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大阪地方裁判所 平成3年(行ウ)15号 判決

原告

五味多正雄

右訴訟代理人弁護士

谷口光雄

被告

(河内長野市長) 東武

右訴訟代理人弁護士

俵正市

重宗次郎

被告

松本隆行

右訴訟代理人弁護士

南輝雄

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事実及び理由

第三 当裁判所の判断

一  〔証拠略〕を総合すると次の事実が認められる。

1  市は、全市民を対象とした休息、散策、リクリエーション、遊戯、スポーツなどの利用を図る総合公園として、寺ケ池公園を都市計画決定し、昭和三七年度から昭和五六年度までの間に、野球場、プール、テニスコート等運動施設を中心に約一〇・二七ヘクタールを順次開設して市民の利用に供していたが、公園指定面積三六・七ヘクタールからみれば未だ整備が不十分であった。

特に平成六年には市政四〇周年をむかえて同公園を会場にして記念イベント「大阪府緑化フェア」の開催が計画されていたことから、寺ケ池公園の整備は市の重点事業として位置付けられ、国庫補助対象事業として用地買収計画が立てられ、平成元年度は松本所有地を含む一万三八六八平方メートル(公簿面積)の土地を買収することが計画されていた。

2  市は、平成元年八月ころ、公社に対して、公園用地として松本所有地を先行取得することを依頼し、公社は市の都市整備部地域整備課とともに被告松本に対して松本所有地買収につき交渉を始めた。

被告松本は、実兄松本弘の友人である久保に一切の代理権を与えて売却条件について交渉に当たらせたが、久保は公社及び市に対して、松本所有地売却の条件としてた代替地の提供を求め、具体的に第二の一3記載の同市天見一四七番六ないし九の土地、同市小山田町六三三番三の土地のほか同市小山田町五八〇番三の土地の一部(後に分筆されて本件土地となる土地)の三か所を挙げた。

そこで、前二か所の土地については、公社において代替地として売却に応じることとしたが、本件土地は市所有の市立小山田小学校の学校用地(教育財産)であったことから、当初市はこれに対して難色を示した。しかし、久保において本件土地も代替地として提供しなければ松本所有地の売却には応じられないとの強い姿勢を示し、一方松本所有地は寺ケ池公園整備のために必須の土地であったことから、市は、平成元年一〇月二四日付で市長の名において本件土地を所管する市教育委員会に対して協力を依頼し、市教育委員会は本件土地につき用途廃止をし得るかを検討した結果、本件土地は急斜面の法面敷であり運動場等への有効利用を図ることが困難であるから用途廃止をしても支障がないと判断して、平成二年六月の定例市教育委員会において用途廃止の承認をした。その後所定の事務手続を経て、同年七月四日付で本件土地は普通財産に変更され、同月一八日に市から被告松本に対して売却されることとなった。

3  以上のような経緯で、松本所有地の公社による買収と被告松本に対する代替地の売却が行われたのであるが、実際には、代替地とされた土地のうち本件土地については、被告松本本人が代替地として取得を希望したものではなかった。

すなわち、久保の知人である城が折から本件土地の取得を希望していたために、久保において城のために、代替地名下に市から本件土地の払下げを受けることを画策し、被告松本から同人の名義を使用することの了解を得た上で、市や公社に対しては、被告松本本人が代替地として本件土地の取得を強く希望していると述べて本件土地の売却を承諾させたものであった。

そして、本件契約は前記のとおり被告松本の名義で締結されたが、本件土地の代金八〇四五万円は城において出損して被告松本名義で市に支払い、その後の本件土地の転売も城が行った。

被告松本は、城とは面識はなく、本件土地につき城が転売目的で取得を希望していたことやその後実際に転売したことなどの事情を知らなかったし、城からなんらかの利益供与を受けたということもなかった。

二  本件契約に至る経緯は以上のとおりであり、原告は、被告ら及び城が共謀の上、本件土地を代替地名下に低廉な価格で取得してこれを転売して利益を得ることを企てたと主張するが、被告東及び被告松本と城との右共謀の事実を認めるに足りる証拠はなく、むしろ前記認定の事実によれば、そのような共謀は存在しなかったことが認められる。

三  次に原告は、被告東が市長として本件土地を一般競争入札によらず随意契約によって売却したことは違法であると主張する。すなわち、市が締結する売買契約は原則として一般競争入札によらなければならず、法施行令一六七条の二第一項各号所定の場合を除いて随意契約の方法によることができないところ(法二三四条一項、二項)、本件土地は代替地の名のもとに第三者である城に対して売却されたものであるから右所定の場合に該当しないと主張する。

しかし、前記一記載の事実によれば、被告松本は右契約の締結を自らの名義ですることを承諾していたのであるから、経済的にはともかく、法律形式的には、本件契約は市と被告松本との間に成立し、本件土地は被告松本に売却されたと解する他はない。

そして、前記一2記載のとおり市当局者は、被告松本の代理人である久保から被告松本が本件土地を代替地として求めていると聞かされ、その旨を信じて諸手続きを進め本件契約の締結に至ったのであるから、本件契約は、寺ケ池公園用地として必須の土地である松本所有地を取得する目的で、同被告に代替地を提供するために締結された契約であり、一般競争入札の方法によることは不可能であったと解される。したがって、法施行令一六七条の二第一項二号の「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に該当し、随意契約の方法によることが許されるものというべきであるから、本件契約が一般競争入札の方法によらなかったので違法であるとの原告の主張は理由がない。

四  さらに原告は、本件契約は本件土地を不当に低廉な価格で売却したものであるから、被告東の裁量権の範囲を著しく逸脱した違法な行為であると主張する。

1  〔証拠略〕を総合すると次の事実が認められる。すなわち、

本件契約の締結に当たり、市は本件土地の価格について、財団法人日本不動産研究所に鑑定評価を依頼したところ、平成二年七月一日現在の価格として、平方メートル単価六万一二〇〇円、土地面積を概算で一四〇〇平方メートルとして八五七〇万円との評価を得た。また市では、市が処分しようとする不動産の価格は、市職員及び不動産鑑定士より構成される市不動産評価審議会が評定することとしていたので、同審議会も本件土地を評価したところ、平成二年七月一日現在の価格として、平方メートル単価六万一二〇〇円、土地面積一三一四・六二平方メートルとして八〇四五万四七四四円との答申価格となった。

本伴契約における売買価格は右各評価格の平方メートル単価(六万一二〇〇円)に従い、本件土地の分筆後の公簿面積一三一四平方メートルを乗じて八〇四五万円と決められたものである。

2  右に認定した本件契約の売買価格決定の経緯並びに乙六号証の一(財団法人日本不動産研究所作成の鑑定評価書)、同六号証の二(市不動産評価審議会作成の土地評価調書)及び証人米田輝男の証言によれば、右売買価格の基準となった平方メートル単価は主として財団法人日本不動産研究所の鑑定評価書に基づき決定されたものであるところ、同研究所の鑑定評価の過程及び内容は応分の資料に基づく合理的なものであることが認められる。したがって、右単価は時価による適正な価格であると認めるべきであり、これに分筆後の公簿面積を乗じた売買価格は適正なものであったというべきである。

これに対して、原告は(一)城が本件土地を転売した価格が右売買価格より高額であったこと及び(二)本件土地に隣接した土地の取引価格における単価が右売買価格の単価より高額であったことから、右売買価格が低廉であったと主張する。しかし、

(一)  〔証拠略〕によれば、本件契約(平成二年七月一八日)後間もなく、城は本件土地を訴外貴資産業株式会社(以下「貴資産業」という倉)に約一億四〇〇〇万円で売却したこと、貴資産業は近鉄不動産の依頼で、同市小山田町周辺においてマンション用地の買収に当たっていた業者であり、同年一一月二八日右買取価格に金利等の経費を上乗せした価格で本件土地を近鉄不動産に売却し、同月二九日に被告松本から近鉄不動産に対して中間省略の方法により所有権移転登記がなされたこと、右一億四〇〇〇万円という価格は、貴資産業に対する売却に先立ち、本件土地の北側に隣接しかつ公道に面していた土地(同市小山田町五八一番、五八〇番一他の土地)を城が取得し、これを近鉄不動産(ないしその関連企業)に売却済みであったことから、その売却価格の坪単価を参考にして決定された価格であったことがそれぞれ認められる。

ところで、〔証拠略〕によれば、本件土地は単独では無道路地であり、本件契約の売買価格も本件土地が無道路地であることを前提として評価された価格であることが認められるところ、前記のとおり城は本件土地に隣接しかつ公道に面した土地をすでに取得し、右土地を近鉄不動産に売却済みであったことから、近鉄不動産配下の貴資産業に対する本件土地の売却価格も、公道に面した土地として評価、決定されたものであることは明らかである。したがって、右一億四〇〇〇万円という価格は、たしかに本件契約の売買価格(八〇四五万円)より高額であるが、限定された市場と条件のもとに形成された特別な価格であると解されるから、右価格より低額であるからといって本件契約の売買価格が不当に低簾であったということはできない。

(二)  また、〔証拠略〕によれば、本件契約から約二か月間後である平成二年九月一七日に、本件土地の近隣土地である同市小山田町五八一番二の土地が、近鉄不動産から公社に対して平方メートル単価一六万二〇〇〇円という価格で売却されている事実が認められる。たしかに右単価は本件契約における単価(平方メートル単価六万一二〇〇〇円)に比して高額であるが、〔証拠略〕によれば、本件土地は無道路地であるうえ傾斜地の林地であって宅地化するには多額の造成費用等を必要とするうえ、本件土地の内約四八〇平方メートルは関西電力の送電線二万二〇〇〇ボルトの線下地であるという減価要因が存在するのに対し、右五八一番二の土地は既に宅地化され公道に面した平坦な土地であることが認められるから、右のような価格差が生ずる合理的な理由があると解される。したがって、右近隣土地の取引価格より低額であるからといって本件契約の売買価格が不当に低廉であったということはできない。

3  以上のとおり、本件契約の売買価格が不当に低廉であることを前提とする原告の主張は理由がない。

五  また、原告は被告松本が市の損失において不当に利得を得ていると主張するが、右四記載のとおり、本件契約の売買価格は適正であったのであるから、市に損失が発生したと認めることはできたいし、前記一3記載のとおり、被告松本は本件売買により何の利得も得ていないのであるから、原告の主張は理由がない。

六  以上のとおり、原告の請求はいずれの点からしても理由がないからこれをいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担について、行訴法七条、民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下村浩藏 裁判官 小野憲一 植村京子)

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