大阪地方裁判所 平成6年(ワ)2175号 判決 1994年11月24日
主文
1. 原告に対し、被告澤井は別紙目録二記載の建物を収去し、被告藤森は同建物から退去して、それぞれ同目録一記載の土地を明け渡せ。
2. 被告らは、原告に対し、連帯して平成五年一一月二〇日から右明渡済みまで一か月一万九一七八円の割合による金員を支払え。
3. 被告藤森は、原告に対し、八七万〇〇五七円を支払え。
4. 訴訟費用は被告らの連帯負担とする。
5. この判決は、仮に執行することができる。
事実
第一、当事者の求める裁判
一、請求の趣旨
主文と同旨
二、請求の趣旨に対する答弁
1. 原告の請求を棄却する。
2. 訴訟費用は原告の負担とする。
第二、当事者の主張
一、請求原因
1. 原告は、被告藤森に対し、
ア 昭和四七年八月一日、別紙目録一記載の土地(以下「本件土地」という。)を、賃料は一か月七八二七円とし、建物所有の目的で、賃貸し、
イ 昭和四八年四月一日、別紙目録三記載の建物(以下「三の建物」という。)を、賃料は一か月一万八〇〇〇円の約定で、賃貸した。
2. その後、賃料は増額され、平成三年六月までに、本件土地は一万九一七八円、三の建物は二万九〇〇〇円(いずれも一か月分)にそれぞれ改定された。
3. しかし、被告藤森が賃料の支払いを怠ったため、原告は、被告藤森に対し、催告のうえ、平成五年一一月一九日到達の内容証明郵便で右賃貸借契約をいずれも解除する旨の意思表示をした。
4. 被告藤森は、本件土地に別紙目録二記載の建物(以下「二の建物」という。)を建築し、これを所有していたが、平成四年七月三一日、被告澤井に対し、譲渡担保を原因として、同建物の所有権を移転し、同年八月六日、その旨の登記を経由した。
5. 被告藤森は、平成六年六月八日、原告に対し三の建物を明け渡したが、現在なお、二の建物に居住して、本件土地を占有している。
よって、原告は、
A 被告藤森に対し、賃貸借契約の終了に基づき、
あ 二の建物から退去して本件土地を明け渡し、かつ、本件土地の未払賃料三一万八九九四円と、平成五年一一月二〇日から右明渡済みまで一か月一万九一七八円の割合による遅延損害金の支払い、
い 三の建物の、未払賃料三五万八三五四円と、明渡済みまでの遅延損害金一九万二七〇九円の支払い、
をそれぞれ求め、
B 被告澤井に対し、本件土地の所有権に基づき、二の建物を収去して本件土地を明け渡すことと、平成五年一一月二〇日から右明渡済みまで一か月一万九一七八円の割合による賃料相当損害金の支払い(この支払いは、被告らの不真正連帯債務である。)を求める。
二、請求原因に対する認否
(被告藤森の認否)
すべて認める。
(被告澤井の認否及び主張)
1. 1のア、2及び3の各事実は知らない。
2. 4の事実は認める。
3. 被告澤井は譲渡担保権者に過ぎないから、原告に対し建物収去義務を負うものではない。
第三、証拠<略>
理由
一、被告藤森に対する請求について
請求の原因事実は、被告藤森との間に争いがない。
右争いのない事実によれば、原告の被告藤森に対する請求は理由があるというべきである。
二、被告澤井に対する請求について
1. 証拠(甲一、二、五、六の1、2、八の1、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、請求原因1のア、2及び3の各事実が認められ、右認定に反する証拠はない。
そして、同4の事実は当事者間に争いがない。
2. これらの事実によると、賃貸借契約の終了により、被告澤井は、本件土地の占有権原を失ったから、原告に対し、二の建物を収去して本件土地を明け渡す義務があるといわなければならない。
3. 被告澤井は、譲渡担保権者に過ぎないから、原告に対し建物収去義務を負うものではないと主張するけれども、借地上の建物の譲渡担保権者は、対外的にはその建物の所有者にほかならないから、賃貸借が終了すれば、建物を収去して借地を明け渡す義務があるのは当然である。
被告澤井の右主張は失当であり、採用することができない。
三、結論
よって、原告の本訴請求を認容し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
<別紙>目録<略>