大阪地方裁判所 平成2年(わ)32号 判決 1990年11月29日
本籍
大阪市生野区小路東二丁目一番地
住居
同 市浪速区日本橋東一丁目一番一七号
会社役員
下村昌弘
昭和一四年九月八日生
右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官梶山雅信出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年及び罰金一六〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、大阪市浪速区日本橋東一丁目一番一七号ほか一か所において、「ネオ商事」及び「オーシャン」の各屋号で日用雑貨商を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、
第一 昭和五九年分の実際総所得金額が四二四八万一六五八円あった(別紙総所得金額計算書(一)、修正貸借対照表(一)及び修正損益計算書(一)参照)のにかかわらず、事業に係る実際の所得とは関係なく、殊更過少な所得金額を記載した所得税確定申告書を作成して所得の一部を秘匿した上、昭和六〇年三月一三日、大阪市生野区勝山北五丁目二二番一四号所在の所轄生野税務署において、同税務署長に対し、昭和五九年分の総所得金額が二五五万円で、これに対する所得税額が一六万三一〇〇円(ただし、申告書では誤って所得税額一四万九三〇〇円と記載したもの。)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により同年分の正規の所得税額一九三七万一一〇〇円と右申告税額との差額一九二〇万八〇〇〇円(別紙税額計算書参照)を免れた
第二 昭和六〇年分の実際総所得金額が五七八一万五四九五円あった(別紙総所得金額計算書(二)、修正貸借対照表(二)及び修正損益計算書(二)参照)のにかかわらず、前同様の手段により所得の一部を秘匿した上、昭和六一年三月一三日、前記生野税務署において、同税務署長に対し、昭和六〇年分の総所得金額が二七〇万円で、これに対する所得税額が一八万四一〇〇円(ただし、申告書では誤って所得税額一六万一七〇〇円と記載したもの。)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により同年分の正規の所得税額二八九〇万四二〇〇円と右申告税額との差額二八七二万一〇〇円(別紙税額計算書参照)を免れた
第三 昭和六一年分の実際総所得金額が四三八二万八六一九円あった(別紙総所得金額計算書(三)及び修正貸借対照表(三)参照)のにかかわらず、前同様の手段により所得の一部を秘匿した上、昭和六二年三月一六日、前記生野税務署において、同税務署長に対し、昭和六一年分の総所得金額が二七〇万円で、これに対する所得税額が一八万四一〇〇円(ただし、申告書では誤って所得税額一六万三一〇〇円と記載したもの。)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により同年分の正規の所得税額二〇一七万九三〇〇円と右申告税額との差額一九九九万五二〇〇円(別紙税額計算書参照)を免れたものである。
(証拠の標目)
(注)括弧内の算用数字は証拠等関係カード検察官請求分の請求番号を示す。
判示全事実につき
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書
一 被告人に対する収税官吏の質問てん末書二三通
一 金山栄こと金栄虎、金子守一こと金守一、呉山昌壽こと呉昌壽、山本一夫、谷川恵彦(二通)及び兼岡悦子の検察官に対する各供述調書
一 金山栄こと金栄虎(二通)、金子守一こと金守一、呉山昌壽こと呉昌壽、山本一夫、目黒正明(二通)、小林米司、小林弘次(75、76)、兼岡悦子(五通)、谷川恵彦(五通)、下村初子(二通)及び下村春子に対する収税官吏の各質問てん末書
一 収税官吏作成の各査察官調査書(7ないし17、19ないし36、38ないし40、44ないし47)及び各調査報告書(50、51、53)
判示第一の事実につき
一 小林弘次の検察官に対する供述調書
一 鳥居真及び小林弘次(74)に対する収税官吏の各質問てん末書
一 収税官吏作成の各査察官調査書(41、43、49)及び各調査報告書(52、54)
一 生野税務署長作成の証明書(4)
判示第二、第三の事実につき
一 東常吉こと鄭常吉、森継俊広(67)、乾幸一郎及び田面靖彦に対する収税官吏の各質問てん末書
判示第二の事実につき
一 伊藤和彦に対する収税官吏の質問てん末書
一 収税官吏作成の査察官調査書(48)
一 生野税務署長作成の証明書(5)
判示第三の事実につき
一 森継俊広に対する収税官吏の質問てん末書(66)
一 収税官吏作成の各査察官調査書(18、37、42)
一 生野税務署長作成の証明書(6)
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、いずれも所定の懲役刑と罰金刑とを併科し、かつ、各罪につき情状により同条二項を適用し、以上の各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金一六〇〇万円に処し、同法一八条により、右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 三好幹夫)
別紙
総所得金額計算書(一)
<省略>
修正貸借対照表(一)
<省略>
別紙
修正損益対照表(一)
<省略>
総所得金額計算書(二)
<省略>
修正貸借対照表(二)
<省略>
別紙
修正損益対照表(二)
<省略>
総所得金額計算書(三)
<省略>
修正貸借対照表(三)
<省略>
別紙
税額計算書
<省略>