大判例

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大阪地方裁判所 平成6年(ヨ)687号 決定

債権者

高橋佳代子

右代理人弁護士

高橋典明

債務者

財団法人大阪労働衛生センター第一病院

右代表者理事

谷道之

右代理人弁護士

藤田整治

主文

一  債権者は、債務者の従業員の地位にあることを仮に定める。

二  債務者は、債権者に対し、平成六年七月から本案訴訟の第一審判決の言渡しに至るまで、毎月二五日限り金一三万円宛を仮に支払え。

三  債権者のその余の申立てを却下する。

四  申立費用は債務者の負担とする。

理由

第一申立て

一  債務者は、債権者を平成六年四月一日以降、債務者の従業員として仮に取り扱え。

二  債務者は、債権者に対し、平成六年四月から本案判決に至るまで毎月二五日限り、二二万七一二〇円を仮に支払え。

第二当裁判所の判断

一  債務者は、病院を営む財団法人であり、債権者は、昭和四七年二月一日債務者に診療内科職員として採用され、患者のカウンセリング等の業務に従事し、その勤務形態は、月・水・金の週三日勤務であり、債権者の賃金は、平成五年一二月で月二二万七一二〇円を毎月二五日限り支給されてきたところ、債務者は、債権者に対し、平成六年二月二六日付内容証明郵便により、常勤者として勤務しない場合には、平成六年二月二八日までに退職願いを提出することを指示し、債権者が退職願いを出さない場合には、同年三月三〇日付けで解雇する旨通告した。(<証拠略>)

二  債務者は、債権者を解雇した理由として、債権者は勤務形態からは、いわゆるパートタイマーの職員であるところ、労働条件において、かなり優遇されており、他の職員から不平不満が生じ、債務者は混乱を避けるため、フルタイマーの職員となるかパートタイマーの職員となるか、そのいずれかを選択してもらいたいとの申し出をしたが、これに応じず、これが、就業規則一八条四号の事業の都合によりやむをえないときに当たると主張する。

三  本件疎明資料及び審尋の全趣旨によれば、債権者は、右のとおり週三日勤務ではあるが、年二回の昇給(昭和四七年当時は年一回)、年二回の一時金の支給もあり、退職金の支払も約束されていたところ、債務者においては、平成三年九月に現院長が就任し、赤字を解消するため合理化を図ることとし、その一環として、債権者に常勤職員となるか、今後も同様の勤務形態を続けるのであれば他のパートタイマー職員と同等の勤務条件とすることを申し出たが、債権者は、二年前に乳ガンの手術を受け、健康維持のため、これまでどおりの週三日の勤務形態を希望し、債務者の主張するパートタイマー職員の労働条件は、これまでの債務者の労働条件に比べ、低下するため、これに同意していないこと、債務者は、いずれにも応じないのであれば退職届を提出するように求めたが、債権者はこれに応じなかったことが認められる。

四  しかしながら、使用者が労働条件の変更(低下)を提案した場合、これに同意しないこと、同意しない場合は退職届を提出せよとの指示に従わないことのみをもって、その労働者の解雇を正当とすることはできないし、本件においては、債務者と債権者の間に同意が得られないまま、債務者において、債権者の平成五年のベア、定時昇給の不実施、同年の年二回の一時金の半額支給等の措置がとられているが、債権者においては、労働基準監督署に相談したり、弁護士に依頼して債務者に対し従前どおりの労働条件の実施を請求したりはしたものの、平穏に勤務を継続しており(<証拠略>)、債務者においては、他の職員が不平不満を抱いているというものの(<証拠略>)、債権者を解雇しなければならないような混乱が生じているわけではないし、債務者を解雇することが債務者の事業の都合によりやむをえない場合にあたるというに足りる事情は認められない。

結局、本件解雇を正当とするに足りる理由は認められず、本件解雇は解雇権の濫用にあたるものとして無効というべきであり、債権者は、債務者の従業員たる地位を有するものであることが認められ、その保全の必要性もまた認められる。

五  本件疎明資料(<証拠略>)及び審尋の全趣旨によれば、債権者は、学校に勤務する夫(生命保険等七万円余を差し引いて手取り月額三六万五七二四円)の給与と債権者が債務者から受ける賃金で生活を維持し、毎月四八万九三六〇円(生活費のほか、三万円の教会献金、八万五〇〇〇円の住宅ローン等を含む)を支出しており、このほか、年単位で支払わなければならない固定資産税等の支出もあることが一応認められ、これらを考慮すると、債務者に対し、債権者に対し、平成六年七月以降、本案の第一審判決の言渡しに至るまでの間、月額一三万円宛の金員の仮払いを命ずる必要性もまた認められ、これを超える部分については必要性の疎明がないというべきである。

六  以上のとおり、本件申立ては、債権者の債務者の従業員たる地位の保全及び平成六年七月以降、本案の第一審判決の言渡しに至るまでの間、毎月二五日限り、一三万円を仮に支払うことを求める限度で理由があるので認容し、その余は理由がないので却下することとし、事案の性質に鑑み、債権者に担保を立てさせないで、主文のとおり決定する。

(裁判官 関美都子)

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