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大阪地方裁判所 平成4年(ワ)9415号 判決 1993年6月29日

原告

桂田美智子

被告

大久保常男

ほか一名

主文

一  被告大久保常男は原告に対し、金一七六四万五四一四円及びこれに対する平成三年八月一八日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告住友海上火災保険株式会社は原告に対し、被告大久保常男に対する本判決が確定したときは、金一七六四万五四一四円及びこれに対する右同日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告の被告らに対するその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用はこれを一〇分し、その九を被告らの負担とし、その余を原告の負担とする。

五  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一原告の請求

一  被告大久保は原告に対し、金一九三九万二九一四円及びこれに対する平成三年八月一八日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告住友海上火災保険株式会社(以下「被告住友海上」という。)は原告に対し、被告大久保に対する本判決が確定したときは、金一九三九万二九一四円及びこれに対する右同日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、桂田昌彦(以下「昌彦」という。)が原告を同乗させて普通乗用自動車(以下「昌彦車」という。)を運転し、交差点を直進していた際、対向右折してきた被告大久保の運転する普通乗用自動車(以下「被告車」という。)と衝突し、原告が負傷した事故について、原告が被告大久保に対して自賠法三条、民法七〇九条に基づく損害賠償を請求するとともに、被告大久保との間で自動車保険契約を締結していた被告住友海上に対して民法四二三条に基づき被告大久保の被告住友海上に対する保険金請求権を代位行使したものである。

一  争いのない事実

1  交通事故の発生

日時 平成三年八月一八日午後四時五〇分ころ

場所 奈良県生駒市上町一二七二番地先交差点

態様 昌彦が原告を同乗させて昌彦車を運転し、交差点を直進していた際、対向右折してきた被告大久保の運転する被告車と衝突した。

2  原告の受傷

原告は、本件事故により、右眼に眼瞼裂傷、眼瞼下垂、眼球打撲、角膜上皮剥離等の傷害を受け、平成三年八月一八日から同年九月二九日まで(四三日間)奈良県立医科大学附属病院に入院し、同年一〇月一日から平成四年四月二一日まで通院(実日数九日)して治療を受けたが、平成四年四月二一日、右眼視力低下(自賠法施行令二条別表九級二号)、右眼下の瘢痕(同別表一二級一四号)の後遺障害(併合八級)を残して症状固定した。

3  責任

被告大久保は、自賠法三条、民法七〇九条に基づき本件事故に関して原告に生じた損害を賠償する責任がある。

4  保険契約

被告大久保は、被告住友海上との間で、被告車について自動車保険契約を締結しており、原告は、被告大久保に対する本判決が確定することを条件として、被告大久保の被告住友海上に対する保険金請求権を民法四二三条に基づき代位行使することができる。

5  原告の損害 合計二五〇二万六五九四円

(一) 入院雑費 五万五九〇〇円

(二) 休業損害 一一二万三六八〇円

(三) 逸失利益 二三八四万七〇一四円

6  損害の填補

原告は、本件事故に関し、一七五〇万三六八〇円の支払を受けた。

二  争点

1  原告の損害額(付添看護費、慰謝料、弁護士費用)

2  過失相殺(被告らは、昌彦が本件交差点に差しかかつた際、対面信号が青色から黄色に変わつたのであるから、本件交差点の手前で停止すべきであつたのにこれを怠り、また、本件交差点で二台の対向右折車が昌彦車の前方道路を横切つて行つたのであるから、他の対向右折車の存在を予期してその動静に注意を払うべきであつたのにこれを怠り、かなりのスピードで漫然と本件交差点に進入したものであるとして、本件事故発生について、昌彦車に四〇パーセントの過失があると主張するとともに、昌彦車の同乗者である原告は、本件事故当時、昌彦と婚約しており、本件事故後に婚姻届出をして夫婦となつていることから、昌彦の過失を原告側の過失として過失相殺すべきであると主張する。これに対して、原告は、本件事故当時、原告と昌彦は単なる婚約者であつて、夫婦ではないから、昌彦の過失を原告側の過失と同視することはできないと主張するとともに、原告と昌彦との結婚という本件事故後の事情によつて、昌彦の過失が原告側の過失として考慮され、損害賠償額に影響を与えることは不当であると主張する。また、原告は、被告大久保が、先に右折した二台の車両に続いて無理に右折しようとして、右前方の安全を確認することなく、昌彦車の直近で、早回り右折をしたもので、昌彦車の対面信号が青色であれば、昌彦には一五パーセントの過失があり、昌彦車の対面信号が黄色であれば、昌彦には二五パーセントの過失があると主張する。)

第三争点に対する判断

一  損害

1  付添看護費 二万二五〇〇円(請求七万円)

原告は、本件事故当日、眼瞼裂創縫合の手術を受けたが、同日から平成三年八月二二日までの五日間、付添看護を要し、その間、昌彦と同人の母親が原告に付添看護した(甲二の1、三の1、乙一ないし三)。右事実に、前記争いのない原告の受傷内容を併せ考慮すれば、本件事故と相当因果関係のある付添看護費は、二万二五〇〇円(付添人一人で一日当たり四五〇〇円の五日分)となる。

2  慰謝料 八五〇万円(請求一〇〇〇万円)

前記争いのない原告の傷害の部位、程度、治療経過、後遺障害の内容、程度、本件事故状況、その他一切の事情を考慮すれば、慰謝料としては、八五〇万円が相当である。

3  弁護士費用 一六〇万円(請求一八〇万円)

原告の請求額、前記認容額、その他本件訴訟に現れた一切の事情を考慮すると、弁護士費用としては、一六〇万円が相当である。

二  過失相殺

本件事故当時、原告と昌彦は婚約中で、原告は、昌彦車の助手席に同乗し、昌彦の実家を出発して、原告の実家に行く途中であつた。昌彦車の登録名義人は、昌彦の知人であつたが、昌彦車の実質的な保有者は昌彦であつた。原告と昌彦は、本件事故後の平成三年一二月一日に婚姻の届出をした(甲五、乙五の9、証人桂田昌彦)。右に認定した本件事故当時における原告と昌彦との身上関係、昌彦車の運行状況からすると、本件事故当時、原告は昌彦と婚約関係にはあつたものの、右両名が身分上、生活関係上、一体をなすとみられるような関係にあつたとは解されないから、仮に本件事故発生について昌彦に過失があるとしても、本件事故による原告の損害額の算定において、昌彦の過失を原告側の過失として考慮するのは相当でない。また、被告らは、本件事故後に原告と昌彦が婚姻していることを、昌彦の過失を原告側の過失として考慮すべき理由として主張しているが、本件事故後に原告が婚姻したか否かによつて原告の損害額が左右される結果になつて不当であるから、右主張は採用できない。そうすると、過失相殺に関する被告らの主張は理由がない。

三  以上によれば、原告の被告らに対する請求は、その余の点につき判断するまでもなく、一七六四万五四一四円(前記争いのない損害合計額二五〇二万六五九四円と前記一1ないし3の損害合計額一〇一二万二五〇〇円との合計額三五一四万九〇九四円から前記争いのない損害填補額一七五〇万三六八〇円を控除したもの)とこれに対する本件交通事故発生の日である平成三年八月一八日からいずれも支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある(被告住友海上については、被告大久保に対する本判決確定を条件とする。)。

(裁判官 安原清蔵)

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