大阪地方裁判所 平成21年(ワ)907号 判決 2010年7月15日
原告
X1
原告
X2
原告
X3
原告
X4
原告
X5
原告
X6
原告
X7
原告
X8
原告
X9
原告
X10
原告ら訴訟代理人弁護士
永嶋靖久
被告
医療法人Y会
同代表者理事長
A
同訴訟代理人弁護士
竹林節治
同
木村一成
同
原英彰
主文
1 被告は,原告X1に対し,17万1063円及びこれに対する平成19年12月16日から平成20年12月31日まで年5パーセントの割合による,平成21年1月1日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。
2 被告は,原告X1に対し,13万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
3 被告は,原告X2に対し,27万1960円及びこれに対する平成19年12月16日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
4 被告は,原告X2に対し,20万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
5 被告は,原告X3に対し,14万7605円及びこれに対する平成19年12月16日から平成21年3月31日まで年5パーセントの割合による,同年4月1日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。
6 被告は,原告X3に対し,12万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
7 被告は,原告X4に対し,14万8879円及びこれに対する平成19年12月16日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
8 被告は,原告X4に対し,12万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
9 被告は,原告X5に対し,12万8168円及びこれに対する平成19年12月16日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
10 被告は,原告X5に対し,8万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
11 被告は,原告X6に対し,47万8944円及びこれに対する平成19年12月16日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
12 被告は,原告X6に対し,32万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
13 被告は,原告X7に対し,12万5042円及びこれに対する平成19年12月16日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
14 被告は,原告X7に対し,10万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
15 被告は,原告X8に対し,21万4588円及びこれに対する平成19年12月16日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
16 被告は,原告X8に対し,15万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
17 被告は,原告X9に対し,31万3795円及びこれに対する平成19年12月16日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
18 被告は,原告X9に対し,21万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
19 被告は,原告X10に対し,27万9299円及びこれに対する平成19年12月16日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
20 被告は,原告X10に対し,27万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
21 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
22 訴訟費用はこれを2分し,その1を被告の,その余を原告らの負担とする。
23 この判決の第1,3,5,7,9,11,13,15,17,19項は,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1原告の請求
1 被告は,別紙請求金額一覧表原告名欄記載の各原告に対し,同一覧表請求金額欄記載の各金員及びこれらに対する,原告X1の分については,平成19年12月16日から平成20年12月31日まで年5パーセントの割合による,平成21年1月1日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による,原告X3の分については,平成19年12月16日から平成21年3月31日まで年5パーセントの割合による,平成21年4月1日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による,その余の原告らの分については,平成19年12月16日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2 被告は,別紙請求金額一覧表原告名欄記載の各原告に対し,同一覧表請求金額欄記載の各金員及びこれらに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
第2事案の概要
原告らは,被告の職員又は職員であった者であるところ,本件は,原告らが,被告に対し,雇用契約に基づく賃金請求権に基づき,別紙請求金額一覧表記載の請求金額欄記載の時間外手当及びこれらに対する,原告X1の分については,弁済期の後である平成19年12月16日から退職日である平成20年12月31日まで民法所定の年5パーセントの割合による,さらに退職日の翌日である平成21年1月1日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金,原告X3の分については,弁済期の後である平成19年12月16日から退職日である平成21年3月31日まで民法所定の年5パーセントの割合による,さらに退職日の翌日である同年4月1日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金,その余の原告らの分については弁済期の後である平成19年12月16日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の各支払を求め,これに加えて,労働基準法(以下「労基法」という。)114条に基づき,別紙請求金額一覧表記載の請求金額欄記載の付加金及びこれらに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。
原告らの請求に対し,被告はこれを全面的に争い,請求棄却の判決を求めている。
1 前提となる事実関係(証拠により認定する場合には末尾に証拠を掲げた。)
(1) 当事者
ア 被告
被告は,a病院(以下「病院」という。)及び介護老人保険施設b(以下「老健施設」という。)を設置運営する医療法人である。
イ 原告ら
原告らは,被告に雇用されている者又は被告に雇用されていた者であり,原告X10(以下「原告X10」という。)は看護師,原告X8(以下「原告X8」という。),原告X2(以下「原告X2」という。),原告X4(以下「原告X4」という。),原告X5(以下「原告X5」という。)は看護助手,原告X7(以下「原告X7」という。),原告X9(以下「原告X9」という。)及び原告X6(以下「原告X6」という。)は介護職員としてそれぞれ勤務している者である。原告X1(以下「原告X1」という。)は被告の看護助手として,原告X3(以下「原告X3」という。)は老健施設職員としてそれぞれ勤務していたが,原告X1は平成20年12月末日をもって,原告X3は平成21年3月末日をもってそれぞれ退職した。
(2) 労働時間に関する就業規則の定め
ア 被告の就業規則(平成16年6月1日施行と定められているもの。以下「甲3の就業規則」という。)には,以下の定めがある(<証拠省略>。用語等は原文のとおり。)。
第28条(所定労働時間及び始業及び終業時刻並びに休憩時間)
① 所定労働時間は1カ月を平均して,1週40時間とする。起算日は毎月1日とする。但し,医師については1週32時間以上
② 始業及び終業時刻
職種
始業終業時刻
職種
始業終業時刻
看護師.一般
9.00~17.00
看護師.看護助手
17.00~9.00
看護助手1組
7.40~15.40
看護助手3組
9.00~18.30
看護助手2組
10.40~18.40
厨房1組
6.00~15.00
厨房2組
7.00~10.00
厨房3組
8.00~17.00
厨房4組
9.00~16.00
厨房5組
10.00~17.00
③ 休憩時間はそれぞれ12時から13時迄とする。
④ 厨房部門に関しては休憩時間は13時から13時20分迄及び16時10分から16時50分までとする。
第39条(時間外及び休日労働)
事業所は業務の都合により,第28条の所定労働時間を超え,または所定休日に労働させることがある。この場合において,法定の労働時間を超える労働または法定の休日における労働については,あらかじめ事業所は従業員の代表者と書面による協定締結し,これを所轄の労働基準監督署長に届け出るものとする。
ただし,延長時間は1週15時間1年360時間を限度とする。
第75条(職場規律)
① 事業所への出退は必ず所定の場所により行なうこと。
② 朝礼には必ず出席すること。
③ 出退勤の際は,自分でタイムカードを打刻すること。又は出勤簿を押印すること。タイムカードの打刻又は出勤簿の押印を他人に依頼し,又は依頼に応じてはならない。
④ 退勤のときは必ず用具,諸材料,物品,書類等を整理し,火元又は戸締まり等を点検して退場する。(以下省略)
イ 被告の就業規則(平成18年5月20日施行と定められているもの。以下「乙14の就業規則」という。)には,以下の定めがある(<証拠省略>。用語等は原文のとおり。)。
第28条(所定労働時間及び始業及び終業時刻並びに休憩時間)
① 所定労働時間は1カ月を平均して,1週40時間とする。起算日は毎月1日とする。但し,医師については1週32時間以上。
② 始業及び終業時刻
職種
始業終業時刻
職種
始業終業時刻
看護師.一般
9:00~17:00
看護師.看護助手
17:00~9:00
看護助手1組
7:40~15:40
看護助手2組
10:00~18:40
看護助手3組
9:00~17:00
看護助手4組
8:00~16:00
看護助手5組
10:30~18:30
厨房1組
6:00~15:00
厨房2組
7:00~16:00
厨房3組
8:00~17:00
厨房4組
9:00~18:00
厨房5組
10:00~19:00
③ 休憩時間はそれぞれ12時から13時迄とする。
④ 厨房部門に関しては休憩時間は13時から13時20分迄及び16時10分から16時50分までとする。
第39条(時間外及び休日労働)
事業所は業務の都合により,第28条の所定労働時間を超え,または所定休日に労働させることがある。この場合において,法定の労働時間を超える労働または法定の休日における労働については,あらかじめ事業所は従業員の代表者と書面による協定締結し,これを所轄の労働基準監督署長に届け出るものとする。
ただし,延長時間は1週15時間1年360時間を限度とする。
第75条(職場規律)
① 事業所への出退は必ず所定の場所により行なうこと。
② 朝礼には必ず出席すること。
③ 出退勤の際は,自分でタイムカードを打刻すること。又は出勤簿を押印すること。タイムカードの打刻又は出勤簿の押印を他人に依頼し,又は依頼に応じてはならない。
④ 退勤のときは必ず用具,諸材料,物品,書類等を整理し,火元又は戸締まり等を点検して退場する。(以下省略)
ウ 被告の就業規則(表紙に平成18年8月11日付けの受付印が押印されているもの。以下「乙40の就業規則」という。)には,以下の定めがある(<証拠省略>。用語等は原文のとおり。)。
第28条(所定労働時間及び始業及び終業時刻並びに休憩時間)
① 所定労働時間は1カ月を平均して,1週40時間とする。起算日は毎月1日とする。但し,医師については1週32時間以上
② 始業及び終業時刻
職種
始業終業時刻
職種
始業終業時刻
看護師1組.一般
9:00~17:00
看護師2組
8:00~16:00
看護師3組
10:00~18:00
看護師・看護助手
17:00~9:00
看護助手1組
7:40~15:40
看護助手2組
10:40~18:40
看護助手3組
9:00~17:00
看護助手4組
8:00~16:00
看護助手5組
10:30~18:30
看護助手6組
7:40~16:10
看護助手7組
10:00~18:30
厨房1組
6:00~15:00
厨房2組
7:00~16:00
厨房3組
8:00~17:00
厨房4組
9:00~18:00
厨房5組
10:00~19:00
③ 休憩時間はそれぞれ12時から13時迄とする。
④ 厨房部門に関しては休憩時間は13時から13時20分迄及び16時10分から16時50分までとする。
第39条(時間外及び休日労働)
事業所は業務の都合により,第28条の所定労働時間を超え,または所定休日に労働させることがある。この場合において,法定の労働時間を超える労働または法定の休日における労働については,あらかじめ事業所は従業員の代表者と書面による協定締結し,これを所轄の労働基準監督署長に届け出るものとする。
ただし,延長時間は1週15時間1年360時間を限度とする。
第75条(職場規律)
① 事業所への出退は必ず所定の場所により行なうこと。
② 朝礼には必ず出席すること。
③ 出退勤の際は,自分でタイムカードを打刻すること。又は出勤簿を押印すること。タイムカードの打刻又は出勤簿の押印を他人に依頼し,又は依頼に応じてはならない。
④ 退勤のときは必ず用具,諸材料,物品,書類等を整理し,火元又は戸締まり等を点検して退場する。(以下省略)
エ 被告の就業規則(平成21年10月1日施行と定められているもの。以下「乙18の就業規則」という。)には,以下の定めがある(<証拠省略>。用語等は原文のとおり。)。
第28条(所定労働時間及び始業及び終業時刻並びに休憩時間)
1.所定労働時間は1カ月を平均して,1週40時間とする。起算日は毎月1日とする。但し,医師については1週32時間以上
2.始業及び終業時刻
職種
始業終業時刻
職種
始業終業時刻
看護師1組.一般
9:00~17:00
看護師2組
8:00~16:00
看護師3組
10:00~18:00
看護師夜勤
16:45~翌9:15
看護助手1組
7:40~15:40
看護助手2組
10:40~18:40
看護助手3組
9:00~17:00
看護助手4組
8:00~16:00
看護助手5組
10:30~18:30
看護助手6組
7:40~16:10
看護助手7組
10:00~18:30
看護助手8組
9:00~18:00
看護助手夜勤
17:00~翌9:00
通所リハビリ
8:30~17:30
厨房1組
6:00~15:00
厨房2組
7:00~16:00
厨房3組
8:00~17:00
厨房4組
9:00~18:00
厨房5組
10:00~19:00
③ 休憩時間はそれぞれ12時から13時迄とする。
④ 厨房部門に関しては休憩時間は13時から13時20分迄及び16時10分から16時50分までとする。
第39条(時間外及び休日労働)
事業所は業務の都合により,第28条の所定労働時間を超え,または所定休日に労働させることがある。この場合において,法定の労働時間を超える労働または法定の休日における労働については,あらかじめ事業所は従業員の代表者と書面による協定締結し,これを所轄の労働基準監督署長に届け出るものとする。
ただし,延長時間は1週15時間1年360時間を限度とする。
第75条(職場規律)
① 事業所への出退は必ず所定の場所により行なうこと。
② 朝礼には必ず出席すること。
③ 出退勤の際は,自分でタイムカードを打刻すること。又は出勤簿を押印すること。タイムカードの打刻又は出勤簿の押印を他人に依頼し,又は依頼に応じてはならない。
④ 退勤のときは必ず用具,諸材料,物品,書類等を整理し,火元又は戸締まり等を点検して退場する。(以下省略)
(3) 時間外手当に関する給与規程の定め
被告の給与規程には以下の定めがある(<証拠省略>)。
第7条(諸手当)
諸手当の分類と内容,支給条件及び金額は次のとおりとする。
(中略)
⑥ 割増賃金は,次の算式により計算して支給する。
a) 時間外労働割増賃金(所定労働時間を超えて労働させた場合)
基準内賃金/1か月平均所定労働時間×1.25×時間外労働時間数
b) 休日労働割増賃金(所定の休日に労働させた場合)
基準内賃金/1か月平均所定労働時間×1.35×休日労働時間数
c) 深夜労働の割増賃金
(午後10時から午前5時までの間に労働させた場合)
基準内賃金/1か月平均所定労働時間×0.25×深夜労働時間数
第11条(賃金の締切日及び支払日)
1.賃金は毎月1日を起算日とし,末日を締切日とする。
2.賃金の支給日は毎月15日とする。ただし,支給日が休日に当たるときは,その前日を支給日とする。
第15条(賃金計算時の端数)
賃金計算に際して生じた1円未満の端数は四捨五入する。
(4) 原告らのタイムカード打刻時刻
原告らのタイムカード打刻時刻は,それぞれ,原告X1について別紙A1-②の,原告X2について別紙A2-②の,原告X3について別紙A3-②の,原告X4について別紙A4-②の,原告X5について別紙A5-②の,原告X6について別紙A6-②の,原告X7について別紙A7-②の,原告X8について別紙A8-②の,原告X9について別紙A9-②の,原告X10について別紙A10-②の各「出勤打刻(夜勤入り)」欄及び「退出打刻(夜勤明け)」欄記載の時刻である(<証拠省略>,弁論の全趣旨)。
(5) 原告らの所定就業時間
原告らの平成18年7月以降の所定就業時間(始業時刻及び終業時刻)は,それぞれ,原告X1について別紙A1-②の,原告X2について別紙A2-②の,原告X3について別紙A3-②の,原告X4について別紙A4-②の,原告X5について別紙A5-②の,原告X6について別紙A6-②の,原告X7について別紙A7-②の,原告X8について別紙A8-②の,原告X9について別紙A9-②の,原告X10について別紙A10-②の各「始業時刻」欄及び「終業時刻」欄記載の時刻である
(6) 消滅時効
被告は,平成21年3月12日の本件第1回口頭弁論期日において,原告らに対し,原告ら各自の平成18年6月末日までの分の賃金は同年7月15日までに支払期が到来したところ,上記各賃金請求権については,同日から,原告らが被告に対して賃金の支払を催告した平成20年7月29日までに2年間の消滅時効期間が経過したとして,消滅時効を援用するとの意思表示をした(当裁判所に顕著)。
ところで,被告による上記消滅時効の主張について,原告は特段争わず,抗弁等も提出しない。したがって,原告らの本訴における賃金請求のうち,平成18年6月30日までの労働に対する賃金を請求する部分については,時効により消滅したものと認める。
2 争点及び当事者の主張(省略)
第3当裁判所の判断
1 争点(1)(原告らの時間外労働の事実)について
(1) 前記前提となる事実関係(第2の1)に証拠(<証拠・人証省略>,原告X7本人,原告X10本人,原告X2本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる(認定に供した主要な証拠は,各認定事実の末尾に再掲した。)。
ア 被告は,病院と老健施設を設置運営する医療法人である。病院と老健施設は同一敷地内に併設されているが,建物は別である。病院は,地下1階地上9階建てで,一般病棟(7階,8階)111床,療養病棟(2階)60床,特殊疾患療養病棟1(3階,4階)108床,特殊疾患療養病棟2(5階,6階)106床合計385床を有する。
他方,老健施設は,6階建てで,入所定員は150名である。
(<証拠省略>)
イ 平成18年7月以降における原告らの所属及び職種は,原告X1が病院8階の看護助手,原告X2が病院5階の看護助手,原告X3が老健施設の清掃職員,原告X4が病院6階の看護助手,原告X5が,同月から同年10月までは病院3階の,同年11月以降は病院7階の看護助手,原告X6が老健施設1階のデイケア職員,原告X7が,平成18年7月から平成19年5月までは老健施設4,5階の,同年6月以降は老健施設2階の介護職員,原告X8が病院2階の看護助手,原告X9が老健施設3階の介護職員,原告X10が,平成18年7月から平成19年5月までは病院6階の,同年6月以降は病院2階の看護師である(<証拠省略>,原告X7本人,原告X10本人)。
ウ 被告は,病院に勤務する職員用に,病院地下1階のエレベーター脇にタイムレコーダーを設置しており,老健施設に勤務する職員用に老健施設1階の老健食堂入口付近にタイムレコーダーを設置している。現在,職員用の更衣室は,病院地下1階にあり,老健施設に勤務する職員も上記更衣室で着替える。そのため,病院に勤務する職員とっては,タイムレコーダーが更衣場所から近い場所にあるが,老健施設に勤務する職員にとっては,更衣場所とタイムレコーダーは若干離れた場所にあることになる。もっとも,平成18年12月31日以前は,老健施設に勤務する職員の更衣場所は老健施設の地下に設けられており,このころは,タイムレコーダーと行為場所は近接していた。
なお,被告において,タイムカードを着替えの前に打刻するか,後に打刻するかについての明確な決まりは存在していなかったが,原告らはいずれも,出勤後着替えを行った後に始業の打刻をし,終業後着替えを行う前に終業の打刻を行っていた。
タイムカードの設置されている場所から各人の就業場所までは,エレベーターを使用するか,若しくは徒歩で階段を昇るなどして行くことになるが,いずれにしろ,同一建物内を移動するに過ぎない。
(<証拠・人証省略>,原告X7本人,原告X10本人,原告X2本人)。
エ 被告においては,職員が勤務するに当たり,始業や終業が特段指示されるわけではなく,各職員の判断で業務を開始し,終了するものとされていた。しかし,後述するとおり,業務の引継ぎやミーティングが始業時間前若しくは終業時間後に行われており,それには出席する必要があった(<人証省略>)。
オ 甲3の就業規則においては,被告の職員の勤務時間について次のとおり定めていた。すなわち,①看護師については,日勤が午前9時から午後5時,夜勤が午後5時から午前9時とされ,②看護助手・介護職員については,日勤1組が午前7時40から午後3時40分,日勤2組が午前10時40分から午後6時40分,日勤3組が午前9時から午後6時30分,夜勤が午後5時から午前9時とされていた(<証拠省略>)。
その後制定された乙14の就業規則も,基本的には甲3の就業規則と同様の勤務時間の定めをしていたが,看護助手・介護職員の日勤3組の勤務時間を午前9時から午後5時としたほか,新たな勤務シフトとして日勤4組(午前8時から午後4時),日勤5組(午前10時30分から午後6時30分)が定められ,同就業規則は平成18年5月20日に施行された。
同年8月ころ制定された乙40の就業規則においては,上記に加え,看護師の日勤勤務に新たなシフトとして,日勤2組(午前8時から午後4時),日勤3組(午前10時から午後6時)が定められ,看護助手の新たな勤務シフトとして,日勤6組(午前7時40分から午後4時10分),日勤7組(午前10時から午後6時30分)が定められた。
さらに,平成21年10月1日に施行された乙18の就業規則においては,看護師の夜勤が午後4時45分から午前9時15分に変更され,看護助手の新たな勤務シフトとして日勤8組(午前9時から午後6時)が定められ,通所リハビリ担当職員の勤務について午前8時30分から午後5時30分と定められた。
カ 平成18年9月ころまでの間,被告が職員向けに作成し,配布していた勤務マニュアルにおいては,上記オの勤務時間にかかわらず,看護師の夜勤勤務については午後4時30分から申し送りが行われることとされており,介護職員及び看護助手の早出日勤勤務は午前7時20分ないし7時30分から業務が始まるものとされていた。
また,平成18年9月ころに被告が作成,配布した看護師の夜勤業務スケジュールにおいては,当時施行されていた就業規則とは異なる勤務時間を前提とするスケジュールが記載されていた。
さらに,同じころに,被告が作成,配布した看護助手の遅出日勤勤務(勤務時間午前10時から午後6時30分)の業務スケジュールにおいては,午前10時よりも前に行うべき業務が記載されていた。
(<証拠省略>,原告X7,<人証省略>)。
キ 病院に勤務する看護師については,始業時間の前に夜勤の看護師からの引継ぎ及びミーティングが行われることがあり,所定始業時間前から業務に従事することがあるほか,終業時間直前に医師から指示を出されたり,患者の容体に変化が生じる等のために所定終業時間を超えて勤務することがあった。また,週2回患者の入浴があり,その日には,患者の尿の処理や,検温,痰の吸引等を午前9時前に行う必要があり,そのために日勤勤務の始業時間前から業務に就くことがあった(<証拠省略>,原告X10本人)。
ク 被告に勤務する看護助手は,日勤勤務の所定始業時間よりも前から患者の食事の準備にとりかかることがあったし,介護職員についても,日勤勤務の所定始業時間よりも前からベッドメイクやゴミ集め,シーツ交換などを行うことがあった。また,夜勤の介護職員は,引継ぎのために所定始業時間の前から業務に就くことがあった。
さらに,老健施設のデイケア担当の介護職員であった原告X6は,デイケアの利用者が使用する机の上に利用者相互の相性等を考慮しながら名札を並べる作業を,所定始業時間よりも前の時間から始めることがあったし,清掃作業員の原告X3は,所定始業時間よりも前の時間から入浴の準備にとりかかることがあった。
看護助手や介護職員ともに,所定時間内に所定の業務が終了せず,所定終業時間を超えて勤務することもあった(<証拠省略>,原告X7本人,原告X2本人)。
ケ 被告は,従業員の通勤用にバスを用意しているが,原告らの中に,このバスを利用している者はなく,バス待ちのために勤務時間終了後,被告の施設内で過ごす必要のある者はいなかった(原告X7本人,原告X10本人,原告X2本人,弁論の全趣旨)。
コ 被告は,平成19年10月ころ,時間外手当の支払に関し,北大阪労働基準監督署による調査を受け,是正事項の指摘を受けたが,同指摘に対する是正報告書において,平成19年6月分から同年9月分の時間外手当の算定について,①始業時刻はタイムカードの出勤打刻時刻ではなく,各人の所定始業時刻によるが,看護師についてはミーティング時間を所定始業時刻の10分前開始とし,この分を残業時間に入れる,②終業時刻はタイムカードの退出打刻時刻から20分を差し引いた時刻を終業時刻とするという扱いにした上,同年の冬季ボーナス支払期日に各人に対して支払うものとする旨の報告を行った。その上で,被告は,上記計算方法に基づき平成19年6月から同年9月分までの時間外手当を算出して,平成19年12月中に,原告らに対して支払った。さらに,平成17年10月分から平成19年12月分までの時間外手当の未払分として,平成20年4月15日ころまでに,原告らそれぞれに対して一定の額を支払った(<証拠省略>)。
(2) なお,被告は,上記(1)のウの認定に反し,原告らは,出勤後着替える前に始業の打刻をし,終業後着替えた後に終業の打刻をしていたものであり,また,着替えの時間に5分ないし10分程度を要していた旨主張する。しかしながら,この点に関する証人Bの供述は,推測を述べているものに過ぎず,根拠を欠くものといわざるを得ない。仮に,被告の主張するとおり,原告らが,終業後,5ないし10分程度の時間をかけて着替えた後に終業の打刻をしていたのであるとすれば,原告らのタイムカードの終業打刻の時刻は,所定終業時刻よりも5ないし10分程度必ず遅れることになるはずであるが,証拠(<証拠省略>)によって認められる原告ら各人のタイムカードの終業打刻の時刻は,各人ごとに,また日によってまちまちであり,終業時刻と同じか,1分程度しかずれていないこともあるのである。そうだとすると,上記の被告の主張は客観的事実にも反するものであるといわざるを得ず,採用することができない。
(3) 上記(1)認定の事実に弁論の全趣旨を総合すると,①原告らはいずれも,出勤後,着替えた後にタイムカードの出勤打刻をし,終業後,着替える前にタイムカードの打刻をしていたものであること,②平成19年12月ころまでの間,被告においては,始業時間や終業時間の合図等があるわけではなく,それぞれの職員が自らの判断で業務に取りかかり,業務を終了していたこと,③被告が平成18年9月よりも前に作成した業務マニュアルにおいては,所定始業時間よりも前に業務を開始することを前提とする記載があり,同月より後に被告が作成した業務スケジュールについても,所定始業時間よりも前に行うべき業務が記載されていたり,所定勤務時間と符合しないスケジュールが記載されていたものであること,④夜勤の看護師及び介護職員は日勤者から引継ぎを受ける必要があり,逆に日勤の看護師及び介護職員は夜勤者から引継ぎを受ける必要があるが,就業規則上,この引継ぎ又はミーティングのための時間が特に設けられていたわけではなく,所定時間外で行う必要があったこと,⑤この引継ぎ又はミーティング以外にも,看護師は患者の尿の処理や検温のため,看護助手は食事の準備のため,介護職員はベッドメイクやゴミ収集等のため,デイケア職員は名札を机に並べる等の作業のため,清掃作業員は入浴の準備のため,それぞれ所定時間よりも前から業務に就くことがあったし,所定勤務時間内に業務が終了せずに所定終業時間を超えて勤務することもあったこと,⑥原告らはいずれも,通勤バスを利用している者ではなく,勤務が終了したにもかかわらず被告の施設内にとどまっている必要がある者ではないこと,⑦被告自身,労基署に対する是正報告書において,一定の時間外労働があったことを前提とする残業代の再計算を行う旨を明らかにし,実際に,原告ら各自に対して自らの再計算に基づき残業代を支払ったことが認められる。
以上の事実を前提とすると,原告らについては,タイムカードの出勤打刻後,退出打刻までの間,休憩時間を除くほか被告の業務に従事していたと認めるのが相当である。したがって,原告らの労働時間は,タイムカードの打刻時刻を基準として認定するのが相当であり,出勤打刻時から所定始業時間までの間及び所定終業時間から退勤打刻時まではそれぞれ時間外労働として割増賃金支払の対象となると解される。
(4) 被告は,前記認定に反し,被告においては,タイムカードのほかにも所属長が実労働時間を記入する個人別勤務状況表が作成されているほか,法人として勤務時間を記録化した勤務時間確認書が作成されており,タイムカードの打刻はあくまで出退勤の事実を記録するものに過ぎず,これによって実労働時間の把握はできない旨主張する。しかしながら,そもそも被告は個人別勤務状況表や勤務時間確認書を証拠として提出しておらず,被告がタイムカード以上に正確な労働時間の把握をしていたことは本件全証拠によっても認めることはできない。
また,被告は,病院の患者や老健施設の入居者の特性上,入院及び入所は定期の入退所がほとんどで,職員が緊急対応を求められることはなく,時間外労働が発生する余地はなかった旨の主張をする。しかしながら,前記(1)のカで認定説示したとおり,被告自身が作成,配布した業務マニュアルにおいて,所定始業時間前の業務を指示していた事実が認められるのであって,被告の上記主張を採用することもできない。
以上のとおりであって,被告の主張は,前記(3)の認定を左右するするものではない。
(5) 以上より,原告らそれぞれについて,出勤打刻時から所定始業時間までの間及び所定終業時間から退勤打刻時まではそれぞれ時間外労働として割増賃金支払の対象となると解されるところ,割増賃金請求権が時効消滅していない平成18年7月分以降の期間について,その時間数を算定すると,それぞれ,原告X1について別紙B1の,原告X2について別紙B2の,原告X3について別紙B3の,原告X4について別紙B4の,原告X5について別紙B5の,原告X6について別紙B6の,原告X7について別紙B7の,原告X8について別紙B8の,原告X9について別紙B9の,原告X10について別紙B10の各表記載の平成18年7月1日以降の各日に,少なくとも同表記載の時間(単位は分である),所定時間外労働に従事したものと認められる。
2 争点(2)(時間外割増賃金の額)について
証拠(<証拠省略>)及び弁論の全趣旨によれば,原告ら各人の時間外労働に対する割増賃金算定の基礎となる各月の時間単価(給与規定の定めに従い1.25倍したもの)は,原告X1については別紙A1-①の,原告X2については別紙A2-①の,原告X3については別紙A3-①の,原告X4については別紙A4-①の,原告X5については別紙A5-①の,原告X6については別紙A6-①の,原告X7については別紙A7-①の,原告X8については別紙A8-①の,原告X9については別紙A9-①の,原告X10については別紙A10-①の各「時間単価」欄記載の金額であると認められる。
前記第3の1において認定した原告ら各自の時間外労働の時間数に上記時間単価を乗じて原告ら各自の時間外労働割増賃金の額を算定(円未満四捨五入)すると,別紙時間外手当計算表(裁判所)の原告ら各自の残業代欄記載の金額となる。
3 争点(3)(割増賃金支払の事実)について
(1) 被告は,原告X6に対して毎月3万円支給していた特別手当について,時間外割増賃金の前払としての性格を有するので,原告X6の割増賃金の算定に当たっては控除されるべきであると主張する。
しかしながら,証拠(<証拠省略>)によれば,被告の給与規定上,特別手当が時間外手当の性格を有するものであることは何ら明らかにされておらず,むしろ時間外手当とは別個の基準外給与であることが明示されているのであって,上記の被告の主張は根拠を欠くものといわざるを得ない。
よって,被告の上記主張を採用することはできない。
(2) 被告が,同年12月12日及び同月26日に,原告X1に対しては別紙A1-①の,原告X2に対しては別紙A2-①の,原告X7に対しては別紙A7-①の,原告X8に対しては別紙A8-①の,原告X9に対しては別紙A9-①の,原告X10に対しては別紙A10-①の各「平成19年6月~9月分(平成19年12月12日支払分)」及び「平成19年6月~9月分(平成19年12月26日追加支払分)」欄記載の各金員を支払ったこと,さらに,平成20年4月15日に,原告らに対し,平成18年7月から平成19年12月までの法内残業の未払分として,原告X1に対しては別紙A1-①の,原告X2に対しては別紙A2-①の,原告X3に対しては別紙A3-①の,原告X4に対しては別紙A4-①の,原告X5に対しては別紙A5-①の,原告X6に対しては別紙A6-①の,原告X7に対しては別紙A7-①の,原告X8に対しては別紙A8-①の,原告X9に対しては別紙A9-①の,原告X10に対しては別紙A10-①の各「平成18年7月~平成19年12月:18か月分(平成20年4月15日支払分)」欄記載の各金員を支払ったことは当事者間に争いがない。
したがって,上記各金員は原告ら各自に認められる時間外割増賃金から控除することとする。
(3) 小括
前記第3の2において認定した原告ら各自の時間外割増賃金額の合計金額から上記(2)の既払金の額を控除すると,別紙時間外手当計算表(裁判所)の原告ら各自の認容額欄記載の金額となる。
4 遅延損害金について
原告X1が平成20年12月31日をもって,原告X3が平成21年3月31日をもって,それぞれ被告を退職したことは当事者間に争いがない。上記原告両名は,被告に対し,未払の割増賃金に対する退職日の翌日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律6条1項及び同法施行令所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めているところ,被告は,被告には,同条2項に定める事由があると主張して,同条1項の遅延利息の適用を争っている。しかしながら,同法6条2項において同条1項の遅延利息の適用の例外とされているのは,賃金の支払の遅滞が「天災地変その他のやむを得ない事由で厚生労働省令で定めるものである場合」であるところ,かかる規定の文言及び同法が賃金の支払の確保措置を通じて労働者の生活の安定に資することを目的としていること(同法1条参照)に照らすならば,同法施行規則6条にいう「合理的な理由により,裁判所(中略)で争っていること」とは,単に事業主が裁判所において退職労働者の賃金請求を争っているというのでは足りず,事業主の賃金支払拒絶が天災地変と同視し得るような合理的かつやむを得ない事由に基づくものと認められた場合に限られると解するべきである。
本件において,被告の原告X1及び原告X3に対する賃金支払拒絶に上記のような合理的かつやむを得ない事由があるものとは本件全証拠によっても認めることができない。
したがって,原告X1及び原告X3は,被告に対し,それぞれの割増賃金に対する退職の日の翌日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払を請求することができる。
5 付加金請求について
被告は,労基署の指導がなされるまで,原告らに対する時間外労働に対する割増賃金の支払を全くしていなかったものであることころ,その後独自の計算に基づく低額の金員の支払はしたものの,本件訴訟が提起された後においても,原告らの時間外労働の事実自体を争い,裁判所の和解勧告にも応じようとせず,未払の時間外割増手当を支払う姿勢が全く見られない。このような本件の事案に照らすと,本件においては,被告に対し,労基法114条に基づき付加金の支払を命ずることとするのが相当である。具体的には,本件訴訟が提起された日の2年前である平成19年1月26日以降に発生した割増賃金の額等を考慮し,原告X1について13万円,原告X2について20万円,原告X3について12万円,原告X4について12万円,原告X5について8万円,原告X6について32万円,原告X7について10万円,原告X8について15万円,原告X9について21万円,原告X10について27万円の各付加金の支払を命じることとする。
6 まとめ
以上のとおりであるから,原告らの本訴請求(遅延損害金請求を除く)は,被告に対し,雇用契約に基づく賃金請求権に基づき,原告X1が17万1063円,原告X2が27万1960円,原告X3が14万7605円,原告X4が14万8879円,原告X5が12万8168円,原告X6が47万8944円,原告X7が12万5042円,原告X8が21万4588円,原告X9が31万3795円,原告X10が27万9299円の各支払を求め,付加金として原告X1が13万円,原告X2が20万円,原告X3が12万円,原告X4が12万円,原告X5が8万円,原告X6が32万円,原告X7が10万円,原告X8が15万円,原告X9が21万円,原告X10が27万円の各支払を求める限度で理由がある。
なお,原告らの遅延損害金請求については次のとおりとなる。原告X1の請求については,未払賃金17万1063円に対する,弁済期の後である平成19年12月16日から退職日である平成20年12月31日まで民法所定の年5パーセントの割合による,退職日の翌日である平成21年1月1日から支払済みまで賃金の支払いの確保等に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による各遅延損害金及び付加金13万円に対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,原告X3の請求については,未払賃金14万7605円に対する,弁済期の後である平成19年12月16日から退職日である平成21年3月31日まで民法所定の年5パーセントの割合による,退職日の翌日である平成21年4月1日から支払済みまで賃金の支払いの確保等に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による各遅延損害金及び付加金12万円に対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余の原告らの請求については,各未払賃金に対する弁済期の後である平成19年12月16日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金及び各付加金に対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
よって,訴訟費用の負担につき,同法64条本文,61条を適用し,仮執行宣言につき同法259条1項を適用し,主文のとおり判決する。
(裁判官 大須賀寛之)
別紙
請求金額一覧表
原告名
請求金額
X1
39万8183円
X2
53万2137円
X3
37万2301円
X4
35万0748円
X5
36万2752円
X6
81万6719円
X7
28万4897円
X8
45万0071円
X9
34万2244円
X10
75万7276円