大阪地方裁判所 平成17年(ワ)6097号 判決 2006年7月27日
原告
X1
原告
X2(旧姓「F」)
上記2名訴訟代理人弁護士
重村達郎
同
橋本俊和
被告
東光パッケージ株式会社
同代表者代表取締役
G
同訴訟代理人弁護士
和田徹
主文
1 (原告X1)
(1) 被告は,原告X1に対し,69万8166円及び,うち7304円に対する平成16年10月1日から,うち18万9300円に対する平成17年1月1日から,うち18万3312円に対する平成17年7月1日から,うち31万8250円に対する平成18年1月1日から,各支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
(2) 被告は,原告X1に対し,50万円及びこれに対する平成17年7月2日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2 (原告X2)
(1) 被告は,原告X2に対し,57万6310円及び,うち7304円に対する平成16年10月1日から,うち15万5700円に対する平成17年1月1日から,うち15万1056円に対する平成17年7月1日から,うち26万2250円に対する平成18年1月1日から,各支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
(2) 被告は,原告X2に対し,80万円及びこれに対する平成17年7月2日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,原告らに生じた費用のうち2分の1及び被告に生じた費用のうち2分の1を原告らの負担とし,その余の費用をいずれも被告の負担とする。
5 この判決は,1,2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1 原告ら
(1) 被告は,原告X1に対し,100万4209円及びこれに対する平成16年10月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
(2) 被告は,原告X1に対し,平成16年12月から本判決確定に至るまで毎年12月31日限り53万0040円,毎年4月30日限り10万0960円,毎年6月30日限り43万2820円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
(3) 被告は,原告X1に対し,100万円及びこれに対する平成17年7月2日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
(4) 被告は,原告X2に対し,77万8825円及びこれに対する平成16年10月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
(5) 被告は,原告X2に対し,平成16年12月から本判決確定に至るまで毎年12月31日限り43万5960円,毎年4月30日限り8万3040円,毎年6月30日限り35万6660円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
(6) 被告は,原告X2に対し,200万円及びこれに対する平成17年7月2日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
(7) 被告は,原告らに対し,別紙1記載のとおりの謝罪文を,別紙2記載のとおりの条件で掲示せよ。
(8) 訴訟費用は被告の負担とする。
(9) (1)から(6)につき仮執行宣言
2 被告
(1) 原告らの請求をいずれも棄却する。
(2) 訴訟費用は,原告らの負担とする。
第2事案の概要
1 前提となる事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)
(1) 当事者
ア 被告
被告は,各種印刷等を目的とする会社であり,従業員40名ほどの規模を有する。
イ 被告デザイン室
被告には,デザイン室があり,常時2名程度のデザイナーが所属していたが,平成11年5月ころ,1名となっていたデザイナーのAが退職し,空席となったデザイナーを募集していた。
ウ 原告ら
原告X1は,京都のメーカーでデザイナーとして働いていたが,被告からの勧誘を受け,平成11年8月17日に被告に入社した。
原告X2は,原告X1の推薦を受け,原告X1より一足先の平成11年7月26日に被告に入社した。
なお,原告両名は,平成15年6月,結婚した。
(2) 原告らに対する退職勧奨,解雇通告
ア 第1次退職勧奨
H社長(当時)は,平成15年3月15日,原告X2に対し,退職を勧奨した。
イ 平成16年に入ると,G専務(当時)は,原告X2に対し,パートタイム勤務への異動を求めるようになった。
ウ 第2次退職勧奨
被告は,平成16年5月25日ころ,原告らに対し,デザイン室を閉鎖するとともに,原告らに対し退職勧奨した(原告らは,解雇通告であると主張する。)。
エ 組合への加入と団体交渉
原告らは,平成16年5月31日,管理職ユニオン・関西(以下「ユニオン」という。)に加入し,被告に対し,団体交渉を申し入れ,同年6月7日,第1回団体交渉が行われ,その後も団体交渉がもたれたが,原告らとユニオンの方針が異なったことから,原告らは,平成16年9月5日,ユニオンを脱退した。
オ 原告らの休職
原告らは,ユニオンの指導もあって,平成16年7月1日以降,団体交渉期間中,自宅待機をすることとなり,その後,引き続き休職状態となった(休職中の条件についての合意の有無については,争いがある。)。
カ 本件解雇
被告は,原告らに対し,平成16年9月21日,同月25日をもって解雇する旨通知し(以下「本件解雇」という。),原告X1に対する解雇予告手当34万5200円,退職金50万0400円,原告X2に対する解雇予告手当23万5400円,退職金43万1340円が一方的に振り込まれた。
(3) 仮処分命令と異議手続における和解
原告らは,本件解雇を受け,被告を債務者として,大阪地方裁判所に対し,雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定め,賃金の仮払を求めて,仮処分の申立てをし,同裁判所は,平成17年5月12日,原告らの申立てを一部認め,被告に対し,賃金の一部の仮払を命じた。
被告は,上記仮処分命令を不服として,異議を申し立てたが,平成17年8月22日,審尋期日において,原告らが,雇用契約上の地位にあることを確認するとともに,デザイナーとして,紛争発生当時の原状に復帰することや,原告らに対し,未払賃金(賞与と平成16年8月分の給与を除く。)を支払うことを内容とする和解が成立した。
(4) デザイン室への復帰
原告らは,平成17年9月1日,被告デザイン室に復帰した。
原告らは,平成17年12月賞与の支給を受けたが,平成17年8月末日まで就労していなかったことを理由に,約85%の減額がなされていた。
2 原告らの請求
(1) 原告X1は,被告に対し,
ア 未払賞与及び未払賃金
(ア) 平成15年6月から平成16年6月までの賞与が次のとおり,不当に減額されたとして,
平成15年6月賞与分 20万0140円
平成15年12月賞与分 15万1420円
平成16年4月賞与分 5万0480円
平成16年6月賞与分 24万6436円
(差額合計64万8476円)
(イ) 平成16年8月分の給与35万5733円が未払であるとして,
(ウ) 上記(ア),(イ)の合計100万4209円及びこれに対する遅延損害金(平成16年10月1日から支払済みまで年6%)の支払を
イ 平成16年12月分以降の賞与
平成16年12月分以降,毎年,次のとおりの賞与を受給する権利を有するとして,毎年
4月賞与 10万0960円(支払期日 4月30日)
6月賞与 43万2820円(支払期日 6月30日)
12月賞与 53万0040円(支払期日 12月31日)
及びこれらに対する遅延損害金(各支払期日から支払済みまで年6%)の支払を
ウ 慰謝料
被告代表者(当時)による執拗な結婚退職強要等に対する慰謝料として100万円及びこれに対する遅延損害金(訴状送達翌日から支払済みまで年5%)の支払を
求めている。
(2) 原告X2は,被告に対し,
ア 未払賞与及び未払賃金
(ア) 平成15年6月から平成16年6月までの賞与が次のとおり,不当に減額されたとして,
平成15年6月賞与分 16万4300円
平成15年12月賞与分 12万4540円
平成16年4月賞与分 4万1520円
平成16年6月賞与分 20万2532円
(差額合計53万2892円)
(イ) 平成16年8月分の給与24万5933円が未払であるとして,
(ウ) 上記(ア),(イ)の合計77万8825円及びこれに対する遅延損害金(平成16年10月1日から支払済みまで年6%)の支払を
イ 平成16年12月分以降の賞与
平成16年12月分以降,毎年,次のとおりの賞与を受給する権利を有するとして,毎年
4月賞与 8万3040円(支払期日 4月30日)
6月賞与 35万6660円(支払期日 6月30日)
12月賞与 43万5960円(支払期日 12月31日)
及びこれらに対する遅延損害金(各支払期日から支払済みまで年6%)の支払を
ウ 慰謝料
被告代表者(当時)による執拗な結婚退職強要等に対する慰謝料として200万円及びこれに対する遅延損害金(訴状送達翌日から支払済みまで年5%)の支払を
(3) 原告両名は,被告代表者(当時)らによる行為により,原告らのデザイナーとしての名誉が侵害されたとして,その回復す(ママ)るため,別紙1記載のとおりの謝罪文を,別紙2記載のとおりの条件で掲示することを
それぞれ求めている。
3 争点
(1) 未払賞与(平成16年6月賞与までの)請求権
(2) 平成16年8月分給与請求権
(3) 平成16年12月以降の賞与請求権
(4) 不法行為の成否(慰謝料)
(5) 謝罪文の要否
第3争点に関する当事者の主張(略)
第4当裁判所の判断
1 紛争を巡る経緯
前提となる事実,証拠(<証拠・人証略>)及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。
(1) 当事者
ア 前提となる事実(1)のとおりである。
イ 原告X1は,平成9年10月まで,企画デザインを業とするa社のチーフデザイナーとして勤務していたが,その間,同社が被告に印刷工程を発注しており,被告担当者との面識を有するようになった。
原告X1は,a社を退社するにあたり,被告からデザイナーとしての就職を勧誘されたが,断り,京都のb株式会社のデザイン室に就職した。
被告は,平成11年5月ころ,デザイン室のデザイナーが退職し,空席となったデザイナーを募集する必要が生じ,原告X1に転職を勧誘し,原告X1はこれに応じることとした。
ウ 原告X2は,菓子パッケージのメーカーである株式会社cのデザイン室に勤務しており,被告担当者との間でも面識があった。その後,広告代理店である株式会社dの制作室で勤務していた。
エ 被告のデザイン室では,常時2名程度のデザイナーが所属していたため,もう1名採用することとなり,原告X1の推薦により,原告X2が,平成11年7月26日,一足先に面接の上即日採用され,引き続き,原告X1も,同年8月17日,面接を受けた上即日採用された。
(2) 原告らと同僚従業員とのトラブル
ア 入社当初の2年間
原告らが入社した当初の約2年間は,原告らと同僚従業員との間にトラブルはなく,従業員仲間のリクレーション行事に参加したり,同僚からの私的なデザイン依頼にも応じたりするなど,関係はむしろ良好であった。
また,被告における評価も,特に悪いという評価はなされていなかった。
イ 営業社員との対立
平成13年6月ころ,原告らと被告営業社員であるB(以下「B」という。)との間で,原告らの仕事内容について,意見が対立し,Bが,原告X2の作成した試作品を投げつけるという事件が起きた。
この件については,C次長が間に入って,Bが謝罪し,一旦収まったが,その後,Bと原告らとの関係がぎくしゃくするようになり,原告らは,平成13年秋,再び,C次長に相談をした。
しかし,事態は改善されることなく,Bは,原告らの所属するデザイン室へ発注せず,外注するようになり,平成14年2月以降は,Bからデザイン室への発注は無くなった。
ウ デザインの外注問題
平成14年3月,外部発注費用の増加が被告社内で問題視されるようになり,被告営業部において,C営業部次長の同席の上,複数回会議がもたれ,Bが,試作品を投げつけたことを始めとする経緯について改めて謝罪し,極力外注を避けることの確認がなされた。
エ しかし,その後も,Bは外注を続け,次第に,原告らと周囲の同僚従業員との関係が悪化していった。
(3) 原告X2に対する退職勧奨等(第1次退職勧奨)
ア 平成15年3月15日,H社長(当時)は,原告X2に対し,会社の業績悪化を理由として退職を勧奨した。
イ その後,原告X2の退職勧奨を巡り会議が開かれ,G専務(当時),D部長,C次長,E課長,原告X1,同X2が出席した。会議の後,デザイン室において,デザイン室としても売上を増やす工夫をし,営業活動もすることなどをまとめた企画書を作成し,提出した。
企画書のうち上記内容については,半年間試みることとなったが,原告X2の退職問題については,保留のまま推移することとなった。
(4) 原告らの結婚
一方,原告両名は,結婚することになり,平成15年2月,C次長らに報告した。
平成15年4月には,H社長(当時)やG専務(当時)にも報告し,一応の祝意を受けることはできたが,前記(3)の後であったことから,原告X1が,Gに対し,この時期にまずいかと尋ねたところ,Gは,よくはないと答えた(被告代表者G本人13頁以下)。
原告らは,平成15年6月6日に結婚式を挙げ,婚姻した。
(5) その後の原告X2の退職を巡るやりとり
ア 定期昇給の不実施
被告では,毎年5月に定期昇給が実施されていたが,原告らに対する平成15年5月末の定期昇給はなかった。
イ 原告X1の疾病
原告X1は,平成15年12月23日,急性腸炎と診断され,4日間勤務を休んだ。
ウ パートタイム勤務への交替要求
平成16年に至って,Gは,原告X2に対して,パートタイム勤務に替わるよう求めるようになった。
エ 平成16年4月8日の話し合い
原告らは,平成16年4月8日,デザイン室ショールームにおいて,Hに対し,定期昇給の不実施や原告X2に対するパートタイム勤務への交替要求について抗議したが,話し合いは平行線のままであった。
オ 原告X2の受診
原告X2は,平成16年4月14日,eクリニックにおいて診察を受け,抑うつ状態と診断された(<証拠略>)。
カ 書面(平成16年5月12日付)による抗議
原告X2は,平成16年5月12日付の通知書により,平成15年3月以降,結婚を理由とする退職勧奨が続いているとし,これに関連してなされたHの発言によって精神的苦痛を受け,うつ病に罹患したとして,被告に対し,発言の撤回,謝罪と治療費の支払いを求めた(<証拠略>)。
キ 平成16年5月15日の休日会議(退職強要)
平成16年5月15日(土曜日で休日),臨時の会議が開かれ,H,D営業部長,原告両名が出席の上,Hが原告らに対し,営業社員が原告らを必要としていないなどと述べた。
(6) デザイン室の閉鎖及び退職勧奨(第2次退職勧奨)
ア 退職勧奨
被告は,平成16年5月24日,原告らに対し,デザイン室を閉鎖するとともに,原告らに対し,同年6月25日付をもって退職するよう,強く求めた。,
上記要求は,デザイン室を閉鎖したこともあって,極めて強い,確定的なものであり,H社長(当時)は,「解雇要請」という表現を使用し,また,1か月の猶予期間を置くとも述べていることから,原告らは,解雇通告と受け取った。
そして,原告らが解雇理由について文書で示すよう求めると,被告は,平成16年5月25日付の退職勧奨通知書(<証拠略>)を交付した(同通知書には,退職の期限は記載されていなかった。)。
イ デザイン室への発注中止
被告デザイン室を閉鎖したということから,被告営業社員は,デザイン室への発注をしなくなった。
(7) ユニオンへの加入,交渉,本件解雇
ア 原告らは,平成16年5月31日,ユニオンに加入し,被告に対し,団体交渉を申し入れ(<証拠略>),同年6月7日,第1回団体交渉が行われ,その後,数回にわたり,団体交渉が行われた(<証拠略>)。
イ 交渉の経緯
交渉期間中,Hは,デザイン室の閉鎖を理由に,原告らの私物を引き上げるよう要求した。
ユニオンの提案により,被告からの私物引き上げ要求などからくるトラブルを避けるため,原告らは,平成16年7月1日から自宅待機をすることとなった。
平成16年7月6日,第2回団体交渉が行われ,ユニオンは原告らの退職を前提とした金銭解決に向けた交渉を進め,同年7月15日,第3回団体交渉において,原告両名で合計300万円の解決金の提示をした。
しかし,平成16年7月21日,被告は上記300万円の提示を拒否する回答をした。
一方,原告らは,同日,デザイン室から私物を引き上げ,それ以降,デザイン室への出入りができない状態となった。
原告らは,ユニオンの方針と異なる意向を有していたため,改めて意向を再確認した上,原告らの意向を受けた本件組合は,平成16年8月5日,大阪地方労働委員会に対して,あっせんを申し立てた(<証拠略>)。
ウ ユニオンからの脱退
あっせんの過程で,ユニオンは,原告らに対し,再度金銭解決を勧めた。原告らは,ユニオンの方針に合わせることができないと考え,平成16年9月5日,ユニオンを脱退し(<証拠略>),ユニオンは,上記あっせんを取り下げた。
その結果,あっせんは不調におわり,被告は,引き続き,原告らを無給の休職扱いとした。
エ 本件解雇
被告は,原告らに対し,平成16年9月25日をもって解雇する旨の通知書(同月21日付)を送付し(<証拠略>),原告X1に対する解雇予告手当34万5200円,退職金50万0400円,原告X2に対する解雇予告手当23万5400円,退職金43万1340円が一方的に振り込まれた。
オ 原告らの受診
このような中,原告両名は,平成16年6月25日,f病院において診察を受け,いずれも適応障害と診断された。
(8) 原告らの給与,賞与
原告らの休職が続いていたため,被告は,平成16年8月分を含む,休職中の給与を支払わなかった。
被告は,平成15年6月以降,平成16年6月まで,賞与が支給されていたが,その支給額は,別紙3「未払賞与」の各「実際に支給された賞与」欄記載のとおりであった。
(9) 仮処分命令と本訴提起,異議手続における和解
原告らは,本件解雇を受け,被告を債務者として,大阪地方裁判所に対し,雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定め,平成16年10月から本案第1審(本件訴訟)判決言渡まで,原告X1については月額35万3533円の,原告X2については月額24万3733円の仮払を求めて,仮処分の申立てをした。
大阪地方裁判所は,平成17年5月12日,原告らの申立てを一部認め,被告に対し,平成17年5月から,本案第1審(本件訴訟)判決言渡まで,原告X1については月額25万円の,原告X2については月額15万円の仮払を命じた。
原告らは,平成17年6月24日,本訴を提起した。
一方,被告は,上記仮処分命令を不服として,異議を申し立てたが,平成17年8月22日,審尋期日において,次の内容の和解が成立した。その結果,本訴提起により請求されたうち,和解によって解決した請求部分は取り下げられた。
ア 原告らが,雇用契約上の地位にあることの確認
イ 原告らのデザイナーとして,紛争発生当時の原状に復帰する。
ウ 被告は,原告らに対し,未払賃金(賞与と平成16年8月分の給与を除く。)を支払う。
(10) デザイン室への復帰
原告らは,平成17年9月1日,被告デザイン室に復帰した。
原告らは,平成17年12月賞与の支給を受けたが,平成17年8月末日まで就労していなかったことを理由に,約85%の減額がなされていた。
2 未払賞与(平成16年6月賞与までの)請求権
(1) 前記1(8)のとおり,原告らは,平成15年6月以降も賞与の支給を受けてきたが,その実績は,別紙3「未払賞与」のとおりであり,平成13年の支給実績と比較すると,相当程度減額となっていることが認められる。
原告らは,上記減額は理由のないものであり,平成13年の査定実績による計算との差額が支給されるべきであると主張する。
しかし,被告においては,給与規定が定められており(<証拠略>),同規定32条によると,賞与の支給条件は当該期間における社員の勤務成績,出勤率,貢献度を査定の上決定すると定められているところ,上記査定は,本来被告の裁量に委ねられており,同裁量に濫用の認められない限り,減額支給が違法であるとはいえない。
(2) そこで,各期の賞与について,個別に検討することとする。
ア 平成15年6月賞与
証拠(<証拠略>)によると,時給制による従業員を除く30名中,基本給に対する乗率は,ほぼ例外なく1.5であるが,その上に減額割合がされている従業員が9名おり(0.8:6名,0.6:2名,0.3:1名),原告らは,0.6の減額割合であったことが認められる。
以上によると,原告らだけが,低い査定を受けたとも言い難く,また,その査定に関する裁量に濫用があったと認めるに足りる証拠もない。
たしかに,平成13年度の支給実績(原告X1:41万8860円/<証拠略>,原告X2:35万0700円/<証拠略>)と比較すると,相当程度減額されているが,平成14年度の支給実績(原告X1:33万8780円/<証拠略>,原告X2:28万2852円/<証拠略>)と比較すると,突然,大幅な減額がされたわけではないといえる。
イ 平成15年12月賞与
証拠(<証拠略>)によると,時給制による従業員を除く31名中,基本給に対する乗率は,1.0ないし1.8であるが,その内訳は1.0が5名,1.5が2名(原告ら),1.6が1名,1.8が23名であったこと,さらに1/2,2/3,0.89の減額割合がされている従業員が6名いたことが認められる(原告らに対しては減額割合はされていない。)。
以上によると,原告らだけが,低い査定を受けたとは言い難く,また,その査定に関する裁量に濫用があったと認めるに足りる証拠もない。
平成13年度の支給実績(原告X1:52万2180円/<証拠略>,原告X2:43万1100円/<証拠略>)との比較についても,平成14年度の支給実績(原告X1:44万7900円/<証拠略>,原告X2:36万7260円/<証拠略>)と比較すると,突然,大幅な減額がされたわけではないといえる。
ウ 平成16年4月賞与
証拠(<証拠略>)によると,時給制による従業員を除く29名中,基本給に対する乗率は,1/10(5名),1/5(3名,原告らを含む。),3/10(5名),7/20(8名),2/5(6名),1/2(1名),3/5(1名)であったことが認められる。
以上によると,原告らだけが,ことさらに低い査定を受けたとは言い難く,また,その査定に関する裁量に濫用があったと認めるに足りる証拠もない。
エ 平成16年6月賞与
証拠(<証拠略>)によると,時給制による従業員を除く28名中,基本給に対する乗率は,5名(1.0)を除き1.2であり(原告らも1.2であるが,その上に減額されている従業員が13名おり(0.9:5名,0.8:3名,0.7:3名,0.6:2名),原告らは,0.6の減額割合であったことが認められる。
以上によると,原告らだけが,低い査定を受けたとも言い難く,また,その査定に関する裁量に濫用があったと認めるに足りる証拠もない。
(3) まとめ(定期昇給分についての差額)
以上のとおり,平成15年6月賞与から平成16年6月賞与までの間,原告らに対する査定において,裁量の濫用を認めることはできない。
もっとも,賞与は,基本給を基準に算定することが定められているところ(前記(2)参照),被告給与規定によると,基本給については,定期昇給中自動昇給分については,成績の如何に関わらず昇給が認められており,原告らの場合は,毎期2200円であったが(被告給与規定25条,12条,13条/<証拠略>),上記賞与の算定に際して,原告らの基本給について,定期昇給(自動昇給)の処理がなされておらず,これによる差額(いずれも7304円)の限度で未払賞与があることについて当事者間に争いがない。
〔計算式〕2,200×(0.9+1.5+0.2+0.72)=7,304(前記(2)参照)
3 平成16年8月分給与請求権
原告らに対し,平成16年8月分の給与の支給がなされていないことは当事者間に争いがない(前記1(9)参照)。
一方,前記1(7)のとおり,原告らは,平成16年7月1日から,本件解雇日である同年9月25日までの間,自宅待機に引き続き,休職したことが認められる。
証拠(<証拠略>)及び弁論の全趣旨によると,ユニオンから,被告に対して,大阪地方労働委員会のあっせん手続において紛争解決を図るとともに,その間,原告らの無給休職を認める旨の合意書(<証拠略>)の作成を要求したが,原告らが反対したため,作成に至らなかった。
また,原告らの意向とユニオンの方針が合わず,最後には,原告らは,ユニオンを脱退するに至っている(前記1(7)ウ)。
しかし,原告らが合意書の作成に反対したのは,無給休職に反対したことが理由であったか否かは不明である(むしろ,前記1(7)の経緯によると,原告らは,ユニオンが,退職を前提とした交渉を進めたことに不満を有しており,合意書中「退職を前提として退職金等の金額について交渉した」と記載されている点について,同意できなかったことが窺われる。)。
また,原告らが,ユニオンを脱退するまでは,被告との団体交渉の権限をユニオンに授権していたことには変わりない。原告らがユニオンを脱退した直後,休職を中止した形跡も窺えない。
そうすると,上記の合意書(<証拠略>)の作成には至らなかったものの,原告らと被告との間で,紛争解決までの間,無給休職についての合意があったと認めるのが相当である(無給休職は,結局,本件解雇の通告をもって,平成16年9月25日をもって終了したこととなる。)。
以上によると,原告らは,平成16年8月分の給与請求権を有していないというべきである。
4 平成16年12月以降の賞与請求権
(1) 平成16年12月以降,本件口頭弁論終結時までに支給されるべき賞与について
ア 解雇が無効である場合の賞与請求権
原告らが,平成16年12月以降の賞与について請求するところ,被告は,原告らは,平成16年7月始めから平成17年8月末まで勤務していないためゼロ査定とせざるを得ないと主張する。
たしかに,平成16年7月初めから,本件解雇時である平成16年9月25日までは,前記3のとおり,合意の上で無給休職であったのであるから,その期間を算定期間とする賞与請求権は発生しないと解するのが相当である。
しかし,本件解雇時である平成16年9月25日から復職するまでの平成17年8月末までの期間については,原告らは,本件解雇を理由に勤務することができなかったのであり,本件解雇が無効である場合は,その間,勤務することにより得られた給与だけでなく,賞与についても,勤務することにより得られたと認められる限度で,その請求権を有すると解するべきである。
本件では,後記5のとおり,本件解雇は無効であると解すべきであるから,平成16年9月26日から平成17年8月末日までを算定期間とする賞与について,原告らに支給されるべきであると考える。
そこで,次に,支給されるべき賞与の金額について検討することとする。
イ 平成16年12月賞与
被告の給与規定によると,12月賞与の算定期間は,4月から9月までであり,算定期間における勤務日数が2か月未満の場合は支給しないが,算定期間における勤務日数が2か月以上の場合は,月割計算(15日未満切捨)により支給することとなっている(<証拠略>)。
原告らは,平成16年7月1日から同年9月25日までは,自宅待機に引き続き,休職していたので,平成16年4月から同年6月までを算定期間とする賞与が支給されるべきであったといえる。
原告らは,賞与算定について,平成13年の査定実績を基準にすべきであると主張するが,平成14年,平成15年と査定実績は低くなっていることを考慮すると,最も平成16年に近く,かつ最も低い平成15年の査定実績に従って算定するのが相当である。また,基礎となる基本給については,平成14年度の基本給に定期昇給(自動昇給分)を加算したものとする。
これによると,平成16年12月賞与として支給されるべき金額は,原告X1については18万9300円,原告X2については15万5700円となる。
〔計算式〕
原告X1:(248,000+4,400)×1.5×1/2=189,300
原告X2:(203,200+4,400)×1.5×1/2=155,700
(4,400は定期昇給の自動昇給分である。)
ウ 平成17年4月賞与について
弁論の全趣旨によると,平成17年4月賞与については,全従業員に支給されなかったことが認められ,原告らに対して支給されるべき賞与はない。
エ 平成17年6月賞与について
6月賞与の算定期間は前年10月から当年3月までであるところ,平成17年6月賞与の算定期間中,原告らは,本件解雇により勤務することができなかった(前記1(7),(9))。したがって,解雇がなければ支給されたであろう賞与を算定すべきところ,前記イと同様の方法で算定すると(平成16年6月賞与の実績に準じて算定することとなる。),同期の賞与として支給されるべき金額は,原告X1については18万3312円,原告X2については15万1056円となる。
〔計算式〕
原告X1:(248,000+6,600)×0.72=183,312
原告X2:(203,200+6,600)×0.72=151,056
オ 平成17年12月賞与について
証拠(原告X1本人)によると,原告らは,平成17年12月賞与の支給を受けているが,85%を減額されたことが窺える。上記の減額は,同期賞与の算定期間が平成17年4月から同年9月までであるところ,原告らは,同年9月しか勤務しなかったことを理由とするものと推測される。しかし,前記アで述べたとおり,算定期間の残り5か月間の勤務ができなかったのは,本件解雇によるものである。したがって,解雇がなければ支給されたであろう賞与を算定すべきところ,前記イと同様の方法で算定すると,同期の賞与として支給されるべき金額は,原告X1については31万8250円,原告X2については26万2250円となる。
〔計算式〕
原告X1:(248,000+6,600)×1.5×5/6=318,250
原告X2:(203,200+6,600)×1.5×5/6=262,250
(2) 本件口頭弁論終結時後に支給されるべき賞与について
原告らは,被告が低い査定でしか賞与を支給しないとして,将来の賞与を含め,平成13年度の査定実績に基づく賞与を請求するものである。
しかし,平成18年4月賞与の履行期は平成18年4月30日であり,(<証拠略>)それ以降の賞与を含め,いずれも,本件口頭弁論終結時(平成18年4月28日)において履行期は到来していない。これら履行期の到来していない賞与は,その査定もなされていないのであるから,未だ具体的な権利が確定しているとはいえず,仮に,原告らの要求する賞与について争いが予想されるとしても,その請求はいずれも理由がないというべきである(もっとも,原告らの上記請求が棄却されても,本件口頭弁論終結後,改めて査定がなされ,賞与が支給された時点で,査定内容を争い,差額を請求することはできるものと解する。)。
5 不法行為の成否(慰謝料)
(1) 第1次退職勧奨の相当性(退職勧奨の理由,退職強要の有無)
前記1(3)のとおり,被告は,平成15年3月15日,H社長(当時)は,原告X2に対し,会社の業績悪化を理由として退職勧奨したことが認められる。
原告らは,上記退職勧奨について,結婚を理由とした退職強要であると主張し,被告は,その理由について,デザイン業務が大幅な赤字であり,被告全体の業績が不調であったためであり,原告らの結婚は無関係であると主張する。
たしかに,原告らが,Hに対し,結婚することを直接報告したのは第1次退職勧奨のあった後の,平成15年4月であった(前記1(4))。しかし,原告らは,平成15年2月には,C次長らに結婚することを報告しており,その情報がHらに入っていたことは十分推測することができる。また,後記(2),(3)で述べる事情も併せ考えると,デザイン室の合理化だけが,第1次退職勧奨の理由であったとは考えにくく,原告らの結婚もその1つの理由であったことは否定できないと考える。
しかし,前記1(2)の経緯や証拠(<証拠略>)を総合すると,被告において,デザイン室の経費や運営そのものについての問題意識を有しており,第1次退職勧奨の理由のひとつであったことは否定できない(だからといって,後記の本件解雇が許容されるか否かとの判断とは,要求される程度が異なるというべきである。)(ママ)
そして,その当時の勧奨の態様や,その後の経緯をみると,原告らが主張するように,退職強要があったとまではいえない。
そうすると,仮に,第1次退職勧奨の隠れた理由の1つとして原告らの結婚が存したとしても,他に,デザイン室の合理化の必要があり,これを理由として,上記の退職勧奨を行ったことが,直ちに不法行為を構成するとまではいえない。
また,原告らは,その後,営業活動をさせられたことをもって,被告の不法行為であると主張するが,上記のとおり,デザイン室の合理化の必要があり,その説明に対し,デザイン室の方から企画書を作成,提出した経緯に照らすと,上記の営業活動に至ったことをもって,直ちに不法行為を構成するとまではいえない。
(2) 第2次退職勧奨(デザイン室閉鎖を含む。)の相当性
前記1(6)のとおり,被告は,平成16年5月24日,原告らに対し,デザイン室を閉鎖するとともに,同年6月25日付をもって退職するよう強く求めたことが認められる(第2次退職勧奨)。
第2次退職勧奨は,上記のとおりのとおり(ママ),デザイン室の閉鎖を宣言し,しかも,その後,営業からデザイン室への発注を停止するというものであり,単に,退職を勧奨を(ママ)したというものではなく,原告らの仕事を取り上げてしまうものである。解雇するというのであればともかく,勧奨といいながら,デザイン室を閉鎖し,しかも,他への配転を検討することもなく,退職を勧奨することは,退職の強要ともいうべき行為であり,その手段自体が著しく不相当というべきである。
また,前記1(5),(6)の経緯,証拠(<証拠略>)によると,Hにおいて,このような強硬な退職勧奨を行わせたのは,原告X2が,Hに対し,治療費と謝罪を要求する内容の通知書(<証拠略>)を送付したことに,激高したことが理由であると推認される。
上記事情に加え,後記(3)のとおり,デザイン室の閉鎖の必要があったとまでは言えなかったことを総合すると,第2次退職勧奨の違法性は明らかである。第2次退職勧奨により,原告らが精神的な苦痛を受けたことは容易に推認することができ,また,その程度は軽いものであったとはいえず,不法行為を構成するというべきである。
(3) 本件解雇の違法性
ア 被告は,本件解雇の理由として,原告らのデザイン業務が大幅な赤字であったこと,被告全体の業績が不調であったこと,原告らが協調性に乏しく,営業担当者らとの確執を招き,大幅な赤字を度外視してまで自社でデザイナーを雇用してデザイン業務を行う利点が認められなかったこと,及びデザイン業務を外注することによりコスト削減を図れることが確実であったことであると主張する。
イ デザイン室閉鎖の必要性
被告は,原告らの前任デザイナーが退職した際に,デザイン室の閉鎖を検討することなく,原告X1を勧誘し,デザイナーとして期間の定めのない雇用契約を締結している(前記1(1))。
また,原告らを採用する前後において,急激な受注の減少など,デザイン室を閉鎖しなければならないような客観的な状況の変化が存したことを認めるに足りる証拠はない。
さらに,そもそも,デザイン室は独立採算部門であったわけではなく,顧客からの受注業務を担当する営業担当者との連携,協力により,円滑,迅速に,より良質のデザインを提供する等の有形無形のメリット,及びこのようなメリットを顧客に対してアピールすることに存在意義を認め,期待していたことが窺える(<証拠略>)。
そうすると,仮に,デザイン室の収支が赤字になったとしても,直ちにデザイン室を閉鎖し,原告らを解雇する必要性があったとは認められない。
ウ 解雇回避努力
被告は,営業社員がデザインの外注をすることを放置し,デザイン室における営業努力についても,原告らに任せきりにするなど,デザイン室の存続に向けた努力をしたと認めるに足りる証拠はない。
エ 手続の相当性
前記イで述べたとおり,直ちにデザイン室を閉鎖する必要はなかったと認められるところ,前記1(6)(7)のとおり,被告は,第2次退職勧奨においていきなりデザイン室の閉鎖を通告し,それに引き続いて本件解雇に至ったものである。第2次退職勧奨と本件解雇との間には,交渉の機会はあったものの,既にデザイン室の閉鎖の方針を打ち出した後であり,その存続の可能性を前提とした検討がなされた形跡は窺えない。
たしかに,第1次退職勧奨の際には,原告らとの間で,デザイン室における赤字の問題が提起され,これについて協議がされたことが認められるが(前記1(4),(5)),このときは,デザイン室の閉鎖までは前提となっておらず,原告X2の退職だけが問題とされたのであり,デザイン室閉鎖,原告両名の解雇を前提とした協議がなされたとはいえない。
オ 以上によると,本件解雇は無効といわなくてはならない。
そして,H社長(当時)は,原告らが結婚し,同じデザイン室において勤務することについて,当初から,嫌悪していたことが窺われ(証人H23,29頁),そのことが,第1次退職勧奨,第2次退職勧奨,本件解雇の原因,遠因となっていたということができる。
このような経緯でなされた本件解雇自体違法であり,原告らがこれにより精神的苦痛を受けたことは容易に推認することができる。
(4) 原告らの疾病
なお,原告らが,前記1(5)イ,オ,(7)オのとおりの診断を受けたことが認められ,他に疾病の原因の見あたらない以上,上記(2)などの不法行為に起因することは否定できないが,必ずしも,その程度は明らかとはいえず,また,相当因果関係のある治療費の額は不明であり,上記のとおりの診断を受けたという限度において,慰謝料額の算定の事情として考慮する。
(5) まとめ(慰謝料額)
以上を総合すると,当時の被告代表者であったHの前記(2),(3)の行為は,いずれも違法というべきであり,これらにより,原告らが精神的苦痛を受けたことが認められる。また,この間,Hから原告らに対し,原告らが結婚後も同じデザイン室に勤務することに対する嫌悪感に基づき,原告らを誹謗する言動が度々あったことが認められ(原告X1本人,原告X2本人),これらによっても,同様の精神的苦痛を受けたことが認められる。
被告は,原告らに対し,上記精神的苦痛に対する慰謝料を支払うべき義務があり(民法44条,709条),その慰謝料の額としては,前記(2)ないし(4)の事情に,前記1に述べた事情等を総合すると,原告X1において50万円,原告X2において80万円が相当である。
6 謝罪文の要否
前記5によると,原告らは,H社長(当時)の行った第2次退職勧奨やこれに続く本件解雇により,精神的苦痛を受けたことが認められ,その際,被告の中における名誉や信用を一定程度毀損したというべきである。
しかし,上記1,5から窺える毀損の程度を考えると,原告らが求める内容の謝罪文の必要を認めることはできない。
第5結論
以上によると,原告らの請求は,主文掲記の限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき,民事訴訟法61条,64条本文,65条1項本文,仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結日 平成18年4月28日)
(裁判官 山田陽三)
(別紙1) 謝罪文
当社が平成16年9月25日に行なった,X1氏・X2氏両名に対する解雇措置について,平成17年5月12日,大阪地方裁判所において,前記解雇における当社の主張は適切なものではなく,解雇は無効であるとの判断が下されました。
よって,去る平成17年9月1日,両名は現職復帰となった次第です。
解雇までの約1年半に渡り,当社が両名に対し,両名らの結婚を理由とする退職強要を含めた数々の退職強要や嫌がらせを行なったこと,不当な賃金差別を行なったこと,また,これらの違法行為を管理職らが放置・追従してきたことを認めます。
一連の解雇問題において,あたかも両名の仕事能力や勤務態度に重大な問題があったかのような印象を周囲に与え,両名の社会的名誉を著しく毀損し多大なご迷惑をおかけしました。
よって,ここに深くお詫び申し上げます。
東光パッケージ株式会社
上記代表者代表取締役 H
(別紙2) 掲示条件
掲示場所
被告本社2階営業フロア南側出入口ガラス扉の中央位置,及び,本社3階食堂内壁面(テレビのある面)中央位置に,本判決確定日から2週間にわたって掲示すること
字格
A4白地用紙に黒文字で,見出し部分は20ポイント,本文及び被告社名,代表者名は14ポイント
(別紙3) 未払賞与
原告X1
<省略>
原告X2
<省略>
(別紙4) 平成16年12月以降の賞与
原告X1
<省略>
原告X2
<省略>