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大阪地方裁判所 平成25年(ワ)5600号 判決 2014年9月25日

原告

株式会社松井製作所

同訴訟代理人弁護士

畑郁夫

平野惠稔

同訴訟復代理人弁護士

森本祐介

同訴訟代理人弁理士

河野登夫

河野英仁

野口富弘

被告

株式会社カワタ

同訴訟代理人弁護士

室谷和彦

面谷和範

同補佐人弁理士

鈴江正二

木村俊之

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1  原告

(1)  被告は,別紙イ号製品目録記載の製品を生産し,譲渡し又は譲渡の申出をしてはならない。

(2)  被告は,別紙ロ号製品目録記載の製品を生産し,譲渡し又は譲渡の申出をしてはならない。

(3)  被告は,別紙イ号製品目録記載の製品及びこれらの半製品を廃棄せよ。

(4)  被告は,別紙ロ号製品目録記載の製品及びこれらの半製品を廃棄せよ。

(5)  被告は,原告に対し,8432万円及びこれに対する平成25年4月1日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。

(6)  訴訟費用は被告の負担とする。

(7)  仮執行宣言

2  被告

主文同旨

第2事案の概要

1  前提事実(当事者間に争いがない。)

(1)  当事者

原告は,化学,製薬,製紙,食品,繊維工業用諸機械の製造及び販売並びにこれらに附帯する工事の施工等を目的とする会社である。

被告は,合成樹脂加工機械の設計,製作及び販売並びに機械器具設置工事の設計及び施工等を目的とする会社である。

(2)  原告の有する特許権

原告は,以下の特許(以下「本件特許」といい,請求項1に係る発明を「本件特許発明1」,請求項2に係る発明を「本件特許発明2」といい,両者を併せて「本件各特許発明」という。また,本件特許出願に係る明細書を「本件明細書」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する。

登録番号    第3767993号

発明の名称   粉粒体の混合及び微粉除去方法並びにその装置

出願年月日   平成10年1月17日

登録年月日   平成18年2月10日

特許請求の範囲

【請求項1】

流動ホッパーと一時貯留ホッパーとの間に縦向き管と横向き管からなる供給管を設け,前記流動ホッパーの出入口は,前記供給管のみと連通してあり,材料供給源からの材料を吸引空気源の気力により前記供給管を介して流動ホッパー内に吸引輸送するとともに混合し,その混合済み材料を前記一時貯留ホッパー内へ落下するようにする操作を繰り返しながら行なう粉粒体の混合及び微粉除去方法において,

流動ホッパーへの材料の吸引輸送は,吸引輸送の停止中に前回吸引輸送した混合済み材料が流動ホッパーから一時貯留ホッパーへと降下する際に,前記混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方に降下する前に開始するようにすることを特徴とする粉粒体の混合及び微粉除去方法。

【請求項2】

排気口にガス導管を介して吸引空気源を接続した流動ホッパーと,該流動ホッパーの出入口と縦方向に連通した縦向き管と,この縦向き管に横方向に連通され材料供給源からの材料が供給される横向き管とからなる供給管と,該供給管に接続された一時貯留ホッパーとからなり,

前記流動ホッパーの出入口は,前記供給管のみと連通してあり,

前記供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍位置または該延長線より上方位置に,前記吸引空気源を停止する前に混合された混合済み材料の充填レベルを,該吸引空気源を停止している場合に検出するためのレベル計を設けてなることを特徴とする粉粒体の混合及び微粉除去装置。

(3)  構成要件の分説

本件各特許発明は,以下のとおり,分説することができる。

ア 本件特許発明1

1A-1 流動ホッパーと一時貯留ホッパーとの間に縦向き管と横向き管からなる供給管を設け,

1A-2 前記流動ホッパーの出入口は,前記供給管のみと連通してあり,材料供給源からの材料を吸引空気源の気力により前記供給管を介して流動ホッパー内に吸引輸送するとともに混合し,

1A-3 その混合済み材料を前記一時貯留ホッパー内へ落下するようにする操作を繰り返しながら行なう粉粒体の混合及び微粉除去方法において,

1B  流動ホッパーへの材料の吸引輸送は,吸引輸送の停止中に前回吸引輸送した混合済み材料が流動ホッパーから一時貯留ホッパーへと降下する際に,前記混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方に降下する前に開始するようにすることを特徴とする

1C  粉粒体の混合及び微粉除去方法。

イ 本件特許発明2

2A  排気口にガス導管を介して吸引空気源を接続した流動ホッパーと,

2B-1 該流動ホッパーの出入口と縦方向に連通した縦向き管と,

2B-2 この縦向き管に横方向に連通され材料供給源からの材料が供給される横向き管とからなる供給管と,

2C  該供給管に接続された一時貯留ホッパーとからなり,

2D  前記流動ホッパーの出入口は,前記供給管のみと連通してあり,

2E  前記供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍位置または該延長線より上方位置に,前記吸引空気源を停止する前に混合された混合済み材料の充填レベルを,該吸引空気源を停止している場合に検出するためのレベル計を設けてなることを特徴とする

2F  粉粒体の混合及び微粉除去装置。

(4) 被告の行為

被告は,平成23年8月から平成25年3月まで,別紙イ号製品目録記載の流動ホッパー(以下「イ号製品」という。)を,業として,生産し,譲渡し,譲渡の申出をした。

被告が,イ号製品に別の装置を組み合わせた別紙ロ号製品目録記載の製品(以下「ロ号製品」という。)を,業として,生産し,譲渡し,譲渡の申出をしているかについては,当事者間に争いがある。

2  原告の請求

原告は,被告に対し,以下の請求をしている。

(1)  本件特許権に基づき,イ号製品の生産,譲渡又は譲渡の申出の差止請求

(2)  本件特許権に基づき,ロ号製品の生産,譲渡又は譲渡の申出の差止請求

(3)  本件特許権に基づき,イ号製品及びロ号製品並びにこれらの半製品の廃棄請求

(4)  不法行為による損害賠償請求権に基づき,8432万円(イ号製品販売による損害)及びこれに対する不法行為の後である平成25年4月1日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払請求

3  争 点

(1)  イ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足するか(争点1)

(2)  イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対する特許法101条4号の間接侵害が成立するか(争点2)

(3)  ロ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足するか(争点3)

(4)  ロ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対する特許法101条4号の間接侵害が成立するか(争点4)

(5)  損害額(争点5)

第3争点に関する当事者の主張

1  争点1(イ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足するか)について

【原告の主張】

以下のとおり,イ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足する。

(1) イ号製品の構成

イ号製品の構成は,別紙イ号製品説明書(原告主張)記載1,3及び4のとおりである。

(2) 構成要件2Aから2Dまで

イ号製品の構成aは構成要件2Aに,構成b-1は構成要件2B-1に,構成b-2は構成要件2B-2に,構成cは構成要件2Cに,構成dは構成要件2Dに,それぞれ相当し,イ号製品は,構成要件2Aから2Dまでを充足する。

(3) 構成要件2E

以下のとおり,イ号製品の構成eは構成要件2Eに相当し,イ号製品は,構成要件2Eを充足する。

ア 「横向き管における最下面の延長線」

「横向き管における最下面の」との記載は,その直後の「延長線」を修飾する。本件明細書において,【図1】及びこれを説明する【0030】では,横向き管を上下平行な2つの線で表した場合に,下側の線(横向き管内面の最下母線)に符号が付され,符号で示す線全体が「最下面」であることが明記されており,「最下面」とは,横向き管全体の中で最も下の面全体を意味する。したがって,「横向き管における最下面の延長線」とは,横向き管の最下面という面全体をそのまま延長した線を意味すると解される。

横向き管とは縦向き管に対して任意の角度で交差する管であり(【0012】),縦向き管に対して横向き管を上方から下方に向けて下り勾配に設けた場合には,横向き管の最下面も上方から下方に向けて下り勾配となり,最下面の延長線も上方から下方に向けて下り勾配となると解される。

イ 「延長線の近傍位置または該延長線より上方位置」(レベル計の位置)本件明細書では,レベル計の位置について,延長線より上方位置に設けた場合(【0031】)と延長線近くに設けた場合(【0032】)が,並列されて記載されている。「レベル計を延長線近くに設けた場合」(【0032】)にいう「近く」とは,延長線の上方のみならず下方を含む「延長線の付近」を意味すると解釈できる。「近傍」には,一般に,「近所,近辺」という意味があり,「レベル計は延長線より近傍又は上方の位置に設けている」(【0033】)にいう「延長線より近傍」は,延長線の下方を含む。

このように,【0031】から【0033】の記載によれば,レベル計は,延長線の「上方」と,延長線の「近傍」(延長線の下方を含む。)のいずれかに設置されていればよい。レベル計の設置位置が,延長線よりも下方位置であることが許容される旨も明示され,延長線とレベル計との間に「少しばかり」の空間ができることが予定されている(【0049】)。

ホッパーの具体的な構成によって,横向き管の最下面の延長線からどの範囲までを「近傍」と評価できるかが異なるため,「近傍」の内容は定量的に特定されていないが,当業者であれば,本件各特許発明の作用効果や当該製品の具体的構成を踏まえて,「近傍」の範囲を理解することができる。

したがって,「横向き管における最下面の延長線の近傍位置または該延長線より上方位置」については,「最下面の延長線の近傍位置」と「延長線より上方位置」という2つの位置が並列されており,「近傍位置」は延長線よりも下方であってもよいと解釈でき,レベル計は,延長線の下側を含む近傍位置(近傍の最下点以上)に設置されていればよいと解され,充填された既混合の材料によって,未混合の材料が一時貯留ホッパーに落下することが阻止されるという効果を奏する限り,構成要件2Eを充足する。

ウ イ号製品へのあてはめ

(ア) イ号製品では,横向き管は,縦向き管に対して上方から下方に向けて下り勾配に設けられており,横向き管の最下面も上方から下方に向けて下り勾配となるから,横向き管の最下面の延長線も上方から下方に向けて下り勾配となる。

また,イ号製品のようなホッパーにおいては,レベル計の下部に蓄積する材料の量を調整するなどの目的で,ユーザがレベル計の位置を上下させることが予定されている。イ号製品は,レベル計の上下方向の位置を,縦向き管を兼用する延伸部(透明管部)の範囲で任意に設定できる構成としており,レベル計を延伸部の最上部,すなわち,レベル計を固定したブラケットの上面を上側のフランジの下面に当接させた位置に設定することができる。

(イ)甲第8号証及び甲第9号証の実験によると,イ号製品のレベル計の位置を「最下面の延長線の近傍」に設けた場合でも,未混合の材料が一時貯留ホッパーに落下することを阻止するという本件各特許発明の効果を奏することが確認できる。

(ウ) したがって,イ号製品のレベル計は,「横向き管における最下面の延長線の近傍位置」に設けられているといえる。

(4) 構成要件2F

イ号製品の構成fは構成要件2Fに相当し,イ号製品は,構成要件2Fを充足する。

【被告の主張】

以下のとおり,イ号製品は,本件特許発明2の構成要件2E及び2Fを充足しない。

(1) イ号製品の構成

イ号製品の構成は,別紙イ号製品説明書(被告主張)記載1及び3のとおりである。

(2) 構成要件2Aから2Dまで

イ号製品が構成要件2Aから2Dまでを充足することは認める。

(3) 構成要件2E

「混合」とは,複数の材料供給源から供給された複数の材料を流動ホッパーにおいて混ぜ合わせることを意味し,単一材料を混ぜ合わせる場合は「混合」に該当しない。したがって,ホッパー装置であるイ号製品のみでは,「混合」を行わない。

また,以下のとおり,レベル計が,「横向き管における最下面の延長線の近傍位置または該延長線より上方位置」に設けられているとはいえない。

ア 「横向き管における最下面の延長線」

本件明細書には,横向き管が水平の場合しか記載されておらず,「最下面」や「最下面の延長線」の定義が記載されていないから,「面」の「延長線」の始点,方向を特定できない。供給管が円筒の場合,その断面は円であり,「最下面」は存在しない。横向き管が下方に傾斜している場合,縦向き管への出口の下端が「最下点」であるが,それ以外の部分は「最下」とはいえず,「最下面」は存在しない。

本件明細書では,従来の技術の課題が,横向き管の出口とレベル計との間に空間ができることにあると説明され,本件各特許発明の技術思想は,上記の課題を解消すべく,延長線より下方を混合済み材料で充填することにより,輸送材料の一時貯留ホッパーへの落下を阻止する,というものである。充填レベルの検知位置を延長線よりも下方とした場合,延長線よりも下方が満杯の状態とはならず,空間が生じてしまい,未混合材料の一時貯留ホッパーへの落下を防止できないから,必然的に,「延長線」が充填レベルを検知する位置の最下限となる。

構成要件2Eは,充填レベルが降下していくことを前提に,充填レベルの検知位置ないしレベル計の設置位置と「延長線」との上下の位置関係によって,発明を特定している。混合済み材料の充填レベルは略水平に降下し,レベル計も,縦向き管の側面に設置され,略水平に降下してくる充填レベルを検出するため,延長線が水平方向で規定されなければ,上下関係の特定はできない。本件明細書において挙げられた複数の実施例では,いずれも,横向き管出口の下端から水平に引かれた線が延長線であると説明されており,それ以外の態様については記載されていない。また,前記の技術思想によれば,輸送材料の一時貯留ホッパーへの落下を阻止するため,延長線と充填レベルとの間に空間が生じないように,延長線より下方が混合済み材料で充填される必要がある。構成要件2Eの記載との整合性,本件明細書に記載された技術思想との整合性を考慮すると,「横向き管における最下面の延長線」は,縦向き管への出口の下端(横向き管の最下点)から水平に引かれた線を意味すると解される。

イ 「延長線の近傍位置または該延長線より上方位置」(レベル計の位置)「近傍」とは,「近所,近辺」,「近いところ,付近」という意味であり,「距離が近いこと」を意味する,距離や位置の概念である。

作用(【0016】~【0018】)や発明の実施の形態(【0030】~【0033】,【0040】,【0045】)の説明によれば,構成要件2Eは,レベル計を,① 延長線の線上(別紙「延長線とレベル計との位置関係図」(以下「本件位置関係図」という。)の(b)の位置であり,「近傍位置」に相当する。)に設ける場合と,② 延長線より上方位置(本件位置関係図の(a)の位置であり,「延長線より上方位置」に相当する。)に設ける場合を原則的な形態として,特定したものである。

本件位置関係図の(c)の位置にレベル計を設置した場合,充填レベルの検知位置が延長線と同レベルとなり,延長線よりも下方が満杯の状態となるから,本件各特許発明の技術思想が実現される。また,「延長線の線上に設けられている場合」(【0018】)に該当し,「延長線よりも上方に設けられたレベル計」(【0017】)という表現にも含まれると考えられ,近傍位置に含まれる。

本件位置関係図の(d)の位置にレベル計を設置した場合,通常,充填レベルの検知位置が延長線よりも下方になってしまうため,本件各特許発明の技術思想が実現されたとはいい難い。近傍位置が延長線より少しばかり下方位置であってもよい旨の記載(【0049】)は,「その他の変形例」に関する説明であり,本件各特許発明に関する説明ではない。仮にこの記載が請求項2について説明したものであったとしても,その文言からみて,例外的な場合を説明したものであり,前記の技術思想によれば,充填レベルの検知位置が延長線よりも下になってもよいということにはならない。レベル計は,一定の大きさを有し,上下方向に一定の長さがあるから,感度の設定によっては,レベル計における充填レベルの検知位置を,レベル計の検知面の上端に設定することも可能であり,その場合,充填レベルの検知位置が延長線よりも上方に位置しても,レベル計自体は,延長線よりも少しばかり下方位置になり得る。本件明細書のほかの記載との整合性を考慮すると,充填レベルの検知位置が延長線よりも上方でありながら,レベル計の設置位置が「少しばかり下方位置であってもよい」とは,充填レベルの検知位置を延長線上とすることが可能な範囲で延長線よりも下方位置(本件位置関係図の(d)までの範囲)になってもよいという意味であると解される。

これに対し,延長線と接することなく,延長線とレベル計との間に空間が生じる位置(本件位置関係図の(e)の位置)にレベル計を設置した場合,充填レベルの検知位置が延長線よりも下方になるため,本件各特許発明の技術思想が実現されず,「少しばかり下方位置」ともいえないから,「近傍位置」には当たらない。

このように解すると,レベル計が延長線と物理的に接しているか否かで侵害の成否を判断すればよいので,判断基準も明確となり,最低限度の予測可能性を確保することができる。

ウ イ号製品へのあてはめ

(ア) イ号製品のレベル計は,延長線(横向き管出口の下端から引いた水平線)と検知面の上端との間隔が56.5mm,延長線と検知面の中央との間隔が73.5mm となる位置に設けられている。また,イ号製品のレベル計の高さを変更できることを考慮して,レベル計を最も高い位置に変更したとしても,延長線(横向き管出口の下端から引いた水平線)とレベル計の検出面の上端とは28.2mm の間隔があり,レベル計は延長線と接していない。したがって,イ号製品は,構成要件2Eを充足しない。

(イ)甲第8号証の実験では,装置の改変や誤解を招く動画の編集がなされている。

甲第9号証の実験では,新たな材料が,延長線より下に落下した後,流動ホッパーへ吸い上げられており,本件各特許発明の技術思想が実現されていない。また,実験に用いられた装置は,レベル計が延伸部の上端に設置されており,イ号製品とは異なる。

(4) 構成要件2F

イ号製品のみでは,「混合」を行わない。

2  争点2(イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対する特許法101条4号の間接侵害が成立するか)について

【原告の主張】

以下のとおり,イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対する特許法101条4号の間接侵害が成立する。

(1) イ号製品の動作

イ号製品の構成及び動作は,別紙イ号製品説明書(原告主張)記載1から4までのとおりである。

(2) 構成要件充足性

イ号製品の構成b及びcは構成要件1A-1に,イ号製品の動作gは構成要件1A-2に,動作hは構成要件1A-3に,動作iは構成要件1Bに,動作h及びiは構成要件1Cに,それぞれ相当し,イ号製品の動作は,本件特許発明1の各構成要件を充足する。

本件明細書において,本件特許発明2の装置が本件特許発明1の実施に用いられることが明記されているから(【0011】),本件特許発明1の構成要件1Bは,本件特許発明2の構成要件2Eと整合するように解釈する必要がある。そうすると,本件特許発明1の構成要件1Bでは,「延長線の近傍」と「延長線」が並列されていると解され,材料の供給される位置が「延長線の(下側を含む)近傍」よりも下方に降下する前に開始される必要がある。したがって,流動ホッパーへの材料の輸送は,遅くとも混合済み材料の充填レベルが延長線の近傍(すなわち,近傍の最下点)よりも下方に降下する前に開始すればよいと解される。

イ号製品についてみると,前記1【原告の主張】(3)のとおり,動作iは構成要件1Bを充足する。

(3) イ号製品が,本件特許発明1に係る方法の使用にのみ用いる物であることイ号製品は,被告からイ号製品を購入した顧客において,本件特許発明1に係る方法の使用にのみ用いる物であり,ほかの用途を有しない。

【被告の主張】

以下のとおり,イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対する特許法101条4号の間接侵害は成立しない。

(1) イ号製品の動作

イ号製品の構成及び動作は,別紙イ号製品説明書(被告主張)記載1から3までのとおりである。

(2) 構成要件充足性

イ号製品のみでは,「混合」(構成要件1A-2,1A-3,1B及び1C)を行わない。

また,前記1【被告の主張】(3)によると,イ号製品は,「前記混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方に降下する前に開始する」という動作(構成要件1B)を行わない。

(3) イ号製品が,本件特許発明1に係る方法の使用にのみ用いる物であること否認ないし争う。

3  争点3(ロ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足するか)について

【原告の主張】

以下のとおり,ロ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足する。

(1) ロ号製品の構成

被告は,平成24年頃から,イ号製品を別の装置と組み合わせて,ロ号製品を,業として,生産し,譲渡し,譲渡の申出をしている。

ロ号製品の構成は,別紙ロ号製品目録記載のとおりである。

(2) 構成要件充足性

前記1【原告の主張】のとおり,イ号製品は本件特許発明2の各構成要件を充足し,ロ号製品は,イ号製品に構成gを組み合わせたものであるから,本件特許発明2の各構成要件を充足する。

なお,構成gを組み合わせたことにより,必然的にイ号製品部分で混合が行われることになる。

【被告の主張】

否認ないし争う。

4  争点4(ロ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対する特許法101条4号の間接侵害が成立するか)について

【原告の主張】

以下のとおり,ロ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対する特許法101条4号の間接侵害が成立する。

(1) ロ号製品の動作

ロ号製品の動作は,別紙ロ号製品目録記載のとおりである。

(2) 構成要件充足性

前記2【原告の主張】のとおり,イ号製品の動作は本件特許発明1の各構成要件を充足し,ロ号製品は,イ号製品に構成gを組み合わせたものであるから,その動作は本件特許発明1の各構成要件を充足する。

なお,構成gを組み合わせたことにより,必然的にイ号製品部分で混合が行われることになる。

(3) ロ号製品が,本件特許発明1に係る方法の使用にのみ用いる物であることロ号製品は,被告からロ号製品を購入した顧客において,本件特許発明1に係る方法の使用にのみ用いる物であり,ほかの用途を有しない。

【被告の主張】

否認ないし争う。

5  争点5(損害額)について

【原告の主張】

イ号製品1台につき,販売価格は17万3000円,製造原価は4万9000円と推測され,被告がイ号製品1台を販売することによって得る利益は,12万4000円を下らないと推測される。

被告は,平成23年8月から平成25年3月まで,少なくとも850台の乾燥機を販売し,そのうちの8割の乾燥機にオプションとしてイ号製品が装着されたと推測され,被告は,上記の期間に,少なくとも680台のイ号製品を販売した。

したがって,原告は,被告のイ号製品販売によって,少なくとも8432万円(12万4000円×680台)の損害を被ったと推定される。

【被告の主張】

否認ないし争う。

第4当裁判所の判断

イ号製品は,本件特許発明2の構成要件2Eを充足せず,イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対する特許法101条4号の間接侵害は成立しない。その結果,ロ号製品についても,本件特許発明2の構成要件を充足せず,ロ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対する間接侵害は成立しない。

以下,その理由を説明する。

1  争点1(イ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足するか)について以下のとおり,イ号製品は,本件特許発明2の構成要件2Eを充足しない。

(1)  本件明細書の記載

本件各特許発明に関し,本件明細書には,概ね以下の記載がある(甲2~4)。

ア 発明の属する技術分野

本件各特許発明は,プラスチック成形材料,医薬品材料,加工食品材料等の粉粒体を混合するとともに,該粉粒体に付着している微粉(ダストも含む広義のものをいう。)を除去する,粉粒体の混合及び微粉除去方法とその装置に関するものである(【0001】)。

イ 従来の技術,発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段

従来の粉粒体の混合装置は,輸送管を介して材料供給源と接続した混合ホッパーに,ガス導管を介して吸引空気源を接続し,前記混合ホッパーの出入口に接続された材料の排出導通路には下方から上方に向けて上り勾配の輸送短管を接続するとともに,排出導通路の軸線と輸送短管の軸線とが交差する角を鋭角とし,さらに前記排出導通路の下端部には中程位置にレベル計を設けたチャージホッパー(一時貯留ホッパー)を接続している。 このような構成によって,吸引空気源の気力により混合すべき材料を前記輸送短管を介して混合ホッパー内に吸引輸送するとともに混合し,その混合済み材料は前記チャージホッパー内へ落下するようにしてなるものである(【0003】)。

従来の混合装置によれば,一時貯留ホッパー(チャージホッパー)には中程位置にレベル計を設けており,成形機が材料を消費して材料のレベルがレベル計の位置より下方に至れば混合ホッパーへの次回材料の輸送が開始されるようになっている。すなわち,次回材料が輸送される時には,輸送短管の出口とレベル計の位置との間には空間ができた状態になっている。そのような状態で輸送が開始されると,材料の大部分は混合ホッパーへ吸引輸送されるものの,材料の一部は未混合のまま一時貯留ホッパーへ直接に落下してしまうという問題が生じていた(【0005】)。

本件各特許発明は,上記の問題を解消するために提案された発明であって,材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ直接に送られるのを防止することを目的としており(【0008】),本件特許発明2は,本件特許発明1の方法を実施する装置の発明である(【0011】)。なお,本件各特許発明において,横向き管とは縦向き管に対して任意の角度で交差する管ということであり,上向き,下向き,水平等いずれの方向のものも含まれるものとし,交差する角度には限定されないものとする(【0012】)。

ウ 作用

本件特許発明1の方法によれば,材料は吸引空気源の吸引気力により流動ホッパー内へ吸引輸送されて混合され,吸引空気源が停止すると一時貯留ホッパーへ落下する。その際,1回目の吸引輸送時には一時貯留ホッパー内はもちろんのこと,横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方の縦向き管は空の状態になっている。このため,材料の大部分は流動ホッパー内ヘ吸引輸送されるものの,材料の一部はその重力により空状態の一時貯留ホッパー内へ未混合のまま落下する(【0015】)。このようにして,一時貯留ホッパーの下方には未混合の材料が混じってしまうが,この1回目の材料は後工程(成形機など)の調整運転用材料として消費され,次回の材料は第1回目の材料のレベルが横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方に落下する前に開始されるものであるから,2回目以降の吸引輸送においては,横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方には材料が充填された状態になっている。従って,吸引輸送される材料はその充填された材料によって一時貯留ホッパーへの落下は阻止され,未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下するという問題が解消する(【0016】)。

本件特許発明2の装置によれば,供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも上方位置には,材料の充填レベルを検出するためのレベル計が設けられている。すなわち,材料の吸引輸送を,充填レベルが横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方に落下する前に開始する際のその開始時点は,該延長線よりも上方に設けられたレベル計によって正確に捉えることができるようになっている。従って,この装置では材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下するということはない(【0017】)。そして,レベル計が前記延長線の線上に設けられている場合には,その延長線よりも上方は空の状態になっているので何らの抵抗もなくスムーズに吸引輸送される。また,レベル計が該延長線よりも上方位置に設けられている場合には,該延長線の位置とレベル計との間には材料が充填された状態になっているが,その充填層は吸引空気の気力により供給管からの材料と一緒に流動ホッパーへ吸引されるものであるから吸引輸送に支障を来すことはない(【0018】)。

エ 発明の実施の形態

横向き管から供給される粉粒体(材料)の充填量(供給量)を検出するため,横向き管における最下面の延長線の近傍位置または該延長線より上方位置には,レベル計が設けてある(【0030】)。レベル計を中間管の上部の位置に設けた場合は,材料の充填レベルがレベル計の位置まで降下すると,次回材料の吸引輸送が開始され,吸引輸送される材料は延長線とレベル計との間にある材料と一緒に流動ホッパーに送られ混合される。そして,混合された材料は吸引が停止すると,残っている前回材料の上に落下して積み増しされ,流動ホッパーの下方にも貯留された状態になる。貯留された材料は一時貯留ホッパーの下方から成形機等に順次送られて消費され,材料の充填レベルがレベル計の位置まで落下すると次回の吸引輸送が開始されるようになっており,これが繰り返される(【0031】)。

レベル計を延長線近くに設けた場合にも,材料の充填レベルがレベル計の位置まで降下すると,次回材料の吸引輸送が開始される。この場合は,延長線の上方に材料がない状態で開始される。そして,前記中間管の位置に設けた場合と同様に,混合された材料は吸引が停止すると,残っている前回材料の上に落下して積み増しされ,流動ホッパーの下方にも貯留された状態になる。貯留された材料は一時貯留ホッパーの下方から成形機等に順次送られて消費され,材料の充填レベルがレベル計の位置まで降下すると次回の吸引輸送が開始されるようになっており,これが繰り返される(【0032】)。

このように,レベル計は延長線より近傍又は上方の位置に設けているので,延長線より下方は常に満杯の状態になっており,吸引輸送される材料が未混合のままで一時貯留ホッパーへ落下するような現象は生じない(【0033】)。

オ その他の変形例

レベル計は,横向き管における最下面の延長線の近傍位置が好ましいものであり,その近傍位置とは延長線より少しばかり下方位置であってもよいことを意味する(【0049】)。

カ 発明の効果

本件特許発明1によれば,材料の吸引輸送は1回目の材料の充填レベルが横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方に降下する前に開始されるものであるから,横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方には材料が充填された状態になっていて,吸引輸送される材料はその充填された材料によって一時貯留ホッパーへの落下が阻止されるものであり,未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下するという問題は解消する(【0053】)。

本件特許発明2によれば,供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも上方位置には,材料の充填レベルを検出するためのレベル計が設けられているものであるから,材料を吸引輸送する際の開始はレベル計からの信号によって正確に捉えることができ,材料のレベルが横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方に降下する前に開始することができるようになっているので,材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下するという現象を防止した装置が提供できる(【0054】)。

(2)  「横向き管における最下面の延長線」

ア 請求項1には,「混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍または延長線よりも下方に降下する前に」,流動ホッパーへの材料の輸送が開始する旨が記載されており(本件特許発明1の構成要件1B),「延長線」は,材料輸送を開始する際に必要とされる,混合済み材料の充填レベルの基準となるものである。請求項2には,「横向き管における最下面の延長線の近傍位置または該延長線より上方位置に,材料の充填レベルを検出するためのレベル計を設け」る旨が記載されており(本件特許発明2の構成要件2E),請求項1の上記の記載と併せ読むと,「延長線」は,材料輸送を開始する際に必要とされる,混合済み材料の充填レベルを検出するためのレベル計が設けられる位置の基準ともなるものである。

もっとも,請求項1及び2の記載のみからは,「横向き管の最下面」,「延長線」の意味が明らかではない。横向き管は,上向き,下向き等の方向のものをも含むところ,本件明細書では,横向き管が水平である場合の「延長線」が図示されているのみで,上向きや下向きの場合の「延長線」は図示されていない。そうすると,横向き管が上向きや下向きの場合に,「最下面」がどの面を指すかという点や,「延長線」の始点,方向が明らかとはいえない。

イ そこで,前記(1)で指摘した本件明細書の記載内容を検討すると,従来の混合装置では,輸送短管の出口とレベル計との間に空間ができていたために,材料の一部が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下していたところ,この問題を解消するため,本件各特許発明では,輸送開始時に必要とされる充填レベルに達するまで混合済み材料を充填させ,既に充填された混合済み材料によって,吸引輸送される材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下するのを阻止するようにしている。

また,充填レベルは,混合済み材料が縦向き管のどの高さまで貯留したかを示すものであるから,輸送開始時を定める充填レベルの基準は,混合済み材料の上表面によって示される必要がある(混合済み材料の上表面は,必ずしも正確な水平面とは限らないが,レベル計によって,その上表面の位置が判断される。)。

充填レベルが,横向き管が縦向き管に接する出口の下端よりも下方にあって,充填レベルと横向き管の出口の下端との間に空間が生じていると,輸送された材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下することになる。そのため,一時貯留ホッパーへの落下を防ぐには,材料の輸送が開始する時点で,横向き管が縦向き管に接する出口の下端に達するまで,混合済み材料が充填されている必要がある。

したがって,輸送開始時を定める充填レベルの基準となり,充填レベルを検出するためのレベル計の位置の基準ともなる「横向き管における最下面の延長線」とは,横向き管が縦向き管と接する出口の下端から,水平方向に向かって延長した線を意味すると解される。

(3)  「延長線の近傍位置または該延長線より上方位置」(レベル計の位置)

レベル計は,材料の吸引輸送の開始時点を正確に捉えるために設けられ,混合済み材料の充填レベルがレベル計の位置まで降下すると,吸引輸送が開始する。

「近傍」には,「近所,近辺」(乙11),「近いところ,付近」(乙12)という意味がある。このような意味に,本件明細書において,近傍位置が延長線より少しばかり下方位置であってもよい旨が指摘されることを併せ考えれば,「延長線の近傍位置」は,延長線の上側だけでなく下側も含むと解される。

もっとも,前記のとおり,輸送開始時には,混合済み材料が「延長線」(横向き管が縦向き管と接する出口の下端から,水平方向に向かって延長した線)に達するまで充填されている必要があり,輸送開始時点を正確に捉えるためのレベル計は,充填レベルが「延長線」まで達していることを検知できなければならない。そのため,レベル計それ自体は「延長線」よりも下側に設置されてもよいが,充填レベルの検知位置が「延長線」上にある必要があり,少なくとも,レベル計の検知面の最上部が「延長線」に接している必要がある。

したがって,レベル計が「延長線の近傍位置または該延長線より上方位置」に設けられるとは,レベル計が,延長線より上方に設けられること,延長線上に設けられること,又は,延長線より下方ではあるものの,レベル計の検知面の最上部が延長線に接する位置に設けられることを意味すると解される。

(4)  イ号製品へのあてはめ

イ号製品を撮影した写真(乙13)をみると,レベル計は,「横向き管における最下面の延長線」(横向き管が縦向き管と接する出口の下端から,水平方向に向かって延長した線)よりも下方に設けられており,検知面の最上部が「延長線」に接してもいない。イ号製品の図面(乙16,18)によれば,「延長線」とレベル計検知部の検知面の最上部との距離は56.5mm であり,レベル計を最も高い位置に変更した場合でも,「延長線」とレベル計検知部の検知面の最上部との距離は28.2mm である。すなわち,イ号製品の構成に関して,原告が主張するところの別紙イ号製品説明書(原告主張)の図面を前提とし,レベル計を固定したブラケットの上面が上側のフランジに接するまでレベル計の位置を高くしたとしても,イ号製品の構造上,「延長線」とレベル計検知部の検知面の最上部との間には隔たりがあることが認められる。

したがって,イ号製品のレベル計は,「延長線」より下方にあり,かつ,検知面の最上部が「延長線」に接していないから,「延長線の近傍位置または該延長線より上方位置」に設けられているとはいえない。

以上によれば,イ号製品は,本件特許発明2の構成要件2Eを充足しない。

2  争点2(イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対する特許法101条4号の間接侵害が成立するか)について

本件特許発明2は本件特許発明1の方法を実施する装置の発明であるところ,前記1のとおり,イ号製品は本件特許発明2の構成要件2Eを充足しない。

このことは,原告の主張するイ号製品の動作については,その前提となる構成を欠くことを意味する。つまり,レベル計の検知面の最上部が「延長線」に接する位置より下に設けられていることを意味し,その結果,混合済み材料が流動ホッパーから延伸部(一時貯留ホッパーに相当)へと降下するに当たり,流動ホッパーへの材料の吸引輸送が,上記混合済み材料の充填レベルが「供給管の横向き管における最下面の延長線」よりも下方に降下する前に開始するとはいえないこととなる。さらに,前記1(4)で認定したレベル計の位置からすると,上記「延長線」の近傍を基準とした場合についても同様のことがいえる。

なお,原告は,イ号製品で,混合済み材料が,上記「延長線」の近傍よりも下方に降下する前に流動ホッパーへの材料の吸引輸送が開始されている証拠として,甲第8から第10号証を提出する。これによると,レベル計の位置が延伸部の最上部に設定されていることが認められるが,イ号製品を購入した顧客が,レベル計の位置を上記のように設定した上で使用していることを認めるに足りる証拠はない。結局,イ号製品の動作は,本件特許発明1の構成要件1Bを充足すると認めることはできない。

したがって,イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対する特許法101条4号の間接侵害は成立しない。

3  争点3(ロ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足するか)及び争点4(ロ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対する特許法101条4号の間接侵害が成立するか)について

原告の主張(別紙ロ号製品目録)によれば,ロ号製品は,ホッパー装置(イ号製品)と材料供給装置によって構成されるところ,前記1及び2を踏まえると,ロ号製品についても,本件特許発明2の構成要件を充足せず,ロ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対する特許法101条4号の間接侵害は成立しない。

4  イ号製品及びロ号製品の生産,販売の中止

前記第2の1(4)のとおり,被告が業としてイ号製品の生産等を行ったのは,平成25年3月までである。ロ号製品は,イ号製品に別の装置を組み合わせたものであるから,被告が,ロ号製品を,業として生産し,譲渡し又は譲渡の申出をしていたのも,平成25年3月までと認めるのが相当である。

5  結論

以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求にはいずれも理由がない。

よって,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山田陽三 裁判官 松阿彌隆 裁判官 林啓治郎)

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