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大阪地方裁判所 平成6年(ヨ)3222号 決定 1995年10月24日

債権者(甲事件)

大谷泰夫

右同

上林成光

右二名代理人弁護士

大澤龍司

右同

小田幸児

債権者(乙事件)

石本智彰

右同

田中伸一

右二名代理人弁護士

金子利夫

右同

村田喬

右同

在間秀和

債務者(甲乙事件)

大阪相互タクシー株式会社

右代表者代表取締役

多田精一

右代理人弁護士

俵正市

右同

寺内則雄

右同

小川洋一

右同

林信一

右同

松本史郎

右同

中川晴夫

右同

中嶋俊作

右同

奥田純司

主文

一  債権者大谷泰夫、債権者上林成光、債権者石本智彰及び債権者田中伸一が、いずれも債務者に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。

二  債務者は、債権者大谷泰夫に対し、金四〇万円及び平成七年一〇月から第一審判決の言渡しまで毎月二八日限り金四〇万円の割合による金員を仮に支払え。

三  債務者は、債権者上林成光に対し、金一六五万円及び平成七年一〇月から第一審判決の言渡しまで毎月二八日限り金四〇万円の割合による金員を仮に支払え。

四  債務者は、債権者石本智彰に対し、金四〇万円及び平成七年一〇月から第一審判決の言渡しまで毎月二八日限り金四〇万円の割合による金員を仮に支払え。

五  債務者は、債権者田中伸一に対し、金四〇万円及び平成七年一〇月から第一審判決の言渡しまで毎月二八日限り金四〇万円の割合による金員を仮に支払え。

六  債権者らのその余の申立を却下する。

七  申立費用は債務者の負担とする。

事実及び理由

第一申立の趣旨

一  主文第一項同旨。

二  債務者は、平成六年九月九日から本案判決確定に至るまで、毎月二八日限り、債権者大谷泰夫に対して金四四万一八九一円を、債権者上林成光に対して金四四万二三九八円を、債権者石本智彰に対して金四五万円を、債権者田中伸一に対して金五〇万円をそれぞれ仮に支払え。

第二事案の概要

本件は、債務者が債権者らに対してなした懲戒解雇を無効として、労働契約上の地位にあることの確認及び賃金の支払を求める仮処分である。主たる争点は、欠勤扱い回避目的のための後記「入れチャボ」が懲戒解雇理由となり得るかという点、特に、債務者において右入れチャボがある程度行われてきているにもかかわらず、債務者がこれを黙認してきたような事情があるかである。

一  前提となる事実関係

1  当事者

(1) 債務者は、自動車(タクシー)による旅客運送事業を営む株式会社で、従業員の総数は約八〇〇人である。

(2) 債権者大谷泰夫(以下、「大谷」という。)は、平成四年一一月に債務者に入社し、タクシー運転手として勤務・稼働していた者である。なお、同債権者の賃金は、本件解雇当時月額四四万一八九一円であった。

(3) 債権者上林成光(以下、「上林」という。)は、昭和六二年に債務者に入社し、タクシー運転手として勤務・稼働していた者である。なお、同債権者の賃金は、本件解雇当時月額四四万二三九八円であった。

(4) 債権者石本智彰(以下、「石本」という。)は、昭和五六年タクシー運転手として債務者に入社し、平成六年一月運輸第二部第一課の課長に就任、本件解雇当時は、右課長の地位にあったものであり、その賃金は月額約四五万円であった。

(5) 債権者田中伸一(以下、「田中」という。)は、昭和五二年タクシー運転手として債務者に入社し、平成四年一月に運輸第三部第二課の課長に就任、同五年四月に運輸第二部第二課の課長となり、本件解雇当時は、右課長の地位にあったものであり、その賃金は月額約五〇万円であった。

2  債務者は、債権者らに対し、債権者らを平成六年九月八日付で懲戒解雇する旨の通知を発し、右通知は債権者らに到達した(いずれも一ケ月の予告手当て付)。

3  懲戒解雇として債務者が掲げた理由としては、以下のとおりである。

(1) 大谷については、「大谷は、平成六年八月八日、欠勤扱いを免れる目的で、あたかも就労したかのように装う為の不正工作を課長である田中に依頼し、もって、欠勤すれば取得できないはずの諸手当を不正に取得しようとした。」というものであり、右は、債務者の従業員懲(ママ)罰規程六条二二項〔業務に関して不正の金品その他の利益を授受したとき〕、二四項、〔業務上、会社に対し虚偽の報告・回答・諸届等をしたとき〕、三七項〔前各項に準ずる行為や従業員としてふさわしくない行為をしたとき又は他人を教唆・先導(扇動)しその該当する行為をさせたとき〕に該当する。

(2) 上林については、「上林は、平成六年八月八日、欠勤扱いを免れる目的で、あたかも就労したかのように装う為の不正工作を課長である石本らに依頼し、もって、欠勤すれば取得できないはずの諸手当を不正に取得しようとした。又、この点についての同月二二日、二三日の債務者による事情聴取に対し、虚偽の事実を述べ、反省の色を全く示さなかった。」というものであり、右は、従業員賞罰規程第六条二一項〔正当な理由なしに業務上の指示、命令にしたがわなかったとき〕、二二項、二四項、三七項に該当する。

(3) 石本及び田中については、いずれも、「大谷及び上林の前記各不正工作を容認した。」というものであり、右は、いずれも従業員賞罰規程六条二四項、三七項に該当する。

4  右工作の内容について

(1) 右工作は、乗務員が出勤しないにもかかわらず、課長に依頼して、自己の担当車両の料金メーターを倒してもらい、「待ち時間料金」を乗務員が負担して債務者に入金することによって出勤したこととし、欠勤扱いを免れるというものである。

(2) 乗務員が無欠勤の場合と一日でも欠勤した場合には、諸手当が支給されなくなる等の関係で、その給料額に相当の差がでる。すなわち、<1>皆勤手当については、一ケ月単位で支給され、無欠勤で三万円、欠勤一日で一万五〇〇〇円であり、<2>乗客手当てについては、一ケ月単位で支給され、無欠勤で一万円、欠勤一日で無支給であり、<3>乗客賞与については、三ケ月単位で支給され、無欠勤で三万円、欠勤一日で無支給であり、<4>無事故賞については、六ケ月単位で支給され、無欠勤で一万円、欠勤一日で無支給である。債務者の給料体系は複雑であるので一概にはいえないが、右工作をする場合と欠勤扱いとなる場合で、前者の方が一ケ月当りで約三万円程度多く給与を受領することとなる。

(3) 債権者らの主張によれば、タクシー乗務員が、客が乗車していないにもかかわず、料金メーターを作動させて(待ち時間料金とする場合に限らない)、右メーター料金を債務者に納入する行為を俗に「入れチャボ」と称しているということである(以下、便宜上、右行為を「入れチャボ」という。)。前記工作は、欠勤扱い回避目的のための入れチャボということになる。

5  以上の事実は争いがないか容易に認められるものである。

二  債務者の主張

欠勤扱い回避目的のための入れチャボ行為が、従業員賞罰規程上懲戒事由に該当することは明らかであり、債権者らが解雇無効として主張するような事実は一切なく、本件解雇は有効である。又、保全の必要性についていえば、従業員たる地位の確定は、その必要がないというべきである。

三  債権者らの主張

欠勤扱い回避目的のための入れチャボ行為は、(1)債務者では公然と行われる慣行となっていた、あるいは、(2)右行為につき債務者は(ママ)黙示の承諾があった、あるいは、(3)黙示の承諾はないとしても、右行為は従来繰り返し行われており、債権者らは当然許容されるものと考えて行ったにすぎず懲戒解雇されるほどの違法性はなく、債務者の債権者らに対する懲戒解雇はいずれにせよ、無効である。

又、債権者田中、同石本に対する懲戒解雇は不当労働行為であってこの意味でも無効である。

第三当裁判所の判断

一  (証拠・人証略)によれば、以下の事実が一応認められる。

1  債務者の就業規則では、有給休暇の取得について、希望の集中する時期(年末年始、盆、ゴールデンウィーク)においては、右開始日の一〇日程前で年休申出を締切り、右締切り後において申出をする場合は、その希望日の最終出勤時刻(午後五時三〇分)までに申出をすればよいが、その際は、事後的でもよいから、自己もしくは家族の診断書を提出するとの取決めとなっていた。

2  右の事後的な届については、その添付書類が診断書に限るかどうかにつき、従来は、相当厳格に運用されていたところ、平成六年七月二〇頃以降については、診断書に代わるものでもよいとの運用がなされるようになった。

3  平成六年の盆休み(同年八月八日から同月一七日まで)については、有給の締切り日が同年七月三一日であったところ、同年八月七日午後一〇時頃、大谷は田中に電話して、母親の具合が悪くなり、翌日病院へ連れていく関係上、有給休暇を取れれば取りたい旨(大谷の有給休暇はまだ残っていた。なお、大谷は母親と二人暮らしである。)述べたが、田中から、締め切り日以後であるため有給休暇取得は相当難しい旨説明を受け、母親の病状によっては翌日出勤できるかもしれない旨述べるなどした。同月八日午後四時頃、大谷は田中に電話し、出勤できない可能性が高いが、出勤できるかもしれないのでいずれにせよメーターを倒した状態(入れチャボ)にしていてほしい旨述べたところ、田中は了解し、大谷の担当課長である石本の了承を得たうえ、メーターを倒した。そして、同日午後一〇時頃、大谷は、田中に電話し、出勤できない旨述べた。結局、待ち時間料金約七〇〇〇円が会社に納金された。業務日報(以下、「日報」という。)については、田中又は石本が代筆した。

4  同日(八月八日)午後四時頃、出勤した上林は、自己車両のフロントガラスに貼ってあった優良運転者のステッカーがはずされていたことから立腹し、担当課長である石本に説明を求めて強く迫り、押し問答となり、又、腹具合が良くなかったこともあって、上林は当日稼働する気分でなくなったことから、有給休暇取得を申し出た(上林の有給休暇はまだ残っていた。)。しかし、前記有給休暇締切り日(同年七月三一日)後であったため、石本から、有給休暇の取得は相当難しい旨説明を受け、再び押し問答をしていたところ、ここに田中も加わって上林をなだめるなどし、結局、入れチャボをすると(ママ)となった。そして、上林は、メーターを倒し、日報の一部を書き込み、五〇〇〇円を石本に渡して帰宅した。

5  同日午後五時三〇分以降、乗務員清水某(以下、「清水」という。)から債務者に電話があり、休みたいので有給休暇を取得したいとの申出があった(債務者では、有給休暇の申出は、その日の最終出勤時刻である午後五時三〇分までにしなければならないこととされている。)。その際、夕会の直前で部課長が多数いる状態であったところ、右電話の用件につき藤原部長の知れるところとなり、同人は、「今日清水が来んかったら欠勤や。欠勤がいややったら出てくるように言え。」と皆の前で述べ、その後、石本が清水に電話し、有給休暇が取れない旨伝えた。そして、後日、清水は、同じ同年八月八日に、上林と大谷が入れチャボにより欠勤扱いを免れているのに自己が欠勤扱いになったのは不公平であるとし、自己の所属する組合に申し出たことから、本件入れチャボが表沙汰となった。

6  債務者においては、日報と金銭については、指導部がタコ紙と照合するなどしてこれを調査し、不審な点があれば、これを課長に問いただし、課長をして調査させるシステムとなっていた。

7  債務者の乗務員塚谷実雄(以下「塚谷」という。)は、同年五月六日と同月一六日の少なくとも二回欠勤扱い回避目的の入れチャボをしている。そして、右入れチャボの態様も債権者らと同様、メーターを倒して待ち時間料金を支払い、欠勤扱いを免れるというもの(その車両は全く走行していない。)であり、その日報には、「本社から本社へ(同月六日分)」「関目から関目へ(同月一六日分、なお、関目というのは、債務者の本社の所在地である)」との趣旨の記載がある。そして、当時、右は、せいぜい労働放棄(出勤したけれども労働を放棄したとの趣旨)として処理された可能性が高く、少なくとも欠勤扱いとはならなかった。

8  債務者において、過去入れチャボをしたとして懲戒処分を受けた従業員はいない。

二  以上を前提に検討する。

1  欠勤扱い回避目的の入れチャボは、前記のとおり、欠勤扱いとなることにより合計五万円以上の諸手当てを失うこととなるのを免れる目的の行為であって、裏を返せば、右行為により、債務者は、本来支払わなくてもよい金員を支払うこととなるのであるから、右行為が違法な評価を受ける行為であることは明らかであって、右行為は形式的には従業員賞罰規程六条二二項、二四項、三七項に該当するといえそうにみえる。

又、大谷、上林が有給休暇取得を申し出た際、田中、石本は、きちんと診断書を提出させるべく指導すべきであったと一応はいえる。

2  しかしながら、欠勤扱い回避目的の入れチャボは、債務者においては過去相当行われており、管理職も含めて殆どがこれを認識していたものと認められる。この点につき、以下、項を改めて検討する。

三  前記二、2のとおりであると認定する根拠は以下のとおりである。

1  本件二件の入れチャボは、いずれもメーターを倒して待ち時間料金を債務者に納入するという方法であり(すなわち、車両は全く走行していない。)、大谷の場合は、日報も自己で記載していない。債務者においては、前記のとおり、指導部で日報とタコ紙の照合が行われるシステムとなっているところ、右方法では、タコ紙を見れば車両が走行していないことは一目瞭然であり、一見して入れチャボであることが強く疑われるものである(指導部が不審を感じた場合、再び課長に調査させるシステムになっていたとしても、右のような極端な場合までも課長の虚偽の調査結果を指導部がそのまま鵜呑みにして放置することは考えられない。)。すなわち、もし仮に、債権者らが、入れチャボが発覚すれば懲戒解雇の如き重大な結果をもたらすものと認識していたとすれば、右入れチャボの態様はあまりにも無防備なものであるといわざるを得ない。

2  前記塚谷の二回にわたる入れチャボについては、客観的に入れチャボ行為であったこと自体は債務者も認めるところであるが、その入れチャボの態様は、二回とも、前記認定のとおり、債権者らの入れチャボの態様と同様一見して入れチャボであると強く疑われるものである。それにもかかわらず、右二回の入れチャボとも、本件仮処分申立後に債権者らから指摘を受けるまでは、債務者においては出勤扱いとして処理されていたものである。

3  前記塚谷の入れチャボについては、山下、大串の供述によれば、「右の点につき平成六年一二月頃調査した結果、塚谷が欠勤の申し出をしたところ、同人の何らの依頼がないにもかかわらず、田中が独断で入れチャボをし、後日、出勤した塚谷からメーター料金を徴収したとの事実が判明した。」ということであり、又、債務者の主張によれば、田中が独断で塚谷について右入れチャボをした動機は、塚谷に便宜をはかることによって、同人を債権者らの所属する組合に勧誘するためであるとのことである。しかしながら、乗務員の依頼がないにもかかわらず、課長が独断で入れチャボをするというのは、いかにも不自然であること、又、その態様も一見して入れチャボであることが強く疑われるものであること、さらに、(証拠略)によれば、同年五月一六日の入れチャボについては、前もって、メーター料金として一万円を田中が塚谷から預かっている事実が窺われるのであって、山下、大串の供述は信用できず、又、債務者の主張も採用できない。結局、塚谷の入れチャボについては、田中が独断でなしたものではなく、同人の「東出統括部長から自分(田中)に対し、塚谷に入れチャボをするよう指示があった。」との供述が信用できるものである。

四  以上によれば、債務者においては、欠勤扱い回避目的の入れチャボは過去相当程度行われており、指導部はもちろん、部長ら管理職もこれを認識していた事実が認められる。平成六年八月八日、清水について入れチャボが行われなかったのは、前記認定のとおり、多くの部課長のいる言わば公然の場で、有給休暇取得の要件を満たさない申出がなされたことが明らかとなってしまったため、入れチャボをするわけにはいかなくなったためであると考えられるものである。このように、債務者において、入れチャボは公然と許可されているものではないけれども、入れチャボをした従業員に対して、これを理由として懲戒処分をした例は過去にないことでも分かるように、債務者は入れチャボがなされていることを認識しつつもこれを不問に付するという態度を取っていたものと評価されるものである。前記のとおり、欠勤扱い回避目的の入れチャボは、それ自体をみると違法性のあるものであり、債務者の従業員賞罰規程の懲戒解雇事由にも形式的には該当するものであるけれども、右のような事情に照らせば、右入れチャボ行為をしたことを理由に、何らの事前警告を発することなく懲戒解雇処分に付するのは重きに失するといわざるを得ない。

又、上林については、債務者の本件入れチャボに関する調査につき虚偽の供述をし、反省の情がないことも懲戒解雇理由として挙げられているけれども、入れチャボに対する債務者の従前の態度が前記のとおりであったことに照らせば、右事実があったとしても、上林に対して懲戒解雇をもって臨むのはやはり重きに失するものである。

右のとおり、本件各懲戒解雇はいずれも無効である。

五  保全の必要性について

1  大谷について

(1) 前掲(証拠略)によると、大谷は、<1>通院を要する実母(八六歳)と二人暮らしであり、その生計は主として同債権者の収入で賄われてきたものである(実母は月当たり四万円程の年金収入がある。)こと、<2>同債権者は解雇前、月額約四四万円の給与の支払を受けていたこと、が一応認められる。

(2) 右事実のほか平均的家庭における標準的な家計支出等諸般の事情をも併せ考えると、同債権者に対しては、過去分の仮払として四〇万円、及び平成七年一〇月以降毎月四〇万円の金員の仮払が必要であると一応認められる。

2  上林について

(1) 前掲(証拠略)によると、上林は、<1>妻、長女(家事手伝い)、次女(会社員)の家族であり、その生計は、妻、長女の分は債権者の収入により賄われてきたものであること、<2>同債権者は、解雇前月額約四四万円の給与の支払を受けていたこと、<3>同債権者は、その知人から一二五万円の借金があり、一括返済の約定であること、が一応認められる。

(2) 右事実のほか、平均的家庭における標準的な家計支出等諸般の事情をも併せ考えると、同債権者に対しては、過去分の仮払として一六五万円(右知人への借金一括返済分一二五万円を考慮)、及び平成七年一〇月以降毎月四〇万円の金員の仮払が必要であると一応認められる。

3  石本について

(1) 前掲疎明資料によると、石本は、<1>寝たきりの義母、妻、長男(塾講師)、長女(会社員)の家族であり、その生計は、義母と妻の分は同債権者の収入により賄われてきたものであること、<2>同債権者は、解雇前月額約四五万円の給与の支払を受けていたこと、が一応認められる。

(2) 右事実のほか平均的家庭における標準的な家計支出等諸般の事情をも併せ考えると、同債権者に対しては、過去分の仮払として金四〇万円、及び平成七年一〇月以降毎月四〇万円の金員の仮払が必要であると一応認められる。

4  田中について

(1) 前掲疎明資料によると、田中は、<1>リウマチ療養中の妻と、長男(公務員)、次男(中学生)の家族であり、その生計は、主として同債権者の収入で賄われてきたものである(長男が毎月三万円家計に入れている。)こと、<2>同債権者は、解雇前月額約五〇万円の給与の支払を受けていたこと、が一応認められる。

(2) 右事実のほか平均的家庭における標準的な家計支出等諸般の事情をも併せ考えると、同債権者に対しては、過去分の仮払として金四〇万円、及び平成七年一〇月以降毎月四〇万円の金員の仮払が必要であると一応認められる。

5  なお、従業員たる地位の確定は、債権者らが加入していた健康保険・厚生年金の資格を継続するために必要であり、保全の必要性がある。

よって、主文のとおり決定する。

(裁判官 村田文也)

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