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大阪地方裁判所 平成2年(ワ)9393号 判決 1992年9月29日

奈良市南京終町四丁目二四七番地

原告

草竹杉晃

奈良市南京終町四丁目二四七番地

原告

草竹コンクリート工業株式会社

右代表者代表取締役

草竹杉晃

右両名訴訟代理人弁護士

阪口徳雄

山本勝敏

右阪口徳雄輔佐人弁理士

藤本昇

奈良県宇陀郡榛原町大字比布一三一二番地の一

被告

植平コンクリート工業株式会社

右代表者代表取締役

植平善一

名古屋市中村区名駅三丁目一二番一二号

被告

三協化成産業株式会社

右代表者代表取締役

竹市房生

山口県防府市勝間三丁目九番三号

被告

山陽ポリ総業株式会社

右代表者代表取締役

鹿嶋博文

右三名訴訟代理人弁護士

松岡康毅

右輔佐人弁理士

小谷悦司

主文

一  被告山陽ポリ総業株式会社は、原告草竹杉晃に対し金五万三四九一円、原告草竹コンクリート工業株式会社に対し金一七二万九五五九円、及びこれらに対する昭和六三年六月一日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告三協化成産業株式会社は、原告草竹杉晃に対し金一万五二二八円、原告草竹コンクリート工業株式会社に対し金四九万二三七二円、及びこれらに対する昭和六三年六月一日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告植平コンクリート工業株式会社は、原告草竹杉晃に対し金六万七五〇九円、原告草竹コンクリート工業株式会社に対し金二一八万二八〇六円、及びこれらに対する昭和六三年六月一日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

四  原告らの被告三協化成産業株式会社及び被告植平コンクリート工業株式会社に対するその余の請求をいずれも棄却する。

五  訴訟費用中、原告らに生じた費用はこれを二分し、その一を原告らの、その余を被告らの各連帯負担とし、被告植平コンクリート工業株式会社に生じた費用はこれを二分し、その一を原告らの連帯負担、その余を同被告の

本件考案に係る物品は、仕切弁ボックス、消火栓ボックス、マンホール等の地表部埋設枠用の上面を地表面と一致させる必要を生じたときに使用する嵩上げブロックであって、実際の使用に際しては、地中において種々のブロックと組み合わせ、所望の高さのボックス(室)を地中に構築して空間を形成するものである(甲一、甲一三、弁論の全趣旨)。

<省略>

五 被告らの製造販売

昭和六一年四月頃から昭和六三年三月頃までの間、被告山陽ポリ総業株式会社(以下「被告山陽」という。)は、業として別紙物件目録(一)記載の仕切弁ボックス及び同目録(二)記載の消火栓ボックス(以下前者を「イ号物件」、後者を「ロ号物件」、両者をまとめて「被告物件」という。)を製造して被告三協化成産業株式会社(以下「被告三協」という。)に販売し、同被告は、同年六月頃までの間、業としてこれを被告植平コンクリート工業株式会社(以下「被告植平」という。)に販売し、同被告は、業としてこれを管工機材店や需要者である地方公共団体(水道関係部局等)に販売した(甲四、乙一五~一七、弁論の全趣旨、ただし、完成品としての販売か半製品としての販売かの点は後記。)。

六 被告物件の構成は、次のとおり分説するのが相当である。

(イ号物件)

1 合成樹脂製の地表部埋設枠用の嵩上げブロックである。

2 円形のドーナツ形の枠板の上面全周にわたり<省略>形に屈曲して段部5aを形成する。

3 該段部5aの外縁を直角に屈曲して折曲縁6aを形成する。

4 枠板の内縁を直角に屈曲して折曲縁6'aを形成する。

5 枠板の外縁及び内縁に形成した両折曲縁6a、6'aの下端の間に段差を設けて段部5'aを形成する。

6 両折曲縁6a、6'aの間にリブ7a、8aを形成する。

(ロ号物件)

1 合成樹脂製の地表部埋設枠用の嵩上げブロックである。

2 方形状の枠板の上面全周にわたり<省略>形に屈曲して段部1aを形成する。

3 該段部1aの外縁を直角に屈曲して折曲縁2aを形成する。

4 枠板の内縁を直角に屈曲して折曲縁2'aを形成する。

5 枠板の外縁及び内縁に形成した両折曲縁2a、2'aの下端の間に段差を設けて段部1'aを形成する。

6 両折曲縁2a、2'aの間にリブ3a、4aを形成する。

七 被告物件の作用効果

被告物件は、右の各構成を有することにより、合成樹脂によって一体成型され成型後速やかに使用できる利点を有し、また製品の品質は均一でバラツキがなく、更に折曲縁及びリブによって強固に保形され、また右形状に成型することも容易である。またリブによって中空状の枠体に形成されているから、原料たる合成樹脂を節減でき且つ枠板を薄肉に形成できるため軽量化できる。

八 原告らの請求の概要

1 原告草竹は、被告物件が本件考案の技術的範囲に属することを理由に、不法行為による損害賠償請求権に基づき、前記被告物件製造販売期間中の本件考案の実施料相当額の損害金の賠償を請求。

2 原告草竹コンクリート工業株式会社(以下「原告会社」という。)は、被告物件の製造販売により原告草竹から本件考案について許諾されている独占的通常実施権が侵害されたことを理由に、不法行為による損害賠償請求権に基づき、右期間中の被告らの右製造販売による利益相当額の損害金の賠償を請求。

九 主な争点

1 被告物件は本件考案の技術的範囲に属するか。

2 前項が肯定された場合、原告らの損害の有無と損害額

第三 争点に対する判断

一 争点1(被告物件は本件考案の技術的範囲に属するか)について

1(結論)

被告物件の構成(第二の六の各1ないし6)は、順次本件考案の構成要件(第二の二の1ないし6)を充足し、その結果、被告物件は本件考案の作用効果(第二の三)と同一の作用効果(第二の七)を奏するものと認められるから、本件考案の技術的範囲に属するものと解するのが相当である(本件考案の構成要件6の両折曲縁間のリブの数には限定はない。)。

2(被告らの主張について)

この点につき、被告らは、次のとおり主張する。

(一) 被告物件では折曲縁の間に形成されたリブの数が本件考案のそれよりも二本宛少ない。その結果、被告物件は、本件考案と比較してより大きな空所が底面に形成され、そこにコンクリートを充填してはじめて完成品となる。したがって、リブで囲まれた空所の内部にコンクリートを充填していない被告物件は、以下に述べるように実際の使用に耐えない半製品にすぎず、これを製造販売しても本件実用新案権を侵害しない。

すなわち、別紙「イ号物件の設計荷重、試験荷重計算書」及び「ロ号物件の設計荷重、試験荷重計算書」記載のとおり、イ号物件が嵩上げブロックとして使用される場合に必要とされる設計荷重及び試験荷重は、それぞれ一万一一八四キログラムと一万六七七六キログラムであり、ロ号物件が嵩上げブロックとして使用される場合に必要とされる設計荷重及び試験荷重は、それぞれ一万一一六八キログラムと一万六七五二キログラムである。

被告らは、被告物件が右設計荷重及び試験荷重を満たすものか否かを調査するために、奈良工業試験場に依頼して、<1>被告物件、<2>被告物件のリブで囲まれた空所の内部にコンクリートを充填したもの、<3>これらに対応する原告会社製品の三者についてそれぞれ圧縮強度試験を実施した。その試験結果をまとめて対比し記載したのが別紙「圧縮強度試験結果一覧表」である。

同表記載の各数値から明らかなとおり、被告物件は、いずれもそれ自体では前記必要とされる設計荷重及び試験荷重を満たしておらず、リブで囲まれた空所の内部にコンクリートを充填してはじめてこれを満たすことになる。

(二) しかしながら、被告らの右主張は、次の理由により採用できない。

被告物件の使用態様から考えて、工事現場で改めてこれにコンクリートを充填して使用するというのは、それら充填物の養生期間等を考えると、それ自体迂遠かつ極めて不自然で、如何にも現実性に欠ける使用方法であるとの感を免れず、かえって、証人猪口明宏の証言に弁論の全趣旨を総合すれば、被告植平は、昭和六三年六月頃までの間、リブで囲まれた空所の内部にコンクリートを充填しないままの状態で被告物件を販売していたこと、右販売に際し、販売先に対してコンクリートを充填しないままの状態での被告物件は、耐荷重強度に問題がある、あるいはそれ自体半製品であるなどの説明は全くしていなかったし、被告植平の社内でも、販売担当者らに対し同様の説明をすることもなく、むしろ被告植平の販売担当者は、既に販売されていた原告会社製品(当然コンクリートなど充填しない。)と同種の製品である旨説明して販売に従事していたこと、また本件考案に係る地表部埋設枠用の嵩上げブロックは大多数が地方自治体等で使用されることから厳格な規格・仕様を満たす製品であることが要求されるのであるが、前記の間販売先から製品の耐荷重強度が不足するなどのクレームがついたことはなかったこと、被告物件にコンクリートの充填を開始したのは、原告らが被告物件の製造販売が本件実用新案権等の侵害を構成するとして証拠保全の申立をし、その証拠保全手続が被告山陽について実地に実施された直後の昭和六三年六月であることが認められる。

右認定事実によれば、被告物件は、現実にそのままの状態で使用できる完成品として販売され、購入者もリブで囲まれた空所の内部にコンクリートを充填しないそのままの状態で使用し、それで特別不都合も生じなかったものと認めることができる。右認定に反する被告植平代表者の供述は採用できない。

そして、被告らが右被告ら主張事実立証のため提出・援用した証拠(乙一、乙二ないし七の各1ないし3、一八ないし二二、被告植平代表者)を考慮しても、原告ら提出・援用にかかる証拠(甲一三、一五、一六の1ないし4、一七、三〇、証人猪口)及び右認定事実に照らして考えると、被告物件が半製品であった旨の右被告ら主張を認めることはできない。

二 争点2(原告らの損害の有無と損害額)について

1 原告草竹が本件考案の実用新案権者であることは前示のとおりである。

原告会社は、昭和三六年一二月二〇日原告草竹を代表者として設立された株式会社であり、その実質は同原告の個人経営に等しく、本件考案についてもその出願人を原告草竹とした関係上、同原告との間で実施料を利益金額の三%とする実施許諾契約を締結してはいるが、その実質は同原告が自らの権利を実施しているに等しく、かつ同原告が他の者に通常実施権を許諾したこともないことが認められ、したがって、原告会社は、損害賠償請求の関係においては、実質上専用実施権者と同視して差支えのない独占的通常実施権者と解するのが相当である(甲三二、弁論の全趣旨)。

そして、前示のとおり、被告山陽は被告物件を製造して被告三協に販売し、被告三協はこれを被告植平に販売し、被告植平は更にこれを需要者である地方公共団体(水道関係部局等)等に販売していたものであり、本件でこれらの被告物件の製造販売行為はそれぞれが独立して本件考案を「実施」する行為に該当し(実用新案法二条三項)、各別に本件実用新案権の侵害行為を構成するものであって、被告らには、右各侵害行為についてそれぞれ過失があったものと推定される(実用新案法三〇条、特許法一〇三条、原告会社との関係でも、前記の如く実質的には実用新案権者が自ら権利を実施しているのと等しい事情のもとにおいては、右法条を類推適用することが相当である。)。

2 そこで、原告らの損害額について判断する。

(一) 原告会社の損害

(1) 被告物件の販売数

証拠(甲四、乙一五~一七、被告植平代表者)によれば、被告山陽は、別表(一)の「<2>製造販売数量」欄記載の個数の被告物件を製造して被告三協に販売し、被告三協は、別表(二)記載のとおり、これらを被告植平に販売し、更に被告植平は、別表(三)記載のとおり、これらを第三者に販売したことが認められる。

(被告らの主張について)

この点について被告らは次のとおり主張する。

すなわち、かつて被告物件を半製品として販売していた期間は、昭和六一年三月から昭和六二年五月までの間であって、同年六月からは、別紙(一)(二)に示す被告物件の底面のリブで囲まれた空所内に被告植平においてコンクリートを充填して完成品として出荷する形に変更した。更に、昭和六三年八月からは、別紙(三)、(四)に示すソリッド(中実)タイプの製品の販売を開始し、以前に販売した納入先で在庫中の被告物件の半製品は勿論のこと、被告物件の底面のリブで囲まれた空所内にコンクリートを充填して販売した完成品も回収し、現在は製造も販売もしていない。別紙「被告物件の購入及びその後の処分状況一覧表」は、被告植平の被告物件の購入及びその後の処分状況を示している。以上によれば、原告らが被告らに対し損害賠償請求の対象とできるのは、被告植平がコンクリートを充填しないで半製品として販売した被告物件のうち、完成品として販売したことが認定されたものに限られるところ、そのような製品の数は、最大限に見積っても、同表の「<2>そのまま販売したもの及び在庫」欄の数字から「<5>コンクリートを充填しないものを回収したもの」欄の数字を差し引いた数量に過ぎない。

そして、被告植平代表者は、被告らの右主張に副う供述をするとともに、被告らは、右「<5>コンクリートを充填しないものを回収したもの」を証明する証拠として、被告植平から被告山陽宛ての納品(返品)書(乙八の1、乙九の1)、被告山陽から被告植平宛ての受領書(乙八の2、乙九の2)、被告らの製品を取り扱っている商社の被告ら主張事実の証明書類(乙一〇の1・2、乙一一の1~6、乙一二の1・2)及び交換分ニューソリッドタイプの被告物件の受領書(乙一三の1~8)及び被告植平の生産日報(乙一四)を提出している。

しかしながら、前掲甲第四号証から認められる被告物件の販売数と乙第一二号証の1・2、乙第一四号証による被告物件の充填個数とを対比してみると相当数の齟齬がある(甲二九参照)のみならず、この点に関する原告ら提出にかかる証拠(甲一八、甲一九、甲二〇の1~6、甲二一の1~3、甲二二、甲二三)の各記載内容及び証人猪口明宏の証言内容に照して考えると、被告植平代表者の右供述内容及び右各乙号各証の真否と記載内容の真偽には多大の疑問を抱かざるを得ず、これらを本件認定の証拠資料とすることは到底できない。

かえって、証人猪口明宏の証言に弁論の全趣旨を総合すれば、被告植平では、前認定のとおり、昭和六三年六月頃までの間、コンクリートを充填しないままの状態で被告物件を販売していたところ、同月になって原告らからの申立により被告物件に関して実用新案権及び意匠権の侵害を理由とする証拠保全手続が実施されたため、その頃被告植平代表者の命令で、猪口明宏ら販売担当者は急遽販売先から既に納品していた被告物件の回収に着手したが、間もなくして右代表者からもう回収はしなくてもよいとの指示があり回収が中止されたため、結果的に回収数はごく少量(猪口の場合、二、三〇枚程度)に止まったこと、その後被告植平は、同年九月頃からソリッド(中実)タイプの同種製品の販売を開始したことが認められる。

したがって、被告らの前記主張はいずれも採用できない。

(2) 被告物件の販売価格

甲第四号証によれば、被告物件の一個当りの被告山陽の販売価格は別表(一)の「<1>製造販売単価」欄記載の各金額であること、乙第一七号証によれば、被告三協の同販売価格は別表(二)の「<3>販売単価」欄記載の各金額であること、乙第一五号証、乙第一六号証によれば、被告植平の同販売価格は別表(三)の「<3>販売単価」欄記載の各金額であることが認められる。

(3) 被告らの利益率

被告山陽に関しては、甲第三一号証(日菱産業株式会社浜名田曠作成の証明書)によると、被告物件の一個当りの純利益は原告らの主張するように別表(一)の「<4>被告山陽ポリの得る一個あたりの利益」欄記載の各金額であると認められる。

この点について、被告山陽は、地表部埋設枠用の嵩上げブロックの業界において、純利益率が一〇パーセントを超えることはまず考えられず、原告ら主張の利益率となるはずはない旨主張するが、右認定を左右するに足りる証拠はないから、右被告山陽の主張は採用できない。

被告三協に関しては、別表(二)の<3>「販売単価」から<1>の「仕入単価」を控除して得られる粗利益額と本件に現われた一切の事情を考慮すると、被告物件の一個当りの純利益は<4>「利益」欄記載のとおりと認めるのが相当である。

被告植平に関しては、別表(三)の<3>「販売単価」から<2>「仕入単価」を控除して得られる粗利益額と本件に現われた一切の事情を考慮すると、被告物件の一個当りの純利益は<4>「被告植平の得る一個あたりの利益」欄記載のとおりと認めるのが相当である。

(4) 販売利益総額

右(1)ないし(3)で認定した被告物件の販売数、一個当りの販売価格及び販売利益によれば、被告らの販売利益総額は、それぞれ別表(一)ないし(三)の<5>欄記載の各金額となる。

しかるところ、本件事実関係のもとにおいては損害賠償請求の関係では、原告会社を実質上専用実施権者と同視して支障のないことは前示のとおりであるから、被告らの前判示利益額は原告会社の受けた損害額と一応推定することができる。しかし、原告会社はその主張において原告草竹との関係を考慮して右利益額から実施料相当額(利益額の三パーセント)を控除しているから、その手法をここに採用すると、結局、原告会社の受けた損害額は右の三パーセント減の別紙認容金額目録の「原告草竹コンクリート工業(株)の請求認容額」欄記載の各金額となる。

(二) 原告草竹の損害

原告草竹は本件実用新案権を実施していない権利者であるから、結局、原告草竹の受けた損害額は前記利益額の三パーセントに相当する別紙認容金額目録の「原告草竹杉晃の請求認容額」欄記載の各金額と認めるのが相当である。

(裁判長裁判官 庵前重和 裁判官 小澤一郎 裁判官 辻川靖夫)

(裁判長裁判官 庵前重和 裁判官 小澤一郎 裁判官 辻川靖夫)

請求債権目録

<省略>

<19>日本国特許庁(JP) <11>実用新案出願公告

<12>実用新案公報(Y2) 昭59-7425

<51>Int.Cl.3E 03 B 9/12 E 02 D 29/12 識別記号 庁内整理番号 6654-2D 7151-2D <24><44>公告 昭和59年(1984)3月7日

<54>地表部埋設枠用の嵩上げブロツク

<21>実願 昭55-155619

<22>出願 昭55(1980)10月29日

<65>公開 昭57-79664

<43>昭57(1982)5月17日

<72>考案者 草竹杉晃

奈良市南京終町4丁目247番地

<71>出願人 草竹杉晃

奈良市南京終町4丁目247番地

<57>実用新案登録請求の範囲

方形枠ドーナツ形枠など任意形状の枠板の上面を任意の個所で全周にわたり<省略>形に屈曲して段部を形成し、更に該段部の外縁を略直角に屈曲して折曲縁を形成すると共に枠板の内縁を略直角に屈曲して折曲縁を形成し、枠板の外縁及び内縁に形成した両折曲縁の下端の間に段差を設けて段部を形成し且つ両折曲縁の間にリブを形成して成る合成樹脂材製または金属材製の地表部埋設枠用の嵩上げブロツク。

考案の詳細な説明

本考案は消火栓ボツクス、制水弁ボツクス、マンホールなどの地表部埋設枠の上面を地表面と一致させる必要を生じたときに使用する合成樹脂材製また金属材製の嵩上げブロツクである。

従来地表部埋設枠用の嵩上げブロツクとしてコンクリート製のブロツクが普通である。しかしながらコンクリート製品は成型後の養生方法によつて仕上がり強度にバラツキを生じることが多く、また使用個所によつて必要とする強度不足のため破損する場合があり、その修復工事が厄介である。

本考案はこのような実情に鑑み提供したもので、その実施例を図面によつて詳述すると、第1図及び第2図に示すように合成樹脂材製または金属材製方形枠板の上面全周の巾の略中央部から外側へ向つて高さが低くなる段部1を<省略>形に屈曲形成すると共に該段部1の外縁を下方へ略直角に屈曲して折曲縁2を形成し、更に方形枠板の内縁全周を下方へ略直角に屈曲して折曲縁2'を形成すると共に折曲縁2'の高さを前記折曲緑2の高さと略同高に形成することにより方形枠板の下面内側に段部1'を形成する。而して方形枠板の下面において折曲縁2と折曲縁2'にわたつて一定間隔ごとに補強用の多数のリブ3……を列設し、更に方形粋板の外縁及び内縁と平行する方向に即ちリブ3……と直交する方向に多数のリブ3'……を周設して方形枠状の嵩上げブロツク4を一体成型する。また他の実施例として第3図及び第4図に示すようにドーナツ形枠板の上面全周の巾の略中央部から外側へ向つて高さが低くなる段部5を<省略>形に屈曲形成すると共に該段部5の外縁を下方へ略直角に屈曲して折曲線6を形成し、更にドーナツ形枠板の内側全周を下方へ略直角に屈曲して折曲縁6と略同高の折曲縁6'を形成することによりドーナツ形枠板の下面内側に段部5'を形成する。

而してドーナツ形枠板の下面において折曲縁6と折曲縁6'にわたつて放射状に補強用の多数のリブ7……を列設し、更にドーナツ形枠板と同心円状に多数のリブ7'……を周設してドーナツ形枠状の嵩上げブロツク8を一体成型する。また第5図に示すように枠板の上面内側を外側よりも低く、且つ枠板の下面内側を外側よりも高く形成することにより段部9と9'を前記実施例の段部1と1'及び段部5と5'の逆の段差に形成してもよく、更に枠板の外側を下方へ略直角に屈曲形成した折曲縁10の高さに高低を付し、枠板の対向位置の高さに高低を付した傾斜調整のできる嵩上げブロツク11を一体成型することもできる。

本考案はこのようにして成るから合成樹脂材または金属材によつて一休成型され成型後速やかに使用できる利点を有し、また製品の品質は均一でバラツキがなく、更に折曲縁2と2'及びリブ3及び3'により、または折曲縁6と6'及びリブ7及び7'によつて強固に保形され且つ強度が大である。また枠体の形状を実施例のような方形枠、ドーナツ形枠に限らず、六角形、八角形など所望形状に成型することも容易である。またリブ3または3'或いはリブ7または7'によつて中空状の枠体に形成されているから原料たる合成樹脂材または金属材を節減でき且つ枠板を薄肉に形成できるため軽量化できる。

このように本考案は合成樹脂材または金属材によつて一体成型したことを最も特徴とし、構造は堅牢で耐久性を有し然も大量生産に適する有用考案である。

図面の簡単な説明

図面は本考案の実施例を示し、第1図の左半部は方形枠状嵩上げブロツクの半截平面図、同右半部は同半截底面図、第2図の左半部は同半截正面図、同右半部は同半截縦断正面図、第3図の左半部はドーナツ形枠状の嵩上げブロツクの半截平面図、同右半部は同半截底面図、第4図の左半部は同半截正面図、同右半部は同半截縦断正面図、第5図は傾斜調整のできる嵩上げブロツクの中央部縦断面図である。

1、1’、5、5’、9、9’……段部、2、2’、6、6’、10……折曲縁、3、3’、7、7’……リブ。

第1図

<省略>

第2図

<省略>

第3図

<省略>

第4図

<省略>

第5図

<省略>

物件目録(一)

イ号物件

イ号物件は、別紙図面に示すとおり地表部埋設枠用の嵩上げブロックで、その構成は左記のとおりである。

1 合成樹脂製の地表部埋設枠用の嵩上げブロックであって、

2 円形のドーナツ形の枠板の上面全周にわたり<省略>形に屈曲して段部5aを形成し、

3 更に該段部5aの外縁を直角に屈曲して折曲縁6aを形成すると共に、

4 枠板の内縁を直角に屈曲して折曲縁6'aを形成し、

5 枠板の外縁及び内縁に形成した両折曲縁6a、6'aの下端の間に段差を設けて、段部5'aを形成し、

6 且つ両折曲縁6a、6'aの間にリブ7a、8aを形成して成る。

<省略>

物件目録(二)

ロ号物件

ロ号物件は、別紙図面に示すとおり地表部埋設枠用の嵩上げブロックで、その構成は左記のとおりである。

1 合成樹脂製の地表部埋設枠用の嵩上げブロックであって、

2 方形状の枠板の上面全周にわたり<省略>形に屈曲して段部1aを形成し、

3 更に該段部1aの外縁を直角に屈曲して折曲縁2aを形成すると共に、

4 枠板の内縁を直角に屈曲して折曲縁2'aを形成し、

5 枠板の外縁及び内縁に形成した両折曲縁2a、2'aの下端の間に段差を設けて、段部1'aを形成し、

6 且つ両折曲縁2a、2'aの間にリブ3a、4aを形成して成る。

<省略>

イ号物件の設計荷重、試験荷重計算書

公式

<省略>

<省略> l:スパン(径)

試験荷重=設計荷重×1.5

設計荷重

<省略>

試験荷重

11,184kg×1.5=16,776kg

ロ号物件の設計荷重、試験荷重計算書

公式

<省略>

<省略> l:スパン(径)

試験荷重=設計荷重×1.5

設計荷重

<省略>

試験荷重

11,168kg×1.5=16,752kg

圧縮強度試験結果一覧表

≪消火栓≫

ロ号物件 コンクリート充填        原告製品

No1 8,000kgfで破壊(乙2号証の1) 28,000kgfで破壊せず(乙3号証の1) 28,000kgfで破壊せず(乙4号証の1)

No2 7,000kgfで破壊(乙2号証の2) 28,000kgfで破壊せず(乙3号証の2) 28,000kgfで破壊せず(乙4号証の2)

No3 11,000kgfで破壊(乙2号証の3) 28,000kgfで破壊せず(乙3号証の3) 28,000kgfで破壊せず(乙4号証の3)

≪仕切弁≫

イ号物件 コンクリート充填 原告製品

No 1 7,000kgfで破壊(乙5号証の1) 25,000kgfで破壊せず(乙6号証の1) 25,000kgfで破壊せず(乙7号証の1)

No 2 7,000kgfで破壊(乙5号証の2) 25,000kgfで破壊せず(乙6号証の2) 25,000kgfで破壊せず(乙7号証の2)

No 3 8,000kgfで破壊(乙5号証の3) 25,000kgfで破壊せず(乙6号証の3) 25,000kgfで破壊せず(乙7号証の3)

別表(一) 〔被告山陽ポリ総業株式会社の分〕

<省略>

別表(二) 〔被告三協化成産業株式会社の分〕

<省略>

別表(三) 〔被告植平コンクリート工業株式会社の分〕

<省略>

別紙(一)

<省略>

別紙(二)

<省略>

別紙(三) 公開実用平成2-26669

<省略>

別紙(四) 公開実用平成2-26669

<省略>

被告物件の購入及びその後の処分状況一覧表

<省略>

認容金額目録

<省略>

実用新案公報

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自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
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