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大阪地方裁判所 平成7年(わ)3763号 判決

右の者に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官酒井徳矢出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月に処する。

この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は

第一  大阪府東大阪市小若江三丁目一五番一四号に本店を置き、運送業を営むヤマヨ運輸株式会社(資本の額は一五〇〇万円)の代表取締役で経理責任者をしていたものであるが、同社の実質的代表者として同社の業務全般を統括していた工藤義克、同人の依頼を受けて同社の法人税確定申告手続に関与した道下貞彦(以下「道下」という。)及び岡本末隆(以下「岡本」という。)と共謀の上、同社の業務に関し、法人税を免れようと企て

一  平成三年六月一日から平成四年五月三一日までの事業年度における実際の所得金額が二億四二八四万三七四五円(別紙一の1の(一)修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が八九八九万一五〇〇円(別紙一の1の(二)税額計算書参照)であったにもかかわらず、架空傭車料等の架空経費を計上するなどの行為により、その所得を秘匿した上、同年七月二九日、大阪府東大阪市永和二丁目三番八号所在の所轄東大阪税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が〇円(別紙一の1の(一)修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が〇円(別紙一の1の(二)税額計算書参照)である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定の申告期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙一の1の(二)税額計算書記載のとおり、右事業年度の法人税八九八九万一五〇〇円を免れ

二  平成四年六月一日から平成五年五月三一日までの事業年度における実際の所得金額が二億五五八五万四九一九円(別紙一の2の(一)修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が九四八六万九八〇〇円(別紙一の2の(二)税額計算書参照)であったにもかかわらず、前同様の不正の行為により、その所得を秘匿した上、同年七月二二日、前記東大阪税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が〇円(別紙一の2の(一)修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が〇円(別紙一の2の(二)税額計算書参照)である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定の申告期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙一の2の(二)税額計算書記載のとおり、右事業年度の法人税九四八六万九八〇〇円を免れ

三  平成五年六月一日から平成六年五月三一日までの事業年度における実際の所得金額が四億二八四六万四五七七円(別紙一の3の(一)修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が一億五九四七万〇二〇〇円(別紙一の3の(二)税額計算書参照)であったにもかかわらず、前同様の不正の行為により、その所得を秘匿した上、同年七月二七日、前記東大阪税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が〇円(別紙一の3の(一)修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が〇円(別紙一の3の(二)税額計算書参照)である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定の申告期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙一の3の(二)税額計算書記載のとおり、右事業年度の法人税一億五九四七万〇二〇〇円を免れ

第二  長野市大字高田字前河原一〇八四番地一に本店を置き、運送業を営む信州ヤマヨ運輸株式会社(資本の額は二五〇〇万円)の経理責任者であったものであるが、同社の実質的代表者として同社の業務全般を統括していた工藤義克、同人の依頼を受けて同社の法人税確定申告手続に関与した道下及び岡本と共謀の上、同社の業務に関し、法人税を免れようと企て

一  平成四年六月一日から平成五年五月三一日までの事業年度における実際の所得金額が七三四八万〇九四〇円(別紙二の1の(一)修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が二六六二万〇九〇〇円(別紙二の1の(二)税額計算書参照)であったにもかかわらず、架空傭車料等の架空経費を計上するなどの行為により、その所得を秘匿した上、同年七月二九日、長野市西後町六〇八番地の二所在の所轄長野税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が〇円(別紙二の1の(一)修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が〇円(別紙二の1の(二)税額計算書参照)である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定の申告期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙二の1の(二)税額計算書記載のとおり、右事業年度の法人税二六六二万〇九〇〇円を免れ

二  平成五年六月一日から平成六年五月三一日までの事業年度における実際の所得金額が七六四三万四二七九円(別紙二の2の(一)修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が二七七八万九二〇〇円(別紙二の2の(二)税額計算書参照)であったにもかかわらず、前同様の不正の行為により、その所得を秘匿した上、同年七月二八日、前記長野税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の欠損金額が一八三五万六二五五円(別紙二の2の(一)修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が〇円(別紙二の2の(二)税額計算書参照)である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定の申告期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙二の2の(二)税額計算書記載のとおり、右事業年度の法人税二七七八万九二〇〇円を免れ

第三  静岡県浜松市篠ケ瀬町九五八番地に本店を置き、運送業を営む東海ヤマヨ運輸株式会社(平成七年五月三一日までの資本の額は五〇〇万円、同日より一〇〇〇万円)の取締役で経理責任者であったものであるが、同社の実質的代表者として同社の業務全般を統括している工藤義克、同人の依頼を受けて同社の法人税確定申告手続に関与した道下及び岡本と共謀の上、同社の業務に関し、法人税を免れようと企て

一  平成四年四月一日から平成五年三月三一日までの事業年度における実際の所得金額が五二六〇万九三三六円(別紙三の1の(一)修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が一八五二万九二〇〇円(別紙三の1の(二)税額計算書参照)であったにもかかわらず、架空傭車料を計上するなどの行為により、その所得を秘匿した上、同年五月二四日、静岡県浜松市砂山町二一六番地の六所在の所轄浜松東税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が〇円(別紙三の1の(一)修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が〇円(別紙三の1の(二)税額計算書参照)である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定の申告期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙三の1の(二)税額計算書記載のとおり、右事業年度の法人税一八五二万九二〇〇円を免れ

二  平成五年四月一日から平成六年三月三一日までの事業年度における実際の所得金額が三六六五万四三一七円(別紙三の2の(一)修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が一二八五万七〇〇〇円(別紙三の2の(二)税額計算書参照)であったにもかかわらず、前同様の不正の行為により、その所得の一部を秘匿した上、同年五月三〇日、前記浜松東税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一二四万六七五四円(別紙三の2の(一)修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が二二万〇六〇〇円(別紙三の2の(二)税額計算書参照)である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定の申告期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙三の2の(二)税額計算書記載のとおり、右事業年度の法人税一二六三万六四〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)(括弧内の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  第二回及び第一〇回公判調書中の被告人の供述部分

一  第二回公判調書中の分離前の相被告人道下貞彦、岡本末隆の供述部分

一  被告人の検察官に対する供述調書(二〇二)

一  工藤義克(一九三、一九八)、山岡義夫(一六五ないし一六九)、村木謙一(一五四)、和本仁司(一五五)、坂上弘修(一五六)、奥野弘太郎(一五七)、藤森智彦(一五八)、酒井隆(一五九)、仲野正信(一六二)、山口幸子(一六三)及び中曽根登(一六四)の検察官に対する各供述調書

一  査察官調査書(八七)

判示第二及び第三の事実全部について

一  被告人の検察官に対する各供述調書(二一四、二一五)

一  工藤義克(一九三、一九四)、道下貞彦(二三〇、二三三、二三四)及び岡本末隆(二四七、二四八)の検察官に対する各供述調書

判示第一の二、三、第二及び第三の事実全部について

一  査察官調査書(一〇三)

判示第一の三、第二の二及び第三の二の各事実について

一  査察官調査書(八六)

判示第一の事実全部について

一  被告人の検察官に対する各供述調書(二〇三、二〇四、二〇六ないし二一一、二一三)

一  工藤義克(一八四、一八六、一八八ないし一九一、一九八)、道下貞彦(二二一ないし二二四、二二六ないし二二九)、岡本末隆(二四〇ないし二四四、二四六)の検察官に対する各供述調書

一  山岡義夫の大蔵事務官に対する質問てん末書(五〇三)

一  査察官調査書(七一、七五、七八ないし八〇、八三ないし八五、八八、九一、九三、九六、一〇〇ないし一〇二、一〇四、一〇五)

一  査察官報告書(五〇二)

一  「所轄税務署の所在地について」と題する書面(六八)

一  法人登記簿謄本(一七二、一七四)

一  法人閉鎖登記簿謄本(一七三)

一  閉鎖された役員欄用紙謄本(一七五)

判示第一の一及び二の各事実について

一  査察官調査書(七七、九〇)

判示第一の二及び三の各事実について

一  査察官調査書(八一、九二)

判示第一の一の事実について

一  被告人の検察官に対する供述調書(二一二)

一  工藤義克の検察官に対する供述調書(一八七)

一  査察官調査書(七〇、七六、八二、八九、九四、九七ないし九九)

一  証明書(六五)

判示第一の二の事実について

一  査察官調査書(七二)

一  証明書(六六)

判示第一の三の事実について

一  査察官調査書(六九、七三、七四、九五)

一  証明書(六七)

判示第二の事実全部について

一  被告人の検察官に対する供述調書(二一六)

一  工藤義克(一九六)及び道下貞彦(二三一、二三五)の検察官に対する各供述調書

一  査察官調査書(一一四ないし一一九、一二一ないし一二三、一二五、一二六)

一  「所轄税務署の所在地について」と題する書面(一一〇)

一  法人登記簿謄本(一七七)

一  閉鎖された役員欄用紙謄本(一七八)

判示第二の一の事実について

一  査察官調査書(一一一、一一二、一二四、一二八)

一  証明書(一〇八)

判示第二の二の事実について

一  査察官調査書(一一三、一二〇、一二七)

一  証明書(一〇九)

判示第三の事実全部について

一  被告人の検察官に対する供述調書(二一七)

一  工藤義光(一七〇)、工藤義克(一九五、一九七)及び道下貞彦(二三二、二三六)の検察官に対する各供述調書

一  査察官調査書(一三五ないし一四二、一四五、一四七、一四八、一五〇ないし一五二)

一  「所轄税務署の所在地について」と題する書面(一三三)

一  法人登記簿謄本(一七九)

一  閉鎖された役員欄用紙謄本(一八〇、一八一)

判示第三の一の事実について

一  査察官調査書(一三四、一四三、一四四、一四六、一四九)

一  証明書(一三一)

判示第三の二の事実について

一  工藤義光の検察官に対する供述調書(一七一)

一  証明書(一三二)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも平成七年法律第九一号(刑法の一部を改正する法律)附則二条一項本文により同法による改正前の刑法(以下「旧刑法」という。)六五条一項、六〇条、法人税法一五九条一項にそれぞれ該当するが、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は旧刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年六月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、被告人が、工藤義克、道下貞彦及び岡本末隆と共謀の上、ヤマヨ運輸株式会社、信州ヤマヨ運輸株式会社、東海ヤマヨ運輸株式会社(以下、三社併せて「ヤマヨ三社」という。)の法人税合計四億円余りもの高額の脱税を行ったという事案である。

そこで、まず、犯行態様についてみるに、本件犯行は、岡本のダミー会社であるスエタカ企画などに対する架空傭車料、架空経費の計上、売上の一部除外等の方法によって敢行されたものであるところ、スエタカ企画に対する架空傭車料支出を仮装するために、スエタカ企画名義の銀行預金口座を開設して、右口座に振込送金し、現実に傭車料が決済されたかのように装い、また、内容虚偽の領収証や運送契約書を作成したほか、岡本においてスエタカ企画に対する架空傭車料支出に見合う収入を所得税確定申告で計上するなどしている。加えて、ヤマヨ運輸株式会社の事案においては、同和団体が税務署に対して圧力をかけられるとの認識から、脱税の発覚及び摘発を免れるため、西成同友会を通じて本件申告を行うなどしており、犯行は計画的で大胆かつ巧妙なものである。さらに、本件脱税によるほ脱税額は四億円余りと高額である上、ほ脱税率もほぼ一〇〇パーセントと極めて高率であり、犯行は極めて悪質なものというべきである。

また、被告人の本件犯行への関与の態様についてみても、被告人は、ヤマヨ三社における経理処理を担当していたものであるが、本件犯行が悪質な脱税であることを十分認識しながら、工藤義克や道下の指示のままに、金銭出納帳や支払帳に架空の傭車料支出を記載する等の脱税工作を担当したほか、秘匿した所得を簿外預金口座に入金した上、これを管理運用するなどしていたのであり、本件犯行において、重要な役割を果たしたものと評価できる。

さらに、ヤマヨ三社における脱税が、本件以前から相当長期間にわたって常習的に累行されていたことをも考慮すると、被告人の刑事責任は重大である。

しかしながら、被告人の、ヤマヨ運輸株式会社における代表取締役の地位及び東海ヤマヨ運輸株式会社における取締役の地位は、いずれも名目的なもので、何ら決定権限を伴わず、被告人は、実質的には経理処理を担当するにすぎなかったのであり、本件の脱税方法の決定にも関与していない。また、被告人は、夫であった工藤義克の指示で前記のようて脱税工作に関与するようになったのであり、本件以前に、工藤義克に対し、ヤマヨ三社の法人税確定申告を適正に行うよう進言したこともあったが、工藤義克に聞き入れられず、叱りつけられたため、結局、工藤義克の指示に従わざるを得なかったという事情もある。他方、工藤義克は、被告人や道下らに法人税を納税しないように指示するなど、本件脱税において主導的役割を果たしていたものであり、また、道下は、本件の脱税方法を決定し、具体的な脱税工作においても最も重要な役割を果たしていたものであるから、被告人の果たした役割は重要であったとはいえ、工藤義克や道下に比べれば、一段低いものであったということができる。さらに、ヤマヨ三社において、修正申告の上、ほ脱された法人税につき、附帯税を含めた大半が納付済みであり、残額についても納、付見込みであること、ヤマヨ三社において、新たな経理システムを完備するよう努力していること、被告人には前科前歴がないこと、被告人は事実を素直に認めて反省し、ヤマヨ運輸株式会社における代表取締役及び東海ヤマヨ運輸株式会社における取締役をいずれも辞任していることなど被告人に有利な事情も認められる。

そこで、以上の諸事情を考慮した結果、被告人を、主文の懲役刑に処した上、その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。

よって、主文のとおり、判決する。

(裁判長裁判官 田中正人 裁判官 伊元啓 裁判官 渡部市郎)

別紙一の1の(一)

修正損益計算書

<省略>

別紙一の1の(二)

税額計算書

<省略>

別紙一の2の(一)

修正損益計算書

<省略>

別紙一の2の(二)

税額計算書

<省略>

別紙一の3の(一)

修正損益計算書

<省略>

別紙一の3の(二)

税額計算書

<省略>

別紙二の1の(一)

修正損益計算書

<省略>

別紙二の1の(二)

税額計算書

<省略>

別紙二の2の(一)

修正損益計算書

<省略>

別紙二の2の(二)

税額計算書

<省略>

別紙三の1の(一)

修正損益計算書

<省略>

別紙三の1の(二)

税額計算書

<省略>

別紙三の2の(一)

修正損益計算書

<省略>

別紙三の2の(二)

税額計算書

<省略>

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