大阪地方裁判所 平成23年(ワ)71号 判決 2013年11月21日
大阪府<以下省略>
原告
X
同訴訟代理人弁護士
松田繁三
同
酒井由香
東京都中央区<以下省略>
被告
岡三証券株式会社
同代表者代表取締役
A
同訴訟代理人弁護士
塚本美彌子
同
牟礼大介
同
多田慎
主文
1 被告は,原告に対し,493万6154円及びこれに対する平成20年8月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,これを10分し,その3を被告の負担とし,その余は原告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1 主位的請求
被告は,原告に対し,1718万9230円及びうち656万2730円に対する平成20年8月5日から,うち1062万6500円に対する平成23年1月25日(訴状送達の翌日)から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 予備的請求
被告は,原告に対し,1280万0100円及びこれに対する平成20年8月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,被告の従業員らの勧誘により,いずれも仕組債であるいわゆるデジタル・クーポン債(外貨建日経平均連動デジタル・クーポン債。日経平均の株価水準によって利率及び償還額が変動する債券)並びにいわゆるEB債(他社株式償還条項付社債。償還時に指定された特定の株式の株価水準によって利率及び償還方法(現金償還か対象株式の現物償還か)が変動する債券。以下,本件で原告が購入したデジタル・クーポン債を「本件デジタル・クーポン債」と,原告が購入したEB債を「本件EB債」とそれぞれいい,これらを併せて「本件各仕組債」という。)を購入した原告が,被告に対して,本件各仕組債の購入は錯誤により無効であり,また,被告の従業員らの勧誘行為に適合性原則違反又は説明義務違反の違法があったとして,① 主位的には,本件デジタル・クーポン債(ただし,後記本件仕組債⑤ないし⑬の各デジタル・クーポン債に限る。)について支払代金相当額の不当利得返還を求めるとともに,株式で償還済みの本件EB債については,不法行為に基づく損害賠償を求め,② 予備的に,本件各デジタル・クーポン債(前同様)について,不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。
1 前提事実(争いがない事実等のほか,各項掲記の証拠(枝番の存するものは,特記なき限り,全枝番を含む。以下同様。)により容易に認められる事実等)
(1) 当事者等
ア 原告は,昭和7年○月生の女性であり,平成18年8月当時,73歳であった。
イ 被告は,証券会社であり,B(以下「B」という。)は,被告の従業員として原告の担当者であった者である。
(2) 原告による本件各仕組債の購入等
ア 原告は,昭和61年12月ころ,知人の紹介により,被告において取引口座を開設した(甲67,乙1,8の1)。
イ 被告の従業員のBは,平成17年3月ころ,原告の担当者となった。
ウ 本件仕組債①(デジタル・クーポン債)の購入
Bは,平成18年8月,原告に対し,別紙1記載の仕組債(以下「本件仕組債①」という。)の購入を勧めたところ,原告は,同月3日,本件仕組債①を購入した(甲2,乙4の1)。
エ 本件仕組債②ないし⑬(デジタル・クーポン債)の購入
原告は,平成18年9月13日から平成20年6月18日にかけて,別紙2ないし別紙13記載の各デジタル・クーポン債(以下,順に「本件仕組債②」ないし「本件仕組債⑬」という。)を購入した(甲2,乙4の2ないし4の12)。
オ 本件仕組債⑭(EB債)の購入
原告は,平成20年7月25日,B及び被告の従業員のC(以下「C」という。)から別紙14記載の仕組債(以下「本件仕組債⑭」という。)の購入について勧誘を受け,同年8月4日ころ,本件仕組債⑭を購入した(甲2の1,4,乙8の4)。
原告は,本件仕組債⑭の購入に際し,同年7月29日付けで,個人年金保険(a生命保険株式会社との間の新変額個人年金保険Ⅰ型。以下「本件個人年金保険」という。)の契約額1500万円のうち1024万5930円を解約し(うち24万5930円は解約手数料),同年8月5日,1003万6800円を被告における原告名義の口座に振り込んだ(甲12)。
カ 本件各仕組債の状況
(ア) 償還済みのもの
a 早期償還となったもの
(a) 本件仕組債①は,平成19年2月14日に早期償還され,同償還金額1万豪ドルは,同月15日購入の本件仕組債⑤の購入資金(1万豪ドル)に当てられた(甲2)。
(b) 本件仕組債②は,平成19年3月20日に早期償還され,同償還金額1万米ドルは,同月23日購入の本件仕組債⑥の購入資金(1万米ドル)に当てられた(甲2)。
(c) 本件仕組債③は,平成19年4月18日に早期償還され,同償還金額2万豪ドルは,同月13日購入の本件仕組債⑦の購入資金(2万豪ドル)に当てられた(甲2)。
(d) 本件仕組債④は,平成20年1月23日に早期償還された(償還金額300万円)(甲2)。
(e) 本件仕組債⑪は,平成25年5月1日に早期償還され,原告は,日本円での受取りを希望し,同日時点での為替レート(1豪ドル=101円10銭)により,202万2000円を受領した。
(f) 本件仕組債⑫は,平成25年5月1日に早期償還され,原告は,日本円での受取を希望し,同日時点での為替レート(1豪ドル=101円10銭)により,101万1000円を受領した。
b 満期償還となったもの
本件仕組債⑭は,平成22年8月5日,償還対象株式(三菱UFJフィナンシャルグループ株式)1万0200株で満期償還され,同株式は432万円で売却された(甲2の1)。
(イ) 原告において保有中のもの
原告は,本件仕組債⑤ないし⑩及び⑬を保有しており,これら各仕組債の平成25年8月2日時点の評価額は,下記のとおりである(乙30)。なお,上記各仕組債のうち,本件仕組債⑤ないし⑩については,いずれもノックイン事由が発生している。
記
本件仕組債⑤ 66万2738円
本件仕組債⑥ 77万9960円
本件仕組債⑦ 138万0256円
本件仕組債⑧ 74万4388円
本件仕組債⑨ 79万1627円
本件仕組債⑩ 80万8013円
本件仕組債⑬ 90万3481円
2 本件の争点
本件の争点は,原告による本件各仕組債の購入について,① 錯誤無効による不当利得返還請求が認められるか否か,及び,② 被告の従業員らによる不法行為(適合性原則違反,説明義務違反)による損害賠償請求が認められるか否かであり,具体的には,以下の各点が問題となる。
(1) 本件各仕組債の内容及び問題点
(2) 原告の属性
(3) 本件各仕組債購入の経緯
(4) 本件各仕組債購入に係る錯誤無効による不当利得返還請求の成否
(5) 本件各仕組債購入に係る被告の従業員らによる不法行為(適合性原則違反,説明義務違反)による損害賠償請求の成否
3 争点に係る当事者の主張
(1) 争点(1)(本件各仕組債の内容及び問題点)について
(原告の主張)
ア 本件各仕組債は,いずれも対象とする株価指数のオプションを売却してそのプレミアム(オプション料)を受け取り,その一部を債券の利子部分に上積みすることにより高利回りを実現しようとする構造になっている(なお,本件デジタル・クーポン債のうち,本件仕組債④は為替連動債であり,他の株価連動債とは異なっているが,デジタル・クーポン債としての危険性に異なるところはないから,以下では,株価連動債を念頭において主張する。)。債券の購入者は,オプション料を利子名目で受け取れる反面,そのオプションの売り手としてのリスクを引き受けることになる。いずれも有価証券店頭デリバティブのうちオプションの売りを組み入れた証券であり,仕組債に当たる。
本件各仕組債は,いずれも商品の構造が複雑で理解し難く,しかも,運用成功時の利益は限定されている一方で,運用失敗時の損失は非常に巨額になり得るという意味で,リスクの高い金融商品である。また,本件各仕組債は,それ自体の流動性が極めて低く,その取引の構造が複雑であるため,購入者にとってリスクヘッジとなるような取引を行うことが困難で,よほど金融の専門知識がないとリスクを正しく認識しにくいという問題点がある。
イ 本件各仕組債には,「オプションの売り」の特性そのものである,① 株価が如何に上昇しても利息(クーポン)しか得られない反面,株価下落時にはそれに応じた大きな損失が生じ得る特性(リスクの非対称性),② 7年後(本件EB債は2年後)までの株価を基準にして損益が決定されるという特性,③ 金融工学上の計算で利息(クーポン)が算定されており,素人顧客にはそれが有利か否か判断できないという特性がある。
ウ さらに,本件各仕組債には,以下のような問題点が存する。
(ア) 誤解を招きやすい外形とリスクの程度の理解の困難さ
本件各仕組債は,高利率の債券という外形を有しているため,素人顧客に対して比較的安全な商品との印象を与えやすく,顧客自らが「オプション売り」に起因する著しい問題点を実感を持って認識し,理解することはほぼ不可能である。
(イ) 相対取引であるが故の流動性リスク等の存在
例えば上場取引である株価指数オプション取引では,上場商品としての審査や制度的保障が存在しており,顧客は取引所の公正な相場価格を逐次知ることができ,いつでも相場価格で決済することによって損失の拡大を防止できるし,予め開示された手数料以外のコストを負担する必要もない。これに対し,本件各仕組債は,相対取引であり,さらに本件EB債は私募債であることから,その商品設計の公正さは全く保障されておらず,どれだけのコストを負担させられているかは顧客には全く分からない上に,途中売却が困難で,早期償還されない限り期限到来までのリスクを背負い続けるしかない商品となっている。
(ウ) 複雑な条件
さらに,仕組債には,素人顧客に販売しやすい外形を作出するために,単純な「オプション売り」にとどまらない複雑な条件が付されることが多く,かかる複雑な条件のため,素人顧客が,もともと非対称で分かりにくいリターンとリスクを比較して有利か不利かを検討し,主体的な投資判断を行うことは一層困難となっている。
エ 利息(クーポン)の変動の問題点
本件各仕組債は,「オプションの売り」の特性により,株価が如何に上昇しても一定の利息(クーポン)を超える利益は得られない商品(リスクとリターンの非対称)であるばかりか,利息(クーポン)自体が変動し,各利払日前の基準日に株価が当初価格より15パーセントを超えて下落していた場合は僅か年0.1パーセントとなり,株価がそれ以上であった場合は,年10パーセントを超える所定の利息(クーポン)が支払われる「デジタル・クーポン」と呼ばれる条件が設定されていた。
予め確定したオプション料(プレミアム)を受領できる通常のオプション取引や,そのようなオプションを組み込むことで利息(クーポン)が確定している仕組債の取引においてさえ,利益限定で損失は無限定かそれに近い「オプションの売り」における投資判断は素人顧客には極めて困難であるのに,本件仕組債においては,さらに利益(クーポン)自体が株価変動に左右される不確定なものであるという要素が加わるものであり,投資判断は一層困難を極めるものとなっている。しかも,本件各仕組債には,ノックイン条件や早期償還条件といった不確定要素までもが加わるものであり,これらの複雑な条件の内容を正確に理解すること自体が素人顧客には困難であり,さらに進んで得られるリターンとの関係で投資に値するかどうかを判断することは,専門家による高度な計算が行われない限り不可能というほかなく,証券会社がこのような商品を感覚的な判断だけで投資を行うよう素人顧客に勧誘することは,賭博行為の勧誘以外のなにものでもない。
オ 隠れた高率のコストの問題点
本件各仕組債の販売により,被告の営業店には3パーセントないし4.5パーセントもの手数料が入っているところ,被告における国内上場株式売買の手数料は,対面コンサルティングの場合であっても1パーセント前後であり,インターネット取引では0.5パーセント前後であること,高齢者や主婦に多く販売される投資信託であってもせいぜい2パーセント前後であることに比して,本件各仕組債の手数料は非常に高率であり,リスクとリターンが見合わないものとなっている。
カ 本件デジタル・クーポン債固有の問題点
本件デジタル・クーポン債の具体的な商品特性は,その仕組みが複雑難解であることに加えて,当面の高金利(6か月)と引き換えに,以下のような複合的で大きな投資リスクを内在させている。
(ア) 流動性なく長期の保有拘束のリスク,中途売却時の多額損失リスク
満期までの7年間は中途解約できず,流動性がほとんどなく,転売が著しく困難で,仮に売却できたとしても大幅な元本毀損リスクがある。
(イ) 受取金利の株価連動リスク(長期間の低利継続リスク)
日経平均株価指数が利率判定日に利益判定基準を満たさなければ,利率は年0.1パーセントになる。
(ウ) 満期時の元本割れリスク
日経平均株価指数が下落して一度でもノックイン価格(当初株価の50パーセント)以下になれば,償還額は最終日経平均株価に比例した金額になり,大きく元本割れするリスクがある。
(エ) 為替変動リスク
元利金が外貨(豪ドル,米ドル)で支払われるので,たとい額面額で償還されたとしても,為替変動による損失のリスクがある。
(オ) プレミアム部分が大きいほど損失あるいは塩漬けのリスクが大きくなること
利率は,普通社債のクーポンとプットオプションのプレミアムとにより構成されており,高い利率が実現しているのはプットオプションのプレミアム部分によるところが大きい。そして,プレミアムは,基準価格(本件の場合,当初日経平均株価)の水準,株価の変動度合い,期間の長短等に対応して決定されているが,基準価格や株価変動の度合いが高く,期間が長くなればなるほどプレミアムは高く設定される。したがって,利率が高く設定されていればいるほど,損失を被るリスクが高くなる。
キ 本件EB債固有の問題点
本件EB債の具体的な商品特性は,その仕組みが複雑難解であることに加えて,当面の高金利(3か月)と引き換えに,以下のような複合的で大きな投資リスクを内在させている。
(ア) 流動性なく長期の保有拘束のリスク,中途売却時の多額損失リスク
本件EB債は,満期までの2年間は中途解約できず,流通性がほとんどなく,転売が著しく困難で,仮に売却できたとしても大幅な元本毀損リスクがある。
(イ) 受取金利の株価連動リスク
対象株式の株価がクーポン判定日に判定基準に満たなければ,利率が年1パーセントになる。
(ウ) 満期時の下落した対象株式による償還リスク
本件EB債は,満期償還日の10営業日前の対象株式の株価が一定以下であれば,下落した対象株式で償還され,これを引き受けるリスクを負う。
(エ) プレミアム部分が大きいほど損失あるいは塩漬けのリスクが大きくなること
本件EB債も,本件デジタル・クーポン債と同様,利率は普通社債のクーポンとプットオプションのプレミアムとにより構成されており,高い利率が実現しているのはプットオプションのプレミアム部分によるところが大きい。プレミアムは,基準価格(本件の場合当初日経平均株価)の水準,株価の変動度合い,期間の長短等に対応して決定されているが,基準価格や株価変動の度合いが高く,期間が長くなればなるほどプレミアムは高く設定される。したがって,利率が高く設定されているほど,株式償還による元本割れのリスクあるいは償還株式の塩漬けリスクが高くなる。
(被告の主張)
ア 仕組債は,元本や利金が株価などの価格変動のある指数に連動するように設定された債券であり,通常の債券に,投資家や発行者のニーズに沿って商品毎に様々な条件が「仕組み」として付加された債券の一種である。
仕組債が債券の一種である以上,投資家は仕組債の購入に際して元本金額を支払うのみであり,それに加えて権利の売買を行うわけではない。本件各仕組債のように,株価が予め定められた価格を下回ったときに償還金が減額するような条件が設定された仕組債においては,投資家はプットオプションの売主と近い立場に置かれることになるが,これはあくまで当該条件が債券に「仕組み」として付加された結果にすぎず,自らがオプションを売買する主体となるプットオプションの売主と,仕組債の購入者とは全く同一の経済的立場にあるわけではない。したがって,仕組債の購入とプットオプションの売りとを同一に論じることは適切でなく,本件各仕組債を含めた一般的な仕組債においては,株価等の指数の変動によって購入者が被る損失は,元本の範囲内に限定されている点に留意する必要がある。
また,仕組債には,一般的な債券に見られないような仕組みとしてオプションの条件設定がされていることは事実であるが,それ故に顧客は通常の債券では得られない利益を得られる可能性もあるのであって,仕組債そのものの有用性が一般的に否定されるわけではない。
以上のような仕組債の基本構造に対応して,仕組債には,一般的な債券に共通するリスク(信用リスク,価格変動リスク,為替変動リスク等)に加えて,価格指数の変動により利率が減少したり,償還金に差損が発生するなど,仕組債の商品性に応じた特有のリスクが内在することとなる。
イ 本件デジタル・クーポン債の商品特性について
(ア) 本件デジタル・クーポン債は,仕組債のうち,債券の利率及び償還金額が基準日からの価格指数の変動率によって決定されるデジタル・クーポン債であり,本件仕組債①ないし③及び⑤ないし⑬は日経平均株価が価格指数となる日経平均リンク債,本件仕組債④は為替相場が価格指数となる為替連動債である(以下には,日経平均リンク債を念頭において主張する。)。
(イ) 日経平均リンク債は,一般的に,ノックイン(株価観察期間中に日経平均株価が予め決められた水準以下となった場合)が発生すると償還金額が日経平均株価の変動に連動すること,利率決定日における日経平均株価が予め定められた基準価格より高いか低いかによって利率が変動すること,日経平均株価が一定水準以上となった場合には早期償還されることを特徴とするものであるところ,本件デジタル・クーポン債もそのような特徴を有するものである。
本件デジタル・クーポン債の内容は,別紙1ないし別紙13のとおりであり,日経平均リンク債として一般的な商品内容となっている。なお,原告は,利金の大部分はオプションの対価(プレミアム)の実質を有している旨主張するが,本件デジタル・クーポン債がそのような性質を有することの立証はなく(かかる情報は組成者にしか分からない。),前提を誤っている。また,原告は,流動性リスクとして,本件デジタル・クーポン債には途中解約は権利として一切認められていない旨主張するが,期間途中での売却が禁じられているわけではなく,顧客がどうしても売却することを希望する場合には債券の売却は可能である。
(ウ) 原告は,本件デジタル・クーポン債のリスクばかりを過度に強調するが,顧客が高利回りを得られる商品(顧客は複数の利払日に年10パーセント程度の利息を得られる。)であるという側面を無視している。
ウ 本件EB債の商品特性について
(ア) 本件EB債(本件仕組債⑭)は,仕組債のうち,償還日までの価格変動によって償還方法が金銭か株式かが決定されるEB債である。このような基本的な特徴に加えて,本件EB債については,上記イで述べた本件デジタル・クーポン債と同様に,利率決定日における対象株式株価が予め定められた基準価格(795円)より高いか低いかによって利率が変動する,対象平均株価が一定水準(トリガー価格)以上となった場合には早期償還されるといった条件が付されている。
このような本件EB債の商品内容に関し,原告は,利金の大部分はオプションの対価(プレミアム)の実質を有している旨主張するが,これが誤りであることは,上記イ(イ)と同様である。また,流動性リスクについても,本件EB債は,期間途中に債券を売却することは可能である。
(イ) 原告は,本件EB債についてもリスクを主張するが,対象株式株価が994円(トリガー価格)以上に達して早期償還される場合にはそれまでの期間について年14.5パーセントの高利率が得られるし,また,現物償還となった場合でも,それまでに受け取った利金が高利率であれば,全体として利益を得られる場合もある。
(2) 争点(2)(原告の属性)について
(原告の主張)
ア 原告の身上等
(ア) 原告は,昭和7年○月生の女性であり,本件各仕組債の購入を開始した平成18年8月当時既に73歳であった。
子はおらず,●●●であった夫を平成3年に亡くしてからは1人暮らしをしている。
(イ) 原告は,●●●を中退後,●●●や●●●として働いたが,昭和32年に結婚したのを機に退職し,以後16年間専業主婦であった。原告は,昭和48年からは,●●●で●●●のアルバイトとして働き,平成14年○月に70歳になるまで勤務した。原告には,株取引や投資に関する職務の経験はない。
イ 原告の資産状況等
(ア) 原告が本件仕組債①購入当時に有していた金融資産は,① 被告に投資していた資金,② 旧b証券,旧c証券及び旧d証券(以下,これら各証券と現e証券と併せて,「e証券」と総称する。)に投資していた資金の他,③ 1500万円の本件個人年金保険,④ 被告を通じて元本保証と思って購入していたf生命保険,並びに,⑤ 普通預金であった。
これら資産は,子のいない原告にとって,老後の保障と先祖の墓を整理するための大切な資産であった。なお,墓の整理には約2000万円を要するものであった。原告は,これら資金を被告やe証券に証券投資しておき,実際に墓の整理に取りかかる際に換金するつもりでいた。
しかしながら,本件各仕組債の購入の結果,現在原告が有する資産は,未償還の本件仕組債⑤ないし⑩及び⑬の他は,e証券で購入した伊藤園の株式200株,f生命保険(現評価額約223万円),本件個人年金保険の未解約分約500万円,g銀行の普通預金約130万円,h銀行の普通貯金約60万円だけになり,上記墓の整理をすることもできず,安心して老後生活を送ることもできない。
(イ) 原告の収入は,月額約17万円の年金と,住居兼賃貸用マンション「iマンション」(以下「本件マンション」という。)の賃料収入の他は,投資信託等の分配金のみである。
このうち,本件マンションの賃料収入は,平成17年から平成21年までの間の収益(所得税青色申告決算書に基づき,収入から現実の出金を伴う経費を控除した額。減価償却費及び青色申告特別控除額は経費として控除していない。)は,年間約172万円から約250万円であり,月額にすれば約18万円から約21万円である。もっとも,現実には上記申告の際に計上した以上に経費を要していたものである(例えば,平成19年には塗装工事費用として191万4000円を支出しているが,経費として計上していない。)。収入額も,近年は月15万円ほどであり,平成25年3月からは月10万円に減少している。そして,本件マンションは,原告と姉との共有であり,賃料収入は,本件マンションの修繕や改装,さらには不測の事態が生じたときのために置いておく旨を姉と約束していることから,原告において自由に使用できるものではない。
ウ 原告の投資経験・知識等
(ア) e証券での取引について
原告は,被告との取引を始める少し前に,証券取引自体をe証券(旧e1証券)で始め,その後も同証券と取引してきたが,同証券における取引も,大半は担当者の勧誘に基づくものであり,原告が,同証券での取引において,自らの意思で銘柄を希望したのは,住友金属,三菱自動車,川崎製鉄等の国内の大手一部上場株式だけであった。
投資信託や債券については,担当者に分配金がもらえると勧誘されて取引を開始したものであり,買付け,売付け共に原告から持ちかけたことは一度もない。外貨建ての商品の購入も,担当者から配当金がすごくいいと勧誘され,購入したものである。
同証券の顧客勘定元帳には,SEK債券の購入の記載があるが,原告は同債券を購入したことについて何ら記憶がなく,仮に同債券が日経平均ノックイン債であったとしても,原告にはそのような認識や理解は全くなかった。
(イ) 被告との取引について
原告は,昭和61年に被告との取引を始めているが,一貫して被告の担当者の勧誘に応じて取引をしてきたものである。
a 取引開始から平成10年まで
取引開始から平成10年までの約12年間,原告の担当者は歩合外交員の伴であった。伴が担当していた間,原告の投資対象は上場企業の株式のみであり,投資信託や債券等への投資は一切行っていない。
なお,被告提出の現物取引状況表には金貯蓄など株式取引以外の取引も記載されているところ,原告は金貯蓄などを取引した記憶はない。この点を措いても,金貯蓄自体は貯蓄性の元本保証の商品であって,危険性の高い取引ではない。
b 平成10年から平成16年まで
伴が原告の担当から外れ,被告からの勧誘がなくなると,原告は,平成10年3月から平成16年8月までの6年余の長期間,被告における証券取引を中断しており,この間,被告に預かり資産として残っていたのは,神鋼電機株式のみであった。かかる中断の事実からも,原告の投資が被告の担当者の勧誘に依存したもので,積極的なものでなかったことは明らかである。
c 平成16年以降
原告は,平成16年8月に,神鋼電機株式を売却し井関農機株式を買い付けて,被告との取引を再開した。
被告との取引再開後,被告の担当者がBになると,株式よりも投資信託への投資が多くなり,大幅に取引の種類が変わり,さらに本件各仕組債を勧誘され,大量に購入させられて大きな損を被った。このように取引内容が一変したのは,原告が自ら商品の内容を吟味する能力がなく,担当者の勧誘に依存していたことの証左である。
被告との取引再開後,原告が自ら申し出て購入したのは,新日本製鐵,三菱重工,りそなホールディングスの株式だけであり,これら以外は全て被告の従業員の勧誘に基づくものである。
なお,原告が平成19年11月5日に投資信託のワールドリート欧州を約77万円の損失を出して売却し,投資信託の新生フラトンVPICファンドに乗り換えて投資したのも,Bが強く勧誘したためである。
(ウ) 原告の投資意向について
原告は,被告やe証券との長期の取引経歴を有するが,いずれも担当職員の勧誘のままに行う受動的な取引であり,積極的に大きく資産を増やしたり利益を追求するのではなく,一貫して配当金も含め地道に固く増やせればいいという堅実な投資意向であった。
平成18年8月にBから本件仕組債①の勧誘を受けたころには,原告は既に73歳になっており,夫も亡くし,仕事も辞めて生計を主に年金収入に頼っていたものであり,高いリスクを承知の上で危険な商品に積極的に投資する意向など到底有していなかった。
原告は,被告主催のセミナーに度々出席していたが,自ら積極的にセミナーを調査して参加したことはなく,いずれのセミナーも被告の従業員の勧誘に応じて出席したものである。それも,講義を聞いて知識を深め,自らの投資判断に生かそうと参加したというよりは,参加料が無料であり,逆に被告から提供される食事や日用品のセットを目当てに参加していたにすぎない。
(被告の主張)
ア 原告の生活状況について
(ア) 原告の収入状況については,原告は,遺族年金として2か月で31万円,国民年金として2か月で5万7000円の給付を受けており,年金のみで月18万円程度の収入を得ている。また,原告は,平成17年及び平成18年当時,本件マンションからの賃料収入として,経費を全て控除しても現金収入として1年で220万円から250万円程度の収入を得ていた。これらからすれば,原告は,本件各仕組債購入当時,年金と不動産賃料収入のみで月35万円を超える現金収入があった。
(イ) 他方,原告は単身世帯であって,住居は自らの所有物件であり,1か月当たりの生活費は10万円程度にすぎず,原告には毎月20万円を超える余裕資金が発生している。原告は,竹製の家具を46万円で購入したり,八十八箇所巡りをしたり,食材の取り寄せをするなど,経済的にゆとりのある生活水準にあったことは明らかである。
イ 原告の資金力について
原告が,本件仕組債①の購入時点で被告口座に保有していた金融資産(株式,投資信託,債券等)の総額(買付額の合計額)は2031万3533円であり,e証券の口座に保有していた金融資産(株式,債券等)の総額は,判明しているものだけでも1218万9784円である。また,原告は,上記以外にも,投資用商品として本件個人年金保険1500万円を有していた。さらに原告は,現在,g銀行に約130万円,h銀行に約60万円の預貯金を有している(なお,原告の預貯金額が同程度にとどまる旨の原告の供述は信用性が低い。)。
以上からすれば,原告は,本件仕組債①の購入当時,判明しているものだけでも約5000万円程度の金融資産を有していたものである。
ウ 墓地整理費用に関する原告の主張について
原告は,先祖の墓地整理のための資金を本件各仕組債のために投資させられた旨主張する。
しかしながら,仮に墓地整理費用として2000万円という高額の費用を支出することを予定していたのであれば,その資金を確保するための行動を取ることが合理的であるにもかかわらず,原告は,かかる見積もりを得た平成17年3月以降に,被告やe証券との間で積極的に投資を行い,元本割れの可能性のある商品についても売買している。このことからすれば,原告は,墓地整理費用の資金として2000万円を確保しておく必要など全くなかったものというべきであり,現に被告の担当者のBは,原告からそのような話は聞いたことがなかった。
エ 原告の商品取引に関する経験について
(ア) 株式の取引について
原告は,株式の取引について,原告自身で大半の保有銘柄の株価動向を新聞紙上でチェックするなど,自ら情報収集を行っており,株式の売買のタイミングについても,利益・損失を予測して自ら判断して注文をしていた。このように,原告が株式について豊富な取引経験と相場に関する知識を有していたことは明らかである。
原告は,株式の取引中,多数の商品において損失を経験しており,その損失額も小さいものばかりではないのであって,かかる原告が株式取引の損失経験からそのリスクを理解していたことは明らかである。
(イ) 新興国向けの投資信託について
原告は,新興国向けの投資信託である新生フラトンVPICファンドについて,カントリーリスクの内容を理解した上で,パキスタンの非常事態宣言に関する情報を収集の上Bに確認し,自らの判断で商品購入を行っている。
(ウ) その他の原告の取引について
原告は,平成2年から平成3年7月にかけて計16回にわたって金の取引(金貯蓄3か月型)を行い,その全てにおいて利益を得ている。このうち平成2年8月23日及び平成3年3月5日の取引金額は約2000万円という高額の取引である(原告は,金の取引を行った記憶はないとするが,かかる特殊かつ高額な取引について記憶がないということはあり得ない。)。
また,原告は,平成16年12月6日及び7日には,投資信託の十二単衣を購入している。
さらに,原告は,日経平均ノックイン債である可能性が高いSEK債券も購入している。そして,同債券については,ノックイン条件が成就した結果,原告は損失を被ったものと思われる。
オ 原告による証券取引に関する知識・情報の獲得について
原告は,被告の主催するセミナー等に積極的に参加して自ら主体的に情報収集を行い,そのような経験を通じて金融商品の知識・情報を有していた。原告が積極的であったことは,原告が,当時人気講師であったD氏のセミナーの内容に非常に興味を持ち,個人的に投資の指南をしてもらいたいとの申し入れをBに対して行ったことからも明らかである。そして,原告は,このように参加してセミナーで得た情報をもとに自ら投資判断をした上で,商品の購入を行っていた。
これに対し,原告は,セミナーへの参加は参加者に配布されるプレゼント目的であった旨主張するが,上記のとおり経済的にゆとりのある生活を送っていた原告がタオル等の生活用品を目当てにわざわざ被告の大阪支店まで頻繁に通っていたとは考えられない。
カ 原告の投資意向について
原告は,多様な金融商品に対して興味を示して積極的に投資を行い,利益を追求するために商品の種類を厭わない積極的な投資意向を有していた。
(3) 争点(3)(本件各仕組債購入の経緯)について
(原告の主張)
ア 上記争点(2)の原告の主張記載のとおり,原告は平成10年3月から平成16年8月ころまでは取引を中断していたところ,同年12月ころEが被告の担当となり,その後,平成17年3月以降,Bが担当となった。Bが担当となってからは,勧誘が激しくなり,株式だけでなく,投資信託や債券も頻繁に勧誘するようになったことから,原告は,これに応じて購入を繰り返していた。Bは,取引を開始した同月から同年10月までの間に原告から合計1200万円ないし1300万円程度のニューマネーを拠出させたが,途中で資金が枯渇してきたことから,既存の保有商品を売却して新規商品を購入する乗換えの勧誘が多くなった。
そのような流れの中,Bは,平成18年8月以降,それまで原告が全く経験したことがない本件デジタル・クーポン債や本件EB債などの仕組債を原告に勧誘するようになった。Bは,被告から毎月500万円ないし600万円の手数料収入等の売上目標が課される中,代金の3パーセントないし4.5パーセントと相当高率の販売手数料を徴収できる仕組債の販売に力が入ったものと思われる。
イ 本件デジタル・クーポン債の勧誘
(ア) Bは,平成18年8月3日,本件仕組債①について,予め原告に架電して,年10パーセントの高金利の商品がある等と言って勧誘し,原告が説明を受けたい旨希望したことから,原告の自宅を訪問することになった。
Bは,同日午後3時45分から午後4時10分までの25分程度,原告の自宅において原告を勧誘した。Bは,当時1万5000円程度であった日経平均株価が今後安定して推移し,上昇していくであろうとの見立てをしており,本件仕組債①は早期償還される可能性が高いと考え,そのような説明をしていた。なお,原告は,Bからノックインの説明を受けた記憶はなく,ノックインの説明がされたこと自体疑わしいし,少なくとも原告が理解できるような説明はされていない。
原告は,年10パーセントの高金利を強調され,リスクとしては利率が年0.1パーセントになり得ることを聞いただけであり,あとは日経平均株価が購入価格より上がれば早期償還されるところ,日経平均株価は右肩上がりなので,満期は一応7年であるが,7年も持たずに償還されると聞いたものである。そのため,原告は,Bが原告宅を訪問してから25分後には本件仕組債①を購入することを即決している。
(イ) 本件仕組債②ないし⑬の勧誘
Bは,平成18年9月以降,本件仕組債②ないし⑬(いずれもデジタル・クーポン債)を,同じようなパターンで勧誘した。取引は一貫してBの主導であり,原告にはデジタル・クーポン債を購入するための新規の資金はほとんどなかったことから,Bは,保有商品を売却してデジタル・クーポン債へ乗り換えるよう次々と勧誘した。
Bは,日経平均株価は一貫して現状維持か上昇基調という認識の下,全てが早期償還するであろうとの見込をもって,その旨原告に説明をして勧誘した。
Bは,ほぼ毎回,原告の自宅を訪問し,デジタル・クーポン債の購入を勧誘し,原告はわずかな時間のやりとりで購入を即決している。
ウ 本件EB債の勧誘
平成20年7月25日午前9時ころ,Bは,原告に対し,電話で,金利が年14.5パーセントの商品が出る,法人に売っている等と言って,本件EB債(本件仕組債⑭)を勧誘した。原告は,金利がいいのと,法人に売っているものなら損をしないだろうとの印象を持ち,説明してほしい旨伝えた。なお,原告はEBという言葉を聞いた記憶はなく,一貫してバークレイズという名称で説明を受けた。
Bは,同日午前10時30分ころ,法人担当のCと共に原告宅を訪れ,午前11時ころまで勧誘した。Bは,バークレイズという商品で,2年契約で年14.5パーセントの利息が入り,最低でも年1パーセントの利息が保証されており,法人にも売っているから滅多にでない商品である旨述べた。そして,購入枠と期間が限られているため,早く申し込まないと枠がなくなる等と述べた。
原告は,年14.5パーセントという利率に惹かれ,滅多に出ない商品で法人も買っているようないいものなら是非欲しい,既に保有している元本保証のa生命保険の個人年金保険(本件個人年金保険)を一部売却してでもバークレイズを購入したいと考え,Bらを少し待たせ,別室で同生命保険に架電して確認したところ,四,五日程度で解約できるとのことであった。そこで,原告は,本件個人年金保険を一部解約してその代金で上記バークレイズを1000万円分購入することを即決し,必要書類に署名押印等して申し込んだ。
(被告の主張)
ア 本件仕組債①の取引について
被告は,本件仕組債①の取引に関し,商品の仕組みや具体的なリスクの内容について資料を用いて丁寧に説明し,原告は,被告の説明内容を十分に理解した上で,自らの判断に基づいて本件仕組債①の購入を行っている。
すなわち,被告の従業員のBは,平成18年8月に本件仕組債①を販売するに際し,過去の担当状況から一定の資力があるとうかがわれ,株式・投資信託・外貨建て債券等の取引経験があって商品内容を理解し興味を持ってもらえる顧客を対象として案内を行っていたところ,原告の生活状況や他社との取引の存在から,原告には本件仕組債①を購入するだけの資力があるとうかがわれ,また,原告には株式・投資信託・外貨建て債券について多くの取引経験があり,被告のセミナーにも積極的に参加して金融商品に対する情報収集も行っていたことから,原告に対し本件仕組債①の案内を行うこととした。
Bは,同月初めに原告に電話をし,本件仕組債①の商品の概要(購入後当初6か月は利率が年10パーセントに確定していること,当初6か月経過時の日経平均株価の水準によって満期となり償還される可能性があること,満期とならなかった場合のその後の利率については日経平均株価に連動し,年0.1パーセントになる可能性があること,債券の保有期間は最長7年間であること,豪ドル建ての債券であるため為替リスクがあること)について説明を行った。このような説明に対して原告が興味を持ったことから,Bは,原告に対し,会って詳しい資料をもとに商品の仕組みを説明したい旨伝え,原告が被告の大阪支店に来店することとなった(なお,原告は,Bが原告の自宅を訪れた旨主張するが,上記のとおり,説明は被告の大阪支店で行っている。)。
Bは,同月3日,被告の大阪支店に来店した原告に対し,本件仕組債①の説明を行った。その際,70歳以上の高齢者への勧誘には上級管理職による理解力・資力等の確認が必要という被告の社内ルールが存したことから,被告の大阪支店の副支店長であったFが同席した。Bは,原告に本件仕組債①を説明するに当たり,販売用資料として,商品の内容・仕組みについて記載されたお客様資料及び日経平均株価の推移表(日足,週足,月足のチャート)を用いた。Bは,上記お客様資料を用いながら,まず,当初6か月間は利率は年10パーセントであるが,その後は日経平均株価に連動して債券の利率が変動し,年0.1パーセントになる場合があることを説明した。次に,Bは,上記お客様資料記載の各想定ケースを用いながら,各ケースにおける利率変動と償還条件のシミュレーションについて順次説明した。その際,Bは,高いリスクの1つとしてノックインに言及し,7年の期間中に一度でも日経平均株価が当初の50パーセントを下回った場合には投資元本を割り込むおそれがあることを説明し,7年間に日経平均株価が半分になることが原告の相場観であるのであれば本件仕組債①は買わないでくださいと述べた。さらに,Bは,本件仕組債①の有する各種リスク(信用リスク,価格変動リスク,流動性リスク等)の内容を説明した。原告は,日経平均株価が下がらないのであれば大丈夫であろうと発言し,商品の基本的な仕組みを理解した上で,本件仕組債①を購入することを決定した。
Bは,原告の購入判断を受けて,原告に対し本件仕組債①の目論見書を渡し,上記説明内容が文書として記載されていることを説明した。また,Bは,原告に投資確認書を渡して,チェック項目として記載されている商品のリスク内容について,一つずつ読み合わせていき,原告が内容を理解した場合には原告に自分でチェックを入れてもらうようにした,そして,各リスク項目について確認した後に,原告が署名・捺印を行い,本件仕組債①の内容(商品の仕組み,リスク)を理解して購入する意向であることが確認された。
イ 本件仕組債②ないし⑬の取引について
原告は,本件仕組債①の購入以降,平成18年9月から平成20年6月までに本件仕組債②ないし⑬を購入しているところ,Bは,いずれの取引についても,本件仕組債①の場合と同様に商品の仕組みや具体的なリスクの内容について販売用資料を用いて説明している。そして,これら各取引において,Bの説明内容を踏まえて原告が購入の判断を行ったことを受けて,原告に対して目論見書が交付され,これを証する文書として目論見書受領書が作成され,原告自身が署名している。また,原告は,投資確認書,意向確認書に自ら署名・捺印をしている。
ウ 本件仕組債⑭の取引について
本件仕組債⑭の取引に関しても,被告は商品の仕組みや具体的なリスクの内容について資料を用いて丁寧に説明し,原告は被告の説明内容を十分に理解した上で,自らの判断に基づいて購入している。
すなわち,被告では,平成20年7月下旬に同年8月4日発行予定のEB債として本件仕組債⑭を取り扱うこととなり,Bは,これまで原告に案内していたデジタル・クーポン債と同様に,株式・投資信託・外貨建て債券等の投資経験・投資知識があり,1000万円という高額の商品について購入できるだけの資力があるとうかがえる顧客を対象として案内を行うこととし,原告にも案内をすることとした(もっとも,本件仕組債⑬を購入したばかりである原告は,1000万円という高額の商品には興味を持たないであろうと考えた。)。
Bは,同年7月25日の朝に原告に電話をし,本件仕組債⑭の概要(当初3か月は年14.5パーセントの確定利回りが支払われること,当初3か月経過時に三菱UFJフィナンシャルグループの株価の水準によって満期となり償還されること,満期とならなかった場合のその後の利率については三菱UFJの株価に連動し,一定水準を上回れば年14.5パーセント,下回れば年1パーセントとなること,債券の保有期間は最長2年間であること,購入単位は1000万円であること)を説明した。これに対し,原告は即答できないとのことであった。
原告は,上記電話の数十分後,Bに電話をし,保険会社に手持ちの保険が解約可能かどうかを確認の上,自ら保険を解約して本件仕組債⑭を購入することを希望した。そこで,Bは,当時予定の空いていた上級管理職のCと共に原告の自宅を訪問した。
Bは,原告に対する販売用資料として,商品の内容・仕組みについて記載された引合内容説明書及び三菱UFJ株価の推移表(日足,週足,月足のチャート)を用いた。Bは,まず,引合内容説明書のクーポンの箇所を示しながら,当初3か月の利率は年14.5パーセントであるが,その後は償還参照株式である三菱UFJの株価が基準株価の80パーセント以上であれば年14.5パーセント,それ未満であれば年1パーセントとなることを説明した。次に,Bは,上記説明書の早期償還条項の箇所を示しながら,3か月後に三菱UFJの株価が基準株価以上になった場合には満期となり償還されるが,基準株価未満になった場合には償還されず,その後3か月毎に早期償還されるかどうかの判定が繰り返され,最長で2年間保有することになることを説明した。その際,Bは,上記説明書記載の各シナリオ(早期償還,満期現金償還,満期株式償還の各シナリオ)について順次説明し,満期時において三菱UFJの株価が基準価格の99パーセントに相当する転換価格(999円)以上であれば現金で償還されるが,転換価格を下回った場合には三菱UFJフィナンシャルグループの株式として償還されるため,株価の水準によっては元本を下回るおそれがあることを説明した。
また,Bは,三菱UFJフィナンシャルグループの株価は大きく下がる状況にはないとの見通しを持っていたことを踏まえ,株価相場としては投資に適したタイミングであるとの意見を述べた。原告からBに対し,株式で償還されても大丈夫かとの質問がされ,Bは普通の株式として保有することとなる旨述べたところ,原告は,三菱UFJフィナンシャルグループは日本を代表する銘柄であるから株で持っていても大丈夫であろうとの意見を示した。そして,原告は,本件仕組債⑭を購入することを決定した。
上記原告の購入判断を受けて,Bは,原告に契約締結前交付書面を渡し,取引に関する基本的な注意点を記載した書面として,その記載内容について,元本が保証される商品ではないこと,クーポンが変動し,固定されるものではないこと,クーリングオフの対象とならないこと等の説明をした。また,Bは,原告に意向確認書を渡して,商品のリスク内容について意向確認書の項目に沿って一つずつ読み合わせながら説明し,原告が納得した場合にはチェック欄にチェックを入れてもらった。さらに,同確認書の記載内容に沿って,3つの受取利率・償還方法のパターンについて改めて説明を行い,意向合致項目について読み合わせて原告にチェックを入れてもらった後,原告自身で署名・捺印を行い,原告が本件仕組債⑭を購入する意向であることが確認された。
(4) 本件各仕組債購入に係る錯誤無効による不当利得返還請求の成否
(原告の主張)
ア 錯誤無効に当たること
金融商品取引がリスクとリターンの取引であることに照らすと,当該金融商品のリスクの内容及び程度は取引における重要な要素であり,リスクの内容及び程度に関する誤解があれば,要素の錯誤に該当する。
そうであるところ,原告が本件各仕組債を購入するに当たっては,上記記載のとおり,利率が高いことのみが強調され,商品の仕組みやノックイン等についての説明は受けなかった。その結果,原告は,本件各仕組債においては元本を大きく割る危険性が高いことを全く理解しておらず,本件各仕組債は,株価や為替の変動により受け取る利率が変動し,いいときは年10パーセントの利息が付くが,悪いときは年0.1パーセントないし年1パーセントの利息しか付かないという程度にしかリスクを把握していなかった。
主たる収入を年金に頼り,墓の整理のための資金を保持しておく必要のあった原告にとって,特に元本割れをするリスクが高いということは,本件各仕組債を購入するに当たって極めて重要な要素であるし,一般的にみても重要度の高いものである。
原告は,上述のとおり,本件各仕組債購入時に,ノックインや為替変動による元本割れリスクも,7年間保有のリスクも認識していなかったものであり,同リスクを有した債券である点に誤解を有したまま各売買契約を締結した。したがって,本件各仕組債の売買契約は,要素に錯誤が存したものとして無効である。
そして,本件各仕組債に関するリスクの錯誤は,被告の従業員のBの説明に基づくものであり,Bは原告の理解形成の過程をつぶさに体験しているのであるから,リスクに関する錯誤が動機の錯誤に当たるとしても,かかる動機は表示されていたといえる。
イ 本件仕組債①ないし④はすでに早期償還されており,また,本件仕組債⑭は既に株式で償還されていることから,原告は,本件仕組債⑤ないし⑬に係る売買契約は錯誤により無効であるとして,これら購入に係る拠出金合計1062万6500円の不当利得返還を求める。
(被告の主張)
原告は本件仕組債⑤ないし⑬について錯誤無効を主張するが,原告は,本件仕組債⑤を購入する以前において被告の主催するセミナー等に積極的に参加して証券取引に関する一般的な知識を得ていたほか,投資信託・外貨建て債券等のリスク性のある商品の取引を実際に数多く経験して利益・損失を受けており,高いクーポンの付く商品はリスクが大きいという一般的な認識を実体験として有していた。そのような状況において,原告は,被告から本件各仕組債の仕組みやリスクの内容について具体的な説明を受け,その内容を十分に理解した上で購入するようになり,本件仕組債①ないし④について高率のクーポンや早期償還による利益を享受しながらも,自らの判断で積極的に本件仕組債⑤ないし⑬の購入を継続したものである。
したがって,原告が,本件仕組債⑤ないし⑬の購入に当たってリスクの内容及び程度を理解していたことは明らかであり,原告が高金利で安全な商品であると誤認していたということはあり得ず,本件仕組債⑤ないし⑬の取引が錯誤により無効となる余地はない。
(5) 本件各仕組債購入に係る被告の従業員らによる不法行為(適合性原則違反,説明義務違反)による損害賠償請求の成否
(原告の主張)
ア 適合性原則違反について
(ア) 適合性原則違反が不法行為となるか否かについては,具体的商品特性と顧客側の諸要素を総合的に考慮すべきところ,争点(1)に係る原告の主張のとおり,本件各仕組債は「オプションの売り」が組み込まれた難解なリスク商品であり,他方において,原告は,デリバティブ取引どころか,株取引すら担当職員に勧誘されるがままに取引してきた状態の高齢の女性であったのであるから,本件について適合性原則違反による不法行為が成立することは明らかである。
(イ) 具体的な商品特性について
本件各仕組債の具体的な商品特性は争点(1)に係る原告の主張のとおりであり,およそ素人顧客に販売することの合理的根拠適合性に重大な疑問がある商品であったもので,本件各仕組債が原告に適合しない商品であることは明らかである。
特に,購入すべきかどうかを決定するに際しては,その仕組みをよく知り,経済状況,株式市況の動向に関心を払い,7年先,2年先の株式市況や為替相場の動向を予測した上で,中途で売却できないというリスクをとりつつなお購入すべきか否かを判断しなければならず,主体的積極的な投資判断を要する投資商品であり,豊富な投資知識と経験,積極的な投資意向と自主的な投資姿勢・投資判断を持った投資家に相応しい(適合する)金融商品であって,原告のように高齢で,営業員に勧誘されるがままに株式取引等をしてきただけで,仕組債取引の経験はなく,主体的積極的な投資意向や能力を有しない顧客には到底相応しくない(適合しない)金融商品である。
また,本件各仕組債は上場商品ではなく,「より専門性の高い有価証券店頭オプション取引」を組み込んだ相対取引の商品であり,本件EB債は私募債である。そのため,本件各仕組債は,上場商品のような審査は受けておらず,商品内容や条件の公正さの保障もなく,市場も市場における時価もなく,流動性は皆無で途中売却できないという前提がとられ,上場商品の取引のような公正な価格形成やリスクヘッジの場の提供といった社会的意義も有用性も全くなかった。
証券会社(被告)が素人顧客(原告)を本件各仕組債のような余りにも特異な取引に巻き込むことを正当化することは困難であり,このことは,具体的な商品特性との関係において,適合性原則違反を肯定する重大な要素となる。
(ウ) 意向を中核とした顧客側の諸要素について
本件における原告の投資経験や投資意向等の諸要素は争点(2)に係る原告の主張のとおりである。
すなわち,これまで原告には仕組債の経験は全くなく,株式の購入や投資信託等の経験はあったものの,これらも外務員に勧められるままに購入していたにすぎず,勧誘がなければ,平成10年から平成16年までの間取引が中断したように,何も取引をしない状態になるのであり,自ら銘柄を選択して主体的に投資判断をしていたものではない。しかも,本件各仕組債は,従前の商品とは,商品の内容の複雑さやリスクにおいて性格が全く異なり,到底連続性のないものである。
また,原告は,本件仕組債①の取引当時既に73歳の高齢で,夫も亡くし,既に仕事も辞めて生計を主に年金収入に頼っており,資産・収入において老後資金を確保する上で余裕のない状態だった。そのため,原告は,リスクが高く,少ない老後資金をマイナスにする危険のある冒険的な取引をするような投資意向は有していなかった。
さらに,原告の被告における預かり資産額は約1000万円から2000万円程度であったのに対し,被告は,平成18年8月から平成20年7月までの約2年間に14件合計2400万円弱もの金額の仕組債を購入させ,集中投資させている。このような取引全体の態様も,原告のように主に年金により生活し,余剰資金の乏しい素人の顧客に対しては適合しないものである。
(エ) 以上から,原告が本件各仕組債を購入するに際して必要とされる主体的積極的な投資判断をなし得る能力を有していなかったことは明らかであるところ,被告の従業員のBは,原告の知識・能力や投資経験に注意を払わず,投資意向を確認せず,適合性に対する配慮を踏みにじり,原告の意向と実情に反して,原告の今後の生活に深刻な影響を与える規模の本件各仕組債への集中投資をさせたものであるから,Bによる原告に対する勧誘行為が適合性原則違反として不法行為に該当することは明らかである。
イ 説明義務違反について
(ア) 証券会社及びその使用人は,投資家の職業,年齢,証券取引に関する知識・経験・資力等に照らし,当該証券取引による利益やリスクに関する的確な情報や説明を行い,投資家がこれについての正しい理解を形成した上で,その自主的な判断に基づいて当該証券取引を行うか否かを決することができるように配慮すべき信義則上の義務(説明義務)を負い,証券会社及びその使用人がかかる説明義務に違反して取引勧誘を行ったために投資家が損害を被った場合は不法行為を構成する。
(イ) 本件各仕組債の勧誘状況等は,前述のとおりである。本件各仕組債のいずれについても,Bの説明は,有利性を強調するあまり,原告にリスクを実感させる説明をしておらず,むしろリスクを陰に隠しており,仮に何らかの書類に基づいて説明したとしても,それは通り一遍の形式的なものにすぎなかった。結局,原告が安全で有利な商品と信じ切って勧誘に応じ続けていたこと,他方において,Bが高利の利益を稼ぎ続けるために善良な原告の無知と信頼につけ込んで,適合性も説明義務も無視した勧誘によって集中投資をさせていたことは明白である。
このようなBの不当な勧誘,説明の結果,原告は,本件各仕組債の内容やリスクを全く認識も理解もできず,ただ単に良い金利が付く有利で安全な商品と認識して次々に勧誘に応じて即決を繰り返して購入していたのであり,かかるBの勧誘行為が説明義務違反の違法を帯びることは明らかである。
ウ 原告が被った損害の内容
(本訴提起後本件仕組債⑪及び⑫が早期償還となったことや,未償還の各仕組債の評価時期が本訴提起段階とは異なっていることから,原告の主張する金額は,本訴提起時の主張額とは異なっている。)
(ア) 元本欠損額 746万1437円
a 本件各仕組債のうち,未償還の本件仕組債⑤ないし⑩及び⑬について,本件の口頭弁論終結時に近接する時点での評価として,被告が提出する平成25年8月2日現在の参考時価評価額を基準に算定すると,以下のとおりとなる。
(a) 本件仕組債⑤
買付金額 94万1900円
評価額 66万2738円
損益 -27万9162円
(b) 本件仕組債⑥
買付金額 117万1900円
評価額 77万9960円
損益 -39万1940円
(c) 本件仕組債⑦
買付金額 197万9800円
評価額 138万0256円
損益 -59万9544円
(d) 本件仕組債⑧
買付金額 91万1500円
評価額 74万4388円
損益 -16万7112円
(e) 本件仕組債⑨
買付金額 98万0500円
評価額 79万1627円
損益 -18万8873円
(f) 本件仕組債⑩
買付金額 98万1000円
評価額 80万8013円
損益 -17万2987円
(g) 本件仕組債⑬
買付金額 103万円
評価額 90万3481円
損益 -12万6519円
b 本件仕組債⑭は,株式での満期償還となり,買付金額1003万6800円と売付金額432万円との差額571万6800円の損失を被った。
c 一方,本件仕組債⑪及び⑫については,平成25年5月1日に早期償還されたところ,これらについては,以下のとおり,合計18万1500円の差益となっている。
(a) 本件仕組債⑪
買付金額 190万8000円
償還金額 202万2000円
損益 11万4000円
(b) 本件仕組債⑫
買付金額 94万3500円
償還金額 101万1000円
損益 6万7500円
d 以上のaないしcによれば,746万1437円となる。
(イ) 本件個人年金保険の解約手数料 24万5930円
原告は,本件仕組債⑭を,元本保証のある本件個人年金保険を解約して購入したところ,このように本件個人年金保険を解約して本件仕組債⑭を購入することはBらにも告げているにも関わらず,Bは熟考を促すこと等せず,逆に四,五日で現金化できるかどうか確認するような有様であった。これらからすると,本件個人年金保険の解約手数料24万5930円は,被告の不法行為と相当因果関係のある損害である。
(ウ) 弁護士費用相当額
弁護士費用相当額として,上記(ア)及び(イ)の認容額の1割が相当である。
(エ) 被告は,原告が本件各仕組債について受け取った利金を損益相殺の対象とすべき旨主張するが,利金は,被告が本件各仕組債の買付代金を確保し,運用し得たことに対する対価であるから,損益相殺の対象とすべきではない。
また,仮に損益相殺の対象となるとしても,原告は本件仕組債①ないし④については損害賠償の対象とはしていないのであるから,本件仕組債①ないし④に係る受取利金は損益相殺に含めるべきではない。
(被告の主張)
ア 適合性原則違反について
(ア) 不法行為の成否に関して顧客の適合性を判断するに当たっては,当該取引類型における一般的抽象的なリスクのみを考慮するのではなく,具体的な商品特性を踏まえて,これとの相関関係において,顧客の投資経験,証券取引の知識,投資傾向,財産状態等の諸要素を総合的に考慮する必要がある。
本件各仕組債については,一般的な債券に共通のリスクに加えて,元本・利金が価格変動指数に連動するような仕組みが設定されていることによる利率変動リスク,早期償還リスク,償還時の元本割れリスク,原則として中途解約ができない流動性リスクがあるものの,個人の一般投資家に対する適合性がおよそ否定されるような商品ではなく,少なくとも個人投資家として十分な経験を積み,一定の財産的な裏付けもあるような者については,適合性が認められるべきである。
そして,一般的に投資家は取引を経ることにより金融商品に関する知識・経験を積み重ねていくことから,複数の商品取引について適合性の有無を検討する場合には,まず当初取引の適合性を検討し,その後の取引については従前の取引を前提とした上でその適合性を検討する必要がある。
(イ) 本件仕組債①の取引について
原告は,本件仕組債①の購入時において,20年以上の株式取引経験(高額の失敗取引を含む。)を有していたほか,被告においては特に平成16年以降投資信託(外国株式等を投資対象とする為替リスク及びカントリーリスクのある商品も含む。)や外貨建ての債券などについても積極的に投資を行い,その投資額は3800万円近くに及んでいた。また,原告は,e証券との間でも遅くとも平成12年8月以降,外貨建て取引を中心として,株式・投資信託・債券など60件を超える積極的な投資を展開して100万円を超える損失取引も多く経験していたほか,日経平均ノックイン債についてノックインによる損失も経験していた。
さらに,原告は,被告の主催するセミナーにも積極的に参加して金融商品に関する情報収集を行っており,セミナーで得た情報等をもとにして自ら投資判断をして商品の購入を行っていた。
このように原告は,個人投資家としての十分な知識・経験に加え,多様な金融商品に対して興味を示して積極的に投資を行っていたものであり,本件仕組債①の購入前後を通じて利益を追求するために商品の種類・リスクを厭わない積極的な投資傾向を有していた。
このほか,原告は,本件仕組債①の購入開始時において,少なく見積もっても5000万円を下らない金融資産を有し,賃貸用不動産を無借金で所有して一定の賃料収入を得ていたものである。
以上のような原告の個人投資家としての豊富な投資経験,証券取引に関する知識,積極的な投資意向,余剰資金を原資に多額の投資を継続的に行えるだけの財産状態に照らせば,本件仕組債①の購入開始時において,被告による本件仕組債①の勧誘が適合性原則から著しく逸脱した勧誘行為に当たらないことは明らかである。
(ウ) 本件仕組債②ないし⑬の取引について
本件仕組債②ないし⑬は本件仕組債①と同種の商品であり,原告は,これら商品を十分に理解して継続的に購入するとともに,被告との間で並行して元本割れの危険性のある投資信託商品を継続的に購入している。このような原告の投資経験,証券取引に関する知識,投資意向,財産状態下において勧誘された本件仕組債②ないし⑬の各勧誘行為は,本件仕組債①と同様,適合性原則に違反しないことは明らかである。
(エ) 本件仕組債⑭の取引について
本件仕組債⑭の購入時点において,原告は既に多数の仕組債に関する取引経験及び知識を有しており,このような商品を原告が継続的に購入していた事実自体が,本件各仕組債が原告に適合的な取引であったことを強く示している。また,原告は,本件仕組債⑭の購入以降も,元本割れの危険性のある投資信託商品を継続的に購入しており,積極的な投資意向,多額の投資に耐え得る財産状態が裏付けられている。
したがって,本件仕組債⑭についても,同商品購入開始時における被告の勧誘が適合性原則から著しく逸脱した勧誘行為に当たらないことは明らかである。
イ 説明義務違反について
(ア) 証券会社は,金融商品取引の勧誘に当たり,顧客が投資判断をする上で必要な情報を説明する信義則上の義務を負い,顧客の属性や商品の属性を踏まえて,商品の特性やリスクの内容について,顧客が理解できる方法と程度で説明することが求められる。
本件においては,本件各仕組債の購入時点において,原告が外貨建て取引を含む株式・投資信託・債券等について豊富な経験・知識を有していたことも踏まえて,被告の担当者が原告に対して本件各仕組債の販売を行うに当たり,その仕組み・発行条件及びリスクについて,原告が理解できる方法と程度で説明されたかどうかが検討されるべきである。
(イ) 本件仕組債①の取引について
本件仕組債①の取引におけるBの勧誘,説明等の内容は,前記争点(3)に係る被告の主張アのとおりであり,Bは,本件仕組債①の販売に当たり,原告に対し,その仕組み・発行条件及びリスクについて具体的な説明を行い,原告が商品の仕組みやリスクを理解していたことは明らかであり,被告による本件仕組債①の勧誘には何ら説明義務違反は存しない。
(ウ) 本件仕組債②ないし⑬の取引について
本件仕組債②ないし⑬の取引におけるBの勧誘,説明等の内容は,前記争点(3)に係る被告の主張イのとおりであり,本件仕組債①におけると同様,被告による本件仕組債②ないし⑬の勧誘には何ら説明義務違反は存しない。
(エ) 本件仕組債⑭の取引について
本件仕組債⑭の取引のけるBの勧誘,説明等の内容は,前記争点(3)に係る被告の主張ウのとおりであり,本件仕組債①ないし⑬におけると同様,被告による本件仕組債⑭の勧誘には何ら説明義務違反は存しない。
ウ 損害論について
(ア) 仮に被告の損害賠償責任が認められるとしても,原告の証券取引に関する知識・経験,投資意向,取引態様等の諸般の事情に照らせば,原告には極めて大きな過失が存することが明らかであり,大幅な過失相殺がされるべきである。
(イ) また,本件仕組債⑬については,ノックインは生じておらず,購入時の元本金額(外貨)での償還が見込まれることから,外貨ベースでは損害は発生しないというべきである。
(ウ) 本件各仕組債に係る原告の平成25年7月末時点での利金の受取総額は,別紙利金一覧表記載のとおり,合計162万5608円となる。
本件各仕組債の取引は,近接した時期における一連の取引であり,社会的事実として一体性,関連性を有しており,原告もかかる事実関係を基礎に一連一体の不法行為として本訴を提起しているから,本件各仕組債全体にかかる上記利金について,損害額から控除すべきである。
第3争点に対する判断
1 争点(1)(本件各仕組債の内容及び問題点)について
(1) 本件各仕組債の内容は,別紙1ないし別紙14のとおりであり,このうち,本件仕組債①ないし⑬(本件デジタル・クーポン債)はデジタル・クーポン債であり,本件仕組債⑭(本件EB債)はEB債である。これら本件各仕組債は,株価や為替に連動して利率(クーポン)が変動するとともに,早期償還の有無が決せられたり,満期償還の際の償還内容が異なるなど,様々な条件の成就状況に応じて購入者が受ける利益や被る損失の内容が変動するものであって,その仕組み自体が複雑であると共に,7年先あるいは2年先までの将来の株価や為替の動向を予測しつつ,利益,損失の内容を的確に把握した上でこれを購入するか否かを判断する必要があるなど,その購入の是非の判断においても,相応の専門的な知識経験を備えていることが求められるものであるといえる。
以下,本件デジタル・クーポン債と本件EB債に分けて,検討する。
(2) 本件デジタル・クーポン債について
ア 本件デジタル・クーポン債(本件仕組債①ないし⑬)の内容は,別紙1ないし別紙13のとおりであり,このうち本件仕組債④は為替連動債であり,他は株価(日経平均株価)連動債である。
イ まず,日経平均株価連動債である本件仕組債①ないし③,⑤ないし⑬についてみると,これらはいずれも以下のような特徴を有している。
(ア) 利率
いずれの仕組債についても,当初6か月間の利率は年10パーセント程度(年8.5パーセントから年14.5パーセントの間)と高金利で固定されているが,その後の償還日又は早期償還日までの利率は,利払日毎に利率判定日の日経平均株価が利率判定水準(当初日経平均株価の85パーセント)以上であるか否かによって,上記と同様の年10パーセント程度の高金利となるか,年0.1パーセントの低金利となるかが変動する。この点は,これら各仕組債の目論見書においても,「利率変動リスク」として記載されている(乙4)。
上記利率の変動は,購入者が得ることができる利益の多寡の問題であって,購入者が損失を被るものではないが,上記のような利率判定日における日経平均株価の内容によって,当該利払日に購入者が受けるべき利益(利息)の額として約100倍程度の差が生じるものであって,かかる変動リスクは軽視し得ないものといえる。
(イ) 償還の方法
a いずれの仕組債においても,償還期限は約7年後であるが,早期償還判定日の日経平均株価終値が早期償還判定基準(当初日経平均株価の100パーセント)以上の場合,早期償還日に額面金額で償還されることとなる。この点は,これら各仕組債の目論見書においても,「早期償還リスク」として記載されている(乙4)。
上記早期償還となった場合においても,額面金額で償還されることから,後述の為替変動リスクの点を除けば,購入者が損失を被るものではないが,早期償還後満期償還までの利息を得ることができなくなる点で,一定の変動リスクと評価すべきものといえる。
b いずれの仕組債においても,上記早期償還とならない場合には,満期償還となるが,その間にノックイン事由,すなわち,日経平均株価終値が当初日経平均株価の50パーセントに相当するノックイン価格と同額かこれを下回った場合,が発生すると,額面金額での償還が保証されず,額面金額に最終日経平均株価の当初日経平均株価に対する割合を乗じた額(額面金額×最終日経平均株価÷当初日経平均株価)をもって償還されることとなる(なお,上限は額面金額となる。)。このように購入時から満期償還時までの約7年間の間に日経平均株価が購入時の日経平均株価の50パーセント以下になるような事態が一度でも発生すると,満期償還時点の日経平均株価に応じて,償還額が大幅に元本を割れ込む危険が存するものといえる(理論的には,償還額0(ゼロ)まであり得ることとなる。)。この点は,これら各仕組債の目論見書においても,「元本リスク」として記載されている(乙4)。
上記ノックイン事由発生によるリスクは,購入者にとって投資した元本が保証されず,元本割れの損失を被るリスクを負うものであって,しかも満期償還時点における日経平均株価の値によっては,非常に大きな損失となる危険性も存する(理論的には,償還額0(ゼロ)まであり得る。)ものであり,かかるノックイン事由発生による元本リスクは,重大なリスクといえる。
(ウ) 中途売却が困難であること
いずれの仕組債においても,活発な流通市場は確立されておらず,満期前に売却等して,損失の拡大等を防ぐことは困難であって,被告の担当者であったB自身,途中で売却することは可能であるが,被告による買取り以外には換金方法はなく,被告の言い値となって,元本を毀損する可能性が高いことを認め,基本的には満期まで持つことが前提となる旨供述している(乙4,証人B)。この点は,これら各仕組債の目論見書においても,「不確実な流通市場」として記載されている(乙4)。
上記のように中途売却が困難であることは,日経平均株価の推移が購入時の見込と異なるものとなっても,早期に売却して損失の拡大を防止する等のリスク回避策が存しないことを意味するものであって,購入者にとって軽視し得ないリスクといえる。
(エ) 為替変動リスク
いずれの仕組債も,豪ドルあるいは米ドルで元利金が支払われるものであるため,外国為替相場の変動により円換算した償還価額等が投資元本を割り込むことがある。この点は,これら各仕組債の目論見書においても,「為替変動リスク」として記載されている(乙4)。
上記のような為替変動リスクは,その変動内容如何によっては購入者に予期せざる損失を与えることもあるものといえ,軽視し得ないリスクといえる。
ウ 次に,為替連動債である本件仕組債④についてみると,以下のような特徴を有している。
(ア) 利率
本件仕組債④は,当初1年間の利率は年7パーセントと高金利で固定されているが,その後の償還日又は早期償還日までの利率は,利払日毎に利率判定日の参照為替が当初為替レートの90パーセント以上であるか否かによって,上記と同様の年7パーセントの高金利となるか,年0.1パーセントの低金利となるかが変動する。この点は,同仕組債の目論見書においても,「利率変動リスク」として記載されている(乙4の4)。
上記利率の変動は,購入者が得ることができる利益の多寡の問題であって,購入者が損失を被るものではないが,上記のような利率判定日における参照為替の内容によって,当該利払日に購入者が受けるべき利益(利息)の額として70倍の差が生じるものであって,かかる変動リスクは軽視し得ないものといえる。
(イ) 早期償還リスク
本件仕組債④の償還期限は約7年後であるが,早期償還判定日の早期償還参照為替が早期償還判定基準以上の場合,早期償還日に額面金額で償還されることとなる。この点は,これら各仕組債の目論見書においても,「早期償還リスク」として記載されている(乙4の4)。
上記早期償還となった場合においても,額面金額で償還されることから,購入者が損失を被るものではないが,早期償還後満期償還までの利息を得ることができなくなる点で,一定の変動リスクと評価すべきものといえる。
(ウ) 為替変動リスク
本件仕組債④において,上記早期償還とならない場合には,満期償還となるが,その場合,1単位当たり100万円を当初為替レートで除して計算される豪ドル建ての金額で償還されることから,外国為替相場の変動により円換算した償還価額が投資元本を割り込むことがある。この点は,同仕組債の目論見書においても,「為替変動リスク」として記載されている(乙4の4)。
上記のような為替変動リスクは,その変動内容如何によっては購入者に予期せざる損失を与えることもあるものといえ,軽視し得ないリスクといえる。
(エ) 中途売却が困難であること
本件仕組債④においても,活発な流通市場は確立されておらず,満期前に売却等して,損失の拡大等を防ぐことは困難であることは,他の本件デジタル・クーポン債と同様である(乙4の4,証人B)。この点は,これら本件仕組債④の目論見書においても,「不確実な流通市場」として記載されている(乙4の4)。
上記のように中途売却が困難であることは,外国為替相場の推移が購入時の見込と異なるものとなっても,早期に売却して損失の拡大を防止する等のリスク回避策が存しないことを意味するものであって,購入者にとって軽視し得ないリスクといえる。
(3) 本件EB債について
本件EB債(本件仕組債⑭)の内容は,別紙14のとおりであり,以下のような特徴を有している。
ア 利率
本件仕組債⑭は,当初3か月間の利率は年14.5パーセントと高金利で固定されているが,その後の償還日までの利率は,利払日毎に利率判定日の対象株式(三菱UFJフィナンシャルグループ)終値が一定金額(795円)以上であるか否かによって,上記と同様の年14.5パーセントの高金利となるか,年1パーセントの低金利となるかが変動する。この点は,同仕組債の発行内容説明書においても,「受取クーポンが変動するリスク」として記載されている(甲4)。
上記利率の変動は,購入者が得ることができる利益の多寡の問題であって,購入者が損失を被るものではないが,上記のような利率判定日における対象株式株価の内容によって,当該利払日に購入者が受けるべき利益(利息)の額として14.5倍の差が生じるものであって,かかる変動リスクは軽視し得ないものといえる。
イ 償還の方法
(ア) 本件仕組債⑭においては,早期償還判定日における対象株式終値がトリガー価格(994円)以上になった場合には,額面金額で早期償還されることとなる。
上記早期償還となった場合においても,額面金額で償還されることから,購入者が損失を被るものではないが,早期償還後満期償還までの利息を得ることができなくなる点で,一定の変動リスクと評価すべきものといえる。
(イ) 本件仕組債⑭において,上記早期償還とならない場合には,満期償還となるが,満期償還時点における対象株式の価格が転換価格(984円)以上であれば額面金額の現金で償還されるのに対し,同額未満の場合には,償還対象株式(三菱UFJフィナンシャルグループ)1万0200株での現物償還となる。このように満期償還時点での対象株式の価格が転換価格未満となる場合には,元本割れの損失を被ることとなり(購入価格1003万6800円を転換価格984円で除した1万0200株が現物償還されるので,満期償還時点の株価が984円に満たない以上,同時点において元本割れの状態となっているものといえる。),当該対象株式の株価如何によっては,大幅に元本を割り込む危険性も存する(理論的には,株価0円まであり得ることとなる。)。この点は,同仕組債の発行内容説明書においても,「株価が低迷の場合,現物にて償還され損失となる場合のリスク」として記載されている(甲4)。
上記現物償還によるリスクは,購入者にとって投資した元本が保証されず,元本割れの損失を被るリスクを負うものであって,しかも満期償還時点やそれ以後の対象株式の株価によっては,非常に大きな損失となる危険性も存する(理論的には,株価0円まであり得る。)ものであり,かかる現物償還によるリスクは,重大なリスクといえる。
ウ 中途売却が困難であること
本件仕組債⑭においても,流動性は極めて低く,転売が困難であるとされており,同仕組債の発行内容説明書にもその旨の記載がされている(甲4)。
上記のように中途売却が困難であることは,対象株式(三菱UFJフィナンシャルグループ)の株価の推移が購入時の見込と異なるものとなっても,早期に売却して損失の拡大を防止する等のリスク回避策が存しないことを意味するものであって,購入者にとって軽視し得ないリスクといえる。
(4) 以上によれば,本件各仕組債は,いずれも元本が保証されておらず,しかも株価等の内容によっては,非常に大きな損失を被ることもあり,最大限元本全額の損失まであり得るものであって,重大なリスクの存する商品といえる。一方で,本件各仕組債は,株価等の内容によっては,年10パーセント前後の高利率での利息を得ることができるなど,高リターンの側面も有するものといえるが,上記損失の内容は高リターンにより得られる利益に比しても大きなものであり,非対称となっているといえる。しかも,本件各仕組債は,株価等の内容に応じて大幅な利率変動リスクや早期償還リスク,為替変動リスク,中途売却が困難であることに伴うリスク等も存するものであって,損得の見極めが極めて困難であり,その購入に際しては,株式や投資信託等に係る専門的知識・経験を十分に備えていることが求められるものといえる。
2 争点(2)(原告の属性)について
(1) 原告が昭和7年○月生の女性であり,本件仕組債①を購入した平成18年8月当時73歳であったことは,前記前提事実(1)アのとおりである。
そして,証拠(甲67)によれば,原告は●●●中退後●●●や●●●として働いていたが,昭和32年に結婚を機に退職してから約16年間専業主婦であったこと,昭和48年から●●●で●●●のアルバイトを始め,平成14年に70歳になるまで同アルバイトをしていたこと,原告には株取引や投資に関する職務経験はないこと,原告に子はおらず,平成3年に●●●であった夫と死別した後は一人暮らしをしていることがそれぞれ認められる。
(2) 次に原告の資産状況や投資意向等について検討する。
ア 本件マンションの所有
証拠(甲54,67,乙6,7,原告本人)によれば,原告は,平成3年ころ,夫の退職金や当時居住していた借家からの立退料等を原資として本件マンションの敷地(2筆の土地)を購入したこと,その後,平成8年12月に姉のGと共に資金を出し合って本件マンションを新築したこと,原告自身は同建築資金として銀行から約2500万円を借り入れ,保証委託会社による抵当権が設定されたが,同抵当権は平成14年に抹消されていること,本件マンションの所有名義は原告名義となっていること,本件マンションは地上5階建てであり,原告と姉がそれぞれその一室に居住しているほかは単身用の賃貸マンションが4部屋あること,原告の平成17年分ないし平成21年分の所得税青色申告決算書による不動産賃貸料の内容は,それぞれ約266万円,約283万円,約251万円,約280万円,約261万円であったことがそれぞれ認められる。
これらからすると,原告は,本件各仕組債の購入時,本件マンションを所有し,一定額(1か月20万円程度)の賃料収入を得ていたものといえるものの,本件マンションは実質姉との共有であり,また,上記賃料収入についても必要経費を控除する必要がある上(証拠(甲66)によれば,平成19年には外装塗装工事費として約190万円を支出していることが認められる。),残余額は姉との取り決めにより将来の修繕費等のために残しているものと認められ(甲67),上記のとおり本件マンションが原告や姉の居宅ともなっていることをも勘案すると,原告が本件マンションを所有し,あるいは,本件マンションからの一定の賃料収入を得ていたことをもって,投資のための余裕資金を有していたものということはできない。
イ 原告の収入等
証拠(原告本人)によれば,原告は,本件各仕組債購入時,遺族年金と国民年金をあわせて1か月約18万円の年金収入を得ていたことが認められる。
このほか,原告は,本件仕組債①購入時点において,1500万円の個人年金保険(本件個人年金保険)を有していた(争いのない事実)ほか,g銀行とh銀行に一定額の預貯金を有していたものと認められる(原告本人尋問によれば,同尋問時点でg銀行には約130万円の,h銀行には約60万円の預貯金を有していたことが認められる。なお,被告は,原告の有する預貯金額が上記程度に止まることはあり得ない旨の主張をするが,原告が同金額を超える預貯金を有しているものと認めるに足る的確な証拠はない。)。
ウ 墓の整理等資金について
原告は,先祖の墓の整理に約2000万円を要するものであり,原告が有していた資産はその原資として大切なものであった旨主張し,これに沿う供述をする(甲67,原告本人)ところ,上記各証拠に加え,証拠(甲57ないし64)によれば,原告は,X家代々の墓を整理して守っていく必要があるとの思いを有しており,また,そのための手続や費用等を相談して2000万円程度を要するとの指導を受けたりもしていることが認められる。原告が上記のように墓の整理をするために真に2000万円も要するか否かは上記各証拠によっても明らかではないというべきであるが,上記のとおり,少なくとも原告は,先祖を供養するための墓の整理に約2000万円を要するとの認識を有していたものと認められる。
エ 株式等の金融資産の取引状況等や原告の投資意向等について
(ア) 被告における取引状況等について
原告は,昭和61年12月ころ,知人の紹介により,被告において取引口座を開設したことは,前記前提事実(2)アのとおりである。
そして,証拠(乙1,8)によれば,原告は,同月から平成10年12月の間に,合計約90銘柄(同一銘柄を含む。)の現物取引を行っていること,このうち平成2年から平成3年にかけて金貯蓄3か月型の取引を合計16回行っている他は,すべて株式の取引であること(なお,原告は,金貯蓄の取引を行ったことを否定する旨の供述をする(甲67,原告本人)が,かかる原告の供述は,現物取引状況表(乙1)や顧客勘定元帳(乙8の7ないし8の10)の記載内容に照らし,採用できない。),これら株式の取引については,買付の数か月後に売却しているものが多いこと(なお,1年以上保有している株式や数日で売却している株式も複数存する。),これら株式の売買においては損失を被っている取引も複数あり,数百万円規模の損失を被っている取引も複数存すること(なお,原告は,大きな損失が出た記憶がない旨の供述もする(甲67)が,この点も現物取引状況表(乙1)や総勘定元帳(乙8)の内容に照らし,採用できない。),平成10年12月の取引を終えた時点で保有していた株式は神鋼電機の株式のみであったことがそれぞれ認められる。また,証拠(甲67,乙1,8,原告本人)によれば,上記平成10年12月までの取引における被告の担当者は伴であったところ,伴がいなくなったために同月から平成16年8月までの間は,原告は被告での取引は一切行っておらず,上記神鋼電機の株式を保有していたにすぎないことが認められる。
ついで証拠(甲67,乙1,8,24,証人B,原告本人)によれば,原告は,平成16年8月ころから被告との取引を再開し,当初はEが被告の担当者であったが,平成17年3月に同人が被告を退職したことに伴い,同月からBが被告を担当するようになったこと,その取引の内容は,株式以外にも投資信託や債券の取引が多くを占めていること,原告が本件仕組債①を購入した平成18年8月当時に原告が保有していた株式等は合計17銘柄であり,その買付金額の合計は約2030万円であったことがそれぞれ認められる。
これらからすれば,原告は,本件仕組債①の購入時までに被告において20年近くの株式等の取引の経験があり,その取引回数も相当数に及んでおり,必ずしも貯蓄目的で優良株式を保有し続けるというものではなかったこと,その取引の過程で数百万円規模の損失を被ったものもあるなど,損失も被っていること,平成16年以降は,投資信託や債券の取引も多く行っていること,本件仕組債①の購入時点において原告は買付金額にして合計2000万円程度の株式等を保有していたことがそれぞれ認められる。しかしながら,一方で,上記のとおり,原告は,被告の担当者(伴)がいなくなったことに伴い,6年近くも取引を中断していたことや,中断前の平成10年までの取引は金貯蓄以外は全て株式の取引であったのが,平成16年8月の再開以降の取引は,むしろ投資信託や債券の取引が多いことが認められるところ,かかる中断の前後によって原告の投資意向に変化が見られたものともいえないこと(かかる変化を認めるに足る的確な証拠はない。)からすると,原告は,むしろ,被告の担当者の勧めるままに,株式等の取引を行っていたものであって,その結果,中断の前後で取引の内容が大きく異なっていたり,6年弱もの間取引が中断するに至ったものと推認される。また,上記本件仕組債①の購入時点での保有株式等についても,買付金額の合計は約2000万円であるものの,これらが同時点で現金化できるものであったか否かは必ずしも明らかではない。
(イ) e証券における取引状況等について
証拠(甲65,67,原告本人)によれば,原告は,遅くとも平成9年ころ(甲65の取引記録中に,当初預かり日として97年との記載のあるものが存する。)から,e証券(旧e1証券)において株式等の取引を行っていること,取引内容は株式のほか,投資信託や債券も存すること,買付後一定期間経過後に売却しているものが多いこと,取引の結果損失を被っているものも相当数あり,100万円規模の損失を被っているものも複数あること,原告が本件仕組債①を購入した平成18年8月当時に原告が保有していた株式等は合計8銘柄であり,その買付金額の合計は約1200万円であったことがそれぞれ認められる。
これらからすれば,原告は,本件仕組債①の購入時までにe証券において少なくとも約9年の株式等の取引経験があり,その取引回数も相当数に及んでおり,必ずしも貯蓄目的で優良株式を保有し続けるというものではなかったこと,その取引の過程で100万円規模の損失を被ったものもあるなど,損失も被っていること,本件仕組債①の購入時点において原告は買付金額にして合計1200万円程度の株式等を保有していたことがそれぞれ認められる。もっとも,同時点における保有株式等が同時点で現金化できるものであったか否かは必ずしも明らかではない。
(ウ) 被告主催のセミナーへの参加について
証拠(甲67,乙11ないし13,15,16,24,証人B,原告本人)によれば,原告は,被告が主催するセミナーに頻繁に参加していたこと,同セミナーで注目銘柄の紹介を受け,同銘柄を購入したいとして購入に至ったことも複数回あること,同セミナーに参加すると日用品等が提供される等したことがそれぞれ認められる。この点,原告は,かかる日用品等を目当てにセミナーに参加していたにすぎない旨主張するが,日用品等がもらえることのみを目的として,わざわざセミナー会場まで出かけるとは考えがたく,原告にかかる目的が存したにせよ,原告はそれのみではなく,セミナーでの講演内容等にも興味があってセミナーに参加していたものと認めるのが相当である。
オ 以上検討したところによれば,原告は,本件各仕組債の購入をするころまでに約20年にわたる株式等の取引経験を有し,その内容も,株式のみならず,投資信託や債券の取引も相当程度行っていたものといえ,また,数百万円に及ぶ損失を被った取引も存するなど,100万円規模の損失を被った取引も複数存すること,セミナーにも頻繁に参加していたことがそれぞれ認められ,これらからすれば,原告は,株式等の取引についてそのリスクを含め,一定程度の知識・経験を有していたものといえる。一方で,原告は,上記エ(ア)記載の被告における取引にあるように,自らの判断で銘柄等の取捨選択を行っているというよりは,証券会社の担当者等が勧めた商品を購入する傾向が見受けられるところであり,上記エ(ウ)のセミナーで紹介された銘柄の購入についても,かかる原告の購入傾向が現れているものと解される。そして,とりわけ原告が被告との取引において中断の前後で担当者が替わったことによって,その取引傾向が大きく異なっていることに照らせば,原告は,上記のような一定程度の株式等の取引についての知識・経験を有するものとはいっても,その取引内容について特にそのリスクを十分に理解し,考慮した上で取引に及んでいるものとは解されないところである。そして,本件各仕組債購入時に原告が有していた資産内容をみても,上記のとおり,被告やe証券における取引等で合計3000万円程度の株式等を有していたことや,本件マンションを所有していたこと,そのほか1500万円の本件個人年金を有していたことなどが認められるものの,当時原告は主として月約18万円の年金収入によって生活をしており,また,先祖を供養するための墓の整理費用として2000万円を要するものとの認識を有していたほか,老後の蓄えも必要とする状況にあったことに照らせば,かかる原告にとって,これら資金を有利に運用したいとの思いは存したものといえても,高いリスクを承知の上で,高リターンを得ることを企図するような投資意向を有していたものとは認められない。
このように,原告は,必ずしも優良銘柄を保有し続けることを目的として投資していたものということはできず,証券会社の担当者等の勧誘等に応じて安易に高い利益を得られるものと考えて取引に及んでいるものといえるところであるが,とりわけリスクの高い商品について,そのリスク内容を踏まえた上でなお高リターンを求めて購入するといった投資意向を有していたものと認めることはできない。
3 争点(3)(本件各仕組債購入の経緯)について
(1) 本件各仕組債購入時に原告に交付され,あるいはBや原告により作成等された書類について
本件各仕組債は,被告の担当者であったBの勧誘により原告が購入したものであるところ,証拠(甲13,乙2ないし4,9,24,25,証人B)によれば,本件各仕組債の購入時において,原告に交付され,あるいはBや原告により作成等された書類は,以下のとおりと認められる(これに反する原告の供述(甲67,原告本人)は採用できない。)。
ア 本件仕組債①について
(ア) 平成18年8月3日,本件仕組債①に係る目論見書(乙4の1)及びお客様用資料(乙9)が原告に交付されている。
(イ) 原告は,本件仕組債①について,Bから商品性及びリスク等の説明を受け,目論見書を受け取り,内容を確認し理解した上で,原告自身の判断と責任において同商品の取得を申し込む旨記載された投資確認書(乙3の1)について,「満期償還額変動リスク」「利率変動リスク」「早期償還リスク」「価格変動リスク」「為替変動リスク」「信用リスク」「流動性リスク」の各項目にチェックをし,平成18年8月3日付けで署名捺印している。
(ウ) 平成18年8月3日の接触履歴(甲13の1)において,同日午後3時45分から4時10分までの間,Bが店頭で受注目的で原告と対面し(F副支店長同席),本件仕組債①の説明等を行い,目論見書を交付し,投資確認書を徴求した旨の記載がされている。また,同履歴の商品説明状況欄には,商品説明,価格変動リスク,信用金利リスク,為替リスクについて,それぞれ「済み」との記載がされている。
イ 本件仕組債②について
(ア) 平成18年9月12日,本件仕組債②に係る目論見書(乙4の2)が原告に交付されており,原告は,同日付け目論見書受領書(乙2の1)に署名している。
(イ) 原告は,本件仕組債②について,Bから商品性及びリスク等の説明を受け,目論見書を受け取り,内容を確認し理解した上で,原告自身の判断と責任において同商品の取得を申し込む旨記載された投資確認書(乙3の2)について,「満期償還額変動リスク」「利率変動リスク」「早期償還リスク」「価格変動リスク」「為替変動リスク」「信用リスク」「流動性リスク」の各項目にチェックをし,平成18年9月12日付けで署名捺印している。
(ウ) 平成18年9月12日の接触履歴(甲13の2の1)において,同日午後4時40分から5時10分までの間,Bが原告宅で原告と対面し(H同行),本件仕組債②の説明を行い,目論見書を交付し,投資確認書を徴求した旨の記載がされている。なお,同履歴の商品説明状況欄には,商品説明はされていない旨記載されている。
同月13日の接触履歴(甲13の2の2)において,同日午前10時5分から10時15分までの間,Bが原告宅の原告に架電し,原告が本件仕組債②を購入した旨の記載がされている。なお,同履歴の商品説明状況欄には,商品説明は「済み」との記載がされている一方で,価格変動リスク,信用金利リスク,為替リスクについては,「済み」との記載はされていない。
ウ 本件仕組債③について
(ア) 平成18年10月10日,本件仕組債③に係る目論見書(乙4の3)が原告に交付されており,原告は,同日付け目論見書受領書(乙2の2)に署名している。
(イ) 原告は,本件仕組債③について,Bから商品性及びリスク等の説明を受け,目論見書を受け取り,内容を確認し理解した上で,原告自身の判断と責任において同商品の取得を申し込む旨記載された投資確認書(乙3の3)について,「満期償還額変動リスク」「利率変動リスク」「早期償還リスク」「価格変動リスク」「為替変動リスク」「信用リスク」「流動性リスク」の各項目にチェックをし,平成18年10月10日付けで署名捺印している。
(ウ) 平成18年10月10日の接触履歴(甲13の3の1)において,同日午後5時から5時20分までの間,Bが原告宅で原告と対面し(H同行),本件仕組債③の説明を行い,目論見書を交付し,投資確認書を徴求した旨の記載がされている。なお,同履歴の商品説明状況欄には,商品説明はされていない旨記載されている。
同月11日の接触履歴(甲13の3の2)において,同日午前10時10分から10時15分までの間,Bが原告宅の原告に架電し,為替等条件伝え,原告が本件仕組債③の買付け意向との記載がされている。なお,同履歴の商品説明状況欄には,商品説明は「済み」との記載がされている一方で,価格変動リスク,信用金利リスク,為替リスクについては,「済み」との記載はされていない。
エ 本件仕組債④について
(ア) 平成19年1月15日,本件仕組債④に係る目論見書(乙4の4)が原告に交付されており,原告は,同日付け目論見書受領書(乙2の3)に署名している。
(イ) 原告は,本件仕組債④について,Bから商品性及びリスク等の重要事項の説明を受け,その内容を確認し理解したこと,同債券の取得を申し込む際には,原告自身の判断と責任において行うことが記載された投資確認書(乙3の4)について,「満期償還額に係る為替変動リスク」「利率変動リスク」「流動性リスク」「価格変動リスク」「信用リスク」「早期償還リスク」の各項目にチェックをし,平成19年1月15日付けで署名捺印している。
(ウ) 平成19年1月15日の接触履歴(甲13の4)において,同日午前11時40分から12時までの間,Bが原告宅で受注を目的として原告と対面し(H同行),本件仕組債④の説明等を行い,目論見書を交付したこと,原告は,以前も同様のデジポン債を買い付けており,リスクはあるが高利回りの商品ということで買い付け意向であること,追加資金なく利益確定のため経営進化論(投資信託。甲2の1)からの充当を希望した旨の記載がされている。また,同履歴の商品説明状況欄には,商品説明,価格変動リスク,信用金利リスク,為替リスク,期間リスクは「済み」との記載がされている。
なお,接触者Hに係る同日の接触履歴(甲14の4)においては,時間は午前11時40分から12時45分とされている。
オ 本件仕組債⑤について
(ア) 平成19年2月15日,本件仕組債⑤に係る目論見書(乙4の5)が原告に交付されており,原告は,同日付け目論見書受領書(乙2の4)に署名している。
(イ) 原告は,本件仕組債⑤について,Bから商品性及びリスク等の重要事項の説明を受け,その内容を確認し理解したこと,同債券の取得を申し込む際には,原告自身の判断と責任において行うことが記載された投資確認書(乙3の5)について,「為替変動リスク」「満期償還額変動リスク」「利率変動リスク」「流動性リスク」「価格変動リスク」「信用リスク」「早期償還リスク」の各項目にチェックをし,平成19年2月15日付けで署名捺印している。
(ウ) 平成19年2月15日の接触履歴(甲13の5)において,同日午前10時30分から10時40分までの間,Bが店頭で受注を目的として原告と対面し(H同席),原告が償還乗換えで本件仕組債⑤を購入したこと,目論見書を交付し,投資確認書を徴求したことが記載されている。また,同履歴の商品説明条項欄には,商品説明は「済み」との記載がされている一方で,価格変動リスク,信用金利リスク,為替リスクについては,「済み」との記載はされていない。
さらに,同日のHに係る接触履歴(甲14の5)においては,今回のデジポンをお付き合いいただくとのことで,注意客該当のため本日改めて店頭で面談を行う,「もうお金ありませんのや…」といわれていた,との記載がある。
カ 本件仕組債⑥について
(ア) 平成19年3月16日,本件仕組債⑥に係る目論見書(乙4の6)が原告に交付されており,原告は,同日付け目論見書受領書(乙2の5)に署名している。
(イ) 原告は,本件仕組債⑥について,Bから商品性及びリスク等の重要事項の説明を受け,その内容を確認し理解したこと,同債券の取得を申し込む際には,原告自身の判断と責任において行うことが記載された投資確認書(乙3の6)について,「為替変動リスク」「満期償還額変動リスク」「利率変動リスク」「流動性リスク」「価格変動リスク」「信用リスク」「早期償還リスク」の各項目にチェックをし,平成19年3月16日付けで署名捺印している。
(ウ) 平成19年3月16日の接触履歴(甲13の6)において,同日午後2時45分から3時までの間,Bが店頭で受注を目的として原告と対面し(F同席),償還乗換えであること,目論見書を交付し,投資確認書を徴求したことが記載されている。また,同履歴の商品説明状況欄には,商品説明は「済み」との記載がされている一方で,価格変動リスク,信用金利リスク,為替リスクについては,「済み」との記載はされていない。
キ 本件仕組債⑦について
(ア) 平成19年4月13日,本件仕組債⑦に係る目論見書(乙4の7)が原告に交付されており,原告は,同日付け目論見書受領書(乙2の6)に署名している。
(イ) 原告は,本件仕組債⑦について,Bから商品性及びリスク等の重要事項の説明を受け,その内容を確認し理解したこと,同債券の取得を申し込む際には,原告自身の判断と責任において行うことが記載された投資確認書(乙3の7)について,「為替変動リスク」「満期償還額変動リスク」「利率変動リスク」「流動性リスク」「価格変動リスク」「信用リスク」「早期償還リスク」の各項目にチェックをし,平成19年4月13日付けで署名捺印している。
(ウ) 平成19年4月12日の接触履歴(甲13の7の1)において,同日午後2時55分から3時15分までの間,Bが店頭で提案を目的として原告と対面し(I同席),デジポン債満期から新発のデジポン債への説明と提案であることが記載されている。また,同履歴の商品説明状況欄には,商品説明はされていない旨記載されている。
また,同日のIに係る接触履歴(甲14の7)では,属性は主婦であるが資産家で余裕資金での運用になる,ベトナムとかの株式もリスキーだが買ってみたいといっておられリスク商品に対しても認識されている,との記載がされている。
さらに,同月13日の接触履歴(甲13の7の2)において,同日午前11時20分から11時30分までの間,Bが店舗で受注を目的として原告と対面し(同行者なし),償還金からの充当であること及び目論見書の交付が記載されている。また,同履歴の商品説明状況欄には,商品説明及び期間リスクは「済み」との記載がされている一方で,価格変動リスク,信用金利リスク,為替リスクについては,「済み」との記載はされていない。
ク 本件仕組債⑧について
(ア) 平成19年8月16日,本件仕組債⑧に係る目論見書(乙4の8)が原告に交付されており,原告は,同日付け目論見書受領書(乙2の7)に署名している。
(イ) 原告は,本件仕組債⑧について,Bから商品性及びリスク等の重要事項の説明を受け,その内容を確認し理解したこと,同債券の取得を申し込む際には,原告自身の判断と責任において行うことが記載された投資確認書(乙3の8)について,「為替変動リスク」「満期償還額変動リスク」「利率変動リスク」「流動性リスク」「価格変動リスク」「信用リスク」「早期償還リスク」の各項目にチェックをし,平成19年8月16日付けで署名捺印している。
(ウ) 平成19年8月16日の接触履歴(甲13の8の1)において,同日午後7時10分から7時50分までの間,Bが原告宅で提案を目的として原告と対面し(I同行),本件仕組債⑧の説明等を行ったこと,リスクを説明し翌日条件を伝え買付け予定であること,目論見書を交付し,投資確認書を徴求したこと,e証券で変額保険1500万円を保有していること等が記載されている。また,同履歴の商品説明状況欄には,商品説明はされていない旨記載されている。
また,同日のIに係る接触履歴(甲14の8)では,株価下落に対し心配されており説明,デジポンの目論見書交付しリスク説明,日経平均は半分にならないだろうとおっしゃっておられ,余裕資金での運用とのこと,との記載がある。
さらに,同月17日の接触履歴(甲13の8の2)において,同日午前10時45分から10時50分までの間,Bが受注を目的として原告宅の原告に架電し,条件を伝えて買いを受注したことが記載されている。また,同履歴の商品説明状況欄には,商品説明及び期間リスクは「済み」との記載がされている一方で,価格変動リスク,信用金利リスク,為替リスクについては,「済み」との記載はされていない。
ケ 本件仕組債⑨について
(ア) 平成19年11月20日,本件仕組債⑨に係る目論見書(乙4の9)が原告に交付されており,原告は,同日付け目論見書及び契約締結前交付書面の受領書(乙2の8)に署名している。
(イ) 原告は,本件仕組債⑨について,Bから商品性及びリスク等の重要事項の説明を受け,その内容を確認し理解したこと,同債券の取得を申し込む際には,原告自身の判断と責任において行うことが記載された意向確認書(乙3の9)について,「満期償還額変動リスク」「為替変動リスク」「利率変動リスク」「流動性リスク」「価格変動リスク」「発行体の信用リスク」「早期償還リスク」「契約締結前交付書面の内容」「発行目論見書の内容」「上記の本債券の特徴は,私の本債券購入予定資金の投資目的に合致しています」との各項目にチェックをし,平成19年11月20日付けで署名捺印している。
(ウ) 平成19年11月20日の接触履歴(甲13の9)において,同日午後0時25分から1時20分までの間,Bが原告宅で受注を目的として原告と対面し(同行者なし),条件を伝えて買いを受注したこと,目論見書を交付したこと,日経平均株価が同年の安値にきており,豪ドルも昨日に比べかなりの円高でこの条件であれば投資妙味があるとの意向により,との記載がされている。また,同履歴の商品説明状況欄には,商品説明及び期間リスクは「済み」との記載がされている一方で,価格変動リスク,信用金利リスク,為替リスクについては,「済み」との記載はされていない。
コ 本件仕組債⑩について
(ア) 平成19年12月18日,本件仕組債⑩に係る目論見書(乙4の10)が原告に交付されており,原告は,同日付け目論見書及び契約締結前交付書面の受領書(乙2の9)に署名している。
(イ) 原告は,本件仕組債⑩について,Bから商品性及びリスク等の重要事項の説明を受け,その内容を確認し理解したこと,同債券の取得を申し込む際には,原告自身の判断と責任において行うことが記載された意向確認書(乙3の10)について,「満期償還額変動リスク」「為替変動リスク」「利率変動リスク」「流動性リスク」「価格変動リスク」「発行体の信用リスク」「早期償還リスク」「契約締結前交付書面の内容」「発行目論見書の内容」「上記の本債券の特徴は,私の本債券購入予定資金の投資目的に合致しています」との各項目にチェックをし,平成19年12月18日付けで署名捺印している。
(ウ) 平成19年12月18日の接触履歴(甲13の10)において,同日午前10時40分から11時10分までの間,Bが原告宅で受注を目的として原告と対面し(同行者なし),条件を伝えて買いを受注したこと,目論見書を交付したこと,最近のデジポン債の中では一番条件的にも良いとのことで買付け意向,為替が97円台で買いたかったが明日以降どうなるか分からないので今日のレートで買うとのこと,との記載がされている。また,同履歴の商品説明状況欄には,商品説明及び期間リスクは「済み」との記載がされている一方で,価格変動リスク,信用金利リスク,為替リスクについては,「済み」との記載はされていない。
さらに,同日のJに係る接触履歴(甲14の9)では,同日午後3時30分から4時5分までの間,同人が確認コールの目的で原告宅で原告と対面したこと,何度も購入しており各リスクを理解していたこと,株式相場,為替見通しについて聞かれ,同人の相場観を話したことが記載されている。
サ 本件仕組債⑪について
(ア) 平成20年1月17日,本件仕組債⑪に係る目論見書(乙4の11)が原告に交付されており,原告は,同日付け目論見書及び契約締結前交付書面の受領書(乙2の10)に署名している。
(イ) 原告は,本件仕組債⑪について,Bから商品性及びリスク等の重要事項の説明を受け,その内容を確認し理解したこと,同債券の取得を申し込む際には,原告自身の判断と責任において行うことが記載された意向確認書(乙3の11)について,「満期償還額変動リスク」「為替変動リスク」「利率変動リスク」「流動性リスク」「価格変動リスク」「発行体の信用リスク」「早期償還リスク」「契約締結前交付書面の内容」「発行目論見書の内容」「上記の本債券の特徴は,私の本債券購入予定資金の投資目的に合致しています」との各項目にチェックをし,平成20年1月17日付けで署名捺印している。
(ウ) 平成20年1月17日の接触履歴(甲13の11)において,同日午前10時30分から11時までの間,Bが原告宅で受注を目的として原告と対面し(同行者なし),条件を伝えて買いを受注したこと,目論見書を交付したこと,今度満期になる豪ドルリンク債から2万ドルの買付け意向,残りは振り込んでほしいとのこと,との記載がされている。また,同履歴の商品説明状況欄には,商品説明及び期間リスクは「済み」との記載がされている一方で,価格変動リスク,信用金利リスク,為替リスクについては,「済み」との記載はされていない。
シ 本件仕組債⑫について
(ア) 本件仕組債⑫は本件仕組債⑪と同一の仕組債であるところ,本件仕組債⑫の購入に際し,原告に目論見書は交付されておらず,また,意向確認書の徴求もされていない。
(イ) 平成20年1月23日の接触履歴(甲13の12の1)において,同日午前9時5分から9時15分までの間,Bが提案を目的として原告宅の原告に架電し,本件仕組債⑪の買い増しを提案したこと,相場の急落で米国が緊急利下げをし今回の条件がここ最近の中では一番いい条件になりそうなのでもう1万豪ドル買い増し,本日の為替が決まれば後でもう一度連絡,との記載がされている。また,同履歴の商品説明状況欄には,商品説明はされていない旨記載されている。
さらに,同日の接触覆歴(甲13の12の2)において,同日午前10時5分から11時10分までの間,Bが受注を目的として原告宅の原告に架電し,本件仕組債⑫の条件を伝えて買い受注した旨の記載がされている。また,同履歴の商品説明状況欄には,商品説明及び期間リスクは「済み」との記載がされている一方で,価格変動リスク,信用金利リスク,為替リスクについては,「済み」との記載はされていない。
ス 本件仕組債⑬について
(ア) 平成20年6月17日,本件仕組債⑬に係る目論見書(乙4の12)が原告に交付されており,原告は,同日付け目論見書及び契約締結前交付書面の受領書(乙2の11)に署名している。
(イ) 原告は,本件仕組債⑬について,Bから商品性及びリスク等の重要事項の説明を受け,その内容を確認し理解したこと,同債券の取得を申し込む際には,原告自身の判断と責任において行うことが記載された意向確認書(乙3の12)について,「満期償還額変動リスク」「為替変動リスク」「利率変動リスク」「流動性リスク」「価格変動リスク」「発行体の信用リスク」「早期償還リスク」「契約締結前交付書面の内容」「発行目論見書の内容」「上記の本債券の特徴は,私の本債券購入予定資金の投資目的に合致しています」との各項目にチェックをし,平成20年6月17日付けで署名捺印している。
(ウ) 平成20年6月17日の接触履歴(甲13の13の1)において,同日午後4時30分から5時30分までの間,Bが原告宅で提案を目的として原告と対面し(同行者なし),保有銘柄の現状報告と今後の見通しを伝え,保有中のデジポン債全ての発行条件を持っていくこと,本件仕組債⑬の説明等をし,目論見書を交付したこと,この間被告でどれくらい損しているか調べたら500万円以上になっているので本当に何とか挽回して欲しいとのこと,本件仕組債⑬は条件がいいので買付け意向,明日条件伝え買付け予定,との記載がされている。また,同履歴の商品説明状況欄には,商品説明はされていない旨記載されている。
さらに,同月18日の接触履歴(甲13の13の2)において,同日午前10時5分から10時15分までの間,Bが受注を目的として原告宅の原告に架電し,同日の条件103円を伝えて買い受注,受け渡し代金は同月20日の支店長セミナー出席時に持参とのこと,との記載がされている。また,同履歴の商品状況説明欄には,商品説明及び期間リスクは「済み」との記載がされている一方で,価格変動リスク,信用金利リスク,為替リスクについては,「済み」との記載はされていない。
セ 本件仕組債⑭について
(ア) 本件仕組債⑭は私募債であるため,目論見書はなく,本件仕組債⑭に係る発行内容説明書(甲4)ないし引合内容説明書(乙25)が原告に交付されている。
(イ) 原告は,本件仕組債⑭について,Bから商品性及びリスク等の説明について,「引合内容説明書」及び「株価に連動する円貨建て債券(償還変動型)の契約締結前交付書面」を受け取り,その内容を確認し理解したこと,原告の判断と責任で同商品の取得を申し込むことが記載された意向確認書(乙3の13)について,「契約締結前交付書面の内容」「転換価格等の決定方法」「償還参照株式による現物返還の場合の元本リスク」「クーポン変動リスク」「流動性リスク」「価格変動リスク」「早期償還リスク」「償還参照株式の信用リスク」「発行者及び保証者の信用リスク」「償還参照株式の上場廃止等に伴うリスク」「償還参照株式の株価上昇時における収益の限定」「上記の本商品の特徴は,私の本商品購入予定資金の投資目的に合致しています」との各項目にチェックをし,平成20年7月25日付けで署名捺印している。
(ウ) 平成20年7月25日の接触履歴(甲13の14)において,同日午後4時30分から5時30分までの間,Bが原告宅で受注を目的として原告と対面し(同行者C),本件仕組債⑭の説明等をしたこと,14.5パーセントと最低でも1パーセントの利率が魅力的であるとの意向,他社の変動年金保険1500万円から充当予定,確認書徴求,との記載がされている。また,同履歴の商品説明状況欄には,商品説明,価格変動リスク,信用金利リスク,期間リスクは「済み」との記載がされている。
(2) 上記(1)記載の本件各仕組債購入時の原告への交付書面の内容や,その際に原告が署名した投資確認書ないし意向確認書の内容等に鑑みれば,被告の従業員のBや同行した上司は,原告に対し,本件各仕組債の内容を一定程度説明していたことが伺える。しかしながら,本件各仕組債購入時のBによる接触履歴をみると,リスクの説明がきちんとされていたか否かは必ずしも明らかでない(同履歴の商品説明状況欄は,その記載内容からみても,顧客に対していかなる説明がされたかを明記すべきものと解されることからすると,かかる商品説明状況欄の価格変動リスクや信用金利リスク,為替リスクの各欄に「済み」との記載がないものについて,真にリスク説明がされたものか否か疑義が存するものといえる。)。また,Bは,本件仕組債①について当初原告に電話で勧誘した際,半年で10パーセント確定利回りで回る商品が出たので案内するとのことで話をしたというのであり,半年後は日経平均株価によって利率が年10パーセントや年0.1パーセントになること,早期償還があること,豪ドル建てのため為替の影響を受けること等を説明したとする(証人B)が,Bのよる供述内容によっても,ノックイン事由が生じた場合の元本割れのリスクについての説明がされたものとは認められず,したがって,上記のような説明を聞いた原告にとっては,どの程度の利益を得られるかについて幅があることは理解できるとしても,元本割れの損失を被るおそれがあり,しかもその損失幅が非常に大きなものになるおそれがあることについては全く想定できないような説明内容というほかなく,原告は,Bの説明中の高金利に強く惹かれ,本件仕組債①の購入の意向を固めていったものといえる。Bは,その後の説明の際等にはリスクもきちんと説明をしているとするが,原告は,高金利を得られることに強い関心を示しており,リスクについては,Bに大丈夫かという相場観を尋ねる等し,Bは,これに対し同人の相場観を基にノックインする可能性は低い等と答えているというのである(証人B)。そうすると,Bやその上司が原告に対し,元本割れのリスクを含めた本件各仕組債のリスクを説明していたとしても,高金利の説明等や上記リスクが現実に発生する可能性は低いと思われる旨の相場観の説明も相まって,かかるリスクの存在やその内容が原告には十分に伝わっていなかった,あるいは,原告が十分にそのリスクの存在,内容を理解していなかったものと認めるのが相当であって,その説明内容は不十分なものであったといえる。この点,上記(1)記載の接触履歴中には,原告がリスクも十分に理解している旨の記載もあるが,同履歴は,被告の担当者が接触(対面,電話等)時の内容を簡潔に記載したものであって,原告自身が現に発言したものとして正確に記載されているかの担保はなく,また,同担当者の主観に係る部分も大きいものといえることからすると,同履歴の記載内容をもって,上記判断が左右されるものとはいえない。
4 争点(4)(本件各仕組債購入に係る錯誤無効による不当利得返還請求の成否)について
原告は,本件各仕組債の売買契約にはリスクの存在についての錯誤が存し,かかる錯誤は要素の錯誤に当たり,仮に動機の錯誤であっても,その動機は表示されていたといえるとして,本件仕組債⑤ないし⑬に係る売買契約は錯誤により無効である旨主張する。
そこで検討するに,前記1で説示したような本件各仕組債の内容に照らせば,本件各仕組債に元本割れのリスクが存し,しかもその度合いも最悪の場合には元本全額を失う可能性すら存するものであって,本件各仕組債を購入するか否かについて,かかるリスクの存在は大きな考慮要素となっているものといえるから,かかるリスクの存在は,本件各仕組債に係る売買契約の要素となっているものといえる。
しかしながら,前記3で検討したところによれば,被告の担当者であったBやその上司は,原告に本件各仕組債を勧誘するに際し,元本割れのリスクが存すること自体は一応説明をしていたものと認めるのが相当であり,ただ,原告において,かかるリスクの存在やその内容を十分に理解できていなかったものというべきである。そうであるとすれば,本件各仕組債の売買契約に係る原告の意思表示に要素の錯誤が存したものとまで認めることはできないものと解するのが相当である。
よって,本件仕組債⑤ないし⑬に係る売買契約が錯誤により無効であるとして,これら各仕組債の購入代金相当額の不当利得返還を求める原告の請求は,理由がない。
5 争点(5)(本件各仕組債購入に係る被告の従業員らによる不法行為(適合性原則違反,説明義務違反)による損害賠償請求の成否)について
(1) 適合性原則違反について
ア 証券会社の担当者が顧客に対し,その取り扱う商品の取引を勧誘するに際しては,顧客の意向と実情に反して,明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘するなど,適合性の原則から著しく逸脱した勧誘をして同取引を行わせたときは,当該行為は不法行為法上も違法となると解するのが相当である。そして,本件のようなデジタル・クーポン債やEB債といった仕組債の取引の勧誘が適合性の原則から著しく逸脱していることを理由とする不法行為の成否に関し,顧客の適合性を判断するに当たっては,単に当該仕組債の取引という取引類型における一般的抽象的なリスクのみを考慮するのではなく,当該仕組債の具体的な商品特性を踏まえて,これとの相関関係において,顧客の投資経験,証券取引の知識,投資意向,財産状態等の諸要素を総合的に考慮する必要があるというべきである。(最高裁平成15年(受)第1284号同17年7月14日第一小法廷判決・民集59巻6号1323頁参照)
イ そこで,被告の担当者であったBによる原告に対する本件各仕組債に係る取引の勧誘が適合性原則に違反するものとして不法行為を構成するものと認められるか,以下検討する。
原告の属性は,前記2で説示したとおりであり,原告は,本件各仕組債の購入を始めた時点(本件仕組債①に係る購入時点である平成18年8月時点)で73歳であり,その十数年前には夫と死別し,子もおらず,主として年金収入で生活する一人暮らしの女性であった。
同時点における原告の資産状況は,本件マンションを所有していた(実質は姉との共有である。)ほか,被告及びe証券において,買付価格で評価して約3200万円程度の株式や投資信託,債券等を保有しており,また,1500万円の本件個人年金保険を有し,その他,g銀行及びh銀行に預貯金を有するなどしていたものであって,相当程度の資産を有していたものといえる。もっとも,原告は,上記のとおり,子もおらず,当時73歳であったことからも,一定程度の老後の蓄えも必要であったといえるし,また,真にその主張する額を要するか否かはさておいても,先祖の墓の整理のために2000万円を要するとの認識を有していたものと認められる。このような原告の資産状況やその使途の見込み等に照らせば,原告が,その元本を失うことになっても問題がないといえる程度の余裕資金を有していたものとまでいうことはできない。
さらに,原告は,昭和61年12月ころから被告において,遅くとも平成9年ころからe証券において,それぞれ株式等の取引を行っており,本件仕組債①を購入した平成18年8月時点で,すでに20年を超える投資経験を有しており,その内容も株式のほか,投資信託や債券等の取引も存し,数百万円に及ぶ損失を被ったものを含め,100万円規模の損失を被った取引も複数存したこと,原告の投資意向も,必ずしも貯蓄目的で優良株式を保有し続けるというものではなかったことがそれぞれ認められる。このように,原告は,本件仕組債①の購入時点で相当程度の株式等の取引経験を有し,これら取引について一定程度の知識も有していたものといえるが,原告自身が積極的,主体的に取引の種類や銘柄を選定していたものではなく,むしろ証券会社等の担当者の勧誘等に応じて安易に高い利益を得られるものと考えて取引に及んでいるものといえ,とりわけリスクの高い商品について,そのリスク内容を踏まえた上でなお高リターンを求めて購入するといった投資意向を有していたものと認めることはできない。このことは,前記3で認定したように,本件仕組債①に係るBからの勧誘に際し,原告が高金利を得られることに強い関心を有し,リスクについてはBに大丈夫かと尋ねたものの,Bの相場観を聞き,その高リスクの内容を十分に考慮していなかったことからも明らかといえる。
前記1記載のとおり,本件各仕組債がいずれも元本割れのリスクを有するものであって,しかもその度合いも最悪の場合には元本全額を失う可能性すら存するものであるところ,上記のような原告の生活状況や資産状況,投資経験,投資意向等に照らせば,かかる重大なリスクを有する本件各仕組債の勧誘は,原告の意向と実情に反して,明らかに過大なリスクを伴う取引を勧誘するものといえ,適合性原則に反するものとして不法行為を構成するものと解するのが相当である。
なお,被告は,適合性原則に反するか否かは,個々の仕組債の購入ごとに見るべき旨主張するところ,上記のような検討結果に照らせば,本件仕組債①ないし④について早期償還され,元本割れの結果が現に生じていない状態で,上記早期償還分を原資とするなどしてさらに本件仕組債⑤以下の購入に及んでいる原告について,これら本件仕組債⑤ないし⑭のそれぞれの勧誘行為がいずれも適合性原則に反することは明らかであるというべきである。
(2) 説明義務違反について
ア 証券会社は一般投資家を取引に勧誘することによって利益を得ているものであるところ,証券会社と一般投資家との間には,知識,経験,情報収集能力,分析能力等に格段の差が存することに鑑みれば,証券会社は,信義則上,一般投資家である顧客を証券取引に勧誘するに当たり,投資の適否について的確に判断し,自己責任で取引を行うために必要な情報である当該投資商品の仕組みや危険性等について,当該顧客がこれを具体的に理解することができる程度の説明を当該顧客の投資経験,知識,理解力等に応じて行う義務を負うものと解するのが相当である。
イ これを本件についてみるに,本件各仕組債の購入時における勧誘等の内容は,前記3記載のとおりであり,被告の担当者であったBやその上司が,本件各仕組債を勧誘するに際し,原告に商品内容やそのリスクを一定程度説明していたものとはいえるものの,むしろ高利率を強調して購入の勧誘をし,元本割れのリスクについても,ノックイン事由が発生する可能性は低いであろうと,かかるリスクが現実化する可能性は低いと思われる旨の相場観を述べるなどしていること,その結果,原告は,高利率に強く惹かれ,元本割れのリスクの存在やその内容については十分に理解していなかったものと認められることからすると,Bやその上司による説明内容は,原告に本件各仕組債が有する危険性を具体的に理解させる程度の説明であったということは到底できず,説明義務に反するものとして不法行為を構成するものと解するのが相当である。
(3) 原告が被った損害の内容について
ア 元本欠損額
(ア) 本件仕組債⑤ないし⑩及び⑬に係る損失額
証拠(乙29,30)によれば,本件各仕組債のうち,未償還の本件仕組債⑤ないし⑩及び⑬についての元本欠損額(本件の口頭弁論終結時に近接する時点での評価として,平成25年8月2日現在の参考時価評価額を基準に算定した額)は,以下のとおり合計192万6137円と認められる。
a 本件仕組債⑤
買付金額 94万1900円
評価額 66万2738円
損益 -27万9162円
b 本件仕組債⑥
買付金額 117万1900円
評価額 77万9960円
損益 -39万1940円
c 本件仕組債⑦
買付金額 197万9800円
評価額 138万0256円
損益 -59万9544円
d 本件仕組債⑧
買付金額 91万1500円
評価額 74万4388円
損益 -16万7112円
e 本件仕組債⑨
買付金額 98万0500円
評価額 79万1627円
損益 -18万8873円
f 本件仕組債⑩
買付金額 98万1000円
評価額 80万8013円
損益 -17万2987円
g 本件仕組債⑬
買付金額 103万円
評価額 90万3481円
損益 -12万6519円
h 合計損失額
192万6137円
(イ) 本件仕組債⑭に係る損失額
前記前提事実(2)オ及びカ(ア)bによれば,原告は,本件仕組債⑭を1003万6800円で購入したが,償還対象株式での満期償還となり,同株式が432万円で売却されたことが認められ,これにより,原告は,571万6800円の損失を被ったものと認められる。
(ウ) 本件仕組債⑪及び⑫に係る差益分の控除
本件仕組債⑪及び⑫について,平成25年5月1日に早期償還され,合計18万1500円の差益となったことは,当事者間に争いがなく,かかる差益は,原告が不法行為に基づく損害賠償として主張する本件仕組債⑤ないし⑭に係る元本欠損額から控除すべきものといえる(原告自身,上記差益は控除すべきものとしている。)。
(エ) 小計
以上の(ア)ないし(ウ)によれば,本件仕組債⑤ないし⑭に係る元本欠損額は,746万1437円と認められる。
イ 利金の控除
(ア) 別紙利金一覧表によれば,原告が本件仕組債⑤ないし⑭に係る利金として受け取った金額は,以下の合計129万8575円となる(この点は,原告において争うことを明らかにしないものとして,自白したものとみなされる。)ところ,本件仕組債⑤ないし⑭についての損害額を算定するに当たっては,これら各仕組債から原告が受けた利金を控除するのが相当である。
a 本件仕組債⑤ 6万0944円
b 本件仕組債⑥ 6万4690円
c 本件仕組債⑦ 10万2241円
d 本件仕組債⑧ 9万7570円
e 本件仕組債⑨ 9万7539円
f 本件仕組債⑩ 8万4160円
g 本件仕組債⑪ 20万1630円
h 本件仕組債⑫ 10万0824円
i 本件仕組債⑬ 5万7384円
j 本件仕組債⑭ 43万1593円
(イ) 被告は,本件仕組債①ないし④についても原告は同様に利金を受け取っているとして,かかる利金も損害額から控除すべき旨主張する。
しかしながら,原告は,本訴において,本件仕組債⑤ないし⑭に係る被告の担当者による勧誘行為等によって,原告がこれら各仕組債を購入したことを不法行為として,その損害賠償を求めているものである以上,本件仕組債①ないし④は,原告の請求対象となっていないものであることに加え,本件各仕組債の購入は,それぞれ購入時期も異なる別の取引であることに鑑みれば,本件仕組債①ないし④について原告が得た利金をもって,本件仕組債⑤ないし⑭に係る損害額から控除すべきものと解することはできない。
ウ 本件個人年金保険の解約手数料
原告が本件仕組債⑭の購入に際し,契約額1500万円の本件個人年金保険のうち1024万5930円を解約し,解約手数料24万5930円を除く1000万円を含めた1003万6800円を被告における原告名義の口座に振り込んで,本件仕組債⑭を購入したことは,前記前提事実(2)オ記載のとおりである。そうすると,本件個人年金保険は,もっぱら本件仕組債⑭の購入資金に充てるために解約をしたものであることは明らかであって,同解約に係る解約手数料24万5930円は,本件仕組債⑭に係る被告の担当者の不法行為と相当因果関係を有する損害と認めるのが相当である。
エ 小計
以上のアないしウによれば,本件仕組債⑤ないし⑭に係る被告の担当者の不法行為により原告が被った損害の額は,後記弁護士費用を除き,合計640万8792円と認められる。
オ 過失相殺
(ア) 上記(1)及び(2)記載のとおり,本件仕組債⑤ないし⑭の購入に関し,被告の担当者に適合性原則違反及び説明義務違反の各不法行為が認められるものであるが,他方で,原告も,前記2で認定したように,本件各仕組債の購入時点ですでに20年に及ぶ証券取引の経験があり,その中で数百万円に及ぶ損害を含む100万円規模の損害に至った例も複数経験していることや,被告のセミナーにも積極的に参加するなどして,一定程度の証券取引についての知識を有していたものと認められることからすれば,証券取引には一定のリスクが伴うことは認識できたものというべきであって,それにもかかわらず,被告の担当者によりされた一定程度のリスクの説明もきちんと理解しないまま,高金利に惹かれ安易に本件仕組債⑤ないし⑭の購入に至ったものというほかない。
このことからすれば,本件仕組債⑤ないし⑭の購入については,原告にも過失が存したものというべきであり,これまで検討したような本件における一切の事情を考慮すると,原告の過失割合を3割として過失相殺をするのが相当である。
(イ) 上記エ記載の原告の損害額640万8792円について,3割の過失相殺をすると,後記弁護士費用を除き被告が負担すべき損害額は,448万6154円(1円未満四捨五入)となる。
カ 弁護士費用
本件事案の内容に加え,上記オ(イ)記載の被告が負担すべき損害額に照らすと,被告の担当者による不法行為と相当因果関係を有する弁護士費用として45万円を認めるのが相当である。
キ 合計
以上から,本件について,被告は,不法行為(民法715条)による損害賠償として,493万6154円及びこれに対する平成20年8月5日(一番最後に購入した本件仕組債⑭について,購入代金が振り込まれた日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負うものと解するのが相当である。
6 結論
よって,原告の本訴請求は,不法行為に基づく損害賠償請求として,493万6154円及びこれに対する平成20年8月5日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,同限度で認容し,その余(不当利得返還請求及びその余の損害賠償請求)は理由がないからいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法64条本文,61条を,仮執行の宣言について同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 田中健治 裁判官 尾河吉久 裁判官 木村朱子)
(別紙1) 本件仕組債①(甲2,乙4の1)
1 名称
スウェーデン輸出信用銀行2013年8月13日満期豪ドル建早期償還条項付ノックイン型日経平均連動デジタル・クーポン債券(満期償還額日経平均連動型)
2 売出人
被告
3 約定日
平成18年8月3日
4 償還日
平成25年8月13日
5 利率
(1) 平成18年8月11日から平成19年2月12日まで
年10パーセント
(2) 平成19年2月13日から償還日又は早期償還日の前日まで
ア 利率判定日の日経平均株価終値が利率判定水準以上の場合
年10パーセント
イ 利率判定日の日経平均株価終値が利率判定水準未満の場合
年0.1パーセント
(注) 利率判定水準とは,当初日経平均株価(平成18年8月11日の評価時刻現在の日経平均終値をいう。)の85パーセントに相当する値(小数第3位を切り捨て)をいう。
6 償還の方法
(1) 満期における償還
平成25年8月13日に,以下の金額(満期償還額)で豪ドルで償還。
ア ノックイン事由が発生しなかった場合
額面金額
イ ノックイン事由が発生した場合
額面金額×最終日経平均株価÷当初日経平均株価
但し,最終日経平均株価(満期償還額計算日における日経平均株価終値)が当初日経平均株価以上の場合は,額面金額。
(注) ノックイン事由とは,観測期間(平成18年8月14日から満期償還額計算日までをいう。)中のいずれかの予定取引所営業日に日経平均株価終値がノックイン価格(当初日経平均株価の50パーセントに相当する値(小数第3位を切り捨て)をいう。)と同額かこれを下回った場合をいう。
(2) 早期償還
早期償還判定日において日経平均株価終値が早期償還判定水準(当初日経平均株価の100パーセントに相当する値(小数第3位を切り捨て)をいう。)と等しいかそれを上回る場合,早期償還日において,額面金額の100パーセントで,経過利息を付して豪ドルで早期償還
7 購入金額
88万7000円
(別紙2) 本件仕組債②(甲2,乙4の2)
1 名称
UBS銀行2013年9月17日満期米ドル建早期償還条項付ノックイン型日経平均連動デジタル・クーポン社債(満期償還額日経平均連動型)
2 売出人
被告
3 約定日
平成18年9月13日
4 償還日
平成25年9月17日
5 利率
(1) 平成18年9月14日から平成19年3月16日まで
年9パーセント
(2) 平成19年3月17日から平成25年9月16日まで
ア 利率判定日の日経平均株価終値が利率判定水準以上の場合
年9パーセント
イ 利率判定日の日経平均株価終値が利率判定水準未満の場合
年0.1パーセント
(注) 利率判定水準とは,当初日経平均株価(平成18年9月14日の評価時刻現在の日経平均終値をいう。)の85パーセントに相当する値(小数第3位を切り捨て)をいう。
6 償還の方法
(1) 満期における償還
平成25年9月17日に,以下の金額(満期償還額)で米ドルで償還。
ア ノックイン事由が発生しなかった場合
額面金額
イ ノックイン事由が発生した場合
額面金額×最終日経平均株価÷当初日経平均株価
但し,最終日経平均株価(満期償還額計算日における日経平均株価終値)が当初日経平均株価以上の場合は,額面金額。
(注) ノックイン事由とは,観測期間(平成18年9月15日から満期償還額計算日までをいう。)中のいずれかの予定取引所営業日に日経平均株価終値がノックイン価格(当初日経平均株価の50パーセントに相当する値(小数第3位を切り捨て)と同額かこれを下回った場合をいう。
(2) 早期償還
早期償還判定日において日経平均株価終値が早期償還判定水準(当初日経平均株価の100パーセントに相当する値(小数第3位を切り捨て)をいう。)と等しいかそれを上回る場合,早期償還日において,額面金額の100パーセントで,経過利息を付して米ドルで早期償還
7 購入金額
118万3000円
(別紙3) 本件仕組債③(甲2,乙4の3)
1 名称
スウェーデン輸出信用銀行2013年10月17日満期豪ドル建早期償還条項付ノックイン型日経平均連動デジタル・クーポン債券(満期償還額日経平均連動型)
2 売出人
被告
3 約定日
平成18年10月11日
4 償還日
平成25年10月17日
5 利率
(1) 平成18年10月17日から平成19年4月16日まで
年10パーセント
(2) 平成19年4月17日から償還日又は早期償還日の前日まで
ア 利率判定日の日経平均株価終値が利率判定水準以上の場合
年10パーセント
イ 利率判定日の日経平均株価終値が利率判定水準未満の場合
年0.1パーセント
(注) 利率判定水準とは,当初日経平均株価(平成18年10月17日の評価時刻現在の日経平均終値をいう。)の85パーセントに相当する値(小数第3位を切り捨て)をいう。
6 償還の方法
(1) 満期における償還
平成25年10月17日に,以下の金額(満期償還額)で豪ドルで償還。
ア ノックイン事由が発生しなかった場合
額面金額
イ ノックイン事由が発生した場合
額面金額×最終日経平均株価÷当初日経平均株価
但し,上限は額面金額。
(注) ノックイン事由とは,観測期間(平成18年10月18日から満期償還額計算日までをいう。)中のいずれかの予定取引所営業日に日経平均株価終値がノックイン価格(当初日経平均株価の50パーセントに相当する値(小数第3位を切り捨て)と同額かこれを下回った場合をいう。
(2) 早期償還
早期償還判定日において日経平均株価終値が早期償還判定水準(当初日経平均株価の100パーセントに相当する値(小数第3位を切り捨て)をいう。)と等しいかそれを上回る場合,早期償還日において,額面金額の100パーセントで,経過利息を付して豪ドルで早期償還
7 購入金額
180万2000円
(別紙4) 本件仕組債④(甲2,乙4の4)
1 名称
アメリカン・インターナショナル・グループ・インク(エイアイジー)保証付エイアイジーエフビー・キャピタル・ファンディング・コープ2014年1月21日満期早期円償還・満期豪ドル建早期償還条項付デジタル・クーポン社債
2 売出人
被告
3 約定日
平成19年1月15日
4 償還日
平成26年1月21日
5 利率
(1) 平成19年1月19日から平成20年1月20日まで
年7パーセント
(2) 平成20年1月21日から平成26年1月20日まで
ア 利率判定日における参照為替が当初為替レートの90パーセント以上の場合
年7パーセント
イ 利率判定日における参照為替が当初為替レートの90パーセント未満の場合
年0.1パーセント
(注) 参照為替とは,利率判定日の午後3時現在の「AUD」欄のロイター・スクリーン「JPNU」ページに表示される豪ドル/円直物為替レート仲値をいう。
当初為替レートとは,発行日の翌営業日に決定される参照為替をいう。
6 償還の方法
(1) 満期における償還
早期償還事由が発生していない場合,1単位当たり100万円を当初為替レートで除して計算される豪ドル建ての金額で償還。
(2) 早期償還
早期償還判定日における早期償還参照為替が早期償還判定水準以上の場合,1単位(単位額100万円)当たり100万円で経過利息と共に償還する。
(注) 早期償還判定水準は,平成20年1月21日から平成25年7月21日までの特定利払日(毎年1月21日及び7月21日)毎に,当初為替レートから1.3円ずつマイナスを重ねた値をいう。
7 購入金額
300万円
(別紙5) 本件仕組債⑤の内容(甲2,乙4の5)
1 名称
ドイツ銀行AGロンドン2014年2月21日満期豪ドル建早期償還条項付ノックイン型日経平均連動デジタル・クーポン社債(満期償還額日経平均連動型)
2 売出人
被告
3 約定日
平成19年2月15日
4 償還日
平成26年2月21日
5 利率
(1) 平成19年2月22日から同年8月20日まで
年10パーセント
(2) 平成19年8月21日から平成26年2月21日まで
ア 利率判定日の日経平均株価終値が利率判定水準以上の場合
年10パーセント
イ 利率判定日の日経平均株価終値が利率判定水準未満の場合
年0.1パーセント
(注) 利率判定水準とは,当初日経平均株価(平成19年2月22日の日経平均株価終値をいう。)の85パーセントに相当する値をいう。
6 償還の方法
(1) 満期における償還
平成26年2月21日に,以下の金額(満期償還額)で豪ドルで償還。
ア ノックイン事由が発生しなかった場合
額面金額
イ ノックイン事由が発生した場合
額面金額×最終日経平均株価÷当初日経平均株価
但し,上限は額面金額。
(注) ノックイン事由とは,観測期間(平成19年2月22日から満期償還額計算日までをいう。)中にスポンサーによって計算され公表された日経平均株価終値が一度でもノックイン価格(当初日経平均株価の50パーセントに相当する値をいう。)と同額かこれを下回った場合をいう。
(2) 早期償還
各利払日(各年の2月21日,5月21日,8月21日及び11月21日)に対応する早期償還判定日における日経平均株価終値が早期償還判定水準(当初日経平均株価の100パーセントに相当する値をいう。)以上の場合,各早期償還判定日に対応する利払日において,額面金額の100パーセント(額面1万豪ドル当たり1万豪ドル)で,豪ドルで早期償還
7 購入金額
1万豪ドル
(別紙6) 本件仕組債⑥(甲2,乙4の6)
1 名称
ドイツ銀行AGロンドン2014年3月25日満期米ドル建早期償還条項付ノックイン型日経平均連動デジタル・クーポン社債(満期償還額日経平均連動型)
2 売出人
被告
3 約定日
平成19年3月23日
4 償還日
平成26年3月25日
5 利率
(1) 平成19年3月23日から同年9月24日まで
年8.5パーセント
(2) 平成19年9月25日から平成26年3月25日まで
ア 利率判定日の日経平均株価終値が利率判定水準以上の場合
年8.5パーセント
イ 利率判定日の日経平均株価終値が利率判定水準未満の場合
年0.1パーセント
(注) 利率判定水準とは,当初日経平均株価(平成19年3月23日の日経平均株価終値をいう。)の85パーセントに相当する値をいう。
6 償還の方法
(1) 満期における償還
平成26年3月25日に,以下の金額(満期償還額)で米ドルで償還。
ア ノックイン事由が発生しなかった場合
額面金額
イ ノックイン事由が発生した場合
額面金額×最終日経平均株価÷当初日経平均株価
但し,上限は額面金額。
(注) ノックイン事由とは,観測期間(平成19年3月23日から満期償還額計算日までをいう。)中にスポンサーによって計算され公表された日経平均株価終値が一度でもノックイン価格(当初日経平均株価の50パーセントに相当する値をいう。)と同額かこれを下回った場合をいう。
(2) 早期償還
各利払日(各年の3月25日,6月25日,9月25日及び12月25日)に対応する早期償還判定日における日経平均株価終値が早期償還判定水準(当初日経平均株価の100パーセントに相当する値をいう。)以上の場合,各早期償還判定日に対応する利払日において,額面金額の100パーセント(額面1万米ドル当たり1万米ドル)で,米ドルで早期償還
7 購入金額
1万米ドル
(別紙7) 本件仕組債⑦(甲2,乙4の7)
1 名称
ソシエテジェネラル2014年4月22日満期豪ドル建早期償還条項付ノックイン型日経株価平均連動デジタル・クーポン社債(満期償還額日経平均連動型)
2 売出人
被告
3 約定日
平成19年4月13日
4 償還日
平成26年4月22日
5 利率
(1) 平成19年7月22日の最初の利払日及び同年10月22日の2回目の利払日に支払われる四半期分の利息
年11パーセント
(2) その後の利払日に支払われる四半期分の利息
ア 利率判定日又は満期償還額計算日の日経平均株価終値が利率判定水準以上の場合
年11パーセント
イ 利率判定日又は満期償還額計算日の日経平均株価終値が利率判定水準未満の場合
年0.1パーセント
(注) 利率判定水準とは,当初日経平均株価(平成19年4月20日の日経平均株価終値をいう。)の85パーセントに相当する価格(小数第3位を切り捨て)をいう。
6 償還の方法
(1) 満期における償還
平成26年4月22日に,以下の金額(満期償還額)で豪ドルで償還。
ア ノックイン事由が発生しなかった場合
額面金額
イ ノックイン事由が発生した場合
額面金額×最終日経平均株価÷当初日経平均株価
但し,上限は額面金額。
(注) ノックイン事由とは,観測期間(平成19年4月23日から満期償還額計算日までをいう。)中に日経平均株価終値が一度でもノックイン価格(当初日経平均株価の50パーセントに相当する価格(小数第3位を切り捨て)をいう。)と同額かこれを下回った場合をいう。
(2) 早期償還
早期償還判定日における日経平均株価終値が早期償還判定水準(当初日経平均株価の100パーセントに相当する価格をいう。)以上の場合,各早期償還判定日に対応する利払日において,額面金額で,豪ドルで早期償還
7 購入金額
2万豪ドル
(別紙8) 本件仕組債⑧(甲2,乙4の8)
1 名称
ソシエテジェネラル2014年8月21日満期豪ドル建早期償還条項付ノックイン型日経平均株価連動デジタル・クーポン社債(満期償還額日経平均連動型)
2 売出人
被告
3 約定日
平成19年8月17日
4 償還日
平成26年8月21日
5 利率
(1) 平成19年11月21日の最初の利払日及び平20年2月21日の2回目の利払日に支払われる四半期分の利息
年12パーセント
(2) その後の利払日に支払われる四半期分の利息
ア 利率判定日又は満期償還額計算日の日経平均株価終値が利率判定水準以上の場合
年12パーセント
イ 利率判定日又は満期償還額計算日の日経平均株価終値が利率判定水準未満の場合
年0.1パーセント
(注) 利率判定水準とは,当初日経平均株価(平成19年8月24日の日経平均株価終値をいう。)の85パーセントに相当する価格(小数第3位を切り捨て)をいう。
6 償還の方法
(1) 満期における償還
平成26年8月21日に,以下の金額(満期償還額)で豪ドルで償還。
ア ノックイン事由が発生しなかった場合
額面金額
イ ノックイン事由が発生した場合
額面金額×最終日経平均株価÷当初日経平均株価
但し,上限は額面金額。
(注) ノックイン事由とは,観測期間(平成19年8月27日から満期償還額計算日までをいう。)中に日経平均株価終値が一度でもノックイン価格(当初日経平均株価の50パーセントに相当する価格(小数第3位を切り捨て)をいう。)と同額かこれを下回った場合をいう。
(2) 早期償還
早期償還判定日における日経平均株価終値が早期償還判定水準(当初日経平均株価の100パーセントに相当する価格をいう。)以上の場合,各早期償還判定日に対応する利払日において,額面金額で,豪ドルで早期償還
7 購入金額
91万1500円
(別紙9) 本件仕組債⑨(甲2,乙4の9)
1 名称
ノルウェー輸出金融公社2014年11月20日満期豪ドル建早期償還条項付ノックイン型日経平均連動デジタル・クーポン債権(満期償還額日経平均連動型)
2 売出人
被告
3 約定日
平成19年11月20日
4 償還日
平成26年11月20日
5 利率
(1) 平成19年11月21日から平成20年5月19日までの期間
年12パーセント
(2) 平成20年5月20日から償還日又は早期償還日の前日まで
ア 利率判定日の日経平均株価終値が利率判定水準以上の場合
年12パーセント
イ 利率判定日の日経平均株価終値が利率判定水準未満の場合
年0.1パーセント
(注) 利率判定水準とは,当初日経平均株価(平成19年11月21日の日経平均株価終値をいう。)の85パーセントに相当する値(ただし,小数第3位を切り捨て)をいう。
6 償還の方法
(1) 満期における償還
平成26年11月20日に,以下の金額(満期償還額)で豪ドルで償還。
ア ノックイン事由が発生しなかった場合
額面金額
イ ノックイン事由が発生した場合
額面金額×最終日経平均株価÷当初日経平均株価
但し,上限は額面金額。
(注) ノックイン事由とは,観測期間(平成19年11月21日から満期償還額計算日までをいう。)中に日経平均株価終値が一度でもノックイン価格(当初日経平均株価の50パーセントに相当する値(小数第3位を切り捨て)をいう。)と同額かこれを下回った場合をいう。
(2) 早期償還
早期償還判定日における日経平均株価終値が早期償還判定水準(当初日経平均株価の100パーセントに相当する値(小数第3位を切り捨て)をいう。)以上の場合,直後の早期償還日において,額面金額で,豪ドルで早期償還
7 購入金額
98万0500円
(別紙10) 本件仕組債⑩(甲2,乙4の10)
1 名称
スウェーデン輸出信用銀行2014年12月18日満期豪ドル建早期償還条項付ノックイン型日経平均連動デジタル・クーポン債券(満期償還額日経平均連動型)
2 売出人
被告
3 約定日
平成19年12月18日
4 償還日
平成26年12月18日
5 利率
(1) 平成19年12月21日から平成20年6月17日まで
年14.5パーセント
(2) 平成20年6月18日から償還日又は早期償還日の前日まで
ア 利率判定日の日経平均株価終値が利率判定水準以上の場合
年14.5パーセント
イ 利率判定日の日経平均株価終値が利率判定水準未満の場合
年0.1パーセント
(注) 利率判定水準とは,当初日経平均株価(平成19年12月21日の日経平均株価終値をいう。)の85パーセントに相当する値(小数第3位を切り捨て)をいう。
6 償還の方法
(1) 満期における償還
平成26年12月18日に,以下の金額(満期償還額)で豪ドルで償還。
ア ノックイン事由が発生しなかった場合
額面金額
イ ノックイン事由が発生した場合
額面金額×最終日経平均株価÷当初日経平均株価
但し,上限は額面金額。
(注) ノックイン事由とは,観測期間(平成19年12月25日から満期償還額計算日までをいう。)中のいずれかの予定取引所営業日に日経平均株価終値がノックイン価格(当初日経平均株価の50パーセントに相当する値(小数第3位を切り捨て)をいう。)と同額かこれを下回った場合をいう。
(2) 早期償還
早期償還判定日において日経平均株価終値が早期償還判定水準(当初日経平均株価の100パーセントに相当する値をいう。)と等しいかそれを上回る場合,早期償還日において,額面金額の100パーセントで,経過利息を付して豪ドルで早期償還
7 購入金額
98万1000円
(別紙11) 本件仕組債⑪(甲2,乙4の11)
1 名称
スウェーデン輸出信用銀行2015年1月28日満期豪ドル建早期償還条項付ノックイン型日経平均連動デジタル・クーポン債券(満期償還額日経平均連動型)
2 売出人
被告
3 約定日
平成20年1月17日
4 償還日
平成27年1月28日
5 利率
(1) 平成20年1月24日から同年7月27日まで
年12.5パーセント
(2) 平成20年7月28日から償還日又は早期償還日の前日まで
ア 利率判定日の日経平均株価終値が利率判定水準以上の場合
年12.5パーセント
イ 利率判定日の日経平均株価終値が利率判定水準未満の場合
年0.1パーセント
(注) 利率判定水準とは,当初日経平均株価(平成20年1月24日の日経平均株価終値をいう。)の85パーセントに相当する値(小数第3位を切り捨て)をいう。
6 償還の方法
(1) 満期における償還
平成27年1月28日に,以下の金額(満期償還額)で豪ドルで償還。
ア ノックイン事由が発生しなかった場合
額面金額
イ ノックイン事由が発生した場合
額面金額×最終日経平均株価÷当初日経平均株価
但し,上限は額面金額。
(注) ノックイン事由とは,観測期間(平成20年1月25日から満期償還額計算日までをいう。)中のいずれかの予定取引所営業日に日経平均株価終値がノックイン価格(当初日経平均株価の50パーセントに相当する値(小数第3位を切り捨て)をいう。)と同額かこれを下回った場合をいう。
(2) 早期償還
早期償還判定日において日経平均株価終値が早期償還判定水準(当初日経平均株価の100パーセントに相当する値をいう。)と等しいかそれを上回る場合,早期償還日において,額面金額の100パーセントで,経過利息を付して豪ドルで早期償還
7 購入金額
190万8000円(2万豪ドル分)
(別紙12) 本件仕組債⑫(甲2,乙4の11)
本件仕組債⑪と同商品(原告は2回にわたり購入している。)であり,以下の点を除き,本件仕組債⑪と同じ。
3 約定日
平成20年1月23日
7 購入金額
94万3500円(1万豪ドル分)
(別紙13) 本件仕組債⑬(甲2,乙4の12)
1 名称
スウェーデン輸出信用銀行2015年6月19日満期豪ドル建早期償還条項付ノックイン型日経平均連動デジタル・クーポン債券(満期償還額日経平均連動型)
2 売出人
被告
3 約定日
平成20年6月18日
4 償還日
平成27年6月19日
5 利率
(1) 平成20年6月20日から同年12月18日まで
年11.5パーセント
(2) 平成20年12月19日から償還日又は早期償還日の前日まで
ア 利率判定日の日経平均株価終値が利率判定水準以上の場合
年11.5パーセント
イ 利率判定日の日経平均株価終値が利率判定水準未満の場合
年0.1パーセント
(注) 利率判定水準とは,当初日経平均株価(平成20年6月20日の日経平均株価終値をいう。)の85パーセントに相当する値(小数第3位を切り捨て)をいう。
6 償還の方法
(1) 満期における償還
平成27年6月19日に,以下の金額(満期償還額)で豪ドルで償還。
ア ノックイン事由が発生しなかった場合
額面金額
イ ノックイン事由が発生した場合
額面金額×最終日経平均株価÷当初日経平均株価
但し,上限は額面金額。
(注) ノックイン事由とは,観測期間(平成20年6月20日から満期償還額計算日までをいう。)中のいずれかの予定取引所営業日に日経平均株価終値がノックイン価格(当初日経平均株価の50パーセントに相当する値(小数第3位を切り捨て)をいう。)と同額かこれを下回った場合をいう。
(2) 早期償還
早期償還判定日において日経平均株価終値が早期償還判定水準(当初日経平均株価の100パーセントに相当する値をいう。)と等しいかそれを上回る場合,早期償還日において,額面金額の100パーセントで,経過利息を付して豪ドルで早期償還
7 購入金額
103万円
(別紙14) 本件仕組債⑭(甲2の1,4)
1 発行者
バークレイズ・バンク・ピーエルシー
2 証券の名称
バークレイズ・バンク・ピーエルシー
3 発行金額
3億3121万4400円(額面金額 1003万6800円)
4 償還対象株式
三菱UFJフィナンシャルグループ
5 転換価格
984円
6 約定日
平成20年8月4日ころ
7 償還日
平成22年8月5日
8 利率(クーポン)
(1) 平成20年11月5日まで
年14.5パーセント
(2) 平成20年11月6日から償還まで
ア 利率(クーポン)判定日における対象株式終値が795円以上の場合
年14.5パーセント
イ 利率(クーポン)判定日における対象株式終値が795円未満の場合
年1パーセント
9 償還の方法
(1) 満期における償還
満期償還日の10営業日前の東京証券取引所対象株式終値により,以下のとおり償還。
ア 株価が転換価格984円以上の場合
額面金額の現金にて償還
イ 株価が転換価格984円未満の場合
額面金額÷転換価格=償還対象株式1万0200株(額面金額当たり)にて現物償還
(2) 早期償還
早期償還判定日における対象株式終値がトリガー価格(994円)以上になった場合,額面金額で早期償還。
10 購入金額
1003万6800円
(別紙)
利金一覧表
①スウエユギン/デジポン
日付
金額
H18.11.14
18,597
H19.2.14
18,927
合計
37,524
②UBS/デジポン
日付
金額
H18.12.19
21,868
H19.3.20
21,157
合計
43,025
③スウエユギン/デジポン
日付
金額
H19.1.18
37,869
H19.4.18
39,681
合計
77,550
④AIG-FP/デユアル
日付
金額
H19.7.24
84,934
H20.1.23
84,000
合計
168,934
⑤ドイツBK/デジポン
日付
金額
H19.5.22
19,829
H19.8.22
17,872
H19.11.22
19,585
H20.2.22
199
H20.5.22
199
H20.8.22
193
H20.11.25
117
H21.2.24
121
H21.5.22
148
H21.8.24
157
H21.11.25
166
H22.2.23
166
H22.5.24
149
H22.8.24
153
H22.11.24
166
H23.2.22
170
H23.5.24
176
H23.8.23
161
H23.11.22
155
H24.2.22
172
H24.5.22
158
H24.8.22
167
H24.11.22
171
H25.2.22
194
H25.5.22
200
合計
60,944
⑥ドイツBK/デジポン
日付
金額
H19.6.26
21,496
H19.9.26
19,802
H19.12.28
19,445
H20.3.26
202
H20.6.26
216
H20.9.26
212
H20.12.30
182
H21.3.26
196
H21.6.26
193
H21.9.28
183
H21.12.30
185
H22.3.26
184
H22.6.28
180
H22.9.28
169
H22.12.30
165
H23.3.28
162
H23.6.28
163
H23.9.27
154
H23.12.29
157
H24.3.27
166
H24.6.26
162
H24.9.26
157
H24.12.28
173
H25.3.26
190
H25.6.26
196
合計
64,690
⑦SG/デジポン
日付
金額
H19.7.24
48,302
H19.10.23
46,202
H20.1.23
366
H20.4.23
392
H20.7.23
418
H20.10.23
275
H21.1.23
234
H21.4.23
281
H21.7.23
307
H21.10.23
341
H22.1.25
328
H22.4.23
346
H22.7.23
306
H22.10.25
320
H23.1.25
330
H23.4.28
354
H23.7.25
343
H23.10.25
318
H24.1.24
325
H24.4.24
340
H24.7.24
326
H24.10.23
330
H25.1.23
378
H25.4.23
410
H25.7.23
369
合計
102,241
⑧SG/デジポン
日付
金額
H19.11.22
22,718
H20.2.22
23,905
H20.5.22
23,891
H20.8.22
193
H20.11.25
117
H21.2.24
121
H21.5.22
148
H21.8.24
157
H21.11.25
166
H22.2.23
166
H22.5.24
149
H22.8.24
153
H22.11.24
166
H23.2.22
170
H23.5.24
176
H23.8.23
161
H23.11.22
155
H24.2.22
172
H24.5.22
158
H24.8.22
167
H24.11.22
171
H25.2.22
194
H25.5.22
23,996
合計
97,570
⑨ノルウエーユシユツ/デジポン
日付
金額
H20.2.21
23,610
H20.5.21
23,967
H20.8.21
23,088
H20.11.21
123
H21.2.23
123
H21.5.21
148
H21.8.21
157
H21.11.24
164
H22.2.23
166
H22.5.21
156
H22.8.23
153
H22.11.24
166
H23.2.23
168
H23.5.23
176
H23.8.23
161
H23.11.22
155
H24.2.22
172
H24.5.22
158
H24.8.21
167
H24.11.21
171
H25.2.21
194
H25.5.21
23,996
合計
97,539
⑩スウエユギン/デジポン
日付
金額
H20.3.19
25,113
H20.6.19
29,690
H20.9.19
167
H20.12.19
124
H21.3.19
132
H21.6.19
154
H21.9.24
161
H21.12.21
160
H22.3.19
167
H22.6.21
159
H22.9.22
164
H22.12.21
167
H23.3.22
162
H23.6.21
171
H23.9.21
157
H23.12.20
156
H24.3.21
179
H24.6.19
162
H24.9.19
165
H24.12.19
178
H25.3.19
197
H25.6.19
26,275
合計
84,160
⑪スウエユギン/デジポン
日付
金額
H20.4.30
51,218
H20.7.29
51,690
H20.10.29
230
H21.1.29
238
H21.4.30
275
H21.7.29
313
H21.10.29
337
H22.1.29
325
H22.4.30
42,721
H22.7.29
318
H22.10.29
320
H23.1.31
331
H23.5.2
360
H23.7.29
346
H23.10.31
328
H24.1.31
329
H24.5.1
339
H24.7.31
329
H24.10.30
331
H25.1.30
378
H25.5.1
50,574
合計
201,630
⑫スウエユギン/デジポン
日付
金額
H20.4.30
25,610
H20.7.29
25,846
H20.10.29
115
H21.1.29
119
H21.4.30
138
H21.7.29
157
H21.10.29
169
H22.1.29
163
H22.4.30
21,361
H22.7.29
160
H22.10.29
160
H23.1.31
166
H23.5.2
181
H23.7.29
174
H23.10.31
165
H24.1.31
165
H24.5.1
170
H24.7.31
164
H24.10.30
165
H25.1.30
189
H25.5.1
25,287
合計
100,824
⑬スウエユギン/デジポン
日付
金額
H20.9.22
19,484
H20.12.22
14,338
H21.3.23
132
H21.6.22
156
H21.9.25
161
H21.12.22
163
H22.3.23
168
H22.6.22
160
H22.9.22
164
H22.12.21
167
H23.3.23
165
H23.6.21
171
H23.9.21
157
H23.12.20
156
H24.3.20
179
H24.6.20
161
H24.9.20
165
H24.12.20
179
H25.3.21
198
H25.6.20
20,760
合計
57,384
⑭バークレイズバンクPLC/EB
日付
金額
H20.11.6
291,068
H21.2.6
20,075
H21.5.8
20,075
H21.8.6
20,075
H21.11.6
20,075
H22.2.8
20,075
H22.5.7
20,075
H22.8.6
20,075
合計
431,593
受取利金合計額
1,625,608