大阪地方裁判所 平成3年(ワ)292号 判決 1993年3月04日
主文
一 被告は、原告に対し、金一〇六万六二〇九円及びこれに対する平成三年一月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを五分し、その四を原告の、その余を被告の各負担とする。
四 この判決は仮に執行することができる。
事実及び理由
第一 請求の趣旨
被告は、原告に対し、金一六四八万一三〇八円及び内金五〇一万二九九八円に対する平成三年一月三〇日(訴状送達日の翌日)から、内金一一四六万八三一〇円に対する平成四年八月一三日(訴の変更申立書送達日の翌日)から各支払済みまで年五分の割合による金員(民法所定の遅延損害金)を支払え。
第二 事案の概要
一 本件は、被告の研究開発部門に勤務していた原告が、その勤務中にいわゆる職務発明・考案につき被告に特許・実用新案登録を受ける権利を承継させたので、特許法三五条三項・実用新案法九条三項に基づき、被告を退職後、その相当の対価の支払を求めるものである。
二 争いのない事実
1 被告は、合成繊維を原料とする撚糸縫糸延縄釣糸の製造販売等を目的とする会社である。原告は、昭和四六年に研究開発部門勤務者として被告に入社し、その後昭和四七年七月に研究開発室次長に、昭和四九年七月に部長待遇の研究開発室室長に就任し、昭和六〇年一月三一日自己都合により退職した。
2 原告の在任期間中に別紙発明・考案目録(一)ないし(一八)記載の各発明・考案(以下これらを個別に指称するときは、「(一)考案」「(三)発明」というように、同目録記載の各番号を冠していい、また、これらを一括して指称するときは、「本件発明・考案」という。)について、特許又は実用新案登録の出願((一)、(四)考案、(五)、(七)発明、(八)考案、(九)、(一一)、(一二)、(一四)、(一六)、(一七)、(一八)発明は被告の単独出願であり、他は被告と三菱化成工業株式会社との共同出願)がされ、このうち(一一)(一三)(一五)(一六)(一七)の各発明を除くその余の発明・考案についてはいずれも設定登録がされている。
3 原告は、本件発明・考案のうち別紙発明・考案目録(一)、(二)及び(六)ないし(一八)記載の発明ないし考案をそこに記載のとおり、単独又は共同で発明・考案し、各発明・考案について特許・実用新案登録を受ける権利を被告に譲渡したが、右各発明・考案は被告の業務範囲に属し、かつ被告における原告の職務に属するものであった。
原告は、(三)発明、(四)考案及び(五)発明も右と同様である旨主張するが、この三件については、原告が発明者又は考案者であるかどうか、したがってこれを被告に譲渡したかどうか、後記のとおり争いがある。
4 原告は、退職時に被告から被告退職金規程により通常支払われるべき退職金以外に、五〇万円を受領した(以下「本件五〇万円」という。)。
5(一) 被告は、昭和五三年から現在まで一四年間にわたり(二)考案を実施して少くとも釣糸「ホンテロン」を製造販売してきた。
(二) 被告は、昭和五四年から現在まで一三年間にわたり(五)発明を実施して少くとも釣糸「フロートライン」を製造販売してきた。
(三) 被告は、(一〇)発明を実施して少くとも釣糸「マスターキング」、「アクアキング」及び「鮎ごころ」を製造販売した。
(四) 被告は、(一)考案、(三)発明、(四)考案、(六)発明、(七)発明、(八)考案、(九)発明、(一一)発明、(一二)発明、(一四)発明、(一五)発明、(一六)発明、(一七)発明をいずれも実施していない。
6 原告の在職当時、被告には従業者のした職務発明・考案に関する規定は全く存在しなかった。
三 争点
1 (二)考案及び(五)発明につき特許・実用新案登録を受ける権利の譲渡対価請求権は時効消滅したか。
2 本件五〇万円について、特許・実用新案登録を受ける権利の譲渡対価の全額として授受される旨の合意が成立していたか。
3 (三)発明、(四)考案及び(五)発明について、原告が発明者又は考案者と認められるか。
4 被告における(一〇)、(一三)、(一八)発明の実施品は何か。
5 原告が被告に対し請求し得る特許・実用新案登録を受ける権利の譲渡対価はいくらが相当か。
第三 争点に関する当事者の主張
一 争点1(消滅時効の抗弁の成否)
【被告の主張】
仮に(二)考案及び(五)発明に関して原告に職務発明・考案の譲渡対価請求権が発生したとしても、被告は、それらの各出願日((二)考案について昭和五三年七月一九日、(五)発明について昭和五四年六月一日)以前に原告から特許・実用新案登録を受ける権利の譲渡を受けたので、右各対価請求権は、遅くとも右各出願日からそれぞれ一〇年の経過をもって、時効により消滅した(東京地裁判決昭和五八年一二月二三日無体財産権関係民事・行政裁判例集一五巻三号八四四頁参照)。よって、被告は、本訴において右消滅時効を援用する。
【原告の主張】
特許・実用新案登録を受ける権利の承継があった場合の職務発明・考案の譲渡対価請求権は、特許・実用新案登録出願に際して支払われる出願補償、特許権又は実用新案権の設定登録がされ、特許権又は実用新案権が形成されたことに対して支払われる登録補償と、特許発明又は登録実用新案の実施により使用者に生じた利益に対して支払われる実施補償とに大別することができる。消滅時効の起算点である、権利を行使することができる時とは、具体的に従業者が会社に対してその権利を行使できたときと解すべきであり、本件の如く職務発明規程がない場合には従業者が退職した時がそれにあたるが、仮にしからずとしても、右のうち、出願補償は出願時に、登録補償については、特許登録又は実用新案登録時に対価請求権が発生するから、その消滅時効起算日も右出願日又は登録日となるが、実施補償については、実施により使用者が利益を享受した時点で対価請求権が発生するのであるから、その時点が消滅時効の起算日である。したがって、仮に本件において(二)考案及び(五)発明の出願補償金請求権について消滅時効が完成したとしても、それを除いた残余の補償金(実施補償金等)請求権については時効期間が経過していない。
二 争点2(本件五〇万円の趣旨)
【被告の主張】
原告が退職するに際して、原告から被告に対し、所定の退職金以外に、在職中にした発明・考案及びこれらの実施により被告が利益を得た等、被告に貢献した原告の功績に対しそれ相当の金員を支払ってほしい旨の申出があった。そこで、被告は、原告の貢献度について調査のうえ、原告に対し、退職金とは別に本件発明・考案の特許・実用新案登録を受ける権利の譲渡対価として五〇万円が相当と評定し、原告もこれを了承したので五〇万円を支払った。その結果、原告は被告を円満退職し、その旨記載した挨拶状(乙第一号証)も関係各位に送付しているのであるから、本件五〇万円支払の時点で原告・被告間の右譲渡に関する債権債務関係はすべて清算されたことは明らかである。
【原告の主張】
被告の主張は否認する。被告の退職金規定第五条には、「退職金の増額」と題して、「任職中特に功労顕著であったと会社が認めた場合は、退職金を増額して支給することがある。」との規定がある(甲第二〇号証の1~3)。原告は、右規定に基づき退職金の増額分として被告から本件五〇万円を受領したのであり、その支払明細書(甲第二一号証)には、「貴殿の退職金支払額及び株式代金は下記の通りです。」と記載され、その下に「功労金五〇〇、〇〇〇(円)」と記載されているだけで、これが本件発明・考案につき特許・実用新案登録を受ける権利の譲渡対価であるという趣旨の記載は全くない事実からも、被告主張が根拠のないものであることが裏付けられる。
三 争点3((三)発明、(四)考案及び(五)発明について、原告が発明者又は考案者と認められるか。)
【原告の主張】
1 (三)発明
公報(3)の発明者欄には原告の氏名が掲載されていないが、真実は三菱化成工業株式会社(以下「三菱化成」という。)の従業員守田和正、同角田雅美及び当時被告の従業員であった原告が(三)発明をしたのである。ところが、三菱化成が被告に無断で単独名義で特許出願したため、同社に対し、被告側から右出願が不当であることを指摘し、その結果同社が自己の非を認め被告との共同出願とする出願願書の補正がなされたのである。しかし、特許法上発明者については出願願書の補正は認められていないので、原告が同公報上発明者として掲載されていないが、原告が右発明の共同発明者であるからこそ、被告が共同出願人となることができたのである。
2 (四)考案
本当の考案者は原告である。公報(4)では、大原玉之助(以下「大原」という。)が考案者として掲載されているが、大原は被告の先代社長であるため、同考案の登録出願願書に勝手にその旨記載して出願し、その結果そのようになったのである。同人に右考案をするような技術的能力はなかった。
3 (五)発明
公報(5)でも大原が発明者として掲載されているが、同人には右発明をするだけの能力はなく、真実は原告が発明者である。原告が被告の特許出願担当者であった旨の被告主張は虚偽であり、当時発明・考案の出願手続はすべて本社企画室の中山某が担当しており、その頃洲本工場に勤務していた原告がこれに関与する余地はなかった。また、被告提出の大原から被告に対する(五)発明の譲渡証書(乙第四七号証)は、その譲受人欄に押捺されている被告の記名印判が当時被告で使用されていたものとは異なり(甲第六一号証、第六二号証のそれと甲第六三号証ないし第六六号証のそれとの対比により明白)、偽造文書である。
【被告の主張】
(三)発明、(四)考案及び(五)発明の発明者又は考案者は、別紙発明・考案目録(三)ないし(五)の各発明者又は考案者欄に記載の者である(公報(3)(4)(5))。
1 (三)発明
右発明が三菱化成と被告とによって共同出願されるに至った経過は、次のとおりである。当時、三菱化成はポリエステル原料のメーカー、被告はそのユーザーという関係にあった。そのため、両者は従来から友好協力関係にあり、そうした中で三菱化成が独自に開発したポリエチレンテレフタレートーイソフタレート共重合体について、被告がこれを三菱化成から購入して積極的に使用するという新たな目的が両者間で合意され、この目的達成のために、三菱化成の完成した(三)発明について、両者が共同して特許出願するという形式が採用されるに至ったのである。原告は、右特許発明になんら関与していない。
2 (四)考案
大原は、高分子合成繊維製の釣糸及びガットについては業界の草分け的存在であり、既に昭和三三年頃から高分子合成繊維を用いた釣糸及びガットなどを考案しており、同人は営業面で社長の職にありながらも、同時に徹底した技術屋でもあったのである。(四)考察は大原のした考案である。
3 (五)発明
(五)発明は、ポリアミド系又はポリエステル系合成繊維モノフィラメントを釣糸に用いたものである。このような高分子合成繊維製中空糸は、用途は異なるものの、既に昭和三九年当時大原によって発明されていた。(五)発明は、このような技術蓄積をもとにして、大原が自ら着想し、社内の技術陣に命じて完成させた発明である。原告は、大原の指示によって単に中空率を計算するとともに、特許出願担当者として特許事務所に出願依頼をする際にはすべて同人を経由していた関係上、(五)発明の特許出願願書添付の明細書の草案をまとめたにすぎず、発明者が大原のみであることは当時作成された同発明の大原から被告に対する譲渡証書(乙第四七号証)からも明らかであり、原告も当時そのことに何の異論もなかった。
四 争点4(被告における、(一〇)、(一三)、(一八)発明の実施品は何か)
1 (一〇)発明について
【原告の主張】
(一) 昭和五九年度被告洲本工場における押出工程管理実績表の記載
甲第五五号証の1ないし12(昭和五九年一月から同年一二月までの間の被告洲本工場における押出紡糸機の押出紡糸工程表の写し)に基づき、被告洲本工場における釣糸「マスターキング」「鮎ごころ」「アクアキング」及びテニスラケット用ガット「芯用キング」の製造工程及び製造実績を整理すると、別表3―1(同表の1ないし4欄記載の数字は、それぞれ第一ないし第四ローラーの上を糸が走るスピード〔分速m/min〕を示す。)記載のとおりとなる。一方、(一〇)発明の未延伸モノフィラメントの、<1>押出第一工程の延伸倍率は二・八~四・〇倍、<2>押出第二工程の延伸倍率は一・五~二・五倍、<3>押出第三工程の捲取比は〇・九~一・〇倍である(公報(10)「特許請求の範囲」欄参照)。
右両者を対比すると、別表3―1記載の<1>第一ローラーのスピードと第二ローラーのスピードの比率、<2>第二ローラーのスピードと第三ローラーのスピードの比率、<3>第三ローラーのスピードと第四ローラーのスピードの比率はいずれも、(一〇)発明の<1>ないし<3>の押出工程の延伸倍率・捲取比率の範囲内に設定されていることが明らかである。したがって、被告が昭和五九年当時(一〇)発明を実施して釣糸「マスターキング」「鮎ごころ」「アクアキング」及びテニスラケット用ガット「芯用キング」を製造販売していたことは明らかである。
(二)釣糸製品について
被告は、昭和五六年に(一〇)発明を実施して、釣糸製品「マスターキング」、「鮎ごころ」、「アクアキング」の製造販売を開始し現在もこれを継続している。そのことは、現実に販売されている製品(釣糸「アクアキング」〔検甲第四号証、第一六号証、第一七号証〕、釣糸「トトマスター」〔検甲第五号証〕、釣糸針付「マスタッド」〔検甲第六号証〕)及び被告の製品カタログの記載(「鮎ごころ」について昭和六〇年度〔甲第三二号証の1・一八頁〕、昭和六二年度〔甲第五二号証二二頁〕、「アクアキング」について昭和五七年度〔甲第四二号証〕、昭和六〇年度〔甲第三二号証の1・七頁〕、昭和六二年度〔甲第五二号証一〇頁〕、平成三年度〔甲第三二号証の2・七枚目〕)からも明らかである。
(三) テニスラケット用ガット製品について
被告は、昭和五六年に(一〇)発明を実施してテニスラケット用ガット製品(二六〇〇MC HY―SHEEPミクロ・レディス〔高分子ブレンド〕、四五〇〇MC HY―SHEEPミクロ〔高分子ブレンド〕等)の製造販売を開始し、現在もこれを継続している。(一〇)発明の特許出願願書添付明細書の発明の詳細な説明中には、「ポリエチレンテレフタレートモノフィラメントは、ナイロンモノフィラメントに比し剛性が大きく、釣り糸特にはりす、テニスラケットのガット、その他剛性が要求される用途に好適な性質を有する」との記載(公報(10)1欄18~22行)がある。テニスラケット用ガットでは世界的に六〇%ものシェアを誇る被告人が右ガット製品の製造販売のために(一〇)発明を実施しないなどということはおよそ考えられないことである。現に、原告が平成三年九月二三日淡路島のスーパーマーケット・ジャスコで購入した被告製品のテニスラケット用ガット製品二六〇〇MC HY―SHEEP及び四五〇〇MC HY―SHEPPについて、直ちに鑑定依頼をした兵庫県立工業技術センターにおける試験結果では、いずれも芯材を取り出し加熱してフィルムにした後、赤外線反射法により測定したところ、これらの赤外線スペクトルはポリエチレンテレフタレートのそれに類似しているとの試験成績(甲第四五号証)が出ており、このことからすれば、被告が現在も(一〇)発明の製造法を使用してテニスラケット用ガット製品を製造販売していることは明白である。
【被告の主張】
(一) 釣糸製品関係
(1) マスターキング
被告は、昭和四〇年代の後半から昭和五八年までの間に(一〇)発明とは無関係に株式会社東レ(以下「東レ」という。)から通常のポリエステル糸を購入してマスターキングを製造販売していた。被告は、昭和五六年ないし昭和五七年に(一〇)発明にかかる共重合体ポリエステル糸を用いて試作・研究を行い、昭和五八年と昭和五九年に同発明の方法によりマスターキングを製造し、それを販売したが、昭和六〇年代の初頭から市場において釣糸の低伸度化の要請が強くなり、第一押出工程の延伸倍率を二・八倍((一〇)発明の第一押出工程の延伸倍率の下限値)未満に変更して製造している。この条件変更時期は原告が退職した後であり、その結果、被告は、市場の要望に迅速かつ柔軟に対応することができたのである。
(2) 鮎ごころ
被告は、昭和五六年ないし昭和五七年に(一〇)発明にかかる共重合体ポリエステル糸を用いて試作・研究を行い、昭和五八年と昭和五九年に同発明の方法により鮎ごころを製造し、それを販売したが、昭和六〇年代の初頭から市場において釣糸の低伸度化の要請が強くなり、第一押出工程の延伸倍率を二・八倍((一〇)発明の第一押出工程の延伸倍率の下限値)未満に変更して製造している。この条件変更時期は原告が退職した後であり、その結果、被告は、市場の要望に迅速かつ柔軟に対応することができたのである。なお、このような改良を加えても「鮎ごころ」は市場に受け入れられず、昭和六二年以降は製造販売を中止している。
(3) アクアキング
被告は、昭和五六年から(一〇)発明にかかる共重合体ポリエステル糸を用いて同発明の方法によりアクアキングを製造し、それを販売したが、昭和六〇年代の初頭から市場において釣糸の低伸度化の要請が強くなり、〇・二号ないし〇・四号及び〇・六号の細物を除き、第一押出工程の延伸倍率を二・八倍((一〇)発明の第一押出工程の延伸倍率の下限値)未満に変更して製造している。この条件変更時期は原告が退職した後であり、その結果、被告は、市場の要望に迅速かつ柔軟に対応することができたのである。
(二) テニスラケット用ガット製品関係
被告は、現在ラケット用ガット製品(軟式硬式テニス用、バトミントン用など一切の製品を含む。)について、ポリエステルを原料化合物とする(一〇)発明を用いていない。すなわち、被告は、昭和五七年までは東レから通常のポリエステル糸を購入してテニスラケット用ガット製品を製造していた。被告は、昭和五八年と昭和五九年には(一〇)発明を実施したが、その売上額は昭和五八年が四三一七万四六八八円、昭和五九年が七八八七万四八七五円にとどまる。昭和六〇年以降は、硬式テニスラケット用ガット製品にはほとんどすべてナイロン糸を使用し、残りのわずかな製品及び軟式テニスラケット用ガット製品の一部はポリエステルを原料化合物としているが、その製造条件は(一〇)発明の製造法とは全然異なり、その第一延伸工程で採用されている延伸倍率は(一〇)発明の下限値二・八倍よりはるかに低い二・三〇~二・六〇倍の範囲内である。被告も、原告主張の被告製品の硬式テニスラケット用ガット製品二六〇〇MC HY―SHEEP及び軟式テニスラケット用ガット製品四五〇〇MC HY―SHEEPがポリエチレンテレフタレート(正確にはポリエチレンテレ・イソフタレート)から成ること自体は否定しない。しかし、原料化合物がポリエチレンテレ・イソフタレートであるということと被告が(一〇)発明を実施しているということとは無関係である。被告の実施している「芯用キング」の第一延伸工程で採用されている延伸倍率は前記のとおりであって、被告が(一〇)発明を実施していないことは明らかである。
2 (一三)発明について
【原告の主張】
被告は、(一三)発明を実施して「モノガット」を製造販売している。被告は、(一三)発明が特許庁審査官によって拒絶査定されており、実質的な特許性が欠如している旨主張するけれども、(一三)発明は、審査官の挙げた引用例(公知例)から容易に推考できる発明ではないから、被告としては拒絶査定に対し不服審判請求をすべきであったのである。したがって、被告としては自らすべきことをしないで、拒絶査定されたことを理由に、譲渡対価の支払を拒むことはできない。
【被告の主張】
被告は、一旦昭和五九年に(一三)発明を実施して「モノガット」の製造販売を開始したが、出荷商品の返品があったため、直ちに製造・販売を中止した。また、(一三)発明の特許出願については、平成四年三月二日付で特許庁審査官からポリエチレンテレフタレートモノフィラメントの製造法における延伸条件を変化させてみるようなことは、引用例(公知例)から当業者が容易に試み得ることとするのが相当である、との理由で拒絶査定(乙第四五号証)があり、右拒絶査定は確定している。特許庁審査官の右判断は、(一三)発明に実質的な特許性が欠如しているとの判断であり、共同出願人の被告と三菱化成は特許関係の専門家を含めて種々協議した結果、右判断を覆すことは困難との結論に達し、不服申立をしなかったものである。したがって、このように実質的な特許性が欠如している(一三)発明について被告が譲渡の対価を支払う義務はない。
3 (一八)発明について
【原告の主張】
被告は、昭和五九年七月から平成四年六月までの間に(一八)発明を実施して、中空・特殊オイル入りのHY―O―SHEEPシリーズのテニスラケット等各種のラケット用ガットを製造販売した。
【被告の主張】
(一八)発明の出願願書添付明細書の特許請求の範囲欄では、「乾燥した状態の中空孔に注油する」こと及び「ガット表面に油剤を塗布する」ことが構成要件となっている(公報(18)特許請求の範囲欄参照)。しかし、被告は注油前に中空孔を乾燥しておらず、その点で(一八)発明を実施しているとはいえない。
また、ガットの表面に油剤を塗付することは、被告が昭和三〇年代から既に実施していることである。被告は、実公昭五〇―一〇〇五四号公報(公報(19))記載の方法により中空・特殊オイル入りのHY―O―SHEEPシリーズのテニスラケット等各種のラケット用ガットを製造販売しているのであって、(一八)発明を実施していない。
五 争点5(相当な譲渡対価額)
【原告の主張】
1 出願補償
(一) 特許関係 五万九九九八円
出願件数は全部で一四件あり、一件あたりの補償額は五〇〇〇円(但し、(六)発明及び(一五)発明については発明者二名につき二分の一宛の二五〇〇円、(三)発明、(一〇)発明及び(一三)発明については発明者三名につき原告取得分は三分の一宛の一六六六円)が相当であるから、原告が被告に対し請求し得る特許関係の出願補償額は合計五万九九九八円となる。
(二) 実用新案関係 一万〇五〇〇円
出願件数は全部で四件あり、一件あたりの補償額は三〇〇〇円(但し、(二)考案については考案者二名につき原告取得分は二分の一宛の一五〇〇円)が相当であるから、原告が被告に対し請求し得る実用新案関係の出願補償額は合計一万〇五〇〇円となる。
2 登録補償
(一) 特許関係 一〇万七五〇〇円
登録件数は全部で九件あり、一件あたりの補償額は一万五〇〇〇円(但し、(六)発明については発明者二名につき原告取得分は二分の一宛の七五〇〇円、(三)発明及び(一〇)発明については発明者三名につき原告取得分は三分の一宛の五〇〇〇円)が相当であるから、原告が被告に対し請求し得る特許関係の登録補償額は合計一〇万七五〇〇円となる。
(二) 実用新案関係 三万五〇〇〇円
登録件数は全部で四件あり、一件あたりの補償額は一万円(但し、(二)考案は考案者二名につき二分の一宛の五〇〇〇円)が相当であるから、原告が被告に対し請求し得る実用新案関係の登録補償額は合計三万五〇〇〇円となる。
3 実施補償
(一) (二)考案について
(1) 釣糸「ホンテロン」関係 一三三万七二九五円
被告は、昭和五三年から現在まで一四年間にわたり(二)考案を実施して釣糸「ホンテロン」を製造販売してきた(この点は争いがない)。ところで、釣糸「ホンテロン」は号柄によって重量を異にし、各号柄五〇メートルあたりの重量は別表1―2のA表記載のとおりである。そして、これで別表1―1(昭和五九年一年間に被告が製造した釣糸「ホンテロン」の品名及び重量をまとめたもの)記載の釣糸「ホンテロン」の各号柄ごとの重量を除すると、別表1―2のB表記載のとおり、昭和五九年一年間に被告が製造販売した釣糸「ホンテロン」の本数は、一本あたりの長さを五〇メートルとした場合、合計三五万三七八二本となる。同製品の一本五〇メートルあたりの平均販売単価は二七〇円であり、(二)考案の考案者の数は原告を含めて二名である。また、実用新案の場合、実施補償額は、売上金額の〇・二%が相当である。そこで、以上の各数値を基礎として原告の取得すべき釣糸「ホンテロン」関係の実施補償金額を計算すると、次の算式により合計一三三万七二九五円となる。
270×353,782=95,521,140
95,521,140×0.002×14×1/2=1,337,295
(2) 被告は、昭和六三年一〇月三一日、有限会社よつあみとの間に、同社が製造販売した超硬ハリスが(二)考案の技術的範囲に属することを確認し、同社が被告に対し五三万円を支払う旨の和解契約を締結し、その後右金員の支払を受けた。右金員の名目は同契約書(甲第三六号証の1)上では解決金と記載されているが、その実質は(二)考案の実施料相当額の損害賠償金であり、原告から実用新案登録を受ける権利を承継したことにより得た利益である。このうち原告の取得分はその一〇%に相当する五万三〇〇〇円と評定されるべきである。
(二) (五)発明について(釣糸「フロートライン」関係 二一三万八〇三九円)
被告は、昭和五四年から現在まで一三年間にわたり(五)発明を実施して釣糸「フロートライン」を製造販売してきた(この点は争いがない。)。ところで、釣糸「フロートライン」は号柄によって重量を異にし、各号柄五〇メートルあたりの重量は別表2―2のA表記載のとおりである。そして、これで別表2―1(昭和五九年一年間に被告が製造した釣糸「フロートライン」の品名及び重量をまとめたもの)記載の釣糸「フロートライン」の各号柄ごとの重量を除すると、別表2―2のB表記載のとおり、昭和五九年一年間に被告が製造販売した釣糸「フロートライン」の本数は、一本あたりの長さを五〇メートルとした場合、合計二八万一一三六本となり、同製品の一本五〇メートルあたりの平均販売単価は一九五円である。また、特許の場合、実施補償額は、売上金額の〇・三%が相当である。そこで、以上の数値を基礎として原告の取得すべき釣糸「フロートライン」関係の実施補償金額を計算すると、次の算式により合計二一三万八〇三九円となる。
195×281,136=54,821,520
54,821,520×0.003×13=2,138,039
(三) (一〇)発明について
(1) 釣糸関係
<1> マスターキング関係 一二五万九六八九円
被告は、昭和五六年から現在まで一一年間にわたり(一〇)発明を実施して釣糸「マスターキング」を製造販売してきた。ところで、釣糸「マスターキング」は、別表3―2の<1>A表記載のとおり、使用単糸直径ごとに重量を異にし、これで別表3―1(昭和五九年一年間に被告が製造した釣糸「マスターキング」、「鮎ごころ」、「アクアキング」、テニスラケット用ガット「芯用キン」グの品名及び重量をまとめたもの)記載の釣糸「マスターキング」の重量を使用単糸直径ごとに除すると、昭和五九年一年間に被告が製造販売した釣糸「マスターキング」の本数は、別表3―2の<1>B表記載のとおり、合計二〇万四四九五本となる。同製品の一本あたりの平均販売単価は五六〇円であり、(一〇)発明の発明者の数は原告を含めて三人である。また、特許の場合、実施補償額は、売上金額の〇・三%が相当である。そこで、以上の数値を基礎として原告の取得すべき釣糸「マスターキング」関係の実施補償金額を計算すると、次の算式により合計一二五万九六八九円となる。
560×204,495=114,517,200
114,517,200×0.003×11×1/3=1,259,689
<2> 鮎ごころ関係 一五六万六二六六円
被告は、昭和五六年から現在まで一一年間にわたり(一〇)発明を実施して釣糸「鮎ごころ」を製造販売してきた。ところで、釣糸「鮎ごころ」は号柄によって重量を異にし、各号柄五〇メートルあたりの重量は釣糸「ホンテロン」と同様別表1―2のA表記載のとおりである。そして、これで別表3―1記載の釣糸「鮎ごころ」の各号柄ごとの重量を除すると、別表3―2の<2>記載のとおり、昭和五九年一年間に被告が製造販売した釣糸「鮎ごころ」の本数は、一本の長さを五〇メートルとした場合、合計二五万四二六四本となり、同製品の一本あたりの平均販売単価は五六〇円であり、(一〇)発明の発明者の数は原告を含めて三人である。また、特許の場合、実施補償額は、売上金額の〇・三%が相当である。そこで、以上の数値を基礎として原告の取得すべき釣糸「鮎ごころ」関係の実施補償金額を計算すると、次の算式により合計一五六万六二六六円となる。
560×254,264=142,387,840
142,387,840×0.003×11×1/3=1,566,266
<3> アクアキング関係 一〇八万六五〇六円
被告は、昭和五六年から現在まで一一年間にわたり(一〇)発明を実施して釣糸「アクアキング」を製造販売してきた。ところで、釣糸「アクアキング」は号柄によって重量を異にし、各号柄五〇メートルあたりの重量は釣糸「ホンテロン」と同様別表1―2のA表記載のとおりである。そして、これで別表3―1記載の釣糸「アクアキング」の各号柄ごとの重量を除すると、別表3―2の<3>記載のとおり、昭和五九年一年間に被告が製造販売した釣糸「アクアキング」の本数は、一本の長さを五〇メートルとした場合、合計一七万六三八一本となり、同製品の一本(五〇メートル)あたりの平均販売単価は五六〇円であり、(一〇)発明の発明者の数は原告を含めて三人である。また、特許の場合、実施補償額は、売上金額の〇・三%が相当である。そこで、以上の数値を基礎として原告の取得すべき釣糸「アクアキング」関係の実施補償金額を計算すると、次の算式により合計一〇八万六五〇六円となる。
560×176,381=98,773,360
98,773,360×0.003×11×1/3=1,086,506
(2) テニスラケット用ガット芯用キング関係 二九五万八七〇五円
被告は、昭和五六年から現在まで一一年間にわたり(一〇)発明を実施してテニスラケット用ガット「芯用キング」を製造販売してきた。ところで、別表3―1記載の「芯用キング」の総製造重量は二二五一キログラムであり、これを一本一二メートルあたりの重量五・四四グラムで除すると、昭和五九年一年間に被告が製造販売したテニスラケット用ガット「芯用キング」の本数は、一本あたりの長さを一二メートルとした場合、合計四一万三八〇五本となり、同製品の一本あたりの平均販売単価は六五〇円であり、(一〇)発明の発明者の数は原告を含めて三人である。また、特許の場合、実施補償額は、売上金額の〇・三%が相当である。そこで、以上の数値を基礎として原告の取得すべきテニスラケット用ガット「芯用キング」関係の実施補償金額を計算すると、次の算式により合計二九五万八七〇五円となる。
650×413,805×0.003×11×1/3=2,958,705
(四) (一三)発明について(「モノガット」関係 一〇万八八一〇円)
被告は、昭和五九年一月から平成三年一二月末日まで八年間にわたり(一三)発明を実施して「モノガット」を製造販売してきた。ところで、昭和五九年一年間に被告が製造販売した「モノガット」の総重量は、別表4記載のとおり、合計二五五一・四キログラムであり、これを一個あたりの重量二一グラムで除すると、昭和五九年一年間に被告が製造販売した「モノガット」の個数は合計一二万〇九〇〇個となり、同製品の一個あたりの平均販売単価は一五〇円であり、(一三)発明の発明者の数は原告を含めて四人である。また、特許の場合、実施補償額は、売上金額の〇・三%が相当である。そこで、以上の数値を基礎として原告の取得すべき「モノガット」関係の実施補償金額を計算すると、次の算式により合計一〇万八八一〇円となる。
150×120,900×0.03×8×1/4=108,810
(五) (一八)発明について(ラケット用ガット関係 五七六万円)
被告は、昭和五九年七月から平成四年六月まで八年間にわたり(一八)発明を実施して各種ラケット用ガットを製造販売してきた。月産五万本、一本あたりの平均販売単価六〇〇円として原告の取得すべき右ラケット用ガット関係の実施補償金額を計算すると、次の算式により合計五七六万円となる。
600×50,000×12×8×0.002=5,760,000
【被告の主張】
仮に、原告に本件発明・考案についての譲渡対価請求権があるとしても、原告主張額は過大である。
1 出願補償・登録補償について
原告主張の基準金額に従うとしても、別表5記載のとおり、被告が原告に対し支払うべき出願補償金額は合計五万一六七〇円、同じく登録補償金額は合計一一万一二五〇円であり、これらの総計は一六万二九二〇円となるにすぎない。
2 実施補償について
(一) 原告の実施補償金額の計算方法の不当性
原告の実施補償金額の算定に関する主張は、次の諸点において誤りがある。
(1) 原告は、歩留り率を考慮せずに工場での生産品の全て一〇〇%が商品となって販売されることを前提に実施補償金額を計算するという初歩的な誤りを犯している。実際に工場で生産した製品を商品として販売するにあたっては、工程通過時に必然的に生ずる屑部分、物性検査用のサンプル部分、不良品等の除外品、汚れ不合格品、在庫処分品、出荷先からの返品等の出ることは理の当然である。因みに釣糸「ホンテロン」で言えば、昭和五九年当時のその歩留り率は約六五%である。
(2) 原告は、製品一個あたりの重量(目付)についても、実際よりも小さい値で計算している。
(3) 原告は、職務発明・考案の実施補償金の料率をいずれも〇・三%ないし〇・二%としている。しかし、これは「国家公務員の職務発明等に対する補償金支払要領(五九特総第一三六六号)」(以下「国の基準」という。)とも大きく乖離し、本件事案においてこのような高率の補償を認めるべき特段の理由はない。
(4) 原告は、一律に昭和五九年の生産量を基準としてこれに実施期間を乗じて計算しており、その前後の現実の生産実績を無視している。
(二) 正当な実施補償金額
前項の諸点を修正して算定すると、被告が原告に対して支払うべき実施補償金額は、以下算定のとおり、合計八八万五三〇五円となる。
(1) (二)考案の実施補償金 七一万二五六三円
<1> 釣糸「ホンテロン」関係
被告は、(二)考案を実施して、昭和五三年七月から平成三年一月二一日までの間に合計八億六三四一万七〇〇〇円相当の釣糸「ホンテロン」を製造販売した。これに対する同考案の実施料率としては右販売額の三%が妥当であり、これが同考案を実施することにより被告が得た利益に相当する。したがって、(二)考案の実用新案登録を受ける権利取得によって被告がこれまでに得た利益は、次の算式により二五九〇万二五一〇円となる。
863,417,000×0.03=25,902,510
そして、国の基準では、国の収入実績が一〇〇万円を超える場合において、国が発明者に対し支払う補償金の額は、次の計算式で求められることになっている。
(当該収入実績-1,000,000)×(5/100)+180,000
本件について、右計算式に従い、かつ(二)考案の考案者が二名であることを考慮して算定すると、(二)考案の実施に伴い原告の取得すべき実施補償金額は、次の算式のとおり七一万二五六三円となる。
〔(25,902,510-1,000,000)×(5/100)+180,000〕×1/2=712,563円
<2> 被告が有限会社よつあみから受領した五三万円
原告は、実施料としての対価と損害賠償金とを全く区別せず両者を混同して主張している。しかし、実施料と損害賠償金とはその性格が基本的に異なる。特許法三五条四項は「受けるべき利益」と規定しており、損害賠償金はそこにいう利益とはいえない。のみならず、原告は、有限会社よつあみに対し侵害を示唆する一方で、本件において被告に対し対価を求めており、その不当性たるや甚だしいものがあり、その点でも右請求は認められるべきものではない。
(2) (一〇)発明の実施補償金 一七万二七四二円
被告が(一〇)発明を実施した結果、昭和五六年五月一九日から平成二年一二月までの間に得た売上の合計額は三億四一六四万五五六三円である。右発明は、独占力の高い発明でもなく、その他特段考慮すべき事情もないから、右利益に相当する実施料率は右売上額の三%で十分である。結局、右発明の特許を受ける権利取得によって被告が得た利益は、次の算式のとおり一〇二四万九三六七円である。
341,645,563×0.03=10,249,367
本件について、前記国の基準に従って計算すると、相当な実施補償金額は六九万〇九六八円である。
そして、(一〇)発明の発明者は四人であるから、原告の取得すべき実施補償金額はこの四分の一の一七万二七四二円となる。
(3) 原告の技術レベルは、原告本人の供述からも明らかなとおり、前勤務先の日本合成化学工業株式会社の研究関係部門に一九年も勤務していたにもかかわらず、わずか数件の出願を共同発明として行なっているに過ぎず、客観的に見て、原告が被告に入社した当時の技術レベルは決して高いものとはいえなかった。このような原告に対し、被告は、技術的に教育し、部下を与え、技術開発の責任者としての地位を与え、多額な研究開発費、研究設備費を与えて発明を完成し得る環境を整えたのである。すなわち、被告は原告が発明を完成するに際して多大な貢献をしているのである。現に、昭和三三年から原告が入社するまでに被告は一〇数件の特許・実用新案の出願を行なっており、合成繊維の釣糸、及びガットについては当業界の草分け的存在であった(乙第六号証ないし第一三号証)。右事実は被告の支払うべき譲渡の対価算定に際し十分に参酌されなければならない。
3 まとめ
以上によれば、被告が原告に対し支払うべき補償金額は、消滅時効の抗弁が認められない場合でも、前記1・2の合計一〇四万八二二五円から既に支払済みの本件五〇万円を控除した五四万八二二五円にすぎない。
第四 争点に対する判断
一 争点1(時効消滅の成否)
原告が在職当時被告には従業者がした職務発明・考案の取扱いについて格別の社内規定はなかったこと、したがって原告が本件特許・実用新案登録を受ける権利を被告に譲渡しなければならない義務もなかったことは当事者間に争いがなく、甲第一号証ないし第一〇号証の各1・2、第一一号証、第一二号証の1・2、第一三号証、第一四号証の1・2、第一五号証ないし第一七号証、第一八号証の1・2、第六七号証ないし第九二号証、原告本人(第一、二回)尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すれば、従業者が発明・考案をした都度、被告がこれを随時弁理士に依頼し自己の権利として特許・実用新案登録の出願をしていたことが認められる。
ところで、特許法又は実用新案法上、従業者がした職務発明・考案について、特許・実用新案登録を受ける権利を使用者に承継させたとき、発明者・考案者である従業者が使用者に対し取得する相当の対価の請求権は、「特許を受ける権利」又は「実用新案登録を受ける権利」が特許権・実用新案権とは別個の独立した権利として規定されており(特許法三三条、同条を準用する実用新案法九条二項)、しかも、右の対価が「特許を受ける権利」又は「実用新案登録を受ける権利」を使用者に承継させることに対する対価であると定められていることからすれば、特許法三五条三項及び同項を準用する実用新案法九条三項所定の右請求権が発生するのは、契約・勤務規則に特段の定めがない限り、特許・実用新案登録を受ける権利の承継の時であると解するのが相当である。したがって、右請求権についての消滅時効は、特段の定めのない限り、その権利行使をすることができる時、すなわち承継の時から進行すると解するのが相当である。
これを本件についてみると、(二)考案及び(五)発明は、遅くとも被告名義による各出願日((二)考案は昭和五三年七月一九日、(五)発明は昭和五四年六月一日)に、発明者・考案者から被告へ特許・実用新案登録を受ける権利が譲渡されたものと認められる。そして、本件訴訟の訴状が当裁判所に提出されたのが、平成三年一月一二日であることは、本件記録上明らかである。そうすると、原告主張の事実がすべて認められるとしても、これらの発明・考案に関する特許・実用新案登録を受ける権利の承継に伴う原告の対価請求権は、いずれもその権利を行使しうる時から一〇年を経過していることが明らかであるから、被告の時効援用により、消滅したものといわざるをえない。したがって、右考案及び発明にかかる原告の請求は、その余の点について検討するまでもなく、失当であることに帰する。
(原告の主張について)
原告は、この点に関し、右対価を出願補償、登録補償と実施補償に分けて、種々論じるが、契約・勤務規則に別段の定めがない本件のような場合において、特許・実用新案登録を受ける権利を承継した使用者が、特許・実用新案登録出願をするか否か、これらを実施するか否かは、譲受人たる使用者の自由であるから、原告主張の解釈をとると、使用者が出願も実施もしない場合には対価の請求をすることができないことになり、不合理であるし、また、特許・実用新案登録を受ける権利という一個の権利の一回的譲渡の対価は、譲渡時において一定の額として算定しうるはずのものであるから、後に登録になったか否か、実施により利益を生じたか否か等の事情によって、対価の額がその実施等の時点で初めて定まると解するのは、相当でない。もっとも、これらの事情は、後日譲渡時における「相当の対価」を評定するに当たり重要な参考資料となることは否定できないが、これが直接の算定根拠となるものではない。特許法三五条四項(実用新案法九条二項)は、対価の算定につき、「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」を考慮すべきことを定めているが、右利益は、「受けるべき利益」とされていることからも明らかなように、その発明により現実に受けた利益を指すのではなく、受けることになると見込まれる利益、すなわち、使用者等が権利承継により取得しうるものの承継時における客観的な価値を指すものであることが明らかである。
したがって、これと見解を異にする原告の主張は採用できない。
二 争点2(本件五〇万円の趣旨)
被告は、本件五〇万円は、本件発明・考案の特許・実用新案登録を受ける権利の譲渡対価全額であり、原告もそれが全額であることを了承して受領したのであるから、その支払時点で原告・被告間の右譲渡に関する債権債務関係はすべて清算された旨主張する。
しかしながら、甲第二一ないし第二三号証、第三三号証に原告本人(第一、二回)尋問の結果を総合すれば、原告は、退職直前の昭和六〇年一月二八日、兵庫県洲本市内の喫茶店で、被告代表取締役高島豊(以下「高島」という。)と面談し、その際、高島に対し、自分が在職中にした発明、考案及び工程改善努力等の被告に対する貢献を正当に評価して、通常の退職金以外に別途金員を支払うよう求めたこと、しかし、高島は、その場で原告に対し明確な回答をせず、両者間において原告の要求の諾否及び支払金額の多寡等の詳細な内容についての詰めた話し合いはなんらなされなかったこと、その後原告と被告の専務取締役梶谷重直及び総務部長兼経理部長安井功の三名は、同年二月一三日、同市内の食堂で原告の右要求に関して再度話し合いの機会をもち、そこで被告側から原告に対し、支給額を四二〇万六七〇〇円とした「退職金計算」と題するメモを交付し、そこに記載した通常の退職金とは別に五〇万円を支払う旨の提案がなされたが、原告は、要求額は被告提示の増額分を含めた退職金額と比較しても一桁違うと答えて右提案を拒絶し、結局その日には結論が出ず物別れに終わったこと、その後、被告から原告に対し一方的に、同月二〇日付の功労金五〇万円を含む退職金と退職に伴って被告側で買い取る株式の代金の額を記載した書面(甲第二一号証)と共に「御回答書」と題する書面(甲第二三号証)が郵送されてきたこと、右「御回答書」と題する書面中には「(2/13/面談の折、貴殿の申し出による特許、実用新案等貢献度評価の件)上記の件、社内で検討致しました結果、当初御説明申し上げました通り退職金の増額(功労金)として考慮致しておりますので支払願の変更の意思はございません。従いまして、貴意の御要望には応じ兼ねますので御了承願います。」と記載されていたこと、原告が右書面に応答しないうちに、同月二〇日、被告から原告の預金口座に税引金額四七五万四七五〇円が振込送金されたことが認められる。
右認定事実によれば、原告・被告間において、職務発明・考案の譲渡対価全額を五〇万円とする旨の合意が成立していたものとは認められず、むしろ、原告・被告間にこの点に関する合意が成立しない状態で、原告が被告を退職するに至ったため、被告が一方的に右譲渡対価を五〇万円と定めて支払ったものと認められるから、右金員の支払によって右譲渡に関する原告・被告間の債権債務関係が清算されたものと解することはできず、右合意の成立を前提とする被告の主張は到底採用できない。
なお、原告は被告を円満退職した旨記載した挨拶状を関係者に郵送しているが(乙第一号証)、一般にこの種挨拶状が単なる社会儀礼上の意味以外に格段の意義を有しない文書であることは経験則上明らかであるから、そのような事実があっても前記判断を動かすことはできない。
三 争点3((三)発明及び(四)考案について原告が発明者又は考案者として関与したか)
原告は、(三)発明の共同発明者であり、(四)考案の考案者であると主張するが、本件全証拠によるも、右原告主張事実を認めるに足りない。
したがって、右考案及び発明にかかる原告の請求は、その余の点について検討するまでもなく、失当であることに帰する。
四 争点4(被告における(一〇)、(一三)、(一八)発明の実施品は何か)
(事実関係)
1 (一〇)、(一三)、(一八)発明の各技術内容
(一) (一〇)発明
(一〇)発明の構成要件を分説すると(公報(10))、<1>ポリエチレンテレフタレート一〇〇重量部、およびテレフタル酸成分対イソフタル酸成分のモル比が九七対三~八〇対二〇である変性ポリエチレンテレフタレート五~一五〇重量部の混合物からなる未延伸モノフィラメントを、<2>八五~一〇〇℃の湿熱条件下二・八~四・〇倍延伸し、<3>さらに一八〇~二五〇℃の気体雰囲気中で一・五~二・五倍延伸し、<4>次いで一八〇~二五〇℃の気体雰囲気中で〇・九~一・〇倍の捲取比で熱処理することを特徴とする、<5>ポリエチレンテレフタレートモノフィラメントの製造法となること、明細書の発明の詳細な説明の欄には、「本発明者らは、…特定のポリエチレンテレフタレート混合物を原料とし、特定の条件により延伸および熱処理を行うときは、直線強度や透明性などを損うことなく、衝撃に対する結節強度および引張りに対する結節強度をナイロンモノフィラメントのそれと同等あるいはそれ以上にまで改善し得ることを知得して本発明を完成した。」(公報(10)2欄15~22行)、右構成要件<2>について、「延伸倍率が小さすぎると衝撃に対する結節強度の向上は見られず、」(公報(10)5欄5~7行)、右構成要件<3>について、「延伸倍率が小さすぎると衝撃に対する結節強度の大きいモノフィラメントを得ることができず、」(公報(10)5欄22~24行)との各記載があることが認められ、これらの記載に照して考えると、(一〇)発明の技術的意義の一つがモノフィラメントの延伸倍率を前記の各範囲に限定した点にあることは明らかである。
(二) (一三)発明
(一三)発明の構成要件を分説すると(公報(13))、<1>未延伸ポリエチレンテレフタレートモノフィラメントを、<2>八五~一〇〇℃の湿熱条件下二・〇~二・五倍延伸し、<3>さらに二〇〇~三〇〇℃の気体雰囲気中で二・〇~四・〇倍延伸し、<4>次いで二〇〇~三〇〇℃の気体雰囲気中で一・〇~〇・九の捲取比で熱処理することを特徴とする、<5>ポリエチレンテレフタレートモノフィラメントの製造法となること、明細書の発明の詳細な説明中には、「この方法(裁判所注記・(三)発明の方法)によるときは、強度特に衝撃に対する結節強度がすぐれたモノフィラメントを製造することができるが、直接引張強力にバラツキが見られ、なお改善が望まれていた。」(公報(13)1頁右欄9~12行)、「本発明者らは、上記のような要求に応えるべくさらに研究を重ねた結果、特定の条件により延伸および熱処理を行なうときは、上記従来法で製造したモノフィラメントに比し、直線引張強力がすぐれ、しかもそのバラツキが大きく改善されたモノフィラメントを得ることができることを知得して本発明を完成した。」(公報(13)1頁右欄17行~2頁左欄3行)との各記載があることが認められ、これらの記載に照して考えると、(一三)発明の技術的意義の一つが(一〇)発明と同様にモノフィラメントの延伸倍率を前記の各範囲に限定した点にあることは明らかである。
(三) (一八)発明
(一八)発明の特許請求の範囲1の発明の構成要件を分説すると(公報(18))、<1>中空孔を有する合成樹脂ガットを乾燥させ、<2>その乾燥した状態の中空孔に注油すると共に、<3>ガット表面に油剤を塗付することを特徴とする、<4>ガットの製造法となる。
2 被告の洲本工場における昭和五九年当時の押出紡糸工程の実績内容
証拠(甲第五五号証の1~12、第五六号証、原告本人〔第一、二回〕)によれば、原告は、昭和四九年七月から研究開発室室長として、被告の洲本工場に勤務していたこと、同工場においては押出紡糸機を使用して釣糸及びテニスラケット用ガットを製造していたこと、原告は、工程管理及び品質管理の必要上、昭和五七年頃から従業員に命じて、同工場における毎日の製造工程内容に関して、<1>製造「月日」、<2>「製品名」、<3>「ノズル倍率(押出紡糸機のノズルの穴径・数、最高延伸倍率〔第三ローラーのスピードを第一ローラーのスピードで割った値〕)」<4>「ロットNo、チップ名(原材料樹脂のロット番号・名前)」、<5>「バイエルゲージ(樹脂の送り量を決めるモーターの回転目盛数値)」、<6>「第一ないし第四の各ローラーの糸送りスピード〔分速m/min〕」、<7>製造された製品の重量等の詳細を「押出紡糸工程表」に記載させ、その原本を会社に保管する一方で、自らはその写しを手元に置いていたこと、このうち昭和五九年分の「押出紡糸工程表」の写しが甲第五五号証の1~12(以下本項で単に「押出紡糸工程表」というときは、これを指す。)であること、右甲第五五号証の1~12に基づき、同年度の洲本工場における毎日の工程内容を整理すると、別表1―1(釣糸「ホンテロン」関係、但し三月二六日及び二七日の分は除き、重量は合計一〇一九・四キログラムとなる。)、別表3―3(釣糸「マスターキング」「鮎ごころ」「アクアキング」及びテニスラケット用「芯用キング」関係)、別表4(「モノガット」関係)記載のとおりとなることが認められる。このうち、別表3―3(同表の1ないし4欄記載の数字は、それぞれ前記第一ないし第四ローラーの上を糸が走るスピード〔分速m/min〕を示す。)によれば、<1>第一ローラーのスピードと第二ローラーのスピードの比率、<2>第二ローラーのスピードと第三ローラーのスピードの比率、<3>第三ローラーのスピードと第四ローラーのスピードの比率がいずれも、(一〇)発明の前記構成要件<2>ないし<4>の押出工程の延伸倍率・捲取比率の範囲内に設定されていることが明らかである(但し、三月二四日及び同月二六日の鮎ごころ一号の分と、同日のアクアキング一・五号及び七月三〇日のアクアキング一号の分を除く。これらはいずれも第一延伸倍率が二・七倍であるから、(一〇)発明の構成要件<2>を充足しないことは明らかである。)。
3 釣糸製品の販売状況等について
証拠(甲第二四号証~第二六号証、第三二号証の1・2、第四二号証、第五二号証、第九八号証、検甲第四号証、第五号証、第一五号証、第一六号証、第一七号証、乙第四号証、原告本人〔第一、二回〕)に弁論の全趣旨を総合すれば、被告は、釣糸「アクアキング」、同「トトマスター」、ノルウェーの「マスタッド」社製造の釣鉤に釣糸として「アクアキング」を組み合わせた数種類の仕掛、「アクアキング」を使用した鮎釣用の空中道糸を現在も販売しており、うち、「トトマスター」以外は被告の製品カタログにも記載されており、最近も(一〇)発明の特許登録番号を掲載した被告の製品が製造販売(商品名「ハリスホンテロン 50m」)されていること及び「鮎ごころ」も昭和六一年の途中まで販売していたことが認められる。また、証拠(乙第四四号証、第四八号証、検甲第五号証、原告本人)によれば、右「トトマスター」とは、被告洲本工場内で「マスターキング」と呼ぶポリエチレンテレフタレートモノフィラメントを八本ねじりあわせた組糸の商品名であることが認められる。
4 テニスラケット用ガット製品の販売状況等について
証拠(甲第四四号証~第四六号証、検甲第一三号証、第一四号証)に弁論の全趣旨を総合すれば、原告が平成三年九月二三日淡路島のスーパーマーケット・ジャスコで購入した被告製品の硬式テニスラケット用ガット製品二六〇〇MC HY―SHEEP及び軟式テニスラケット用ガット製品四五〇〇MC HY―SHEEPについて、直ちに鑑定依頼をした兵庫県立工業技術センターにおける試験結果では、いずれも芯材を取り出し加熱してフィルムにした後、赤外線反射法により測定したところ、これらの赤外線スペクトルはポリエチレンテレフタレートのそれに類似していたとの試験成績が出ていることが認められる。
(判断)
1 (一〇)発明の実施品
被告が(一〇)発明を実施して昭和五八年から昭和五九年末まで釣糸「マスターキング(トトマスター)」、「鮎ごころ」及びテニスラケット用ガット「芯用キング」を、昭和五六年から昭和五九年末まで釣糸「アクアキング」を、それぞれ製造販売していたことは争いがなく、前記(事実関係)3、4記載のその後の販売状況及び後記の被告のこの点に関する反証内容等弁論の全趣旨をも併せ考えると、被告は、昭和六〇年以降も、「アクアキング」や軟式テニスラケット用ガット等について、第一工程の延伸倍率が(一〇)発明と相違する旨記載され、その製造条件等の一覧表が添付された、被告常務取締役管理部長作成の実施報告書(乙第一六号証)の作成日である平成三年九月三日の直前である同年八月末まで(但し「鮎ごころ」については昭和六〇年末頃まで)、(一〇)発明の方法により釣糸「マスターキング(トトマスター)」、「アクアキング」(「アクアキング」を使用して他の商品名で販売されている商品を含む)、「鮎ごころ」及びテニスラケット用ガット「芯用キング」を製造し、平成三年末頃まで(但し「鮎ごころ」については昭和六一年途中まで)販売したものと認められる。
(被告の主張について)
被告は、原告が在職していた昭和五八年、五九年には(一〇)発明を実施して釣糸及びテニスラケット用ガットを製造販売していたが、昭和六〇年一月原告退職後は製造方法中第一押出工程の延伸倍率を変更し、右発明を実施していない旨主張し、右主張に沿う証拠として乙第一六号証、第二四号証、第四三号証、第四八号証(いずれも被告常務取締役管理部長作成の実施報告書)を提出するが、<1>甲第二三号証の記載に照らし、本件特許・実用新案登録を受ける権利の譲渡対価を五〇万円とする旨の合意が成立していないことは明らかであるにもかかわらず、合意が成立している旨執拗に主張し、その旨記載した被告総務部長兼経理部長作成の陳述書を提出したうえ、被告申請証人にもその旨供述させたり、<2>また、当初は、(一〇)発明を実施したのは、「アクアキング」の細物のみであると主張して、その旨の実施報告書を提出し、原告が甲第五五号証を提出してはじめて、「マスターキング」、「鮎ごころ」、「アクアキング」の太物及び「芯用ガット」について、甲第五五号証で明らかにされた昭和五九年末まで(一〇)発明を実施したことを認める等、被告の応訴態度が誠実さを欠くと認められることを考え併せると、被告の右主張・立証をもってしても、当裁判所の前記認定を変更することはできない。
2 (一三)発明の実施品
昭和五九年一年間の被告洲本工場における「モノガット」の製造工程実績は別表4(同表の1ないし4欄記載の各数字の意味は前記のとおり)記載のとおりであり、同表によれば、<1>第一ローラーのスピードと第二ローラーのスピードの比率、<2>第二ローラーのスピードと第三ローラーのスピードの比率、<3>第三ローラーのスピードと第四ローラーのスピードの比率がいずれも、(一三)発明の前記構成要件<2>ないし<4>の押出工程の延伸倍率・捲取比率の範囲内に設定されていることが明らかである。右事実に甲第五六、第六〇号証及び原告本人(第一、二回)尋問の結果並びに弁論の全趣旨を併せ考えると、昭和五九年当時被告が(一三)発明を実施して「モノガット」を製造販売していたことは明らかであり、被告のこの点に関する反証内容等弁論の全趣旨をも考え併せると、被告は、遅くとも昭和五九年以降平成三年一二月末日まで(一三)発明を実施して「モノガット」を製造販売したものと認めるのが相当である。
なお、右認定に反する被告主張は、前記1(被告の主張について)と同様の理由により採用できない。
もっとも、被告主張のとおり(第三、四2〔被告の主張〕)、同発明についての特許出願は拒絶査定され、同査定は確定している(乙第四五号証、弁論の全趣旨)。
3 (一八)発明について
原告は被告が昭和五九年七月から平成四年六月まで(一八)発明を実施してテニスラケット等各種のラケット用ガットを製造販売した旨主張するが、本件全証拠をもってしても右原告主張事実を認めるに足りない。
五 争点5(原告が被告に対し請求し得る対価補償額)
1 特許法三五条三項、四項、実用新案法九条三項には、従業者が職務究明・考案について使用者に特許・実用新案登録を受ける権利を承継させたときは、相当の対価の支払を受ける権利を有すること、その対価の額は、その発明ないし考案により使用者が受けるべき利益の額及びその発明ないし考案がされるについて使用者が貢献した程度を考慮して定めなければならないことが規定されている。そして、前示のとおり、契約・勤務規則等に別段の定めのない限り、右相当な対価の支払請求権は、特許・実用新案登録を受ける権利の承継の時に発生し、対価の額はその時点における客観的に相当な額を定めるべきものと解するのが相当であるが、承継の時より後に生じた事情、例えば、特許・実用新案権の設定登録がなされたか否か、当該発明・考案の独占的実施又は実施許諾によって使用者が利益を得たか否か、得た場合はその利益の額等も、右時点における客観的に相当な対価の額を認定するための資料とすることができるものと解するのが相当である。
なお、被告は原告のした職務発明・考案については当然に無償の通常実施権を有するのであるから、同条にいう使用者が「受けるべき利益」とは、被告がその発明・考案を実施することによる利益をいうものではなく、それを超えて、権利の譲渡を受けたことにより得られる権利を独占すること(特許法等により法律上他者に対してその発明・考案の実施を禁止し、又は許諾し得る場合と、その技術を秘匿して事実上その技術を独占し得る場合とがある。)による利益をいうものである。
これを本件についてみると、(二)発明及び(五)発明については譲渡対価請求権が時効消滅し、(三)発明及び(四)考案については原告が権利譲渡者とは認められないことは前判示のとおりであるから、譲渡対価請求の対象となるのはその余の発明・考案に関する権利となるが、そのうち被告が(一)考案、(六)発明、(七)発明、(八)考案、(九)発明、(二)発明、(三)発明、(一四)発明、(一五)発明、(一六)発明、(一七)発明を実施していないことは当事者間に争いがなく、またこれら発明・考案につき特許・実用新案登録を受ける権利の譲渡を受けたことにより被告が「受けるべき利益」についての具体的な主張立証はない。(一八)発明については、前判示のとおりこれを被告が実施した事実を認めるに足りる証拠はなく、また同発明につき特許を受ける権利の譲渡を受けたことにより被告が「受けるべき利益」についての具体的な主張立証はない。(一三)発明については、前判示のとおり、被告はこれを実施して商品を製造販売していることは認められるが、同発明につき特許を受ける権利の譲渡を受けたことにより被告が「受けるべき利益」についての具体的主張立証はなく、また、その特許出願は拒絶査定され特許を受けることができないことが確定しているから、結局、同発明につき特許を受ける権利の譲渡を受けたことにより被告が「受けるべき利益」は僅少と評価せざるを得ない。
次に、特許・実用新案登録を受ける権利の譲渡を受けた職務発明・考案を被告が実施して商品を製造販売している場合、その製造販売をすることができる法的根拠は、被告がその権利について無償の通常実施権を有するからではあるけれども、それだけの製造販売の実績をあげることができた経済的理由は、被告の企業努力は勿論であるが、それ以外にそれを超えて、被告が権利の譲渡を受けてその発明・考案の実施権を独占することができたことに基因する部分があることは明らかである(すなわち、被告の販売実績は法定の通常実施権を得ての企業努力に基づく部分と独占権に基づき他企業の製造販売を禁止することができた結果に基づく部分の合計であると考えられる。)。そこで、以下具体的に検討する。
2 (一〇)発明の相当な対価額
(一) 売上総額
<1> マスターキング(トトマスター)
前認定のとおり、被告は、出願公告日である昭和六〇年四月一六日から平成三年八月末日まで六年と四・五か月間にわたり(一〇)発明を独占して実施して釣糸「マスターキング(トトマスター)」を製造し、同年末頃まで販売してきたものと認める。ところで、証拠(甲第六〇号証、乙第四八号証)及び弁論の全趣旨によれば、釣糸「マスターキング(トトマスター)」は、別表3―4<1>A表記載のとおり、使用単糸直径の太さにより重量を異にすること、原告主張の要領に従い釣糸「マスターキング(トトマスター)」の重量を使用単糸直径ごとに除すると、昭和五九年一年間に被告が製造販売した釣糸「マスターキング(トトマスター)」の本数は、別表3―4<1>B表記載のとおり、合計一五万六五一四本となること、同製品の一本(五〇メートル)あたりの平均販売単価は五六〇円であることが認められる。しかし、これは製造された釣糸の計算であるが、これが商品として実際に販売されるまでには、工程通過時に必然的に生じる屑部分、物性検査用のサンプル部分、不良品等の除外品、汚れ不合格品、在庫ないし返品処分品、宣伝用の無料供試品等が生じることは当然予想されることであり、それらを控除して実際に商品として販売され代金を受領できる部分の割合(歩留り率)は八五%と推認するのが相当である。そうすると、昭和五九年一年間の被告の釣糸「マスターキング(トトマスター)」の売上総額は、次の算式により合計七四五〇万〇六六四円となる。
560×156,514×0.85=74,500,664
そして、(一〇)発明の実施を中止した旨の被告主張は前判示のとおり採用できず、特別な事情も認められないから、右六年と四・五か月間に製造した分の売上総額は、昭和五九年一年間分に、六と一二分の四・五を乗じた四億七四九四万一七三三円と推認するのが相当である。
<2> 鮎ごころ
前認定のとおり、被告は、出願公告日である昭和六〇年四月一六日から同年末頃まで八か月半の間にわたり(一〇)発明を独占して実施して釣糸「鮎ごころ」を製造し、昭和六一年途中まで販売してきたものと認める。ところで、証拠(甲第六〇号証、乙第四八号証)及び弁論の全趣旨によれば、釣糸「鮎ごころ」は、別表3-4<2>A表記載のとおり、号柄によって重量を異にすること、原告主張の要領に従い釣糸「鮎ごころ」の各号柄ごとの重量(但し、三月二四日及び二六日製造分の三一キログラムは前判示のとおり同発明の実施には該当しないので除外して計算)を除すると、昭和五九年一年間に被告が製造販売した釣糸「鮎ごころ」の本数は、別表3-4<2>B表記載のとおり、一本の長さを五〇メートルとした場合、合計二七万四六九四本となること、同製品の一本(五〇メートル)あたりの平均販売単価は五六〇円であることが認められる。しかし、これは製造された釣糸の計算であるが、これが商品として実際に販売されるまでには、工程通過時に必然的に生じる屑部分、物性検査用のサンプル部分、不良品等の除外品、汚れ不合格品、在庫ないし返品処分品、宣伝用の無料供試品等が生じることは当然予想されることであり、それらを控除して実際に商品として販売され代金を受領できる部分の割合(歩留り率)は八五%と推認するのが相当である。
そうすると、昭和五九年一年間の被告の釣糸「鮎ごころ」の売上総額は、次の算式により合計一億三〇七五万四三四四円となる。
560×274,694×0.85=130,754,344
そして、(一〇)発明の実施を中止した旨の被告主張は前判示のとおり採用できず、特別な事情も認められないから、右八か月半に製造した分の売上総額は、昭和五九年一年間分に、一二分の八・五を乗じた九二六一万七六六〇円と推認するのが相当である。
<3> アクアキング
前認定のとおり、被告は、出願公告日である昭和六〇年四月一六日から平成三年八月末日まで六年と四・五か月間にわたり(一〇)発明を独占して実施して釣糸「アクアキング」を製造販売してきたものと認める。ところで、証拠(甲第六〇号証、乙第四八号証)及び弁論の全趣旨によれば、釣糸「アクアキング」は別表3-4<3>A表記載のとおり号柄によって重量を異にすること、原告主張の要領に従い釣糸「アクアキング」の各号柄ごとの重量(但し、三月二六日の一・五号及び七月三〇日の一号の分の三三・二キログラムは前判示のとおり同発明の実施には該当しないので除外して計算)を除すると、昭和五九年一年間に被告が製造販売した釣糸「アクアキング」の本数は、別表3-4<3>B表記載のとおり、一本の長さを五〇メートルとした場合、合計七万七三二〇本となること、同製品の一本(五〇メートル)あたりの平均販売単価は五六〇円であることが認められる。しかし、これは製造された釣糸の計算であるが、これが商品として実際に販売されるまでには、工程通過時に必然的に生じる屑部分、物性検査用のサンプル部分、不良品等の除外品、汚れ不合格品、在庫ないし返品処分品、宣伝用の無料供試品等が生じることは当然予想されることであり、それらを控除して実際に商品として販売され代金を受領できる部分の割合(歩留り率)は八五%と推認するのが相当である。
そうすると、昭和五九年一年間の被告の釣糸「アクアキング」の売上総額は、次の算式により合計三六八〇万四三二〇円となる。
560×77,320×0.85=36,804,320
そして、(一〇)発明の実施を中止した旨の被告主張は前判示のとおり採用できず、特別な事情も認められないから、右六年と四・五か月間に製造した分の売上総額は、昭和五九年一年間分に、六と一二分の四・五を乗じた二億三四六二万七五四〇円と推認するのが相当である。
<4> テニスラケット用ガット芯用キング
前認定のとおり、被告は、出願公告日である昭和六〇年四月一六日から平成三年八月末日まで六年と四・五か月間にわたり(一〇)発明を独占して実施してテニスラケット用ガット「芯用キング」を製造販売してきたものと認める。ところで、証拠(甲第六〇号証、乙第四八号証)及び弁論の全趣旨によれば、別表3-1記載の「芯用キング」の総製造重量は二二四八・六キログラムであり、これを単位一本一二・三メートルあたりの重量六グラムで除すると、昭和五九年一年間に被告が製造販売したテニスラケット用ガット「芯用キング」の本数は、単位一本あたり一二・三メートルで、合計三七万四七六六本となること、同製品の単位一本(一二・三メートル)あたりの平均販売単価は六五〇円であることが認められる。しかし、これは製造されたガットの計算であるが、これが商品として実際に販売されるまでには、工程通過時に必然的に生じる屑部分、物性検査用のサンプル部分、不良品等の除外品、汚れ不合格品、在庫ないし返品処分品、宣伝用の無料供試品等が生じることは当然予想されることであり、それらを控除して実際に商品として販売され代金を受領できる部分の割合(歩留り率)は八五%と推認するのが相当である。
そうすると、昭和五九年一年間の被告のテニスラケット用ガット「芯用キング」の売上総額は、次の算式により合計二億〇七〇五万八二一五円となる。
650×374,766×0.85=207,058,215
そして、(一〇)発明の実施を中止した旨の被告主張は前判示のとおり採用できず、特別な事情も認められないから、右六年と四・五か月間に製造した分の売上総額は、昭和五九年一年間分に、六と一二分の四・五を乗じた一三億一九九九万六一二一円と推認するのが相当である。
<5> 実施品の売上総額
以上(一〇)発明の実施品の売上を合計した総額は二一億二二一八万三〇五四円となる。
(二) 実施料相当額
右売上総額のうち、同発明につき特許を受ける権利の譲渡を受けたこと、すなわち同業他者に対し同発明の実施を禁止することができたことに基因する部分は、本件に現われた一切の事情に鑑み、三分の一と推認するのが相当であるから、その部分は七億〇七三九万四三五一円となる。
次に、同発明を第三者に実施許諾したと仮定した場合の実施料率を考えるに、これを直接認定するに足りる証拠はないが、社団法人発明協会研究所が平成四年四月頃行った実態調査によれば(「技術取引とロイヤルティ」、編著 社団法人発明協会研究所、発行 社団法人発明協会)、実施料率における料率分布では、最も多かった料率は三%以下二%超であること、同発明が特に優れたものとは認められず、同発明の延伸倍率を外れた近似の延伸倍率でも同程度の製品の製造が可能であり(乙第四四号証)、現実にも原告在職当時に前記認定のとおり同発明の延伸倍率に該当しない延伸倍率を適用して製品(「鮎ごころ」「アクアキング」)を製造販売したことがあること等を考慮すると、同発明の実施を第三者に許諾すると仮定した場合の実施料率は二%と認めるのが相当である。そうすると、同発明につき特許を受けることができる権利を譲り受けたことにより被告が受けるべき利益に相当する、同発明を第三者に実施許諾した場合の実施料相当額は、次の算式のとおり一四一四万七八八七円となる。
707,394,351×0.02=14,147,887
同発明の発明者は四名であるから、その四分の一に相当する三五三万六九七二円が原告持分に相当する部分ということになる(同発明の発明者四名のうち原告を除くその余の三名は三菱化成の従業員、原告のみが被告の従業員であるから、原告の持分四分の一は全部優先的に被告に譲渡されたものと考える。)。
(三) 対価相当額の認定
本件発明当時原告は部長待遇の研究開発室室長の職にあり、同発明は原告の職務の遂行そのものの過程で得られたものであること、同発明は、被告被用者の協力を得た上、被告作業現場に蓄積された経験等を利用して成立したいわゆる工場考案の色彩が濃厚であり、原告としては、被告の設備及びスタッフを最大限活用して発明したものであること、その他本件に現われた諸事情を総合考慮すると、同発明について被告が貢献した程度を考慮すれば、右(二)認定の被告が受けるべき利益の持分分の四〇%に相当する一四一万四七八九円をもって同発明につき特許を受ける権利の譲渡に対する相当な対価と認めるのが相当である。
3 その余の発明・考案関係
社団法人発明協会研究所が昭和六一年に実施した実態調査の結果によると(「職務発明と補償金」編著 発明協会研究所、発行 発明協会)、相当部分の企業が権利譲渡を受けた従業員の職務発明について、出願時と登録時に補償金を支払っていること、特許発明の出願時補償金額は、一律定額の場合最低九〇〇円から最高一万五〇〇〇円で平均四五一四円であること、その登録時補償金額は、一律定額の場合最低三〇〇〇円から最高五万円で平均一万〇二二〇円であることが認められる。
本件(一)考案、(六)及び(七)発明、(八)考案、(九)発明、(一一)ないし(一八)発明についても、原告は被告に対し出願時補償金及び登録時補償金に相当する対価請求権を有すると認めるのが相当である。右調査時点よりの物価上昇等を考慮すると、原告主張のとおり、出願時補償は特許五〇〇〇円、実用新案三〇〇〇円、登録時補償は特許一万五〇〇〇円、実用新案一万円と認めるのが相当であるから、原告は、別表6の計算のとおり、右各考案・発明に関し合計一五万一四二〇円の相当対価請求権を有するものというべきである。
4 したがって、被告が支払うべき相当対価額は2と3の合計一五六万六二〇九円となる。
六 結論
以上の次第で、本訴請求は、右合計一五六万六二〇九円から原告が退職時に被告から受領した本件五〇万円を控除した一〇六万六二〇九円の支払を求める限度で理由がある。
別表及び別紙公報(省略)
発明・考案目録
(一) 考案の名称 中空糸巻付けガツト
出願日 昭和五二年二月二二日(特願昭五二-二〇九七八)
公開日 昭和五三年九月一四日(実開昭五三-一一五七七一)
公告日 昭和五五年六月二三日(実公昭五五-二五九六六)
登録日 昭和五六年二月二六日
登録番号 第一三六八一六二号
考案者 原告
考案の内容 別紙公報(1)記載のとおり
(二) 考案の名称 はりす
出願日 昭和五三年七月一九日(実願昭五三-九九一四九)
公開日 昭和五五年二月四日(実開昭五五-一七四二〇)
公告日 昭和五八年一月二九日(実公昭五八-五四九六)
登録日 昭和五八年一一月一六日
登録番号 第一五一四六七六号
考案者 原告、京田修
考案の内容 別紙公報(2)記載のとおり
(三) 発明の名称 ポリエチレンテレフタレートモノフイラメントの製造法
出願日 昭和五四年一月三一日(特願昭五四-一〇二〇五)
公開日 昭和五五年八月七日(特開昭五五―一〇三三〇八)
公告日 昭和五七年五月一七日(特公昭五七―二三〇〇六)
登録日 昭和五八年一二月九日
登録番号 第一一八〇九〇九号
発明者 大村恭弘、三好勝憲、守田和正、角田雅美
発明の内容 別紙公報(3)記載のとおり
(四) 考案の名称 ガツト
出願日 昭和五四年五月三一日(実願昭五四―七四二九八)
公開日 昭和五五年一二月一二日(実開昭五五―一七三三五九)
公告日 昭和五九年一月一一日(実公昭五九―九四六)
登録日 昭和五九年八月一五日
登録番号 第一五六二四二三号
考案者 大原玉之助
発明の内容 別紙公報(4)記載のとおり
(五) 発明の名称 釣糸
出願日 昭和五四年六月一日(特願昭五四―六九一一五)
公開日 昭和五五年一二月一二日(特開昭五五―一五九七四三)
公告日 昭和五七年一二月八日(特公昭五七―五八一三四)
登録日 昭和五八年九月八日
登録番号 第一一六七二八二号
発明者 大原玉之助
発明の内容 別紙公報(5)記載のとおり
(六) 発明の名称 釣糸
出願日 昭和五四年六月一九日(特願昭五四―七七一二三)
公開日 昭和五六年一月一〇日(特開昭五六―一八三一)
公告日 昭和六二年七月一〇日(特公昭六二―三一八八九)
登録日 昭和六三年一月二九日
登録番号 第一四二二二七四号
発明者 原告、京田修
発明の内容 別紙公報(6)記載のとおり
(七) 発明の名称 釣糸の表面処理用樹脂
出願日 昭和五五年三月四日(特願昭五五―二七六九五)
公開日 昭和五六年九月二八日(特開昭五六―一二三四七七)
公告日 昭和五八年二月二五日(特公昭五八―一〇五一五)
登録日 昭和五八年一一月一四日
登録番号 第一一七七二七三号
発明者 原告
発明の内容 別紙公報(7)記載のとおり
(八) 考案の名称 ガツト
出願日 昭和五五年八月八日(実願昭五五―一一三〇一五)
公開日 昭和五七年三月一九日(実開昭五七―四八九五五)
公告日 昭和六一年四月五日(実公昭六一―一〇七一一)
登録日 昭和六一年一二月九日
登録番号 第一六六一三九六号
考案者 原告
発明の内容 別紙公報(8)記載のとおり
(九) 発明の名称 ガツトとその製造方法
出願日 昭和五五年一〇月二二日(特願昭五五―一四八六四五)
公開日 昭和五七年五月七日(特開昭五七―七二六六七)
公告日 昭和五九年四月二日(特公昭五九―一三八六七)
登録日 昭和五九年一一月一三日
登録番号 第一二三九二八二号
発明者 原告
発明の内容 別紙公報(9)記載のとおり
(一〇) 発明の名称 ポリエチレンテレフタレートモノフイラメントの製造法
出願日 昭和五六年五月一九日(特願昭五六―七五五〇六)
公開日 昭和五七年一一月二五日(特開昭五七―一九一三二三)
公告日 昭和六〇年四月一六日(特公昭六〇―一四八四五)
登録日 昭和六〇年一一月二九日
登録番号 第一二九二一一九号
発明者 原告、大村恭弘、守田和正、角田雅美
発明の内容 別紙公報(10)記載のとおり
(一一) 発明の名称 ガツト
出願日 昭和五七年九月一四日(特願昭五七―一六〇五三一)
公開日 昭和五九年三月二二日(特開昭五九―四九七八三)
発明者 大原玉之助、高島豊、原告
発明の内容 別紙公報(11)記載のとおり
(一二) 発明の名称 ポリアミドモノフイラメントの製造方法
出願日 昭和五八年三月四日(特願昭五八―三六五〇五)
公開日 昭和五九年九月一四日(特開昭五九―一六三四一九)
公告日 昭和六一年三月二四日(特公昭六一―九四〇七)
登録日 昭和六一年一一月二八日
登録番号 第一三四九八七〇号
発明者 原告
発明の内容 別紙公報(12)記載のとおり
(一三) 発明の名称 ポリエチレンテレフタレートモノフイラメントの製造法
出願日 昭和五八年一二月一二日(特願昭五八―二三四〇一九)
公開日 昭和六〇年七月五日(特開昭六〇―一二六三一七)
発明者 原告、丸山征一郎、浦部好富、角田雅美
発明の内容 別紙公報(13)記載のとおり
(一四) 発明の名称 ガツト
出願日 昭和五九年一月二〇日(特願昭五九―九三一一)
公開日 昭和六〇年八月一三日(特開昭六〇―一五三八八四)
公告日 平成二年一月九日(特公平二―九五二)
登録日 平成二年九月一三日
登録番号 第一五七八〇〇六号
発明者 原告
発明の内容 別紙公報(14)記載のとおり
(一五) 発明の名称 親水性釣糸の製造法
出願日 昭和五九年二月二七日(特願昭五九―三五八五一)
公開日 昭和六〇年九月一七日(特開昭六〇―一八一三六三)
発明者 原告、浦部好富
発明の内容 別紙公報(15)記載のとおり
(一六) 発明の名称 ブラシ
出願日 昭和五九年三月二七日(特願昭五九―六〇二七四)
公開日 昭和六〇年一〇月一四日(特開昭六〇―二〇三二〇二)
発明者 原告
発明の内容 別紙公報(16)記載のとおり
(一七) 発明の名称 ガツトの染色方法
出願日 昭和五九年七月一二日(特願昭五九―一四五八〇五)
公開日 昭和六一年二月七日(特開昭六一―二八〇八五)
発明者 原告
発明の内容 別紙公報(17)記載のとおり
(一八) 発明の名称 ガツトの製造法
出願日 昭和五九年七月一三日(特願昭五九―一四六五六二)
公開日 昭和六一年二月七日(特開昭六一―二八〇七〇)
公告日 昭和六三年二月三日(特公昭六三―五五一一)
登録日 昭和六三年九月二八日
登録番号 第一四五九七〇五号
発明者 原告
発明の内容 別紙公報(18)記載のとおり