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大阪地方裁判所 平成8年(ワ)12948号 判決

原告

高田裕治

ほか五名

被告

河原儀吉

ほか一名

主文

一  被告らは連帯して、原告らそれぞれに対し、金八〇万三三三三円及び内金七〇万三三三三円に対する平成七年一〇月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らの被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを八分し、その七を原告らの、その余を被告らの負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告らは連帯して、原告らそれぞれに対し、金五三〇万五五〇〇円及び内金四八二万五五〇〇円(弁護士費用を除く)に対する平成七年一〇月二八日(事故日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、路上に横臥中、タクシーに轢過された高田厚三郎(以下「厚三郎」という)の相続人たる原告らが、タクシーを運転していた被告河原儀吉(以下「被告河原」という)に対し民法七〇九条に基づき、被告大阪相互タクシー株式会社(以下「被告会社」という)に対しては自動車損害賠償保障法三条、民法七一五条に基づいて損害の賠償を求めた事案である。

一  争いのない事実及び争点判断の前提事実(以下( )内に認定に供した主たる証拠を示す)

1  事故の発生(争いがない)

(一) 日時 平成七年一〇月二八日午前三時一五分頃

(二) 場所 大阪市都島区中野町三丁目一一番二五号付近路上

(三) 関係車両 被告河原運転の普通乗用自動車(なにわ五五う七一九二号、以下「被告車」という)

(四) 事故態様 被告車が厚三郎に衝突し、これを巻込み轢過した。

2  厚三郎の死亡(争いがない)

厚三郎は、事故発生日に死亡した。

3  原告らの地位(被告河原との間では争いがなく、被告会社との関係では甲二の1ないし6による)

原告らは厚三郎の子であり、その権利義務を六分の一ずつ承継した。

4  被告会社の責任原因(争いがない)

被告会社は被告車の保有者であり、自動車損害賠償保障法三条の運行供用者に該当する。

また、被告河原は事故当時、被告会社の業務として被告車を運転していた。

5  損害の填補(争いがない)

原告らは、自賠責保険金二〇九八万六四〇〇円を受け取っている。

二  争点

1  被告河原の過失

(被告らの主張の要旨)

深夜路上に人が横たわっているということは、運転者にとっては予期できないことであり、被告河原には過失がない。

2  本件事故と死亡との因果関係

(被告らの主張)

厚三郎は、心筋梗塞により、本件事故前に既に死亡していた可能性があり、本件事故と死亡との間の因果関係が確定できない。

3  損害額全般

(原告らの主張)

(一) 文書料 六四〇〇円

(二) 逸失利益 一八四三万三〇〇〇円

(三) 慰藉料 三〇〇〇万円

(四) 葬儀費用 一五〇万円

(一)ないし(四)の合計四九九三万九四〇〇円から損害填補額二〇九八万六四〇〇円を差し引いた二八九五万三〇〇〇円について、各原告はその相続分(六分の一)たる四八二万五五〇〇円及び(五)相当弁護士費用四八万円の総計五三〇万五五〇〇円並びに弁護士費用を除く四八二万五五〇〇円に対する本件事故日から支払い済みまでの遅延損害金を求める。

第三争点に対する判断

一  争点1(被告河原の過失)、争点2(本件事故と死亡との因果関係)について

1  認定事実

証拠(甲三の1、2、四の1ないし9、五、六の1、2、被告河原本人)及び前記争いのない事実を総合すると次の各事実を認めることができる。

(一) 本件事故現場は、市街地を東西に延びる道路とこれに南北に交わる道路によってできた十字型交差点の東側で起きたものである。

東西道路の幅員は約九メートル(以下のメートル表示はいずれも約である)、片側一車線で、両端には幅員三メートルの歩道があり、最高制限速度は時速四〇キロメートルである。

(二) 被告河原は、前照灯を下向きにして、時速約五〇キロメートルの速度で、東進していたが、本件交差点の五〇〇メートル手前で知人から電話を受け、対面黄色点滅信号表示下で本件交差点に進入し、交差点内部付近で携帯電話を切った直後、交差点東側において、物体を轢過したのに気づいた。しかし、被告河原はそのまま進行し、途中、タイヤで何かをひきづっていること、それが人かもしれないと思ったが、そのまま運転を継続し、二キロメートル余り付近の道路を走行した後、現場付近まで戻ってきて、被告車を停止させたところ、右前輪に人が巻込まれており、既に死亡していた。

(三) 厚三郎は、陳旧性心筋梗塞、狭心症に罹患していたが、本件事故前、公衆電話で原告高田裕治に架電した後、東西道路を横断中、心筋梗塞の発作に襲われ、路上に横臥していたところ本件事故に遭った。

(四) 厚三郎の身体損傷は、頭部、胸腹部、右上肢、両下肢の各部に及び、両下肢には皮膚組織の脱落が認められ、多発肋骨骨折、第六胸椎椎体・骨盤・頭蓋骨が骨折し、両肺、肝臓、右副腎、脳が大きな損傷を受けていた。胸腔内の出血、頭蓋骨・多発肋骨骨折・骨盤骨折周囲の組織に筋層内出血、脂肪組織内出血等の生活反応が認められる一方、下肢の擦過傷の周囲組織には出血が少なく、生活反応が乏しかった。右状態から、解剖医師は、本件事故によって引きずられたため、ないしは衝突した直後に外傷性ショックにより死亡したものと推定している。

厚三郎の心臓は本件事故によって損傷を受けなかったが、冠動脈硬化症、心筋線維症が進行しており、極めて重篤な症状であり、解剖医は「もし路上に放置されていた場合、短時間の間で死亡したであろう。」との見解を示している。

2  判断

被告河原は、制限速度を超過して走行したうえ、衝突時点まで路上に横たわる厚三郎を発見できていないところからして、前方不注視の過失があったことが明らかである。

前記(四)摘示の事実からすれば、厚三郎は本件事故による外傷性ショックにより死亡したことが認められ、本件事故とその死亡との間に因果関係があることが肯定できる。厚三郎が路上に放置されていた場合、短時間で死亡したであろうことは右認定の妨げとなるものではない。

二  争点3(損害額全般)について

1  文書料 六四〇〇円

(主張同額、弁論の全趣旨)

2  逸失利益 〇円

(主張一八四三万三〇〇〇円)

前記のように、厚三郎は極めて重篤な心臓病に罹患しており、就労能力があったとは認められないから、原告らの逸失利益の主張は理由がない。

3  慰藉料 二四〇〇万円

(主張三〇〇〇万円)

厚三郎の年齢、生活状況、特に、厚三郎には落度がないこと、本件事故態様は希にみる悲惨なものであったこと、そして右事実を知った原告らの精神的苦痛は極めて大きかったと認められること等本件審理に顕れた一切の事情を考慮すると、右慰謝料が相当である。

4  葬儀費用 一二〇万円

(主張一五〇万円)

本件事故と相当因果関係がある葬儀関係費用は一二〇万円であると認められる。

第四賠償額の算定

一  損害総額

第三の二の合計は二五二〇万六四〇〇円である。

二  損害填補

一の金額から前記(第二の一の5)の損害填補額二〇九八万六四〇〇円を差し引くと四二二万円となる。

三  各原告の賠償額

1  二の金額に各原告の相続分である六分の一を乗じると、七〇万三三三三円となる。

2  1の金額、事案の難易、請求額その他諸般の事情を考慮して、各原告が訴訟代理人に支払うべき弁護士費用のうち本件事故と相当因果関係があるとして被告らが負担すべき金額は各原告につき一〇万円と認められる。

3  1、2の合計は八〇万三三三三円である。

よって、各原告の被告らに対する請求は、右金額及び弁護士費用を除く七〇万三三三三円に対する本件事故日である平成七年一〇月二八日から支払い済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由がある。

(裁判官 樋口英明)

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