大阪地方裁判所 平成7年(ワ)3790号 判決 1997年7月25日
本訴原告
株式会社キソ梱包運輸
被告
中井孝行
ほか三名
反訴原告
有限会社宮崎トランスポート
被告
株式会社キソ梱包運輸
主文
一 被告(反訴原告)有限会社宮崎トランスポート、被告中井孝行、被告ヤマト運輸株式会社及び被告永野誠一は、連帯して、原告(反訴被告)に対し、金七〇万円及び内金六四万円に対する平成六年一月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告(反訴被告)は、被告(反訴原告)有限会社宮崎トランスポートに対し、金七二万七六四四円及びこれに対する平成六年一月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告(反訴被告)、被告(反訴原告)有限会社宮崎トランスポートのその余の請求をいずれも棄却する。
四 訴訟費用は、本訴反訴を通じ、原告(反訴被告)に生じた費用の二分の一、被告(反訴原告)有限会社宮崎トランスポートに生じた費用の二分の一、被告中井孝行、被告ヤマト運輸株式会社及び被告永野誠一に生じた費用の四分の三を原告(反訴被告)の負担とし、原告(反訴被告)に生じた費用の二分の一を被告(反訴原告)有限会社宮崎トランスポートの負担とし、その余を各自の負担とする。
五 この判決は、第一項及び第二項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
(本訴)
被告らは、原告に対し、連帯して、金二六〇万円及び内金二四〇万円に対する平成六年一月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(反訴)
反訴被告は、反訴原告に対し、金二九八万七七四〇円及びこれに対する平成六年一月一八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、高速道路のランプウェイから本線に合流した大型貨物自動車に、後方から本線を走行してきた普通貨物自動車が衝突し(第一事故)、更に、右普通貨物自動車に、ランプウェイから走行してきた大型貨物自動車が衝突した事故(第二事故)において、普通貨物自動車の所有者が、第一事故及び第二事故の相手方車両の各運転手及びその使用者である各会社に対し、民法七〇九条、七一五条に基づき損害の賠償を請求し(本訴)、第一事故の大型貨物自動車を所有する会社が、普通貨物自動車の所有者である会社に対し、民法七一五条に基づき損害の賠償を請求した(反訴)事案である。
一 争いのない事実(証拠及び弁論の全趣旨により明らかに認められる事実を含み、( )内に認定に供した証拠を摘示する。)
1 交通事故の発生
(一) 日時 平成六年一月一八日午前三時三五分ごろ、
(二) 場所 山口県下松市大字山田山陽自動車道下り三六五・三キロポスト先
(三) 関係車1 原告(反訴被告)株式会社キソ梱包(以下「キソ梱包」という。)が所有し、大津賢二(以下「大津」という。)が運転する普通貨物自動車(登録番号大阪一三く二五〇二、以下「キソ梱包車」という。)(甲第三)
(四) 関係車2 被告(反訴原告)有限会社宮崎トランスポート(以下「宮崎トランスポート」という。)が所有し、被告中井孝行(以下「中井」という。)が運転する大型貨物自動車(登録番号宮崎八八か二二七二、以下「宮崎トランスポート車」という。)
(五) 関係車3 被告ヤマト運輸株式会社(以下「ヤマト運輸」という。)が所有し、永野誠一(以下「永野」という。)が運転する大型貨物自動車(登録番号山口一一あ三一八、以下「ヤマト運輸車」という。)
(六) 事故の態様 宮崎トランスポート車が、サービスエリアからのランプウェイから本線に合流した際、本線を走行していたキソ梱包車が宮崎トランスポート車に追突し、更に、ランプウェイから進行してきたヤマト運輸車がキソ梱包車に追突した。
2(一) 大津は、キソ梱包の従業員であり、本件事故は、大津がキソ梱包の職務の執行中に発生した(弁論の全趣旨)。
(二) 中井は、宮崎トランスポートの従業員であり、本件事故は、中井がトランスポートの業務の執行中に発生した。
(三) 永野は、ヤマト運輸の従業員であり、本件事故は、永野がヤマト運輸の業務の執行中に発生した。
二 争点
1 責任
(一) キソ梱包の主張
(1) 中井は、ランプウェイから高速道路本線に進入するに際し、本線の後方から車両が進行していないことを確認して進行するべき注意義務があるのに、これを怠った過失があるから、民法七〇九条により、キソ梱包が被った後記損害を賠償する義務がある。
(2) 中井は、宮崎トランスポートの従業員であり、本件事故は、中井が宮崎トランスポートの業務の執行中、中井の過失により発生したものであるから、宮崎トランスポートは、民法七一五条により、キソ梱包が被った損害を賠償する義務がある。
(3) 永野は、ランプウェイから高速道路本線に進入するに際し、事故などで車両が駐停車していないことを確認し、かつ、そのような車両があれば、自車を停止して追突を回避する注意義務があるのにこれを怠った過失があるから、民法七〇九条により、キソ梱包が被った損害を賠償する義務がある。
(4) 永野は、ヤマト運輸の従業員であり、本件事故は、永野がヤマト運輸の業務の執行中、永野の過失により発生したものであるから、ヤマト運輸は、民法七一五条により、キソ梱包が被った損害を賠償する義務がある。
(5) キソ梱包車が宮崎トランスポート車に追突した事故(第一事故)と、更に、ヤマト運輸車が衝突した事故(第二事故)とにおいて、被告中井の過失行為と被告永野の過失行為とは時間的場所的に接着しているので、被告らは共同不法行為による責任を負う。
キソ梱包車は、宮崎トランスポート車及びヤマト運輸車によって前後からサンドイッチ状態で全損状態になったのであるから、ヤマト運輸車の追突もキソ梱包車の破損と因果関係がある。
(二) 宮崎トランスポート及び中井の主張及び反論
(1) 大津は、キソ梱包車を運転中、前方不注視と速度オーバーの過失があるから、民法七〇九条により、宮崎トランスポートが被った損害を賠償する義務がある。
(2) 大津は、キソ梱包の従業員であり、本件事故は、大津がキソ梱包の職務の執行中、大津の過失により発生したものであるから、キソ梱包は、民法七一五条により、宮崎トランスポートが被った損害を賠償する義務がある。
(三) ヤマト運輸及び永野の反論
(1) 永野がランプウェイに進入する際には、道路が進行方向に向かって左へ緩やかにカーブしていたので、キソ梱包車が高速道路上に停止している状況を目にすることはできなかったし、キソ梱包車が停止していることがわかった時に直ちに急制動の措置をとると共にハンドルを右に切ったが、避けることができなかったのであって、永野には、キソ梱包車が道路上に停車していることを予測することが不可能であったのであるから、永野には過失がない。
(2) キソ梱包車が宮崎トランスポート車に追突した事故(第一事故)と、更に、ヤマト運輸車が衝突した事故(第二事故)とにおいて、キソ梱包車は大きく分けて、車両前部と車両後部の二つの部分において破損が生じたが、そのうち車両前部の破損は第一事故によって発生したものであって、ヤマト運輸が右破損について責任を負うべき理由はない。
また、第二事故の際には、既にキソ梱包車は全損状態であったから、第二事故によって新たに損害が発生したという関係にはない。
2 過失割合
(一) キソ梱包の主張
中井には、本線の後方から車両が進行していないことを確認するのを怠った過失があり、中井に六〇パーセント以上の過失割合が認められるべきである。
(二) 宮崎トランスポート及び中井の主張
キソ梱包車を運転していた大津には、前方不注視及び非常な高速度で走行した過失がある。
(三) ヤマト運輸及び永野の主張
キソ梱包車を運転していた大津には、夜間、制限速度を遥かに超える時速一二二キロメートルで走行していた過失がある。
3 損害
(一) キソ梱包の損害
(キソ梱包の主張)
(1) 修理代 一六五万〇〇〇〇円
キソ梱包車は、本件事故により全損状態となり、本件事故当時の価額は一六五万円である。
(2) 休車損害 七五万〇〇〇〇円
キソ梱包車は、一日当たり三万円の利益をあげていたが、本件事故により、二五日間休車を余儀なくされた。なお、宮崎トランスポートの休車期間が四五日の場合には、キソ梱包も同日数を休車期間として主張する。
(3) 弁護士費用 二〇万〇〇〇〇円
(ヤマト運輸及び永野の反論)
キソ梱包車は、宮崎トランスポート車と衝突した際には既にキャビン部分が押しつぶされた状態で均一に陥没し、これを修理すれば、なお車両として使用できる状態にあったとはいえず、ヤマト運輸車が衝突した際には既に無価値の状態にあったものであり、ヤマト運輸車とキソ梱包車との衝突とキソ梱包車の損害との間には相当因果関係はない。
(二) 宮崎トランスポートの損害
(1) 修理代 一〇八万六九九〇円
(2) レッカー代 二万五七五〇円
(3) 休車損害 一五七万五〇〇〇円
(4) 弁護士費用 三〇万〇〇〇〇円
第三争点に対する判断
一 原告及び被告らの責任
1 前記争いのない事実及び証拠(甲第二から第九、第一三、第一六、第一七、第一九、第二〇、被告中井、弁論の全趣旨)を総合すると、
本件事故現場は、山口県下松市大字山田高速国道山陽自動車道下り三六五・三キロポスト付近の、山陽自動車道下り下松サービスエリアから本線に流入するランプウェイと本線とが合流する地点付近であり、本件関係車両の進行方向である西に向かって左カーブとなっているが、本線車道側からもランプウェイ側からも障害物はなく見通しは良いこと、路面はアスファルト舗装され、平坦で乾燥し、本件事故当時、最高速度の規制はなかったこと、サービスエリアから流入ランプウェイにかけては水銀灯が設置されているが、本件事故現場付近のものは、現場付近にある基点(三六五・三キロポスト)から約一一四メートル離れているため、本件事故現場付近は暗かったこと、
本件事故の発生した平成六年一月一九日午前六時三七分ごろ、大津はキソ梱包車を運転し、時速約一二二キロメートルの速度で本線を走行していたこと、
中井は宮崎トランスポート車を運転し、サービスエリアからの脇道から本線に合流するため、本件事故当時、時速約八四キロメートルで走行していたこと、別紙図面<イ>地点(以下地点符号のみを示す。)で右方向指示器により合図をし、右後方を確認し、<ウ>でハンドルを右に切り始めて時速約六四キロメートルで走行車線に進入し、<エ>で時速約七三キロメートルで完全に走行車線に進入し、加速走行したこと、中井は<オ>で時速約八四キロメートルで走行中、後方が明るくなるのを感じたのと同時に<1>のキソ梱包車と<×>1で衝突し、<カ>で停車したこと、右衝突地点は流入ランプウェイの終端付近であること、
右衝突は宮崎トランスポート車の後方中央から右に一一センチメートルずれた状態でほぼ真後ろからキソ梱包車が衝突したものと解され、キソ梱包車は<2>に道路外側線をまたぐように走行車線を塞ぐ形で停止したこと、右衝突地点は<エ>から約七一・六メートルであること、中井が宮崎トランスポート車を降車して衝突地点まで約一〇分歩いて戻ると既にヤマト運輸車がキソ梱包車と衝突していたこと、
宮崎トランスポート車の運転席からは<イ>において、フェンダーミラーで後方二四六・一メートルの、<ウ>において後方二六六メートルのサーチライトの光を確認することができるところ、時速一二二キロメートルで走行していたキソ梱包車は<イ>から約一三三メートル後方の地点を走行していたと解されること、
ヤマト運輸車と同型式の車両の運転席からは、夜間の曇天下、<2>に停止している無灯火の普通乗用自動車の後部を前照灯下向きの状態で四九・七メートル、前照灯上向きの状態で六八・四メートル手前で確認することができること、
本件事故により、キソ梱包車は、損傷し、その前部であるキャビン部分は押しつぶされた状態で均一に陥没し、側方から観察すると、キャビン前方は高さ一メートルの地点からはほぼ垂直・下部は「く」の字に陥没し、キャビン後方は上部が後方に傾斜し、車両後部である荷台は左後部に衝突痕が見られ、右最後尾は右に一三〇センチメートル、左最後尾も右に一六〇センチメートルずれ、車両下部のトランスミッシヨンが脱落したこと、
キソ梱包車と宮崎トランスポート車との衝突によって生じたキソ梱包車の変形に費やされたエネルギーは、キソ梱包車とヤマト運輸車との衝突によって生じたキソ梱包車の変形に費やされたエネルギーの約一〇倍と解されること、
宮崎トランスポート車は、その荷台後部の荷室開きドア、車体下部設置の金属製ステップ左右のブレーキランプカバーに衝突痕が見られ、後部バンパーが脱落したこと、
ヤマト運輸車は、キャビン部分が大破し、左側から一メートルの部分を中心に四〇センチメートル陥没し、前部ガラス破損、前部バンパー曲損、右前部フェンダー部分曲損、左側前照灯脱落、左側アルミ製の荷室後方に衝突痕、左側車体中央下部に設けられたガードパイプが凹損する等の破損が生じたこと、
以上の事実を認めることができる。
2 前記1の事実及び前記争いのない事実等によれば、
(一) 中井は、本線車道に入ろうとしていたものであり、本線車道には法令の定める最高速度を大幅に超過して走行する車両もあるから、当該本線車道を通行する車両の存在及びその速度を十分に確認すべき注意義務があるところ、これを怠った過失があるといわざるを得ず、民法七〇九条により、キソ梱包が被った後記損害を賠償する義務がある。
(二) 永野は、進路前方に対する注意義務があるところ、これを怠った過失があるといわざるを得ず、法七〇九条により、キソ梱包が被った後記損害を賠償する義務がある。
(三) ヤマト運輸及び永野は、キソ梱包車前部の破損は宮崎トランスポート車との衝突によって発生したものであって、ヤマト運輸が右破損について責任を負うべき理由はないし、また、ヤマト運輸車との衝突の際には、既にキソ梱包車は全損の状態にあったから、新たに損害が発生したとはいえない旨主張し、証拠(甲第一三)中には、本件事故によるキソ梱包車の車体前部の破損は宮崎トランスポート車の後部に衝突した時に生じた旨の記載部分もある。
しかし、右証拠(甲第一三)の記載部分は、前記1のとおり、キソ梱包車と宮崎トランスポート車との衝突によって生じたエネルギーがヤマト運輸車との衝突によって生じたエネルギーの約一〇倍と解されることから導き出された結論であり、同証拠中にも、キソ梱包車とヤマト運輸車との衝突の後に他の物に衝突して変形に費やされるエネルギーは約一〇・五トン・メートルである旨の記載部分があり、キソ梱包車はヤマト運輸車との衝突の後に前部に変形が生じたことを否定し去れないから、右証拠をもってしてはヤマト運輸及び永野の右主張を認めることはできない。
また、前記1のキソ梱包車の破損の部位、程度、内容に係る事実によっては、ヤマト運輸車との衝突の際に、既にキソ梱包車が全損の状態にあった事実を推認するに足りないし、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。
そうすると、中井及び永野のいずれにも過失があり、かつ、両者の行為は時間的場所的に接近し、客観的に関連共同しているものというべきであるから、両者は共同不法行為の関係に立つものである。
(四) 本件事故は、中井が宮崎トランスポートの業務を執行中に、その過失により発生させたものということができ、宮崎トランスポートは、民法七一五条により、キソ梱包が被った後記損害を賠償する義務がある。
(五) 本件事故は、永野がヤマト運輸の業務を執行中に、その過失により発生させたものということができ、ヤマト運輸は、民法七一五条により、キソ梱包が被った後記損害を賠償する義務がある。
(六) 大津は、普通貨物自動車を時速約一二二キロメートルで運転走行し、先行車が本線車道に入って約七一メートルの地点を時速約八四キロメートルで走行している時に衝突した状況からして速度違反及び著しい前方不注視の過失があるといわなければならない。
(七) 本件事故は、大津がキソ梱包の業務を執行中に、その過失により発生させたものということができ、キソ梱包は、民法七一五条により、宮崎トランスポートが被った後記損害を賠償する義務がある。
二 損害
1 キソ梱包の損害
(一) 修理代 一六〇万〇〇〇〇円
前記1の事実及び証拠(甲第二八、第二九、弁論の全趣旨)によれば、キソ梱包車は、本件事故により、その前部であるキャビン部分は押しつぶされた状態で均一に陥没し、キャビン前方は「く」の字に陥没し、エンジンやトランスミッションが脱落するなどの破損が生じ、再使用できる部品がほとんどない状態となったこと、キソ梱包車と同型車の本件事故当時の時価は一六〇万円であること等が認められ、原告の主張は右の限度で理由がある。
(二) 休車損害 〇円
キソ梱包は、キソ梱包車が一日当たり三万円の利益をあげていたが、本件事故により、二五日間休車を余儀なくされた旨、あるいは事故前六四日間の売り上げから燃料代月額一七万円及び高速道路料金月額一八万円を控除した一日当たり二万四四五九円の売り上げがあった旨主張するところ、代替車両購入期間である休車期間については証拠がなく、一日当たりの営業利益についても、証拠(甲第三一、第三二)によれば、キソ梱包は、ヤマト物流の仕事を請け負い、大津が運転する車両で、本件事故前の平成五年一一月一日から平成六年一月一四日までの六四日間に合計二五二万五三五四円の売り上げがあったことを認めることができるけれども、右の事実によっては、キソ梱包の右主張を認めるに足りず、他に右主張の事実を認めるに足りる証拠はない。
2 宮崎トランスポートの損害
(一) 修理代 一〇八万六九九〇円
前記1の事実及び証拠(乙第一、第五、証人本田忠、弁論の全趣旨)によれば、宮崎トランスポート車は、本件事故により破損し、その修理には合計一〇八万六九九〇円を要したことを認めることができる。
(二) レツカー代 二万五七五〇円
証拠(乙第二)によれば、宮崎トランスポートは、レッカー代として、二万五七五〇円を要したことを認めることができる。
(三) 休車損害 〇円
宮崎トランスポートは、本件事故により宮崎トランスポート車が破損し、休車損害として一五七万五〇〇〇円の損害が発生した旨主張し、証拠(乙第四)中にはこれに沿う記載部分があるけれども、粗利益や経費に関する証拠が全くないことに鑑み採用することができず、また、証拠(乙第四、第六の一から四まで、証人本田忠、弁論の全趣旨)によれば、宮崎トランスポート車の平成五年一〇月から同年一二月までの三か月間の売上高は合計三二五万五二〇〇円であること、本件事故により破損した宮崎トランスポート車の修理には四五日間を要したこと等の事実を認めることができるけれども、右の事実によっては、宮崎トランスポートの右主張を認めるに足りず、他に右主張の事実を認めるに足りる証拠はない。
三 過失相殺
前記一のとおり、大津には、前方不注視及び制限速度を時速にして二〇キロメートル程度上回る速度で走行した速度違反の過失が、中井には、本線車道に入ろうとする際の後方確認が不十分であった過失が、永野には、前方不注視の過失がそれぞれ認められ、本件事故が高速道路の合流地点付近の本線上で、流入ランプウェイの終端付近で発生したものであること、事故発生が夜間で、かつ、現場付近が暗かったこと、第一事故から第二事故まで時間的余裕がなかったこと等の本件事故の態様等を総合考慮し、大津、中井及び永野の各過失を勘案すると、その割合は、大津と中井及び永野との間で大津が六、中井及び永野が四と解するのが相当である。
四 前記二の各損害額から前記三の過失割合に基づき過失相殺による減額を行うと、その残額は、キソ梱包の請求につき六四万円、宮崎トランスポートのキソ梱包に対する請求につき六六万七六四四円となる。
五 弁護士費用
本件不法行為によるキソ梱包の損害として、宮崎トランスポート及び中井並びにヤマト運輸及び永野に負担させるべき弁護士費用は六万円、宮崎トランスポートの損害として、キソ梱包に負担させるべき弁護士費用は六万円が相当である。
六 以上のとおりであって、キソ梱包の請求は七〇万円及び内金六四万円に対する本件不法行為の日である平成六年一月一九日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、宮崎トランスポートの請求は、七二万七六四四円及びこれに対する本件不法行為の日である平成六年一月一九日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これらを認容し、その余はいずれも理由がないからこれらを棄却し、訴訟費用について民事訴訟法八九条、九二条、仮執行宣言について同法一九二条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 石原寿記)
別紙図面