大阪地方裁判所 平成6年(わ)206号 判決 1994年8月09日
本店所在地 大阪市中央区南船場一丁目一三番四号日本画廊ビル
(登記簿上 大阪府守口市菊水通二丁目二〇番地二)
株式会社日本画廊
(右代表者代表取締役 塩谷松夫)
本籍
福井県武生市万代町第一〇号六番地
住居
大阪府枚方市楠葉野田二丁目二五番一一号
会社役員
塩谷松夫
昭和一五年六月一三日生
右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官八澤健三郎出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社日本画廊を罰金三八〇〇万円に、被告人塩谷松夫を懲役一年六月にそれぞれ処する。
被告人塩谷松夫に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人株式会社日本画廊(以下、「被告会社」という。)は、大阪市中央区南船場一丁目一三番四号日本画廊ビル(登記簿上は大阪府守口市菊水通二丁目二〇番地二)に本店を置き、美術品販売及び不動産売買業等を営む資本金九〇〇万円の株式会社であり、被告人塩谷松夫(以下、「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括している者であるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て
第一 昭和六四年一月一日から平成元年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が六六二七万四五六九円、課税土地譲渡利益金額が七七七九万一〇〇〇円で、これに対する法人税額が四九六三万五〇〇〇円であるのに架空の寄付金を計上するなどの行為により、その所得を秘匿したうえ、平成二年二月二七日大阪府門真市殿島町八番一二号所在の所轄門真税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一億一四八七万七五七二円の欠損、課税土地譲渡利益金額が〇円でこれに対する法人税額が〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって不正の行為により、右事業年度の法人税四九六三万五〇〇〇円を免れ(別紙1の修正損益計算書及び別紙3の税額計算書参照)
第二 平成二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が二億五一〇三万七六五五円、課税土地譲渡利益金額三二五四万四〇〇〇円で、これに対する法人税額が一億〇七一二万六〇〇〇円であるのに、前同様の行為により、その所得を秘匿したうえ、平成三年二月二七日前記門真税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が〇円、課税土地譲渡利益金額も〇円でこれに対する法人税額が〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって不正の行為により、右事業年度の法人税一億〇七一二万六〇〇〇円を免れ(別紙2の修正損益計算書及び別紙4の税額計算書参照)
たものである。
(証拠の標目)
<注>括弧内の算用数字は記録中の証拠等関係カード(検察官請求分)記載の当該番号の証拠を示す。
判示事実全部について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書二通
一 下田實道の検察官に対する供述調書謄本
一 服部貴子及び佐野隆男(三通)の大蔵事務官に対する質問てんまつ書
一 検察事務官作成の捜査報告書
一 収税官吏作成の査察官調査書九通(7、13ないし17、20、21、25)
一 法人の登記簿謄本
判示第一の事実について
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(1)
一 大蔵事務官作成の証明書(3)
一 収税官吏作成の査察官調査書六通(8、9、12、19、22、23)
判示第二の事実について
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(2)
一 大蔵事務官作成の証明書(4)
一 収税官吏作成の査察官調査書四通(10、11、18、24)
(法令の適用)
被告人の判示各所為は、法人税法一五九条一項に該当するが、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年六月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予することとする。
被告人の判示各所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、判示各所為につき、法人税法一六四条一項により同法一五九条一項所定の罰金刑に処すべきところ、情状により同条二項を適用して、罰金額をその免れた法人税の額以下とし、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、同法四八条二項により各罪の罰金額を合算し、その金額の範囲内で被告会社を罰金三八〇〇万円に処することとする。
(量刑の事情)
被告人の本件犯行は、ほ脱額が二期合計で一億五六七六万一〇〇〇円と高額で、そのほ脱率も二期連続して一〇〇パーセントと極めて高率であり、不正手段として被告人は宗教法人に対する架空の寄付金領収書を買い取り、宗教法人に寄付したように処理したり、不動産売買契約にダミー会社を介入させ内容虚偽の売買契約書を作成したものであり、悪質な犯行と言わざるを得ない。また、被告人は、本件犯行の動機として、絵画の仕入資金等に充てるための資金を多く留保したいということにあった旨述べるが、これらは本来税引後の内部留保資金によってなされるべきものであり、動機において特に酌量すべきとも思われない。
しかしながら、被告人は本件各犯行を認め、自ら積極的に捜査に協力する等反省の態度を示していること、被告会社はすでに修正申告を済ませ、一括して約三億の手形を振り出して今後支払って行く予定であること、被告会社の店舗の保証金が国税局に差押えられているので、税金を払うために右店舗を平成六年七月末に明け渡しており、右店舗の保証金の内二七七九万円が同年九月ころ、国税局に自動的に入ること、本件を契機に税理士に一〇日に一度の割りで来てもらう等経理体制を改善したこと、被告人には業務上過失傷害罪と道路交通法違反による罰金前科があるだけで懲役の前科がないこと、被告人は妻と三人の子供がおり、現在は妻と長男夫婦、長女夫婦、次女と暮らしていること等被告人に有利な事情として考慮して、被告人に対しては主文の刑に処するがその刑の執行を猶予することとし、また、被告会社については主文の刑が相当であると思慮する。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 松下潔)
別紙1 修正損益計算書
<省略>
別紙2 修正損益計算書
<省略>
別紙3 税額計算書
<省略>
別紙4 税額計算書
<省略>