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大阪地方裁判所 平成3年(ワ)5310号 判決 1992年3月13日

原告

北尾豊

ほか一名

被告

池田満代

主文

一  平成二年八月三〇日午後一時四〇分頃、枚方市大垣内町二丁目一〇番二二号先路上において、原告北尾豊運転の乗用車の被告運転の原動機付自転車が衝突した交通事故に基づく原告らの被告に対する損害賠償債務が五〇万円を越えて存在しないことを確認する。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用はこれを一〇分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

平成二年八月三〇日午後一時四〇分頃、枚方市大垣内町二丁目一〇番二二号先路上において、原告北尾豊運転の乗用車と被告運転の原動機付自転車が衝突した交通事故に基づく原告の被告に対する損害賠償債務が存在しないことを確認する。

第二事案の概要

本件は、交通事故の一方当事者が、他方当事者に対し後遺障害に基づく損害賠償債務の不存在確認を求めた事件である(なお、傷害分については示談済みである。)。

一  争いのない事実

1  事故の発生

左記の交通事故が発生した。

(一) 日時 平成二年八月三〇日午後一時四〇分頃

(二) 場所 枚方市大垣内町二丁目一〇番二二号先路上

(三) 事故車<1> 普通乗用自動車(大阪七七ち二八三号、加害車)

右運転者 原告北尾豊

右所有者 原告北尾京子

(四) 事故車<2> 原動機付自転車(被害車)

右運転者 被告(被害者)

(五) 態様 原告北尾豊が、後方を確認しないまま、本件事故現場道路左側に停車していた加害車を発進させたため、同車右側を進行してきた被害車に衝突の上転倒させ、被害者に顔面、両手、左下肢擦過傷などの傷害を負わせたもので、原告北尾豊には過失がある。

2  原告らと被害者は、平成二年四月一五日、後遺障害を除く被害者の全損害について、原告らが六三万三五六八円を被害者に支払うことで合意した。

3  本件事故により、被害者の顔面、両手、両下肢には、次のとおりの瘢痕が残存し、醜状となつている(甲四)。

顔面 左眉の左上側に一センチメートルかける一センチメートル大のもの一箇所

鼻の右下側に二センチメートルかける二センチメートル大のもの一箇所

手 右手甲部に一平方センチメートル大のものが二箇所左手甲部に二センチメートルかける一センチメートル大のもの一箇所

下肢 右下肢に三センチメートルかける一センチメートル大のもの、一センチメートルかける一センチメートル大のもの各一箇所、二平方センチメートル大のもの五箇所

左下肢に一〇センチメートルかける一センチメートル大のもの一箇所

二  争点

(後遺障害による被告の損害)

1 被告の主張

右後遺障害に対する慰謝料としては五〇〇万円が相当である。

2 原告らの主張

右後遺障害は、後遺障害等級に該当しないもので、原告らには慰謝料支払義務は存しない。

第三判断

一  慰謝料について検討する。

1  自動車損害賠償保障法施行令によれば、同施行令別表上、後遺障害が一級から一四級までに分類され、それぞれ相応の保険金額(責任限度額)が定められている中で、女子の外貌に醜状を残すものについては一二級一四号として、また上肢又は下肢の露出面に手のひら大の大きさの醜いあとを残すものについては一四級三号又は四号として位置付けられている。また、本件事故当時施行されていた同施行令によれば、保険金額は一二級については二一七万円、一四級については七五万円と定められていた。

そして、一般に、外貌における醜状とは、顔面にあつては一〇円銅貨大以上の瘢痕又は長さ三センチメートル以上の線上痕で、人目につく程度以上のものをいうものとされると解されている。

2  ところで、被告について生じた醜状痕の大きさ及び部位については既に見たとおりであつて、被告の顔面に生じた醜状痕は最大のもので二センチメートルかける二センチメートルであり、また上肢及び下肢のものも手のひら大に及んでいない。

3  したがつて、被告について生じた醜状痕は、いずれも自動車損害賠償保障法施行令に定める後遺障害基準に達しないものであるといわざるをえないことになる。

4  しかしながら、本件事故により、被害者の顔面、両手、両下肢に生じた醜状痕は、ある程度の大きさをもつた、複数のものであり、それによる被害者の精神的損害も相当のものであると考えられるから、原告らとしても、被害者に対して相応の賠償を行うべきであると考えられるが、その金額については、自動車損害賠償保障法施行令に定める後遺障害基準の序列を尊重し、これも踏まえて決定されるべきである。そして、その醜状の部位及び大きさ、被害者の性別、年齢(昭和二三年七月二七日生、甲四)その他の事情を総合考慮すれば、その慰謝料額としては五〇万円が相当であると認められる。

二  よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 松井英隆)

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