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大阪地方裁判所 平成4年(ワ)751号 判決 1992年7月20日

原告 徳丸武一

被告 国

代理人 竹本健 太田清一

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由

第一事実

一  申立

1  被告は、原告に対し、金一〇〇万円及びこれに対する平成三月三日(編注・平成四年三月三日の誤りか)から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は、被告の負担とする。

との判決並びに仮執行宣言

二  当事者の主張

別紙のとおり。

第二理由

一  原告は、「原告は、軽犯罪法違反・鉄道営業法違反の罪で略式命令を受けたことに納得がいかず、昭和六一年三月二八日、曾根崎警察署に訪れ抗議したところ、山本修一刑事から暴行を受けて傷害を負ったので、大阪地方検察庁に同刑事を特別公務員暴行陵虐致傷罪で告訴したが、不起訴処分となった。そこで、同年五月一八日、大阪検察審査会に右処分の審査を申立てたが、同年一二月一九日、同会は原告を呼出もせずに書面審査のみで『不起訴処分相当』の議決をした。右審査ないし決議は、手続的に違法かつ内容的に不当なものであって、これにより原告は相当の精神的苦痛を受けた。」とし、検察審査会の審査手続、議決が違法ないし不当であるとして、国家賠償法一条あるいは不法行為(民法七〇九条)に基づき損害賠償請求をしているものである。

二  検察審査会は、検察官の公訴権の行使に関して民意を反映させて、その適正な運用を図るという公益的見地から制定されたものであって(検察審査会法一条一項)、犯罪の被害者の被侵害利益ないし損害の回復を直接の目的とするものではないから、検察審査会の議決によって、事実上、被害者ないし告訴人がなんらかの利益を受けるとしても、それは法律上保護された利益ではないといわなければならない。

そのうえ、検察審査会は、検察官の公訴を提起しない処分の当否に関する事項を審査し(同条一項一号)、起訴を相当とする場合はその旨の議決をなすことができるが、これにより当然に起訴の効果が生じるものでも、検察官が起訴の義務を負うものでもなく、右議決は、検察官にその処分の再考を促すものに過ぎない(同法四一条参照)。

そうすると、検察審査会の議決は、これが検察審査会法に基づくものである限り、被害者ないし告訴人の法律上の利益を侵害するという関係にはない。

本件は、検察審査会において、嫌疑不十分の裁定をくつがえすに足りる証拠を発見できないとして不起訴処分相当の通知をしたもので(<証拠略>)、原告の主張するところも違法な手続といえるような事情ではないから、結局、原告の請求は根拠がない。

三  よって、本件請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用については民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 岡部崇明 阿部静枝 難波宏)

別紙 請求の原因 <略>

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