大阪地方裁判所 平成18年(ワ)1966号 判決 2007年10月25日
原告
X
同訴訟代理人弁護士
中村昌樹
同
小野順子
被告
株式会社Y
同代表者代表取締役
A
同訴訟代理人弁護士
樽谷進
同
山﨑弘子
主文
1 (割増賃金を除く未払賃金)
被告は,原告に対し,236万3172円及びうち223万0011円に対する平成18年2月11日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
2 (割増賃金)
被告は,原告に対し,300万2193円及びうち296万1818円に対する平成17年8月10日から,うち4万0375円に対する平成17年8月11日から,それぞれ支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
3 (付加金)
被告は,原告に対し,300万2193円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
4 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
5 訴訟費用は,これを3分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
6 この判決は,1,2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1 原告
(1) 原告が,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
(2) 被告は,原告に対し,平成18年2月から本判決確定の日まで,毎月10日限り1か月37万4000円の割合による金員を支払え。
(後記第2の2(2)参照)
(3) 被告は,原告に対し,269万0109円及びこれに対する平成18年2月11日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
(4) 被告は,原告に対し,2477万0035円及びこれに対する平成17年8月10日から支払済みまで年6%の割合による金員,並びに,360万8215円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
(5) 被告は,原告に対し,33万円及びこれに対する平成16年5月10日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
(6) 被告は,原告に対し,300万円及びこれに対する平成18年3月11日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
(7) 訴訟費用は,被告の負担とする。
(8) (2)ないし(7)につき仮執行宣言
2 被告
(1) 原告の請求をいずれも棄却する。
(2) 訴訟費用は,原告の負担とする。
第2事案の概要
1 前提となる事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)
(1) 当事者
ア 被告
被告は,飲食店の経営等を目的とする株式会社であり,訴外株式会社a(以下「a社本部」という。)とフランチャイズ契約を締結し,「カレーハウスb」という名称のフランチャイズ店(吹田豊津店など)を数店経営している。
イ a社本部
a社本部は,「カレーハウスb」という名称のフランチャイズ・チェーンを展開しており,加盟するフランチャイジーの数は300社以上であり,その店舗数合計は直営店を含め,1000店舗以上である。
ウ 原告
平成8年4月1日,被告との間で雇用契約を締結し,被告の経営するフランチャイズ店において勤務していたが,平成9年7月以降,吹田豊津店の店長として勤務するようになった。
(2) 独立のための制度
ア ブルームシステム
a社本部の展開するフランチャイズ・チェーンでは,ブルームシステムと名付けられた独立のための制度があった。
同制度は,独立を希望する者(a社本部との間でフランチャイズ契約の締結を希望する者)は,フランチャイズ店舗において働きながら,進級し(1等級から9等級までがあった。),一定の等級に達した時点で,フランチャイズ店舗の経営者から独立承諾書がa社本部に提出され,a社本部において審査された結果,独立が認められる(a社本部との間でフランチャイズ契約を締結することができる)というものであった。
なお,ブルームシステムの適用を受けるべく,a社本部の加盟店との間で雇用契約を締結している者は,BS社員と呼ばれていた。
イ 独立承諾書の提出
原告は,平成10年12月,BS等級3等級(条件によっては,独立可能な等級)に進級し,被告は,平成12年6月5日,a社本部に対し,原告の独立申請書を提出したが,すぐには独立が認められなかった。
(3) 勤務条件等の推移
ア 勤務場所の変更
原告は,当初,鶴見緑店において勤務していたが,平成9年4月ころ,責任者代行となり,店長や店員が休んだときなどの代行を務め,同年7月,吹田豊津店の店長に就任した。
その後,主に,吹田豊津店で店長を続けていたが,平成17年6月,同店の改装に伴い,京橋東野田店に異動となり,その後,平野瓜破店に異動となった。
イ 賃金に関する変更等
(ア) 基本給の減額
被告におけるBS社員等級基準表上の基本給は,平成16年4月以前,各等級共通して基本給18万円であったが,平成16年4月作成のBS社員等級基準表において,基本給が15万円に減額された(乙19の4・5)。
しかし,その実施時期については,争いがある。
(イ) 平成17年4月度(同年3月分)給与の減額
原告は,それまで少なくとも34万4000円の給与を支給されていたが,平成17年4月10日に支給された給与(同年3月分)は,支給総額が28万8575円に減額されていた(<証拠省略>)。
(ウ) 平成17年5月度(同年4月分)給与の減額
原告が,平成17年5月10日に支給された給与(同年4月分)は,さらに支給総額が27万8673円に減額された。
(エ) なお,賃金は,毎月末日締め,翌月10日払いであった。
(4) 第1次解雇
平成17年7月8日から同年8月2日までの間に,被告は,原告に対し,解雇通告をした(解雇通告の時期については,争いがある。以下「本件第1次解雇」という。)。
なお,解雇の種類は,懲戒解雇である。
平成17年8月26日,被告は,原告に対し,同年8月10日付の退職証明書(<証拠省略>)を交付したが,同証明書の内容は,就業規則37条2項①,②,⑤,⑦,⑧を理由とする解雇により,同年7月8日付で退職したことを証明するというものであった。被告の就業規則37条2項は,いずれも懲戒解雇事由を定めた規程であり,上記各号の内容は次のとおりである(後記(7)参照)。
① 正当な理由なく無断欠勤,出勤の督促に応じないとき
② しばしば遅刻,早退又は欠勤を繰り返し,再三にわたって注意を受けても改めないとき
⑤ 素行不良で著しく会社内の秩序又は風紀を乱したとき
⑦ 11条及び12条に違反する重大な行為があったとき
⑧ その他この規程に違反し,又は全各号に準ずる重大な行為があったとき
(5) 仮処分
原告は,平成17年9月21日,被告を債務者として,大阪地方裁判所に対し,労働契約上の地位の保全と賃金の仮払を求めて仮処分を申し立てた(大阪地方裁判所平成17年(ヨ)第10054号)。
大阪地方裁判所は,平成18年1月5日,被告に対し,平成18年1月以降,本案の第1審判決言渡しに至るまで毎月10日限り,34万4000円を仮に支払うよう命じた。
(6) 第2次解雇
ア 就労命令
平成18年1月10日,被告は,原告に対し,出勤通知書(<証拠省略>)を送付し,同年1月13日午後0時から,b店運営マニュアル,就業規則ないし店内ルール,決定事項等を遵守した上でカレーハウスb鶴見緑店にて勤務することを命じた(以下「本件就労命令」という。)。
なお,この本件就労命令により,本件第1次解雇を確定的に撤回したのか,暫定的に撤回したのかについては,当事者間に争いがある。
イ 解雇通告
平成18年2月6日,被告は,原告に対し,改めて,解雇通告をした(<証拠省略>。以下「本件第2次解雇」という。)。
なお,解雇の種類は普通解雇である。
(7) 就業規則
平成15年11月1日施行にかかる被告の就業規則には,次の規定がある。
第10条(服務)
従業員は,職務上の責任を自覚し,誠実に職務を遂行するとともに,会社の指示命令に従い,職場の秩序の維持に努めなければならない。
第11条(遵守事項)
従業員は,次の事項を守らなければならない。
① 勤務中は職務に専念し,みだりに勤務の場所を離れないこと
② 許可なく職務以外の目的で会社の施設,物品等を使用しないこと
③ 職務に関連して自己の利益を図り,又は他より不当に金品を借用し,若しくは贈与を受けるなど不正な行為を行わないこと
④ 会社の名誉又は信用を傷つける行為をしないこと
⑤ 会社,取引先等の機密を漏らさないこと
⑥ 許可なく他の会社等の業務に従事しないこと
⑦ その他酒気をおびて就業するなど従業員としてふさわしくない行為をしないこと
第12条
1. 従業員が,遅刻,早退若しくは欠勤をし,又は勤務時間中に私用で事業場から外出するときは,事前に申し出て許可を受けなければならない。ただし,やむを得ない理由で事前に申し出ることができなかった場合は,事後速やかに届け出なければならない。
2. 傷病のため欠勤するときは,医師の診断書を提出しなければならない。
第23条(賃金の構成)
賃金の構成は,次のとおりとする。
賃金 基本給
手当
割増賃金 時間外労働割増賃金
休日労働割増賃金
深夜労働割増賃金
第24条(基本給)
基本給は月額とし,本人の職務内容,技能,勤務成績,年齢等を考慮して各人別に決定する。
第25条(手当)
手当は,株式会社aの給与体系に準拠するものとする。
第34条(解雇)
1. 従業員が次のいずれかに該当するときは,解雇するものとする。ただし,第42条第2項の事由に該当すると認められたときは,同条の定めるところによる。
① 勤務成績又は業務能率が著しく不良,その他従業員として不都合な行為があったとき
② 精神または身体の障害により,業務に耐えられないと認められたとき
③ 事業の縮小その他事業の運営上やむを得ない事情により,従業員の減員等が必要となったとき
④ その他前各号に準ずるやむを得ない事情があったとき
2. 前項の規程により従業員を解雇する場合は,少なくとも30日前に予告をするか又は平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う。ただし,労働基準監督署長の認定を受けて第41条に定める懲戒解雇をする場合及び次の各号のいずれかに該当する従業員を解雇する場合は,この限りではない。(後略)
第36条(懲戒の種類)
会社,従業員が次条のいずれかに該当する場合は,その事由に応じ次の区分により懲戒を行う。
① けん責 始末書を提出させて将来を戒める。
② 減給 始末書を提出させて減給する。ただし,減給は1回の額が平均賃金の1日分の5割を超えることはなく,また,総額が1賃金支払い期間における賃金総額の1割を超えることはない。
③ 出勤停止 始末書を提出させるほか,10日間を限度として出勤を停止し,その間の賃金は支給しない。
④ 懲戒解雇 即時に解雇する。
第37条(懲戒の事由)
1. 従業員が次のいずれかに該当するときは,情状に応じ,けん責,減給又は出勤停止とする。
① 正当な理由なく無断欠勤1日以上に及ぶとき
② 正当な理由なくしばしば欠勤,遅刻,早退するなど勤務を怠ったとき
③ 過失により会社に損害を与えたとき
④ 素行不良で会社内の秩序又は風紀を乱したとき
⑤ 第11条及び第12条に違反したとき
⑥ その他この規則に違反し,又は前各号に準ずる不都合な行為があったとき
2. 従業員が,次のいずれかに該当するときは,懲戒解雇とする。ただし,情状により減給又は出勤停止とすることがある。
① 正当な理由なく無断欠勤,出勤の督促に応じないとき
② しばしば遅刻,早退又は欠勤を繰り返し,再三にわたって注意を受けても改めないとき
③ 会社内における窃盗,横領,傷害等刑法犯に該当する行為があったとき,又はこれらの行為が会社外で行われた場合であっても,それが著しく会社の名誉もしくは信用を傷つけたとき
④ 故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき
⑤ 素行不良で著しく会社内の秩序又は風紀を乱したとき
⑥ 重大な経歴詐称をしたとき
⑦ 第11条及び第12条に違反する重大な行為があったとき
⑧ その他この規程に違反し,又は前各号に準ずる重大な行為があったとき
2 原告の請求(訴訟物)
原告は,被告に対し,
(1) (地位確認請求)
2度にわたってなされた解雇がいずれも無効であるとして,労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求め,
(2) (賃金請求その1:解雇後のバックペイ〔後記(3)の一部を除く。〕)
平成18年2月から,本判決確定の日まで,毎月10日限り,月額37万4000円の賃金の支払いを求め(なお,後記(3)で平成18年1月度分〔平成17年12月分〕までの支払を求めていることから考えると,ここでは,平成18年2月度〔平成18年1月分〕からの支払を求めていると解されるので,訴状などの記載において,「平成18年3月から」とあるのは,「平成18年2月から」の誤記であると考える。),
(3) (賃金請求その2:減額相当分の未払賃金請求〔解雇後のバックペイ一部を含む。〕)
減給処分(前提となる事実(3)イ(イ),(ウ))が無効であるから,未払賃金が269万0109円あるとして,同金額及びこれに対する遅延損害金(平成18年2月11日から支払済みまで年6%の割合)の支払いを求め(前記(2)のとおり,平成18年1月度分〔平成17年12月分〕までの未払賃金に関する請求であり,本来の最終支払期日は平成18年1月10日である。),
(4) (賃金請求その3:割増賃金)
割増賃金未払分が2477万0035円あるとして,同金額及びこれに対する遅延損害金(平成17年8月10日から支払済みまで年6%の割合)の支払を求め,
上記未払分に関する付加金として,360万8215円及びこれに対する遅延損害金(本判決確定の日の翌日から年5%の割合)の支払を求め,
(5) (賃金請求その4:減額相当分の未払賃金請求)
基本給の減額(前提となる事実(3)イ(ア))が無効であるから,未払賃金が(3)とは別に33万円あるとして,33万円及びこれに対する遅延損害金(平成16年5月10日から支払済みまで年6%の割合)の支払を求め,
(6) (慰謝料請求)
2度にわたる解雇は,いずれも原告の独立の阻害を目的とした不当な解雇であり,このことにより原告が精神的苦痛を被ったとして,独立約束の不履行(債務不履行)もしくは不法行為による損害賠償として300万円及び遅延損害金の支払を求めている。
3 争点
(1) 解雇の有効性
(2) 減給処分の有効性
(3) 割増賃金
(4) 慰謝料請求権の存否
第3争点に関する当事者の主張
1 解雇の有効性
(1) 本件第1次解雇について
【被告の主張】
ア 解雇の通告
被告は,平成17年7月8日,原告に対し,解雇を通告した。
その後,被告は,原告に対し,平成17年8月10日付け退職証明書を交付している。
イ 解雇事由
原告には,次のとおり,懲戒解雇事由が存する。
(ア) 平成17年6月,吹田豊津店の改装に伴い,京橋東野田店,平野瓜破店に勤務していたが,同年6月25日,京橋東野田店に勤務中,無断欠勤し,同年7月4日,平野瓜破店に勤務中,事前の連絡なく遅刻した(就業規則37条2項1,2号)。
(イ) 平成17年7月8日,原告は,被告代表者に殴りかかろうとして,警察官を呼ぶ事態を発生させた(同条項5号)。
(ウ) 原告は,勤務時間中に事前の許可を得ることなく,店舗から外出することが度々あった。また,平成17年6月25日の欠勤に当たっては,被告の事務所への事前の連絡はなく,医師の診断書の提出もなかった。さらに,原告は,被告や被告代表者の名誉,信用を傷つけるメールを繰り返し,a社本部に送信した(同条項7号)。
(エ) 原告は,売上低迷,厨房機器や食材の管理の不備,提出物の遅れなど,繰り返し指摘を受けている課題点について,対策を講じなかった。責任者としての自覚がなく,誠実に職務を遂行しようとしなかった(同条項8号)。
ウ 第1次解雇の撤回の有無
被告は,原告に対し,本件就労命令を発したが,このことにより,第1次解雇を撤回したことにはならない。
【原告の主張】
ア 解雇の通告
平成17年7月8日,被告は,原告に対し,解雇を通告していない。
被告は,平成17年8月2日になって初めて,原告を平成17年7月8日に解雇したと言い始めた。したがって,被告が原告に対し解雇通告したのは平成17年8月2日である。
イ 懲戒解雇事由の不存在及び解雇権の濫用
本件第1次解雇は,原告が,独立に関し,被告代表者ともめたことをきっかけに,原告のことを疎んじた被告代表者が,懲戒解雇事由などないにもかかわらず,独断かつ恣意的に,何らの手続も踏むことなく,一方的に解雇をすると突然言い出したものであり,適正な手続がなされていないのをはじめとして,懲戒解雇という過酷な処分に値する厳格な事由がなく,そればかりか,就業規則上の懲戒解雇事由に形式的に該当する事由すら全くない違法なものである。
ウ 解雇の撤回
被告は,平成18年1月10日,原告に対し,鶴見緑店への出勤を命じたことにより,本件第1次解雇を撤回した。
(2) 本件第2次解雇について
【被告の主張】
ア 本件第2次解雇の理由
前提となる事実(5)のとおり,平成17年9月,原告は大阪地方裁判所に,解雇無効を理由として,労働契約上の権利を有する地位と,賃金仮払を受ける地位の仮処分を求めて申立をしたところ,同裁判所は,平成18年1月,賃金の仮払を命じた。
被告は,解雇無効の判断に異議があるものの,裁判所の命令に従い,賃金の仮払をする一方,その対価として,原告に対し,労働の提供を求めた(本件就労命令)。
しかし,原告は,被告の本件就労命令に応じなかった。
イ 解雇の通告
被告は,平成18年2月6日,原告に対し,改めて解雇(本件第2次解雇)を通告した。
ウ 原告は,出勤命令に従わない理由を縷々主張するが,既に,被告において就労する意思を失っているというべきである。
【原告の主張】
ア 本件第2次解雇理由の不存在
原告は,本件就労命令について,賃金等の労働条件,独立の問題等が不明確であったため,その説明を求めたが,被告はこれに答えようとしなかった。
また,本件第1次解雇中の賃金を支払おうともしなかった。
本件就労命令による地位が不安定であるため,原告が同命令に基づいて就労することは不可能であり,就労拒否を理由とする本件第2次解雇は理由がない。
イ 仮定的主張(有給休暇の申請)
仮に,本件就労命令が有効であっても,原告は,平成18年1月12日,被告に対し,年次有給休暇の取得を申し入れているので,同申入れに何らの対応もないまま,一方的にされた本件第2次解雇は無効である。
ウ 解雇権の濫用
前記(1)【原告の主張】イのとおり,本件第1次解雇は解雇権を濫用するものであるが,本件第2次解雇も,同じ動機のもとされたもので,本件第1次解雇と一体をなし,解雇権を濫用するものとして無効である。
また,被告は,「解雇は撤回しないが,就労命令は出す。」という不可解な行動をとり,さらには,原告の暴行や懲戒解雇の事由の主張を維持しつつ「独立については協力する。だから,就労できるはずだ。」と繰り返した上,本件就労命令に従わなかったからといって解雇するということは,原告が就労したくても就労できない状況を作り出しておきながら,就労命令違反を理由として解雇するものであり,解雇権の濫用というべきである。
2 減給処分の有効性
(降格等による減給の時期,額については,双方の主張に変遷があったが,いずれも,原告の平成19年3月9日付訴えの変更申立書,第9準備書面,被告の準備書面4,同7の主張に基づく。)
(1) 平成16年4月の3万円の減額について
【被告の主張】
ア 被告は,BS社員等級基準表を平成16年1月に改定し,同年4月に従業員に周知し,同年8月度支給分から適用した(後記原告の主張イは,周知時期と実施時期とを誤るものである。)。
イ なお,被告は,賃金が減少しないよう,調整手当等を支給していた。
【原告の主張】
ア 平成16年4月,基本給20万円が,基本給15万円及び住宅手当2万円に減額されたが,減額の理由はなく,原告の同意もない。
イ よって,平成16年4月から平成17年2月までの基本給減額分33万円の支払を求める。
〔計算式〕30,000×11=330,000
(2) 平成17年3月分の減給について
【被告の主張】
ア 賃金の決定
被告は,a社本部の加盟店であるため,賃金・手当については,a社本部の給与体系に準拠することとしており(就業規則25条),BS社員に適用されるBS社員等級基準もa社本部の基準に準じていた。
BS社員(原告はBS社員であった。)の等級は,被告のスーパーバイザーが各人の評価を持ち寄り,進級会議において協議・決定されていた。
イ 降格及びその理由
原告は,平成17年3月12日,交通事故を起こしたことと,これに伴う7日の休業を理由に,3等級から4等級に降格させた。減給はこれによるものである。
a社本部では,交通事故を起こせば2等級の降格であるが,被告は,本部の基準を参考に降格を決定した。
【原告の主張】
ア 降格の理由について
交通事故の原因・態様は様々であるのに,交通事故を起こしただけでなぜ一律に等級が下がるのか合理的な理由がない。
イ 降格の事実について
そもそも,交通事故を理由として3等級から4等級に降格された事実はない。
ウ 等級降格による減給処分が違法であること
仮に,等級を下げることにより,現実の職務如何を問わず,減給が可能であるとすると,制裁規定を制限した労働基準法91条の存在を無視することになり,違法である。
(3) 平成17年4月分以降の減給について
【被告の主張】
ア 降格及びその理由
(ア) 原告は,会社方針であるチェックリストの提出を長年懈怠した上,食材管理不備などでも会社から多数の問題点の指摘を受けていた。
被告は,原告に対し,方針に従わなければ降格もあり得るとして注意を喚起していた。
(イ) 原告は,上記(2)の理由により,4等級に降格されていたが,その後,原告は,平成17年4月25日に辞職を申し出,翌日,これを撤回した。
(ウ) 被告は,上記(ア)の問題点が改善されていない事情もあり,やり直すのであれば降格もやむを得ないと考えて6等級に降格した。
イ 原告の同意
原告は,上記降格に納得して,等級確認書に署名している。
【原告の主張】
ア 降格の理由について
被告は,原告がチェックリストを提出しないことを降格の理由として主張するが,原告は,平成17年3月末から4月にかけてチェックリストを提出しており,被告代表者自身,同年4月30日に確認している。したがって,チェックリストの未提出は降格の理由となり得ない。
被告が本件降格処分を行ったのは,原告が,a社本部に対し,独立に関するメールを送信した時期であり,本件降格処分は,上記メールを送信したことに対する報復としてされたものである。
イ 上記(2)【原告の主張】ウのとおり
3 割増賃金
【原告の主張】
(1) 平成16年3月分から平成17年7月分までの割増賃金
ア 時間外労働等
別紙1の1ないし1の17のとおりの時間外労働,深夜労働,休日労働があった。
イ 単価
それぞれの時点における時間給単価は別紙2のとおりである。
ウ 支給されるべき手当
前記ア,イによると,上記期間における時間外手当,深夜手当,休日手当は351万2117円となり,既払いの割増賃金を控除すると323万6057円となるが,移動時間についても労働時間に含めるべきであり,これを併せると,別紙3のとおり360万8215円となる。
(2) 平成8年4月分から平成16年2月分までの割増賃金
被告が,賃金台帳や勤務リスト,営業日報などを任意提出しないため,時間外労働の算定が不可能である。よって,やむなく,前記(1)で算定される賃金の平均値に期間を乗じて総額を算定すると,平成8年4月から平成16年2月までの割増賃金は2116万1820円となる。
(3) 管理監督者であるとの主張について
なお,被告においては,店長であっても労働時間は管理されており,原告は店長であったからといって,労働基準法41条に定める管理監督者には当たらない。
(4) 消滅時効の主張について
原告が,割増賃金をこれまで請求できなかったのは,被告が割増賃金を支払っているかの如く装っていたため,割増賃金がここまで多額であることに気づかなかったことと,割増賃金を請求することが,独立の支障となっては困るとの考えがあったためであり,ひとえに被告に責任があり,消滅時効の援用は許されない。
(5) 付加金
被告は,原告に対し,独立を餌に過酷な深夜残業を強いながら,賃金計算上,割増賃金を支払わずに済むよう小細工をしながら,その支払を恣意的に怠ってきたのであり,悪質である。
したがって,前記(1)に相当する付加金の支払を求める。
【被告の主張】
(1) 原告の主張(1),(2)について
争う。
被告における賃金体系は,a社本部の給与体系に準拠している(就業規則25条)。BS社員に適用されるBS社員等級基準表記載の給与表もa社本部の基準に従っている。
被告においては,所定労働時間を超えて勤務させることがあるので,平成11年ころは,全従業員に一律3万円の残業手当を支給していた。
平成14年ころから,3級以上の従業員には残業手当を支給しない代わりに店長手当を増額したが,平成11年基準における定額残業手当と店長手当を合算したものと同額であるので,平成14年基準以降の店長手当には残業手当が含まれている。
(2) 消滅時効
割増賃金の請求は,平成18年3月15日に拡張されたが,平成16年3月15日より前に履行期の到来している残業代請求権(平成16年3月度〔同年2月分〕以前のもの)については,時効消滅しており,被告は,消滅時効を援用する。
(当初,平成18年2月27日に平成16年2月27日以降の割増賃金が請求された〔同年3月1日に93万7400円に金額が訂正されている。〕。そのうち,平成16年2月27日,28日の2日分の4300円〔1,720×1.25×2=4,300〕については,平成16年2月分であるが,平成18年3月15日の拡張以前の請求であるから,消滅時効の援用から除外されることとなる。また,その後,平成19年3月9日の申立により拡張された分については,特段の消滅時効の援用がされておらず,上記平成16年3月15日以前に履行期の到来している請求権について消滅時効の援用があったものとして扱うこととする。)
(3) 付加金について
争う。
4 慰謝料請求権の存否
【原告の主張】
(1) 不当解雇による精神的損害
原告は,不当な解雇により従業員の地位を否定され,就労の機会を奪われ,これにより原告は多大な精神的苦痛を受けた。
原告は,被告への入社時より10年弱の間,被告から推薦を受けた上,b店のフランチャイズ店の店長として独立することを志していた。このため,社内で有給休暇が認められなかったり,労災給付を受けられなかったり,突然給与が10万円減額されたりなどの理不尽なことがあっても,独立のためだと思い,目をつぶって勤務し続けてきた。
したがって,本件解雇により,これまでの努力が無に帰してしまうのであり,その精神的苦痛は,通常の解雇事件にまして大きい。
(2) 原告の独立に対する被告の妨害
被告は,ブルームシステムを採用し,研修後独立させることを約束し,被告の社員とは区別して,BS社員として原告を雇用した。
にもかかわらず,原告が,各店舗の店長を歴任し,独立が適当な段階に達したのは明らかであるにもかかわらず,独立を認めようとせず,独立約束を果たさなかった。
のみならず,原告が独立を希望するようになると,被告は,a社本部に対し,原告の独立を推薦した事実などないにもかかわらず,さも,被告が独立を推薦しているのに,a社本部が独立を承認しないかのように詐術を弄し,原告の独立への期待権を侵害し続け,独立を餌に,廉価で過酷な勤務状況で働かせ続けた。
被告の行為によって,原告は,独立の期待を抱きながら,これを裏切られた結果,多大な精神的苦痛を受けた。
(3) 慰謝料額
上記(1),(2)の精神的苦痛を慰謝するために慰謝料は300万円を下らない。
【被告の主張】
(1) 解雇について
本件解雇は有効であり,解雇を理由とする精神的損害には理由がない。
(2) 独立妨害について
原告の独立を決定するのはa社本部であり,原告は,a社本部の基準を満たさなかったから独立できなかったものである。
また,被告は,原告に対し,独立を保障していないから債務不履行責任を負うこともない。
(3) 慰謝料額
争う。
第4当裁判所の判断
1 本件紛争を巡る事実
前提となる事実,証拠(<証拠・人証省略>)及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。
(1) 当事者
ア a社本部
前提となる事実(1)イのとおりである。
イ 被告
被告は,a社本部との間でフランチャイズ契約を締結する加盟店の1社であり,多いときで8店舗を経営していた。
被告は,平成19年5月ころ,約100名のアルバイト,15,6名の社員のほか,ブルームシステムを利用する独立希望者(前提となる事実(2)ア参照)が6名いた(本件第1次解雇のころも,同程度であったと推認される。)。
ウ 原告
原告は,平成8年4月1日,ブルームシステムを利用して独立することを希望し,BS社員として,被告と雇用契約を締結した。
(2) b店フランチャイズ・チェーンにおける制度
ア ブルームシステム
(ア) ブルームシステムの概要は,前提となる事実(2)アのとおりである。
(イ) 独立基準の改定
当初は,1等級で無条件に独立が認められ,2等級で配偶者等の協力がある場合に独立が認められていたが,その後,a社本部の加盟店を増加する方針により,3等級でも配偶者の協力がある場合は独立が認められるようになった。
しかし,フランチャイジーが300社(個人も含まれると思われる。)あるところ,それぞれにBS社員が何名かいるとすると,独立のための競争は,条件が緩やかになったとはいえ,相当に厳しい内容であったことが想像できる。
(ウ) ブルームシステムの特徴
フランチャイザーにとっては,新たにフランチャイズ契約を締結する相手が,既に信頼関係のある加盟店において相当程度の期間就労し,その推薦を得ていることから,安心して,フランチャイズ契約を締結できるというメリットがあった。
BS社員としても,既存のシステム(ブルームシステム)を利用することにより,誰でも,努力をすれば,フランチャイズ契約を締結してもらえるだけの信用力を獲得することができるというメリットがあった。
しかし,一方で,BS社員を抱えるフランチャイジーとしては,a社本部との信頼関係を壊さないようにするため,独立の推薦については,慎重となる方向へ傾くことが想像できる。
イ 被告におけるBS社員と通常の社員の違い被告との間で雇用契約を締結したBS社員は,等級が上がっていけば,店長となるが,独立しない限り,店長以上の役職に就くことはなかった。
一方,被告は,BS社員以外に,通常の社員(便宜上「Y社社員」という。)を採用していた。これらの者は,BS社員と同様,当初,被告の店舗で稼働し,店長となる者もいたが,さらに,店長以上の役職であるスーパーバイザーに就任したり,被告におけるその他の職務に就く者もいた。
ウ スーパーバイザー
(ア) a社本部では,本部直属のSV(スーパーバイザー)が,フランチャイジーの経営する店舗を抜き打ち視察し,その際,等級の認定が相当かどうかという点もチェックしていた。
(イ) また,被告では,自前のスーパーバイザーを置いており,Y社社員のうち,店長を経験した者から5名ないし8名(見習も含める。)を選任し,被告の経営する店舗を視察させていた。
毎週金曜日はSV(スーパーバイザー)会議が開催されていたが,毎月第3金曜日は進級会議にあてられていた。
(ウ) 等級確認書
被告においては,スーパーバイザーが担当者として,各従業員の新等級の認定を記載した等級確認書を作成し,その「理由」欄に,確認した事象などを具体的に記載していた。さらに,担当者が,従業員に対し,「理由」の説明をした上,従業員に対し,注意やアドバイス,今月の課題などを与え,その内容を等級確認書の「ONE UPアドバイス」欄に記載し,説明者が署名するとともに,従業員本人が説明を受けた旨を確認する署名をしていた(等級査定についての了解も含むものと考えられる。)。
もっとも,新等級の実施と説明日時とを見ると,新等級の実施後に説明がされていたことが窺える。また,新等級の認定は,既に,進級会議を経たものと思われる。
(<証拠省略>)
エ 店長会議
また,被告においては,店長会議が定期的に開催されていたが,原告の出席率は悪かった(<証拠省略>の議事録の中で,原告が出席したのは1回のみである。)。
(3) 原告の勤務条件の推移
ア 就労場所(役職)
(ア) 店員としての勤務
原告は,平成8年4月,被告に入社し,鶴見緑店において勤務を始めた。
BS等級は,11等級からスタートし,その後,順調に進級し,平成8年末には,6等級に進級し,平成9年4月ないし5月ころには,各店舗において,店長や店員が休んだときの代行を務めるようになった。
(イ) 店長としての勤務
原告は,平成9年7月,吹田豊津店の店長に任命され,同店に勤務するようになった(そのころには,等級は5等級に進級していたと考えられる。)。
その後,原告は,順調に等級を上げていき,平成10年12月には,3等級に進級した。
(ウ) 原告は,平成17年6月,吹田豊津店の改装に伴い,京橋東野田店,平野瓜破店に勤務していたが,平野瓜破店に勤務中,本件第1次解雇を通告された。
イ BS社員等級基準表の改定
被告は,a社本部の基準に準じたBS社員等級基準表を作成していたが,別紙4の1ないし4の6のとおり改定された(乙19の1~6)。
なお,平成16年4月ころに改定された等級基準表の実施は(前提となる事実(3)イ(ア)参照)は,平成16年7月分から実施された(<証拠省略>)。
ウ 給与の減額
(ア) 原告の給与は,その時点の等級と上記イのBS社員等級基準表に基づき支給されていた。
(イ) 前記ア(イ)のとおり,原告は,順調に等級を上げていき,平成10年12月には3等級に進級したが,その後,後述のとおり,暴行事件を起こしたりして,降格されることがあった。その後,しばらくして等級を3等級に戻していた。
(ウ) しかし,平成17年度に入ってから,前提となる事実(3)イ(イ),(ウ)のとおり,給与が減額された。
もっとも,上記減額のうち,前提となる事実(3)イ(ウ)の減額は,降格によるものであるが,同(イ)の減額は,降格によるものではなく,欠勤を理由とするものと考えられる(後記4(1)参照)。
エ 就労条件
営業時間は各店舗で異なるものの,原告が一番長く勤務した吹田豊津店の営業時間は午前11時から翌日の午前1時までであった。
被告の就業規則(<証拠省略>)13条によると,労働時間は,1週間40時間,1日8時間という規定があったが,一方で,BS社員である原告の所定就業時間は12時間で,2時間の休憩を除く所定労働時間は10時間と定められていた(<証拠・人証省略>)。
実際には,原告は,午後0時に出勤し(それ以前は,アルバイトなどに任されていたことが窺える。),閉店後まで勤務した上,後片づけ作業の後(掃除などは,客足が少なくなった閉店間際から始めることが可能であった。),日報の記載を完了させ,被告の事務所にファックスで送信して勤務を終了することとなっていた。
(4) 独立の推薦
原告は,平成10年12月,BS等級3等級となり,一定の条件を満たせば,独立が承認される状態となった。そこで,被告は,平成12年6月5日,原告について「ブルームシステム社員独立承諾書」をa社本部に提出した(<証拠省略>)。
その後,a社本部からチェックに来たが(おそらく,スーパーバイザーと思われる),すぐには独立の許可が出ずに,何かアピールするようにという課題が与えられた(被告代表者本人15頁)。
被告では,原告がアピールできるものを検討しようとしたが,原告の方で,自分でやるということを述べ,被告として協力することのないまま推移した。
(5) 推薦後の経緯
ア 顧客からの投書
原告は,その後も,吹田豊津店の店長として勤務を継続していたが,遅くとも平成14年1月ころから,他の従業員に対して,注意,指導する際に,客の面前で厳しく叱責したり,足で蹴るなどの暴行を加えることが散見されるようになった(<証拠省略>)。
すなわち,平成14年中に,吹田豊津店における顧客からの投書(アンケート形式によるもの)が寄せられ,その内容は,店長である原告が他の従業員に足蹴りしているところを目撃したり,顧客の前であるにもかかわらず,カウンター越しに従業員に大声で叱ったり,口論したりするため,店の雰囲気が暗く,気まずいものとなっているという趣旨のものであった(乙15の1~6。なお,乙15の1・2は,平成14年1月27日の原告の行動に関する投書であり,乙15の3以下は同年4月,5月の原告の行動に関する投書である。)。
このような原告の行動は,独立が認められないことに対する,不満や焦りを募らせていった結果であると推認されるとともに,その後における原告の行動にも照らすと,原告の性格的な問題点に起因するということも否定できない。
イ ヘルニアによる入院加療
平成14年7月,職場で電子レンジを持ち上げた際,腰を痛め,ヘルニアの診断を受け,入院治療のため,4か月間休職した(<証拠省略>,原告本人)。
ウ 暴力事件
平成14年12月,原告は,吹田豊津店において,従業員のBに対し,動きが悪いと言って,胸元を手拳で殴打するという暴行を加えた(<証拠省略>,原告本人)。なお,原告は,手拳が当たってしまったと述べるが(<証拠省略>,原告本人),Bが被告に申告した上,病院での受診を希望し,受診したことを考えると,相当強い暴行であったことが認められ,原告の上記供述は信用できない。
上記暴行の結果,Bは原告の下で勤務することを拒否する意向を示し,他の店舗(鶴見緑店)に異動となり,原告の等級は下げられた(原告は2等級くらい下がったと述べる〔原告本人〕。その後,3等級に復帰したものと思われる。)。
エ ガムを噛んでいたというクレーム
平成15年6月,顧客からa社本部に対し,原告が店舗内で勤務中,ガムを噛んでいたという苦情が届けられたが,原告は,のど飴であると弁解し,そのいずれかは不明である(<証拠省略>,原告本人)。
オ a社本部のスーパーバイザーらとのやりとり
(ア) Cスーパーバイザー
原告は,平成15年の後半ころ,吹田豊津店に店舗指導に来店したa社本部のCスーパーバイザーとの間で,自分の独立のことを相談した際,被告から,原告に独立の意思がないような情報が伝えられていると聞き,自分の独立が認められないのは,被告が妨害しているからだと考えるようになっていった(<証拠省略>,原告本人)。
(イ) Dスーパーバイザー
a社本部の担当スーパーバイザーがCからDに交替したばかりのころ,原告は,Dスーパーバイザーに独立について相談したところ,すぐにでも申請をするような話となったが,Dは,被告代表者と面談した後,原告に対し,「初対面で原告のことをよく知らなかった。2日前の話はなかったことに。」という趣旨を苦しそうな感じで述べた(原告本人)。
その後,Dから課題が出され,原告は,課題に従って,大阪近辺の被告以外の加盟店のオーナー3名に面談したが,その結果については,1名のオーナーから(独立について)否定的な意見が述べられ,その結果の概要は,原告にも伝えられた(原告本人)。
(ウ) Eスーパーバイザー
a社本部の担当スーパーバイザーがEに交替した際,原告は,Eに,どうしてa社本部は独立をさせてくれないのかと尋ねた。
これに対し,Eは,a社本部は審査するところで,最初から独立を止めることはしない旨述べた。
そこで,原告は,a社本部の京都営業所のF部長に尋ねたところ,被告から独立承諾書が提出されていないとの回答を得た。
そのため,原告は,被告代表者に独立承諾書の提出を依頼したが,提出済みであると答えるのみであった。
(エ) 原告の独立に対するスーパーバイザーの認識
これらのスーパーバイザーの対応からすると,それまでに原告の暴行の事実がa社本部に伝わっており(a社本部への投書から発覚しているものもある。),前記(2)ウのとおり,加盟店の質の向上を念頭においた制度を実施する本部にとって,原告の独立は,不可能とはいえないまでも,相当条件の厳しいものになっていた可能性は否定できない。
カ 本部への直接の折衝
原告は,a社本部のスーパーバイザーの言動と被告代表者の言動が食い違うため,平成17年3月,a社本部の社長専用メールと京都営業所のF部長に,なぜ独立させてくれないのかというメールを送信した。
平成17年3月12日の午前中,原告は,被告代表者とともに,a社本部の京都営業所を訪れ,メール送信の経緯について尋ねられたりした。
キ 交通事故
原告は,a社本部の京都営業所で説明した後,1日の勤務を終え,帰宅途中,交通事故に遭い,療養のため1週間休職した。
その間,被告のスーパーバイザーであるGが,原告の代わりに店長職を担当したが,発注定数表や食材補充表による材料管理が出来ていなかったことや,食材の解凍のし過ぎ,清掃が不十分であることなどが判明した(<証拠・人証省略>)。
ク a社本部への移籍話
平成17年4月ころ,原告は,被告での閉塞感から,a社本部への移籍を願い出て,a社本部の担当者と面談したが,被告代表者から承諾を取るよう求められた。被告代表者は,原告に対し,明確な拒否の意思を表明してはいなかったが,これまでの原告が問題点を抱えていると認識していたことから,推薦をすることをしなかった(被告代表者本人)。
ケ 退職願と撤回
原告は,被告代表者が,表面的にはa社本部への移籍に反対しない態度を示していたにもかかわらず,移籍の推薦を与えないことに立腹し,平成17年4月25日,被告代表者に対し,電話で,退職を願い出た。
しかし,原告は,翌日になって,撤回を申し出た。被告代表者は,原告と面談の上,退職の意思表示の撤回を受け入れた。
コ ウェブサイトへの投稿
原告は,平成17年5月ころ,業務中にフライヤー(油で揚げる調理器)の上にある換気扇のフードを,デッキブラシの柄の先に雑巾を付けて掃除をしていた際(そのことだけでも,埃がフライヤーの油の中に落ちるおそれがある。),誤って,雑巾を油の中に落としたにもかかわらず,その油をそのまま使用した料理を客に出した。これを他の客が目撃し,a社本部のウェブサイトに投稿した(乙3。なお,同投稿が転送され,被告が了知したのが,平成17年5月13日と認められるが,乙9の2頁には,この投稿が3月であることを前提に,そのころ,この件を理由に4等級に降格したとの記載があるが,投稿の内容が判明した時期を誤解している疑いが強い。したがって,この件を4等級の降格の理由としたという点は誤りと考えられる。)。
なお,原告は,雑巾は空中でつかみ,油の中には落としていないと供述する(原告本人)。しかし,投稿も具体的に「雑巾は見事にから揚げになっていました。」と述べており,油の中に落ちたことを目撃した内容となっている(乙3)。また,原告は,雑巾をすぐにゴミ箱に捨てたと供述するが(原告本人),使い捨てでもない雑巾を,反射的にゴミ箱に捨てるのは考えにくく,油の中に落ちたから捨てたと考えるのが合理的である。
サ 欠勤と遅刻
吹田豊津店が改装工事を行うため,原告は,京橋東野田店に責任者代行として勤務するようになったが,平成17年6月25日,出勤せず,公休予定であったHに交代を依頼して欠勤したことがあった。
また,原告は,その後,平野瓜破店へ移動したが,平成17年7月4日,事前の連絡なく遅刻した。
(6) 原告に対する指導内容
ア 被告においては,スーパーバイザーが各店舗を視察し,各従業員の等級意見を等級確認書に記載し,その「理由」欄に,確認した事象などを具体的に記載していた。
さらに,担当者(査定をしたスーパーバイザー)が,「理由」の説明をした上,これを踏まえて,従業員に対し,注意や課題,アドバイスなどを与え,その内容を等級確認書の「ONE UPアドバイス」欄に記載し,説明者が署名するとともに,従業員本人が説明を受けた旨を確認する署名をしていた(等級査定についての了解も含むものと考えられる。)。
平成16年10月度以降の等級確認書において,次のことが指摘された。
①原告が店長をつとめる吹田豊津店では,3か月連続で(売上)昨年比を下回り,10月27日時点で,88.4%は被告の保有する店舗の中で最低であったこと,②原告は,チェックリスト(原告自身及び吹田豊津店の従業員のもの)等の提出物の提出が遅いこと,③パソコンへの入力漏れも多いこと,④独立のための本部へのアピールがないこと,⑤基本から外れた運営になっていること(浸積をしていない。スープポットがない。食材補充要領がない。「予測揚げ」と称して揚げ置きをしている。)
(以上,乙13の1~8)
イ 降格に関する記載
平成17年3月には,3月度4等級に降格するとの等級確認書が作成され,「理由」欄に,「昨年比95.5%(その数値から,特に問題はないと思われる。),交通事故,提出物が全店中最も遅いこと,言い訳が多い,チェックリスト取り組みが遅い,上記⑤,I社長メールの一件で多方面に多大な迷惑を掛けた。」などと記載されていた。
また,「ONE UPアドバイス」欄には,「説明不能」「本部社長宛にダイレクトメールした事」と記載されていた。
なお,この等級確認書には,説明者の署名も,原告本人の署名もない。(乙13の5)
ウ 降格に関する記載その2
平成17年4月には,4月度6等級に降格するとの等級確認書が作成され,「理由」欄に,
「・ チェックリスト取り組み遅れ(去年より再三のフォローにもかかわらず)
2月より言っていましたが,4/1提出分の時点で自身のチェックリスト,EL,TR,SR合格ならず,猶予期間も1か月過ぎましたので約束通り降格とします。
・ 提出物,相変わらずワースト1(8店舗中)
・ 食材欠品(品薄で他店に借りる)が多い。
・ 会議に出席しない。補佐会議にも来させない。
・ 「聞いていない」が多い。」
と記載され,また,「ONE UPアドバイス」欄には
「 お疲れさまでした。
何処へ行っても,元気一杯,頑張って下さい。」と記載されていた(乙13の6)。
(7) 第1次解雇
ア 平成17年7月8日,被告代表者が,平野瓜破店の前を通ると,お昼のピーク時に,同店の駐車場に原告の車が駐車してあるのを目撃した。また,アイドルタイム(客の比較的少ない時間帯)に,同店を訪れたところ,原告が,連絡をせずに外出していたことを確認した。また,トイレの水漏れが放置されていたことも確認した。
このため,被告代表者は,これらのコメントを記載した店舗巡回シートを作成した上,同日夕方,平野瓜破店に赴き,バックルーム(休憩室)において,原告と面談し,上記の各事項を質すとともに,無断欠勤や,遅刻についても説明を求めた。
しかし,被告が原告の独立を認めないという話の蒸し返しとなり,原告は,声を荒げて,被告代表者を非難し始め,机を手で強く叩いたりした。このため,被告代表者は,警察(c署)に連絡し,警察官1名が一時来店したが,しばらくして,原告が落ち着いたので,「もう一度,話し合いをする場を作ってあげて下さい。」と述べて,引き上げた。
被告は,原告に対し,明日から店に出なくてよいという趣旨の命令をした。もっとも,明示的な「解雇」もしくはこれと同旨の意思の表示がなされたわけではなかった。
(<証拠・人証省略>)
イ 平成17年7月28日の面談
被告代表者は,警察官のアドバイスに従い,平成17年7月28日,話し合いの場を設けた。
しかし,この日の話し合いは,あまり時間もとれないまま,平行線をたどり,被告代表者が,他の社員の意向も確認すると述べて終わった(<証拠省略>)。
ウ 平成17年8月2日の面談
被告代表者と原告は,平成17年8月2日,面談し,被告代表者は,明確に,原告を解雇する旨伝えた。
エ 原告のa社本部へのメール
原告は,平成17年8月10日,a社本部に対し,被告と被告代表者を非難するメールを送信した(<証拠省略>,原告本人)。
オ 退職証明書の交付
被告は,平成17年8月26日ころ,平成17年8月10日付の退職証明書(<証拠省略>)を交付した(<証拠省略>)。
(8) 保全命令
原告は,平成17年9月21日,被告を債務者として,大阪地方裁判所に対し,労働契約上の地位の保全と賃金の仮払を求めて仮処分を申し立てた(大阪地方裁判所平成17年(ヨ)第10054号)。
大阪地方裁判所は,平成18年1月5日,被告に対し,平成18年1月以降,本案の第1審判決言渡しに至るまで毎月10日限り,34万4000円を仮に支払うよう命じた。
(9) 第2次解雇
ア 就労命令
被告は,平成18年1月10日,原告に対し,出勤通知書(<証拠省略>)を送付し,同年1月13日午後0時から,b店運営マニュアル,就業規則ないし店内ルール,決定事項等を遵守した上でカレーハウスb鶴見緑店にて勤務することを命じた(<証拠省略>)。
イ 労働条件等の照会
原告は,平成18年1月12日付書面により,被告に対し,賃金などの労働条件や独立の問題がどうなるのかについて,明らかにするよう求め,これが明らかにされない以上,不安定な地位にあるため,本件就労命令に応じることはできない旨,通知した(<証拠省略>)。
ウ 再度の就労命令
被告は,平成18年1月25日付書面により,改めて,原告に対し,出勤通知書(<証拠省略>)を送付し,同年1月27日午後0時から,鶴見緑店において勤務するよう命じた(<証拠省略>)。
被告は,原告が,上記命令に応じなかったことから,同年1月27日,改めて,原告に対し,出勤通知書(<証拠省略>)を送付し,鶴見緑店において勤務するよう命じた(<証拠省略>)。
エ 原告による再度の照会
原告は,平成18年2月1日付け書面により,被告に対し,再度前記イと同様の照会をした(<証拠省略>)。
オ 解雇通告
被告は,原告が,上記就労命令に応じなかったため,平成18年2月6日付書面により,改めて,解雇通告をした(<証拠省略>。本件第2次解雇)。
カ 原告代理人が,a社本部の京都営業所のF部長に電話で照会したところ,原告については,暴行事件があったと聞いており,これが撤回されない限り(撤回の趣旨については,被告からの報告を前提に話がされており,報告が撤回された場合,あるいは,それを補うだけのプラス要因がない限りは,という程度の趣旨と思われる。),独立は困難であると回答した。
2 解雇の有効性
(1) 本件第1次解雇について
ア 解雇の意思表示の時期
被告は,本件第1次解雇は,平成17年7月8日にされたと主張する。
しかし,前記1(7)アのとおり,明日から店に出なくてもよいという趣旨の命令をしたことが認められるが,明示的な解雇の意思表示がされたわけでなかった。
また,平成17年7月28日に,話し合いの機会を持っており,しかも,その際は,被告代表者が他の社員の意向も確認する旨述べたことが認められ,この時点でも,明確な解雇の意思表示があったとは認められない(前記1(7)イ)。
そうすると,原告自身,被告代表者から解雇の意思表示が明確にあったと主張する平成17年8月2日に,解雇の意思表示があったと認めるのが相当である(前記1(7)ウ)。
イ 解雇の種類
平成17年8月2日までに至る経緯をみると(前記1(7)参照),必ずしも,本件第1次解雇が普通解雇か懲戒解雇かが明瞭とは言い難い面もあるが,答弁書において,明確に懲戒解雇と主張されていること,解雇証明書(<証拠省略>)には,就業規則上の懲戒事由が記載されていること,解雇予告手当が支給された形跡はないこと(給与は,平成17年7月8日分までしか支給されておらず〔<証拠省略>〕,一方で,被告は,平成17年7月8日に解雇したという主張をしている。)からすると,本件第1次解雇は懲戒解雇として告知されたと認めるべきである。
ウ 懲戒解雇事由の存否
被告は,本件第1次解雇の懲戒事由として,前記第3において,1(1)【被告の主張】イのとおり主張するので,個々の事由毎に検討する。
(ア) 上記【被告の主張】イ(ア)(無断欠勤,遅刻)について
前記1(5)サのとおり,原告は,平成17年6月25日,欠勤したことが認められるが,公休予定であったHに交代を依頼しており,全くの無断欠勤であるとは言い難い。また,その事情も,体調不良であったとする原告の供述(原告本人)を否定する事情はない。
また,原告は,平成17年7月4日,遅刻したことが認められるが,出勤した時刻は午後0時25分である(<証拠省略>)。
上記行為は,被告の就業規則37条2項1号に該当するが,しばしば欠勤,遅刻をしたということまではいえず,同条項2号の該当性を認めるのは困難である。
また,いずれにしても,懲戒解雇という制裁に値する非難可能性は低いといわざるを得ない。
(イ) 同(イ)(警察を呼ぶ事態を発生させたこと)について
前記1(7)アによると,原告は,被告代表者と面談している際,興奮し,机を叩くなどの行為に出て,被告代表者が警察に連絡し,警察官が臨場したことが認められる。しかし,原告が被告代表者に直接暴行を加えたわけではなく,臨場し,双方から事情の説明を受けた警察官からも,よく話し合うようにと説諭されるにとどまっていることからすると,仮に,原告の上記行為が,就業規則37条2項5号に該当するといえたとしても,懲戒解雇という制裁に値する非難可能性のある事由とはいえない。
なお,他の従業員に対する暴行については,被告の最終準備書面である第7準備書面には,第1次解雇事由としてあげられていない。しかし,答弁書では,被告代表者に対する暴力行為を主張する際,「従前からいくつかの暴力事件を起こしており」と主張するので,念のために検討するに,たしかに,前記1(5)ア,ウのとおり,原告による暴力行為を認めることができる。しかし,これらは,平成14年当時の出来事であり,被告も十分に認識していた事実であること,一定程度の制裁が加えられたと認められることからすると,本件第1次解雇の時点において,懲戒事由としては,主張することができないというべきである。
(ウ) 同(ウ)(無断外出とメール)について
被告は,原告が勤務時間中に事前の許可を得ることなく,店舗から外出することが度々あったと主張するが,無断外出に関する事情としては,前記1(7)アにおける事実が窺える程度である。
また,被告における休憩時間の取り方がどのようなものであったかは必ずしも明らかではないが,所定就業時間が長時間にわたるためもあってか,相当程度自由にできる時間帯が存したことも窺える(<人証省略>)。
また,原告が,a社本部に対し,メールを送信した事実を認めることができるが(前記1(5)カ,(7)エ),加盟店の従業員がa社本部に対し直接メールを送信することについては,a社本部自身が,そのような制度を設けていたものである(<証拠省略>)。そのメールの内容については,平成17年3月に送信した内容については,不明であり(少なくとも,その内容自体について,a社本部が問題にした形跡はない。),平成17年8月に送信した内容については,激情にまかせ,誇張にわたると思われる面も存するが,このメールが,被告の営業成績に支障を来すような内容であるともいえないし,そもそも,同メールは,本件第1次解雇の告知後に送信されたものであり,懲戒解雇事由とすることはできない。
以上によると,就業規則37条2項7号に該当する事実を認めることができない。
(エ) 同(エ)(成績及び勤務態度)について
前記1(5)キ,(6)によると,原告の成績や勤務態度について,被告の主張に沿う事実が指摘されていたことが認められる。
しかし,これらの指摘事項は,被告の主張内容からも,以前から指摘されていたにもかかわらず,特段の処分がされたことは窺えず,被告の就業規則37条2項8号に該当するとしても,懲戒解雇という制裁に値する非難可能性のある事由とはいえない。
エ 本件第1次解雇における権利濫用
前記ウで検討したところによると,被告が懲戒解雇事由として主張する事実は,いずれも,その該当性を認めることのできないものか,被告の就業規則上,これに該当すると認めることはできるものの,懲戒処分としての解雇を基礎づけるに足りるだけの事由とは言い難いものであり本件第1次解雇は,解雇権を濫用するもので,無効というべきである。
(2) 本件就労命令
被告は,原告に対し,平成18年1月10日,鶴見緑店にて就労を命じる本件就労命令を発し,その後,同様の命令を2回にわたり発した(前記1(9))。
なお,この本件就労命令が,本件第1次解雇の効力に与える影響が問題となりうるが,前記(1)で述べたとおり,本件第1次解雇が無効である以上,その影響を検討する必要はなく,単に,原告に対し,出勤通知書に記載した日時に出勤するよう命じる職務命令を発したものと考えるのが相当である。
(3) 本件第2次解雇
ア 解雇の種類,理由
前記1(9)のとおり,被告は,平成18年2月6日,原告に対し,本件第2次解雇を通告したが,同通知書(<証拠省略>)は,解雇の理由として,被告の就業規則34条1項1号,12条1項を挙げており,普通解雇であることは明らかである。
上記解雇通知書において記載されている解雇事由は,本件就労命令に対する命令違反が念頭におかれているが,本件第2次解雇が普通解雇であること,本件第2次解雇が,本件第1次解雇の主張を維持しつつ行われたこと(上記通知書には「本来,平成17年7月8日地点(ママ)で解雇であるが,‥‥貴殿を解雇することを重ねて通知する」と記載されている。したがって,本件就労命令によって,本件第1次解雇を撤回したわけでないという前提にたっている。)を併せ考慮すると,本件第2次解雇の理由としては,本件第1次解雇の解雇事由についても当然に含んでいる趣旨と解される。そして,本件訴訟においては,本件第1次解雇の事由以外に,原告の問題のある勤務態度が主張されているが(当初は,これらの事由は,本件第1次解雇の事由として主張されていたが,前記(1)のとおり,被告第7準備書面により,懲戒解雇事由の主張は,限定された。),本件第2次解雇における解雇権の濫用の有無の判断については,これらの事由についても併せて検討されるべきである。
イ 解雇権濫用の有無
(ア) 本件就労命令違反
前記1(9)のとおり,被告は,原告に対し,平成18年1月10日以降,数度にわたり,鶴見緑店への出勤を命じたにもかかわらず,これに従わなかったことが認められる。
この就労命令違反について,原告は,賃金等の労働条件,独立の問題等が不明確であったため,その説明を求めたが,被告がこれに答えようとしなかったため,命令に応じることができなかったと主張する。
しかし,賃金については,仮払命令が出ており(本件1(8)),本件就労命令はこの仮払命令を受けて発せられたという経緯や,賃金以外の条件について,詰める必要性があったとは考えられず,本件就労命令に応じられないほどに,条件や地位が不安定であるとは考えられない。
なお,原告は,本件就労命令が有効であっても,年次有給休暇の取得を申し入れたと主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。通知書(<証拠省略>)に,「これらの問題について何らの解決策も提示されないまま,ただ出勤のみを命じられるのであれば,X氏(原告)としては年次有給休暇を取得せざるを得ません。」との記載はあるが,これを年次有給休暇の取得を確定的に申請した行為とみることはできない。
(イ) 本件第1次解雇事由
前記(1)で検討したとおり,本件第1次解雇事由として主張された事由については,懲戒解雇を相当とするまでの事由とはいえないものの,普通解雇をするにあたっては,他の事情とともに考慮されるべきである。
(ウ) その他の解雇権の濫用に関する事情
原告は,本件第2次解雇は,本件第1次解雇と同じ動機のもとでされたもので,本件第1次解雇と一体をなし,原告が,独立に関し,被告代表者ともめたことをきっかけに,被告代表者が原告を疎んじたことを理由とするもので,解雇権を濫用するものであると主張する。
たしかに,原告が,独立が認められないことに関して,a社本部に連絡をとったりしたことについて,被告代表者が,原告に対して疎ましいといった感情を有していたことは容易に推認することができる(そもそも,懲戒解雇事由のひとつとして挙げられていたこと,また,前記1(6)イに述べた等級確認書の記載によって窺える。)。
しかし,本件第1次解雇,本件第2次解雇に至った経緯を考えると,解雇の判断に至った理由としては,a社本部に対するメールを始めとする,原告の独立を巡る問題だけではなく,前記1(5),(6)で述べた原告の勤務態度や,これに対する指導内容,すなわち,原告が,他の従業員に対し,足蹴りなどの暴力行為を伴った指導をしていたことや,これが顧客の投書で指摘されていたこと,その後も,顧客からチューインガムを噛みながら仕事をしていたとのクレームがあったり,フライヤーの中に雑巾を落としたのに,油を取り替えることなく,調理をしたことが投書されたりしたことなどの事情が大きく影響していることが認められる。
しかも,原告がBS社員として雇用されたが,原告の暴力行為の事実がa社本部に伝わっているため,原告の独立は極めて困難な状況にあったことが認められる(そのことから,被告において,どのような対応をとるべきであったかについては,後に検討する〔後記7〕)。
被告においては,BS社員は,店長より上のポストに就くことはなく,原告としては,BS社員を続ける意味がほとんどなかった状況にあったといえる。
以上に,前記(ア),(イ)を併せ考えると,本件第2次解雇を権利の濫用であると認めることはできず,その効力を否定することはできない。
(エ) まとめ
以上によると,本件第2次解雇が解雇権の濫用であるとする原告の主張を認めることはできず,原告は,本件第2次解雇によって解雇されたというべきである。
なお,原告は,本件就労命令に理由なく従わなかったのであるから,その後の賃金請求権は発生していないと考えるのが相当である。
3 等級基準表改定に基づく減給について
平成16年4月にBS社員等級基準表を改定したことは,前記1(3)イのとおりであり,その結果,3等級の基本給が18万円から15万円となったことが認められる(原告が,従前の基本給が20万円と主張するのは誤りと思われる。)。
また,同等級基準表によると,その他の手当も減額され,等級基準表上の支給総額は5万円の減額となっていることが認められるが(乙19の5・6),賃金台帳(<証拠省略>)によると,そのころの実際の支給総額の減少は認められない。
ところで,上記等級基準表の改定の内容については,少なくとも,原告はこれを容易に知ることができたことが窺われ,原告を含め,被告の従業員が,特段の異議を申し述べた形跡もなく,上記等級基準表の改定は,同意されたと同視することができる。
以上によると,BS等級基準表の改定が無効とはいえない。
4 降格に基づく減給について
(1) 平成17年4月度給与の減給について
賃金台帳(<証拠省略>)に記載された平成17年4月度給与(同年3月分)の内訳をみると,基本給を始め,各手当が全体として約21%減額されていることが認められる。一方,店長手当(通常であれば13万円であるところ,他の手当と同様21%減の10万2555円)が支給されているが,BS社員等級基準表によると,店長手当が支給されるのは4等級以上であるが,4等級では3万円のみであり,3等級は13万円であることから考えると,平成17年4月度給与は,3等級を前提として支給されたことが認められる。
そうすると,上述の減給がされたのは,前記1(5)キのとおり,原告が交通事故にあい,欠勤したことによる減給であると認めるのが相当である。
(2) 平成17年5月度給与の減給について
賃金台帳(<証拠省略>)及びBS社員等級基準表(乙19の6)によると,平成17年5月度給与(同年4月分)から,6等級に降格されたことを前提とした支給がされていることが認められる。
被告は,降格の理由として,前記第3において,2(3)【被告の主張】アのとおり主張する。
たしかに,BS社員等級基準表には,等級毎の昇格基準が設けられており,逆に言えば,この昇格基準を欠いた場合に,降格されることを含む趣旨とも読めないことはない。
しかし,被告が降格の理由として主張するのは,チェックリストや食材管理不備に関することであるが,これらは,被告の主張自体からも,かねてから指摘されていたというのであるから,どうして,この時期に3等級も降格されるのか合理的な説明がつかない(被告は,平成17年3月分の給与において,一旦,4等級に降格させたと主張し,これに沿う証拠〔乙13の5〕もあるが,前記(1)のとおり,実際には,降格されなかったことが認められる。なお,4等級への降格の意見が出された原因は,上記証拠〔乙13の5〕の記載からすると,原告が,a社本部にメールを送ったことが原因であることが強く推認される。)。
また,被告が降格の理由として挙げるもう一つは,原告が,一旦,退職の意思表示をし,これを翌日に撤回したことである。しかし,原告が退職の意思表示を撤回し,被告がこれを受け入れた際,受入の条件として,6等級に降格させるとの条件を提示したような事実は窺えず,また,原告がこれに同意した事実も窺えない。
しかも,原告の職務内容は,等級の降格の前後を通じて変化があったという事情はない。
以上のとおり,本件等級の降格は,その理由に合理性を認めることができず,原告本人の同意も認められない以上,無効と言わざるを得ない。
5 未払賃金請求(割増賃金)について
(1) 支給されていた賃金
賃金台帳(<証拠省略>)によると,原告は,平成17年2月分まで,少なくとも34万4000円の給与を支給されていたことが認められる(前記(1)のとおり,欠勤による減額を除く。)。
(2) 支給されるべき未払賃金
前記2ないし4によると,原告は,被告に対し,平成17年4月分以降,平成18年1月12日までの給与(前記2(3)イ(エ)参照)について,原告の請求する34万4000円と実際に支給された賃金との差額の支払を求めることができ,その金額は,別紙5のとおり,236万3172円となる(平成18年1月分は日割計算による。)。
なお,上記236万3172円のうち平成17年度分の給与223万0011円は,原告の請求(3)に対応し(遅延損害金の請求がある。),上記236万3172円のうち平成18年1月分給与の12日分の13万3161円は,原告の請求(2)の一部に対応している(遅延損害金の請求はない。)。
原告の請求(2),(3)のうち,上記認容額を超える部分及び原告の請求(5)についてはいずれも理由がない。
6 割増賃金
(1) 平成16年3月分から平成17年7月分までの割増賃金について
ア 時間外労働等
原告は,概ね,勤務リスト(<証拠省略>)に従い,終業時刻については,営業日報(<証拠省略>)の最終時刻から求め,原告の労働時間を計算している(別紙1の1ないし1の17の各年月の労働時間欄)。
すなわち,開始時刻については,勤務リスト(<証拠省略>)の記載に基づいた上,1時間単位の端数については切り捨てて計上されている。終業時刻以外は,計算の便宜上,1時間単位で計算しているため,全体としては切り捨てにより計上されている。また,終業時刻については,勤務リストによると,原告の終業時刻は午前1時で終了となっていることが多いが,この時刻は,閉店時刻であり(原告本人),実際の終業時刻を示しているものとは考えにくく,むしろ,証拠(原告本人)によると,原告が閉店後,営業日報の記載を完了し,終業時刻(退店時間/最終)を記入して,被告にファックス送信していたことが認められる。
そうすると,上述した原告の労働時間の算出方法は,一応の合理性を有しているというべきであり,これに証拠(原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,原告の上記期間における実労働時間,時間外労働時間,深夜労働時間,休日労働時間は,別紙6の1ないし6の17の各年月の各欄記載のとおり認定するのが相当である(同別紙中 部分は,原告主張と異なる時間等を認定した。)。もっとも,1週間単位の時間外労働時間の合計については,上記各欄において認定した時間数を超えることは明らかなので,結局,時間外労働時間の合計としては,原告が別紙3で主張する時間外労働時間(別紙6の1ないし6の17の欄外に記載)の限度で認定するのが相当である。
イ 割増賃金の基礎となる賃金(時間単位)
原告は,割増賃金の基礎となる賃金の計算を別紙1の1ないし1の17のとおりと主張する。
しかし,前記3,4を前提に計算すると,次のとおりとなる。
なお,所定労働日数は休日が週1日のため,1か月の所定労働時間は,208時間としているところ,これをそのまま採用する。
(ア) 平成16年3月分から同年6月分まで
賃金台帳(<証拠省略>)によると,上記期間の原告の基本給は18万円,店長手当7万円,住宅手当2万円であったことが認められる。
通常,住宅手当は,割増賃金の基礎となる賃金に含めて計算することが相当である(乙19の4によると,原告の当時の等級は4等級であったことが認められる。)。
そうすると,上記期間における割増賃金の計算の基礎となる単位時間当たりの賃金は,1298円となる。
〔計算式〕(180,000+70,000+20,000)÷208=1,298
(イ) 平成16年7月,8月分
賃金台帳(<証拠省略>)によると,上記期間の原告の基本給は15万円,店長手当13万円,調整手当1万円,住宅手当2万円であったことが認められる(乙19の5によると,平成16年7月分から3等級に進級したことが認められる。)。
なお,住宅手当については,前記(ア)のとおりであり,基本給減額分3万円を認めることができないことについては、前記3のとおりである。
また,それ以前は,基本給18万円に加え,店長手当7万円などのほか残業手当3万円(毎月定額)が支給されていたところ,平成16年7月分以降,残業手当が削減される一方,店長手当13万円が支給されている(基本給は15万円に減額されている。)。このため,増額された店長手当に残業手当が含まれているか否かが問題となりうる。
平成16年7月に3等級に復帰したことによることが窺われるので,BS社員等級基準表(乙19の4・5)の3等級を比較すると,乙19の4では,3等級には残業手当3万円を含め35万円が支給されていたが,乙19の5では30万円の支給となっている。なお,賃金台帳によると,平成16年7月,8月分は1万円の調整手当が,その後は,3万円の調整手当が支給されているが,両者を比較する以上,名目どおり,残業手当が支給されなくなったと考えるのが相当である。
そうすると,上記期間における割増賃金の計算の基礎となる単位時間当たりの賃金は,1490円となる。
〔計算式〕(150,000+130,000+10,000+20,000)÷208=1,490
(ウ) 平成16年9月分から平成17年3月分まで
賃金台帳(<証拠省略>)によると,上記期間の原告の基本給は15万円,店長手当13万円,調整手当3万円,住宅手当2万円だったことが認められる。
前記(ア),(イ)で述べたところによると,上記期間における割増賃金の計算の基礎となる単位時間当たりの賃金は,1586円となる。
〔計算式〕(150,000+130,000+30,000+20,000)÷208=1,586
(エ) 平成17年4月分以降
前記4のとおり,平成17年4月分以降の給与についての減給処分は無効であると考えるべきであるから,上記期間における割増賃金の計算の基礎となる単位時間当たりの賃金は,1586円となる(原告も,割増賃金の請求については,平成17年3月分の給与の減給処分については,特に主張をしていない。)。
〔計算式〕(150,000+130,000+30,000+20,000)÷208=1,586
ウ 割増賃金の算定
以上によると,原告に支給されるべき上記期間中の割増賃金は,別紙7のとおり300万2193円となる。
なお,原告は,移動時間についても労働時間に含めるべきと主張するが,その実態は不明であり,これを労働時間に含めて算定することはできない。
また,上記割増賃金のうち,平成17年7月分の4万0375円(別紙7参照)の支払期日は,平成17年8月10日であるから,遅延損害金の起算日は同月11日となる。
(2) 平成8年4月分から平成16年2月分までの割増賃金について
ア 消滅時効
平成16年2月分の支給日は平成16年3月10日であるところ,本訴提起までに2年以上が経過しており,それ以前に支払日が到来する上記期間の割増賃金に関する請求権は,時効消滅している。
ただ,平成16年2月分の27日と28日の2日分については,合計4300円の限度では,時効消滅から免れる(前記第3の3【被告の主張】(2)参照)。しかし,上記2日分の時間外労働を認めるに足りる証拠はない。
イ 原告の主張について
原告は,被告が割増賃金を支払っているかの如く装っていたため,割増賃金が多額であることに気づかなかったため,消滅時効の援用は許されないと主張するが,本件訴訟に現れた事情を全て考慮しても,消滅時効の援用が許されない事情があるとは考えられない。
(3) 付加金
被告は,BS社員に対し,所定労働時間として10時間を命じ(36協定の存在の主張,立証はない。),所定休日は週1日であるため,1週間の所定労働時間は50時間にも及び,しかも,実際の労働時間はこれを超えるものであることが認められる。
その他,上記(1)で認定した事実に照らすと,被告の従業員に対する労働時間の管理内容は悪質というべきであり,上記認定の割増賃金と同額の付加金の支払を命じるのが相当である。
(4) 管理監督者性について
被告は,原告が管理監督者であるとの主張は明示的にはしていないが,平成16年4月ころ改定されたBS社員等級基準表において,4等級以上の社員についてのみ残業手当の支給をしなくなり,また,勤務時間について,終日勤務との記載をしていることから,念のため付言するが,上記等級基準表の改定以前は,4等級以上の社員に対しても,定額ではあるが残業手当が支給されていたこと,その前後を通じ,労働時間の管理を受けた上(<証拠省略>),スーパーバイザーの監督を受けていたこと(前記1(2)ウ),業務の内容に変更が認められないことから,原告を管理監督者ということはできない。
7 慰謝料請求権の存否
(1) 解雇による精神的損害
原告は,不当な解雇により精神的苦痛を受けたと主張する。
確かに,前記2のとおり,本件第1次解雇は無効というべきであるが,懲戒解雇としては,懲戒事由の存在や程度が,懲戒解雇を根拠づけるに不十分であるとされたものであり,後にされた本件第2次解雇が有効であると認められたこと,その理由は,本件第1次解雇の解雇事由も含めたものであることを考えると,本件第1次解雇が無効であることを理由として慰謝料の支払を認めなければならない程度の違法性があったということはできない。
(2) 独立妨害による精神的損害
前記1(1)のとおり,原告は,ブルームシステムを利用して,独立することを希望して,BS社員として被告と雇用契約を締結した。
そのことによって,被告が,原告を独立させる義務が発生するわけではないが,仮に,被告が,原告の独立を妨害したのであれば,債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償債務を負うというべきである。
原告は,被告が,原告の独立を妨害したと主張するが,その根拠は,平成10年12月には,原告が独立資格のあるBS3等級に進級し,平成12年6月には,独立承諾書がa社本部に提出されているにもかかわらず,一向に独立が承認されないことに求めていると考えられる。
しかし,前記1(2)で述べたとおり,3等級に進級したからといって,独立が承認されるわけではなく,相当に厳しい競争があることが推認される。そして,前記1(4),(5)で述べたとおり,原告の場合も,平成12年6月に独立承諾書が提出され,a社本部から調査があった際,何かアピールするものを求められたにもかかわらず,これに応えることができず,そのうち,原告の他の従業員に対する暴行が発覚し,しかも,それが単発的なものではなく,常習性を窺わせる内容であったため,原告の独立がa社本部の内部でも非常に厳しいものとなったことが窺える。
したがって,その後,長期間にわたって,独立が認められなかったことを被告の責任にすることはできないというべきである。
もっとも,仮に,上記のとおり,原告の独立が非常に難しくなったのであれば,将来の身の振り方を早く決めさせるためにも,早期に,状況を明確に伝えておくことが望ましいというべきである。特に,本件では,極めて独立の見込みが薄くなっているにもかかわらず,長期間,BS社員としての努力を強い続けた結果となったことが指摘できる。しかし,その原因は,もとはといえば原告にあること,また,全く独立が不可能と決定したわけでない以上,独立への努力を継続させたことが違法とはいえない。
8 よって,主文のとおり判決する。
(裁判官 山田陽三)
別紙7
休日
時給
実労
残業
残業代
深時
深夜代
休時
休日代
小計
支払済
認容額
H16年3月
3
1,298
296.68
89.20
144,727
103.18
33,481
1.00
1,752
179,960
30,000
149,960
H16年4月
2
1,298
299.16
91.20
147,972
109.66
35,584
1.00
1,752
185,308
30,000
155,308
H16年5月
3
1,298
318.77
102.00
165,495
108.77
35,295
1.00
1,752
202,542
30,000
172,542
H16年6月
4
1,298
290.74
88.80
144,078
104.74
33,988
1.00
1,752
179,818
30,000
149,818
H16年7月
2
1,490
311.03
96.00
178,800
111.03
41,358
2.00
4,023
224,181
0
224,181
H16年8月
1
1,490
307.83
97.80
182,152
105.83
39,421
4.00
8,046
229,619
0
229,619
H16年9月
1
1,586
300.25
85.30
169,107
101.25
40,145
7.00
14,987
224,239
9,261
214,978
H16年10月
1
1,586
311.75
83.80
166,133
101.75
40,343
12.00
25,693
232,169
15,288
216,881
H16年11月
5
1,586
252.92
53.90
106,856
20.92
8,294
0.00
0
115,150
0
115,150
H16年12月
4
1,586
276.17
61.20
121,329
23.17
9,186
0.00
0
130,515
0
130,515
H17年1月
1
1,586
310.75
80.80
160,186
63.75
25,276
16.00
34,257
219,719
12,144
207,575
H17年2月
0
1,586
294.83
84.80
168,116
91.83
36,410
17.00
36,398
240,924
24,694
216,230
H17年3月
9
1,586
239.52
68.50
135,801
86.52
34,305
25.17
53,891
223,997
0
223,997
H17年4月
1
1,586
297.08
83.10
164,745
108.58
43,051
7.00
14,987
222,783
34,673
188,110
H17年5月
5
1,586
302.08
94.10
186,553
115.08
45,629
0.00
0
232,182
30,000
202,182
H17年6月
5
1,586
268.43
76.80
152,256
96.43
38,234
2.00
4,282
194,772
30,000
164,772
H17年7月
1
1,586
60.33
15.30
30,332
25.33
10,043
0.00
0
40,375
0
40,375
合計
48
4,738.32
1,352.60
2,524,638
1,477.82
550,043
96.17
203,572
3,278,253
276,060
3,002,193
(別紙 4の5) BS社員等級基準表 '04.04
等級
職位
基木給
家族・
住宅手当
職能給
店長
手当
残業
手当
支給
合計
勤務
時間
昇給基準
試験採用
試用期間750円×時間数就業は店長又はSVと相談
本人会社双方が適正を見定める期間
入社後1ヶ月間を目安とする
9
補佐見習
150000
20000
30000
200000
8
意欲的に取り組む姿勢がよく伝わり
洗い場・仕込み・食材準備等が任せられる
担当箇所の3Sの徹底
8
補佐見習
150000
20000
5000
30000
205000
8
意欲プラス,ライス盛りポジションと,
炊飯管理が任せられる
開店準備が任せられる
7
補佐
150000
20000
10000
30000
210000
終日勤務
意欲プラス,フライヤー業務までと,
清掃管理が任せられる
閉店作業が任せられる
6
補佐フリー
150000
20000
30000
30000
230000
終日勤務
意欲的な勤務態度がアピールでき,ルー掛けポジションと
発注管理が任せられる
5
補佐フリー
150000
20000
40000
30000
240000
終日勤務
接客業務までマスターし商品管理・シフト管理が任せられる
ある程度の突発出来事も報告し,対応可能
4
副店長
150000
20000
80000
30000
280000
終日勤務
ニコ・キビ・ハキの実践,アピール&運営ができる
指示が任せられ,責任者業務できる
3
店長代理
150000
20000
130000
300000
終日勤務
常に責任感ある態度で,自ら店を改善する力量を有す
P/Lがコントロールできる
2
店長
150000
20000
180000
350000
終日勤務
責任ある態度はもちろん,努力もし,運営管理においてよい結果を出している
6Sの徹底,Baの運営ができる
1
店長
150000
20000
230000
400000
終日勤務
店長の職責を十分理解し,計数管理も任せられる
7Sの徹底,Baの運営が継続できる
☆8~7等級は3ヶ月間,6~5等級は6ヶ月間同等級に留まった場合は,翌月より1等級降格とする。
☆9等級より義務として,独立準備金を最低10000/月以上積立貯金を行う。
独立規定
勤続期間・等級 3等級独立基準 勤続期間3年以上とし,独立前直近12ヶ月間3等級である事。且,配偶者がメイト代行として認定され12ヶ月以上継続している事。
2等級独立基準 勤続期間3年以上とし,独立前直近6ヶ月間2等級である事。且,配偶者がメイト経験12ヶ月以上とし本部が認めたものとする。
1等級独立基準 勤続期間2年以上とし,独立前直近3ヶ月間1等級である事。
自己資金 <1>自己資金として200万円以上とする。親などの援助は含まず,本人の努力により預金されたものでなければならない。
自身の給与振込み銀行にて毎月定期積み立てを行うことが望ましい。
<2>独身独立者は自己資金400万円以上とする。
能力 (株)aの独立審査で許可を得ること。
※BS社員・TOP社員共通
☆交通費は実費支給。(上限20000円)各店舗間は定額支給。(申請書にて自己申請)
☆5等級以下で責任者を命じられた者は,責任者手当として,10000円/月支給する。(責任者は終日勤務とする)
☆遅刻・早退(入退店時間より60分未満)は,不就労減として,5000円/回カットする。3回以上(無断は1回)でワンランク以上降格。
☆欠勤(遅刻・早退の60分を超えた場合や,事後報告の遅刻)は10000円/回カット。無断欠勤後,そのまま退職に至った場合,試験採用(日給月給)に降格の後,免職処分とする。
☆能力は,日常の本人の言動にて判断する。(誠実さ・行動力・企画力・リーダーシップ・気力・体力・モットー)