大阪地方裁判所 平成19年(ワ)687号 判決 2008年7月31日
原告
X1 他1名
被告
Y1 他1名
主文
一 被告らは、原告X1に対し、連帯して金二〇二六万九四三二円及び内金一八四一万九四三二円に対する平成一八年二月二二日から、内金一八五万円に対する平成一三年五月二五日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告らは、原告X2に対し、連帯して金一一〇万円及びこれに対する平成一三年五月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
四 訴訟費用は、これを二分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。
事実及び理由
第一請求
一 被告らは、原告X1に対し、連帯して金三七一三万九四六五円及び内金三一八六万二五〇一円に対する平成一三年五月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告らは、原告X2に対し、連帯して金二二〇万円及びこれに対する平成一三年五月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二当事者の主張
一 請求原因
(1) 交通事故(以下「本件事故」という。)の発生
ア 日時 平成一三年五月二五日午後一一時三八分ころ
イ 場所 大阪府茨木市西河原三丁目四番先交差点(以下「本件交差点」という。)
ウ 加害車 被告Y2(以下「被告Y2」という。)保有、同Y1(以下「被告Y1」という。)運転の普通乗用自動車(〔ナンバー省略〕)
エ 被害車 原告運転の足踏み式自転車
オ 態様 被告Y1は、前記加害車を運転して信号機のない本件交差点を西から東に向かって直進するに当たり、交差道路から本件交差点に進入してくる車両等の有無及び安全確認不十分のまま進行したため、折から右方道路から本件交差点に進入してきた原告X1(以下「原告X1」という。)運転の足踏み式自転車の発見が遅れ、急ブレーキをかけたが間に合わず、前記加害車前部を前記自転車左側面部に衝突させ、原告X1に傷害を負わせた。
(2) 被告らの責任原因
ア 被告Y1は、交差道路から本件交差点に進入してくる車両等の有無及び安全確認を怠った過失があるので、不法行為(民法七〇九条)に基づく損害賠償責任を負う。
イ 被告Y2は、前記加害車の保有者であるから、運行供用者として自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条の責任を負う。
(3) 原告X1の受傷内容及び後遺障害
ア 原告X1は、本件事故により、左下腿骨骨折、頸椎・胸椎骨折等の傷害を負った。
イ 原告X1は、平成一七年五月一一日をもって症状固定との診断を受け、平成一八年二月一七日、後遺障害等級三級三号に該当すると認定された。
(4) 原告X1の損害
ア 治療関係費 合計一七三万九六六七円
イ 付添看護費 合計一一二万九〇〇〇円
原告X1の傷害は重傷であったから、入通院には近親者の付添いが必要であった。
ウ 入院雑費 合計一〇万六六〇〇円
エ 通院交通費 合計五八万一〇五〇円
オ 休業損害 合計一二八六万三八三〇円
原告X1の本件事故前の収入額は一日当たり八八九〇円であったところ、同原告は一四四七日間休業したから、休業損害額は合計一二八六万三八三〇円である。
カ 入通院慰謝料 六〇〇万円
原告X1の入院日数八二日間、通院日数一三六五日間などの諸事情を総合考慮すると、入通院慰謝料額は六〇〇万円を下らない。
キ 後遺障害による逸失利益 合計三〇四五万〇六七二円
(ア) 原告X1の後遺障害は後遺障害等級三級三号に該当する旨認定されているから、労働能力喪失率は一〇〇パーセントである。
(イ) 原告X1の基礎収入額については将来昇給する見込みがあることから、全年齢平均賃金月額三五万七〇〇〇円(年額四二八万四〇〇〇円)を基準とするのが相当である。
そして、就労可能年数九年間(症状固定時六三歳であったから、平均余命の二分の一である九年間を就労可能年数とした。)として算定すると、原告X1の逸失利益額は三〇四五万〇六七二円となる。
ク 後遺障害慰謝料 二〇〇〇万円
原告X1の後遺障害が後遺障害等級三級三号に該当すること、被告Y1がこれまで一度も原告X1に対して謝罪したことがなく、極めて不誠実な態度をとっていること等の諸事情を考慮すると、後遺障害慰謝料の額は二〇〇〇万円を下ることはない。
ケ 弁護士費用 二八七万円
コ 確定遅延損害金 五二七万六九六四円
原告X1が自賠責保険金二二一九万円を受領したのは平成一八年二月二一日であり、この保険金によって填補された損害額に対する本件事故日から支払日まで(一七三六日間)の確定遅延損害金の額は、五二七万六九六四円である。
(5) 原告X2(以下「原告X2」という。)の損害
ア 近親者固有慰謝料 二〇〇万円
原告X2は、平成一三年八月から同年一〇月にかけて狭心症及び乳ガンに罹患していることが判明し、自らも手術を受け、さらに放射線治療を受けている病状にある。そのような状況にありながら、後遺障害等級三級に相当する後遺障害を残している原告X1の看病を続けていかなければならないなど、死に比肩すべき精神的苦痛を被っている。原告X2の慰謝料額は、少なくとも二〇〇万円が相当である。
イ 弁護士費用 二〇万円
(6) よって、①原告X1は、被告らに対し、本件事故による損害賠償金三七一三万九四六五円(前記(4)アないしク記載金額の合計額に二割の過失相殺を行った上、既払金を控除した残額に前記(4)ケ及びコ記載金額を加えたもの)及び内金三一八六万二五〇一円に対する平成一三年五月二五日(本件事故日)から民法所定の年五分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め、②原告X2は、被告らに対し、本件事故による損害賠償金二二〇万円(前記(5)記載金額の合計額)及びこれに対する平成一三年五月二五日(本件事故日)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める。
二 請求原因に対する認否
(1) 請求原因(1)記載の事実のうち、アないしエ記載の各事実は認めるが、オ(事故態様)は争う。
本件事故が発生したのは片側二車線の国道一七一号線であり、幹線道路である。現場は信号機のない交差点で、加害車の走行していた国道一七一号線が優先道路、被害車の走行していた道路が劣後道路になっていた。現場の約四〇メートルないし五〇メートル東方には自転車も通行できる地下道が設けられていた。本件事故が発生したのは午後一一時三八分ころであり、現場付近は暗く見えにくい状況にあった。
被告Y1は、時速約七五キロメートルで国道一七一号線を西から東に向けて走行していたところ、折から原告X1が本件交差点を南から北に向けて自転車で走行してきたのを前方約九・七メートルの地点に発見し、急ブレーキをかけたが間に合わず衝突したものである。
(2) 同(2)は、いずれも争う。
(3) 同(3)記載の事実は、いずれも不知。
(4) 同(4)は、争う。
特に、原告X1に脊髄損傷は生じていないのであって、これが生じていることを前提とした自賠責の後遺障害認定は誤りである。せいぜい後遺障害等級併合一〇級が認められるに止まる。
また、症状固定時期も、平成一七年五月一一日ではなく、平成一四年九月一一日と認定すべきである。
(5) 同(5)は、争う。
三 抗弁
(1) 過失相殺
前記二(1)記載の事故態様に鑑みれば、優先道路を自転車で横断するに際して左右の安全確認を怠った原告X1にも過失がある。また、原告X1は、本件事故当時、飲酒の上で自転車を走行させていたものである。
本件事故については、加害車に速度超過はあるも、夜間の事故であること等の事情も斟酌すると、概ね五〇パーセント程度の過失相殺をすべきである。
(2) 損益相殺ないし損害の一部填補 総合計二九三〇万四一六三円
原告X1は、次のとおりの支払を受けているから、損害額元本から控除すべきである。
ア 加害車に付保された任意保険会社から 合計一三七万六五一九円
イ 自賠責保険金 二二一九万円
ウ 人身障害保障保険 合計五七三万七六四四円
四 抗弁に対する認否
(1) 過失相殺について
被告Y1は時速八〇キロメートル以上で走行していたものである。また、衝突地点は原告X1が道路を渡りきった地点である(実況見分調書は被告Y1の指示説明を前提に記載されており、正確ではない。)。また、本件現場の夜間照明は明るく、当日は晴れで見通しは良の状況であった。
さらに、原告X1は高齢者(当時五九歳)であったこと、衝突地点からすると本件交差点には原告X1が明らかに先入していたと言えること、被告Y1には重過失(時速三〇キロメートル以上ものスピード違反を伴う前方注視等の義務違反がある。)があったと評価できること等の事情を考慮すれば、被告Y1の過失割合は八〇パーセント以上である。
(2) 抗弁(2)記載の事実(損益相殺ないし損害の一部填補)は認める。
第三当裁判所の判断
一 本件事故の発生事実(請求原因(1)記載の事実)について
(1) 請求原因(1)アないしエ記載の各事実(交通事故が発生したとの事実)は当事者間に争いがない。
(2) 被告らは同(1)オ記載の事実を争うが、被告Y1に前方注視義務違反があったこと、信号機のない交差点で被告Y1運転の加害車が原告X1運転の足踏み式自転車と衝突した事実は認定できる(甲三、乙一ないし三、六ないし八)。
二 被告らの責任原因(請求原因(2))について
(1) 被告Y1は、少なくとも前方注視義務違反の過失があったことは明らかである(乙一ないし三、六ないし八)から、本件事故によって原告らに生じた損害を賠償する責任を負う(民法七〇九条)。
(2) また、被告Y2は、前記加害車の所有者であって(乙九)運行供用者責任を負うことは明らかであるから、原告らに対し、自賠法三条の責任を負う。
三 原告X1の損害について
(1) 脊髄不全損傷の存否について
原告X1は本件事故によって脊髄損傷を負った旨主張し、これに沿う証拠として自賠責保険の後遺障害認定通知書(甲一三の(1)(2))及び医師の意見書(甲三〇の(1))を提出している。これに対し、被告らは、原告X1が本件事故によって脊髄損傷を負ったことを争い、これに沿う医師の意見書(乙二一)も提出している。
この点については、次に述べる理由から、原告X1は本件事故によって脊髄不全損傷を負ったと認定するのが相当である。
ア まず、本件事故は、被告Y1が時速七〇キロメートルないし八〇キロメートルで走行中に原告X1運転の自転車に衝突し、同原告をボンネットに跳ね上げたまま、衝突地点から約三九・七メートルの地点まで進行した上で同原告を地面に落としたという事故(甲三、乙一)である。そして、前記加害車の状況を見ると、フロントガラスも天井も大きく損壊しており(乙一、二)、原告X1に脊髄不全損傷が生じたとしても不自然ではない程度の衝撃の大きさであったと言える。
また、本件事故によって負ったことが明らかな原告X1の傷害は、左足関節内顆骨折、左腓骨骨幹部骨折、左肩関節脱臼、脊椎の多発骨折(第六・第七頸椎棘突起骨折、第一胸椎破裂骨折)であるところ、第一胸椎の椎体が完全にひしゃげてしまっていた状態(乙一四の五〇ページ「ムンテラ」部分参照)に鑑みると、その椎体の後ろ側にある脊髄の一部が損傷を受けた可能性は高いと言える。
イ 次に、原告X1には、現在、両下肢痙性不全麻痺(甲一五)及び両下肢知覚障害が発症している(甲九、三二)。これらの障害は、脊髄(頸髄及び胸髄を含む。)の索路症状と認められるから、脊髄不全損傷を推認させるものである。
さらに、原告X1に排尿・排便障害があること(甲一五、三〇、乙一五の五四ページ、一六の七ページ)も、脊髄不全損傷を推認させる症状と言うことができる。
ウ これに対し、被告らは、本件事故直後の画像所見(圧迫所見や髄内輝度変化)からは脊髄損傷を認める余地がない旨を指摘する。しかしながら、脊髄不全損傷は、知覚や運動が完全に麻痺する完全損傷とは異なり、損傷の部位・程度、損傷形態等により、代表的とされる各種症状の有無・程度には広範囲の差異があるとされ、画像で明確に捉えられない脊髄不全損傷があっても矛盾しないと言えるから、画像所見のないことが決定的なものとはならない。
次に、被告らは、本件事故に近接した時期には原告X1の両下肢の痙性麻痺を疑わせる症状もなく、両下肢の知覚障害も認められなかったにもかかわらず、事故から二年ないし三年経過後に痙性麻痺や知覚障害が生じることは脊髄損傷ではあり得ない旨指摘する。しかしながら、平成一三年五月二九日には上下肢に反射亢進が認められる(乙一四の四五ページ参照)など、本件事故に近接した時期に全く麻痺や知覚障害がなかったとまでは言えない。また、脊椎固定隣接障害や脊髄不全損傷により、遅発的に麻痺が進行したり、損傷脊髄由来の疼痛が悪化することは臨床医がしばしば経験するところである(甲三〇の(1))から、仮に本件事故に近接した時期に麻痺や知覚障害が現れていなかったとしても、原告X1が脊髄不全損傷の傷害を負ったと推認することを左右するものではない。
(2) 原告X1の損害額(弁護士費用を除く。) 総合計六一四三万四七五六円
ア 治療関係費 合計一三八万一六四二円
原告X1は、本件事故により直ちに大阪大学医学部附属病院に入院し、平成一七年五月一一日に症状固定の診断を受けた(甲九)。したがって、この症状固定日までの治療費をもって、本件事故との相当因果関係ある損害額と認定するのが相当である。
そうすると、治療費の合計額は一三八万一六四二円となる(甲一七、二四の(1)ないし(5)、二五の①ないし⑳、乙一〇、一一、弁論の全趣旨)。
イ 付添看護費 合計一一二万九〇〇〇円
原告X1の傷害の部位・程度、その後の治療経過等の諸事情を総合考慮すると、同原告の入通院には近親者の付添いが必要であったと認めるのが相当である。
そして、入院付添費は一日当たり五五〇〇円、通院付添費は一日当たり三〇〇〇円をもって相当と認めるから、入院日数八二日間、通院日数二二六日間の入通院付添費は合計一一二万九〇〇〇円となる。
ウ 入院雑費 合計一〇万六六〇〇円
入院雑費は、一日当たり一三〇〇円をもって相当と認めるから、八二日間の入院雑費は合計一〇万六六〇〇円となる。
エ 通院交通費 合計五八万一〇五〇円
本件事故による治療のための通院交通費として肯認できる額は、五八万一〇五〇円となる(甲二六、二七、弁論の全趣旨)。
オ 休業損害 合計一二八七万二七二〇円
原告X1の本件事故前の収入額は一日当たり八八九〇円であったところ、同原告は症状固定日(平成一七年五月一一日)までの一四四八日間全く就労できなかったと認められるから、休業損害額は合計一二八七万二七二〇円となる。
カ 入通院慰謝料 三三〇万円
原告X1の傷害の部位・程度、同原告の入院日数(八二日間)や通院実日数(平成一七年五月一一日の症状固定日までの間で二二六日間)等の諸事情を総合考慮すると、入通院慰謝料額は三三〇万円をもって相当と認める。
キ 後遺障害による逸失利益 合計二三〇六万三七四四円
(ア) 原告X1の後遺障害は脊髄不全損傷の影響もあって後遺障害等級三級に該当すると言うべきである(甲一三の(1)(2)、弁論の全趣旨)から、同原告の労働能力喪失率は一〇〇パーセントと認められる。
(イ) 原告X1は、a株式会社に勤務していたが、平成一一年一一月に退職した後、同社の関連会社であるb株式会社に所属してa株式会社の営業社員として派遣されていた者である。
そうすると、将来具体的に昇給する見込みは認め難いから、原告X1の基礎収入額については、本件事故当時の収入額(日額八八九〇円)に基づくのが相当である。
そして、就労可能年数九年間(症状固定時六三歳であったから、平均余命の二分の一である九年間が就労可能年数と認められる。)として、これに対応するライプニッツ係数(七・一〇七八)を乗じて中間利息を控除すると、原告X1の逸失利益額は、
8890円×365日×7.1078≒2306万3744円
となる(円未満切捨て)。
ク 後遺障害慰謝料 一九〇〇万円
原告X1の後遺障害が後遺障害等級三級に該当すること等の諸事情を考慮すると、後遺障害慰謝料額は一九〇〇万円をもって相当と認める。
(3) 過失相殺について
ア 被告らは、本件事故に関して原告X1にも落ち度があるとして、五〇パーセントの過失相殺を主張する。
イ 確かに、本件事故現場の被告Y1走行道路は中央線が引かれている優先道路であることは事実である上、夜間の事故である。しかし、他方で被告Y1は制限速度を二五キロ前後オーバーするスピードで走行していたこと(甲三、乙三、八)、衝突地点が中央線よりも北側であった上、被告Y1も原告を前方約九・七メートルの地点に至るまで発見できなかった(乙一、三、八)ことに鑑みると、被告Y1にも重過失があったと言うべきである。これらの諸事情(なお、原告X1が飲酒の上で自転車を運転していた事実は窺えるけれども、その度合いを客観的に裏付ける証拠もなく、初診時に暴言を吐いていたのも飲酒酩酊の影響か本件事故の影響かは明らかでないから、過失割合の修正要素として斟酌するのが相当でない。)を総合勘案すると、本件事故における過失割合は、原告X1が三五パーセント、被告Y1が六五パーセントと解するのが相当である。
ウ そうすると、前記三記載の原告X1の損害額六一四三万四七五六円から三五パーセントを減額すると、三九九三万二五九一円(円未満切捨て)となる。
四 損益相殺ないし損害の一部填補
(1) 原告X1は、被告側から合計七一一万四一六三円(自賠責保険金を除く。)を受領しているから、前記三(3)ウ記載の金額から上記七一一万四一六三円を控除すると、三二八一万八四二八円となる。
(2) さらに、原告X1は、平成一八年二月二一日に自賠責保険金二二一九万円を受領しているので、これを上記(1)記載の金員について本件事故日から平成一八年二月二一日までの遅延損害金にまず充当し、残額を元本に充当すると、別紙のとおり、残元本額は一八四一万九四三二円となる。
五 弁護士費用 一八五万円
弁論の全趣旨によると、原告X1が本件訴訟の提起及び追行を原告ら訴訟代理人に委任し、相当額の費用及び報酬の支払を約束していることが認められるところ、本件事案の性質、審理の経過及び認容額等を考慮すると、原告X1が本件事故と相当因果関係のある損害として賠償を求め得る弁護士費用の額は、一八五万円をもって相当と認める。
六 原告X2の損害額 合計一一〇万円
(1) 原告X2は、原告X1の妻であるが、自身も後遺障害等級三級に該当するような重篤な後遺障害が残った原告X1の介護を継続していかなければならない状況にある。この原告X2の置かれた状況に鑑みれば、まさに原告X1の死にも比肩し得べき精神的苦痛を受けていると評価すべきものであり(甲三三)、これに対する慰謝料の額としては一〇〇万円をもって相当と認める(なお、更に過失相殺はしない相当額である。)。
(2) また、弁論の全趣旨によると、原告X2が本件訴訟の提起及び追行を原告ら訴訟代理人に委任し、相当額の費用及び報酬の支払を約束していることが認められるところ、本件事案の性質や認容額等を考慮すると、原告X2が本件事故と相当因果関係のある損害として賠償を求め得る弁護士費用の額は、一〇万円をもって相当と認める。
七 結論
よって、原告X1の本件請求のうち、被告らに対し、損害賠償金二〇二六万九四三二円及び内金一八四一万九四三二円に対する平成一八年二月二二日(自賠責保険金受領日の翌日)から、内金一八五万円に対する平成一三年五月二五日(本件事故日)から各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由がある(なお、仮執行の宣言は相当でないから付さないこととする。)が、その余は理由がない。
また、原告X2の本件請求のうち、被告らに対し、損害賠償金一一〇万円及びこれに対する平成一三年五月二五日(本件事故日)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由がある(なお、仮執行の宣言は相当でないから付さない。)が、その余は理由がない。
(裁判官 藤田昌宏)
年
月
日
元本額
支払額
期間
利率
損害金
損害金充当
損害金残高
元本充当
元本残高
13
5
25
32,818,428
32,818,428
18
2
21
22,190,000
1,734
5%
7,791,004
7,791,004
0
14,398,996
18,419,432