大阪地方裁判所 平成5年(わ)397号
主文
被告人を懲役10月以上1年4月以下に処する。
未決勾留日数中60日を右刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、A、I・N、B、Cと共謀の上、暴走族グループ「甲」を無断で脱退したD(当時16歳)を拉致して制裁を加えようと企て
第1 平成5年3月17日午前3時ころ、福岡県糟谷郡○○町○○×丁目××番××号E方において、右Dの左足太股付近を2回蹴りつけ、その上着の襟首付近をつかむなどして右E方先路上に駐車中の普通乗用自動車まで連行し、右Dを右自動車後部トランク内に押し込んだ上、直ちに発進させて、同日午前3時20分ころ、同所から約8.2キロメートル離れた福岡市東区大字○○××番地乙所内まで疾走させ、その間約20分間にわたり右Dを右自動車後部トランク内に閉じ込めて脱出することを不能ならしめ、もって、不法に監禁し
第2 同日午前3時20分ころ、前記乙所内において、右Dを取り囲み、「甲の掟を破つてなんで抜けたとや。」などと申し向け、こもごも右Dの頭部、顔面及び背部等の全身を手拳及び木製のトロ箱で多数回にわたり殴打したり、足で蹴りつけるなどの暴行を加え、更に、右Aにおいて木製の角材で約10回殴打する暴行を加え、よつて、右Dに対し、安静加療約5日間を要する全身打撲傷及び口腔内出血の傷害を負わせ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部について
1 被告人の当公判廷における供述
1 被告人の検察官に対する供述調書
1 D、F、C、A、I・N及びBの検察官に対する各供述調書
1 司法警察職員作成の「現場引き当て並びに写真撮影報告書」と題する書面(謄本)
判示第1の事実について
1 司法警察職員作成の検証調書及び写真撮影報告書(平成5年4月1日付け(( 三丁のもの))、同月2日付け)
判示第2の事実について
1 司法警察職員作成の平成5年3月25日付け及び同年4月1日付け(2丁のもの)各写真撮影報告書
1 医師○○作成の診断書
(法令の適用)
被告人の判示第1の所為は刑法60条、220条1項に、判示第2の所為は同法60条、204条にそれぞれ該当するところ、判示第2の罪について所定刑中懲役刑を選択し、以上は同法45条前段の併合罪であるから、同法47条本文、10条により重い判示第2の罪の刑に法定の加重をした刑期(ただし、短期は監禁罪の刑のそれによる。)の範囲内で、少年法52条1項より、被告人を懲役10月以上1年4月以下に処し、刑法21条を適用して未決勾留日数中60日を右刑に算入し、訴訟費用は、刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の事情)
本件は、暴走族のリーダーだつた被告人が、現在のメンバー及びOBと一緒になつて、グループから抜けた被害者を、深夜拉致し、普通乗用自動車のトランクに閉じ込めて監禁したうえ、人気のない乙所に連行して、判示のような暴行を加えて傷害を負わせたという事案である。その犯行の動機は、被告人らに挨拶なしでグループから遠ざかつた者を痛め付けてやろうというもので、動機において酌量すべき点は乏しく、その態様も、被害者が同居していた女性宅に深夜押しかけ、いやがる被害者を自動車のトランクに約20分間閉じ込めて疾走したうえ、共犯者5名で判示のような暴行を執拗に加え、その結果、安静加療約5日間を要する傷害を負わせたという悪質なものであり、被害者の受けた肉体的、精神的打撃は大きく、同人は当時の住所地から離れることを余儀なくされている。被告人は、本件において主導的な立場で犯行の口火を切つており、また、少年院に行つて反省する機会を与えられ、出院後も窃盗保護事件で保護観察処分を受けている最中で、行動に特に注意すべきであるにもかかわらず、本件に及んでおり、このような諸点を総合すると、被告人の刑事責任は重いと言わなければならない。
したがって、幸いにも傷害の程度が、比較的軽微なものに留まったこと、被告人は、当初、本件とは無関係であるとの態度に終始したものの、家庭裁判所から検察官に送致された後は、概ね本件犯行を認め、現在では被告人なりに反省していること、被告人の父において、被害者に対し10万円を送金したこと、被告人は、犯行時、18歳4か月の少年であることなど、被告人のために斟酌すべき事情を最大限に考慮しても、主文程度の実刑はやむを得ないと判断した次第である。
よって、主文のとおり判決する。(○○)