大阪地方裁判所 平成3年(行ウ)19号 判決
原告
中村隆実
同
中村寛
同
中村密子
右三名訴訟代理人弁護士
小田耕平
同
山本勝敏
被告
堺市長 幡谷豪男
右訴訟代理人弁護士
俵正市
同
重宗次郎
同
苅野年彦
同
坂口行洋
同
寺内則雄
同
小川洋一
事実及び理由
第三 判断
1 〔証拠略〕を総合すると、次の事実が認められる。
(一) 盆ケ池及び本件土地は、もともと高松部落民の共有財産であった。
(二) 大阪府南河内郡登美丘町(以下「登美丘町」という。)は、昭和三七年二月二三日、盆ケ池及び本件土地を含む同町内の溜池及び堤について、同町名義の所有権保存登記をした。右登記に際して、高松部落と登美丘町との間で何らかの契約がなされたことはない。
(三) 昭和三七年四月一日、登美丘町は、堺市に合併された。同年八月六日付けの登美丘町から堺市への事務引継書には、盆ケ池及び本件土地は「共有地」であるとの記載がある。
(四) 昭和四〇年三月六日、元登美丘町長及び堺市登美丘建設審議会委員が、堺市長に対し、右(二)の登記された溜池及び堤について、右(二)の登記は事務手続上の誤りであり、これらは、各部落有財産であるので、その旨の事実確認の証明をしてほしいとの申請をした。堺市では、昭和四一年五月、右申請を認め、元登美丘町長に対し、盆ケ池及び本件土地を含む溜池及び堤について、各部落民の共有財産であることを確認した。
(五) 高松部落では、昭和四二年一月、盆ケ池の一部を処分して、公民館を建設することとし、部落総会で決議したうえ、堺市に対して、同年二月六日、右処分を申請し、承認された。同年三月二〇日、盆ケ池について、昭和三七年四月一日合併により承継を原因として、堺市に対する所有権移転登記がなされ、分筆のうえ、処分した右一部について、処分先に対し、所有権移転登記がなされた。この一部処分の承認にあたって、堺市は、右第二の一4の取扱いに従い、議会の議決を経た。このような溜池を処分する場合には、これが治水や周辺の環境に対する影響等公共の利害に大きく関係するものであり、また、全市的見地からの調整を図る必要がある場合もあるため、堺市では、議会の議決を要するものとしている。
(六) 本件土地については、昭和四七年一一月六日、昭和三七年四月一日承継を原因として、堺市に対する所有権移転登記がなされた。
2 右1認定の事実からすると、本件土地は、一貫して、旧高松部落民の共有財産であると認められる。昭和三七年二月二三日、本件土地について、登美丘町の名義で、保存登記がなされ、その登記は、堺市に移転されているが、右1認定の事実からすると、旧高松部落から登美丘町ないし堺市に対して実体的な所有権の移転行為はなく、本件土地が堺市の所有になったと認めることはできない。
3 〔証拠略〕を総合すると、(一)「要綱」は、溜池等の部落民の共有財産についての堺市の行政指導の指針を定めたもので、強制力があるものではないこと、(二)処分代金の使途についての規定(前記第二の一4)は、部落民の共有財産の処分代金であることから、その趣旨に従った使用がなされるように、市が指導しているものであること、(三)「要綱」中には、地区共有財産は、財産関係住民が適正に管理運営しなければならないとの規定(二条)があることが認められ、これらのことからすると、「要綱」があるからといって、本件土地が堺市の所有であるということができないのはもとより、本件土地について堺市が管理の権限及び義務を有するということもできない。なお、〔証拠略〕によると、堺市は、盆ケ池等の溜池について、保険会社との間で、損害賠償責任保険契約を締結していると認められるが、同号証によると、堺市は、市有の溜池と部落民の共有財産である溜池とを区分して保険契約を締結しており、部落民の共有財産である溜池については、堺市のみならず、町(自治)会等も被保険者となっているのであって、保険契約締結の事実は、いまだ右認定を覆すに足りるものということはできない。
4 したがって、本件土地は、堺市の所有ではなく、堺市に管理の権限及び義務もないから、被告には財産の管理を怠る違法はない。
5 なお、原告らは、堺市において、部落有財産といわれているものは、地方自治法二九四条以下に定める財産区の財産であり、これを財産区として取り扱わないことは違法であると主張するが、仮に本件土地が財産区の財産であったとしても、堺市の所有するあるいは堺市において原告らが主張するような管理をすべき物件でないことには変りがない。
三 よって、本訴請求をいずれも棄却することとする。
(裁判長裁判官 福富昌昭 裁判官 森義之 氏本厚司)