大阪地方裁判所 平成18年(ワ)2034号 判決 2006年7月27日
原告
株式会社カミオジャパン
訴訟代理人弁護士
阪口春男
同
今川忠
同
岩井泉
同
原戸稲男
同
阪口祐康
同
豊浦伸隆
同
西山宏昭
同
山岸正和
同
嵩原安三郎
同
寺田明日香
同
木村智彦
同
白木裕一
同
中澤構
同
瀬合孝一
同
松井良憲
同
北見洋
被告
株式会社クーリア
訴訟代理人弁護士
渡辺四郎
同
久保田昇
同
宮脇常亨
同
中島耕平
主文
1 被告は,別紙各物件目録記載の商品に別紙標章目録記載の標章を付し,又は同標章を付した同商品を販売し,販売のために展示してはならない。
2 被告は,その本店,支店,営業所,事務所及び倉庫に存在する別紙各物件目録記載の商品から別紙標章目録記載の標章を抹消せよ。
3 被告は,原告に対し,96万3427円及びこれに対する平成18年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
5 この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行することができる。
事実
第1当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
主文同旨
2 請求の趣旨に対する答弁
(1) 原告の請求をいずれも棄却する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
第2当事者の主張
1 請求原因
(1) 原告の商標権
原告は,シールを指定商品とする別紙商標目録記載の登録商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である(平成12年3月24日登録)。
(2) 被告の行為
被告は,平成16年9月から,別紙各物件目録記載の商品(以下,イ号物件目録記載の商品を「イ号商品」,ロ号物件目録記載の商品を「ロ号商品」といい,これらを併せて「被告商品」という。)に別紙標章目録記載の標章(以下「被告標章」という。)を付して販売している。
(3) 商標及び商品の類似
被告標章は,本件商標に類似している。
被告商品は,本件商標の指定商品であるシールと同一(イ号商品)か,又はこれに類似している(ロ号商品)。
(4) 被告商品の販売再開のおそれ
仮に,現在被告が被告商品の販売を中止しているとしても,次のような従前の経緯に照らせば,将来被告が被告商品の販売を再開するおそれがある。
ア 原告は,被告に対し,平成17年1月25日付けの警告書(甲6の1)により,イ号商品の販売は原告の商標権を侵害する行為である旨指摘して,直ちにその販売を中止するよう求めた。これに対し,被告は,複数回にわたる回答の後,平成17年3月17日付けの回答書(甲7)により,イ号商品は平成16年9月までに完売しており在庫はない旨回答した。しかし,その後,原告から被告に対し,平成17年3月30日付けの通知書(甲8の1)により,原告は被告が平成17年2月以降もイ号商品を販売していることを把握している旨通知したところ,被告は,平成17年4月4日付けの回答書(甲9)により,イ号商品は同年1月7日まで販売したがそれ以降は販売していない旨回答した。
イ その後,原告と被告は,イ号商品の販売による損害賠償や謝罪広告について話し合いを行ったが,この間,被告は,ロ号商品の販売の事実を秘匿し続けた。
ウ 原告は,被告に対し,平成17年7月29日付けの警告書(甲10の1)により,直ちにロ号商品の販売を中止するよう求めたが,被告は,その販売の事実を認めない(甲11)。
(5) 原告の損害
被告は,平成16年9月以降,少なくとも4万0780個のイ号商品を販売し128万4570円の売上を,4万0780個のロ号商品を販売し192万6855円の売上を,それぞれあげ,これらにより,少なくとも96万3427円の利益を得た。したがって,上記(2)の被告の行為によって原告が被った損害の額は,96万3427円である(商標法38条2項)。
(6) よって,原告は,被告に対し,商標権に基づき,被告商品の製造販売の停止及び被告商品からの被告標章の抹消を求めるとともに,不法行為に基づき,96万3427円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成18年3月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 請求原因に対する認否
(1) 請求原因(1)は認める。
(2) 請求原因(2)のうち,被告が平成16年9月から平成17年1月7日にかけてイ号商品に被告標章を付して販売したこと,被告が平成16年11月から平成17年3月末にかけてロ号商品に被告標章を付して販売したことは認め,その余は否認する。
イ号商品は平成17年1月7日までに,ロ号商品は同年3月末までに,それぞれ完売した。
(3) 請求原因(3)は認める。
(4) 請求原因(4)のうち,ア並びにイ及びウの各前段は認め,イ及びウの各後段は否認する。
被告は,ロ号商品の販売の事実を秘匿していない。被告代理人作成の通知書(甲11)にも記載があるように,被告においてロ号商品の販売に関する調査を行っていたにすぎない。
(5) 請求原因(5)は争う。被告のイ号商品の売上は192万6855円,粗利は61万1700円(税抜き)で,ロ号商品の売上は189万円であり,粗利は84万8600円(税抜き)である。原告の損害額の算定に当たっては,さらに販売管理費等のコストを差し引くべきであり,純利益は2%程度であるから,原告の損害額は,被告商品の粗利合計153万3315円の2%に当たる3万0666円である。
理由
1 請求原因(1)の事実は,当事者間に争いがない。
2 請求原因(2)のうち,被告が平成16年9月から平成17年1月7日にかけてイ号商品に被告標章を付して販売したこと,被告が平成16年11月から平成17年3月末にかけてロ号商品に被告標章を付して販売したことは,当事者間に争いがない。
3 請求原因(3)の事実は,当事者間に争いがない。
4 請求原因(4)(被告商品の販売再開のおそれ)について
(1) 同アの事実は当事者間に争いがない。
(2) 同イの前段の事実は当事者間に争いがない。また,同後段の事実(原被告間で話し合いを行っていた間,被告がロ号商品の販売の事実を秘匿し続けたこと)に関して,原被告間で話し合いを行っていた間,被告が少なくとも平成17年3月末まではロ号商品を販売していながらこの事実を原告に告げなかったことが証拠(甲11)及び弁論の全趣旨によって認められる。
(3) 同ウの前段の事実は当事者間に争いがない。また,同後段の事実(被告がロ号商品の販売の事実を認めなかった)については,ロ号商品の販売中止を要求する原告の平成17年7月29日付けの警告書(甲10の1)に対し,被告が少なくともロ号商品の販売の事実を積極的には認めていなかったことが,証拠(甲11)によって認められる。
(4) 上記認定事実によれば,将来被告が被告商品の販売を再開するおそれがあることが認められる。
5 請求原因(5)について
上記2の被告の行為は原告の商標権を侵害するものであり(商標法37条1号),これにより原告が受けた損害の額については,証拠(甲4・5の各1・2)により,イ号商品の小売単価が105円,ロ号商品の小売単価が157円と認められることに,証拠(甲7)及び弁論の全趣旨(とりわけ,原告から損害額の立証のため,被告商品の取引に関する記載がある決算報告書,売上台帳,経費明細書等について文書提出命令の申立がなされたのに対し,被告は「11月ポチ袋シールフレーク」の発注書(乙1)を提出するのみで,同命令に応じる意思がなく,また,被告商品の販売額についてこれ以上立証するつもりもない旨陳述した事実)を併せ考慮すると,96万3427円と認められる。
6 結論
以上によれば,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 山田知司 裁判官 西理香 裁判官 村上誠子)
別紙イ号物件目録
1 シール
10~40mm片程度の大きさの、様々にデザインされたシールを、一定の大きさの包装袋の中に多数混入し、同袋に「シールフレーク」なる文字からなる標章を付したもの。
別紙ロ号物件目録
1 シール
10~40mm片程度の大きさの、様々にデザインされたシールを、一定の大きさの包装袋の中に複数枚のポチ袋とともに多数混入し、同包装袋に「シールフレーク」なる文字から標章を付したもの。
別紙標章目録
シールフレークの文字列からなる標章
別紙商標目録
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