大阪地方裁判所 平成21年(ワ)10138号 判決 2010年7月27日
本訴原告・反訴被告
X1 他1名
本訴原告
全国共済農業協同組合連合会
本訴被告・反訴原告
Y1 他3名
主文
一 被告Y1は、原告X1に対し、金七一〇万〇五一四円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告Y2は、原告X1に対し、金七一〇万〇五一四円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 被告Y3は、原告X1に対し、金七一〇万〇五一四円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 被告Y4は、原告X1に対し、金七一〇万〇五一四円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
五 被告Y1は、原告X2に対し、金六八〇万〇五一四円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
六 被告Y2は、原告X2に対し、金六八〇万〇五一四円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
七 被告Y3は、原告X2に対し、金六八〇万〇五一四円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
八 被告Y4は、原告X2に対し、金六八〇万〇五一四円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
九 被告Y1は、原告全国共済農業協同組合連合会に対し、金八四六一円及びこれに対する平成二一年三月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
一〇 被告Y2は、原告全国共済農業協同組合連合会に対し、金八四六一円及びこれに対する平成二一年三月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
一一 被告Y3は、原告全国共済農業協同組合連合会に対し、金八四六一円及びこれに対する平成二一年三月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
一二 被告Y4は、原告全国共済農業協同組合連合会に対し、金八四六一円及びこれに対する平成二一年三月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
一三 原告X1及び同X2の被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。
一四 被告Y1、同Y2、同Y3及び同Y4の反訴請求をいずれも棄却する。
一五 訴訟費用は、本訴反訴を通じてこれを一〇分し、その三を原告X1及び同X2の負担とし、その余を被告らの負担とする。
一六 この判決は、第一項ないし第一二項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
一 本訴
(1) 被告Y1は、原告X1に対し、金八〇五万六九二〇円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(2) 被告Y2は、原告X1に対し、金八〇五万六九二〇円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(3) 被告Y3は、原告X1に対し、金八〇五万六九二〇円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(4) 被告Y4は、原告X1に対し、金八〇五万六九二〇円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(5) 被告Y1は、原告X2に対し、金七七六万九四二〇円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(6) 被告Y2は、原告X2に対し、金七七六万九四二〇円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(7) 被告Y3は、原告X2に対し、金七七六万九四二〇円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(8) 被告Y4は、原告X2に対し、金七七六万九四二〇円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(9) 被告Y1は、原告全国共済農業協同組合連合会に対し、金八四六一円及びこれに対する平成二一年三月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(10) 被告Y2は、原告全国共済農業協同組合連合会に対し、金八四六一円及びこれに対する平成二一年三月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(11) 被告Y3は、原告全国共済農業協同組合連合会に対し、金八四六一円及びこれに対する平成二一年三月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(12) 被告Y4は、原告全国共済農業協同組合連合会に対し、金八四六一円及びこれに対する平成二一年三月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 反訴
(1) 原告X1は、被告Y1に対し、金四五四万七七八〇円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(2) 原告X2は、被告Y1に対し、金四五四万七七八〇円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(3) 原告X1は、被告Y2に対し、金三七四万七七八〇円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(4) 原告X2は、被告Y2に対し、金三七四万七七八〇円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(5) 原告X1は、被告Y3に対し、金三七四万七七八〇円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(6) 原告X2は、被告Y3に対し、金三七四万七七八〇円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(7) 原告X1は、被告Y4に対し、金三七四万七七八〇円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(8) 原告X2は、被告Y4に対し、金三七四万七七八〇円及びこれに対する平成二〇年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
一 本件は、後記二(2)記載の交通事故(以下「本件事故」という。)により自動二輪車を運転していたA(昭和六一年○月○日生まれ。以下「A」という。)と歩行横断中のB(昭和一六年○月○日生まれ。以下「B」という。)が死亡した事案につき、Aの両親がBの相続人である被告らに対して民法七〇九条に基づいて損害賠償を請求すると共に、共済契約を締結していた共済連合会が物損に関する共済金を支払って代位したとして共同不法行為者の負担割合に応じた金員の支払を求めた(本訴)ところ、被告らがAの両親に対して民法七〇九条に基づいて損害賠償を求めた(反訴)ものである。
二 前提となる事実
(1) 当事者(当事者間に争いがない。)
ア 原告X1(以下「原告X1」という。)及び同X2(以下「原告X2」という。)は、Aの両親であり、Aの相続人である。
イ 被告Y1(以下「被告Y1」という。)、同Y2(以下「被告Y2」という。)、同Y3(以下「被告Y3」という。)及び同Y4(以下「被告Y4」という。)は、いずれもBの子であり、Bの相続人である。
ウ 原告全国共済農業協同組合連合会(以下「原告全共連」という。)は、Aが運転していた大型自動二輪車(〔ナンバー省略〕。以下「本件単車」という。)に付保されていた自動車共済契約の加入先である。
(2) 交通事故(以下「本件事故」という。)の発生(当事者間に争いがない。)
ア 日時 平成二〇年一一月九日午後一一時一〇分ころ
イ 場所 兵庫県西宮市甲子園口四丁目二二番二八号先の国道二号線(以下「本件事故現場」という。)
ウ 態様 Aが本件単車を運転して国道二号線を東に向かって走行して本件事故現場に差し掛かったところ、道路北側の歩道から南に向かって歩行横断中のBと衝突し、A及びBは死亡した。
(3) A及びBの責任原因
AにもBにも、本件事故の発生について、その割合・程度は別にして、何らかの過失があり、民法七〇九条所定の不法行為責任を負う(弁論の全趣旨)。
(4) 共済金の支払
原告全共連は、国に対し、平成二一年三月一二日、本件事故と損傷した国土交通省管理にかかるガードレールの修理代金(四万八三四九円)相当額を支払った(甲一三の(1)ないし(4)、一四、弁論の全趣旨)。
三 争点
(1) 本件事故状況及び過失相殺
ア 原告らの主張
(ア) 本件事故現場は、国道二号線(幹線道路)東行き道路上であり、横断歩道及び信号機が設置されていた。
(イ) Aは、本件単車を運転して国道二号線を東に向かって時速約五五キロメートルの速度で走行していたところ、道路北側(Aの進行方向からすると左側)から、Bが対面信号赤色であるにもかかわらずいきなり斜め横断してきたため、衝突回避措置を講じる間もなく、Bと衝突した。
(ウ) 以上のような事故状況に鑑みると、少なくともBの過失割合は七〇パーセントを下らない。
イ 被告らの主張
(ア) Aが本件事故現場の交差点に進入する際、Aの対面信号が赤色に変わっていた可能性が高いし、制限速度(五〇キロメートル毎時)を遥かに超えた速度で走行していた可能性が高い。
また、Bは、横断歩道上を歩行中に本件単車と衝突したと推認される。
さらに、Aは、現場にブレーキ痕が全くないことから、前方を全く見ていなかったことが推認される。
(イ) 以上の諸事情を総合すると、Bに過失はないか、あったとしても一〇パーセントを上回ることはない。
(2) 原告らの請求する損害額(本訴関係)
ア 原告らの主張
(ア) Aの損害
① 死亡慰謝料 二八〇〇万円
Aは、原告X2夫妻の長男として大学を卒業して就職し、社会人一年目に本件事故に遭遇して生命を失った。特に、本件事故の翌年五月には婚姻予定であったものである。このような時期に前途を絶たれたAの無念さを思うと、A自身の死亡慰謝料の額は二八〇〇万円が相当である。
② 逸失利益 六〇四九万九一四一円
Aは、本件事故により死亡したが、当時二二歳であり、六七歳まで四五年間就労可能であった。
そして、平成一九年度大卒男子の全年齢平均賃金額は六八〇万七六〇〇円であり、生活費控除率を五〇パーセントとすると、Aの逸失利益の額は六〇四九万九一四一円である。
③ 治療費 一六万二六八五円
Aは、本件事故後すぐに救急搬送されたが、搬送先で死亡した。
その治療に要した費用は、一六万二六八五円である。
④ 物損 一〇〇万円
本件単車はAが所有していたものであるが、本件事故当時の時価額は一〇〇万円であった。
(イ) 原告X1の固有損害
① 葬儀費用 一五〇万円
本件事故で死亡したAの葬儀は原告X1が執り行い、費用も負担したものである。その葬儀費用は、一五〇万円を下らない。
② 固有慰謝料 三〇〇万円
原告らの子はAと長女だけであり、Aは、長男として両親(原告X1及びX2)の期待を一身に集め大切に養育されてきた。
本件死亡事故により両親が受けた精神的打撃を慰謝するには、各三〇〇万円が相当である。
③ 弁護士費用 二九〇万円
(ウ) 原告X2の固有損害
① 固有慰謝料 三〇〇万円
② 弁護士費用 二八〇万円
(エ) 原告全国共済農協協同組合連合会(以下「原告全共連」という。)請求分
① 本件事故により、Aの本件単車は滑走して中央分離帯に設置された国土交通省管理にかかるガードレールに激突し、修理代金相当額の損害が発生した。
② 本件単車に付保されていた自動車共済契約の加入先である原告全共連は、平成二一年三月一二日、上記自動車共済契約に基づき、国に対して修理費用全額(四万八三四九円)を支払った。
③ Bは、ガードレール所有者たる国との関係では、Aと共同不法行為者の関係に立つから、過失割合に応じた負担額を超えて支払った者は、他方に対し、求償請求権を有する。
したがって、Bの過失割合が七〇パーセントを下らないから、原告全共連のBに対する求償請求額は、三万三八四四円となる。
イ 被告らの主張
原告らの主張する損害は、すべて争う。
(3) 被告らの主張する損害額(反訴関係)
ア 被告らの主張
(ア) Bの損害額
① 死亡慰謝料 二八〇〇万円
Bは、本件事故当時、仕事に従事し、充実した生活を送っていた上、今後は子らの結婚や孫の誕生等を楽しみにしていたものであるが、本件事故によってそれらを奪われた無念さは計り知れない。
よって、Bの死亡慰謝料の額は二八〇〇万円が相当である。
② 治療費 四万四二八〇円
Bの治療費は、四万四二八〇円である。
③ 逸失利益 一一二二万五二六一円
Bは本件事故当時会社に勤務していたものであり、その年収額は、同年代の全労働者の平均賃金額(三四七万三七〇〇円)を下ることはない。
そして、Bの死亡時の年齢(六七歳)に照らすと就労可能年数は八年間とし、生活費控除率を五〇パーセントとして、逸失利益の額を算定すると一一二二万五二六一円となる。
(イ) 被告ら固有の損害
① 葬儀費用
Bの葬儀は被告Y1が執り行い、その費用を負担した。その費用は一五〇万円を下らない。
② 固有慰謝料
父親であるBを失った被告らの精神的苦痛を慰謝するには、各三〇〇万円が相当である。
③ 弁護士費用
a 被告Y1 八〇万円
b 被告Y2、同Y3及び同Y4 各七〇万円
イ 原告らの主張
Bの治療費は認めるが、その余は争う。
第三当裁判所の判断
一 本件事故状況及び過失割合(争点(1))について
(1) 証拠(甲四の(1)(2)、証人C)及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。
ア 本件事故現場は、片側二車線、中央分離帯が設置されている国道二号線の東行き道路である。
イ Aは、本件単車を運転して国道二号線を東に向って進行し、時速約六〇キロメートルで本件事故現場に差し掛かった。すると、事故現場東側の横断歩道から更に約六・二メートル東方の地点の歩道(国道二号線の北側に設置されている。)から、Bが多少酔ったような状態で、立ち止まって左右の確認をすることもせずに、そのまま歩いて車道を南西に向って斜めに横断し始めた(この時、Aの対面信号は青色であり、交差する対面信号は赤色であった。)。その結果、本件単車とBは衝突した。
ウ なお、Bは、いきなり走って車道に出てきたわけでもなく、普通に歩いて横断し始めた感じであり、Bが車道に出てきた時に車両運転者として何らかの回避措置を講じることは可能な状況であった。
(2) これに対し、被告らは、Aが本件事故現場に差し掛かった際に対面信号は赤色であった可能性が高い旨主張する。
確かに、本件事故を現場の西方から目撃していたC証人は、本件単車とBが衝突した時点での信号表示は目撃していない。しかしながら、C証人は、別紙「交通事故現場見取図」記載のfile_3.jpg点で東西道路の対面信号が青色であったことと、Bが立ち止まることもなくそのまま歩いて横断開始するのを目撃しており(甲四の(2)、証人C)、Bが横断開始した時点では、本件単車の対面信号が青色で、Bの対面信号が赤色であったと認定できる。それを前提にすれば、その時から衝突までの時間は正確に算出することは困難であること、仮に数秒間あったとしても特に衝突時に東西対面信号の表示が赤色に変わったと認定するに足りる的確な証拠がない以上、衝突直前までAの対面信号は青色を表示していたと推認するのが相当である。
(3) 以上を前提とすると、①単車の対面信号が青色で、歩行者は赤色で道路横断を開始したこと、②歩行者であるBは、本件事故当時六七歳の高齢者ではあったが、他方で飲酒して酔っているように見える状態であったこと、③本件単車の走行速度は、制限速度を時速一五キロメートル以上超過するようなスピードで走行していたとまでは認定できないことの諸点を指摘できるところ、これらを総合勘案すると、本件事故における過失割合は、Bが七〇パーセント、Aが三〇パーセントと解するのが相当である。
二 原告らの主張する損害額(争点(2))について
(1) 原告らの請求する損害額(本訴関係)
ア Aの損害
(ア) 治療費 一六万二六八五円
Aが本件事故による傷害の治療を受け、これに要した費用は一六万二六八五円と認める(弁論の全趣旨)。
(イ) 逸失利益 五九四二万五九二五円
① Aは、本件事故当時、大学を卒業して就職していた事実が窺われる(弁論の全趣旨)。
したがって、逸失利益算定上の基礎収入額は、平成二〇年賃金センサス・男子労働者・大学卒・全年齢平均賃金額(年額六六八万六八〇〇円)を採用することとする。
② Aの就労可能年数は六七歳までの四五年間(年五パーセントの割合で中間利息を控除するライプニッツ係数は一七・七七四一)であり、生活費控除率は五〇パーセントとするのが相当であるから、Aの逸失利益の額は、
668万6800円×(1-0.5)×17.7741≒5942万5925円(円未満切捨て)
となる。
(ウ) 死亡慰謝料 二三〇〇万円
Aの年齢、家族構成等本件に現れた諸事情を総合勘案すると、Aの死亡慰謝料の額は二三〇〇万円をもって相当と認める。
(エ) 物損 一〇〇万円
本件単車は本件事故によって大破した事実が認められる(甲四の(1))ところ、本件事故当時の時価相当額は一〇〇万円と認定するのが相当である(甲一二、弁論の全趣旨)。
(オ) 過失相殺
① 本件事故における過失割合は、Aが三〇パーセント、Bが七〇パーセントと解するのが相当である。
② よって、前記(ア)ないし(エ)記載の合計額(八三五八万八六一〇円)を上記過失割合に応じて過失相殺すると、五八五一万二〇二七円となる。
(カ) 損害の一部填補
① Aの両親(原告X1及び同X2)は、本件事故につき労災保険金を受領しているが、このうち、療養給付金一六万二六八五円、遺族一時金九六四万一〇〇〇円及び葬祭給付金六〇万四二三〇円の合計一〇四〇万七九一五円が控除対象となると解される(甲九ないし一一、弁論の全趣旨)。
② そうすると、前記(オ)②記載金額から上記①記載金額を控除すると、四八一〇万四一一二円となる。
(キ) 相続
① Aの相続人は、両親である原告X1及び同X2の二名である。
② したがって、原告X1及び同X2は、その二分の一相当額(二四〇五万二〇五六円)をそれぞれ相続したことになる。
イ 原告X1の固有損害等
(ア) 葬儀費用 一五〇万円
本件事故で死亡したAの葬儀は原告X1が執り行い、費用も負担したことが窺われる(弁論の全趣旨)。そして、その葬儀費用は一五〇万円を下らないと認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。
(イ) 固有慰謝料 一〇〇万円
原告X1は、Aの父親であるから、本件死亡事故によって被った精神的苦痛に対する固有慰謝料を賠償請求することができる。
その固有慰謝料の額は、原告X1及びAの年齢、これまでの生活状況、本件事故が原告X1に及ぼした影響等を総合勘案すると、近親者固有慰謝料の額は一〇〇万円をもって相当と認める。
(ウ) 過失相殺
① 本件事故における過失割合は、前記一(3)判示のとおり、Aが三〇パーセント、Bが七〇パーセントである。
② したがって、上記(ア)及び(イ)記載金額の合計額(二五〇万円)につき上記過失割合(Aの過失は、いわゆる被害者側の過失ということになる。)に従って過失相殺すると、一七五万円となる。
これに前記ア(キ)②記載金額を加えると、原告X1の賠償請求額は二五八〇万二〇五六円となる。
(エ) 弁護士費用 二六〇万円
弁論の全趣旨によると、原告X1が本件訴訟の提起及び追行を訴訟代理人弁護士に委任し、相当額の費用及び報酬の支払を約束していることを認めることができるところ、本件事案の性質、審理の経過及び認容額等を考慮すると、原告X1が本件事故と相当因果関係のある損害として賠償を求め得る弁護士費用の額は、二六〇万円をもって相当と認める。
(オ) 結論
よって、原告X1の本件請求は、被告ら四名に対し、前記(ウ)②及び(エ)記載の合計金額(二八四〇万二〇五六円)及びこれに対する平成二〇年一一月九日(本件事故日)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余は理由がない。
ウ 原告X2の固有損害等
(ア) 固有慰謝料 一〇〇万円
原告X2は、Aの母親であるから、本件死亡事故によって被った精神的苦痛に対する固有慰謝料を賠償請求することができる。
その固有慰謝料の額は、原告X2及びAの年齢、これまでの生活状況、本件事故が原告X2に及ぼした精神的苦痛の程度等を総合勘案すると、近親者固有慰謝料の額は一〇〇万円をもって相当と認める。
(イ) 過失相殺
① 本件事故における過失割合は、前記一(3)判示のとおり、Aが三〇パーセント、Bが七〇パーセントである。
② したがって、上記過失割合に従って過失相殺すると七〇万円となる。
これに前記ア(キ)②記載金額を加えると、原告X2の賠償請求額は二四七五万二〇五六円となる。
(ウ) 弁護士費用 二四五万円
弁論の全趣旨によると、原告X2が本件訴訟の提起及び追行を訴訟代理人弁護士に委任し、相当額の費用及び報酬の支払を約束していることを認めることができるところ、本件事案の性質、審理の経過及び認容額等を考慮すると、原告X2が本件事故と相当因果関係のある損害として賠償を求め得る弁護士費用の額は、二四五万円をもって相当と認める。
(エ) 結論
よって、原告X2の本件請求は、被告ら四名に対し、前記(イ)②及び(ウ)記載の合計金額(二七二〇万二〇五六円)及びこれに対する平成二〇年一一月九日(本件事故日)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余は理由がない。
エ 原告全共連請求分
(ア) 証拠(甲一三ないし一五)及び弁論の全趣旨を総合すると、本件事故により、Aの本件単車は滑走して中央分離帯に設置された国土交通省管理にかかるガードレールに激突し、修理代金相当額の損害が発生したこと、本件単車に付保されていた自動車共済契約の加入先である原告全共連は、平成二一年三月一二日、上記自動車共済契約に基づき、国に対して修理費用全額(四万八三四九円)を支払った事実が認められる。
(イ) Bは、ガードレール所有者たる国との関係では、Aと共同不法行為者の関係に立つから、過失割合に応じた負担額を超えて支払った者は、他方に対し、求償請求権を有すると解するのが相当である。
したがって、Bの過失割合が七〇パーセントを下らないから、原告全共連のBに対する求償請求額は、三万三八四四円となる。
(ウ) そして、Bの相続人である被告ら四名は、法定相続分に従った各八四六一円及びこれに対する共済金支払日の翌日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。
三 被告らの主張する損害額(争点(3))について
(1) Bの損害額
ア 治療費 四万四二八〇円
本件事故によるBの治療費が四万四二八〇円であることは、当事者間に争いがない。
イ 逸失利益 一〇八八万六二九〇円
(ア) Bは本件事故当時に給与所得を得ており、その年収額は、同年代の全労働者の平均賃金額(平成二〇年賃金センサスによると、年額三三六万八七〇〇円)程度であったことが認められる(弁論の全趣旨)。
(イ) Bの本件事故当時の年齢(六七歳)に鑑みると、就労可能年数は、その平均余命の約二分の一に相当する八年間(年五パーセントの割合で中間利息を控除するライプニッツ係数は六・四六三二)とし、生活費控除率は五〇パーセントとして、Bの逸失利益を算定すると、
336万8700円×(1-0.5)×6.4632≒1088万6290円(円未満切捨て)
となる。
ウ 死亡慰謝料
Bの年齢(本件事故当時六七歳)、家族構成等を総合勘案すると、Bの死亡慰謝料の額は、一九〇〇万円をもって相当と認める。
エ 過失相殺
(ア) 本件事故におけるBの過失割合は、前記一(3)判示のとおり、七〇パーセントである。
(イ) したがって、前記(ア)ないし(ウ)記載金額の合計額(二九九三万〇五七〇円)に対し、上記過失割合に応じて過失相殺すると、八九七万九一七一円となる。
オ 損害の填補
(ア) Bの相続人である被告らは、Aの加入していた自賠責保険から二四〇八万七三〇〇円の支払を受けた(甲二三)。
(イ) そうすると、前記エ(イ)記載金額(八九七万九一七一円)から上記自賠責保険金を控除すると、過払いとなっている。
(2) 被告ら固有の損害
ア 葬儀費用 五〇万円
Bの葬儀は被告Y1が執り行い、その費用を負担したものであるが、その費用は五〇万円を上回るとは認められない(乙九ないし一一、弁論の全趣旨)。
したがって、本件事故と相当因果関係のある葬儀費用として認められるのは五〇万円に止まる。
イ 固有慰謝料
被告ら四名はBの子であるから、本件死亡事故によって精神的苦痛を被ったことは想像に難くないから、固有の慰謝料が認められるべきである。
その額は、B及び被告ら四名の各年齢、これまでの生活状況等を総合考慮し、被告一名につき五〇万円をもって相当と認める。
ウ 損害の填補
(ア) このように被告ら四名の固有損害の合計額は二五〇万円となるところ、自賠責保険金の前記過払分を超えないから、被告らの損害賠償残額はないと言わざるを得ない。
(イ) したがって、本件事故と相当因果関係のある損害として被告らがAに対して請求できる弁護士費用も認められないと言わざるを得ない。
(3) 結論
よって、被告らの本件反訴請求はいずれも理由がないことになる。
(裁判官 藤田昌宏)
交通事故現場見取図
<省略>