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大阪地方裁判所 平成26年(行ウ)12号 判決 2015年12月25日

主文

1  豊中市固定資産評価審査委員会が平成25年8月5日付けで原告Aに対してした別紙1物件目録記載1の土地の固定資産課税台帳に登録された平成20年度から平成24年度までの価格についての審査の申出を棄却する旨の各決定をいずれも取り消す。

2  原告Aのその余の請求を棄却する。

3  原告Bの請求を棄却する。

4  訴訟費用は,原告Aに生じた費用の10分の3と被告に生じた費用の20分の5を被告の負担とし,原告Bに生じた費用の全部と被告に生じた費用の20分の4を原告Bの負担とし,その余は原告Aの負担とする。

事実及び理由

第1請求

1  第1事件

豊中市固定資産評価審査委員会が平成25年8月5日付けで原告Aに対してした別紙1物件目録記載1から5までの各土地の固定資産課税台帳に登録された平成20年度から平成24年度までの価格についての審査の申出を棄却する旨の各決定をいずれも取り消す。

2  第2事件

豊中市固定資産評価審査委員会が平成25年8月5日付けで原告Bに対してした別紙1物件目録記載6の土地の固定資産課税台帳に登録された平成20年度から平成24年度までの価格についての審査の申出を棄却する旨の各決定をいずれも取り消す。

第2事案の概要

第1事件は,別紙1物件目録記載1から5までの各土地(以下,それぞれ同目録記載の番号に従い「本件土地1」などという。)を所有する原告Aが,豊中市長が地方税法417条1項の規定により修正して固定資産課税台帳に登録した上記各土地の平成20年度から平成24年度までの各登録価格(同目録記載1から5までの各年度の価格。以下,それぞれ同目録記載の番号に従い「本件土地1修正価格」などという。)を不服として,豊中市固定資産評価審査委員会(以下「審査委員会」という。)に対して審査の申出をしたところ,審査委員会が,いずれについても棄却する旨の決定(以下,併せて「第1事件各決定」という。)をしたことから,被告に対し,第1事件各決定の取消しを求める事案である。

第2事件は,別紙1物件目録記載6の土地(以下「本件土地6」という。)を所有する原告Bが,豊中市長が地方税法417条1項の規定により修正して固定資産課税台帳に登録した本件土地6の平成20年度から平成24年度までの各登録価格(同別紙記載6の各年度の価格。以下「本件土地6修正価格」という。)を不服として,審査委員会に対して審査の申出をしたところ,審査委員会が,いずれについても棄却する旨の決定(以下,併せて「第2事件各決定」という。)をしたことから,被告に対し,第2事件各決定の取消しを求める事案である。

1  関係法令等の定め

(1)  地方税法の定め

ア 固定資産税の課税客体,課税標準等

(ア) 固定資産税は,固定資産に対し,当該固定資産所在の市町村において,固定資産の所有者に課し,その賦課期日は,当該年度の初日の属する年の1月1日とする(342条1項,343条1項,359条)。

(イ) 基準年度(昭和31年度及び昭和33年度並びに昭和33年度から起算して3年度又は3の倍数の年度を経過したごとの年度をいう(341条6号)。以下同じ。)に係る賦課期日に所在する土地に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は,当該土地の基準年度に係る賦課期日における価格(適正な時価をいう(同条5号)。以下同じ。)で土地課税台帳等に登録されたものとし(349条1項),第2年度(基準年度の翌年度をいう(341条7号)。以下同じ。)及び第3年度(第2年度の翌年度(昭和33年度を除く。)をいう(同条8号)。以下同じ。)の固定資産税の課税標準も,原則として,これと同様とするが(349条2項本文,3項本文),特別の事情があるため基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となった価格によることが不適当である場合等においては,第2年度及び第3年度の固定資産税の課税標準は,当該土地に類似する土地の基準年度の価格に比準する価格で土地課税台帳等に登録されたものとする(同条2項ただし書,3項ただし書)。

イ 固定資産の評価及び価格の決定

総務大臣(平成13年1月5日以前は自治大臣。以下同じ。)は,固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続を定め,これを告示しなければならず(388条1項前段),市長村長は,上記の基準等によって固定資産の価格を決定しなければならない(403条1項)。

ウ 公示の日以後における価格等の決定又は修正等

市町村長は,固定資産課税台帳に登録すべき固定資産の価格等を全て登録した旨を公示した日以後において固定資産の登録された価格等に重大な錯誤があることを発見した場合においては,直ちに固定資産課税台帳に登録された類似の固定資産の価格と均衡を失しないように決定された価格等を修正して,これを固定資産課税台帳に登録しなければならず,この場合においては,市町村長は,遅滞なく,その旨を当該固定資産に対して課する固定資産税の納税義務者に通知しなければならない(417条1項)。

(2)  固定資産評価基準(甲15)

総務大臣は,地方税法388条1項前段の基準等として,固定資産評価基準(昭和38年12月25日自治省告示第158号。以下「評価基準」という。)を定めて告示している。

平成18年12月27日総務省告示第684号による改正前の評価基準(以下「平成18年度評価基準」という。),平成21年4月1日総務省告示第225号による改正前の評価基準(以下「平成21年度評価基準」という。)及び平成24年7月27日総務省告示第286号による改正前の評価基準(以下「平成24年度評価基準」という。)は,宅地の評価について,概要,次のとおり定めている。

ア 宅地の評価(第1章第3節一)

宅地の評価は,各筆の宅地について評点数を付設し,当該評点数を評点1点当たりの価額に乗じて各筆の宅地の価額を求める方法による。

イ 評点数の付設(第1章第3節二)

各筆の宅地の評点数は,主として市街地的形態を形成する地域における宅地については,次のとおり,市街地宅地評価法により付設する。

(ア) 宅地の利用状況を基準として商業地区,住宅地区,工業地区等に区分された地区について,その状況が相当に相違する地域ごとに,その主要な街路に沿接する宅地のうちから標準宅地を選定する。

(イ) 標準宅地について,適正な時価を求め,これに基づいて沿接する主要な街路について路線価を付設し,これに比準して主要な街路以外の街路の路線価を付設する。

(ウ) 路線価を基礎として,画地計算法を適用して各筆の宅地の評点数を付設する。この場合において,市町村長は,宅地の状況に応じ,必要があるときは,「画地計算法」の附表等について,所要の補正をして,これを適用する。

ウ 画地計算法(別表第3。乙21~乙23)

各筆の宅地の評点数は,各筆の立地条件に基づき,路線価を基礎とし,1画地の宅地ごとに,①奥行価格補正割合法,②側方路線影響加算法,③二方路線影響加算法及び④不整形地,無道路地,間口が狭小な宅地等評点算出法を適用して求めた評点数によって付設する(別表第3の1)。

1画地は,原則として,土地課税台帳等に登録された1筆の宅地によるが,1筆の宅地又は隣接する2筆以上の宅地について,その形状,利用状況等からみて,これを一体をなしていると認められる部分に区分し,又はこれらを合わせる必要がある場合においては,その一体をなしている部分の宅地ごとに1画地とする(別表第3の2)。

(ア) 奥行価格補正割合法(別表第3の3)

宅地の価額は,道路からの奥行が長くなるに従って,また,奥行が著しく短くなるに従って漸減するものであるので,その一方においてのみ路線に接する画地については,路線価に当該画地の奥行距離に応じ「奥行価格補正率表」(附表1)によって求めた当該画地の奥行価格補正率を乗じて単位地積当たり評点数を求める。

(イ) 不整形地の評点算出法(別表第3の7(1))

a 不整形地(三角地及び逆三角地を含む。)の価額については,整形地に比して一般に低くなるものであるので,奥行価格補正割合法等によって計算した単位当たり評点数に「不整形地補正率表」(附表4)によって求めた不整形地補正率を乗じて当該不整形地の単位地積当たり評点数を求める。

b 「不整形地補正率表」(附表4)は,地区区分ごとに蔭地割合(評価対象画地を囲む正面路線に面する矩形又は正方形の土地である想定整形地の地積から評価対象画地の地積を控除したものを想定整形地の地積で除したもの(注1))に応じて補正率を定めているが(以下「蔭地割合方式」という。),画地の地積が大きい場合等にあっては,近傍の宅地の価額との均衡を考慮し,不整形地補正率を修正して適用するものとしている(注2)。また,蔭地割合方式によらない場合の不整形地補正率の適用に当たっては,当該画地が所在する用途地区の標準的な画地の形状・規模からみて,不整形度(「普通」,「やや不整形」,「不整形」,「相当に不整形」及び「極端に不整形」の5段階)を判断して,不整形地補正率を定めることができるものとしている(注3。以下「達観方式」という。)。

c 不整形地について「間口狭小補正率表」(附表5),「奥行長大補正率表」(附表6)の適用があるときは,間口狭小補正率,奥行長大補正率,両補正率を乗じた結果の率,間口狭小補正率と不整形地補正率を乗じた結果の率及び不整形地補正率のうち,補正率の小なる率(下限0.60)を乗じて評点数を求める。

(ウ) 無道路地の評点算出法(別表第3の7(2))

原則として,当該無道路地の利用上最も合理的であると認められる路線の路線価に「奥行価格補正率表」(附表1)によって求めた補正率,「通路開設補正率表」(附表9)によって求めた補正率及びその無道路地の近傍の宅地との均衡を考慮して定める無道路地補正率(下限0.60)を乗じて1平方メートル当たりの評点数を求める。

(エ) 間口が狭小な宅地等の評点算出法(別表第3の7(3))

間口が狭小な画地又は奥行が長大な画地(不整形地及び無道路地は除く。)については,それぞれ「間口狭小補正率表」(附表5)又は「奥行長大補正率表」(附表6)によって求めた補正率によって,その評点数を補正する。

エ 経過措置

(ア) 宅地の評価において,標準宅地の適正な時価を求める場合には,当分の間,基準年度の初日の属する年の前年の1月1日の地価公示法による地価公示価格等から求められた価格等を活用し,これらの価格の7割を目途として評定する(第1章第12節一)。

(イ) 市町村長は,基準年度の初日の属する年の前年の1月1日から7月1日までの間に標準宅地等の価額が下落したと認める場合には,評価額に所定の方法により修正を加えることができる(第1章第12節二)。

(3)  豊中市固定資産(土地)評価要領(甲16,乙24~26)

ア 豊中市長は,評価基準に基づき,固定資産の評価の細部の取扱いについて,固定資産(土地)評価要領(平成18年度)(以下「平成18年度評価要領」という。),固定資産(土地)評価要領(平成21年度)(以下「平成21年度評価要領」という。)及び固定資産(土地)評価要領(平成24年度)(以下「平成24年度評価要領」といい,平成18年度評価要領及び平成21年度評価要領と併せて「本件各評価要領」という。)を,それぞれ定めている。

イ 本件各評価要領は,評価基準の定める「所要の補正」(前記(2)イ(ウ))として,建築基準法上の道路に接していない宅地等,接しているが間口が2m以上でない宅地等,他人地通行の承諾を得なければ建築可能とならない宅地等について,建築不可等補正率を乗じて補正する旨定めている。そして,具体的な補正率として,「建築不可のため,更地状態。宅地とせず雑種地とし,造成費を控除す」べき画地については0.7,「既存家屋があり,建築不可」である画地については0.8,「建築可だが,他人地通行の承諾が必要,間口が2m未満等」の画地については0.9を乗じる旨定めている。

2  前提となる事実

以下の事実は,当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。

(1)  当事者等

ア 原告Aは,本件土地1から本件土地5までの所有者であり,これらの土地に係る固定資産税の納税義務者である。(甲1~3)

イ 原告Bは,本件土地6の所有者であり,この土地に係る固定資産税の納税義務者である。(甲4)

(2)  土地の位置関係等

ア 本件土地1から本件土地6までは(以下「本件各土地」という。),いずれも都市計画区域に位置する市街地的形態を形成する地域における宅地であって,地区区分は併用住宅地区に分類されており,その位置関係は別紙2のとおりである。(甲24の2,乙10,11)

イ 本件各土地は,本件土地3を除き,北側においてCの所有する別紙1物件目録記載7及び8の土地(以下,併せて「本件他人地」という。)と沿接している。本件他人地は,アスファルトで舗装され,外観上は北側で接する豊中市道○号線(以下「本件市道」という。)の道路敷の一部となっている。(甲17,19,20,22,28,乙2,7,16)

ウ 本件市道は,昭和55年3月31日に道路法8条1項に基づく認定(以下「市道認定」という。)を受けた最大幅員3.4m,最小幅員2.6mの市道である。本件市道は,幅員が4mに満たないため,建築基準法42条1項1号の道路(道路法による道路であって幅員4m以上のもの)には該当しないが,同条2項の指定により同条1項の道路とみなされている(以下,同条1項の道路を「建築基準法上の道路」といい,同条2項の指定により建築基準法上の道路とみなされる道路を「2項道路」という。)。2項道路は,その中心線からの水平距離2mの線が道路の境界線とみなされるため,本件市道の建築基準法上の境界線は,本件市道の道路法上の境界線の外側にあり,本件市道と沿接している本件他人地の一部又は全部を含んでいるが,その正確な位置関係は不明である。(甲17,18,28,乙7,16~20,27の1・2)

エ 本件土地1,本件土地4及び本件土地5は建築物の敷地として,本件土地2,本件土地3及び本件土地6は原告Aが経営する駐車場の敷地としてそれぞれ利用されている。(甲24の2,26,27,乙2,10,11,16)

(3)  本件訴訟に至る経緯

ア 第1事件

豊中市長は,平成24年9月6日付けで,地方税法417条1項の規定により,平成20年度から平成24年度までの本件土地1から本件土地5までの各登録価格の修正をして,修正後の各価格(本件土地1修正価格~本件土地5修正価格)を固定資産課税台帳に登録し,その旨を原告Aに通知した。(甲24の1~17)

原告Aは,上記修正後の各価格を不服とし,同年10月17日,審査委員会に対して各審査申出をしたところ,審査委員会は,平成25年8月5日付けで,これらを棄却する第1事件各決定をした。(甲5~9)

そこで,原告Aは,平成26年1月29日,第1事件各決定の取消しを求め,本件訴訟を提起した。(顕著な事実)

イ 第2事件

豊中市長は,平成24年9月6日付けで,地方税法417条1項の規定により,平成20年度から平成24年度までの本件土地6の各登録価格の修正をして,修正後の各価格(本件土地6修正価格)を固定資産課税台帳に登録し,その旨を原告Bに通知した。(甲24の1・2・18~22)

原告Bは,上記修正後の各価格を不服とし,同年10月17日,審査委員会に対して各審査申出をしたところ,審査委員会は,平成25年8月5日付けで,これらを棄却する第2事件各決定をした。(甲10~14)

そこで,原告Bは,平成26年1月29日,第2事件各決定の取消しを求め,本件訴訟を提起した。(顕著な事実)

第3争点及び争点に対する当事者の主張

本件の争点は,本件各土地の評価の適否(評価の方法が評価基準に従ったものであるか。具体的には,本件土地1との関係では,不整形地補正率,間口狭小補正率,奥行長大補正率,無道路地補正率及び建築不可等補正率に係る評価の適否,本件土地2との関係では,無道路地補正率及び建築不可等補正率に係る評価の適否,本件土地3との関係では,建築不可等補正率に係る評価の適否,本件土地4との関係では,間口狭小補正率,奥行長大補正率,無道路地補正率及び建築不可等補正率に係る評価の適否,本件土地5との関係では,間口狭小補正率,奥行長大補正率,無道路地補正率及び建築不可等補正率に係る評価の適否,本件土地6との関係では,間口狭小補正率,奥行長大補正率,無道路地補正率及び建築不可等補正率に係る評価の適否)であり,争点に関する当事者の主張は以下のとおりである。

1  本件土地1の評価の適否

(1)  不整形地補正率について

(被告の主張)

そもそも,評価基準が不整形地について不整形地補正率により評点数を補正することとした趣旨は,不整形地は,画地の形状が悪いため,画地の全部を宅地として十分に利用することができず,整形地に比べて価額が低くなるからである。そうだとすると,画地の全部が宅地として十分に利用することができないと認められない場合には,不整形地補正率により評点数を補正する必要はないと解するのが相当である。

これを本件についてみると,本件土地1は,その東側部分(南北方向の距離が短い部分)に建築物が建築されており,その西側部分(南北方向の距離が長い部分。以下「本件土地1西側部分」という。)は,本件市道へ至る通路として利用されるとともに,原告Aが経営する駐車場の敷地(本件土地2及び本件土地3)との関係でも,本件市道へ至る通路として利用されている。以上の利用状況に照らせば,本件土地1は,本件土地1西側部分も含めて宅地として有効に利用されているから,画地の形状が悪いことによって画地の全部を十分に利用することができないとは認められない。

したがって,本件土地1については,不整形地補正率により評点数を補正する必要はない。

(原告Aの主張)

本件土地1は,典型的な不整形地とされている逆L字形地である。そして,その不整形度は,本件土地1が所在する併用住宅地区の標準的な画地の形状・規模からみて評価基準別表第3の3附表4(以下,単に「附表4」という。)の達観方式における不整形度にいう「不整形」に該当すると判断される。したがって,本件土地1については,併用住宅地区の「不整形」に該当する画地に係る不整形地補正率0.85を適用して,その評点数を求めるべきである。

(2)  間口狭小補正率について

(被告の主張)

本件土地1の間口距離は,本件土地1が本件市道及びその道路敷の一部となっている本件他人地に接する部分の長さである5.29mである。したがって,本件土地1については,評価基準別表第3の3附表5(以下,単に「附表5」という。)における併用住宅地区の上記間口距離の画地に係る間口狭小補正率0.97を適用して,その評点数を求めるべきである。

なお,原告Aは,本件他人地と接する部分の長さを間口距離に含めるべきではないと主張する。しかしながら,評価基準が間口が狭小な画地について間口狭小補正率により評点数を補正することとした趣旨は,間口が狭小な画地は,進入経路の確保が困難なため,宅地としての利用価値が減少するからである。かかる趣旨に照らせば,本件他人地の現況が道路である以上,本件他人地と接する部分の長さについても間口距離に含めるべきである。

(原告Aの主張)

本件土地1の間口距離は,本件土地1が本件市道の道路法上の境界線に接する部分の長さである1.24mである。したがって,本件土地1については,附表5における併用住宅地区の上記間口距離の画地に係る間口狭小補正率0.90を適用して,その評点数を求めるべきである。

なお,被告は,本件他人地が本件市道の道路敷の一部となっていることを理由に,本件他人地と接する部分の長さを間口距離に含めているが,本件他人地は市道認定を受けておらず,道路敷の一部として事実上使用されているものにすぎないから,本件他人地と接する部分の長さを間口距離に含めることは相当でない。

(3)  奥行長大補正率について

(被告の主張)

本件土地1の奥行距離は20.70m,間口距離は前記(2)の(被告の主張)のとおり5.29mであるから,奥行距離を間口距離で除した値は3.91となる。したがって,本件土地1については,評価基準別表第3の3附表6(以下,単に「附表6」という。)における併用住宅地区の上記除した値の画地に係る奥行長大補正率0.99を適用して,その評点数を求めるべきである。

(原告Aの主張)

本件土地1の奥行距離は20.70m,間口距離は前記(2)の(原告Aの主張)のとおり1.24mであるから,奥行距離を間口距離で除した値は16.69となる。したがって,本件土地1については,附表6における併用住宅地区の上記除した値の画地に係る奥行長大補正率0.90を適用して,その評点数を求めるべきである。

(4)  無道路地補正率について

(被告の主張)

そもそも,画地が無道路地としての取扱いを受けるのは,出入口が判然としない場合又は全くない場合のみであるところ,本件土地1は,本件市道及びその道路敷の一部となっている本件他人地に5.29m接しているのであるから,無道路地としての取扱いを要しないことは明らかである。したがって,本件土地1については,無道路地補正率により評点数を補正する必要はない。

なお,原告Aは,本件土地1について,建築基準法43条1項本文が規定する義務(以下「接道義務」という。)を満たしておらず,建築物の敷地とすることができない土地であるから,無道路地と評価すべきであると主張する。しかしながら,本件市道の建築基準法上の境界線は,本件市道の道路法上の境界線の外側にあって,本件他人地の一部又は全部を含んでいるため,本件土地1が本件市道の建築基準法上の境界線に2m以上接していないかどうかは不明確であるし,本件土地1と本件他人地を併せて建築物の敷地とすることで接道義務を満たすことも可能なのであるから,原告Aの主張はその前提を欠き失当である。

(原告Aの主張)

本件土地1は,本件市道との間に本件他人地が介在しており,本件市道の建築基準法上の境界線に2m以上接していないため,接道義務を満たしておらず,これを建築物の敷地とすることができない。このような建築物の建築が不可能である土地は,無道路地と評価すべきである。このことは,相続税等の財産評価に係る通達である財産評価基本通達(甲21)が無道路地の評価について,「無道路地とは,路線に接しない宅地(接道義務を満たしていない宅地を含む。)をいう。」と規定していることからも明らかである。したがって,本件土地1については,無道路地補正率0.60を適用して,その評点数を求めるべきである。

(5)  建築不可等補正率について

(被告の主張)

本件土地1は,前記(4)の(被告の主張)のとおり,接道義務を満たすことが可能であり,建築物の敷地とすることができるが,他人地通行の承諾を得なければならないなど,土地利用に何らかの制約が生ずる可能性があることから,本件各評価要領における「建築可だが,他人地通行の承諾が必要,間口が2m未満等」の画地に係る建築不可等補正率0.90を適用して,その評点数を求めるべきである。

(原告Aの主張)

前記(4)の(原告Aの主張)のとおり,本件土地1は建築物の建築が不可能な土地であり,原告Aの住宅が建っているから,本件土地1については,本件各評価要領における「既存家屋があり,建築不可」の画地に係る建築不可等補正率0.80を適用して,その評点数を求めるべきである。

(6)  本件土地1修正価格について

(被告の主張)

前記(1)~(5)の(被告の主張)を前提として評価基準によって決定される本件土地1の価格は別紙3の第1のとおりである。したがって,これを上回るものではない本件土地1修正価格は適法である。

(原告Aの主張)

前記(1)~(5)の(原告Aの主張)を前提として評価基準によって決定される本件土地1の価格は別紙4の第1のとおりである。したがって,これを上回る本件土地1修正価格は違法である。

2  本件土地2の評価の適否

(1)  無道路地補正率について

(被告の主張)

そもそも,画地が無道路地としての取扱いを受けるのは,出入口が判然としない場合又は全くない場合のみであるところ,本件土地2は,本件市道の道路敷の一部となっている本件他人地に接しているのであるから,無道路地としての取扱いを要しないことは明らかである。したがって,本件土地2については,無道路地補正率により評点数を補正する必要はない。

(原告Aの主張)

本件土地2は,本件市道の道路法上の境界線に一切接していないのであるから,無道路地と評価すべきである。したがって,本件土地2については,無道路地補正率0.60を適用して,その評点数を求めるべきである。

(2)  建築不可等補正率について

(被告の主張)

本件土地2については,他人地通行の承諾を得なければならないなど,土地利用に何らかの制約が生ずる可能性があることから,本件各評価要領における「建築可だが,他人地通行の承諾が必要,間口が2m未満等」の画地に係る建築不可等補正率0.90を適用して,その評点数を求めるべきである。

なお,原告Aは,本件土地2について,本件市道との間に本件他人地が介在しており,接道義務を満たしていないため,建築物の敷地とすることができない土地であると主張する。しかしながら,本件市道の建築基準法上の境界線は,本件市道の道路法上の境界線の外側にあって,本件他人地の一部又は全部を含んでいるため,本件土地2が本件市道の建築基準法上の境界線に2m以上接していないかどうかは不明確であるし,本件土地2と本件他人地を併せて建築物の敷地とすることで接道義務を満たすことも可能なのであるから,本件土地2を建築物の敷地とすることができないとの原告Aの主張はその前提を欠き失当である。

(原告Aの主張)

本件土地2は,本件市道との間に本件他人地が介在しており,本件市道の建築基準法上の境界線に2m以上接していないため,接道義務を満たしておらず,これを建築物の敷地とすることができない。したがって,本件土地2については,少なくとも本件各評価要領における「既存家屋があり,建築不可」の画地に係る建築不可等補正率0.80を適用して,その評点数を求めるべきである。

(3)  本件土地2修正価格について

(被告の主張)

前記(1),(2)の(被告の主張)を前提として評価基準によって決定される本件土地2の価格は別紙3の第2のとおりである。したがって,これを上回るものではない本件土地2修正価格は適法である。

(原告Aの主張)

前記(1),(2)の(原告Aの主張)を前提として評価基準によって決定される本件土地2の価格は別紙4の第2のとおりである。したがって,これを上回る本件土地2修正価格は違法である。

3  本件土地3の評価の適否

(1)  建築不可等補正率について

(被告の主張)

本件土地3は,無道路地であるから,その評点数を求めるに当たっては,無道路地補正率が適用されるところ,無道路地補正率は,無道路地が接道義務を満たさず,建築物の敷地とすることができないことに伴う価格の低下を踏まえたものであるから,無道路地補正率が適用される本件土地3については,これと趣旨を同じくする建築不可等補正率は適用されないと解するのが相当である。したがって,本件土地3については,建築不可等補正率により評点数を補正する必要はない。

(原告Aの主張)

本件土地3は,建築基準法上の道路に2m以上接していないため,接道義務を満たしておらず,これを建築物の敷地とすることができない。したがって,本件土地3については,少なくとも本件各評価要領における「既存家屋があり,建築不可」の画地に係る建築不可等補正率0.80を適用して,その評点数を求めるべきである。

なお,被告は,建築不可等補正率は,無道路地補正率と趣旨を同じくするものであるから,無道路地補正率が適用される場合には,建築不可等補正率は適用されないと主張する。しかしながら,上記両補正率は,補正率の値が異なることからも明らかなように,その目的を異にするものであると解されるから,被告の主張は,その前提に誤りがあり,失当である。

(2)  本件土地3修正価格について

(被告の主張)

前記(1)の(被告の主張)を前提として評価基準によって決定される本件土地3の価格は別紙3の第3のとおりである。したがって,これを上回るものではない本件土地3修正価格は適法である。

(原告Aの主張)

前記(1)の(原告Aの主張)を前提として評価基準によって決定される本件土地3の価格は別紙4の第3のとおりである。したがって,これを上回る本件土地3修正価格は違法である。

4  本件土地4の評価の適否

(1)  間口狭小補正率について

(被告の主張)

本件土地4の間口距離は,本件土地4が本件市道の道路敷の一部となっている本件他人地に接する部分の長さである11.05mである。したがって,本件土地4については,附表5における併用住宅地区の上記間口距離の画地に係る間口狭小補正率が1.00となるから,間口狭小補正率により評点数を補正する必要はない。

なお,間口距離を判断するに当たり,本件他人地と接する部分の長さを含めるべきであることは,前記1(2)の(被告の主張)のとおりである。

(原告Aの主張)

本件土地4は,本件市道の道路法上の境界線に一切接しておらず,幅員2mの通路を開設する必要があるから,本件土地4の間口距離は2mとみるべきである。したがって,本件土地4については,附表5における併用住宅地区の上記間口距離の画地に係る間口狭小補正率0.90を適用して,その評点数を求めるべきである。

なお,間口距離を判断するに当たり,本件他人地と接する部分の長さを含めることが相当でないことは,前記1(2)の(原告Aの主張)のとおりである。

(2)  奥行長大補正率について

(被告の主張)

本件土地4の奥行距離は12.30m,間口距離は前記(1)の(被告の主張)のとおり11.05mであるから,奥行距離を間口距離で除した値は3未満となる。したがって,本件土地4については,附表6における併用住宅地区の上記除した値の画地に係る奥行長大補正率が1.00となるから,奥行長大補正率により評点数を補正する必要はない。

(原告Aの主張)

本件土地4の奥行距離は12.30m,間口距離は前記(1)の(原告Aの主張)のとおり2mであるから,奥行距離を間口距離で除した値は6.15となる。したがって,本件土地4については,附表6における併用住宅地区の上記除した値の画地に係る奥行長大補正率0.94を適用して,その評点数を求めるべきである。

(3)  無道路地補正率について

(被告の主張)

そもそも,画地が無道路地としての取扱いを受けるのは,出入口が判然としない場合又は全くない場合のみであるところ,本件土地4は,本件市道の道路敷の一部となっている本件他人地に接しているのであるから,無道路地としての取扱いを要しないことは明らかである。したがって,本件土地4については,無道路地補正率により評点数を補正する必要はない。

(原告Aの主張)

本件土地4は,本件市道の道路法上の境界線に一切接していないのだから,無道路地と評価すべきである。したがって,本件土地4については,無道路地補正率0.60を適用して,その評点数を求めるべきである。

(4)  建築不可等補正率について

(被告の主張)

本件土地4については,他人地通行の承諾を得なければならないなど,土地利用に何らかの制約が生ずる可能性があることから,本件各評価要領における「建築可だが,他人地通行の承諾が必要,間口が2m未満等」の画地に係る建築不可等補正率0.90を適用して,その評点数を求めるべきである。

なお,原告Aは,本件土地4について,本件市道との間に本件他人地が介在しており,接道義務を満たしていないため,建築物の敷地とすることができない土地であると主張する。しかしながら,本件市道の建築基準法上の境界線は,本件市道の道路法上の境界線の外側にあって,本件他人地の一部又は全部を含んでいるため,本件土地4が本件市道の建築基準法上の境界線に2m以上接していないかどうかは不明確であるし,本件土地4と本件他人地を併せて建築物の敷地とすることで接道義務を満たすことも可能なのであるから,本件土地4を建築物の敷地とすることができないとの原告Aの主張はその前提を欠き失当である。

(原告Aの主張)

本件土地4は,本件市道との間に本件他人地が介在しており,本件市道の建築基準法上の境界線に2m以上接していないため,接道義務を満たしておらず,これを建築物の敷地とすることができない。このように,本件土地4は,建築物の建築が不可能な土地であり,かつ,建物が建っているから,本件土地4については,本件各評価要領における「既存家屋があり,建築不可」の画地に係る建築不可等補正率0.80を適用して,その評点数を求めるべきである。

(5)  本件土地4修正価格について

(被告の主張)

前記(1)~(4)の(被告の主張)を前提として評価基準によって決定される本件土地4の価格は別紙3の第4のとおりである。したがって,これを上回るものではない本件土地4修正価格は適法である。

(原告Aの主張)

前記(1)~(4)の(原告Aの主張)を前提として評価基準によって決定される本件土地4の価格は別紙4の第4のとおりである。したがって,これを上回る本件土地4修正価格は違法である。

5  本件土地5の評価の適否

(1)  間口狭小補正率について

(被告の主張)

本件土地5の間口距離は,本件土地5が本件市道の道路敷の一部となっている本件他人地に接する部分の長さである4.50mである。したがって,本件土地5については,附表5における併用住宅地区の上記間口距離の画地に係る間口狭小補正率0.97を適用して,その評点数を求めるべきである。

なお,間口距離を判断するに当たり,本件他人地と接する部分の長さを含めるべきであることは,前記1(2)の(被告の主張)のとおりである。

(原告Aの主張)

本件土地5は,本件市道の道路法上の境界線に一切接しておらず,幅員2mの通路を開設する必要があるから,本件土地5の間口距離は2mとみるべきである。したがって,本件土地5については,附表5における併用住宅地区の上記間口距離の画地に係る間口狭小補正率0.90を適用して,その評点数を求めるべきである。

なお,間口距離を判断するに当たり,本件他人地と接する部分の長さを含めることが相当でないことは,前記1(2)の(原告Aの主張)のとおりである。

(2)  奥行長大補正率について

(被告の主張)

本件土地5の奥行距離は9.30m,間口距離は前記(1)の(被告の主張)のとおり4.50mであるから,奥行距離を間口距離で除した値は3未満となる。したがって,本件土地5については,附表6における併用住宅地区の上記除した値の画地に係る奥行長大補正率が1.00となるから,奥行長大補正率により評点数を補正する必要はない。

(原告Aの主張)

本件土地5の奥行距離は9.30m,間口距離は前記(1)の(原告Aの主張)のとおり2mであるから,奥行距離を間口距離で除した値は4.65となる。したがって,本件土地5については,附表6における併用住宅地区の上記除した値の画地に係る奥行長大補正率0.98を適用して,その評点数を求めるべきである。

(3)  無道路地補正率について

(被告の主張)

そもそも,画地が無道路地としての取扱いを受けるのは,出入口が判然としない場合又は全くない場合のみであるところ,本件土地5は,本件市道の道路敷の一部となっている本件他人地に接しているのであるから,無道路地としての取扱いを要しないことは明らかである。したがって,本件土地5については,無道路地補正率により評点数を補正する必要はない。

(原告Aの主張)

本件土地5は,本件市道の道路法上の境界線に一切接していないのだから,無道路地と評価すべきである。したがって,本件土地5については,無道路地補正率0.60を適用して,その評点数を求めるべきである。

(4)  建築不可等補正率について

(被告の主張)

本件土地5については,他人地通行の承諾を得なければならないなど,土地利用に何らかの制約が生ずる可能性があることから,本件各評価要領における「建築可だが,他人地通行の承諾が必要,間口が2m未満等」の画地に係る建築不可等補正率0.90を適用して,その評点数を求めるべきである。

なお,原告Aは,本件土地5について,本件市道との間に本件他人地が介在しており,接道義務を満たしていないため,建築物の敷地とすることができない土地であると主張する。しかしながら,本件市道の建築基準法上の境界線は,本件市道の道路法上の境界線の外側にあって,本件他人地の一部又は全部を含んでいるため,本件土地5が本件市道の建築基準法上の境界線に2m以上接していないかどうかは不明確であるし,本件土地5と本件他人地を併せて建築物の敷地とすることで接道義務を満たすことも可能なのであるから,本件土地5を建築物の敷地とすることができないとの原告Aの主張はその前提を欠き失当である。

(原告Aの主張)

本件土地5は,本件市道との間に本件他人地が介在しており,本件市道の建築基準法上の境界線に2m以上接していないため,接道義務を満たしておらず,これを建築物の敷地とすることができない。このように,本件土地5は,建築物の建築が不可能な土地であり,かつ,建物が建っているから,本件土地5については,本件各評価要領における「既存家屋があり,建築不可」の画地に係る建築不可等補正率0.80を適用して,その評点数を求めるべきである。

(5)  本件土地5修正価格について

(被告の主張)

前記(1)~(4)の(被告の主張)を前提として評価基準によって決定される本件土地5の価格は別紙3の第5のとおりである。したがって,これを上回るものではない本件土地5修正価格は適法である。

(原告Aの主張)

前記(1)~(4)の(原告Aの主張)を前提として評価基準によって決定される本件土地5の価格は別紙4の第5のとおりである。したがって,これを上回る本件土地5修正価格は違法である。

6  本件土地6の評価の適否

(1)  間口狭小補正率について

(被告の主張)

本件土地6の間口距離は,本件土地6が本件市道の道路敷の一部となっている本件他人地に接する部分の長さである9.06mである。したがって,本件土地6については,附表5における併用住宅地区の上記間口距離の画地に係る間口狭小補正率が1.00となるから,間口狭小補正率により評点数を補正する必要はない。

なお,間口距離を判断するに当たり,本件他人地と接する部分の長さを含めるべきであることは,前記1(2)の(被告の主張)のとおりである。

(原告Bの主張)

本件土地6は,本件市道の道路法上の境界線に一切接しておらず,幅員2mの通路を開設する必要があるから,本件土地6の間口距離は2mとみるべきである。したがって,本件土地6については,附表5における併用住宅地区の上記間口距離の画地に係る間口狭小補正率0.90を適用して,その評点数を求めるべきである。

なお,間口距離を判断するに当たり,本件他人地と接する部分の長さを含めることが相当でないことは,前記1(2)の(原告Aの主張)と同様である。

(2)  奥行長大補正率について

(被告の主張)

本件土地6の奥行距離は22.05m,間口距離は前記(1)の(被告の主張)のとおり9.06mであるから,奥行距離を間口距離で除した値は3未満となる。したがって,本件土地6については,附表6における併用住宅地区の上記除した値の画地に係る奥行長大補正率が1.00となるから,奥行長大補正率により評点数を補正する必要はない。

(原告Bの主張)

本件土地6の奥行距離は20.775m(=(15.32m+3.51m+22.72m)÷2),間口距離は前記(1)の(原告Bの主張)のとおり2mであるから,奥行距離を間口距離で除した値は10.3875となる。したがって,本件土地6については,附表6における併用住宅地区の上記除した値の画地に係る奥行長大補正率0.90を適用して,その評点数を求めるべきである。

(3)  無道路地補正率について

(被告の主張)

そもそも,画地が無道路地としての取扱いを受けるのは,出入口が判然としない場合又は全くない場合のみであるところ,本件土地6は,本件市道の道路敷の一部となっている本件他人地に接しているのであるから,無道路地としての取扱いを要しないことは明らかである。したがって,本件土地6については,無道路地補正率により評点数を補正する必要はない。

(原告Bの主張)

本件土地6は,本件市道の道路法上の境界線に一切接していないのだから,無道路地と評価すべきである。したがって,本件土地6については,無道路地補正率0.60を適用して,その評点数を求めるべきである。

(4)  建築不可等補正率について

(被告の主張)

本件土地6については,他人地通行の承諾を得なければならないなど,土地利用に何らかの制約が生ずる可能性があることから,本件各評価要領における「建築可だが,他人地通行の承諾が必要,間口が2m未満等」の画地に係る建築不可等補正率0.90を適用して,その評点数を求めるべきである。

なお,原告Bは,本件土地6について,本件市道との間に本件他人地が介在しており,接道義務を満たしていないため,建築物の敷地とすることができない土地であると主張する。しかしながら,本件市道の建築基準法上の境界線は,本件市道の道路法上の境界線の外側にあって,本件他人地の一部又は全部を含んでいるため,本件土地6が本件市道の建築基準法上の境界線に2m以上接していないかどうかは不明確であるし,本件土地6と本件他人地を併せて建築物の敷地とすることで接道義務を満たすことも可能なのであるから,本件土地6を建築物の敷地とすることができないとの原告Bの主張はその前提を欠き失当である。

(原告Bの主張)

本件土地6は,本件市道との間に本件他人地が介在しており,本件市道の建築基準法上の境界線に2m以上接していないため,接道義務を満たしておらず,これを建築物の敷地とすることができない。したがって,本件土地6については,少なくとも本件各評価要領における「既存家屋があり,建築不可」の画地に係る建築不可等補正率0.80を適用して,その評点数を求めるべきである。

(5)  本件土地6修正価格について

(被告の主張)

前記(1)~(4)の(被告の主張)を前提として評価基準によって決定される本件土地6の価格は別紙3の第6のとおりである。したがって,これを上回るものではない本件土地6修正価格は適法である。

(原告Bの主張)

前記(1)~(4)の(原告Bの主張)を前提として評価基準によって決定される本件土地6の価格は別紙4の第6のとおりである。したがって,これを上回る本件土地6修正価格は違法である。

第4当裁判所の判断

土地に対する固定資産税の課税標準となる土地の価格(適正な時価)とは,正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格,すなわち,客観的な交換価値をいうと解される。

ところで,前記関係法令等の定め(1)イのとおり,地方税法は,固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続を,総務大臣の告示である評価基準に委ね,市町村長は,評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならないと定めている。そして,評価基準に定める市街地宅地評価法は,前記認定(前記関係法令等の定め(2)イ)のような具体的内容等に照らすと,市街地的形態を形成する地域における宅地の客観的な交換価値を算定する方法として一般的な合理性を有するものというべきである。そうすると,評価基準によって算定した宅地の価額は,同方法によっては価格を適切に算定することができない特別の事情がない限り,その適正な時価(客観的な交換価値)を上回らないものと推認するのが相当である(最高裁平成15年7月18日第二小法廷判決・裁判集民事210号283頁,最高裁平成21年6月5日第二小法廷判決・裁判集民事231号57頁参照)。

他方,前示のとおり,地方税法が,固定資産の評価の基準等を評価基準に委ね,市町村長がこれによって固定資産の価格を決定しなければならないと定めているのは,全国一律の統一的な評価基準によって,各市町村全体の評価の均衡を図り,評価に関与する者の個人差に基づく評価の不均衡を解消するため,固定資産の価格は評価基準によって決定されることを要するものとする趣旨と解され,上記地方税法の定め及びその趣旨等に鑑みれば,固定資産税の課税において全国一律の統一的な評価基準に従って公平な評価を受ける利益は,適正な時価との多寡の問題とは別にそれ自体が地方税法上保護されるべきものというべきであるから,土地の基準年度に係る賦課期日における登録価格が評価基準によって決定される価格を上回る場合には,その登録価格の決定は違法となるものと解される(最高裁平成25年7月12日第二小法廷判決・民集67巻6号1255頁参照)。この理は,地方税法417条の規定による登録価格の修正についても異なるところはないと解される。

以上によれば,登録価格が評価基準により算定される価格を超えるものでなければ,当該価格は適正な時価を上回らないものと推認され,登録価格が評価基準により算定される価格を超えるものであれば,その登録価格の決定は,違法となるものというべきである。そこで,以下では,本件各土地の修正後の各価格(本件土地1修正価格~本件土地6修正価格)が,評価基準により算定される本件各土地の価格を超えるものではないかという観点から検討し,上記各修正価格の決定を是認した第1事件各決定及び第2事件各決定の適法性を判断することとする(なお,本件において評価基準によっては本件各土地の価格を適切に算定することができない特別の事情があることを認めるに足りる証拠はない。)。

1  本件土地1の評価の適否について

(1)  本件土地1の形状等

前記前提となる事実,証拠(甲24の2,28,乙7)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

ア 本件土地1の地積は247.85㎡であり,その奥行は20.70mである。

イ 本件土地1は,いわゆる逆L字形地であって(別紙2参照),北側(本件市道側)に飛び出した旗竿地部分(以下「本件旗竿地」という。)が存在する。本件旗竿地は,東西方向約5.29m,南北方向約9.50mの概ね矩形の土地であり,本件土地1のその余の部分は,東西方向約20m,南北方向約11.2mの矩形地である。

ウ 本件旗竿地は,北側で本件市道に1.24m接しており,更にこれと連続して本件他人地に4.05m接している。

(2)  不整形地補正率について

ア 評価基準が不整形地について不整形地補正率により評点数を補正することとした趣旨は,不整形地は,画地の形状が悪いため,その全部を宅地として有効に利用することができず,整形地に比べて価格が低くなることから,評点数を減価し,より適正な時価に近似させることにあると解される。そうだとすると,ある程度不整形な画地であっても,家屋の建築等が通常の状態において行い得るものは,不整形地補正率により評点数を補正することを要しないと解するのが相当である。附表4の(注2)が,不整形地補正率表を運用するに当たって,画地の地積が大きい場合等にあっては,近傍の宅地の価額との均衡を考慮し,不整形地補正率を修正して適用するものとしているのも,上記理をいうものと解される。

イ そして,逆L字形地は,普通地に比べ,路線方向に飛び出した部分(旗竿部分)が宅地として有効に利用することができないため,不整形地補正率表により評点数を補正する必要があると一般に解されるところ,本件土地1の形状(前記(1)イ)に照らせば,その地積(247.85㎡)が比較的大きいこと等の事情を考慮しても,普通地に比べ,本件旗竿地は宅地として有効に利用することができないというべきである。したがって,本件土地1については,不整形地補正率により評点数を補正することが相当である。

この点,被告は,本件旗竿地を含む本件土地1西側部分が,本件市道へ至る通路として利用されるとともに,原告Aが経営する駐車場の敷地(本件土地2及び本件土地3)との関係でも,本件市道へ至る通路として利用されており,このような利用状況に照らせば,本件土地1は,その全体が宅地として有効利用されているというべきであると主張する。しかしながら,宅地の主要な利用目的は建物の敷地である以上,その他の画地との関係で通路として利用されていることの一事をもって,本件旗竿地が宅地として有効に利用されているということはできないから,被告の主張は採用することができない。

また,被告は,奥行長大補正率と不整形地補正率は択一的にしか適用されず,そのため,間口狭小補正率,奥行長大補正率,不整形地補正率の全てを乗じて評点数を補正することが許されないところ,本件土地1については,間口狭小補正率及び奥行長大補正率を乗じて評点数を補正しているから,これらに加えて不整形地補正率を乗じる必要はないと主張する。しかしながら,評価基準は,上記3種の補正率の適用がある場合には,間口狭小補正率と奥行長大補正率を乗じた結果の率と,間口狭小補正率と不整形地補正率を乗じた結果の率の小なる率を乗じて評点数を求める旨定めており(前記関係法令等の定め(2)ウ(イ)c),不整形地補正率が奥行長大補正率を下回る場合には,不整形地補正率を乗じて評点数を補正する必要があるから,不整形地補正率の大小を問わず,不整形地補正率を乗じる必要はないとする被告の主張は採用することができない。

ウ ところで,弁論の全趣旨によれば,豊中市長は,固定資産税の評価対象地の95%以上が宅地化され,比較的小規模な土地が数多く存在することから,短期間に全ての画地のデータを把握して計算することが困難であり,また,筆界が確定していない地域も相当数存在することから正確な蔭地割合の算出が困難な場合も予想される等の事情を踏まえて,不整形地補正率の判断に達観方式を用いていると認められ,このような取り扱いは合理的なものであるということができる。そうすると,本件土地1に適用すべき不整形地補正率を判断するに際しても,達観方式を用いるのが相当であるが,本件土地1が所在する用途地区の標準的な画地の形状・規模等が証拠上必ずしも明らかではないため,本件土地1に適用すべき不整形地補正率を判断することはできない。

(3)  間口狭小補正率について

ア 評価基準が間口が狭小な画地について間口狭小補正率により評点数を補正することとした趣旨は,宅地の主要な利用目的が建物の敷地である以上,間口が一定限度以下の画地は,宅地本来の効用を果たすことができず利用価値が減少し,価格が低くなることから,その減価補正をする点にあると解される。このように,間口狭小補正率は,間口が狭い画地の形状に着目して設けられたものであるから,評価基準が定める間口狭小補正率表(附表5)における間口距離とは,現況が道路である土地と接している距離をいうと解するのが相当である。

なお,建築基準法43条1項本文は,建築物の敷地につき,建築基準法上の道路に2m以上接しなければならない旨定めているが,前記のような間口狭小補正率の趣旨に照らせば,間口狭小補正率の適用に当たって建築基準法上の道路との接道状況を考慮する必要がないことは明らかである(このことは,間口狭小補正率表が,間口距離2mの前後で異なる補正率を定めていないことからも裏付けられる。)。

イ 前記(1)ウのとおり,本件土地1は,北側で本件市道に1.24m,これと連続して現況が道路である本件他人地に4.05m接しているから,本件土地1の間口距離は,これらを併せた5.29mと認められる。したがって,本件土地1については,附表5における併用住宅地区の上記間口距離の画地に係る間口狭小補正率0.97を適用して,その評点数を求めるべきである。

(4)  奥行長大補正率について

本件土地1の奥行距離は前記(1)アのとおり20.70m,間口距離は前記(3)イのとおり5.29mであるから,奥行距離を間口距離で除した値は3.91となる。したがって,本件土地1については,附表6における併用住宅地区の上記除した値の画地に係る奥行長大補正率0.99を適用して,その評点数を求めるべきである。

(5)  無道路地補正率について

ア 評価基準が無道路地について無道路地補正率等により評点数を補正することとした趣旨は,無道路地が公路に接続しない不便な状態の土地であることに鑑み,無道路地において建物の建築等による使用収益が困難であること等による減価を反映した補正率を適用することにより,当該土地の適正な価格,すなわち,客観的な交換価値に近接することができると考えられた点にあるものと解される。このような無道路地補正の趣旨に鑑みれば,公図上公道に接続しない土地であっても,当該土地及びその周辺の個別具体的な状況に照らし,実際の利用上何らかの通路が開設されている場合には,無道路地補正率等を適用することはかえって不相当な減価をもたらすこととなるから,無道路地に該当しないと解するのが相当である。

イ 本件土地1は,前記(1)ウのとおり,北側で本件市道に1.24m,これと連続して本件市道の道路敷の一部となっている本件他人地に4.05m接しており,通路が開設されている土地ということができるから,無道路地には当たらない。

なお,前記前提となる事実(2)ウによれば,本件市道の建築基準法上の境界線の位置は判然としないため,本件土地1が本件市道の建築基準法上の境界線と2m以上接しているかどうか(接道義務を満たしているかどうか)は明らかでない。無道路地補正率の趣旨が,建物等使用収益が困難であること等による減価を反映する点に求められることに鑑みれば,本件土地1が接道義務を満たしていない場合には,これを建築物等の敷地とすることができないため,無道路地補正率を適用することも考えられるが,この点については,後記(6)のとおり,本件各評価要領が定める建築不可等補正率の適用によって考慮されているから,本件土地1について無道路地補正率を適用しないことは合理性を有するものということができる。

以上によれば,本件土地1について,無道路地補正率により評点数を補正する必要はないというべきである。

ウ なお,原告Aは,財産評価基本通達(甲21)が無道路地の評価について,「無道路地とは,路線に接しない宅地(接道義務を満たしていない宅地を含む。)をいう。」と規定していることからすれば,接道義務を満たしていない本件土地1についても無道路地として評価し,無道路地補正率により評点数を補正すべきであると主張する。しかしながら,財産評価基本通達は,相続,遺贈又は贈与により取得した財産の評価に適用されるものであって,評価基準の解釈の直接の根拠となるものではなく,本件土地1について無道路地補正率により評点数を補正する必要がないことは,前記イのとおりであるから,原告Aの主張は採用することができない。

(6)  建築不可等補正率について

前記(5)イのとおり,本件土地1が接道義務を満たしているかどうかは明らかではないところ,これを満たしていない場合には,Cの承諾を得て本件他人地を建築物の敷地とするか,建築基準法43条1項ただし書の許可を受ける必要があると考えられる。もっとも,いずれの方法についても不確実性が伴うため,本件土地1における建物の建築等による使用収益が不可能となる可能性は否定できない。そこで,本件土地1については,豊中市長が「所要の補正」として定める建築不可等補正率を適用するのが相当である。

そして,上記事情に照らせば,本件土地1は「建築可だが,他人地通行の承諾が必要,間口が2m未満等」の画地に該当すると認められるから,本件土地1については,本件各評価要領における建築不可等補正率0.90を適用して,その評点数を求めるべきである。

(7)  本件土地1修正価格について

評価基準は,不整形地補正率表の適用がある画地について,間口狭小補正率表,奥行長大補正率表の適用があるときは,間口狭小補正率,奥行長大補正率,両補正率を乗じた結果の率,間口狭小補正率と不整形地補正率を乗じた結果の率及び不整形地補正率のうち,補正率の小なる率(下限0.60)を乗じて評点数を求めると定めているところ(前記前提となる事実(2)ウ(イ)c),本件土地1については,前記(2)~(4)のとおり間口狭小補正率0.97,奥行長大補正率0.99及び不整形地補正率(達観方式によれば少なくとも0.95)の適用があるため,間口狭小補正率0.97と不整形地補正率を乗じた結果の率を乗じて評点数を求める必要がある。

しかるに,被告は,本件土地1の補正率を求めるに当たって,これより大きな値である間口狭小補正率0.97と奥行長大補正率0.99を乗じた結果の率を乗じて評点数を求めているから,本件土地1修正価格が評価基準によって決定される価格を上回っていることは明らかである。

したがって,本件土地1修正価格は違法であり,これを是認した審査委員会の決定もまた違法というべきである。そして,前記(2)ウのとおり,本件土地1に適用すべき不整形地補正率は,当裁判所においてこれを判断することができないから,審査委員会に審査をやり直させるため,第1事件各決定のうち本件土地1に係る部分を全部取り消すことが相当である。

2  本件土地2の評価の適否について

(1)  本件土地2の形状等

前記前提となる事実,証拠(甲24の2,28)及び弁論の全趣旨によれば,本件土地2は,地積が529.78㎡(245.87㎡+283.91㎡)の不整形地であり,北側で本件他人地に2.47m接していることが認められる。

なお,本件土地2の評点数を求めるに当たり,奥行価格補正率0.96及び不整形地補正率0.63の適用があることについては,当事者間に争いがない。

(2)  無道路地補正率について

前記1(5)アのとおり,実際の利用上何らかの通路が開設されている土地は,無道路地に該当しないと解するのが相当である。

そして,本件土地2は,前記(1)のとおり,北側で本件市道の道路敷の一部となっている本件他人地に2.47m接しており,通路が開設されている土地ということができるから,無道路地には当たらない。なお,前記前提となる事実(2)ウによれば,本件土地2が本件市道の建築基準法上の境界線と2m以上接しているかどうか(接道義務を満たしているかどうか)は明らかでないが,この点については,本件土地1と同様に後記(3)の建築不可等補正率によって考慮されている。

以上によれば,本件土地2について,無道路地補正率により評点数を補正する必要はないというべきである。

(3)  建築不可等補正率について

本件土地2が接道義務を満たしていない場合には,Cの承諾を得て現状が通路である本件他人地を建築物の敷地とするか,建築基準法43条1項ただし書の許可を受ける必要があると考えられるが,いずれについても不確実性が伴うため,本件土地2における建物の建築等による使用収益が不可能となる可能性は否定できない。そこで,本件土地2については,豊中市長が「所要の補正」として定める建築不可等補正率を適用するのが相当である。

そして,上記事情に照らせば,本件土地1は「建築可だが,他人地通行の承諾が必要,間口が2m未満等」の画地に該当すると認められるから,本件土地2については,本件各評価要領における建築不可等補正率0.90を適用して,その評点数を求めるべきである。

(4)  本件土地2修正価格について

以上によれば,評価基準によって決定される本件土地2の価格は,被告の主張(別紙3の第2)のとおりである(なお,被告の主張する算定根拠,基礎数値等につき,評価基準に反する部分や格別不合理,不正確な部分は見当たらない。)から,これを上回るものではない本件土地2修正価格は適法である。

3  本件土地3の評価の適否について

(1)  本件土地3の形状等

前記前提となる事実,証拠(甲24の2,28)及び弁論の全趣旨によれば,本件土地3は,地積が57.90㎡(21.50㎡+36.40㎡)の不整形地であると認められる。

なお,本件土地3の評点数を求めるに当たり,奥行価格補正率0.94,不整形地補正率0.80及び無道路地補正率0.60の適用があることについては,当事者間に争いがない。

(2)  建築不可等補正率について

本件土地3は,建築基準法上の道路に接しておらず,接道義務を満たしていないため,建築物の敷地とすることができない。したがって,本件土地3については,建築不可等補正率の適用があるのが原則である。もっとも,本件土地3については,前記(1)のとおり無道路地補正率が適用されているところ,無道路地補正率の趣旨が,建物の建築等による使用収益が困難であること等による減価を反映する点に求められることに鑑みれば,本件土地3について,これと趣旨を同じくする建築不可等補正率を重ねて適用する必要はないと解するのが相当である。

したがって,無道路地補正率の適用がある本件土地3については,建築不可等補正率により評点数を補正する必要はない。

(3)  本件土地3修正価格について

以上によれば,評価基準によって決定される本件土地3の価格は,別紙5のとおりとなるから,これを上回るものではない本件土地3修正価格は適法である。

4  本件土地4の評価の適否について

(1)  本件土地4の形状等

前記前提となる事実,証拠(甲24の2,28)及び弁論の全趣旨によれば,本件土地4は,地積が135.92㎡,奥行距離が12.30mの矩形地であり,北側で本件他人地に11.05m接していることが認められる。

(2)  間口狭小補正率について

前記1(3)アのとおり,評価基準が定める間口狭小補正率表における間口距離とは,現況が道路である土地と接している距離をいうと解するのが相当である。

そして,前記(1)のとおり,本件土地4は,北側で現況が道路である本件他人地に11.05m接しているから,本件土地4の間口距離は,11.05mと認められる。したがって,本件土地4については,附表5における併用住宅地区の上記間口距離の画地に係る間口狭小補正率が1.00となるから,間口狭小補正率により評点数を補正する必要はない。

(3)  奥行長大補正率について

本件土地4の奥行距離は前記(1)のとおり12.30m,間口距離は前記(2)のとおり11.05mであるから,奥行距離を間口距離で除した値は3未満となる。したがって,本件土地4については,附表6における併用住宅地区の上記除した値の画地に係る奥行長大補正率が1.00となるから,奥行長大補正率により評点数を補正する必要はない。

(4)  無道路地補正率について

前記1(5)アのとおり,実際の利用上何らかの通路が開設されている土地は,無道路地に該当しないと解するのが相当である。

そして,本件土地4は,前記(1)のとおり,北側で本件市道の道路敷の一部となっている本件他人地に11.05m接しており,通路が開設されている土地ということができるから,無道路地には当たらない。なお,前記前提となる事実(2)ウによれば,本件土地4が本件市道の建築基準法上の境界線と2m以上接しているかどうか(接道義務を満たしているかどうか)は明らかでないが,この点については,本件土地1と同様に後記(5)の建築不可等補正率によって考慮されている。

以上によれば,本件土地4について,無道路地補正率により評点数を補正する必要はないというべきである。

(5)  建築不可等補正率について

本件土地4が接道義務を満たしていない場合には,Cの承諾を得て現状が通路である本件他人地を建築物の敷地とするか,建築基準法43条1項ただし書の許可を受ける必要があると考えられるが,いずれについても不確実性が伴うため,本件土地4における建物の建築等による使用収益が不可能となる可能性は否定できない。そこで,本件土地4については,豊中市長が「所要の補正」として定める建築不可等補正率を適用するのが相当である。

そして,上記事情に照らせば,本件土地4は「建築可だが,他人地通行の承諾が必要,間口が2m未満等」の画地に該当すると認められるから,本件土地4については,本件各評価要領における建築不可等補正率0.90を適用して,その評点数を求めるべきである。

(6)  本件土地4修正価格について

以上によれば,評価基準によって決定される本件土地4の価格は,被告の主張(別紙3の第4)のとおりである(なお,被告の主張する算定根拠,基礎数値等につき,評価基準に反する部分や格別不合理,不正確な部分は見当たらない。)から,これを上回るものではない本件土地4修正価格は適法である。

5  本件土地5の評価の適否について

(1)  本件土地5の形状等

前記前提となる事実,証拠(甲24の2,28)及び弁論の全趣旨によれば,本件土地5は,地積が42.52㎡,奥行距離が9.30mの矩形地であり,北側で本件他人地に4.50m接していることが認められる。

なお,本件土地5の評点数を求めるに当たり,奥行価格補正率0.97の適用があることについては,当事者間に争いがない。

(2)  間口狭小補正率について

前記1(3)アのとおり,評価基準が定める間口狭小補正率表における間口距離とは,現況が道路である土地と接している距離をいうと解するのが相当である。

そして,前記(1)のとおり,本件土地5は,北側で現況が道路である本件他人地に4.50m接しているから,本件土地5の間口距離は,4.50mと認められる。したがって,本件土地5については,附表5における併用住宅地区の上記間口距離の画地に係る間口狭小補正率0.97を適用して,その評点数を求めるべきである。

(3)  奥行長大補正率について

本件土地5の奥行距離は前記(1)のとおり9.30m,間口距離は前記(2)のとおり4.50mであるから,奥行距離を間口距離で除した値は3未満となる。したがって,本件土地5については,附表6における併用住宅地区の上記除した値の画地に係る奥行長大補正率が1.00となるから,奥行長大補正率により評点数を補正する必要はない。

(4)  無道路地補正率について

前記1(5)アのとおり,実際の利用上何らかの通路が開設されている土地は,無道路地に該当しないと解するのが相当である。

そして,本件土地5は,前記(1)のとおり,北側で本件市道の道路敷の一部となっている本件他人地に4.50m接しており,通路が開設されている土地ということができるから,無道路地には当たらない。なお,前記前提となる事実(2)ウによれば,本件土地5が本件市道の建築基準法上の境界線と2m以上接しているかどうか(接道義務を満たしているかどうか)は明らかでないが,この点については,本件土地1と同様に後記(5)の建築不可等補正率によって考慮されている。

以上によれば,本件土地5について,無道路地補正率により評点数を補正する必要はないというべきである。

(5)  建築不可等補正率について

本件土地5が接道義務を満たしていない場合には,Cの承諾を得て現状が通路である本件他人地を建築物の敷地とするか,建築基準法43条1項ただし書の許可を受ける必要があると考えられるが,いずれについても不確実性が伴うため,本件土地5における建物の建築等による使用収益が不可能となる可能性は否定できない。そこで,本件土地5については,豊中市長が「所要の補正」として定める建築不可等補正率を適用するのが相当である。

そして,上記事情に照らせば,本件土地5は「建築可だが,他人地通行の承諾が必要,間口が2m未満等」の画地に該当すると認められるから,本件土地5については,本件各評価要領における建築不可等補正率0.90を適用して,その評点数を求めるべきである。

(6)  本件土地5修正価格について

以上によれば,評価基準によって決定される本件土地5の価格は,被告の主張(別紙3の第5)のとおりである(なお,被告の主張する算定根拠,基礎数値等につき,評価基準に反する部分や格別不合理,不正確な部分は見当たらない。)から,これを上回るものではない本件土地5修正価格は適法である。

6  本件土地6の評価の適否について

(1)  本件土地6の形状等

前記前提となる事実,証拠(甲24の2,28)及び弁論の全趣旨によれば,本件土地6は,地積が199.73㎡,奥行距離が22.05mの不整形地であり,北側で本件他人地に9.06m接していることが認められる(本件土地6は不整形地のため,上記奥行距離は地積を上記9.06mで除して求めた平均的な奥行距離である。)。

なお,本件土地6の評点数を求めるに当たり,不整形地補正率0.95の適用があることについては,当事者間に争いがない。

(2)  間口狭小補正率について

前記1(3)アのとおり,評価基準が定める間口狭小補正率表における間口距離とは,画地が現況通路と接している距離をいうと解するのが相当である。

そして,前記(1)のとおり,本件土地6は,北側で現況が道路である本件他人地に9.06m接しているから,本件土地6の間口距離は,9.06mと認められる。したがって,本件土地6については,附表5における併用住宅地区の上記間口距離の画地に係る間口狭小補正率が1.00となるから,間口狭小補正率により評点数を補正する必要はない。

(3)  奥行長大補正率について

本件土地6の奥行距離は前記(1)のとおり22.05m,間口距離は前記(2)のとおり9.06mであるから,奥行距離を間口距離で除した値は3未満となる。したがって,本件土地6については,附表6における併用住宅地区の上記除した値の画地に係る奥行長大補正率が1.00となるから,奥行長大補正率により評点数を補正する必要はない。

(4)  無道路地補正率について

前記1(5)アのとおり,実際の利用上何らかの通路が開設されている土地は,無道路地に該当しないと解するのが相当である。

そして,本件土地6は,前記(1)のとおり,北側で本件市道の道路敷の一部となっている本件他人地に9.06m接しており,通路が開設されている土地ということができるから,無道路地には当たらない。なお,前記前提となる事実(2)ウによれば,本件土地6が本件市道の建築基準法上の境界線と2m以上接しているかどうか(接道義務を満たしているかどうか)は明らかでないが,この点については,本件土地1と同様に後記(5)の建築不可等補正率によって考慮されている。

以上によれば,本件土地6について,無道路地補正率により評点数を補正する必要はないというべきである。

(5)  建築不可等補正率について

本件土地6が接道義務を満たしていない場合には,Cの承諾を得て現状が通路である本件他人地を建築物の敷地とするか,建築基準法43条1項ただし書の許可を受ける必要があると考えられるが,いずれについても不確実性が伴うため,本件土地6における建物の建築等による使用収益が不可能となる可能性は否定できない。そこで,本件土地6については,豊中市長が「所要の補正」として定める建築不可等補正率を適用するのが相当である。

そして,上記事情に照らせば,本件土地6は「建築可だが,他人地通行の承諾が必要,間口が2m未満等」の画地に該当すると認められるから,本件土地6については,本件各評価要領における建築不可等補正率0.9を適用して,その評点数を求めるべきである。

(6)  本件土地6修正価格について

以上によれば,評価基準によって決定される本件土地6の価格は,被告の主張(別紙3の第6)のとおりである(なお,被告の主張する算定根拠,基礎数値等につき,評価基準に反する部分や格別不合理,不正確な部分は見当たらない。)から,これを上回るものではない本件土地6修正価格は適法である。

第5結論

以上によれば,原告Aの請求は,本件土地1修正価格についての審査の申出を棄却した部分の取消しを求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却することとし,原告Bの請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条本文,65条1項ただし書をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 西田隆裕 裁判官 角谷昌毅 裁判官 松原平学)

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