大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 平成6年(わ)3284号 判決 1995年4月21日

本籍

神戸市中央区北長狭通四丁目十番地の一

住居

大阪府豊中市刀根山三丁目三番八号

熱帯漁の餌及び水草輸入卸売業

西田文財

昭和二五年二月三日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官八澤健三郎出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金四二〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、大阪府豊中市刀根山三丁目三番八号において、「阿蘇熱帯魚」の名称で熱帯魚の餌及び水草輸入卸売業を営んでいるものであるが、自己の所得税を免れようと企て

第一  平成二年分の実際の総所得金額が一億一六八七万九九八六円で、これに対する所得税額が五三四六万四五〇〇円であるにもかかわらず、実際の所得金額には関係なく、ことさらに過少な所得金額を記載した所得税確定申告書を作成してその所得の一部を秘匿したうえ、平成三年三月一五日大阪府池田市城南二丁目一番八号所在の所轄豊能税務署において、同税務署長に対し、平成二年分の総所得金額が五一一五万一二〇〇円で、これに対する所得税額が二〇四七万五五〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同年分の所得税三二九八万九〇〇〇円を免れ(別紙1の修正損益計算書及び別紙4の税額計算書参照)

第二  平三年分の実際の総所得金額が一億九七三五万七〇五一円で、これに対する所得税額が九三四〇万二〇〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為によりその所得の一部を秘匿したうえ、平成四年三月一五日前記豊能税務署において、同税務署長に対し、平成三年分の総所得金額が六六一五万一二〇〇円で、これに対する所得税額が二七六七万四〇〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同年分の所得税六五七二万八〇〇〇円を免れ(別紙2の修正損益計算書及び別紙4の税額計算書参照)

第三  平成四年分の実際の総所得金額が二億五四六四万三六七六円で、これに対する所得税額が一億二二〇四万五〇〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為によりその所得の一部を秘匿したうえ、平成五年三月一五日前記豊能税務署において、同税務署長に対し、平成四年分の総所得金額が八一〇九万九五〇〇円で、これに対する所得税額が三五〇九万八二〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同年分の所得税八六九四万六八〇〇円を免れ(別紙3の修正損益計算書及び別紙4の税額計算書参照)

たものである。

(証拠の標目)<注>括弧内の算用数字は記録中の証拠等関係カード(検察官請求分)記載の当該番号の証拠を示す。

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書二通

一  収税官吏作成の捜査報告書

一  収税官吏作成の査察官調査書四六通(8ないし53)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の税脱額計算書(1)

一  大蔵事務官作成の証明書(4)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(2)

一  大蔵事務官作成の証明書(5)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(3)

一  大蔵事務官作成の証明書(6)

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、いずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、いずれも所定刑中懲役刑と罰金刑とを併科し、かつ、各罪につき情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年六月及び罰金四二〇〇万円に処し、同法一八条により、右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

(量刑の事情)

被告人の本件犯行は、ほ脱額が三期合計で一億八五六六万三八〇〇円と高額で、そのほ脱率も約六二パーセントから約七一パーセントと高く、不正手段としていわゆるつまみ申告をしたものであり、悪質な犯行と言わざるを得ない。また、被告人は、本件犯行の動機として、自宅兼事業所に使用している建物が老朽化し、新しい土地を取得して新しい事務所を建てるか、事務所の修理をする等に充てるための資金を多く留保したいということにあった旨述べるが、これらは本来税引後の内部留保資金によってなされるべきものであり、動機において特に酌量すべきとも思われない。

しかしながら、被告人は本件各犯行を認め、自ら積極的に捜査協力する等反省の態度を示していること、被告人はすでに修正申告を済ませ、本税、重加算税を完納していること、本件を契機に税理士に顧問になってもらう等経理体制を改善したこと、被告人には業務上過失傷害による罰金前科があるだけであること、被告人には妻と二人の子供がいること等被告人に有利な事情として考慮して、被告人に対しては主文の刑に処するが懲役刑についてはその執行を猶予することとし、罰金刑については主文の刑が相当であると思慮する。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 松下潔)

別紙1

修正損益計算書

西田文財

総所得金額

<省略>

(事業所得)

<省略>

(譲渡所得)

<省略>

別紙2

修正損益計算書

西田文財

総所得金額

<省略>

(事業所得)

<省略>

別紙3

修正損益計算書

西田文財

総所得金額

<省略>

(事業所得)

<省略>

(譲渡所得)

<省略>

別紙4

税額計算書

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例