳神経外科病院に対して支払ったと主張する治療費合計二一七万九〇〇七円については、請求しない。

(イ) 入院付添費 四二五万六〇〇〇円

原告X3は、本件事故当時、教職についていたが、原告X1の付添看護を行うため、本件事故日以降、休職し、平成一四年三月末日に退職したことから、入院付添費としては日額八〇〇〇円が相当であり、千里センター、大阪脳神経外科病院、藤田保健衛生大学病院及び杉石病院の入院期間合計五三二日間(千里センター入院期間中の一日及び転院日の重複分を除く)の総額は、四二五万六〇〇〇円となる。

(計算式) 8,000×532=4,256,000

(ウ) 将来の介護費用 二億二六三八万八〇八一円

a 平成三五年九月二四日まで 一億四六六七万六七六〇円

(a) 原告X3による介護料 日額一万円

(b) ヘルパーによる介護料 日額九六一〇円

(c) 訪問入浴費用 日額九五〇〇円

(d) 訪問看護費 日額三五〇二円

(e) 電気料金増加分 日額一九三円

(f) 水道料金増加分 日額三五円

(g) ガス料金増加分 日額七〇円

日額の合計三万二九一〇円であり、本件事故日の一年後から二二年後までの総額は、一億四六六七万六七六〇円となる。

(計算式)

32,910×365×(13.1630-0.9523)=146,676,760(円未満四捨五入。以下本項では同じ。)

b 平成三五年九月二五日以降 七九七一万一三二一円

(a) ヘルパーによる介護料 日額二万三一一〇円

(b) 訪問入浴費用 日額九五〇〇円

(c) 訪問看護費 日額三五〇二円

(d) 電気料金増加分 日額一九三円

(e) 水道料金増加分 日額三五円

(f) ガス料金増加分 日額七〇円

日額の合計は三万六四一〇円であり、本件事故日の二二年後から六五年後までの総額は、七九七一万一三二一円となる。

(計算式)

36,410×365×(19.1610-13.1630)=79,711,321

(エ) 入院雑費 八〇万四〇〇〇円

日額一五〇〇円、千里センター、大阪脳神経外科病院、藤田保健衛生大学病院及び杉石病院の入院期間合計五三六日間(転院日の重複分を含む)の総額八〇万四〇〇〇円が相当である。

(計算式)

1,500×536=804,000

(オ) 通院交通費 六〇八〇円

原告X1は、藤田保険衛生大学病院、辻村外科病院の入退院時に交通費として六〇八〇円を支出した。

(カ) 気圧療法士への謝礼 五万七〇〇〇円

(キ) 文書費、通信費 三万八二六八円

(ク) 消耗品費等 一一〇七万九一七四円

a 消耗品費 九九六万九二六三円

原告X1は、紙おむつ、清浄綿、タオル、ティッシュ(水洗用)、消毒液(介助者用)、プラスチックグローブ(介助者用)、薬用洗顔液、薬用シャンプー、薬用ローション、食事用エプロン、吸い飲み等の消耗品が必要となり、その費用は日額一五〇〇円が相当であり、事故日の一年後から六五年後までの総額は、九九六万九二六三円となる。

(計算式)

1,500×365×(19.1610-0.9523)=9,969,263

b 出張理髪料 一一〇万九九一一円

原告X1は、首が座らない状態となり、生涯にわたり訪問理髪による散髪が必要になるから、散髪代を除く出張理髪料としては日額一六七円が相当であり、事故日の一年後から六五年後までの総額は、一一〇万九九一一円となる。

(計算式)

167×365×(19.1610-0.9523)=1,109,911

(ケ) 自動車購入費 一三五万六五五八円

原告X1は、突然発作等を発症し、通院しなければいけなくなる可能性があり、原告X1が乗車できるような特別仕様の施された自動車が必要である。この場合、特別仕様車と通常仕様車の購入差額が本件事故による損害となる。

a 現在使用分(特別仕様代のみ) 三二万四六〇〇円

b 将来購入分(特別仕様代のみ) 一〇三万一九五八円

耐用年数六年、年額五万四一〇〇円、退院時から六三年間の総額。

(計算式)

324,600÷6×19.0750=1,031,958

(コ) 介護器具購入費 一四四六万七八八四円

a 現在使用分 一七九万五五〇五円

原告らは、原告X1の介護のため、別表一のとおりの介護器具を購入したが、<1>ないし<3>、<7>ないし<9>については、碧南市から補助金を受給したから、現在使用分については、一回あたりの購入金額から補助金支給額を控除後の自己負担額を請求することとし、各介護器具の自己負担額は別表一の原告ら主張欄記載のとおりとなる。

b 将来購入分 一二六七万二三七九円

各介護器具の一回あたりの購入価格及び耐用年数は、別表二の原告ら主張欄及び耐用年数欄記載のとおりであり、将来購入分の介護器具購入費については、特に断りのない限り、それぞれにつき一回あたりの購入価格を耐用年数で除して一年あたりの購入価格を求め、これに退院時の平均余命六三年に対応するライプニッツ係数を乗ずることにより算定すると、各介護器具の将来購入分の購入費の合計額は次のとおりとなる。

(a) 介護用特殊ベッド 三七万九五九三円

(b) 特殊マット 四九万〇七〇四円

(c) 車椅子(改造費用を含む) 六二九万六九五八円

一年あたりの購入価格に中間利息控除のための係数一九・七五〇を乗じる。

(d) 背面開放型・端座位保持具(座ろうくん) 三五万二五〇六円

(e) 段差解消リフト(スマートリフト二〇〇) 一一四万四五〇〇円

(f) 段差解消リフト(フラットリフト二〇〇) 一五三万〇三六八円

(g) 上肢運動補助器具(ポータブルスプリングバランサー) 一二四万四九六一円

(h) ベッド備付用リフト、吊下げシート 九八万〇九九九円

(i) 入浴補助器具(シャワーキャリー) 二五万一七九〇円

(サ) 家屋改造費 一八四八万三〇〇三円

原告X1が原告らの自宅で生活するためには、次のとおり、家屋を改造する必要があり、その費用の合計は、一八四八万三〇〇三円となる。

a ミニスロープ設置費用 二二万七九五五円

b その他の家屋改造費 一八二五万五〇四八円

総工事費用一八四五万四五四八円から母屋の台所のオール電化工事費用一九万九五〇〇円を控除した金額。

(シ) 後遺障害逸失利益 八一五七万四九七四円

a 大学卒業まで(アルバイト) 四九万一三八七円

原告X1は、本件事故当時二〇歳であり、大学に在学しながら、アルバイトにより、月額平均四万三〇〇〇円の収入を得ていたから、大学卒業までの基礎収入は月額四万三〇〇〇円とするのが相当であり、大学を卒業するまでの一年間の逸失利益は、四九万一三八七円となる。

(計算式)

43,000×12×0.9523=491,387

b 大学卒業後 八一〇八万三五八七円

原告X1は、地元の名門高校を卒業し、現役でa大学地域文化学科南欧地域文化専攻(ポルトガル語)入学したのであり、将来はポルトガル語の専門的能力を活かして稼働することが予想されたから、大学卒業後の基礎収入は、賃金センサス平成一三年第一巻第一表、産業計・企業規模計・全労働者、全年齢平均賃金である年額五〇二万九五〇〇円とするのが相当であり、大学卒業後から六七歳に達するまでの逸失利益は、八一〇八万三五八七円となる。

(計算式)

5,029,500×(17.9810-1.8594)=81,083,587

(ス) 入院慰謝料 五三六万六六六七円

原告X1は本件事故日である平成一三年七月一五日から平成一四年一二月二九日までの五三三日間入院していたものであるから、傷害慰謝料は、五三六万六六六七円を下らない。

(セ) 後遺障害慰謝料 三〇〇〇万円

原告X1の前記後遺障害に対する慰謝料は、三〇〇〇万円を下らない。

(ソ) 以上合計 四億〇三六七万九四九四円

(タ) 損害のてん補

a 入院雑費、交通費の内金 二〇万円

b 自賠責保険 三〇〇〇万円

以上を控除後の残額は、三億七三四七万九四九六円となる。

なお、原告らは、被告補助参加人が医療機関に対して支払ったと主張する治療費合計二一七万九〇〇七円については、本件訴訟において請求しておらず、本件事故発生につき、原告X1に過失はないから、損益相殺の対象とはならない。

(チ) 弁護士費用 三三九六万四三二八円

(ツ) 総合計 四億〇七四四万三八二二円

ウ 原告X2の損害

(ア) 付添のための通院交通費 四七万八九五六円

(イ) 休業損害 四九万〇五七五円

原告X2は、原告X1の付添看護のため、一五日間休業した。原告X2の平成一四年度の給与所得は七七八万三八七一円であり、同年度の要出勤日数は二三八日であったから、基礎収入は日額三万二七〇五円となる。したがって、原告X2の休業損害は、四九万〇五七五円である。

(計算式)

32,705×15=490,575

(ウ) 固有の慰謝料 八〇〇万円

(エ) 弁護士費用 一六九万六二〇一円

(オ) 総合計 一〇六六万五七三二円

エ 原告X3の損害

(ア) 付添のための通院交通費 四六万五九七〇円

(イ) 休業損害 六一〇万九六六八円

原告X3は、原告X1の付添看護のため、一七三日間休業した。原告X3の平成一二年度の給与所得は九二一万七四一六円であり、同年度の要出勤日数は二六一日であったから、基礎収入は日額三万五三一六円となる。したがって、原告X3の休業損害は、六一〇万九六六八円である。

(計算式)

35,316×173=6,109,668

(ウ) 固有の慰謝料 八〇〇万円

(エ) 弁護士費用 二五七万九一六三円

(オ) 総合計 一七一五万四八〇一円

【被告の主張】

原告らが主張する損害額については、争う。

【被告補助参加人の主張】

ア DCS療法の必要性

DCS療法は、作用機序に不明な点が多く、効果も一定しないことから、国内外いずれにおいても適切な治療方法としてのコンセンサスを得られているとはいい難く、健康保険の対象外とされている。DCS療法については、一部の積極的な医師により、劇的な改善例のみが報告されているにすぎず、他の多くの医師は、かかる治療法を採用していない。

原告X1は、DCS療法を開始した後、嚥下機能が改善されるなど症状が改善したようであるが、これがDCS療法の効果であるという医学的な証拠はない。原告X1のように、若年で、外傷性の脳機能障害の患者については、外傷を受けてから長期間が経過していない場合、DCS療法を行わなかったとしても、自然経過あるいはプラシーボ効果により、症状に一定の改善が見られる可能性がある。

以上より、原告X1の症状に対するDCS療法の必要性、有効性には疑問があり、DCS療法及びDCS療法実施後の治療にかかる損害の発生と本件事故との間には相当因果関係がない。

イ 原告X1の損害

原告らが主張する損害額については、争う。

(ア) 治療関係費用

原告X1が藤田保健衛生大学病院及び杉石病院で受診したDCS療法は、本件事故と相当因果関係を欠くから、これらの病院における治療費、DCS装置費用、人工鼻は、本件事故と相当因果関係がない。

また、被告補助参加人は、原告X1の治療費として、原告ら主張にかかる治療費のほか、次の金員を支払った。

a 千里センター 六一万八一三〇円

b 大阪脳神経外科病院 一五六万〇八七七円

したがって、これらの金額については、損害額に加算の上、過失相殺後に損益相殺されるべきである。

本件事故による治療関係費用としては、次のとおり、九八〇万一八〇五円が相当である。

(イ) 入院付添費

原告X1は、各病院において完全看護を受けており、本件事故後一定期間経過後は、症状が安定していたから、付添の必要性は認められない。

また、付添が必要だったとしても日額五五〇〇円までが相当である。

(ウ) 将来の介護費用

介護料はいずれも長時間の介護を前提としており、高額に過ぎる。

介護費用とは別個に訪問入浴費用を認めるべき必要性はない。

原告X1が、介護の範囲を超えて看護を要するとは認められず、訪問看護の必要性は認められない。また、看護費については健康保険が利用可能であり、これを利用した場合、患者側の負担は三割にとどまる。

電気料金、水道料金、ガス料金が増加したのは、本件事故当時、原告らの自宅で生活していなかった原告X1が原告らの自宅に居住するようになったためである可能性が高く、本件事故と相当因果関係があるかは不明である。

(エ) 入院雑費

日額一三〇〇円が相当であり、平成一四年一月八日以降のDCS療法のための入院治療については、本件事故との相当因果関係を欠く。

(オ) 通院交通費

そもそも、藤田保険衛生大学病院、辻村外科病院への入院の必要性が認められないから、通院交通費も認められない。

(カ) 気圧療法士への謝礼

謝礼は、患者が任意に感謝の意を込めてなすべきものであり、本件事故との相当因果関係を欠く。

(キ) 文書費、通信費

DCS療法に関するものについては、本件事故との相当因果関係を欠く。また、仮処分申請、訴え提起に関する費用、裁判の証拠とするための費用については、いわゆる「訴訟費用」に含まれ、当事者が負担すべきである。

(ク) 消耗品費等

月額四万五〇〇〇円もの消耗品費は極めて高額であり、月額一万五〇〇〇円で十分である。原告らの主張する雑費は、いずれも生活費に含まれるものであるから、逸失利益算定において生活費が控除されない以上、別途損害として計上すべきではない。

また、出張理髪の必要性は認められない。

(ケ) 自動車購入費

緊急時には救急車等を呼ぶことができるから、かかる自動車が必要であるとは認められない。法定耐用年数は、税務上の減価償却費を計算するにあたって用いられる数値であって、実際上の耐用年数を示すものではない。

(コ) 介護器具購入費

法定耐用年数は、税務上の減価償却費を計算するにあたって用いられる数値であって、実際上の耐用年数を示すものではない。また、現在支給されている補助金と同額程度の給付が今後も継続される可能性は極めて高く、場合によっては増額される可能性すらあるから、将来分の購入費を算定するにあたっては、現在と同様の支給があることを前提に補助金相当額を控除すべきである。

(サ) 家屋改造費

本件事故と相当因果関係を有する家屋改造費用は、原告らが主張する金額の一部に制限されるべきである。

原告X1の症状に鑑み、従前和室となっていた部分の段差を解消し、フローリング仕上げにし、従前の洋室を寝室とするためにフローリング仕上げとし、新たに引戸を設置し、車椅子での進入が可能な形状で新たに洋式便器のトイレと座シャワーを設置し、手すりを設置し、外部からの出入りを可能とすべく段差解消リフトを設置することを中心とした工事をすれば十分である。

(シ) 後遺障害逸失利益

基礎収入は、賃金センサスの学歴計全年齢女子平均賃金によるべきである。

(ス) 入院慰謝料

平成一四年一月八日以降の治療は、本件事故との相当因果関係を欠くから、二六〇万円が相当である。

(セ) 後遺障害慰謝料

原告X1の年齢、性別等からすると、原告X2及び原告X3の固有の慰謝料額を含めても一八〇〇万円が相当である。

(ソ) 損害のてん補

次の金員につき、損益相殺をすべきである。

a 被告補助参加人が千里センター及び大阪脳神経外科病院に支払った治療費 二一七万九〇〇七円

b 被告補助参加人が原告X1に支払った任意保険金 二〇万円

c 自賠責保険金 三〇〇〇万円

(タ) 弁護士費用

争う。

ウ 原告X2及び原告X3の損害

(ア) 付添のための通院交通費

付添の必要性は認められない。付添の必要性があったとしても、通院交通費は、近親者の付添看護費に含まれる。

(イ) 休業損害

付添の必要性は認められない。付添の必要性があったとしても、本件では、代替性が認められる以上、休業損害相当額は、損害として認められない。

(ウ) 固有の慰謝料

原告X1の後遺障害慰謝料の項目における被告補助参加人の主張のとおり。

(エ) 弁護士費用

争う。

第三争点に対する判断

一  争点一(被告の責任及び過失相殺)について

(1)  本件事故状況

ア 前記前提事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実は、以下のとおりである。

(ア) 本件事故現場周辺の状況は、別紙図面(乙一三現場見取図)のとおりであり、本件事故現場は、国道四二三号線(新御堂筋)の南行片側二車線に江坂入口からの一車線の側道が東から合流して三車線となった地点の南にあり、本件事故現場の南側において第一車線が東三国出口への一車線の側道に分岐するまでの間は、南行道路は三車線であり、その区間の第一車線東側には導流帯が設けられ、第一車線の幅員は三・六m、第二車線の幅員は三・五m、第三車線の幅員は三・一m、導流帯の幅員は三・四mであった(乙一二、二六)。

また、本件事故現場付近の導流帯内は、道路標識により、終日、駐車が禁止されていた(乙一九)。

(イ) 原告車両は、時速六〇ないし七〇kmで第三車線を走行し、本件事故現場手前付近において第二車線に進路変更しようとした。なお、原告車両が第二車線に進路変更しようとした際、原告車両の助手席に同乗していたAは、原告車両の左後方を十分に確認することなく、原告X1に対し、左後方から接近してくる車がないという意味で「大丈夫」と声を掛け、原告車両は、その後間もなく第二車線に進路変更した(乙二二、四五)。

被告車両は、江坂入口からの側道から新御堂筋に進入し、その後、第一車線を時速六〇ないし七〇kmで走行し、本件事故現場手前付近において第二車線に進路変更しようとした。

両車両が第二車線に進路変更中、被告車両の右前部と原告車両の左後部が衝突し(乙一四)、衝突後、両車両は、原告車両の左側面と被告車両の右側面が接触した状態で南東方向(進行方向に向かって左前方)に向かって逸走し、導流帯に駐車していたC車両後部に原告車両右前部が衝突し、原告車両がC車両の後部荷台下に潜り込む形で停止し、被告車両は、導流帯の東側の側壁に衝突して原告車両の停止位置の北側に停止した(本件事故。乙一二)。

なお、Cは、用便のため、導流帯内にC車両を駐車していた(乙一八)。

(ウ) 本件事故後、本件事故現場付近の路面には、別紙図面のタイヤ痕一ないし四のとおり、タイヤ痕がそれぞれ印象されていた(乙一二、一三)。

(エ) 被告は、本件事故日の前日である平成一三年七月一四日、友人と飲酒し、本件事故後の同月一五日午前四時三〇分(本件事故発生から約四〇分後)の時点で、呼気一リットルにつき〇・二五mgのアルコールを含有する酒気帯び状態であった(乙二三)。

イ 以上のとおり認められ、各タイヤ痕の位置関係からすると、タイヤ痕一及びそれとほぼ平行なタイヤ痕二は同一車両によって、タイヤ痕三及びそれとほぼ平行なタイヤ痕四はタイヤ痕一及びタイヤ痕二を印象した車両とは異なる車両によってそれぞれ印象されたものと考えられ、原告車両及び被告車両が逸走していた間の両車両の位置関係から、タイヤ痕一及びタイヤ痕二は原告車両により、タイヤ痕三及びタイヤ痕四は被告車両により印象されたものであると認められる。そうすると、タイヤ痕一は原告車両の右側車輪によって印象されたものであるということになり、タイヤ痕一の北端(開始点)が第二車線内の中央より若干西側に位置していることからすると、原告車両と被告車両が衝突した後多少の空走時間があった可能性を考慮しても、衝突時において、原告車両は、第三車線から第二車線に進路変更を完了させていたか、ほぼ完了させていたものと認められる。他方、原告車両左後部と被告車両の右前部が衝突したことから、衝突時において、被告車両は、第一車線から第二車線に若干進入していた程度であったと認められる。

なお、被告は、事故態様につき、被告が第一車線から第二車線に進路変更したところ、原告車両が第三車線から第二車線に急激に進路変更した旨主張し、刑事事件における被告及びBの同旨の供述の速記録(乙四六、四七)を提出するほか、原告車両が第二車線に進入後、車線に平行に走行している状態で被告車両が右斜めに追突したのであれば、その後、原告車両と被告車両が左方向に逸走することはあり得ないと主張する。

しかしながら、被告主張のような事故態様であったとすると、その事故状況は、前記のようなタイヤ痕の印象状況と整合しないし、本件事故は被告車両の右前部が原告車両の左後部に衝突したというものであって、原告車両が車線に平行に走行していたとしても、衝突により車体後部が右側に押されて車体が反時計回りに回転したことにより、衝突後、原告車両車体前部が左方向に向かい、タイヤの摩擦により、原告車両と被告車両が左前方に移動していくことは十分考えられるから、被告の主張は採用できない。

(2)  被告の責任

本件事故の状況は以上のとおりであり、被告は、本件事故当時、酒気を帯びていたのであるから、運転を差し控えるべき注意義務を負っていたことはもとより、本件事故当時、第一車線から第二車線に進入しようとしていたのであるから、第二車線を走行している車両の動静を確認しながら進路変更すべき注意義務を負っていたのに、これらを怠ったものであり、民法七〇九条に基づき、本件事故により原告らに生じた損害につき、賠償する責任を負う。

被告は、原告車両が第三車線から第二車線に急激に進路変更してくることを予見し得ず、被告に過失がない旨主張するが、その前提となる事故態様に関する主張が認められないことは前記のとおりである。

また、被告は、被告に過失があったとしても、原告車両が被告車両と衝突後、C車両と衝突したことから、被告の過失と原告X1の損害との間の因果関係は切断され、相当因果関係がないとも主張するが、C車両が導流帯に駐車していたこと自体は異常なことではないし、前記のとおり、原告車両と被告車両は、衝突後、南東方向に逸走したのであり、C車両が駐車していなかったとしても、側壁や他の走行車両に衝突して同様の損害が生じた可能性は高く、原告X1の損害は、被告の注意義務違反の危険性が現実化したものというべきであるから、被告の過失と原告X1の損害との間の因果関係は切断されず、この主張も認められない。

(3)  過失割合

原告X1は、第三車線から第二車線に進入しようとしていたのであるから、原告車両の左後方から接近してくる車両の状況を十分に確認した上で進路変更を行うべき注意義務を負っていたところ、進路変更をしても大丈夫であるという趣旨のAの発言を聞いて間もなく、原告X1は、自らは左後方を十分に確認せずに進路変更を開始し、Aは左後方の状況を十分に確認することなく前記の発言をしたものであり、Aの前記の確認不履行は、原告X1の注意義務違反として評価するのが相当であるから、このことは原告X1の過失相殺事由になると解される。もっとも、前記のとおり、原告車両は、被告車両の前方において、被告車両より先に第二車線への進路変更をほぼ終了させ、かつ、原告車両は被告車両の前方を走行していたのであるから、被告が原告車両の動静を確認することは容易であったといえる。これに本件事故当時、被告が酒気帯びの状態にあったことを考慮するならば、原告X1の過失に比べ、被告の過失の割合は相当に大きいというべきである。

なお、被告補助参加人は、本件事故現場付近の道路の形状からすると、側道(第一車線)から本線(第二車線)に向かって車線変更してくる車両が存在することは容易に予想できるのであり、合流地点の手前や合流終了後の地点において車線変更することが極めて容易であるにもかかわらず、合流地点で車線変更を開始したのは不適切な判断であり、同乗者であるAのアドバイスを軽信して漫然と進路変更を開始した注意義務違反の程度は軽微とはいえない旨主張する。

確かに、本件事故現場付近においては、車線の離合の形態からして、第一車線から第二車線に進入してくる車両が多いものとは考えられるが、そのことは、第三車線から第二車線に進入しようとする車両の運転者に対し、通常の場合と比べ、特に高度の左後方確認義務を課するものであるとまではいえない。したがって、被告補助参加人の前記主張は採用できない。

本件においては、Cが違法にC車両を導流帯に駐車していたことも、損害発生及び拡大に寄与しており、本件事故態様からするならば、被告、原告X1、Cの過失割合を定めた上で過失相殺をするのが相当であるから、Cの過失についても検討する。

Cは、正当な理由がないにもかかわらず、標識により駐車禁止の場所として指定されている導流帯に、C車両を駐車させた過失があり、原告車両とC車両が衝突したことにより原告X1の損害が発生し、また、拡大したものと認められる。もっとも、原告X1の損害発生については、被告の過失が主たる原因となっており、Cの過失は限定的に影響を与えたにとどまるというべきである。

以上の被告、原告X1、Cのそれぞれの過失の内容を考慮するならば、本件事故の発生につき、被告に七五%、原告X1に二〇%、Cに五%の過失があると認めるのが相当である。

二  争点二(損害の発生及び損害額)について

(1)  脊髄後索電気刺激療法の必要性

ア 前記前提事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実は、以下のとおりである。

(ア) DCS療法に関する医学的知見

a DCS療法の定義及び実施方法

脊髄後索電気刺激療法(DCS療法)は、頸髄背側に挿入した電極から電気刺激を加えることにより、脳や末梢脊髄を刺激し、意識の賦活、除痛、筋緊張の緩和を図る治療法であり(丙四)、心臓ペースメーカーを改良した受信機の電極を第三ないし第五頸椎から脊柱管内に入れ、第二ないし第三頸髄背側の硬膜上に挿入することによって行う。電気刺激の制御は、外部の送信機から、受信機のアンテナを介して、指令を発することにより行い、電気刺激を毎日昼間の六ないし一二時間にわたり、持続的に与える(甲九六)。

b D医師らによる調査結果

藤田保健衛生大学病院のD医師らは、平成元年ころから平成一一年ころにかけ、遷延性意識障害患者のうち、三か月以上にわたり臨床症状の改善がなかった者約一三〇名に対し、DCS療法を実施した。DCS治療を受け、三年間の追跡期間を終了した七〇例(男性四八例、女性二二例、年齢二ないし七一歳(平均年齢三二・六歳))中、意識障害治療学会による状態スケール及び反応スケールを用いた判定の結果、臨床症状の改善が認められた例は三一例(全体の四四・三%)であった(著効例一六例、中等度有効例一〇例、軽度有効例五例、無効例三九例。甲九六)。

D医師は、以上の調査結果における有効例と無効例の比較検討を行い、DCS療法の適応が認められる場合について、次のとおり、整理した(甲一二の二、九六)。

(a) 若年者に有効例が多い。

(b) 有効例としては、頭部外傷により植物症となった場合が圧倒的に多く、脳卒中後に植物症となった場合には有効例が極めて少ない。

(c) 植物症となってから三か月経過後、早期にDCS療法を実施した場合に有効例が多いが、三〇か月以上植物症であった場合にも有効例は見られる。

(d) 有効例のCT所見は、脳全体の萎縮が著明でなく、障害領域が広範囲でないことに特徴がある。

(e) 有効例の、DCS療法実施前における局所脳血流は、二〇ml/一〇〇g/分以上であることが多い。

c DCS療法の作用機序

D医師は、DCS療法の作用機序について、未だ完全には解明されていないとしつつ、臨床的、実験的には、脳血流の増加、髄液中カテコールアミン代謝の促進、脳内アセチルコリン含有量の増加がもたらされ、これらがα波の増加及び後頭葉へのシフト並びに徐波の減少をもたらすとしている(甲一二の二、九六)。

(イ) DCS療法実施前後における原告X1の症状の推移

a 原告X1は、本件事故日である平成一三年七月一五日、千里センターに搬送され、集中治療室にて、同日に穿頭血腫除去術、同月一六日に大開頭血腫除去術及び内外減圧術をそれぞれ受け、同月二五日に一般病棟に移り、継続治療のため、同年八月七日、大阪脳神経外科病院に転院し(丙五・一〇枚目、丙六・八三枚目)、同年八月一六日に左V―Pシャント術、同年九月二日にシャント抜去術及び骨片除去術、同年一〇月一〇日に右V―Pシャント術をそれぞれ受け、大阪脳神経外科病院退院時には、自己開眼はするが、追視はなく、従命反応もない状態であり、同病院の担当医師は、原告X2ないし原告X3に対し、今後、大きく改善することはないと思う旨述べた(丙六・三〇枚目)。

b 原告X1は、平成一四年一月八日、藤田保健衛生大学病院に入院した。原告X1は、同年二月一八日、DCS装置埋込手術を受け、同月二二日、DCS療法が開始された。

原告X1は、同年三月、従命反応が良好になり(丙七の一・二七九枚目、丙七の二・八六枚目、一〇六枚目)、しっかり開眼し(丙七の一・二八五枚目)、追視があり(丙七の二・九八枚目)、笑顔が多いとされ(丙七の一・二八一枚目、丙七の二・一二四、一二六枚目)、DCS装置のコードを指に巻き付けるなど、上肢の動きがあり(丙七の二・一〇〇枚目)、同月二二日の昼食から経口摂取の訓練を開始し(丙七の二・一一四)、同月二五日には三品の食事を四口摂取したが(丙七の二・一二〇枚目)、他方、命令に従えるときと従えないときがまばらであったり(丙七の一・二八九枚目)、対光反射が緩慢であったりした(丙七の二・九四枚目)。

原告X1は、同年四月、引き続き従命反応があり(丙七の二・一四八、一七二枚目。以下、本項において何枚目というときは、丙七の二における丁数を指す。)、頻繁に笑顔が見られ(一三六、一六〇、一八〇枚目)、上肢の動きが良いとされ(一三八枚目)、同月九日の昼食からペースト食を摂るようになり(一五二枚目)、嚥下力が向上しているとされ(一六二枚目)、全量摂取することもあり(一八六枚目)、同月二五日、手指を使い、Yes、Noの意思表示ができるとされたが、同月二六日、正確ではないとされ(一八四、一八六枚目)、同月二八日、口でおはようをするしぐさをし(一九〇枚目)、同月二九日、尿意を認めた時には手で一と合図することを決め、同日、その方法によって合図をしたが(一九二枚目)、他方、四肢緊張、拘縮が認められる場合もあった(一九四枚目)。

原告X1は、同年五月、引き続き従命反応が認められ(二〇二、二〇四、二一〇枚目)、昼食を全量摂取し(二三二、二四四、二五二枚目)、問いかけに対し、指の動きにより反応し(二〇八、二二六枚目)、同月二七日、尿失禁を従命反応により伝え(二五二枚目)、同月三一日、看護師がバイバイと言ったときに手を振ったが(二六二枚目)、従命反応ははっきりしないとされたり(二三二枚目)、食欲がないことがあったりした(二〇〇枚目)。

原告X1は、同年六月、命令に従う動作が多いとされ(二七四枚目)、手指や離握手によりコミュニケーションが図れているとされ(二七六、二八六、三〇二枚目)、十分間坐位を保持できることもあり(二七〇枚目)、同月一九日、退院した(三〇四枚目)。

原告X1の状態・反応スケールによるスコアは、平成一四年一月八日は、状態スケール三点、反応スケール一、〇、一、一、〇の合計三点、同年二月一七日は、状態スケール五点、反応スケール二、〇、二、二、一の合計七点、DCS開始一か月後の時点では、状態スケール七点、反応スケール三、〇、四、四、三の合計一四点、同年四月一〇日は、状態スケール八点、反応スケール四、〇、四、四、三の合計一五点、同年六月三〇日は、状態スケール九点、反応スケール四、〇、四、四、三の合計一五点であった(丙七の一・二枚目)。

原告X1のグラスゴーコーマスケールによるスコアは、平成一三年一月八日は二、T、三(痛み刺激により開眼し、異常な屈曲運動をする。丙七の一・一五三枚目)、一月二二日は四、T、五(自発的に開眼し、はらいのける運動をする。丙七の一・一八三枚目)、二月一七日は四、T、四(自発的に開眼し、逃避的屈曲運動をする。丙七の一・二四五枚目)、二月二二日は四、T、五(自発的に開眼し、はらいのける運動をする。丙七の一・二五九枚目)、三月二二日、四月二四日、五月二〇日、六月一八日は四、一、六(自発的に開眼し、言語性反応がなく、命令に従い運動する。一一四、一八二、二三八、三〇二枚目)であった。

イ DCS療法の必要性、相当性

以上のとおり、原告X1は、平成一四年二月二二日にDCS療法を開始後、同年三月以降、従命反応が向上し、部分的に経口摂取が可能となり、上肢の動きが向上し、同年四月下旬には、手指を用いて若干の意思表示ができるようになったものであり、同年六月一九日の藤田保健衛生大学病院退院時までに各方面で症状が改善し、状態・反応スケール及びグラスゴーコーマスケールによるスコアがいずれも向上したことが認められる。

前記のとおり、DCS療法の作用機序は、必ずしも解明されていないものの、原告X1は、若年であること、頭部外傷によって植物状態となったこと、植物状態となってから長期間が経過していないこと等DCS療法実施後に改善が見られた症例に多く見られる条件を満たしており、原告X1に現に前記のような改善が見られたことからすると、DCS療法が原告X1の症状に対し、効果があったと認めるのが相当である。

被告補助参加人は、外傷性の脳機能障害を負った若年の患者については、外傷を受けてから長期間が経過していない場合、DCS療法を行わなかったとしても、自然経過あるいは介護を行う近親者に対するプラシーボ効果により、症状に一定の改善が見られる可能性があると主張し、医師による同旨の意見書(丙四)を提出する。しかしながら、原告X1は、本件事故後、約七か月間の治療を経ても、自己開眼はするが、追視、従命反応がない状態であったのに、DCS治療開始後の約二か月間で簡易な意思表示が可能になったものであり、DCS療法開始前において大阪脳神経外科病院の医師が原告X1の症状につき、大きく改善する見込みはないという見通しを有していたことに照らせば、前記の症状の改善が自然経過によるものであるとは考えにくいし、原告X3や原告X2がDCS療法の効果に期待して原告X1の介護を従前以上に熱心に行うことがあったとしても、そのことが前記のような改善をもたらすと考えることは困難である。

以上より、藤田保健衛生大学病院において実施されたDCS療法は、原告X1の症状に対し、一定の効果を及ぼしたものと認められ、同病院及び杉石病院において行われた治療は原告X1の傷害及び障害の治療として必要かつ相当なものであったというべきであるから、これらに要した費用についての損害の発生は、本件事故との間に相当因果関係があるというべきである。

(2)  損害額

ア 原告X1の損害

(ア) 治療関係費用 一一九八万〇八一二円

原告X1は、本件事故後、平成一六年一月一一日までに、前記前提事実(2)及び第三の二の(1)のとおりの治療を受け、治療費等として次のとおり、合計一一九八万〇八一二円を要した。

a 治療費

(a) 千里センター(丙一二) 六一万八一三〇円

(b) 大阪脳神経外科病院(丙一三の一ないし六) 一五六万〇八七七円

(c) 藤田保健衛生大学病院(甲一五の一ないし一三、一七) 八二五万五一一五円

(d) 杉石病院(甲一六の一ないし一三) 七三万九七五五円

(e) 辻村外科病院(甲一八の一、二) 二万二九〇〇円

b DCS装置費用(甲二〇の一、二) 七六万八〇七五円

c 人工鼻代(甲七〇) 一万五九六〇円

前記のとおり、原告X1の症状固定日は、平成一四年一二月二七日であり、それまでに行われた治療は、DCS療法を含め、必要なものであると認められるから、その間の治療費並びにDCS療法を行うために必要となったDCS装置費用及び人工鼻代は、本件事故と相当因果関係のある損害であると認められる。

また、原告X1は、症状固定後、頭蓋骨形成術を受けるため、平成一五年六月一〇日から同月二七日まで、藤田保健衛生大学病院に入院し、右耳介形成術を受けるため、同年一〇月四日から同月八日まで及び平成一六年一月一〇日から同月一一日まで辻村外科病院に入院したことが認められ、これらの手術は、症状固定時に欠損していた頭蓋骨を形成し、症状固定時に損傷していた耳介を修復する目的でなされたものであって、症状固定の診断書(甲一〇)にもこれらの手術を行う予定である旨の記載があることからすると、これらの手術は必要なものであると認められるから、これらの手術に要した治療費もまた、本件事故と相当因果関係のある損害であると認められる。

なお、原告らは、千里センター及び大阪脳神経外科病院における治療費相当額については請求していないが、被告補助参加人は、これらも本件事故による損害であるとした上でその弁済による損益相殺を主張しているのであって、原告らはこれらについても請求する趣旨であると解するのが合理的である。

以上より、本件事故による治療関係費用としては、合計一一九八万〇八一二円が認められる。

(イ) 入院付添費 三七一万七〇〇〇円

本件事故後、症状固定時に至るまでの原告X1の治療経過は、前記のとおりであり、原告X3は、原告X1が千里センター、大阪脳神経外科病院、藤田保健衛生大学病院及び杉石病院に入院していた間、千里センターにおけるICU入室時以外は、ほぼ毎日、同人に付き添い、原告X2も週末を中心に原告X1に付き添い(甲五九)、両名は、原告X1の手足のマッサージ、リハビリテーション補助、経口摂取の訓練、原告X1を車椅子に載せて屋外に散歩するなどし、原告X2は農協職員として勤務し、原告X3は教職にあったところ、両名とも相当程度の休暇を取得して原告X1の介護にあたっていたことが認められる(原告X2)。

原告X1が入院した各病院は、いずれも完全介護であったと認められるが、前記(1)のような原告X1の症状に照らすと、かかる付添介護は必要なものであったと認められ、原告X1に付き添ったことにより原告X3及び原告X2の仕事にも相当程度影響が出たと考えられることからすると、本件事故後症状固定時までの入院期間(五三一日間)中の入院付添費としては、日額七〇〇〇円を認めるのが相当であるから、その合計金額は、次の計算式のとおり、三七一万七〇〇〇円となる。

(計算式)

7,000×531=3,717,000

(ウ) 将来の介護費用 一億〇九五三万八〇〇八円

a 原告X1の介護状況

(a) 原告X1は、平成一四年一二月二九日、杉石病院を退院し、原告らの自宅において、療養を開始した。自宅療養を開始した当初、原告らの自宅には、原告X2、原告X3、原告X2の母であるE、原告X2及び原告X3の子で原告X1の妹であるF並びに原告X1の五人が居住していたが、平成一七年四月にFが大学に進学したため、現在、四人で居住している(甲七七)。

(b) 原告X1の症状

原告X1は、自宅療養開始後も、意思を伝達したり、自らの意思で体を動かすことはほとんどできなかった。また、原告X1は、平成一七年六月当時、一か月に一回の頻度で痙攣発作を発症し、自らの意思によらず、手足の曲げ伸ばしが起こる状態であった(甲七一)。

(c) 自宅における介護状況

原告X1が自宅療養を開始して以来、原告X3が主たる介護を行い、原告X2がこれを補助していた。標準的な一日の介護状況は次のとおりである(原告X2、甲九四)。

原告X2及び原告X3は、午前五時ころに起床し、原告X2において、原告X2及び原告X3の朝食の用意、洗濯物の片づけなどを行い、原告X3において、原告X1の清拭、おむつ交換をした後、原告X1の食事を用意して食べさせる。

午前七時ころ、原告X2が出勤した後は、原告X3において、原告X1の指に手を添えなから一〇〇マス計算をさせ、字や絵を書かせ、ベッド上で手足の運動をさせる等のリハビリテーションを行う。

午前九時ころ、職業介護人が来た後、訪問入浴サービスがない日には、原告X3及びヘルパーが原告X1にシャワーを浴びさせ、原告X3が昼食を用意した後、原告X1に昼食を食べさせる。

午後には、再度、原告X1に絵を描かせる等のリハビリテーションを行い、原告X3において、原告X1に夕食を食べさせる。

午後八時ころ、原告X2が帰宅した後、原告X3及び原告X2において、原告X1に立位や坐位をとらせたり、ボールの上で跳躍させるなどのリハビリテーションを約一時間半にわたって行い、午後一〇時ころ、三人とも同室内で就寝する。

以上のほか、治療行為として、午前七時から午後四時までDCS療法を行い、毎食後に投薬をし、一ないし二か月に一回の頻度で藤田保健衛生大学病院に通院し、一週間に二回の頻度で鍼灸治療を受け、一週間に一回の頻度で杉浦クリニックの医師による訪問診療を受け、一週間に三回の頻度で看護師による訪問看護を受けている(甲七一)。

(d) 職業介護人の使用状況、利用する場合に要する費用

原告X1は、平成一八年四月及び五月当時、祝祭日を除き、月曜日から土曜日まで職業介護人による介護を受け、火曜日、水曜日、金曜日は午前九時から午前一〇時まで及び午前一一時三〇分から午後一時まで、月曜日は正午から午後一時まで、木曜日は午前一一時三〇分から午後一時まで、職業介護人による身体介護を受け、介護報酬として、同年四月は一九万六四〇〇円中一万九六四〇円を、五月は一九万七八〇〇円中一万九七八〇円をそれぞれ負担した(甲九七の一、二)。

身体障害者福祉法に基づく指定居宅支援等に要する費用の額の算定に関する基準(平成一五年厚生労働省告示第二七号)は、日常生活支援が中心である場合の身体障害者居宅介護支援費の基準額として、所要時間一時間三〇分以上の場合、三三一〇円に、所要時間一時間三〇分から計算して所要時間三〇分を増すごとに九〇〇円を加算した額による旨を定めている(別表身体障害者居宅生活支援費額算定表通則一二。甲二七)。

原告らは、平成一五年五月から平成一八年五月までの間、愛知県碧南市から、別表四のとおり、訪問介護に対する補助金として合計五八二万六三〇〇円、訪問看護に対する補助金として合計三八八万七四五〇円をそれぞれ受給した(甲二九、九七の一、二、弁論の全趣旨)。

b 将来の介護費用

原告X1に対する在宅介護の内容は以上のとおりであり、原告X1は、意思疎通や自らの意思に基づく動作がほとんどできない状態であるから、食事、入浴、排泄等の日常生活の各場面で全面的な介助を要し、定期的に痙攣発作を起こしていることから、原告X1の様子を一定間隔で監視する必要があると考えられ、これらのことからすると、原告X1の症状は、常時の介護を要するものと認められる。

そして、現在行われている介護内容は、基本的に相当なものであるというべきであり、これらの介護の内容及び程度並びに原告X3及び原告X2の負担の大きさ、特に原告X3については、原告X1の介護のため、平成一四年三月に教職を辞したこと等の諸事情を総合して考慮するならば、将来介護費としては、自宅介護開始時から原告X3が六七歳に達するまでは日額一万五〇〇〇円を認めるのが相当であり、原告X3が六七歳に達して以降原告X1の平均余命までは、原告X3による介護は困難となるから職業介護人による介護を前提として日額一万八〇〇〇円を認めるのが相当である。

また、原告らは、前記のとおり、現在、一週間に三回、一回あたり一時間程度の頻度で看護師による訪問看護を受けており、平成一五年二月には、一二回の訪問看護に対し、訪問看護療養費として一〇万五〇五〇円を支払ったこと(甲二六)、看護師において、原告X1の健康状態を確認し、リハビリテーションを行い、介護計画や原告X3の悩みに関する相談にのるなどしていることがそれぞれ認められる(甲二六)。しかしながら、原告X1は、現在、一か月半に一回の頻度で藤田保健衛生大学病院に通院し、一週間に一回の頻度で杉浦クリニックによる訪問診療を受けており(甲七一)、このことからすると、前記のような頻度で訪問看護を受ける必要性があるとまでは認められず、訪問看護料としては、月額一万五〇〇〇円の限度で相当と認める。

なお、原告らは、前記のような介護料に加え、<1>専門家による訪問入浴費用、<2>冷暖房器具を頻繁に使用するようになったことに伴う電気料金増加分、<3>頻繁に衣類を交換するようになり洗濯物が増加したこと及び訪問入浴サービスを使用するようになったことに伴う水道料金増加分、<4>原告X1の身体を清拭するための温水が必要になったことに伴うガス料金増加分も本件事故による損害である旨主張する。

しかしながら、<1>については、原告らの自宅には、現在、便所に併設されたシャワールーム(座シャワー)があり(甲九一)、便所に連れて行くのと同様の状況で原告X1の身体を洗浄することが可能であるから、専門家による訪問入浴サービスを定期的に使用する必要があるとは認められず、前記の介護料の限度を超える訪問入浴サービス費用は損害としては認められない。<2>ないし<4>については、原告X1が自宅療養を開始した平成一四年一二月二九日以降、原告らの自宅における電気料金、水道料金、ガス料金がある程度増加したことが認められるが(甲三〇ないし三四)、これらの費用は前記の介護費用に含まれていると解するべきであるから、前記の介護料の限度を超える独立の損害としては認められない。

以上より、自宅療養開始日(本件事故日の約一年後)から原告X3が六七歳に達する日(本件事故日の二二年後)までの介護費用は、次の計算式のとおり、六六八五万三五八二円、原告X3が六七歳に達する日から原告X1の平均余命(本件事故日の六五年後)までの介護費用は、次の計算式のとおり、三九四〇万六八六〇円、自宅療養開始日から原告X1の平均余命までの訪問看護料は、次の計算式のとおり、三二七万七五六六円となり、これらの合計は、一億〇九五三万八〇〇八円となる。

(計算式)

15,000×365×(13.1630-0.9523)=66,853,582

18,000×365×(19.1610-13.1630)=39,406,860

15,000×12×(19.1610-0.9523)=3,277,566

(エ) 入院雑費 六九万〇三〇〇円

原告X1の症状固定時以前の入院期間(合計五三一日)の入院雑費としては、日額一三〇〇円を認めるのが相当であり、合計金額は、次の計算式のとおり、六九万〇三〇〇円となる。

(計算式)

1,300×531=690,300

(オ) 通院交通費 六〇八〇円

原告X1は、平成一五年六月一〇日から平成一六年一月一一日までの間、藤田保健衛生大学病院、辻村外科病院の各入退院時に交通費として合計六〇八〇円を支出した(甲三五)。これらは、症状固定後の治療に伴い生じた交通費であるが、前記(ア)のとおり、同期間に行われた治療は、必要かつ相当なものであるというべきであるから、そのための交通費もまた必要かつ相当な損害であると認められる。

(カ) 気圧療法士への謝礼 〇円

原告X1は、平成一三年八月から平成一四年一月の間、気圧療法士による施術を受け、気圧療法士への謝礼として五万七〇〇〇円を支払った(甲三六)。しかしながら、謝礼は、施術を受ける上で必須のものとはいえないから、本件事故と相当因果関係がある損害とは認められない。

(キ) 文書費、通信費 二万七八〇五円

原告らは、平成一三年八月一四日から平成一五年一二月二五日までの間、文書料、通信費用、治療器具購入の振込手数料、仮処分申立に要した費用、成年後見開始審判申立に要した費用、本件訴訟の証拠とするための写真代などとして、合計三万八二六八円を支出した(甲三六)。このうち、文書料、通信費用、治療器具購入の振込手数料、成年後見開始審判申立に要した費用については、本件事故と相当因果関係がある損害として認められるが、仮処分申立に要した郵券代は別個の手続によって回収すべきであるし、仮処分申立に要した戸籍謄本、住民票及び身分証明書並びに本件訴訟の証拠とするための写真代については、後記の弁護士費用に含めて評価するのが相当であるから、前記費用のうち、二万七八〇五円の限度で相当因果関係が認められる。

(ク) 消耗品費等 五三一万六九四〇円

原告X1は、本件事故により遷延性意識障害を負ったため、紙おむつ等の消耗品を購入することが必要となり、また、首が座らなくなったため、訪問理髪による散髪が必要となった。原告らは、購入が必要となった消耗品の品目として紙おむつ、清浄綿、タオル、ティッシュ(水洗用)、消毒液(介助者用)、プラスチックグローブ(介助者用)、薬用洗顔液、薬用シャンプー、薬用ローション、食事用エプロン、吸い飲みを挙げ、消耗品費としては合計日額一五〇〇円を下らないと主張するが、薬用洗顔液、薬用シャンプー、薬用ローションなどは、原告X1が本件事故に遭わなくても必要になったと考えられるから、本件事故による損害とは認められず、消耗品費及び出張理髪料としては、日額合計八〇〇円をもって相当と認め、自宅介護開始時(本件事故日の一年後)から原告X1の平均余命(本件事故日の六五年後)までの総額は、五三一万六九四〇円となる。

(計算式)

800×365×(19.1610-0.9523)=5,316,940

(ケ) 自動車購入費 九七万四三八四円

原告X2は、平成一四年八月二八日、車椅子用固定装置及び車椅子用収納装置を装備した特別仕様の乗用自動車を購入し、二八六万三〇〇〇円を支出した(甲三七、三八の一)。特別仕様を施さない場合の同車の購入費用は、二五三万八四〇〇円であり(甲三八の二)、特別仕様部分相当額は、三二万四六〇〇円となる。また、耐用年数は八年とするのが相当である。

前記のとおり、原告X1は、自宅療養開始後も一か月半に一度の頻度で藤田保健衛生大学病院に通院するなどして自動車を使用していること、車椅子に乗りながら公共交通機関を使用するには困難を伴うと考えられることからすると、前記特別仕様部分相当額の購入費は必要かつ相当な損害と認められる。

自宅療養開始時における原告X1の平均余命は六四年間であるから、初回購入後八回の交換を要することになり、特別仕様部分相当額の購入費用は、次の計算式とおり、合計九七万四三八四円となる。

(計算式)

324,600×(1+0.6768+0.4581+0.3100+0.2098+0.1420+0.0961+0.0650+0.0440)=324,600×3.0018=974,384

(コ) 介護器具購入費 七六〇万五一一三円

証拠(甲三九ないし五〇、八三ないし八九、九八ないし一〇七)によれば、別表二記載の各介護器具の購入価格は、<7>及び<8>を除き、原告ら主張のとおりであり、<7>及び<8>については別表二認定欄記載のとおりであり、各介護器具の耐用年数については別表二認定欄記載のとおりであると認められる。前記(ウ)a認定のとおりの原告X1の現在の症状、介護状況に照らせば、各備品の購入費としては、別表二認定欄記載の金額をもって相当と認められる。

なお、<3>の車椅子については、初回購入時と同等のものを改造する方法によった方が新品を購入する場合より安価に同等の効果を得ることができるから(甲四四、一〇二、一〇三)、その方法によるべきであり、<5>、<6>の段差解消リフトは、スペースが相当限られている場所に設置する場合でない限り、スロープ型の段差解消器具を用いる方が安価に目的を達成することができるから、駐車場への移動用のもの(<6>フラットリフト二〇〇)のみ相当性が認められ、庭への移動用のもの(<5>スマートリフト二〇〇)については、別表認定額欄の限度で相当性が認められる。

そうすると、一回あたりの購入費は、耐用年数一〇年(初回購入後六回交換)のものについては一三万二〇〇〇円、耐用年数八年(初回購入後八回交換)のものについては一五万九二〇〇円、耐用年数七年(初回購入後九回交換)のものについては一〇三万二九一三円、耐用年数五年(初回購入後一二回交換)のものについては九一万七六一五円となるから、将来の介護に伴う介護備品購入費の合計は、次の計算式のとおり、八三二万一三三六円となる。そして、原告らは、請求にかかる介護器具のうち、現在使用しているものを購入した際に、別表三のとおり、愛知県碧南市から補助金として合計七一万六二二三円を受給しているから(甲四〇、四二、四四、八五、八九、一〇〇)、この補助金額を控除した後の介護器具購入費は、七六〇万五一一三円となる。

なお、被告補助参加人は、将来分の購入費についても公的扶助を受けられることを前提に算定すべきであると主張するが、原告らが将来にわたり確実に同様の扶助を受けられると認めるに足りる証拠はないから、将来分の購入費についてこれを考慮するのは相当ではない。

(計算式)

132,000×(1+0.6139+0.3768+0.2313+0.1420+0.0872+0.0535)=132,000×2.5047=330,620

159,200×(1+0.6768+0.4581+0.3100+0.2098+0.1420+0.0961+0.0650+0.0440)=159,200×3.0018=477,886

1,032,913×(1+0.7106+0.5050+0.3589+0.2550+0.1812+0.1288+0.0915+0.0650+0.0462)=1,032,913×3.3422=3,452,201

917,615×(1+0.7835+0.6139+0.4810+0.3768+0.2953+0.2313+0.1812+0.1420+0.1112+0.0872+0.0683+0.0535)=917,615×4.4252=4,060,629

(サ) 家屋改造費 五七二万七九五五円

原告らの居宅は、昭和五七年に築造された木造二階建の住宅であり(甲七一)、本件事故当時、一階部分は、道路側から順に、車庫、六畳の和室、一五畳の洋室、台所となっていた(甲五三)。

前記のとおり、原告X1は、平成一四年一二月二九日、杉石病院を退院し、自宅療養を開始した。

原告らの自宅は、和室と廊下との間など各部屋の境界に段差があり、原告X1を車椅子に乗せたまま移動するのに支障を来したことから、原告X2は、各部屋の境界にミニスロープを設置し、二二万七九五五円を支出した(甲五一の一ないし四、甲五二の一、二)。

また、原告X2は、原告らの居宅において原告X1の介護を行う場合、現状では次の<1>ないし<8>の各点で不都合が生じることを理由に自宅のリフォーム工事を行い、自宅改装工事費用として一七八五万円(甲七八、八〇の二)、洋室の天吊りカーテン工事費用として七万九五四八円(甲八〇の三)、台所にIHクッキングヒーターを設置するための工事費用として一九万九五〇〇円(甲八〇の四)、ベランダテラスの上屋根設置工事費用として三二万五五〇〇円(甲八〇の四)をそれぞれ支出した。

<1>原告X1は、前記一五畳の洋室で生活しているが、廊下の幅員が十分でなく、外出先から帰宅した時などに、車椅子に乗ったまま、車庫から同室まで行くことが出来ないことから、和室をなくし、通路を設ける必要がある。<2>原告X2及び原告X3は、原告X1の状況を監視するため、原告X1の居室で就寝する必要があり、他方、原告X1の介護のためのスペースを確保する必要もあるから、原告X2及び原告X3用の折りたたみベッドを収納し、原告X1用の介護用品、衣類、消耗品類等を収納するための収納室が必要であり、原告X1の居室の近くに場所を確保する観点からすると、台所を他の場所に移設する必要がある。<3>原告X3が台所で作業を行っている間も、適宜、原告X1を看守する必要があることから、キッチンの位置を変更する必要がある。<4>原告X1がベッド上でおむつを交換し、ポータブルトイレを使用し、入浴するため、ベッドの周囲に目隠しのためのカーテンを設置する必要がある。<5>原告X1の介護に伴い、タオル等を洗濯する頻度が増加し、天候に関わりなく洗濯物を干すためのスペースを確保するため、ベランダのテラスに上屋根を取り付ける必要がある。<6>原告X1は体温調節ができないため、居室の床に床暖房を設置する必要がある。<7>原告X1をベッドから車椅子に乗せるための移動用リフトを設置する必要がある。<8>地震が起きた時に原告X1が自力で脱出することは困難であるから、自宅に耐震補強を施す必要がある。

以上のうち、ミニスロープの設置費用は、必要かつ相当な損害として認められる。また、家屋改装工事費用は、<1>、<7>については、原告X1の介護を円滑に行う上で必要なものと認められるが、<2>については、既存のスペースを活用して、衣類等を収納することも可能であり、<3>については、前記のとおり、ある程度の間隔で原告X1を監視する必要性は認められるものの、常時の監視を要する状態であるとは認められず、<4>については、全て屋内で行われることであり、目隠しは不要と考えられ、<5>については、庭や屋内に洗濯物を干すことで一定程度対応することが可能であり、<6>については、原告X1は大半をベッドで過ごすことからすると、他の安価な暖房器具と比較して床暖房が有効であるとは考えられず、床の上でリハビリテーションを行う場合であっても、他の安価な暖房器具を利用することで対応可能であると考えられ、<8>については、耐震補強の必要性は、大地震が発生する可能性がある地域内の耐震構造に不備がある建物については一般的にその必要性があると認められ、原告X1が本件事故により自力脱出が困難な状態になったことは確かであるとしても、耐震補強の必要性が本件事故によって生じたとまではいえない。以上のことからすると、原告X1の介護を行う上で、前記の工事の全てが必要であったとは認められず、また、同居する原告X2、原告X3及びEにおいても改築された住宅の効用を部分的に享受し得る結果となる部分もあることを考慮すると、総工事費用の約三割に相当する五五〇万円の限度で必要かつ相当な損害と認めるのが相当である。

以上より、家屋改造費等としては、合計五七二万七九五五円が相当である。

(シ) 後遺障害逸失利益 七三五一万五〇三二円

原告X1は、本件事故当時、a大学地域文化学科南欧地域文化専攻(ポルトガル語)三年に在学し、アルバイトにより月額四万三〇〇〇円の収入を得ていたことが認められ(甲三〇)、本件事故に遭わなければ、大学卒業時までアルバイトを継続し、同程度の収入を得た上で、平成一五年三月に同大学を卒業し、その後は、賃金センサス平成一三年第一巻第一表、産業計・企業規模計・女性労働者、大卒、全年齢平均賃金である年収四五三万一〇〇〇円を得ていた蓋然性が高かったと認められる。

以上より、症状固定時(本件事故の一年後)から大学卒業時(本件事故の二年後)までの基礎収入は月額四万三〇〇〇円、大学卒業時から原告X1が六七歳に達するまで(本件事故の四七年後)の基礎収入は四五三万一〇〇〇円、労働能力喪失率はそれぞれ一〇〇%とするのが相当であり、後遺障害逸失利益は、次の計算式のとおり、七三五一万五〇三二円となる。

(計算式)

43,000×12×(1.8594-0.9523)=468,063

4,531,000×(17.9810-1.8594)=73,046,969

なお、原告らは、原告X1が将来ポルトガル語の専門的能力を活用して稼働することが予想されていたとして、基礎収入として賃金センサス平成一三年第一巻第一表、産業計・企業規模計・全労働者平均賃金である年収五〇二万九五〇〇円を用いるべきであると主張するが、原告X1が前記大学においてポルトガル語を専攻していたことのみから、同人が語学力を活用した専門職に就く蓋然性が高かったとまではいえず、原告X1が前記の収入を得られた蓋然性が高いと認めることはできない。

(ス) 入院慰謝料 四〇〇万円

原告X1は、本件事故により、前記のように重篤な傷害を負い、本件事故日から症状固定日までの五三一日間入院したこと等諸般の事情を考慮すると、本件事故による傷害慰謝料としては四〇〇万円を認めることが相当である。

(セ) 後遺障害慰謝料 二七〇〇万円

前記のような原告X1の後遺障害の内容及び程度、後記のとおり、本件では、原告X2及び原告X3に近親者固有の慰謝料が認められること等、本件に現れた一切の事情を斟酌すると、本件事故による後遺障害慰謝料としては二七〇〇万円を認めることが相当である。

(ソ) 過失相殺

以上の合計は二億五〇〇九万九四二九円であるが、前記のとおり、原告X1につき二割の過失相殺をすることが相当であるから、過失相殺後の残額は、次のとおり、二億〇〇〇七万九五四三円となる。

(計算式)

250,099,429×(1-0.2)=200,079,543

(タ) 損害のてん補

前記前提事実(4)のとおり、被告補助参加人は、原告X1に対し、任意保険金として二〇万円、自賠責保険金として三〇〇〇万円を支払った。

また、被告補助参加人は、原告X1の治療費として、千里センターに対し、六一万八一三〇円(丙一二)、大阪脳神経外科病院に対し、一五六万〇八七七円(丙一三の一ないし六)をそれぞれ支払った。

これらは、損害のてん補の対象になるというべきであり、これらの金額を控除後の損害額は、一億六七七〇万〇五三六円となる。

(チ) 弁護士費用 一三〇〇万円

本件の事案の性質、複雑さ、認容額、請求額等を考慮すると、原告X1の請求に関する弁護士費用としては、一三〇〇万円を認めるのが相当である。

(ツ) 総合計 一億八〇七〇万〇五三六円

以上の合計は、一億八〇七〇万〇五三六円となる。

イ 原告X2及び原告X3の損害

(ア) 付添のための通院交通費 〇円

原告X2及び原告X3は、原告X1の付添看護のため、交通費としてそれぞれ、四七万八九五六円、四六万五九七〇円を支出したことが認められるが(甲五九、六六)、これらの損害は、付添看護費に含まれると解するのが相当であるから、この点にかかる請求は認められない。

(イ) 休業損害 〇円

原告X2は、原告X1の付添看護のために一五日間休業したとし、休業損害として四九万〇五七五円を請求し、原告X3は、同様に一七三日間休業したとし、休業損害として六一〇万九六六八円を請求する。

しかし、これらの損害については、前記のとおり、付添看護費の算定において考慮したものであるから、別の損害として請求することは認められない。

(ウ) 固有の慰謝料 各四〇〇万円

原告X2及び原告X3において、原告X1が前記認定の後遺障害を負ったことによる精神的苦痛は重大であると考えられ、今後原告X1の介護に当たっていくこと等、諸般の事情を考慮するならば、その固有の慰謝料としては、それぞれ四〇〇万円を認めるのが相当である。

(エ) 過失相殺

前記のとおり、原告X1につき二割の過失相殺をすることが相当であるから、過失相殺後の損害額は、それぞれ三二〇万円となる。

(オ) 弁護士費用 各三〇万円

本件の事案の性質、複雑さ、認容額等を考慮すると、原告X2及び原告X3の請求に関する弁護士費用としては、それぞれ三〇万円を認めるのが相当である。

(カ) 総合計 各三五〇万円

以上の合計は、それぞれ三五〇万円となる。

三  結論

以上によれば、原告X1の被告に対する請求は、一億八〇七〇万〇五三六円及びこれに対する本件事故日の翌日である平成一三年七月一六日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、原告X2及び同X3の被告に対する各請求は、各三五〇万円及びこれに対する本件事故日の翌日である平成一三年七月一六日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度でそれぞれ理由があるからこれらを認容し、その余は理由がないからいずれも棄却することとし、よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 古谷恭一郎 植田智彦 高橋祐喜)

交通事故現場の概況(3) 現場見取図

<省略>

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