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大阪地方裁判所 平成6年(行ウ)89号 判決 1997年9月04日

大阪市北区梅田二丁目四番七号

原告

大和地所株式会社

右代表者代表取締役

青山長

右訴訟代理人弁護士

水田利裕

小杉茂雄

澤田隆

山下誠

黒瀬英昭

大阪市北区南森町七-一三

被告

北税務署長 猿橋崇史

右指定代理人

草野功一

西浦康文

平田豊和

佐藤香

主文

一  被告が原告に対して、平成三年二月一九日付けでなした、昭和六三年三月期所得金額を一四億〇一一四万三五二四円(欠損金)、法人税の額を五一二八万七六〇〇円、過少申告加算税の額を四〇六万八〇〇〇円、平成元年三月期所得金額を二〇億七八三二万二五三二円(欠損金)、法人税の額を二七八四万〇五〇〇円、過少申告加算税の額を四一五万一〇〇〇円、平成二年三月期所得金額を五五七二万八七六三円、法人税の額を四億七一七五万八二〇〇円、過少申告加算税の額を一〇四万一〇〇〇円、重加算税の額を四〇九万一五〇〇円とする各更正及び賦課決定処分のうち、所得金額がそれぞれ一五億〇六六一万〇一〇三円(欠損金)、二一億〇〇〇八万六五三二円(欠損金)、〇円を超える部分、法人税の額がそれぞれ三〇一八万九六〇〇円、二一三五万五四〇〇円、四億五〇三七万三九〇〇円を超える部分並びに過少申告加算税及び重加算税の額がそれぞれ一二四万七〇〇〇円、三一七万七五〇〇円、〇円、二五万二〇〇〇円を超える部分(ただし、平成二年三月期については、平成三年六月二八日付け減額更正及び同年八月三〇日付け重加算税の変更決定により変更された後のもの)を取り消す。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを二分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担すとる。

事実及び理由

第一請求

被告が原告に対して、平成三年二月一九日付けでなした、昭和六三年三月期所得金額を一四億〇一一四万三五二四円(欠損金)、法人税の額を五一二八万七六〇〇円、過少申告加算税の額を四〇六万八〇〇〇円、平成元年三月期所得金額を二〇億七八三二万二五三二円(欠損金)、法人税の額を二七八四万〇五〇〇円、過少申告加算税の額を四一五万一〇〇〇円、平成二年三月期所得金額を五五七二万八七六三円、法人税の額を四億七一七五万八二〇〇円、過少申告加算税の額を一〇四万一〇〇〇円、重加算税の額を四〇九万一五〇〇円とする各更正及び賦課決定処分のうち、所得金額がそれぞれ一六億一〇六五万七六二三円(欠損金)、二二億〇六四七万〇〇一二円(欠損金)、〇円を超える部分、法人税の額がそれぞれ一七七一万二三〇〇円、〇円、四億四九六五万二三〇〇円を超える部分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分(ただし、平成二年三月期については、平成三年六月二八日付け減額更正取消同年八月二八日付け減額更正及び同年八月三〇日付け重加算税の変更決定により変更された後のもの)を取り消す。

第二事案の概要

本件は、原告の昭和六二年四月一日から同六三年三月三一日まで、同年四月一日から平成元年三月三一日まで、同年四月一日から平成二年三月三一日までの各事業年度(以下、順次「昭和六三年三月期」「平成元年三月期」「平成二年三月期」といいう、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、被告が平成三年二月一九日付けでなした更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の賦課決定処分(以下「本件課税処分」という。)の取消しを求める抗告訴訟である。

一  争いのない事実(前提事実)

1  原告は、不動産業を営む同族会社である。

2  本件課税処分の経緯は、別表1ないし3記載のとおりである。なお、裁決書は平成六年九月六日原告に送達された。

二  本件課税処分の適法性に関する被告の主張の要旨

1  昭和六三年三月期について(別表1参照)

(一) 原告が修正申告で申告した金額(争いがない)

<1> 所得金額 △一六億一〇六五万七六二三円

(以下、△は欠損を表す。)

<2> <1>に対する税額 〇円

<3> 課税土地譲渡利益金額 六四四六万九〇〇〇円

<4> <3>に対する税額 一九三四万〇七〇〇円

<5> 法人税額計(<2>+<4>) 一九三四万〇七〇〇円

<6> 控除所得税額 一六二万八三三六円

<7> 差引所得に対する法人税額 一七七一万二三〇〇円

<10> 翌期に繰り越す欠損金 二六億五四七六万八一一一円

(二) 被告は、後記争点1で詳述するとおり、土地譲渡益の計上漏れが二億〇九五一万四〇九九円あると認定して、これを右の所得金額に加算し、<1>の所得金額を△一四億〇一一四万三五二四円と、<10>の翌期に繰り越す欠損金額を二四億四五二五万四〇一二円と認定した。

(三) そして、法人税額については、右の土地譲渡益の増加を考慮に入れると、<3>の課税土地譲渡利益金額は二億三一四〇万八〇〇〇円になるところ、租税特別措置法六三条の二の規定に基づき右金額に対する税額を再計算すると、<4>の税額及び<5>の法人税額計は五二九一万六〇〇〇円となり(別表4-1、2参照)、これから<6>の一六二万八三三六円を控除すると、<7>の差引所得に対する法人税額は五一二八万七六〇〇円となる。

2  平成元年三月期について(別表2参照)

(一) 原告が修正申告で申告した金額(争いがない)

<1> 所得金額 △二二億〇六四七万〇〇一二円

<2> <1>に対する税額 〇円

<3> 課税土地譲渡利益金額 〇円

<4> <3>に対する税額 〇円

<5> 法人税額計(<2>+<4>) 〇円

<6> 控除所得税額 〇円

<7> 差引所得に対する法人税額 〇円

<10> 翌期に繰り越す欠損金額 四八億六一二三万八一二三円

(二) 原告は、訴外岩狭昌清に対し、昭和六三年六月二八日付け売買契約に基づき、兵庫県西宮市苦楽園六番町所在の土地建物(後記の交換取得資産)を譲渡し、その譲渡原価を二億五一九四万七四八〇円(帳簿原価)として<1>の所得金額を算出した(争いがない)。

(三) しかし、後記争点1でみるように、右土地建物の本来の譲渡原価は、その取得時の価額である一億二三八〇万円であるから、右(二)の帳簿原価との差額である一億二八一四万七四八〇円が過大に計上されていることになる。

(四) したがって、右の過大計上額を<1>の所得金額に加算すると、△二〇億七八三二万二五三二円となり、また、<10>の翌期に繰り越す欠損金額は、前記1(二)と右の過大計上額とを考慮すると、四五億二三五七万六五四四円となる。

(五) そして、法人税額については、右の譲渡原価の過大計上を考慮に入れると、<3>の課税土地譲渡利益金額は九四六五万七〇〇〇円になるところ、租税特別措置法六三条の二の規定に基づき右金額に対する税額を再計算すると、<4>の税額及び<5>の法人税額は二八四〇万二五〇〇円となり(別表5参照)、これから<6>の五六万一九七〇円を控除すると、<7>の差引所得に対する法人税額は二七八四万〇五〇〇円となる。

3  平成二年三月期について(別表3参照)

(一) 原告が確定申告で申告した金額(争いがない)

<1> 所得金額 〇円

<2> <1>に対する税額 〇円

<3> 課税土地譲渡利益金額 一七億三九四九万三〇〇〇円

<4> <3>に対する税額 四億五〇七〇万五八〇〇円

<5> 課税留保金額 二三億九一七九万八〇〇〇円

<6> <5>に対する税額 四億七一八五万九六〇〇円

<7> 法人税額計(<4>+<6>) 九億二二五六万五四〇〇円

<8> 控除所得税額 一〇五万三四七八円

<9> 差引所得に対する法人税額 九億二一五一万一九〇〇円

<12> 翌期に繰り越す欠損金額 三億三一六一万三六三七円

(二) 被告が認定した所得金額 五五七二万八七六三円

被告は、次の三つを<1>の所得金額に加算した。

(1) 受取利息の計上漏れ 二二一八万〇八二一円

後記争点2で詳述

(2) 支払手数料のうち損金の額に算入されない額 二七五〇万円

後記争点3で詳述

(3) 繰越欠損金の当期控除額の過大額 六〇四万七九四二円

原告は、繰越欠損金の当期控除額を四五億二九六二万四四八六円として所得金額を算定したが、昭和六三年三月期及び平成元年三月期の更正に伴い、当事業年度において控除できる繰越欠損金が四五億二三五七万六五四四円であることは前記2(四)記載のとおりであるから、右の差額である六〇四万七九四二円は過大控除として、所得金額に加算されるべきものである。

(三) 法人税額について

(1) 所得金額に対する法人税額(<2>)について

法人税法六六条一、二項により、二一四一万一二〇〇円となる。

(2) 課税土地譲渡利益金額に対する税額

右(二)(2)記載の架空仲介手数料部分を譲渡のために要した経費の額から除外すると、<3>の課税土地譲渡利益金額は一七億三六〇八万六〇〇〇円となり、これに対する<4>の税額を再計算すると、四億五一四〇万〇五〇〇円となる(別表6-1、2参照)。

(3) 右<2>と<4>の合計額である四億七二八一万一七〇〇円(<7>)から<8>の一〇五万三四七八円を控除すると、<9>の差引所得に対する法人税額は四億七一七五万八二〇〇円となる。

三  争点と当事者の主張

1  不動産の交換に関する問題点

(一) 争いのない事実

(1) 原告は、訴外河村良彦(以下「河村」という。)との間の昭和六二年九月二六日付け不動産交換契約書に基づき、原告が昭和六一年二月二七日から所有していた兵庫県西宮市相生町一三七番地の土地五五七・〇九平方メートル(実測面積は五五七・七六平方メートル。以下「交換譲渡土地」という。)と河村が所有していた同市苦楽園六番町四一の土地二七〇・七八平方メートル(以下「交換取得土地」という。)及び同土地に存在する建物述べ面積一九二・八六平方メートル(以下「交換取得建物」という。なお、交換取得土地と併せて「交換取得資産」という。)とを交換した(以下「本件交換」という。)

(2) 原告は、本件交換が等価交換で損益が発生しないものとして会計処理をするとともに、昭和六三年三月期の法人税の申告に当たり、本件交換には法人税法五〇条一項(交換により取得した資産の圧縮損の損益算入)の規定(以下「交換特例」という。)の適用があるものとしてその所得金額(前記二1(一)<1>)を算出した。

(二) 被告の主張

(1) 交換特例の適用について

ア 交換特例が適用されるのは、それぞれの資産の所有者がともに一年以上所有していた「固定資産」を交換した場合に限られるところ、交換譲渡土地は原告の棚卸資産に当たるから、交換特例の適用はない。

イ しかも、交換特例は、交換による取得資産の価額と譲渡資産の価額との差額がこれらの価額のうちいずれか多い価額の一〇〇分の二〇に相当する額を超える場合には適用されないところ(法人税法五〇条二項)、本件交換時における交換譲渡土地の価額は四億六二五六円一五七九円であり、交換取得資産のそれは一億二三八〇万円であって、交換時における取得資産の価額と譲渡資産の価額との差額は、これらの価額のうちのいずれか多い価額の一〇〇分の二〇を超えていることが明らかであるから、この点からも本件交換について交換特例を適用する余地はない。

なお、被告は、右の交換譲渡土地の価額については、原告の同土地の取得価額(二億四四六四万七四八〇円)に、同土地に最も近接する地価公示法に基づく標準地の公示価格の上昇率が加味して算出したものである。

(2) 譲渡利益の計上漏れについて

前記(1)イ記載のとおり、本件交換時の交換譲渡土地の価額は四億六二五六万一五七九円であるところ、帳簿価額は二億五三〇四万七四八〇円である(争いがない)から、その差額二億〇九五一万四〇九九円が、交換譲渡土地の譲渡利益として計上漏れとなる。

(3) 租税特別措置法(平成六年法律第二二号による改正前のもの。以下同じ)六二条(交際費等の損金不算入)の適用について

また、本件交換時の交換譲渡土地の価額四億六二五六万一五七九円と交換取得資産の価額一億二三八〇万円との差額(以下「交換差額」という。)は三億三八七六万一五七九円となるところ、右差額は、原告が当時多額の融資を受けていた伊藤萬株式会社(以下「伊藤萬」という。)を中心とする伊藤萬グループとの円滑な関係を維持する目的で、その代表取締役である河村に右差額を利益として供与したものであるから、租税特別措置法六二条三項に規定する交際費等に該当し、損金の額には算入されない。

(4) そうすると、昭和六三年三月期については、原告の申告所得金額△一六億一〇六五万七六二三円に右計上漏れ二億〇九五一万四〇九九円を加算した金額一四億〇一一四万三五二四円が所得金額となり、翌期に繰り越す欠損金額は二四億四五二五万四〇一二円となる。

(三) 原告の主張

(1) 交換特例の適用について

交換譲渡土地は原告の固定資産であるし、また、交換譲渡土地及び交換取得資産の価額は、本件交換当時、ともに約二億五〇〇〇万円位であり、等価あるいはその差額がいずれか多い価額の一〇〇分の二〇に相当する金額以内である。

したがって、本件交換には法人税法五〇条一項の適用がある。

(2) 譲渡利益について

本件交換当時の交換譲渡土地の価額は約二億五〇〇〇万円であり、帳簿価額との差額はなく、譲渡利益はない。

仮に、鑑定人佐野幸人の鑑定の結果(以下「佐野鑑定」という。)に従い、交換譲渡土地の価額が三億五七〇九万五〇〇〇円であったとすれば、帳簿価額との差額は一億〇四〇四万七五二〇円にすぎないから、右金額をもって譲渡利益とすべきである。

(3) 交換差額について

また、本件交換時の交換譲渡土地と交換取得資産のそれぞれの価額は等価であり差額はない。

仮に、佐野鑑定に従い、交換譲渡土地の価額が三億五七〇九万五〇〇〇円、交換取得資産のそれが一億四五五六万四〇〇〇円であったとすれば、その差額は二億一一五三万一〇〇〇円にすぎない。

2  嬉野国際観光への貸付金の有無及びその利息の発生の有無

(一) 被告の主張

(1) 嬉野国際観光株式会社(以下「嬉野国際観光」という。)は、平成元年八月三〇日、伊藤萬との間で、企画手数料一〇億円を支払う(平成元年九月末日までに五億円、同年一一月末日までに五億円を支払う)ことを合意した。

(2) 原告は、平成元年九月二八日、嬉野国際観光が同月末日に支払うべき右の五億円を、同社に代わって、伊藤萬に対して約束手形で支払い、もって同額を嬉野国際観光に貸し渡した。

(3) 原告は、右貸付日から事業年度末である平成二年三月三一日までの間の嬉野国際観光から受け取るべき年八・八パーセントの割合による利息を計上しなかった。そこで、被告はこれを平成二年三月期の所得金額に加算した。

(二) 原告の主張

(1) 原告は、嬉野国際観光に、約束手形を利用さけただけであって、貸借関係はない。

(2) 仮に貸借関係にあるとしても、約束手形が決済されたのは平成元年一一月三〇日であり、原告の金銭的負担が発生したのは同日からであるから貸付期間は、平成元年一一月三〇日から平成二年三月三一日までの期間にすぎない。したがって、右期間を超える利息の計上は違法である。

3  仲介手数料の有無及び重加算税賦課決定処分の適法性

(一) 被告の主張

(1) 原告は、別表7の架空仲介手数料の内訳の原告申告額欄記載の金額(以下「本件仲介手数料」という。)を原告の事業である不動産販売に当たって生じた仲介手数料であるとして、その全額を損金の額に算入した(争いがない)。

(2) しかし、本件仲介手数料のうち、右表の差引架空計上額欄記載の金額合計二七五〇万円(以下「本件架空手数料」という。)は、支払先から現金の一部を返戻させたり、架空の領収書を作成するなどしていたものであり、架空の手数料部分であった。

したがって、本件架空手数料部分は、損金の額に算入することはできない。

(3) また、本件架空手数料部分は、原告の常務取締役である丸家輝明(以下「丸家」という。)名義の銀行口座に入金されており、丸家は、平成二年一二月三日、原告との間で本件架空手数料相当額を借用したこととして、その返済を約した。したがって、原告の所得金額に算入すべきものである。

(4) そして、丸家は、原告の取締役であって、常務取締役として会社の営業活動の中心となり、その経営に参画していたものであるから、丸家が行った行為に基づいてなされた本件納税申告は、事実を隠蔽し又は仮装したところに基づき納税申告書を提出した場合に該当する。また、丸家の本件架空手数料の取得が丸家の横領行為によるものであっても、原告の行為として同様に評価すべきである。

したがって、被告のなした重加算税の賦課決定は適法である。

(二) 原告の主張

(1) 原告は、本件架空手数料を丸家が取得していたことは知らなかったものであり、また、丸家は、右金額を個人の収入として税金を支払っている。したがって、本件架空手数料を丸家個人の収入である。

(2) 原告は、本件架空手数料部分を丸家が取得したことを知らなかったのであり、原告自身が事実を仮装し、又は隠蔽したものではなく、しかも、丸家は原告の従業員にすぎず原告と同視し得る者でもないから、被告のした重加算税の賦課決定は違法である。

第三当裁判所の判断

一  争点1について

1  交換特例の適用について

(一) 交換譲渡土地は固定資産か棚卸資産かについて

証拠(乙三、四の1ないし3、五、六の各1、2、七)によれば、(1) 原告は、昭和六〇年一〇月二八日、訴外菊島アサコから、交換譲渡土地及びその地上の建物を代金二億四四六四万七四八〇円で買い受けたこと、(2) 原告は、昭和六一年二月二七日、交換譲渡土地を商品土地の仕入れとして経理処理し、同年三月三一日、同土地を棚卸資産に計上したこと、(3) 同年四月二二日、原告は、交換譲渡土地を売却する目的で、アーバンライフ販売株式会社との間で、一般媒介契約を締結したこと、(4) 原告は、同年五月三〇日及び昭和六二年六月一日の二度にわたり、交換譲渡土地を棚卸資産として、法人税の確定申告をしたこと、以上の事実が認められ、右の認定事実によれば、交換譲渡土地は固定資産ではなく棚卸資産と認めるのが相当である。

原告は、交換譲渡土地は原告代表者自身の社宅用土地として購入したものであり、右の(2)、(4)のような経理処理は、原告社員の単なるミスであると主張し、原告代表者尋問中で同旨の供述をしているが、右の供述は、右の認定事実は照らして到底信用することができない。

以上によれば、本件交換には交換特例の適用はないことになる。

(二) 本件交換時における交換譲渡土地の価額と交換取得資産の価額との差額について

(1) 交換譲渡土地の価額について

ア 被告は、交換譲渡土地の価額は四億六二五六万一五七九円と主張するところ、右金額は、原告の取得価格に地価の上昇率を乗じて算出したものである。

すなわち、原告は、前記(一)(1)で認定したとおり、交換譲渡土地を昭和六〇年一〇月二八日に代金二億四四六四万七四八〇円で取得したものであるが、被告は、右金額に、交換譲渡土地に近接する地価公示法に基づく標準地(兵庫県西宮市雲井町一〇四番地、以下「公五三土地」という。)の上昇率(昭和六〇年一月一日を基準日とする公示価格と昭和六一年一月一日を基準日とする公示価格の差額から昭和六〇年一〇月当時の公示価格を算出し、他方昭和六二年一月一日を基準日とする公示価格と昭和六三年一月一日を基準日とする公示価格の差額から昭和六二年九月当時の公示価格を算出し、後者を前者で除したもの)を乗じたものである。

被告の採用した右の手法は、当該取引価額(原告の取得価格)が適正であることを前提にしてはじめて合理性を有するものといえるから、まずその取引価額の合理性について検討するに、原告は、交換譲渡土地を一平方メートル当たり四三万八六二五円(実測面積五五七・七六平方メートルを基準とする。)で取得したことになるところ、右価額は、交換譲渡土地の鑑定(佐野鑑定)に当たり考慮された取引事例(いずれも昭和六一年一一月七日以降のもの)よりも高額であり、また公五三土地の昭和六二年一月一日の公示価格三八万円よりも高額である。このことに昭和六〇年以降の地価が上昇傾向にあったことをも考慮すると、原告の交換譲渡土地の取得価額は、客観的な価額に比して高額なものといわざるを得ない。

したがって、交換譲渡土地の取得価額が適正であるとはいえず、これを基礎とした被告主張の交換譲渡土地の価額を採用することはできない。

なお、被告は、交換譲渡土地よりも立地条件が悪いと考えられる西宮市久出ケ谷一二八番三の土地(二〇一・七七平方メートル)及び同土地上の建物が昭和六二年一〇月一五日付け売買契約に基づき代金二億〇五〇〇円で売買されていることから、交換譲渡土地とほぼ同様の単価で売却されていると主張するが、仮にそのような売買が一件あったとしても(被告は交換譲渡土地付近の取引事例を他に二七事例調査していながら、右一件をあげるのみである。)、そのことから、右売買価額が客観的に適正なものとまではいえない。

イ 他方、原告は、本件交換当時の交換譲渡土地の価額は約二億五〇〇〇万円程度であると主張する。

しかし、本件交換がいわゆるバブルの初期のころになされた取引であることを考慮しても、そのことから直ちに原告主張の価額を認めることはできず、佐野鑑定に照らしても、原告主張の価額は採用し得ない。

ウ 以上に対し、佐野鑑定によれば、本件交換当時(昭和六二年九月二六日当時)の交換譲渡土地の価額は三億五七〇九万五〇〇〇円と算定されているところ、右鑑定が不合理であると認められる事情もないから、右価額をもって交換譲渡土地の価額と認めるのが相当である。

被告は、佐野鑑定について、<1>比較すべき取引事例の件数が少ないこと、<2>事情補正が適正になされていないこと、<3>時点修正の方法に誤りがあることの三点を問題点として指摘するのでこの点について検討する。

まず、<1>についてであるが、被告は、交換譲渡土地周辺において、しかも本件交換当時、佐野鑑定において取り上げられた事例以外に二八件もの取引事例があると主張する。取引事例は、鑑定の対象となっている土地付近の価額の実務を知る上で重要であるが、採用した事例が適正な事例であれば、補正等を加えることによって鑑定は十分なし得るところであり、佐野鑑定により採用された事例が取引事例として適正なものではないとの事情も認められないのであるから、佐野鑑定において採用された取引事例が三例であったことをもって、右鑑定の結果が不当であるとはいえない。

次に<2>についてであるが、被告は、事情補正について佐野鑑定人が、売り急ぎということはなく皆買い進みとして判断したものであるとしながら、地価の高騰期は買い進みの傾向が強いが売り進みがないとはいえないと証言しているのに、佐野はこの点についての十分な調査もせずに鑑定を行ったと批判するが、一般的に地価の高騰期には土地の買い進みの傾向にあるとはいえ、可能性として売り進みもないわけではないから、そのこと自体非難に値するものではなく、鑑定の際に収集された取引事例に売り進みがあったと認められるような事情はないのであるから、被告の右批判は当たらない。

さらに、<3>について被告は、大阪圏での地価の上昇は、昭和六二年九月までは急上昇し、その後緩やかな上昇に変わったにもかかわらず、佐野鑑定の時点修正にはそのことが考慮されておらず、また、時点修正率について、佐野鑑定は、公五三土地、兵庫県西宮市松生町六九番の土地(公示地五四、以下「公五四土地」という。)西宮市久ケ谷町六二の土地(県地価調査基準地県二七、以下「県二七土地」という。)のそれぞれの年間変動率を平均化して求めているが、それぞれの土地は立地条件を異にしており、平均化することに問題があると主張する。しかし、大阪圏での地価の上昇傾向が被告主張のとおりであったとしても、大阪圏全体でのことであり、交換譲渡土地の付近においてもそのような傾向を示していることを認める的確な証拠はない。また、公五三土地及び県二七土地が土地計画法でいう第一種住居専用地域であり、公五四土地が同法にいう第二種住居専用地域であり、付近における住宅地域に差があるとしても、そのことから直ちに地価の上昇率に変化があるとはいえず、この地域差が有意といえる的確な証拠もない。

以上のとおりであるから、佐野鑑定に対する被告の批判はいずれも理由がない。

(2) 交換取得資産の価額について

ア 佐野鑑定によれば、本件交換当時の交換取得土地の価額は一億〇七五〇万円、交換取得建物は三八〇六万四〇〇〇円であり、右鑑定は不合理であると認めるに足りる事情もないから、右価額(合計一億四五五六万四〇〇〇円)をもって交換取得資産の価額と認めるのが相当である。

イ 被告は、株式会社大阪鑑定所が作成した鑑定書(乙一〇の1、以下「大阪鑑定」とうい。)に基づき、交換取得土地の価額を一億〇一八〇万円、また交換取得建物のそれを二二〇〇万円(合計一億二三八〇万円)と主張する。

大阪鑑定と佐野鑑定を比較すると、交換取得土地については、いずれも取引事例比較法を採用し修正を加える手法により鑑定を行っているが、その結果一平方メートル当たりの単価が、大阪鑑定では三九万六〇〇〇円とするのに対して、佐野鑑定では三六万七〇〇〇円としていて差が生じ、また、交換取得建物については、同じく再調達原価、経過年数、残存耐用年数を求め、耐用年数に基づく定額法による修正を施しているところ、再調達原価は、大阪鑑定が平方メートル当たり二一万円であるのに対し、佐野鑑定では二五万円であり、耐用年数も大阪鑑定は二五年であるのに対し佐野鑑定では三八年としている上、大阪鑑定は観察減価を考慮している。

右の結果、大阪鑑定は、佐野鑑定に比較して低額の鑑定結果となっているが、右差額の生じている部分が、いずれも比較的主観的な判断にかかわるものであること、また、原告代表者自身、大阪鑑定は原告が当時取引関係にあった伊藤萬の代表取締役である河村に恩を売るために安い価額を出してもらうように大阪鑑定所に依頼したと述べていること(原告代表者)に照らすと、大阪鑑定は、敢えて低額に押さえられた鑑定との疑いがある。

なお、佐野鑑定人は、交換取得建物の内部を観察していないが(証人佐野)、耐用年数や経年による減価の必要性については外部からでも判断できるところであるから、佐野が交換取得建物の内部を観察していないからといって、佐野鑑定が不合理であるとはいえない。

ウ 他方、原告は、交換取得資産の価額は、本件交換当時二億五〇〇〇万円であり、本件交換後の昭和六三年六月二八日には二億五〇〇〇万円で売却されていると主張するが、昭和六二年から昭和六三年にかけて土地の価額が上昇を続け買い進みの傾向であること及び佐野鑑定に照らすと、原告主張のとおり交換取得資産が売却されたこと(甲一〇)を考慮しても、本件交換時における交換取得資産の価額が原告主張の金額であったとは認められず、原告の右主張は採用できない。

(3) 以上で認定したところからすると、交換譲渡土地の価額は三億五七〇九万五〇〇〇円、交換取得資産の価額は一億四五五六万四〇〇〇円となり、その差額(交換差額)は二億一一五三万一〇〇〇円となる。

そうすると、被告が主張するとおり、法人税法五〇条二項によれば、同条一項の交換特例は、交換による取得資産の価額と譲渡資産の価額との差額がこれらの価額のうちいずれか多い価額の一〇〇分の二〇に相当する額を超える場合には適用されないところ、本件において、右の交換差額二億一一五三万一〇〇〇円が交換譲渡土地の価額三億五七〇九万五〇〇〇円の一〇〇分の二〇を超えることは明らかであるから、この点からしても、本件交換に交換特例を適用することはできない。

2  譲渡利益の計上漏れについて

原告は、本件交換当時の交換譲渡土地の帳簿価額を二億五三〇四万七四八〇円として記載していたのであるから(争いのない事実)、前記認定の同土地の適正な価額三億五七〇九万五〇〇〇円と右帳簿価額との差額である一億〇四〇四万七五二〇円が譲渡利益として計上漏れということにある。

3  租税特別措置法六二条の適用について

前記1(二)(3)で認定したとおり、本件交換における交換差額は二億一一五三万一〇〇〇円となるところ、原告代表者の供述によれば、(1) 原告は、昭和五八年ころから伊藤萬と取引があり、その代表者である河村とも面識があったこと、(2) 原告は、伊藤萬の関連会社であるイトマンファイナス株式会社から多額の融資を受けている関係にあったこと、(3) 本件交換において、原告は交換取得資産の価額を低く評価して恩を売ろうと考えていたこと、以上の事実が認められ、右の事実によると、原告は、原告の事業に関係のある河村に対して、贈答その他これに類する行為のために利益供与として右の交換差額を提供したものと推認することができるから、右の金額は、租税特別措置法六二条三項の交際費等に該当し、損金の額には算入されないことになる。

二  争点2について

1  証拠(甲六の1、3、八の1、2、一一、乙三三の1ないし3、三四の1、2、四五、原告代表者)によれば、以下の事実が認められる。

(一) 嬉野国際観光は、昭和六二年一〇月一日に設立された会社であるが、その事務所は原告と同じ場所にあり、代表者は原告の代表者の青山長であった。そして、嬉野国産観光は、昭和六三年七月一二日には、住友銀行大阪駅前支店に当座預金口座を開設していた。

(二) 原告、伊藤萬及び嬉野国際観光は、平成元年八月三〇日、ゴルフ場建設に関して合意書を作成したが、その際、嬉野国際観光が伊藤萬に対して、企画手数料として二〇億円を支払うこととし、うち五億円は同年九月末日までに、うち五億円は同年一一月末日までに現金又は手形で支払い、残りの一〇億円については支払時期等を協議した上で支払うことを合意した。

(三) 原告は、平成元年九月二八日、嬉野国際観光が伊藤萬に対して同年九月末日に支払うべき右五億円の支払として、原告振出の額面二億五〇〇〇万円、支払期日同年一一月末日の約束手形二通を伊藤萬に交付した。原告は、右約束手形について、「協力金」の勘定科目で経理処理をした。

(四) 原告は、平成元年一一月三〇日、原告の口座において右約束手形二通を決済したが、右決済資金はイトマンファイナンスから原告の口座に振込まれた一四億八八九〇万三二八六円から支払われた。

(五) その後、原告は、右五億円についての勘定科目を「協力金」から「貸付金」に変更した。

2  右に認定した嬉野国際観光と原告の関係、企画手数料の支払の経緯等に照らすと、原告は、平成元年九月二八日に嬉野国際観光に代わって伊藤萬に対して右二通の約束手形を交付することにより、五億円を嬉野国際観光に貸し付けたものと認めるのが相当である。

この点につき、原告代表者は、嬉野国際観光の約束手形を使用しなかったのは、手形用紙の交付を受けていなかったからであり、決済資金として使用された一四億八八九〇万三二八六円のうち五億円は嬉野国際観光が借り受けたものであるから、決済自体は嬉野国際観光がしたものである旨供述する。しかし、前記認定のとおり、嬉野国際観光は昭和六三年七月に当座預金口座を開設していたのであり、いつでも約束手形用紙の交付を受けられる状態にあったということができるから、その交付がないことを理由に原告の手形を借りたいというのは不自然であり、また、嬉野国際観光の借入を混然とさせて、原告の口座に振り込むことはファイナンス会社の振込みの方法として極めて不自然といわざるえ得ず、したがって、原告代表者の右供述は信用し難い。

また、原告は、貸付が効力を生じたのは、右の約束手形が決済された平成元年一一月三〇日であると主張するけれども、原告及び嬉野国際観光は、右二通の約束手形は嬉野国際観光が現金又は手形によって伊藤萬に支払うべき企画手数料の支払として交付されたものであることを知悉していたのであるから、右手形はその額面金額に相当する経済的価値があるものとして授受されたいうことができ、したがって、右手形が交付された平成元年九月二八日に五億円の金銭消費貸借が成立したものというべきであり、利息は同日から発生することになる。

3  原告が、嬉野国際観光から収受すべき右五億円の受取利息を計上していないこと、利息の利率が八・八パーセントであることは、原告において明らかに争わない。

三  争点3について

1  当事者間に争いがない事実及び証拠(乙一一の2、3、四七、四八の1、2、原告代表者)によれば、以下の事実が認められる。

(一) 丸家は、平成元年九月当時原告の取締役であり、平成四年一〇月一六日に原告の取締役を辞任した。原告には従業員が七、八名いるが、丸家は、常務取締役と呼ばれ、同様の名称を用いて営業を担当し、かつ経理をも担当していた。

(二) 原告は、別表7の架空仲介手数料の内訳表記載の支払年月日欄記載の日に、支払先欄記載の支払先に、本件仲介手数料を支払った旨の納税申告をした。しかし、本件支払手数料のうち、本件架空手数料(二七五〇万円)は、右支払先から丸家の個人口座に返戻された。(争いがない)

(三) 丸家は、平成二年一一月一二日付けで、原告に対し、本件架空手数料に関する被告との見解の相違により原告に迷惑をかけたとしてその旨の始末書を提出した。また、丸家は、平成二年一二月三日、原告に対し、本件架空手数料を含めた二九一〇万円について、借用書を提出し、返済を約した。なお、本件架空手数料について、丸家は個人収入として、納税申告をした。

2  右1(一)で認定した事実によれば、丸家は、原告において、取締役として営業及び経理を担当しており、名目的にも実質的にも常務取締役であったということができるから、原告と同視し得る存在ということができる。この点について、原告代表者は、丸家は単なる従業員であると供述するが、右認定に照らしてにわかに信用できない。

そうすると、前記1(二)認定したところからすると、右のような立場にある丸家が、本件仲介手数料を原告名義で支払先に支払いながら、その返還を受けていたことになるから、右は原告が返還を受けたのと同視できるのであって、手数料として損金に算入することはできない。

また、前記1(三)で認定したように、本件架空手数料については、丸家からの返還が約されているのであるから、これを所得と評価せざるえ得ない。

3  ところで、国税通則法六八条一項に規定する重加算税の制度は、隠ぺい又は仮装に基づく過少申告に対し、特に重い負担を賦課することにより納税義務違反の発生を防止し、申告制度を維持するところにある。このような趣旨からすると、納税者が法人である場合、法人の従業員であっても、その者の行為が納税者の行為と認められれば、その者が代表者ではなく、また代表者がその者の行為を知らなくとも、なお、重加算税の対象となるのである。

これを本件についてみるに、丸家は、原告の常務取締役として、営業及び経理を担当していた者であり、丸家が原告の支払うべき本件仲介手数料のうち本件架空手数料の返戻を受け、原告の損失を仮装したものということができるのであるから、本件架空手数料を計上したことに重加算税を賦課したことは適法であり(ただし、その額についてはしばらく置く。)、原告主張の違法はない。

四  本件課税処分の適法性について(まとめ)

以上で認定説示したところによれば、本件課税処分の適法性は以下のようになる。

1  昭和六三年三月期について(別表8-1参照)

(一) 所得金額等について

<1>の所得金額は、原告の申告所得金額△一六億一〇六五万七六二三円に前記一2で認定した計上漏れ金額一億〇四〇四万七五二〇円を加算した△一五億〇六六一万〇一〇三円となる。そして、<10>の翌期に繰り越す欠損金額は二五億五〇七二万〇五九一円となる。

(二) 法人税額について

右の土地譲渡益の増加を考慮に入れると、<3>の課税土地譲渡利益金額は一億二六三八万八〇〇〇円になるところ、租税特別措置法六三条及び六三条の二の規定に基づき右金額に対する税額を再計算すると、<4>の税額及び<5>の法人税額は三一八一万八〇〇〇円となり(別表9-1、2参照)、これから<6>の一六二万八三三六円を控除すると、<7>の差引所得に対する法人税額は三〇一八万九六〇〇円となり、<9>の過少申告加算税は一二四万七〇〇〇円となる。

2  平成元年三月期について(別表8-2参照)

(一) 所得金額等について

原告は、岩狭昌清に対して昭和六三年六月二八日付け売買契約に基づき、交換取得資産を譲渡し、その譲渡原価を二億五一九四万七四八〇円(帳簿原価)として<1>の所得金額(△二二億〇六四七万〇〇一二円)を算出していることは当事者間争いがない。

しかしながら、前記一1(二)(2)で認定したとおり、交換取得資産の本来の譲渡原価は、その取得時の価額である一億四五五六万四〇〇〇円であるから、右の帳簿原価との差額である一億〇六三八万三四八〇円が過大に計上されていることになる。

したがって、右の過大計上額を<1>の所得金額に加算すると、△二一億〇〇〇八万六五三二円となり、また、<10>の翌期に繰り越す欠損金額は、前記1(一)の右の過大計上額とを考慮すると、四六億五〇八〇万七一二三円となる。

(二) 法人税額について

右の譲渡原価の過大計上を考慮に入れると、<3>の課税土地譲渡利益金額は七三〇五万八〇〇〇円になるところ、租税特別措置法六三条の二の規定に基づき右金額に対する税額を再計算すると、<4>の税額及び<5>の法人税額は二一九一万七四〇〇円となり(別表10参照)、これから<6>の五六万一九七〇円を控除すると、<7>の差引所得に対する法人税額は二一三五万五四〇〇円となり、<9>の過少申告加算税は三一七万七五〇〇円となる。

3  平成二年三月期について(別表8-3参照)

(一) 所得金額等について

前記二、三で判示したところによると、被告が主張する受取利息二二一八万〇八二一円と本件架空手数料相当額二七五〇万円が所得金額に加算されるべきことは明らかである。

そして、原告は、繰越欠損金の当期控除額を四五億二九六二円四四八六円としているところ、当事業年度において控除できる繰越欠損金が四六億五〇八〇万七一二三円であることは前記2(一)記載のとおりであるから、右の差額である一億二一一八万二六三七円がなお控除対象の欠損金となる。

そうすると、当事業年度における<1>の所得金額は〇円となり、これに対する<2>の税額も〇円となる。そして、<12>の翌期に繰り越す欠損金額は七一五〇万一八一六円となる。

(二) 法人税について

本件架空仲介手数料部分を譲渡のために要した経費の額から除外すると、<3>の課税土地譲渡利益金額は一七億三六一八万一〇〇〇円となり、これに対する<4>及び<7>の税額は四億五一四二万七四〇〇円となる(別表11-1、2参照)。そして、右から<8>の一〇五万三四七八円を控除すると、<9>の差引所得に対する法人税額は四億五〇三七万三九〇〇円となる。また、<10>の重加算税の額は二五万二〇〇〇円、<11>の過少申告加算税は〇円となる。

4  以上によれば、本件課税処分は、右に説示した各金額の限度で適法であるが、これを超える部分は違法ということになる。

5  なお、原告は、本件交換に関して、被告が本件課税処分を行ったのは、当時いわゆる伊藤萬事件か発覚していたことから、みせしめの目的をもってなされたものであり違法であると主張するが、被告がそのような目的をもって右処分をしたと認めるに足りる証拠はない。

また、原告は、本件課税処分はその理由付記が不備であって違法であると主張するが、いかなる点において不備であるかについて具体的に主張しないから、右主張は主張自体失当である。

(裁判長裁判官 鳥越健治 裁判官遠山廣直は転官のため、裁判官山本正道は転補のため署名捺印することができない。裁判長裁判官 鳥越健治)

別表1

課税の経緯

<省略>

別表2

課税の経緯

<省略>

別表3

課税の経緯

<省略>

別表4-1

短期所有土地等の譲渡等に係る譲渡利益金額に対する税額等の計算(昭和63年3月期)

<省略>

別表4-2

超短期所有土地等の譲渡等に係る譲渡利益金額に対する税額等の計算(昭和63年3月期)

<省略>

別表5

超短期所有土地等の譲渡等に係る譲渡利益金額に対する税額等の計算(平成元年3月期)

<省略>

別表6-1

短期所有土地等の譲渡等に係る譲渡利益金額に対する税額等の計算(平成2年3月期)

<省略>

別表6-2

超短期所有土地等の譲渡等に係る譲渡利益金額に対する税額等の計算(平成2年3月期)

<省略>

別表7

架空仲介手数料の内訳

<省略>

別表8-1

当裁判所の認定額(昭和63年3月期)

<省略>

別表8-2

当裁判所の認定額(平成元年3月期)

<省略>

別表8-3

当裁判所の認定額(平成2年3月期)

<省略>

別表9-1

短期所有土地等の譲渡等に係る譲渡利益金額に対する税額等の計算

<省略>

別表9-2

超短期所有土地等の譲渡等に係る譲渡利益金額に対する税額等の計算

<省略>

別表10

超短期所有土地等の譲渡等に係る譲渡利益金額に対する税額等の計算

<省略>

別表11-1

短期所有土地等の譲渡等に係る譲渡利益金額に対する税額等の計算

<省略>

別表11-2

超短期所有土地等の譲渡等に係る譲渡利益金額に対する税額等の計算

<省略>

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