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大阪地方裁判所 平成27年(モ)245号 決定 2015年3月25日

申立人(基本事件被告)

Y株式会社(以下「申立人」という。)

同代表者代表取締役

同代理人弁護士

河本毅

鎌田豊彦

上松信雄

水野奈也

相手方(基本事件原告)

X(以下「相手方」という。)

同代理人弁護士

松尾善紀

中村正彦

上将倫

上記当事者間の頭書基本事件について、申立人から移送の申立て

(以下「本件移送申立て」という。)があったので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

基本事件を東京地方裁判所へ移送する。

理由

第1  申立ての趣旨

主文同旨

第2  判断

1  基本事件は、相手方が、申立人に対し、相手方の事業所で働いていた間の時間外労働に対する未払賃金(以下「本件未払賃金」という。)及び賃金不払等を内容とする債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償として基本事件の提起に要した弁護士費用相当額の損害金(以下「本件損害賠償」という。)の支払を求める事案である。

2  申立人は、別紙「移送申立書」、同「移送申立理由書」及び同「移送申立理由書2」に記載のとおり、民事訴訟法16条1項又は17条により基本事件を東京地方裁判所に移送すべきである旨主張している。これに対する相手方の意見は、別紙「移送申立についての意見書」及び同「移送申立についての意見書(補充)」に記載のとおりである。(なお、いずれの書面についても、その別紙として添付されている資料は省略した。)

3(1)  一件記録によれば、申立人は東京都中央区に本店を置く株式会社であり、そのウェブサイトによれば、その概要は、資本金4億9000万円、売上高244億1700万円(平成26年3月期)、従業員数192名、事業所全国10か所とされていること、相手方は、平成24年6月1日、申立人との間で雇用契約(以下「本件雇用契約」という。)を締結し、平成26年1月31日付けで退職するまで申立人の東京本社(以下単に「東京本社」という。)で勤務したこと、相手方は現在大阪府吹田市内に居住していること、相手方は、基本事件において、相手方の就労実態に照らし、申立人に時間外手当として支払われた金員では時間外労働に対する賃金として不十分である旨主張していることが認められる。

(2)ア  (1)の事情によれば、基本事件においては、本件未払賃金の存否に関し、申立人における相手方の就労実態が主たる争点となることが予想されるところ、相手方は、本件雇用契約の期間を通じ、東京本社において就労していたのであるから、相手方の就労実態を知る者や相手方の就労実態に関する検証物で移動が困難なものは、相手方が就労していた東京本社ないし東京地方裁判所の管轄区域内に所在すると考えられる一方、一件記録上、大阪地方裁判所の管轄区域内には、申立人を除き、相手方の就労実態を知る者や上記のような検証物があることはうかがわれない。

イ  他方、本件損害賠償の請求原因として相手方が主張するところは、申立人が相手方の請求にもかかわらず時間外労働に対する十分な賃金を支払わず、労働時間に関する資料の開示も拒絶し、その結果、相手方が基本事件の提起を弁護士に委任せざるを得なくなったというものであり、これらの事実に関して大阪地方裁判所の管轄区域内に存在し得る証拠としては、相手方及び同代理人弁護士の各供述(陳述書類を含む。)並びに同人らの所持する内容証明郵便等の文書のほかに、特段のものがあるとも考え難いところである。

ウ  加えて、相手方の就業規則には、賃金の支払方法につき、「給与は全額を、原則、通貨にて直接本人に支払うが、本人が希望する場合には、本人が指定する銀行その他金融機関の本人名義預貯金口座へ振り込むことにより、支払うことができる」(給与規程4条1項)とあるほかに特段の定めはなく、相手方の賃金はその指定する銀行口座への振込みにより支払われていたこと、相手方は、大阪地方裁判所の管轄区域内に事務所を有する弁護士を代理人として選任し、基本事件の提起遂行を委任しているが、争点及び証拠の整理は電話会議システムを使用して行うことも可能であること(民事訴訟法170条3項参照)をも併せ考慮すれば、相手方の指摘する、相手方が一給与所得者にすぎないことや申立人の事業規模といった事情を考慮してもなお、訴訟の著しい遅滞を避け、当事者間の衡平を図るため、基本事件を東京地方裁判所に移送する必要があると認められる。

4  以上によれば、本件移送申立てには理由があるから、これを認容することとして、主文のとおり決定する。

(裁判官 笹井三佳)

(別紙)

平成27年(ワ)第287号 賃金請求事件

原告 X

被告 Y株式会社

移送申立書

平成27年2月19日

大阪地方裁判所第5民事部6係 御中

被告Y株式会社

訴訟代理人弁護士 河本毅

同 上松信雄

同 鎌田豊彦

同 水野奈也

申立の趣旨

本件訴訟を東京地方裁判所へ移送するとの決定を求める。

申立の理由

労働訴訟においての管轄は、民事通常訴訟事件と同様に、①被告の普通裁判籍(民事訴訟法4条)、②義務履行地(民事訴訟法5条1項1号)、③事務所又は営業所の所在地(民事訴訟法5条1項5号)であり、賃金請求訴訟における義務履行地とは、労働者が賃金の支払いを受ける勤務地と解されるところ、被告の本社所在地及び原告の勤務地は、いずれも東京都であり、本件訴訟の普通裁判籍は東京地方裁判所であることは明らかであるから、東京地方裁判所に移送するのが相当である。

よって、民事訴訟法第16条による移送を申し立てる。

なお、被告は、平成27年1月19日付け「答弁書」において、訴状の「請求の趣旨」に対する答弁を行っているが、これは訴訟の遅延を防止する目的で行ったものであり、移送申し立ての前の弁論ではないことを付言する。

以上

(別紙)

平成27年(ワ)第287号 賃金請求事件

原告 X

被告 Y株式会社

移送申立理由書

平成27年2月20日

大阪地方裁判所第5民事部6係 御中

被告 Y株式会社

訴訟代理人弁護士 河本毅

同 鎌田豊彦

同 上松信雄

同 水野奈也

第1 賃金債務は取立債務であること

(1)判例

下記裁判例から、賃金支払債務の支払場所は被告の本社所在地と解するのが合理的である。

①東京高裁S38.1.24決定(別紙1<省略>)

「給料債権は従業員が営業所において労務に従事し、その代価として給料を請求するものであるから、暗黙の合意がなされたと認められる別段の事情または合意のない限り、民法第484条商法第516条の適用を排除し、その支払場所は双方に好都合である使用者の営業所であると解するのが相当である」

②長崎地裁佐世保支部S25.11.20判決(別紙2<省略>)

賃金ではなく解雇予告手当について、「労働基準法第20条に所謂る予告手当は債務者たる会社住所地内において支払われるべき取立債務であるから、これが支払は会社がその準備をなし債権者たる即時解雇者にこれを通知してその受領を催告すれば足り現実の提供を要するものではない」

③東京高裁S26.5.18判決(別紙3<省略>)

「解雇手当は賃金に準ずべきものとして、その支払場所は、使用者の事業場と認めるのが相当であるから、本件解雇手当の支払場所は、被控訴会社の二本木工場であると解すべく、而して右の30日分の平均賃金即時支払の通知は、単にその支払を通知したものでなく、即時支払うことを言明して、その支払の準備あることを通知して、その受領を催告したものと推認されるから、畢竟被控訴会社は、解雇の日と定めた昭和25年3月27日迄に、30日分の平均賃金を控訴人等に対し提供したものなることを窺われる。したがつて本件解雇が労働基準法第20条に違反するとの控訴人等の主張は採用に値いしない」

(2)厚生労働省の見解

厚生労働省は、「賃金は、労働者が働いている職場で支払われているのがほとんどですが、労働基準法では賃金の支払い場所についての明文の規定はありません。したがって、法律上は、民法の一般原則に従い、賃金は特段の意思表示がない限り、持参債務になります(民法484条)。しかし、我が国の賃金の支払いの実態を考えますと、一般に、労働日に職場で賃金を支払うという慣行があるといえましょう。」(厚生労働省厚生労働基準局賃金時間課編著『改訂2版わかりやすい賃金の法律実務』労働調査会65頁)との見解を示しており、東京労働局のホームページにも、未払賃金請求の訴訟提起先について「相手方の住所地を管轄する」裁判所と記載されている(別紙4<省略>)。

(3)事実たる慣習若しくは黙示の合意

学説においては、「賃金については、事業場で支払うという『事実たる慣習』があるといってよい」(石井照久著『新版労働法』第3版163頁)と解されている。

この点、被告では、賃金については被告・原告間の合意に基づき、銀行振込の方法により支払っていたが、慶弔金・交通費・お年玉(感謝金)等の支給については、被告の本社所在地にて現金で支払っていた(別紙5<省略>)。したがって、原告・被告間において、賃金についても被告の本社所在地を弁済提供場所とする事実たる慣習若しくは黙示の合意が成立していたと解すべきである。

(4)使用者の負担

仮に、労働者(原告)の住所地を賃金債務の義務履行地とした場合、使用者は労働者の住所地にて弁済の提供を行わない限り、債務不履行ということになるが、かかる取り扱いは現実的ではない。また、本件のように、退職後に遠隔地に移動した労働者が、労働者の住所地にて未払賃金の請求訴訟を提起し、使用者がこれに応じないといけないとなると、使用者は予期せぬ多大な負担を負わされることになり、不合理である。

第2 銀行振込場所が義務履行地であること

被告は、上記「第1(3)」で述べた通り、原告の賃金を銀行振込の方法により支払っていたが、銀行振込の方法を取った場合、債務者が振込手続を取ったのであれば、債権者への支払手続の確実性に欠けるところはないから、債務者が銀行の支店等に送金手続をした時点で義務の履行が終了したものと解すべきである(神戸地裁H10.3.31)。

なお、仮に債権者の振込口座が義務履行地であると解するとしても、被告の賃金振込口座は三菱東京UFJ銀行吉祥寺支店であったのであるから(別紙6<省略>)、裁判管轄が東京地方裁判所にあることは明らかである。

第3 結論

したがって、本件における義務履行地は、原告の住所地ではなく、被告の本社所在地であり、本件訴訟の裁判管轄は東京地方裁判所にあるので、東京地方裁判所へ移送するとの決定を求めた次第である。

なお、大阪府のホームページにも、使用者が未払賃金の請求に応じない場合の裁判管轄について、「使用者の所在地」と記載されており(別紙7<省略>)、東京地裁においても労働債権の場合の義務履行地は会社の所在地と考えられていることからも(別紙8<省略>)、社会通念上、未払い賃金を請求する場合の裁判管轄は使用者(被告)の所在地と解するのが相当であることは明らかである。

以上

(別紙)

平成27年(ワ)第287号 未払賃金等請求事件

原告 X

被告 Y株式会社

移送申立についての意見書

平成27年2月25日

大阪地方裁判所第5民事部6係 御中

原告訴訟代理人弁護士 上将倫

平成27年2月19日付けで被告からなされた移送申立についての原告の意見は下記のとおりである。

第1 意見の趣旨

本件移送申立を却下する。

との決定を求める。

第2 意見の理由

1 義務履行地は原告の住所地であること

賃金の支払場所については労働基準法に規定がないため、義務履行地については民法の一般原則にしたがって解釈すべきであり、特約がない限り、持参債務の原則によることになる。

この点、被告は、労働者が賃金の支払いを受ける勤務地が義務履行地であるとして、本件については、原告が勤務していた東京都が義務履行地であると主張する。しかしながら、原告と被告との間で、賃金の支払場所について勤務地とする特約は存在しないから、かかる主張を認めることはできない。

また、原告は、賃金支払請求のみならず、不法行為ないし債務不履行に基づく損害賠償請求をもしているところであるから、これらの債務は持参債務であるので、義務履行地は原告の住所地である。

よって、原告の住所地を管轄する御庁に管轄がある。

2 結語

以上の理由から、本件移送申立は速やかに却下されるべきである。

以上

(別紙)

平成27年(ワ)第287号 賃金請求事件

原告 X

被告 Y株式会社

移送申立理由書2

平成27年2月26日

大阪地方裁判所第5民事部6係 御中

被告 Y株式会社

訴訟代理人弁護士 河本毅

同 鎌田豊彦

同 上松信雄

同 水野奈也

第1 原告の平成27年2月23日付け「訴え変更(追加)申立書」及び同年2月25日付け「移送申立についての意見書」について

(1) 信義則違反(訴訟状態の不当形成)

民事訴訟法第2条では、「裁判所は、民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努め、当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない。」として、信義則を定めている。そのため、一方当事者が手続上の地位を取得するために、その基礎となる事実を故意に作出したり、逆に事実の発生を妨げたりした場合には、信義則を根拠として地位の取得が否定される。判例では、併合請求の裁判籍を生じさせるのみの目的で本来訴訟をする気のない請求を合わせてした場合(札幌高決S41.9.19別紙l<省略>)に管轄選択権の濫用として許されない旨の判断を下している。

(2) 訴え変更(追加)の時期

原告は、平成27年1月14日に訴えを提起しているが、被告が同年2月19日に移送申立てをし、同月20日に「移送理由申立書」を裁判所に提出したのを受けて、訴え提起をしてから約1か月半を経過した平成27年2月23日になって、突然、被告に債務不履行ないし不法行為があったとして訴えの変更(追加)を申し立てた。

以上の経緯に加えて、原告は、被告に残業代を請求した平成26年7月16日から訴えを提起した1月14日までに半年も時間があったこと、訴え変更(追加)の内容も訴え提起後に生じた新たな事情ではないことをも勘案すれば、本件訴え変更(追加)の申立ては、原告の住所地での裁判籍を生じさせるのみの目的で本来訴訟をする気のない請求を合わせて行ったものであることは明らかであり、管轄選択権の濫用として許されないものである。

(3) 訴え変更(追加)の内容

原告が平成27年2月23日付け「訴え変更(追加)申立書」にて主張する債務不履行ないし不法行為の内容自体、極めて曖昧である。

同「申立書」1頁下から2行目で「残業代精算義務の不履行は賃料未払いにほかならない」としている点は理解不能である。

また、被告が使用者として開示請求に応じる義務がある旨の主張については、平成26年7月30日付け「回答書」(別紙2<省略>)lmjkにてその法的根拠を示して欲しい旨内容証明郵便にて連絡したが、現在に至るまで何の連絡もないままである。

そして、被告が残業代を支払わず、関係資料の開示請求に応じなかったため、本件訴え提起をせざるを得なかった旨原告は主張しているが、被告は、上記のとおり、「回答書」にて回答しており、その後に連絡をしてこなかったのは原告であり、本件訴え提起について被告に責任はない。

以上のとおり、原告の平成27年2月23日付け「訴え変更(追加)申立書」は、内容的にも不当なものであり、やはり原告の住所地での裁判籍を取得することのみを目的とした管轄選択権の濫用であると言わざるを得ない。

第2 遅滞を避ける等のための移送(民事訴訟法第17条)

民事訴訟法第17条では、「第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。」旨定めている。

この点、本案事件の審理に必要な被告側の予想される証人はいずれも被告本社(東京都)に勤務する者であり、原告側の予想される証人は原告のみである。仮に、原告以外に原告側証人が必要となる場合でも、当該証人の勤務先はやはり被告本社(東京都)であることが容易に想定される。さらに、必要な検証物も東京都内にある。とすれば、当該証人らの裁判所への出頭の便宜の点からは、本案事件を東京地方裁判所で審理する方が被告にとっても原告にとっても望ましい。

よって、本書面をもって、民事訴訟法第17条による移送を申し立てる。

以上

(別紙)

平成27年(ワ)第287号 未払賃金等請求事件

原告 X

被告 Y株式会社

移送申立についての意見書(補充)

平成27年2月27日

大阪地方裁判所第5民事部6係 御中

原告訴訟代理人弁護士 上将倫

被告から提出された平成27年2月26日付け移送申立理由書2についての原告の意見は下記のとおりである。

1 信義則違反、管轄選択権の濫用との主張について

被告は、原告が平成27年2月23日付けで不法行為ないし債務不履行を理由に弁護士費用の請求をしたうえで、同請求についての義務履行地が大阪府である旨主張していることについて、信義則に違反し、管轄選択権の濫用であるなどと主張する。

この点、被告による移送申立が訴え変更申立を行う契機になっていることについては、原告も否定しない。

しかしながら、残業代の支払額に制限を設けて、精算を要する状態を作出していたのは被告であって、それゆえに、原告は退職後に弁護士に依頼して、残業代の請求をしなければならなかったのである。

そうであるとすれば、提訴と併せて、不法行為等を理由として弁護士費用を請求することも十分にありうる選択肢であるところ、実際には、訴訟の争点を減らし、紛争の早期終結を図るために、訴えから除外していたにすぎない。

したがって、被告から移送申立がなされたのを受けて、そのことを契機に訴えの変更申立を行ったのは、提訴時に訴訟経済を考慮して差し控えた権利行使を、移送申立という、その後の事情の変化を踏まえ、事後的に行っただけのことであって、何ら信義則に反したり、管轄選択権の濫用となるようなものではない。

被告は昭和41年9月19日の札幌高裁の決定を引用しているが、同事案は、併合請求の裁判籍を生じさせることのみの目的で、本来請求する気のない請求をした場合についての決定であって、本件とは事案を異にする。

2 民訴法17条による移送申立について

被告は、本件について想定される証人や検証物が東京都内にあることから、民訴法17条によって、本件を東京地方裁判所に移送するのが相当であると主張する。

しかしながら、被告のいう「本件について想定される証人や検証物」が具体的に何であるのか、全く明らかになっていない。むしろ、本件については、原告が所持するメモや被告が所持するICカードによる入退室記録やパソコンのログイン及びログアウトの時間データなどの客観的資料を検証することによって、原告の労働時間を確定させるべき事案であるといえる。メモはすでに証拠請求されており、被告が速やかにこれらの資料を提出すれば、訴訟が遅延することはないのであるから、訴訟遅延を回避するために移送を行う必要は、全くない。

むしろ、原告と被告との間の実質的な力関係を考慮すれば、御庁で審理を行う方が当事者間の衡平に資する。

原告は未だ20代半ばの一労働者であり、原告にとって、東京までの移動や仕事を休むことによる経済的及び精神的な損失は、多大なものがある。

これに対して、被告は、資本金4億円超、年間売上約244億円、従業員数200名弱、全国に10カ所の拠点(被告のウェブサイトの会社概要による)を構える堂々たる企業である。本件が御庁で審理されることによる負担は、さほどのものではない。

以上からすれば、民訴法17条による移送申立を行うのは、相当ではない。

以上

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