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大阪地方裁判所 平成8年(ワ)2412号 判決 1998年6月04日

大阪府八尾市跡部本町一丁目一番二七号

原告(反訴被告)

株式会社東洋マーク製作所

右代表者代表取締役

田川竹二

右訴訟代理人弁護士

三山峻司

右補佐人弁理士

福島三雄

野中誠一

東京都港区東麻布二丁目二七番一号

被告(反訴原告)

株式会社ミラリード

右代表者代表取締役

三好茂

右訴訟代理人弁護士

平尾正樹

右補佐人弁理士

佐藤辰彦

鷺健志

主文

一  原告(反訴被告)の本訴請求をいずれも棄却する。

二  原告(反訴被告)は、別紙物件目録ⅠないしⅥ記載のブリスター包装容器を製造し、譲渡し、貸し渡し、輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。

三  原告(反訴被告)は、原告(反訴被告)の本店、営業所及び工場に存する別紙物件目録ⅠないしⅥ記載のブリスター包装容器及びその半製品(右物件の構造を具備しているが、製品として完成していないもの)を廃棄せよ。

四  原告(反訴被告)は、被告(反訴原告)に対し、金一〇五一万三〇〇〇円及びこれに対する平成八年四月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

五  被告(反訴原告)の不正競争防止法二条一項三号、三条に基づく差止請求を棄却する。

六  訴訟費用は、本訴・反訴を通じ、原告(反訴被告)の負担とする。

七  この判決の第四項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求の趣旨

一  本訴

1  被告(反訴原告。以下、単に「被告」という)は、原告(反訴被告。以下、単に「原告」という)の製造、販売する別紙物件目録ⅠないしⅥ記載のブリスター包装容器(以下、順に「原告容器Ⅰ」「原告容器Ⅱ」…「原告容器Ⅵ」といい、合わせて「原告各容器」と総称する)が、被告の有する実用新案登録第三〇〇一五四〇号実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その実用新案登録請求の範囲請求項1の登録実用新案を「本件考案」という)を侵害し、又は侵害するおそれがある旨の虚偽の事実を文書又は口頭で第三者に言いふらしてはならない。

2  被告は原告に対し、金一五〇万円及びこれに対する平成八年三月一五日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  仮執行の宣言

二  反訴

1  主文第二ないし第四項同旨

2  仮執行の宣言

第二  事案の概要

原告の本訴請求は、被告は原告各容器の製造販売等が被告の有する本件実用新案権を侵害し、又は侵害するおそれがある旨の虚偽の事実を文書又は口頭で第三者に言いふらして不正競争防止法二条一項一一号の不正競争行為を行っていると主張して、同法三条、四条に基づき、右不正競争行為の差止め及びこれによって原告の被った損害の賠償を求めた事案である(なお、原告は、損害賠償請求について、実用新案法二九条の三に基づく請求もするが、同条に基づく請求は、実用新案登録を無効にすべき旨の審決が確定したことを要件とするところ、本件考案にかかる実用新案登録を無効にすべき旨の審決が確定したとの主張(立証)を欠き、主張自体失当であることが明らかであるから、この関係の記載は以下、省略する)。

被告の反訴請求は、本件実用新案権及び意匠登録第九四六二四四号意匠権(以下「本件意匠権」といい、その登録意匠を「本件登録意匠」という)を有し、かつ、別紙物件目録ⅦないしⅨ記載のブリスター包装容器に収納された自動車用ウインドウフィルム(以下、順に「被告商品Ⅰ」「被告商品Ⅱ」「被告商品Ⅲ」といい、合わせて「被告各商品」と総称する)を販売している被告が、原告が製造、譲渡等をしている原告各容器は本件考案の技術的範囲に属し、本件登録意匠に類似し、かつ、原告が原告各容器に収納して販売している自動車用ウインドウフィルム(以下、順に「原告商品Ⅰ」「原告商品Ⅱ」……「原告商品Ⅵ」といい、合わせて「原告各商品」と総称する)の形態は被告各商品の形態を模倣したものであると主張して、実用新案法二七条・二九条二項・民法七〇九条、意匠法三七条・三九条二項・民法七〇九条及び不正競争防止法二条一項三号・三条・四条・五条二項二号に基づき、原告各容器の製造譲渡等の差止め、原告の本店等に存する原告各容器及びその半製品の廃棄並びに損害賠償を求めた事案である。

一  原告の不正競争防止法二条一項一一号、三条、四条に基づく本訴請求及び被告の本件実用新案権に基づく反訴請求

1  被告の有する本件実用新案権は、次のとおりである(争いがない)。

考案の名称 ブリスター包装容器

出願日 平成六年二月二八日(実願平六-二七五四号)

登録日 平成六年六月二二日

実用新案登録請求の範囲請求項1(本件考案)の記載

「開口縁にフランジを有する蒲鉾形の外形を備えるプラスチックのブリスター容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて該容器本体の開口部を閉蓋する台板とからなり、少なくとも容器本体の長手方向中央に沿って筒状の内容物を収納し、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されるブリスター包装容器であって、容器本体に収納された内容物の上下端部が臨む容器本体の上下端部外面側に、内容物の上下端部を夫々保持する輪郭を有して台紙に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードを設けたことを特徴とするブリスター包装容器。」(末尾添付の登録実用新案公報〔甲三。以下「本件登録実用新案公報」という〕参照)

甲第三号証によって認められる本件考案の願書に添付した明細書(以下、図面を含め、「本件明細書」という)の記載に照らせば、本件考案の実用新案登録請求の範囲の記載は、次の構成要件に分説するのが相当である。

A 開口縁にフランジを有する蒲鉾形の外形を備えるプラスチックのブリスター容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて該容器本体の開口部を閉蓋する台板とからなり、

B 少なくとも容器本体の長手方向中央に沿って筒状の内容物を収納し、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されるブリスター包装容器であって、

C 容器本体に収納された内容物の上下端部が臨む容器本体の上下端部外面側に、

Ⅰ 内容物の上下端部をそれぞれ保持する輪郭を有して

Ⅱ 台紙に向かって垂直方向に延びる

Ⅲ 大略U字状の

凹ビードを設けたこと

を特徴とするブリスター包装容器。

2  原告は、平成七年三月頃から、収納保持具が取り付けられていない原告容器Ⅰ、Ⅱ、Ⅲを製造し、これに自動車用ウインドウフィルムを収納して販売しており、その後、それぞれ収納保持具が取り付けられた原告容器Ⅳ、Ⅴ、Ⅵを製造し、これに自動車用ウインドウフィルムを収納して販売している(争いがない。原告各容器の特定については、後記四のとおり)。

3  被告は、平成八年二月一七日、原告に対し、本件考案にかかる実用新案技術評価書及び本件登録実用新案公報を提示して、原告各容器が本件考案の技術的範囲に属するからその製造譲渡等は本件実用新案権を侵害するものである旨警告した(争いがない)。

4  被告は、平成八年二月頃、原告の取引先等に対し、原告各容器の譲渡は被告の有する本件実用新案権を侵害するものである旨を文書及び口頭で通知した(争いがない)。

右文書の内容は、次のとおりである(甲二)。

「さて、弊社は、別紙のとおり、弊社製品の自動車用窓ガラス専用フィルムに使用しております『ブリスター包装容器』につきまして実用新案登録第三〇〇一五四〇号の実用新案権を所有しております。

この度、貴社のお取引先である株式会社東洋マーク製作所殿の自動車用窓ガラス専用フィルムに使用されます『ブリスター包装容器』につきまして、弁護士・弁理士に相談致しましたところ、弊社の実用新案権を侵害するものであるとの見解を得ました。

つきましては、この件につきまして、株式会社東洋マーク製作所殿と協議させて頂くべく、別紙のとおり、通知を差し上げております。

この件に関しましては、貴社との関連があるものと思慮しておりますが、弊社と致しましては、株式会社東洋マーク製作所殿と協議して円満に解決を図る所存でありますので、その旨をお知らせ申し上げます。」

二  被告の本件意匠権に基づく反訴請求

被告の有する本件意匠権は、次のとおりである(争いがない)。

意匠に係る物品 包装用容器

出願日 平成六年二月二八日(意願平六-五〇六六号)

登録日 平成七年一一月二四日

登録意匠の構成 (末尾添付の意匠公報(乙一一の2。以下「本件意匠公報」という)参照

三  被告の不正競争防止法二条一項三号、三条、四条に基づく反訴請求

被告は、被告各商品を販売している(争いがない)。

但し、被告各商品の販売開始の日について、被告は平成六年三月八日と主張し、原告はこれを争っている。

原告は、平成七年三月頃から原告各商品を販売している(争いがない)。

四  原告各容器の特定

原告の製造、販売している原告各容器が別紙物件目録ⅠないしⅥ添付の各図面のとおりのものであることは当事者間に争いがない。

しかしながら、その構成の説明の仕方について、原告は、当初、次の1の(一)及び(二)のとおり主張したが、被告との間で争いがあるため特定としては構成の説明を撤回し、被告は次の2の(一)及び(二)のとおり主張するところ、右争いのない各図面及び検証物(検乙一、二、五、検甲二、一、三)によれば、3に検討するところに従い、別紙物件目録ⅠないしⅥの各「構成の説明」記載のとおり特定するのが相当と認められる。

1  原告の当初の主張

(一) 原告容器ⅠないしⅢ共通

<1> 開口縁にフランジを有する収納凹部を備えた透明なプラスチック製のブリスター容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて該容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台紙とからなるブリスター包装容器である。

<2> 収納凹部の幅方向中央に筒状の内容物を収納でき、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されうる。

<3> 収納凹部は、長手方向中央部が幅広であって、長手方向両端面にトンネル形の凸部を形成している。

<4> トンネル形の凸部の幅方向両側には溝部を介して畝部を形成している。

<5> 畝部の長手方向高さはトンネル形の凸部の長手方向高さの約四分の一である。

<6> トンネル形の凸部と畝部との間の溝部は、台紙に向かうに従い長手方向外向きに傾斜していて、収納凹部の開口側に向けて拡開状に形成されている。

<7> トンネル形の凸部と畝部との間の溝部の幅は、容器本体の表面側に向かうに従って拡開していてY字形を呈している。

(二) 原告容器ⅣないしⅥ共通

<1> 開口縁にフランジを有する収納凹部を備えた透明なプラスチック製のブリスター容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて該容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台紙とからなるブリスター包装容器である。

<2> 収納凹部の幅方向中央に筒状の内容物を収納でき、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されうる。

<3> 収納凹部は、長手方向中央部が幅広であって、長手方向両端面にトンネル形の凸部を形成している。

<4> トンネル形の凸部の幅方向両側には溝部を介して畝部を形成している。

<5> 畝部の長手方向高さはトンネル形の凸部の長手方向高さの約四分の一である。

<6> トンネル形の凸部と畝部との間の溝部は、台紙に向かうに従い長手方向外向きに傾斜していて、収納凹部の開口側に向けて拡開状に形成されている。

<7> トンネル形の凸部と畝部との間の溝部の幅は、容器本体の表面側に向かうに従って拡開していてY字形を呈している。

<8> 収納凹部のトンネル形の凸部内には、筒端内面嵌合具が取り付けられており、筒端内面嵌合具は、プラスチック製の薄板を折り曲げて、一方の端片は、トンネル形の凸部の内周に適合する外周形状を有し、その中央部であって、円筒状の内容物の外周がトンネル形の凸部の内面に当接しない位置に、円筒状の内容物の端面内部に適合する截頭円錐形の嵌合凸部が形成され、他方の端片は、台紙に沿わせている。

2  被告の主張

(一) 原告容器ⅠないしⅢ共通

<1> 開口縁にフランジを有する蒲鉾型の外形を備える透明なプラスチック製のブリスター容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて該容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台紙とからなるブリスター包装容器である。

<2> 容器本体の長手方向中央に沿って、円筒状の紙芯に薄手のプラスチック製ウィンドウフィルムを巻回してなる円筒状の内容物が収納されている。

<3> 容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されている。

<4> 容器本体に収納された内容物の上下端部が臨む容器本体の上下端部外面側に、凹ビードが設けられている。

<5> 前記凹ビードは、内容物の上下端部をそれぞれ保持する輪郭を有している。

<6> 前記凹ビードは、台紙に向かって垂直方向に延びている。

<7> 前記凹ビードは、大略U字状である。

(二) 原告容器ⅣないしⅥ共通

<1> 開口縁にフランジを有する蒲鉾型の外形を備える透明なプラスチック製のブリスター容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて該容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台紙とからなるブリスター包装容器である。

<2> 容器本体の長手方向中央に沿って、円筒状の紙芯に薄手のプラスチック製ウィンドウフィルムを巻回してなる円筒状の内容物が収納されている。

<3> 容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されている。

<4> 容器本体に収納された内容物の上下端部が臨む容器本体の上下端部外面側に、凹ビードが設けられている。

<5> 前記凹ビードは、内容物の上下端部をそれぞれ保持する輪郭を有している。

<6> 前記凹ビードは、台紙に向かって垂直方向に延びている。

<7> 前記凹ビードは、大略U字状である。

<8> 内容物の上下端部に、収納保持具が取り付けられている。該収納保持具は、プラスチック薄板を略L字形に折り曲げて、一方の端片に円筒状の内容物の内部に嵌合する凸部を設けてなる。そして、該収納保持具は、一方の端片の該凸部を内容物の内部に嵌合させ、他方の端片を内容物と台紙の間に沿わせている。

3  当裁判所の認定

(一) 原告各容器の構成<1>について

被告は、構成<1>について、「開口縁にフランジを有する蒲鉾形の外形を備えるプラスチックのブリスター容器本体」と主張するが、後記のとおり原告は原告各容器の本体が「蒲鉾形」であることを争っているから、その実際の形状に即して「開口縁にフランジを有する横断面が略半月形の収納凹部を備えた透明なプラスチック製のブリスター容器本体」とするのが相当である。

(二) 原告各容器の構成<2>について

被告は、構成<2>について、「容器本体の長手方向中央に沿って、円筒状の紙芯に薄手のプラスチック製ウインドウフィルムを巻回してなる筒状の内容物が収納されている。」と主張するが、本件考案は「ブリスター包装容器」という容器にかかる考案であり、本件登録意匠の意匠に係る物品は「包装用容器」であって、収納される内容物自体は構成要素そのものにはならないから、原告の当初の主張も参考にして「収納凹部の長手方向中央に沿って筒状の内容物を収納でき、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されうる。」とするのが相当である。

(三) 原告各容器の構成<3>ないし<7>について

被告は、構成<3>ないし<7>について「<3>容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されている。<4>容器本体に収納された内容物の上下端部が臨む容器本体の上下端部外面側に、凹ビードが設けられている。<5>前記凹ビードは、内容物の上下端部をそれぞれ保持する輪郭を有している。<6>前記凹ビードは、台紙に向かって垂直方向に延びている。<7>前記凹ビードは、大略U字状である。」と特定すべきであると主張する。

しかし、右<3>は、右(二)認定の構成<2>に含まれるものであるから、ここで改めて摘示することを要しない。また、右<4>ないし<7>は、本件考案の構成要件Cをそのまま摘示したものであるが、後記のとおり、原告各容器の上下端部に形成された溝の部分が本件考案にいう「凹ビード」に該当するか否かが重要な争点になっているのであるから、被告主張のように特定するのは相当でない。構成<3>ないし<7>については、原告の当初の主張を基礎にして、「<3>収納凹部は、長手方向両端面にトンネル形の凸部を形成しており、そのトンネル形の凸部の内面は、表面側部半分において筒状内容物の外面とほぼ一致する形状を有している。<4>トンネル形の凸部の幅方向両側には溝部を介して畝部を形成している。<5>畝部の長手方向高さはトンネル形の凸部の長手方向高さの約四分の一である。<6>トンネル形の凸部と畝部との間の溝部は、台紙に向かうに従いわずかに長手方向外向きに傾斜していて、収納凹部の開口側に向けてわずかに拡開状に形成されている。<7>トンネル形の凸部と畝部との間の幅は、容器本体の表面側に向かうに従って拡開し、表面側頂部において左右の溝部が連続している。」とするのが相当である。

(四) 原告容器ⅣないしⅥの構成<8>について

構成<8>は、原告容器ⅣないしⅥが本件考案の技術的範囲に属するか否かの判断には関係しないが、「収納凹部のトンネル形の凸部内には、収納保持具が取り付けられており、該収納保持具は、プラスチック製の薄板を略L字形に折り曲げてなり、一方の端片は、トンネル形の凸部の内周に適合する外周形状を有し、その中央部に円筒状の内容物の端面内部に適合する嵌合凸部が形成され、他方の端片は、内容物と台紙の間に沿わされる。」とするのが相当である。

五  争点

1  (原告の不正競争防止法二条一項一一号、三条、四条に基づく本訴請求及び被告の本件実用新案権に基づく反訴請求の関係)

(一) 原告各容器は、本件考案の技術的範囲に属するか。

(二) 本件考案は、出願前公知の考案であり、その実用新案登録には無効事由があるか。

(三) 被告による原告の取引先等に対する通知行為は、不正競争防止法二条一項一一号所定の虚偽事実の告知流布に当たるか等。

2  (被告の本件意匠権に基づく反訴請求の関係)

(一) 原告各容器の意匠は、本件登録意匠に類似するものであるか。

(二) 本件登録意匠は、出願前公知の意匠であり、その意匠登録には無効事由があるか。

3  (被告の不正競争防止法二条一項三号、三条、四条に基づく反訴請求の関係)

原告各商品の形態は、被告各商品の形態を模倣したものであるか。

4  右争点1ないし3についての判断の結果、原告が損害賠償義務を負う場合に、被告に対し賠償すべき損害の額。

第三  争点に関する当事者の主張

一  争点1(一)(原告各容器は、本件考案の技術的範囲に属するか)について

【被告の主張】

原告各容器の構成は、前記第二の四2の被告の主張のとおりであり、これが本件考案の構成要件をすべて充足することは明らかである。

1(一) 本件考案にいう容器本体の備える「蒲鉾形」の外形とは、「板付蒲鉾のように中高で、断面が半月形をなすもの」(乙九・広辞苑)とされるように、断面の形状が中高となるように湾曲した形状をいうものであって、全体としてこのような蒲鉾形であると見られる外形を有するものであれば、容器本体の上下端面が平面であるものに限られるものではない。

原告は、「蒲鉾形」とは当然にその上下端面が平面であると主張するが、根拠のない定義に基づくものである。本件考案の特徴は、蒲鉾形の外形を備える容器本体において上下端面に凹ビードを設けた点にあり、容器本体の上下端面に凹凸を設けることは、本件考案の特徴そのものであるから、蒲鉾形の外形の上下端面にわずかな凸部を形成したからといって、全体の形状が蒲鉾形でなくなるわけではない。

本件明細書の図面は、本件考案の一実施例を示したものにすぎないから、本件考案が右実施例のみに限定されないことはいうまでもない。

(二) 原告は、原告各容器は、容器本体の上下端面の中央にトンネル形の凸部を形成し、これとは別に、ビード本来の目的である剛性増加の目的でその両側に畝部を形成しているものにすぎず、容器本体の上下端部外面側に凹ビードを設けたものではない旨主張するが、外面側の中央にトンネル形の凸部を形成し、その両側に凸状の畝部を形成すれば、両者の間に凹ビードが設けられるのであって、内面側から外向きに二つの凸部を設けることと外面側から内向きに凹ビードを設けることとは、全く同一の構成である。そして、これにより、原告各容器においても本件考案が目的とするように剛性(耐圧強度)が増加するのである。

(三) 原告は、本件考案にいう「容器本体の上下端部外面側に設けられた大略U字状の凹ビード」は、垂直な上下端面に形成された浅いUビードでなければ、容器本体上面からの外的衝撃に対する耐圧強度は高まらない旨主張するが、容器本体の上下端部に凹ビードが形成されれば、凹ビードの外周側のみならず、内周側の部分の容器本体上面側からの外的衝撃に対する耐圧強度も高まるのであって、全体として容器本体の上下端部は耐圧強度が向上するものであるから、右原告主張のように解すべき理由はない。

また、原告は、原告各容器では、トンネル形凸部を目標にすることによって筒状内容物を確実かつ簡易に位置決めして最適な位置に収納することが可能となるのに対し、本件考案にかかる包装容器では、凹ビードしかないので筒状内容物を収納する作業が非常に大変である旨主張するが、本件考案にいう凹ビードは、そもそも内容物の位置決めを目的としたものであるから、原告各容器が内容物を位置決めできる凹ビードを備えている以上、本件考案にいう凹ビードを備えているのであって、内容物の収納作業が容易であるか否かは無関係である。

なお、原告は、被告の製造、販売している本件考案の実施品(AF-61)は凹ビードの深さが五mm程度しかないので作業性が非常に悪い旨主張するが、実際は、容器本体の上下端部に形成された凹ビードにより内容物を位置決めして収納する作業は容易に行えるものである。

そして、原告は、原告各容器ではトンネル形凸部の先端に耐圧強度が得られない旨主張するが、原告主張のトンネル形凸部とその左右の畝部との間には本件考案と同様の凹ビードが形成されており、これによって容器本体の上下端部の耐圧強度が向上しているものである。

2 原告は、本件考案では、凹ビードが「内容物の上下端部をそれぞれ保持する輪郭を有していることを要件とするが、原告各容器では、内容物がトンネル形の凸部内で可動な状態にあるから、内容物の上下端部はトンネル形の凸部内に保持されていない旨主張するが、「保持」とは「たもち続けること。手放さず持っていること」という意味であって(広辞苑)、原告主張の「動かないように押さえ持つこと」というような狭い意味しか有しないわけではない。本件考案の作用効果との関連でいえば、「保持」とは、内容物を内容物と容器本体との間に形成された空間に移動させないとの意味である。したがって、原告各容器において、内容物がトンネル形の凸部内でごくわずかに可動な状態であったとしても、凹ビードが内容物の上下端部を保持する構成であることは明らかである。

3 原告は、本件考案にいう凹ビードが「台紙に向かって垂直に延びる」とは、文字どおり「垂直」方向に延びることが必要である旨主張するようであるが、原告主張のように、従前のブリスター容器を形成する加工技術では、台紙に向かって溝を形成する際には、金型からプラスチック成形品を取り出す(抜く)ことを考慮してテーパを付けることが一般的であるから、このような従前の加工技術を前提に本件考案にいう「垂直」との記載の意味を把握すれば、実施に当たって一〇分の一程度のテーパをつけて溝部を形成しても、右「垂直」の範囲に含まれるというべきである。

4 原告各容器の凹ビードは、容器本体の表面側に向かうに従って次第に拡開するように形成されているものの、本件明細書の図3記載の本件考案の凹ビードの形状と全く同一であるから、大略U字状であることに変わりはない。

【原告の主張】

原告各容器は、本件考案の技術的範囲に属しない。

1 原告各容器は、本件考案にいう「凹ビード」を備えていない。

(一) 「ビード」とは「薄板に剛性増加の目的で付けられた型押しによる溝」であり(甲八・JIS工業用語大辞典)、プラスチック容器本体の熱形成が容易なことから剛性増加の目的で様々な形で容器本体に設けられるものである。

本件考案は、蒲鉾形の外形を備える容器本体の上下端部外面に凹ビードを設けたものであり、「蒲鉾形」とは当然にその上下端面が平面であるところ、その平面である上下端面に「凹ビード」を設けたというのであるから、内容物の上下端部をそれぞれ保持する輪郭を有する上下端部外面と溝を形成することによって外側に位置する上下端部外面は、同一の平面上にあることが当然の帰結となる。本件明細書の各図面(図1、2、3、4)にも、そのように描かれている。被告は、容器本体の上下端面に凹凸を設けることは本件考案の特徴そのものであると主張するが、本件考案は、蒲鉾形の外形を備える容器の上下端部外面側、すなわち端面が平面の外面に凹ビードを設けることによって形成されるものに限られるのである。

(二) これに対して、原告各容器は、容器本体の上下端面の中央にトンネル形の凸部を形成し、これとは別に、ビード本来の目的である剛性増加の目的でその両側に右トンネル型の凸部の約四分の一の高さの畝部を形成しているものにすぎない。この形状は、容器本体の上下端部外面側に凹ビードを設けることによって形成されたものではなく、外面側から型押しによって溝を形成したものでもないのである。

(三) また、本件考案の目的ないし効果の点からいって、本件考案にいう「容器本体の上下端部外面側に設けられた大略U字状の凹ビード」は、垂直な上下端面に形成された浅い凹ビードでなくてはならない。

なぜなら、「垂直な上下端面に形成された浅い凹ビード」でなければ、容器本体上面からの外的衝撃に対する耐圧強度は高まらないのであり、仮に内容物10、12の接触面が、容器本体の上下端部8、9より突出している場合には、内容物10、12の接触面の外面側には「凹ビード」が存在しないことになり、耐圧強度が得られないことによって、内容物10、12の上下端部に直接、衝撃が及ぶことになり、本件考案の目的に反することになるからである。

これに対して、原告各容器では、位置決め用としてトンネル形凸部を備えているので、このトンネル形凸部は、当然容器本体からかなり突出することになり、したがって、トンネル形凸部の先端には耐圧強度が得られず、トンネル形凸部の先端が凹んで、内容物10、12の上下端部に衝撃が直接加わることになるのである。したがって、原告各容器は、右のような「容器本体の上下端部外面側に設けられた大略U字状の凹ビード」を備えていない。

その反面、原告各容器では、筒状内容物(自動車用ウインドウフィルム)を収納するに際しては、トンネル形凸部を目標にすることによって、筒状内容物を確実かつ簡易に位置決めして最適な位置に収納することが可能となるのに対し、本件考案にかかる包装容器では、筒状内容物を収納する作業が非常に大変である。被告の製造、販売している本件考案の実施品(AF-61)を一例に挙げると、凹ビードの深さは五mm程度しかないから、この五mmの深さの中に、長さ六〇cm(凹ビードの深さの一二〇倍)、外径四cmの自動車用ウインドウフィルムの終端部を位置決めするのは困難であり、作業性が非常に悪く、かなりの熟練が要求される。

2 本件考案では、凹ビードが「内容物の上下端部をそれぞれ保持する輪郭を有して」いることを要件とするが、「保持」とは動かないようにおさえ持つことを意味するところ、原告各容器では、内容物がトンネル形の凸部内で可動な状態にあるから、内容物の上下端部はトンネル形の凸部内面に保持されていない。

3 原告各容器は、本件考案にいう「台紙に向かって垂直方向に延びる」凹ビードを備えていない。

(一) 本件考案は、本件明細書の次の各記載及び実施例を示す各図面(図1、3、4)からして、上下方向の衝撃・耐圧には垂直方向の形成が最も効果を有することから凹ビードが「台紙に向かって垂直方向に延びる」ことを必須構成として明示し、採用したものであることが明らかである。

<1> 「特に、筒状体の上下端部に臨む容器本体の上下端部が外部からの衝撃により凹んで筒状体の両端が傷つくと、商品価値を損なうおそれがあった。」(従来の技術の項【0003】)

<2> 「容器本体の上下端部に設けた大略U字状の凹ビードは台紙に向かって垂直方向に延びており、容器本体の上下端部における容器本体上面からの外的衝撃に対する耐圧強度を高めている。」(作用の項【0017】)

<3> 「凹ビード11が台紙3に向かって垂直方向に延びており、容器本体2の上端部8への容器本体2上面からの外的衝撃に対する耐圧強度を高めている。」(実施例の項【0035】)

<4> 「更に、大略U字状の凹ビードが台紙に向かって垂直方向に延びていることにより、容器本体の上下端部への容器本体上面からの外的衝撃に対する耐圧強度が高められる。」(考案の効果の項【0047】)

また、右「台紙に向かって垂直方向に延びる」との記載においては、他の構成要件(例えば「大略U字状」)におけるように「大略」とはされていないことに留意すべきである。

(二) 従前のブリスター容器を形成する加工技術では、台紙に向かって溝を形成する際には、金型からプラスチック成形品を取り出す(抜く)ことを考慮してテーパを付けることが一般的であるところ、原告各容器も、台紙に垂直方向に溝を設けるのではなく、台紙に向かって一〇分の一の傾斜角が付けられているから、「台紙に向かって垂直方向に延びる」凹ビードを備えていない。

4 原告各容器は、本件考案にいう「大略U字状」の凹ビード備えていない。

(一) 原告各容器では、トンネル形の凸部とその両側にある約四分の一の高さの畝部との問に形成される溝部の形状は、容器本体の表面側に向かうに従って次第に拡開するように形成されているので、U字状を呈していないことは、外観上も明らかである。

(二) 被告は、原告各容器の「凹ビード」は「大略」U字状であると主張するが、本件考案は、蒲鉾形外形の上下端面に凹ビードを設け、これがU字状であるという構成の組合せからなっているのに対し、原告各容器の上下端面は、中央のトンネル形凸部と両側の凸部(畝部)が同一平面上になく、高さも異なり、これら凸部間の凹部もU字とはいえず、外形も本件考案と異なっていることが明らかである。

二  争点1(二)(本件考案は、出願前公知の考案であり、その実用新案登録は無効事由があるか)について

【原告の主張】

仮に原告各容器が本件考案の技術的範囲に属するとしても、本件考案は、その出願日である平成六年二月二八日より前に日本国内において公然知られた考案であり、日本国内において頒布された刊行物に記載された考案であって、原告は公知技術(自由技術)を実施しているにすぎないから、本件実用新案権を侵害するものではなく、あるいはその実用新案登録には実用新案法三七条一項二号、三条一項一号・三号の無効事由のあることが明らかであるから、かかる明白な無効事由のある本件実用新案権に基づき原告各容器の製造販売等の差止め等を求めることは、権利の濫用に当たり許されないというべきである。

1 本件考案は、出願前に公然知られた考案である。

すなわち、被告作成のカタログ「secret zone」(甲一五)に掲載された本件考案の実施品である被告各商品は、本件考案の出願日である平成六年二月二八日より前の同月一六日、一七日の両日、東京平和島の東京流通センター(TRC)第一展示場アールンAないしDホールにおいて開催された、中央自動車工業株式会社の取り扱う九四年春夏向けの自動車部品用品及びRVアンドオートレジャー商品の展示商談会「第二九回セントラルフェア」において、ブースNo.五五において出品された。

右展示商談会の総出展社数は約一一〇社、二日間の総来場社数は約五〇〇社、総来場者数は約一〇〇〇名であるところ、本件考案は、包装容器の形状に関するものであり、右展示場に来場する当業者であれば外形を見ただけで容易に考案の技術的な理解は可能であり、不特定多数の業者に本件考案が公然知られた状態になったことは明らかである。

被告は、同年三月八日に初めて被告各容器に収納された自動車用ウインドウフィルム(被告各商品)の販売を始めたと主張するが、それに先立って何らの商品紹介や宣伝活動も行っていなかったということは、商業活動上到底考えられない。

2 被告は、本件考案の出願日である平成六年二月二八日より前に、次の雑誌又は被告のカタログに本件考案の実施品である被告各商品を掲載し、大々的に宣伝を行ったところ、これらの刊行物は、いずれも商品を宣伝推奨する目的に出たものであり、一般需要者はもちろん、当業者であれば容易に実施することができる程度に商品の外観が明らかになっているから、本件考案は、出願前に頒布された刊行物に記載された考案である。

(一) 被告は、平成六年一月早々より、本件考案の実施品である新タイプ容器(被告各容器)に収納した被告各商品に切り替えた上、カー用品業界の唯一の情報誌(発行部数は概ね一万三〇〇〇部)である株式会社自動車産業通信社発行の「AMネットワーク」平成六年二月号(同年一月二五日発行・甲一三の1~8)に、被告各商品の容器形態とともに製品符号を掲載して大々的に宣伝広告を行った。

すなわち、本件考案の実施品として被告が提出している検乙第三号証の1(台紙左上部分に「AF-14」、筒内の胴ラベルの部分に「AF-1・5」の製品符号が付されている)及び検乙第三号証の2(台紙左上部分に「AF-74」、筒内の胴ラベルの部分に「AF-R」の製品符号が付されている)を同誌(甲一三の2)に掲載し、検甲第四号証(台紙左上部分に「MX-211」、筒内の胴ラベルの部分に「MX-1・5」の製品符号が付されている)を同誌(甲一三の3)に掲載した。

(二) 被告作成の前記カタログ「secret zone」は、その裏表紙に「掲載製品の価格には、消費税は含まれておりません。1994.2」と明記されているように、平成六年二月に、バーコード表示や製品価格を含め印刷され、同月中に取引先に配布されており、前記同年二月一六日・一七日開催の「第二九回セントラルフェア」の展示会場においても配布された。右カタログ中には、「AF」「PRO」「MX」「RV4」との製品符号の付された商品が、それぞれのタイプに分けて、本件考案にかかる包装容器の形状を容易に理解できるような態様で大きく掲載されている。

(三) なお、右雑誌やカタログに掲載されている商品は、事前にこれら宣伝物を作成するために、守秘義務のないカメラマンや関係者に示されているはずである。

【被告の主張】

本件実用新案権は、無効事由の有無にかかわらず有効に存在しているから、そもそも被告の反訴請求に対する抗弁たりえないものであるが、本件考案は、出願前に公然知られた考案でも、刊行物に記載された考案でもない。

1 本件考案は、出願前に公然知られた考案ではない。

被告が原告主張の展示商談会に参加して、ブースNo.五五に出展したのは事実であるが、被告各容器を展示した事実はない。

被告は、本件考案の出願(平成六年二月二八日)を待って、その後の三月八日に初めて被告各容器に収納された自動車用ウインドウフィルム(被告各商品)の販売を始めたものである。

原告は、被告各容器に収納された自動車用ウインドウフィルムの販売に先立って何らの商品紹介や宣伝活動も行っていなかったということは、商業活動上到底考えられない旨主張するが、自己に有利な推測を述べるにすぎず、本件考案が公知であったことを何ら証明するものではない。被告は、この業界における老舗であり、販売網も相当に整っているから、新製品の紹介といっても「今度、パッケージが変わったのでよろしく」と説明する程度ですむのである。

2(一) 被告が、株式会社自動車産業通信社発行の「AMネットワーク」平成六年二月号に、被告各容器に収納された自動車用ウインドウフィルムの広告を掲載したのは事実であるが、そこに掲載されている写真の容器は、被告各容器を製造する金型のその前の木型による試作容器であって、被告各容器と同一でなく、右試作容器を使って商品写真を撮ったところ、透明容器であるために本件考案の特徴が全く現れていないことに安心して掲載したものである。このように本件考案の内容を理解できない写真の掲載をもって、本件考案が「刊行物に記載された考案」になるはずがない。

(二) 被告作成のカタログ「secret zone」(甲一五)は、裏表紙下端の「1994.2」との記載から、平成六年二月中に印刷された可能性はあるが、その実際の配布日は、いちいち記録していないので、被告にも不明である。しかし、被告は、本件実用新案権以外にも多くの工業所有権の出願をしていて、新規性の意義についても十分に理解し、管理しているから、本件考案の内容が理解できないとはいえ、新製品の写真を前記「AMネットワーク」以外にむやみに掲載することはなく、右カタログは本件考案の出願を待って配布しているはずであり、原告主張のように同年二月中に取引先に大量に配布したとか、前記展示商談会において配布したことはない。

また、右カタログに掲載された写真によっては、いずれも凹ビードの有無及びその形状をはじめとする本件考案の内容を理解できるものではない。

(三) なお、原告が、カメラマンや関係者には守秘義務がないとするのは独断である。

三  争点1(三)(被告による原告の取引先等に対する通知行為は、不正競争防止法二条一項一一号所定の虚偽事実の告知流布に当たるか等)について

【原告の主張】

1 前記のとおり、原告各容器は本件実用新案権を侵害するものではないのに、被告は、平成八年二月、原告に対して警告書を発送するとともに、右警告書に対する原告からの回答も待たずに、前記第二の一4のとおり、同年二月頃、原告の取引先等に対し、原告各容器の譲渡は被告の有する本件実用新案権を侵害するものである旨を文書及び口頭で通知した。右の文書及び口頭による通知は、春先の商談時期に合わせたものであり、極めて悪質である。

2 被告の右行為は、原告の営業上の信用を著しく害する虚偽の事実を告知、流布するものであり、原告の営業上の利益を侵害する行為である。

そのため、原告は、事情を知らない取引先から取引の中止を申し入れられ、返品を受けるに至った。訴外株式会社向島自動車用品製作所、株式会社ワイド、株式会社東光は、現在も取引を中止したままである。原告は、右営業誹謗行為がなかったならば、平成九年二月末までの約一二か月間に概ね一二五〇万円程度の営業利益を得られたはずであるのに、被告の行為によりこれを失い、同額の損害を被った。

原告は、その内金として一五〇万円の賠償を求めるものである。

【被告の主張】

1 前記のとおり、原告各容器は、本件考案の技術的範囲に属するものであり、その譲渡は本件実用新案権を侵害するものであるから、その旨を原告の取引先等に文書及び口頭で通知することは、「虚偽」の事実の告知に当たらない。

被告は、平成六年六月二二日に、本件実用新案権を取得したところ、原告が原告各容器の販売を開始したのは翌平成七年三月頃であり、被告は、原告が本件実用新案権を侵害する行為を中止することを一年間待っていたのであるが、平成八年の商期に至っても中止しないため、やむなく権利侵害の警告・通知をしたのであり、これにより原告が信用を失ったとしても自業自得である。

2 原告は、概ね一二五〇万円程度の営業利益を得られたはずであると主張するが、何らの証拠もない。そもそも、それは本来得られないはずの利益が得られなかっただけのことである。

四  争点2(一)(原告各容器の意匠は、本件登録意匠に類似するものであるか)について

【被告の主張】

原告各容器の意匠は、本件登録意匠に類似するものである。

1 本件登録意匠は、次の(一)のとおりの基本的構成態様からなり、その具体的構成態様は次の(二)のとおりである。

(一) 基本的構成態様

<1> 包装用容器は、長手方向全長にわたって外形を蒲鉾形とした透明な容器本体と、容器本体の開口縁に設けたフランジを内側に折り返した間に挟み込まれて、容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台板とからなり、

<2> 容器本体は、長手方向中央に沿って筒状の内容物(自動車用ウインドウフィルム)を収納した際に、長手方向全長にわたって容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成され、

<3> 容器本体の上下端部外面には、筒状の内容物の上下端部を保持する輪郭を有して台板に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードが形成され、

<4> 容器本体の上部及び下部には、それぞれ容器本体の左右側面から上面にわたる左右一対の凹ビードが形成され、

<5> 容器本体の上部の上面には左右一対の突起が形成され、容器本体の下部の上面には付属品(ゴムヘラ)収納部が形成されている。

(二) 具体的構成態様

<6> 容器本体の上端部外面は、大略U字状の凹ビードの外側の端面と内側の端面とが略同一平面上にあり、容器本体の下端部外面には、大略U字状の凹ビードの両脚部と台板との間で外方に突出する凸ビードが形成され、

<7> 前記容器本体の上部側の左右一対の凹ビードは、前記左右一対の突起よりも長手方向中央寄りに位置し、下部側の左右一対の凹ビードは、前記付属品収納部よりも長手方向中央寄りに位置し、

<8> 容器本体に収納した内容物と台板との間の空間に、断面が大略U字状で容器本体の長手方向に延びる透明の保護部材が収納され、内容物を保持する。

2 原告各容器の意匠は、それぞれ次の(1)の基本的構成態様からなり、その具体的構成態様はそれぞれ次の(2)のとおりである。

(一) 原告容器Ⅰ

(1) 基本的構成態様

本件登録意匠と同じ。

(2) 具体的構成態様

<6> 容器本体の上端部及び下端部外面は、大略U字状の凹ビードの外側の端面よりも内側の端面が外方へ突出しており、

<7> 前記容器本体の上部側の左右一対の凹ビードは、前記左右一対の突起よりも上端部寄りに位置し、下部側の左右一対の凹ビードは、前記付属品収納部の略中央に位置し、

<8> 容器本体の略中央部の左右側面には、左右対称に各三個の凸ビードが形成されている。

(二) 原告容器Ⅱ

(1) 基本的構成態様

<4> が次のとおりであるほかは、本件登録意匠と同じ。

<4> 容器本体の下部に、容器本体の左右側面から上面にわたる左右一対の凹ビードが形成され、

(2) 具体的構成態様

<6> 容器本体の上端部及び下端部外面は、大略U字状の凹ビードの外側の端面よりも内側の端面が外方へ突出しており、

<7> 前記容器本体の下部に形成された左右一対の凹ビードは、前記付属品収納部の略中央に位置する。

(三) 原告容器Ⅲ

(1) 基本的構成態様

本件登録意匠と同じ。

(2) 具体的構成態様

<6> 容器本体の上端部及び下端部外面は、大略U字状の凹ビードの外側の端面よりも内側の端面が外方へ突出しており、

<7> 前記容器本体の上部側の左右一対の凹ビードは、前記左右一対の突起よりも上端部寄りに位置し、下部側の左右一対の凹ビードは、前記付属品収納部の略中央に位置し、

<8> 容器本体の略中央部の左右側面には、左右対称に各五個の凹ビードが形成されている。

(四) 原告容器Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ

(1) 基本的構成態様

それぞれ原告容器Ⅰ、Ⅱ、Ⅲと同じ。

(2) 具体的構成態様

次の構成態様<9>を加えるほか、それぞれ原告容器Ⅰ、Ⅱ、Ⅲと同じ。

<9> 容器本体に収納された内容物の上下端部には、それぞれ透明のプラスチック薄板を略L字形に折り曲げて一方の端片に筒状の内容物の内部に嵌合する凸部を設けた収納保持具が、該一方の端片の該凸部を内容物の内部に嵌合させ、他方の端片を内容物と台紙との間に沿わせて取り付けられている。

3 原告容器ⅠないしⅢの意匠を本件登録意匠と対比すると、基本的構成態様<1>ないし<5>において、原告容器Ⅰ及びⅢはすべて一致し、原告容器Ⅱは<4>に関して容器本体の下部のみに左右側面から上面にわたる左右一対の凹ビードを形成している点を除き、一致し、これら一致する基本的構成態様は、包装用容器の全体の形態に関するものであるとともに、この種の包装用容器には従来見られない本件登録意匠の斬新な形態であって、看者の注意を強く惹く部分であるのに対し、本件登録意匠との具体的構成態様における相違点は、包装用容器全体から見て細部の相違にすぎず、類似する点が圧倒的に多いため、全体として類似するとの印象を強く与えるから、原告容器ⅠないしⅢの意匠は、本件登録意匠と類似するものである。

原告容器Ⅳ、Ⅴ、Ⅵは、それぞれ原告容器Ⅰ、Ⅱ、Ⅲに前記の収納保持具を取り付けた点で異なるだけであるところ、この収納保持具は、透明であって目立たないものであるから、原告容器Ⅳ、Ⅴ、Ⅵの意匠も、全体として本件登録意匠に類似するものである。

4 本件登録意匠及び原告各容器の意匠の構成態様についての原告の主張は不適切であるが、あえて原告の主張も踏まえつつ、原告各容器の意匠を本件登録意匠と対比しても、以下のとおり、結論に変わりはない。

(一) 原告容器Ⅰ、Ⅲ

(1) 原告容器Ⅰ、Ⅲの意匠は、次の点で本件登録意匠と一致する。

ⅰ 収納凹部の開口縁にフランジを有する透明な容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて、収納凹部の開口部を閉蓋する長方形状の台板とからなる包装容器である。

ⅱ 収納凹部は、長尺の蒲鉾形の外形を備え、長手方向全長にわたって幅方向中央に円筒状の内容物を収納した際に、両端部を除く長手方向全長にわたって収納凹部の側部内面と内容物との間に空間が形成される。

ⅲ 収納凹部の上下端部外面には、内容物の上下端部を保持する輪郭を備えて台紙に向かって略垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードが形成される。

ⅳ 容器本体の全面の上部に左右一対の突起が形成され、前面の下部に付属品収納部が形成される。

ⅴ 容器本体の左右側面から前面にわたる左右一対の補強用凹ビードが、容器本体の上下に各一組形成される。

(2) 一方、原告容器Ⅰ、Ⅲの意匠は、次の点で本件登録意匠と相違する。

ⅰ 本件登録意匠では、収納凹部の上端部外面が、凹ビードの内側部分と外側部分とで略面一に形成され、収納凹部の下端部外面が、凹ビードの両脚部の下に凸ビー下を外方へ突出させて形成されているのに対し、原告容器Ⅰ、Ⅲでは、収納凹部の上下端部外面が、凹ビードの内側部分(トンネル形凸部)を外側部分(畝部)より外方へ突出させて形成されている。

ⅱ 左右一対の突起又は付属品収納部が、本件登録意匠ではそれぞれ容器本体の前面の上端又は下端に配置されているのに対し、原告容器Ⅰ、Ⅲでは、それぞれ容器本体の前面の上端又は下端からやや内寄りの位置に配置されている。

ⅲ 原告容器Ⅰには、容器本体の左右側面に三個の凸ビードがあり、原告容器Ⅲには、容器本体の左右側面に五個の凹ビードがあるのに対し、本件登録意匠にはない。

ⅳ 本件登録意匠には、容器本体の内部に内容物を保持する透明の保護部材(原告は「位置決の部材」ともいう)があるのに対し、原告容器Ⅰ、Ⅲにはない。

(3) まず、一致点についてみると、少なくとも一致点ⅱ、ⅲ、ⅴは、この種の包装用容器には従来見られない、本件登録意匠の斬新な形態であって、看者の注意を強く惹く部分である。特に一致点ⅱ、ⅲは、包装用容器の全体形状に関する本件登録意匠の特徴的形態であって、看者の注意を特に強く惹く部分である。これらの本件登録意匠の特徴は、甲第一三号証の1~8掲載の各社の同種包装用容器には何ら現れていない。

原告は、一致点ⅰに当たる原告主張の基本的構成態様<1>について、甲第一三号証の1~8を援用して、既に各社が採用する一般的にありふれた周知の「形状」であると主張するが、そもそも、原告主張の基本的構成態様<1>は、収納凹部の形状を何ら特定しておらず、包装用容器であれば当然の内容物を収納する収納凹部が存在することを単に述べたに止まるから、恣意的な特定の仕方である。また、一致点ⅳについても、甲第一三号証の1~8からは従来の同種製品に現れているかどうか不明である。

(4) 相違点をみると、相違点ⅰについては、原告容器Ⅰ、Ⅲの上下端部外面の凹ビードの内側部分(トンネル形凸部)の突出する長さが包装用容器全体の長さと比べればわずかにすぎず、凹ビードの存在を明確に見てとれるから、包装用容器全体から見れば細部の相違にすぎない。

相違点ⅱは、原告容器Ⅰ、Ⅲの左右一対の突起又は付属品収納部の配置が本件登録意匠に比べてやや内寄りであるというものであり、長尺の包装用容器全体から見れば配置の差はわずかなものである。

相違点ⅲの、包装用容器の左右側面に形成された原告容器Ⅰにおける三個の凸ビードや原告容器Ⅲにおける五個の凹ビードは、包装用容器の付属的な形態であり、包装用容器が透明であることも相まって、看者の注意を特に惹かないものである。

相違点ⅳの本件登録意匠における保護部材(原告は「位置決の部材」ともいう)は、本件登録意匠の構成要素であるといえるが、包装用容器の機能の点からは付加的構成要素であって、全体が透明であり、内容物を収納した場合にはその半分程度が内容物の下に隠れてしまうので、容器本体の形状の特徴と比べて意匠全体に及ぼす影響は弱く、これの有無によって本件登録意匠と原告容器Ⅰ、Ⅲとが異なる美感を生じさせるものではない。

(5) してみれば、原告容器Ⅰ、Ⅲの意匠は、包装用容器の全体形状に関する本件登録意匠の要部である前記一致点ⅱ、ⅲ、ⅴにおいて本件登録意匠と一致する一方、本件登録意匠との相違点は包装用容器全体から見て細部の相違にすぎず、美感に相違はないから、全体として本件登録意匠に類似するとの印象を看者に強く与えるものである。

(二) 原告容器Ⅱ

(1) 原告容器Ⅱの意匠は、前記(一)(1)の一致点ⅰないしⅳの点で本件登録意匠と一致する。

(2) 一方、原告容器Ⅱの意匠は、前記(一)(2)の相違点ⅰ、ⅳ及び次のⅴの点で相違する。

ⅴ 原告容器Ⅱは、本件登録意匠に比べて短尺の包装用容器であり、容器本体の左右側面から前面にわたる左右一対の補強用凹ビードが、本件登録意匠では容器本体の上下に各一組形成されているのに対し、原告容器Ⅱでは容器本体の下部にのみ形成されている。

(3) 前記のとおり、一致点ⅱ及びⅲは、包装用容器の全体形状に関する本件登録意匠の特徴的形態であり、この種の包装用容器には従来見られない、本件登録意匠の斬新な形態であって、看者の注意を特に強く惹く部分である。また、一致点ⅳに関する左右一対の突起及び付属品収納部の配置も一致している。

他方、相違点ⅰについては、原告容器Ⅰ、Ⅲの場合と同様の理由により、包装用容器全体から見れば細部の相違にすぎない。相違点ⅳの本件登録意匠における保護部材も、これの有無によって異なる美感を生じさせるものではない。相違点ⅴについては、原告容器Ⅱは、確かに本件登録意匠の包装用容器に比べて短尺ではあるが、包装用容器の全体形状に関する前記一致点ⅰ、ⅲが看者に強い印象を与えるため、相違点ⅴの与える印象は相対的に弱くなり、その結果、両意匠のもたらす美感が相違するとはいえない。

してみれば、原告容器Ⅱの意匠は、包装用容器の全体形状に関する本件登録意匠の要部である前記一致点ⅱ、ⅲにおいて本件登録意匠と一致する一方、本件登録意匠との相違点は包装用容器全体から見て細部の相違にすぎず、美感に相違はないから、全体として本件登録意匠に類似するとの印象を看者に強く与えるものである。

(三) 原告容器Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ

原告容器Ⅳ、Ⅴ、Ⅵの意匠は、それぞれ容器本体の内部に、本件登録意匠にはない透明の収納保持具(筒端内面嵌合具)を備える点で原告容器Ⅰ、Ⅱ、Ⅲと異なるのみであり、その他は同一である。

右収納保持具(筒端内面嵌合具)は、全体が透明であり、凸部が内容物内面に嵌合されて見えないので、目立たないものである。

したがって、原告容器Ⅳ、Ⅴ、Ⅵの意匠も、全体として本件登録意匠と類似するとの印象を看者に強く与えるものである。

【原告の主張】

原告各容器の意匠は、本件登録意匠に類似するものではない。

1 本件登録意匠は、次の(一)のとおりの基本的構成態様(意匠の骨格となる基本の形態)からなり、その具体的構成態様は次の(二)のとおりである。

(一) 基本的構成態様

<1> 収納凹部の開口縁にフランジを設けた透明なプラスチック製の容器本体と、容器本体のフランジを内側に折り返した間に挟み込まれて、容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台板とからなり、

<2> 収納凹部は、幅対長さが約一対六・一である長尺な蒲鉾形に形成され、<3> 収納凹部は、幅方向中央に沿って筒状の内容物(自動車用ウインドウフィルム)を収納した際に、収納凹部の側部内面と内容物との間に空間が形成され、

<4> 収納凹部の上下端部外面は、板付き蒲鉾の端面の如く平坦な平面に凹溝が形成された形状とされ、この凹溝の内周が、筒状の内容物の上下端部を保持する輪郭に形成され、

<5> 容器本体の左右側面には補強用ビードが設けられ、容器本体の前面には付属品収納部が形成され、

<6> 容器本体の内部に、内容物を保持する保持部材が収納されている。

(二) 具体的構成態様

<7> 容器本体の上下端部外面は、蒲鉾の端面状の平面に、収納凹部の幅に対し約一対〇・〇六の極浅の凹溝が形成されている。

<8> 容器本体の左右側面の上下二か所に凹溝からなる補強用ビードが形成されるとともに、下端にゴムヘラ用付属品収納部が形成されている。

<9> 保持部材は、容器本体の上下長さの約四分の一の上下長さを有する台形状であって、その前面の中央上下方向に半円形凹部を形成している。

2 原告各容器の意匠は、それぞれ次の(1)の基本的構成態様(意匠の骨格となる基本の形態)からなり、その具体的構成態様はそれぞれ次の(2)のとおりである。

(一) 原告容器Ⅰ

(1) 基本的構成態様

<1> 収納凹部の開口縁にフランジを設けた透明なプラスチック製の容器本体と、容器本体のフランジを内側に折り返した間に挟み込まれて、容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台板とからなり、

<2> 収納凹部は、幅対長さが約一対六・一である長尺な蒲鉾形の上下端面にトンネル形凸部を突出した形状(トンネル形凸部付き蒲鉾形)に形成され、

<3> 収納凹部は、幅方向中央に沿って筒状の内容物(自動車用ウインドウフィルム)を収納した際に、収納凹部の側部内面と内容物との間に空間が形成され、

<4> 収納凹部の上下端部外面には、トンネル形凸部の左右両側に間隙をあけて、トンネル形凸部の高さの約四分の一の低い畝部を形成し、

<5> 容器本体の左右側面には補強用ビードが設けられ、容器本体の前面には付属品収納部が形成され、

<6> (なし)

(2) 具体的構成態様

<7> 容器本体の上下端部外面のトンネル形凸部は、収納凹部の幅に対し約一対〇・二八に形成され、その両側の低い畝部は、トンネル形凸部の約四分の一の高さに形成されてなり、

<8> 容器本体の左右側面の上下二か所に凹溝からなる補強用ビードが形成されるとともに、上下中央部の左右側面に三本指の如き凸リブが形成され、下端から上下長さの約一〇分の一上方に寄った位置に、ゴムヘラ用付属品収納部が形成されている。

(二) 原告容器Ⅱ

(1) 基本的構成態様

<2> が次のとおりであるほかは、原告容器Ⅰと同じ。

<2> 収納凹部は、幅対長さが約一対二・五である短小な蒲鉾形の上下端面にトンネル形凸部を突出した形状(トンネル形凸部付き蒲鉾形)に形成され、

(2) 具体的構成態様

<7> 原告容器Ⅰと同じ。

<8> 容器本体の左右側面の上下二か所に凹溝からなる補強用ビードが形成されるとともに、上下中央部の左右側面に三本指の如き凸リブが形成され、下端に沿った位置に、ゴムヘラ用付属品収納部が形成されている。

(三) 原告容器Ⅲ

(1) 基本的構成態様

<2> が次のとおりであるほかは、原告容器Ⅰと同じ。

<2> 収納凹部は、幅対長さが約一対八・八である長尺な蒲鉾形の上下端面にトンネル形凸部を突出した形状(トンネル形凸部付き蒲鉾形)に形成され、

(2) 具体的構成態様

<7> 原告容器Ⅰと同じ。

<8> 容器本体の左右側面の上下二か所に凹溝からなる補強用ビードが形成されるとともに、上下中央部の左右側面に三本指の如き凸リブが形成され、下端から上下長さの約一六分の一上方に寄った位置に、ゴムヘラ用付属品収納部が形成されている。

(四) 原告容器Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ

原告容器Ⅳ、Ⅴ、Ⅵの各意匠は、具体的構成態様において次の<9>が加わるほかは、基本的構成態様についても、具体的構成態様についても、それぞれ原告容器Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの各意匠と同じである。

<9> 収納凹部のトンネル形凸部内には、筒端内面嵌合具(収納保持具)が取り付けられており、筒端内面嵌合具は、プラスチック製の薄板を折り曲げて、一方の端片は、トンネル形凸部の内周に適合する外周形状を有し、その中央部であって、円筒状の内容物の外周がトンネル形凸部の内面に当接しない位置に、円筒状の内容物の端面内部に適合する截頭円錐形の嵌合凸部が形成され、他方の端片は、台紙に沿わせている。

3 原告各容器の意匠を本件登録意匠と対比すると、以下のとおり、これに類似するものではない。

(一) まず、本件登録意匠に係る物品は「包装用容器」であり、その性質上、基本的な形状は、内部に収納する物品によって大きく制約を受ける。本件意匠公報の説明欄にも、「自動車用ウインドウフィルムなどの筒状の内容物を収納し」とあるように、筒状の内容物、特に自動車用ウインドウフィルムという紙製の中筒に薄手のプラスチックフイルムを巻回した筒状物の物品を収納する容器は、このウインドウフィルムを貼る車両(軽自動車用・普通乗用車用・大型乗用車用など)によって、その規格・寸法などが各メーカーによりほとんど似たり寄ったりのものとなる。例えば、甲第一三号証の1~8掲載の各社製品を見れば、このことは一目瞭然である。

次に、本件登録意匠の出願時点での被告を含む他社の同種容器の形態、即ち公知意匠・周知意匠を参酌すると、本件登録意匠の前記基本的構成態様<1>は、既に各社が採用する一般的にありふれた周知の形状であって(甲一三の1~7)、その部分は意匠の創作部分ないし特徴ではない。

基本的構成態様<3>及び<5>も、かかる形態の容器は多数市場に出回っている(甲一三の1~8。被告の旧タイプ商品も補強用ビードと付属品収納部を有するものである)から、意匠の要部とは言えない。

あえて本件登録意匠の構成態様に特徴があるとすれば、基本的構成態様<2><6>と具体的構成態様<7><8>であるが、原告各容器は、基本的構成態様<6>は有しないし、具体的構成態様<7>についても、原告各容器における低い畝部とトンネル形凸部からなる形状は本件登録意匠における極浅の凹溝と全く異なる形態となっており、具体的構成態様<8>の付属品収納部の位置・形状も全く相違している。基本的構成態様<2>の蒲鉾形の形状についても、他の構成態様と一体となった上で理解されるべきであり、単に長尺な蒲鉾形というだけでは、包装用容器としてはごくありふれた形態にすぎず、到底、意匠の創作ある特徴部分であるとはいえない。

更に、原告容器Ⅱ、Ⅴは、収納凹部の幅対長さが約一対二・五となっており、前記他の構成態様である上下端部の畝部とトンネル形凸部からなる形状や付属品収納部の位置・形状、容器本体左右側面の補強用ビードなどが、外観上強調された形態となっている。

(二) そもそも、本件登録意匠は、その願書(本件意匠公報)の意匠の「説明」の欄の記載から、「保護カバーと位置決め部材と台紙からなる包装用容器」であることが明らかであるところ、この位置決め部材(保持部材)は、添付図面によれば、開口縁の上端部から約九・九分の五・〇の位置から約九・九分の七・八の位置にかけて、非常によく目立つ位置に配置されているのであるから、意匠の与える印象に及ぼす影響は非常に強いものがある。

これに対し、原告各容器は、かかる位置決め部材を備えておらず、また、このことに関連して、保護カバー(容器本体)の上下端部に位置決めのためのトンネル形凸部を備えているから、他の相違点を論ずるまでもなく、本件登録意匠に類似しないことが明らかである。

被告は、この位置決め部材について、包装用容器の機能の点からは付加的構成要素である旨主張するが、位置決め部材は意匠上、商品の正面の最も目立つ位置に配され、きわめて重要な構成要素であり(位置決め部材を除いた包装用容器について意匠登録出願をできたはずであるのに、あえてこれを含んだ包装用容器について出願している)、本当に機能的に重要でないのであれば実際の被告各容器に位置決め部材が用いられていることの説明がつかない。被告は、内容物を収納した場合にはその半分程度が内容物の下に隠れてしまうとも主張するが、本件登録意匠は、内容物を収納する以前の包装用容器にかかる意匠なのであるから、右主張は意匠の類否判断とは無関係のことである。

五  争点2(二)(本件登録意匠は、出願前公知の意匠であり、その意匠登録は無効事由があるか)について

【原告の主張】

仮に原告各容器の意匠が本件登録意匠に類似するとしても、前記二争点1(二)【原告の主張】と同じ理由により、本件登録意匠は、その出願日である平成六年二月二八日より前に日本国内において公然知られた意匠であり、日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠であって、原告は公知の意匠を実施しているにすぎないから、本件意匠権を侵害するものではなく、あるいは、その意匠登録には意匠法四八条一項一号、三条一項一号・二号の無効事由のあることが明らかであるから、かかる明白な無効事由のある本件意匠権に基づき原告各容器の製造販売等の差止め等を求めることは、権利の濫用に当たり許されないというべきである。

【被告の主張】

本件登録意匠が出願前に公然知られた意匠でも、刊行物に記載された意匠でもないことは、前記二争点1(二)【被告の主張】のとおりである。

六  争点3(原告各商品の形態は、被告各商品の形態を模倣したものであるか)について

【被告の主張】

原告商品Ⅰ・Ⅳ、Ⅱ・Ⅴ、Ⅲ・Ⅵの形態は、それぞれ被告商品Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの形態を模倣したものである。

1 被告各商品の形態は、それぞれ次の(1)の基本的形態及び(2)の具体的形態のとおりである。

(一) 被告商品Ⅰ

(1) 基本的形態

<1> 全長五〇〇mmサイズの筒状に巻かれた自動車用ウインドウフィルムが、長手方向全長にわたって外形を蒲鉾形とした透明な容器本体の中央に沿って収納され、容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台板が、容器本体の開口縁に設けたフランジを内側に折り返した間に挟み込まれてなり、

<2> 容器本体は、長手方向全長にわたって容器本体の側部内面と自動車用ウインドウフィルムとの間に空間が形成され、

<3> 容器本体の上下端部外面に、自動車用ウインドウフィルムの上下端部を保持する輪郭を有して台板に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードが形成され、

<4> 容器本体の上部及び下部に、それぞれ容器本体の左右側面から上面にわたる左右一対の凹ビードが形成されており、上下の左右一対の凹ビードの間には、容器本体の内面に沿って商品説明用のチラシが配され、

<5> 容器本体の上部の上面には左右一対の突起が形成され、容器本体の下部の上面には付属品(ゴムヘラ)収納部が形成され、付属品が収納されている。

(2) 具体的形態

<6> 容器本体の上端部外面は、大略U字状の凹ビードの外側の端面と内側の端面とが略同一平面上にあり、容器本体の下端部外面には、大略U字状の凹ビードの両脚部と台板との間で外方に突出する凸ビードが形成され、

<7> 前記容器本体の上部側の左右一対の凹ビードは、前記左右一対の突起よりも長手方向中央寄りに位置し、下部側の左右一対の凹ビードは、前記付属品収納部よりも長手方向中央寄りに位置し、

<8> 容器本体に収納した自動車用ウインドウフィルムと台板との間の空間に、断面が大略U字形で容器本体の長手方向に延びる透明の保護部材が収納され内容物を保持しているが、該保護部材は前記チラシに隠れて外部からは見えない。

(二) 被告商品Ⅱ

(1) 基本的形態

<1>及び<4>が次のとおりであるほかは、被告商品Ⅰと同じ。

<1> 全長二〇〇mmサイズの筒状に巻かれた自動車用ウインドウフィルムが、長手方向全長にわたって外形を蒲鉾形とした透明な容器本体の中央に沿って収納され、容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台板が、容器本体の開口縁に設けたフランジを内側に折り返した間に挟み込まれてなり、

<4> 容器本体の上部に、容器本体の左右側面から上面にわたる左右一対の凹ビードが形成されており、該左右一対の凹ビードと容器本体の下端部との間には、容器本体の内面に沿って商品説明用のチラシが配され、

(2) 具体的形態

被告商品Ⅰの<6>及び<8>と同じ(<7>を除く)。

(三) 被告容器Ⅲ

(1) 基本的形態

<1>が次のとおりであるほかは、被告商品Ⅰと同じ。

<1> 全長六〇〇mmサイズの筒状に巻かれた自動車用ウインドウフィルムが、長手方向全長にわたって外形を蒲鉾形とした透明な容器本体の中央に沿って収納され、容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台板が、容器本体の開口縁に設けたフランジを内側に折り返した間に挟み込まれてなり、

(2) 具体的形態

被告商品Ⅰと同じ。

2 原告各商品の形態は、それぞれ次の(1)の基本的形態及び(2)の具体的形態のとおりである。

(一) 原告商品Ⅰ

(1) 基本的形態

被告商品Ⅰと同じ。

(2) 具体的形態

<6> 容器本体の上端部及び下端部外面は、大略U字状の凹ビードの外側の端面よりも内側の端面が外方へ突出しており、

<7> 前記容器本体の上部側の左右一対の凹ビードは、前記左右一対の突起よりも上端部寄りに位置し、下部側の左右一対の凹ビードは、前記付属品収納部の略中央に位置し、

<8> 容器本体の略中央部の左右側面には、左右対称に各三個の凸ビードが形成されている。

(二) 原告商品Ⅱ

(1) 基本的形態

<1>及び<4>が次のとおりであるほかは、被告商品Ⅰと同じ。

<1> 全長二〇〇mmサイズの筒状に巻かれた自動車用ウインドウフィルムが、長手方向全長にわたって外形を蒲鉾形とした透明な容器本体の中央に沿って収納され、容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台板が、容器本体の開口縁に設けたフランジを内側に折り返した間に挟み込まれてなり、

<4> 容器本体の下部に、容器本体の左右側面から上面にわたる左右一対の凹ビードが形成されており、該左右一対の凹ビードと容器本体の上端部との間には、容器本体の内面に沿って商品説明用のチラシが配され、

(2) 具体的形態

<6> 原告商品Ⅰと同じ。

<7> 前記容器本体の下部に形成された左右一対の凹ビードは、前記付属品収納部の略中央に位置する。

(三)原告商品Ⅲ

(1) 基本的形態

<1>が次のとおりであるほかは、被告商品Ⅰと同じ。

<1> 全長六〇〇mmサイズの筒状に巻かれた自動車用ウインドウフィルムが、長手方向全長にわたって外形を蒲鉾形とした透明な容器本体の中央に沿って収納され、容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台板が、容器本体の開口縁に設けたフランジを内側に折り返した間に挟み込まれてなり、

(2) 具体的形態

<8>が次のとおりであるほかは、原告商品Ⅰと同じ。

<8> 容器本体の略中央部の左右側面には、左右対称に各五個の凹ビードが形成されている。

(四) 原告商品Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ

次の具体的形態<9>を加えるほか、それぞれ原告商品Ⅰ、Ⅱ、Ⅲと同じ。

<9> 容器本体に収納された内容物の上下端部には、それぞれ透明のプラスチック薄板を略L字形に折り曲げて一方の端片には筒状の内容物の内部に嵌合する凸部を設けた収納保持具が、該一方の端片の該凸部を内容物の内部に嵌合させ、他方の端片を内容物と台紙との間に沿わせて取り付けられている。

3(一) [原告商品Ⅰの形態を被告商品Ⅰの形態と、原告商品Ⅲの形態を被告商品Ⅲの形態と対比すると、それぞれ自動車用ウインドウフィルムのサイズが同一であり、容器本体のサイズも略同一であって、商品の基本的形態が一致している。

原告商品Ⅱの形態を被告商品Ⅱの形態と対比すると、<4>の形態に関して、容器本体の左右側面から上面にわたる左右一対の凹ビードの形成された位置が、被告商品Ⅱでは容器本体の上部であるのに対して、原告商品Ⅱでは容器本体の下部である点を除き、基本的形態が一致している。

原告商品Ⅰ、Ⅱ、Ⅲと被告商品Ⅰ、Ⅱ、Ⅲとのこれら一致する形態は、商品全体の形態に関するものであるとともに、この種の商品には従来見られない、被告商品Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの斬新な形態である一方、前記具体的形態に見られる相違点は、商品全体から見れば微々たるものにすぎない。

したがって、原告商品Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの形態は、それぞれ被告商品Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの形態と酷似するとの印象を強く与えるものであり、実質的に同一である。

また、原告商品Ⅳ、Ⅴ、Ⅵは、それぞれ原告商品Ⅰ、Ⅱ、Ⅲに前記の収納保持具を取り付けた点で異なるのみであるところ、これらの収納保持具は透明であって目立たないものであるから、原告商品Ⅳ、Ⅴ、Ⅵの形態も、それぞれ被告商品Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの形態と全体として酷似するとの印象を強く与えるものであり、実質的に同一であるといえる。

(二) 被告各商品が市場に出たのは平成六年三月であるが、当業界において好評を博したものであり、そのことは当然原告も知っているはずである。そして、原告は、翌平成七年三月から原告各容器の販売を開始した。原告各商品の形態は模倣なくしてはありえないという程度に被告各商品の形態に類似しているから、原告が模倣の意図をもって被告各商品の形態を模倣したことは明らかである。

(三) 原告は、自動車用ウインドウフィルムを収納する容器の規格・寸法は、同フィルムを貼る車両によって不可避的に類似する形態を採用せざるをえず、長尺の蒲鉾形になるということも、それ自体は特段の努力を要せず容易に創作しうる没個性的な形態にすぎない旨主張するが、ウインドウフィルムを収納する包装用容器にあっては、容器本体の全長及び全幅をフィルムが入るだけの大きさ、形状に成形すればよいのであって、被告各商品のように、容器本体の外形を蒲鉾形に形成し、長手方向ほぼ全長にわたって収納した内容物と容器本体の側部内面との間に空間が形成されるようにする必要はない。そして、このような形態を有する包装用容器は、従来の同種の包装用容器にはなかったのであるから、かかる形態は、被告各商品の包装用容器の斬新で創作性を有する特徴的な形態である。

また、原告は、不正競争防止法二条一項三号にいう「商品の形態」には商品の模様を含むとされており、容器本体に入れたチラシや台紙のデザインの相違も無視すべきではない旨主張するが、同号にいう「商品の形態」は「商品の包装用容器の形態」を含むものであり、本件では原告各商品の「包装用容器」の形態が被告各商品の「包装用容器」の形態を模倣したかどうかが問題となっているのであるから、チラシや台紙のデザインの相違は問題とならない。本号は混同防止規定ではなく、創作保護規定なのである。

【原告の主張】

1 被告各商品の形態及び原告各商品の形態についての被告の主張は争う。

被告各商品の形態は、前記四【原告の主張】1の本件登録意匠の構成態様のとおりであり、原告各商品の形態は、同じく2(一)ないし(四)のとおりであって、同3と同じ理由により、原告各商品の形態は、被告各商品の形態と実質的に同一ではない。

2 形態模倣に即して補充すると、次のとおりである。

(一) 不正競争防止法二条一項三号は、当該他人の商品と同種の商品が通常有する形態を除くとしているところ、自動車用ウインドウフィルムを収納する容器の規格、寸法は、同フィルムを貼る車両によって不可避的に類似する形態を採用せざるをえず、また、長尺の蒲鉾形になるということも、それ自体は特段の努力を要せず容易に創作しうる没個性的な形態にすぎないから、フイルムのサイズが同一であるとか、容器本体のサイズが略同一などという点は、形態模倣における類似判断としては適当でない。

(二) また、同号にいう「商品の形態」には商品の模様を含むとされており、透明なブリスター容器内のプラスチック製の容器本体に沿って全面にわたってめぐらされている商品デザイン及び長方形状の台板上のデザインは、重要な意味を有しており、これらは、原告各商品と被告各商品との間で全く異なっていることを無視すべきではない。

七  争点4(右争点1ないし3についての判断の結果、原告が損害賠償義務を負う場合に、被告に対し賠償すべき損害の額)について

【被告の主張】

被告は、原告の本件実用新案権の侵害、本件意匠権の侵害及び不正競争防止法二条一項三号の不正競争により、次の損害を被った。

1 本件実用新案権の侵害による損害 一〇五一万三〇〇〇円

(一) 実施料相当額の損害 三九五万円

原告は前記のとおり平成七年三月頃から原告各容器に自動車用ウインドウフィルムを収納して原告各商品の販売を開始したものの、被告は、得意先関係に与える影響等を考慮して原告各容器が本件実用新案権の侵害品である旨の事実を警告することを躊躇していたが、ただ、同年三月、株式会社ドライバースタンド(東京都府中市)の社長に対してのみ右事実を知らせたところ、原告は、右株式会社ドライバースタンドに対してだけは、原告各容器を使用しないで旧タイプの容器に収納したウインドウフィルムの販売を継続したから、被告は、原告が本件実用新案権侵害の事実に気づいたことを知った。しかし、原告は、その後も原告各容器の使用を継続した。

原告のウインドウフィルムは、右株式会社ドライバースタンドに販売する分以外はすべて原告各容器に収納して販売されるものであるところ、その売上総額は、一年間で約金七九〇〇万円である(乙四)。被告は、原告が本件実用新案権侵害の事実を知り、又は知りうべきであった平成七年三月から反訴状送達の日である平成八年四月二二日までの問の少なくとも一年間分の、本件考案の実施に対し通常受けるべき金銭の額である右売上総額の五%相当の三九五万円の損害を被った(実用新案法二九条二項)。

(二) 混同防止のために出捐した費用 六五六万三〇〇〇円

被告各容器は、従来にない極めて斬新な形態で他社容器との差別化力の強い容器であったところ、その「そっくり品」である原告各容器の出現により、消費者による商品選択の誤認の被害が発生した。そこで、被告は、被告のウィンドウフィルム(被告各商品)の販売店における陳列棚に特殊金具(ポップ立て)を掛け、消費者による誤認の防止を図った(乙五)。被告のウインドウフィルムの販売店は全国で約八〇〇店舗、陳列棚は約二〇〇〇棚あるが、現在のところ約一〇〇店舗の約二三〇棚につきこれを実施したため、被告は、その費用として六五六万三〇〇〇円の支払を余儀なくされた(乙六の1~7)。

2 本件意匠権の侵害による損害 八二〇万八八三三円

(一) 実施料相当額の損害 一六四万五八三三円

本件登録意匠につき意匠登録がされた平成七年一一月二四日から反訴状送達の日である平成八年四月二二日までの間の五か月間分の、本件登録意匠の実施に対し通常受けるべき金銭の額である売上額三二九一万六六六七円(前記売上総額七九〇〇万円の一二分の五)の五%相当の一六四万五八三三円の損害を被った(意匠法三九条二項)。

(二) 混同防止のために出捐した費用 六五六万三〇〇〇円

右1(二)と同じ。

3 不正競争防止法二条一項三号の不正競争による損害

一〇五一万三〇〇〇円

(一) 使用料相当額の損害 三九五万円

被告は、原告各商品の販売により営業上の利益を侵害された。その平成七年三月から反訴状送達の日である平成八年四月二二日までの間の少なくとも一年間分の、被告各商品の形態の使用に対し通常受けるべき金銭の額に相当する損害の額は、原告各商品の前記売上総額七九〇〇万円の五%に相当する三九五万円である。

(二) 混同防止のために出捐した費用 六五六万三〇〇〇円

前記1(二)と同じ。

【原告の主張】

被告の主張は、争う。

第四  争点に対する判断

一  争点1(一)(原告各容器は、本件考案の技術的範囲に属するか)について

1  本件考案の実用新案登録請求の範囲の記載は、前記第二の一1説示のとおり、次の構成要件に分説するのが相当である。

A 開口縁にフランジを有する蒲鉾形の外形を備えるプラスチックのブリスター容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて該容器本体の開口部を閉蓋する台板とからなり、

B 少なくとも容器本体の長手方向中央に沿って筒状の内容物を収納し、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されるブリスター包装容器であって、

C 容器本体に収納された内容物の上下端部が臨む容器本体の上下端部外面側に、

Ⅰ 内容物の上下端部をそれぞれ保持する輪郭を有して

Ⅱ 台紙に向かって垂直方向に延びる

Ⅲ 大略U字状の

凹ビードを設けたこと

を特徴とするブリスター包装容器。

これに対し、原告各容器の構成を、別紙物件目録ⅠないしⅥの記載により、右本件考案の構成要件に対応させて分説すると、次のとおりである。

a 開口縁にフランジを有する横断面が略半月形の収納凹部を備えたプラスチック製のブリスター容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて該容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台板とからなり、

b 収納凹部の長手方向中央に筒状の内容物を収納でき、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されうるブリスター包装容器であって、

c 容器本体に収納された内容物の上下端部が臨む容器本体の上下端部外面側において、収納凹部は、長手方向上下端面にトンネル形の凸部と幅方向両側に溝部を介して長手方向高さがトンネル形の凸部の約四分の一の畝部を形成しており、

ⅰ トンネル形の凸部の内面は、表面側約半分において筒状内容物の外面とほぼ一致する形状を有している。

ⅱ トンネル形の凸部と畝部との間の溝部は、台紙に向かうに従いわずかに長手方向外向きに傾斜していて、収納凹部の開口側に向けてわずかに拡開状に形成されている。

ⅲ 右溝部の幅は、容器本体の表面側に向かうに従って拡開し、表面側頂部において左右の溝部が連続している。

しかして、原告各容器の構成bが本件考案の構成要件Bを充足することは明らかであるが(原告も争っていない)、原告各容器が、本件考案の構成要件Aにいう「蒲鉾形の外形」を備えるプラスチックのブリスター容器本体及び構成要件Cにいう「凹ビード」を備えているか否かについて争いがあるので、以下、順次検討する。

2(一)  本件明細書には、本件考案にいうプラスチックのブリスター容器本体が備える「蒲鉾形の外形」を直接定義づけるような記載はない。

「蒲鉾形」とは、乙第九号証(広辞苑)によれば、「板付蒲鉾のように中高で、断面が半月形をなすもの」をいうとされ、特にその端面が平面であるとの説明はされていない。

そして、本件明細書(甲三)の考案の詳細な説明の欄には、次の記載がある。

(1) 「従来の技術」の項

「従来、自動車のウインドウに貼着するフィルムなどの筒状の内容物を収納するブリスター包装容器としては、内容物の形状にほぼ合わせた輪郭のふくらみを透明なプラスチックシートにより成形して容器本体とし、容器本体に内容物を収納した後、容器本体の開口縁のフランジ部分を折り返して台板を挟み込んで包装するものが知られている。

しかしながら、このようなブリスター包装容器においては、容器本体と内容物との間の空間、距離がほとんどないため、外部からの衝撃が内容物にまで衝撃が及び易いという欠点がある。特に、内容物が自動車のウインドウフィルムのように紙製の中筒に薄手のプラスチックフィルムを巻回した筒状体の物品である場合には、特に、筒状体の上下端部に臨む容器本体の上下端部が外部からの衝撃により凹んで筒状体の両端が傷つくと、商品価値を損なうおそれがあった。

一方、容器本体と内容物との間の空間を大きくすると、耐圧強度が弱くなり、外部からの衝撃により容器本体が凹み易く、内容物が外圧により凹み易い。また、容器本体と内容物との間の空間が大きいと、内容物の位置決めができず、包装容器内で内容物が動いた際に内壁に当たって傷つき易くなる。

また、ブリスター包装容器を積み重ねて輸送や保管をする場合には、容器本体同士、又は容器本体と台紙とが擦れ合って容器本体が傷つき易くなり、容器本体の透明性が損なわれる。このため、互いに積み重ねた際に傷つきにくい包装容器が望まれる。」【0002】~【0005】

(2) 「考案が解決しようとする課題」の項

「本考案は、ブリスター包装容器の改良を目的とし、より具体的には、外部からの衝撃が内容物にまで及びにくく、容器本体の耐圧強度が高く、内容物を所定の位置に位置決めできるブリスター包装容器を提供することを目的とする。

更に、本考案は、積み重ねた際に容器本体が傷つきにくいブリスター包装容器を提供することを目的とする。」【0006】【0007】

(3) 「課題を解決するための手段」

実用新案登録請求の範囲請求項1の記載とほぼ同文【0008】

(4) 「作用」の項

「本考案の第1の態様に係るブリスター包装容器では、内容物は容器本体の長手方向中央に沿って収納され、容器本体の上下端部に設けられた大略U字状の凹ビードに内容物の上下端部が保持され、内容物は容器本体の長手方向及び両側方向に位置決めされ、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成される。そして、容器本体の開口縁のフランジを内側に折り返した間に台板が挟み込まれて該容器本体の開口部が閉蓋され、内容物は容器本体と台紙との間で位置決めされる。容器本体の側部内面と内容物との間に形成された空間は、容器本体の両側からの外的衝撃が内容物まで及びにくくしている。そして、容器本体の上下端部に設けた大略U字状の凹ビードは台紙に向かって垂直方向に延びており、容器本体の上下端部における容器本体上面側からの外的衝撃に対する耐圧強度を高めている。」【0017】

(5) 「実施例」の項

「本実施例のブリスター包装容器1によれば、内容物4は容器本体2の長手方向に沿って収納され、容器本体2の上端部8に設けられた大略U字状の凹ビード11の内側の輪郭に沿って内容物4の上端部10が保持される。そして、凹ビード11が台紙3に向かって垂直方向に延びており、容器本体2の上端部8への容器本体2上面からの外的衝撃に対する耐圧強度を高めている。」【0035】

(6) 「考案の効果」の項

「上記の説明から明らかなように、本考案の第1の態様に係るブリスター包装容器によれば、内容物の上下端部を夫夫保持する輪郭を有して台紙に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードを設けたことにより、包装された内容物がその上下端部において該凹ビードによって位置決めされ、更に、大略U字状の凹ビードが台紙に向かって垂直方向に延びていることにより、容器本体の上下端部への容器本体上面からの外的衝撃に対する耐圧強度が高められる。そして、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されることにより、容器本体の両側からの外的衝撃が内容物まで及びにくくなり、内容物の外的衝撃による損傷を防止することができる。」【0047】

(二)  本件明細書の考案の詳細な説明の欄の右記載によれば、自動車用ウインドウフィルム等の筒状の内容物を収納する従来のブリスター包装容器は、開口縁にフランジを有し、内容物の形状にほぼ合わせた輪郭のふくらみを透明なプラスチックシートにより成形して容器本体とし、容器本体に内容物を収納した後に開口縁のフランジ部分を折り返した間に台板を挟み込んで包装するものであったところ、このようなブリスター包装容器においては、容器本体と内容物との間の空間、距離がほとんどないため、外部からの衝撃が内容物にまで及び易く、特に内容物が自動車用ウインドウフィルムのように紙製の中筒に薄手のプラスチックフィルムを巻回した筒状体の物品である場合には、筒状体の上下端部に臨む容器本体の上下端部が外部からの衝撃により凹んで筒状体の両端が傷つくと商品価値を損なうおそれがあるという欠点があり、一方、容器本体と内容物との間の空間を大きくすると、耐圧強度が弱くなり、外部からの衝撃により容器本体が凹み易いので内容物も凹み易いとともに、内容物の位置決めができず、包装容器内で内容物が動いた際に内壁に当たって傷つき易くなるという問題点があったため、本件考案は、容器本体の外形を「蒲鉾形」として容器本体の長手方向中央に沿って筒状の内容物を収納し、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されるようにすることにより、容器本体の両側からの外的衝撃が内容物にまで及びにくくして前記欠点を解消する一方、内容物の上下端部をそれぞれ保持する輪郭を有する大略U字状の凹ビードを設けることにより、内容物をその上下端部において長手方向及び両側方向に位置決めすることができるようにするとともに、大略U字状の凹ビードが台紙に向かって垂直方向に延びていることにより、容器本体の上下端部への容器本体上面からの外的衝撃に対する耐圧強度を高めて前記問題点を克服したものであると認められる。

このように、本件考案は、容器本体の長手方向中央に沿って筒状の内容物を収納した際に、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されるようにするために、従来の「内容物の形状にほぼ合わせた輪郭のふくらみ」を成形して容器本体としたものに代えて、容器本体を「蒲鉾形」としたものであるから、断面形状が前記の「板付蒲鉾のように中高で、断面が半月形をなすもの」であれば足り、その端面が平面であることを要しないといわなければならない。

本件明細書の図面には、容器本体の上下端部の凹ビードを挟む中央と両側の端面が同一平面上にあるもののみが示されているが、これは本件考案の一実施例を示すものにすぎず、この形状に限定されるとする根拠はない。

原告各容器は、前記構成aのとおり横断面が略半月形の収納凹部を備えたものであるから、本件考案の構成要件Aにいう「蒲鉾形の外形」を備えているということができる。

次に、本件考案にいう「凹ビード」の「ビード」とは、甲第八号証の1・2(JIS工業用語大辞典〔第二版〕)によれば、「薄板に剛性増加の目的で付けられた型押しによる溝」をいうものとされ、本件明細書の考案の詳細な説明の欄の前記記載及び「本実施例においては、容器本体2の上端部8に大略U字状の凹ビード11を設け、容器本体2の下端部9には大略U字状の凹ビード13と、該凹ビード13の両脚部13a、13b北連なる一対の凸ビード14a、14bとを設けるようにしたが、これに限らず、容器本体2の上下端部8、9正面への外的衝撃が内容物4の上下端部10、12にまで及びにくくする必要が特にない場合には、容器本体2の上下端部8、9の両方に大略U字状の凹ビード11を設けるようにしてもよい。逆の場合には、容器本体2の上下端部8、9の両方に、大略U字状の凹ビード13と、該凹ビード13の両脚部13a、13bに連なる一対の凸ビード14a、14bとを設けるようにしてもよい。」【0043】との記載並びに考案は物品の形状、構造又は組合せを対象とするものであることを併せ考えれば、本件考案にいう「凹ビード」とは、特に「型押し」という手段によるものであるか否かにかかわりなく、内容物の上下端部をそれぞれ保持する輪郭を有し、内容物をその上下端部において長手方向及び両側方向に位置決めすることができるとともに、容器本体の上下端部への容器本体上面からの外的衝撃に対する耐圧強度を高める目的で、収納された内容物の上下端部が臨む容器本体の上下端部外面側から内面側に向けて設けた突入部(溝)をいうものと認められ、逆に上下端部内面側から外面側に向けて設けた突出部を凸ビードと称しているものと認められる。

しかして、原告各容器の構成cは、「容器本体に収納された内容物の上下端部が臨む容器本体の上下端部外面側において、収納凹部は、長手方向上下端面にトンネル形の凸部と幅方向両側に溝部を介して長手方向高さがトンネル形の凸部の約四分の一の畝部を形成して」いるというのであって、トンネル形の凸部と畝部との間の溝部は、まさに本件考案にいう「内容物の上下端部をそれぞれ保持する輪郭を有し、内容物をその上下端部において長手方向及び両側方向に位置決めすることができるとともに、容器本体の上下端部への容器本体上面からの外的衝撃に対する耐圧強度を高める目的で、収納された内容物の上下端部が臨む容器本体の上下端部外面側から内面側に向けて設けた突入部(溝)」に該当するから、原告各容器の構成cは、本件考案の構成要件Cの「容器本体に収納された内容物の上下端部が臨む容器本体の上下端部外面側に」「凹ビードを設けたこと」を充足するものといわなければならない。

(三)  原告は、原告各容器は、本件考案にいう「凹ビード」を備えていないとし、本件考案は、蒲鉾形の外形を備える容器本体の上下端部外面に凹ビードを設けたものであり、「蒲鉾形」とは当然にその上下端面が平面であるところ、その平面である上下端面に「凹ビード」を設けたというのであるから、内容物の上下端部をそれぞれ保持する輪郭を有する上下端部外面と溝を形成することによって外側に位置する上下端部外面は、同一の平面上にあることが当然の帰結となるのに対し、原告各容器は、容器本体の上下端面の中央にトンネル形の凸部を形成し、これとは別に、ビード本来の目的である剛性増加の目的でその両側に右トンネル形の凸部の約四分の一の高さの畝部を形成しているものにすぎず、この形状は、容器本体の上下端部外面側に凹ビードを設けることによって形成されたものではなく、外面側から型押しによって溝を形成したものでもないと主張する。

しかし、本件考案にいう「蒲鉾形の外形」はその端面が平面であることを要しないことは前記(二)説示のとおりであり、原告各容器において、原告主張のように、容器本体の上下端面の中央にトンネル形の凸部を形成し、ビード本来の目的である剛性増加の目的でその両側に右トンネル形の凸部の約四分の一の高さの畝部を形成しているというのは、いずれも内面側から外面側に突出部を設けたという観点からの表現であるが、観点を変えれば、畝部の外面側から内面側に突入部(溝)を設けることによって形成されたものということができ、その際、特に「型押し」という手段によるものであるか否かは前示のとおり関係がないから、原告の主張は採用できない。

(四)  原告は、また、本件考案の目的ないし効果の点からいって、本件考案にいう「容器本体の上下端部外面側に設けられた大略U字状の凹ビード」は、垂直な上下端面に形成された浅い凹ビードでなくてはならず、そうでなければ、容器本体上面からの外的衝撃に対する耐圧強度は高まらないのであり、仮に内容物10、12の接触面が、容器本体の上下端部8、9より突出している場合には、内容物10、12の接触面の外面側には「凹ビード」が存在しないことになり、耐圧強度が得られないことによって、内容物10、12の上下端部に直接、衝撃が及ぶことになり、本件考案の目的に反することになるのに対し、原告各容器では、位置決め用としてトンネル形凸部を備えているので、このトンネル形凸部は、当然容器本体からかなり突出することになり、したがって、トンネル形凸部の先端には耐圧強度が得られず、トンネル形凸部の先端が凹んで、内容物10、12の上下端部に衝撃が直接加わることになる旨主張する。

しかし、本件考案にいう「凹ビード」は、前記のとおり、位置決めのほか、容器本体の上下端部への容器本体上面からの外的衝撃に対する耐圧強度を高める目的で、収納された内容物の上下端部が臨む容器本体の上下端部外面側から内面側に向けて設けた突入部(溝)であり、その目的のとおりの効果を奏するものと認められるところ、原告各容器においても、トンネル形の凸部と畝部との間に溝部が形成されている以上、程度の差はあれ、容器本体の上下端部への容器本体上面からの外的衝撃に対する耐圧強度を高める効果があるはずであるから(そうでなければ、トンネル形凸部の両側の端面は、溝部あるいは畝部と均一の平面にしてよいはずであり、原告各容器のように溝部を介して畝部を設けるという、複雑な構成を採用する意味がない)、右主張も採用できない。

原告は、この点に関して、原告各容器では、筒状内容物(自動車用ウインドウフィルム)を収納するに際しては、トンネル形凸部を目標にすることによって、筒状内容物を確実かつ簡易に位置決めして最適な位置に収納することが可能となるのに対し、本件考案にかかる包装容器では、筒状内容物を収納する作業が非常に大変である旨主張するが、本件考案にいう「凹ビード」は、前記のとおり筒状内容物の位置決めをするものでもあり、その深さに特に限定があるものではないから、原告主張のような収納作業の難易の差が仮にあるとしても、それは程度の差にすぎず、原告各容器が本件考案にいう「凹ビード」を備えていないとする理由になるものではない。

3  本件考案の構成要件CⅠは、凹ビードが「内容物の上下端部をそれぞれ保持する輪郭を有して」いることであり、原告各容器の構成cⅰは、「トンネル形の凸部の内面は、表面側約半分において筒状内容物の外面とほぼ「致する形状を有している」というものであるところ、筒状内容物の上下端部が臨むトンネル形の凸部の内面が表面側約半分において筒状内容物の外面とほぼ一致する形状を有しているということは、これを容器本体の内面側から見れば前記の溝部(凹ビード)の内面が内容物の上下端部をそれぞれ保持する輪郭を有していることにほかならないから、原告各容器の構成cⅰは本件考案の構成要件CⅠを充足するものというべきである。

原告は、「保持」とは動かないようにおさえ持つことを意味するところ、原告各容器では、内容物がトンネル形の凸部内で可動な状態にあるから、内容物の上下端部はトンネル形の凸部内面に保持されていないと主張するが、保持とは、「たもちつづけること。手放さずに持っていること」(広辞苑)をいうのであって、原告主張のように動かないようにおさえ持つというような狭い意味ではないから、たとえ内容物とトンネル形の凸部の内面との間にわずかな隙間があるとしても、内容物がトンネル形の凸部の内面(溝部の内面)に保持されていることに変わりはない。

4  本件考案の構成要件CⅡは、凹ビードが「台紙に向かって垂直方向に延びる」ことであり、原告各容器の構成cⅱは、「トンネル形の凸部と畝部との間の溝部は、台紙に向かうに従いわずかに長手方向に外向きに傾斜していて、収納凹部の開口側に向けてわずかに拡開状に形成されている」というものであるところ、原告は、原告各容器は、台紙に垂直方向に溝を設けるのではなく、台紙に向かって一〇分の一の傾斜角が付けられているから、「台紙に向かって垂直方向に延びる」凹ビードを備えていない旨主張する。

しかし、本件考案において、構成要件CⅡのように凹ビードが「台紙に向かって垂直方向に延びる」ようになっているのは、本件明細書の考案の詳細な説明の欄に前記のとおり「容器本体の上下端部に設けた大略U字状の凹ビードは台紙に向かって垂直方向に延びており、容器本体の上下端部における容器本体上面側からの外的衝撃に対する耐圧強度を高めている。」【0017】、「凹ビード11が台紙3に向かって垂直方向に延びており、容器本体2の上端部8への容器本体2上面からの外的衝撃に対する耐圧強度を高めている。」【0035】、「大略U字状の凹ビードが台紙に向かって垂直方向に延びていることにより、容器本体の上下端部への容器本体上面からの外的衝撃に対する耐圧強度が高められる。」【0047】と記載されているように、容器本体の上下端部における容器本体上面側からの外的衝撃に対する耐圧強度を高めるためであり、原告各容器の構成cⅱのように、溝部が台紙に対して正確に垂直ではなく、「台紙に向かうに従いわずかに長手方向に外向きに傾斜していて、収納凹部の開口側に向けてわずかに拡開状に形成されている」もの、すなわちほぼ垂直のものであっても、右のような耐圧強度を高める効果を奏することは明らかであり、本件考案の対象とする物品がブリスター包装容器であって、精密機械におけるような精度が要求されるものではないことも併せ考えれば、原告各容器の構成cⅱは、本件考案の構成要件CⅡを充足するというべきである。

5  本件考案の構成要件CⅢは、凹ビードが「大略U字状」であることであり、原告各容器の構成cⅲは、「溝部の幅は、容器本体の表面側に向かうに従って拡開し、表面側頂部において左右の溝部が連続している」というものであるところ、原告は、原告各容器における溝部の形状は、容器本体の表面側に向かうに従って次第に拡開するように形成されているので、U字状を呈していない旨主張するが、溝部の幅が表面側に向かうに従ってしだいに拡開しているとはいえ、表面側頂部において左右の溝部が連続し、全体として大略U字状を呈していることは明らかである。本件明細書においても、本件考案の実施例を示す図面として、凹ビードが筒状の内容物の上下端部をそれぞれ保持する輪郭を有していることから、その溝の幅が表面側に向かうに従って拡開し、表面側頂部において左右の凹ビードが連続している形状が示されているところであり、原告各容器における溝部(凹ビード)の形状はこれと同一の形状ということができる。

6  以上のとおり、原告各容器の構成は、本件考案の構成要件をすべて充足するから、原告各容器は、本件考案の技術的範囲に属するものといわなければならない。

二  争点1(二)(本件考案は、出願前公知の考案であり、その実用新案登録には無効事由があるか)について

原告は、仮に原告各容器が本件考案の技術的範囲に属するとしても、本件考案は、その出願日である平成六年二月二八日より前に日本国内において公然知られた考案であり、日本国内において頒布された刊行物に記載された考案であって、原告は公知技術(自由技術)を実施しているにすぎないから、本件実用新案権を侵害するものではなく、あるいはその実用新案登録には実用新案法三七条一項二号、三条一項一号・三号の無効事由のあることが明らかであるから、かかる明白な無効事由のある本件実用新案権に基づき原告各容器の製造販売等の差止め等を求めることは、権利の濫用に当たり許されないと主張するので、以下検討する。

1  原告は、被告作成のカタログ「secret ZONE」(甲一五)に掲載された本件考案の実施品である被告各商品は、本件考案の出願日である平成六年二月二八日より前の同月一六日、一七日の両日、東京平和島の東京流通センター(TRC)第一展示場アールンAないしDホールにおいて開催された、中央自動車工業株式会社の取り扱う九四年春夏向けの自動車部品用品及びRVアンドオートレジャー商品の展示商談会「第二九回セントラルフェア」において、ブースNO.五五において出品されたから、本件考案は出願前に公然知られた考案である旨主張する。

被告が右展示商談会に参加してブースNO.五五において出展したこと自体は、被告も認めるところであるが、原告提出の甲第一六ないし第一九号証その他本件全証拠によるも、被告が右展示商談会において被告各商品ないし被告各容器を出品したとの事実は認められない。

原告は、被告が被告各商品の販売を始めたと主張する平成六年三月八日に先だって何らの商品紹介や宣伝活動も行っていなかったということは、商業活動上到底考えられない旨主張するが、的確な証拠がない以上、右出品の事実を認めることはできない。

2(一)  原告は、被告は平成六年一月早々より、本件考案の実施品である新タイプ容器(被告各容器)に収納した被告各商品に切り替えた上、カー用品業界の唯一の情報誌(発行部数は概ね一万三〇〇〇部)である株式会社自動車産業通信社発行の「AMネットワーク」平成六年二月号(同年一月二五日発行・甲一三の1~8)に、被告各商品の容器形態とともに製品符号を掲載して大々的に宣伝広告を行ったと主張する。

右「AMネットワーク」平成六年二月号(同年一月二五日発行・甲一三の1~8)には、本件考案の実施品として被告が提出している検乙第三号証の1・2に付された製品符号(AF-14、AF-74)と同一の製品符号を含む一覧表とともに商品たる自動車用ウインドウフィルムの写真が掲載され、また、弁論の全趣旨により本件考案の実施品と認められる検甲第四号証に付された製品符号(MX-211)と同一の製品符号を含む一覧表とともに商品たる自動車用ウインドウフィルムの写真が掲載されていることが認められるから、これらの写真の被写体は、本件考案の実施品である被告各容器に収納した商品(被告各商品)である蓋然性が高いといわなければならない。しかし、本件考案がその実用新案登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された考案であるというために、単に本件考案の実施品を撮影した写真が右のような刊行物に掲載されているというだけでは足りず、その写真及び刊行物中のその他の記載により本件考案の構成要件すべてが一体として示されており、これを読者が認識、把握できることが必要というべきところ、右各写真は、いずれもサイズの異なる六種類又は九種類の商品を右に傾けて横一列に並べて正面上から撮影したものであって、商品の一つ一つの写真は小さく、かつ、容器本体が透明であるため、少なくとも本件考案にいう「凹ビード」の構成を認識、把握することはできず、他に容器の構成に関する記載もないから、本件考案が右「AMネットワーク」平成六年二月号に記載されているということはできない。

原告は、右刊行物は、商品を宣伝推奨する目的に出たものであり、一般需要者はもちろん、当業者であれば容易に実施できる程度に商品の外観が明らかになっていると主張するが、右刊行物の写真は右のとおりであり、到底、本件考案が容易に実施できる程度に商品の外観が明らかになっているということはできない。

(二)  原告は、被告作成の前記カタログ「secret ZONE」(甲一五)は、その裏表紙に「掲載製品の価格には、消費税が含まれておりません。1994・2」と明記されているように、平成六年二月にバーコード表示や製品価格を含め印刷され、同月中に取引先に配布されており、前記同月一六日・一七日開催の「第二九回セントラルフェア」の展示会場においても配布されたものであり、右カタログ中には、「AF」「PRO」「MX」「RV4」との製品符号の付された商品が、それぞれのタイプに分けて本件考案にかかる包装容器の形状を容易に理解できるような態様で大きく掲載されている旨主張する。

しかし、右の裏表紙の記載によれば、右カタログが平成六年二月に印刷されたことまでは推認できるが、原告主張のように同月中に取引先に対して配布されたり右展示会場において配布されたことまでは認められず、他に右カタログが同月中ないし本件考案の出願前に頒布されたとの事実を認めるに足りる証拠はないから、右カタログは、実用新案法三条一項三号にいう、本件考案の「実用新案登録出願前に日本国内・・・において頒布された刊行物」に該当するということはできない。

のみならず、右カタログには、被告各商品を二個ずつ右に傾けて横に並べて正面上方から撮影した小さい写真及び二個ずつ横に並べて真上から撮影した比較的大きい写真が掲載されているが、容器本体が透明であるため、少なくとも本件考案にいう「凹ビード」の構成を認識、把握することはできず、他に容器の構成に関する記載もないから、本件考案が右カタログに記載されているということはできない。原告は、前同様、右刊行物は、商品を宣伝推奨する目的に出たものであり、一般需要者はもちろん、当業者であれば容易に実施できる程度に商品の外観が明らかになっていると主張するが、到底、本件考案が容易に実施できる程度に商品の外観が明らかになっているということはできない。

3  更に、原告は、右雑誌やカタログに掲載されている商品は、事前にこれら宣伝物を作成するために、守秘義務のないカメラマンや関係者に示されているはずであることも主張するが、右のようなカメラマンや関係者には守秘義務が課されているのが通常であって、本件において守秘義務が課されていないとする特段の事情を認めるに足りる証拠はない。

4  以上のとおり、本件考案は、その出願日である平成六年二月二八日より前に日本国内において公然知られた考案であるとも、日本国内において頒布された刊行物に記載された考案であるともいえないから、これを前提とする原告の主張は、理由がないといわなければならない。

5  そうすると、原告各容器は、前記一説示のとおり本件考案の技術的範囲に属するものであって、特段の抗弁事由も認められないことになるから、原告に対し、本件実用新案権に基づき、原告各容器の製造、譲渡、貸渡し、輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出の差止め、並びに原告の本店、営業所及び工場に存する原告各容器及びその半製品(原告各容器の構造を具備しているが、製品として完成していないもの)の廃棄を求める被告の反訴請求は、理由があるというべきである。

三  争点1(三)(被告による原告の取引先等に対する通知行為は、不正競争防止法二条一項一一号所定の虚偽事実の告知流布に当たるか等)について

1  原告は、原告各容器は本件実用新案権を侵害するものではないのに、被告は前記第二の一4のとおり、平成八年二月頃、原告の取引先等に対し、原告各容器の譲渡は被告の有する本件実用新案権を侵害するものである旨を文書及び口頭で通知したものであり、被告の右行為は、原告の営業上の信用を著しく害する虚偽の事実を告知、流布するものである旨主張するのであるが、右一及び二説示のとおり、原告各容器は本件考案の技術的範囲に属するものであり、その製造譲渡等は本件実用新案権を侵害するものであるから、被告の右通知行為は、不正競争防止法二条一項一一号所定の、競争関係にある他人の営業上の信用を害する「虚偽」の事実を告知し又は流布する行為に該当しないことが明らかである。

2  したがって、被告に対し、原告各容器が被告の有する本件実用新案権を侵害し、又は侵害するおそれがある旨の虚偽の事実を文書又は口頭で言いふらすことの差止め、及び損害の賠償を求める原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がないというべきである。

四  争点2(一)(原告各容器の意匠は、本件登録意匠に類似するものであるか)について

1  証拠(乙一一の2)によれば、本件登録意匠は、次の(一)のとおりの基本的構成態様からなり、その具体的構成態様は、次の(二)のとおりであることが認められる。

(一) 基本的構成態様

<1> 長手方向全長にわたって外形を中高やや横長の蒲鉾形とし、開口縁にフランジを設けた透明な収納凹部からなる容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台板とからなり、

<2> 収納凹部は、長手方向中央に沿って筒状の内容物(自動車用ウインドウフィルム)を収納した際に、長手方向全長にわたって収納凹部の側部内面と内容物との間に空間が形成され、

<3> 収納凹部の上下端部の外面は、中央の端面と両外側の端面との間に、筒状の内容物の上下端部を保持する輪郭を有して台板に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹溝が形成され、上端部の開口縁に設けたフランジは大きく張り出しており、

<4> 収納凹部の上部及び下部に、それぞれ収納凹部の左右側面から前面にわたる左右一対の補強用凹ビードが形成され、

<5> 収納凹部の前面には、上部に左右一対の突起、下部に付属品収納部が形成され、

<6> 収納凹部の内部に、内容物を保持する保持部材が収納されている。

(二) 具体的構成態様

<7> 収納凹部の幅対長さの比は約一対六・一であり、

<8> 収納凹部の上下端部外面の中央の端面と両外側の端面は同一平面上にあり、凹溝の深さは、収納凹部の幅を一とすれば約〇・〇六であり、下端部外面においては、中央の端面の裾から両側の凹溝を経て外側の端面に至る脚部に、外方に突出する凸ビードが形成され、

<9> 前記補強用凹ビードの上部側の一対は収納凹部の中央寄りに、下部側の一対は前記付属品収納部の中央側直近に設けられ、

<10> 前記保持部材は、収納凹部の長さの約四分の一の長さを有する断面台形状で、中央上下方向に半円形凹部が形成されている。

2  証拠(検乙一)及び弁論の全趣旨によれば、原告容器1の意匠は、右1の本件登録意匠の構成態様と対応させると、次の(一)の基本的構成態様からなり、その具体的構成態様は、次の(二)のとおりであることが認められる。

(一) 基本的構成態様

<1> 長手方向全長にわたって外形を中高やや横長の蒲鉾形とし、開口縁にフランジを設けた透明な収納凹部からなる容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台板とからなり、

<2> 収納凹部は、長手方向中央に沿って筒状の内容物(自動車用ウインドウフィルム)を収納した際に、長手方向全長にわたって収納凹部の側部内面と内容物との間に空間が形成され、

<3> 収納凹部の上下端部の外面は、中央のトンネル形凸部と両外側の凸部との間に、筒状の内容物の上下端部を保持する輪郭を有して台板に向かってほぼ垂直方向に延びる大略U字状の凹溝が形成され、上端部の開口縁に設けたフランジは大きく張り出しており、

<4> 収納凹部の上部及び下部に、それぞれ収納凹部の左右側面から前面にわたる左右一対の補強用凹ビードが形成され、

<5> 収納凹部の前面には、上部に左右一対の突起、下部に付属品収納部が形成されている。

<6> (なし)

(二) 具体的構成態様

<7> 収納凹部の幅対長さの比は約一対六・一であり、

<8> 収納凹部の上下端部外面の中央のトンネル形凸部の突出長さは、収納凹部の幅を一とすれば約〇・二七で、両外側の凸部の突出長さは、トンネル形凸部の約四分の一であり、凹溝の深さは、収納凹部の幅を一とすれば約〇・〇八であり、

<9> 前記補強用凹ビードの上部側の一対は左右一対の突起の上端側直近に、下部側の一対は前記付属品収納部の略中央に設けられ、

<10> (なし)

<11> 収納凹部の上下方向中央からやや下端寄りに、左右対称に三対の凸リブが形成されている。

3  証拠(検乙二、五、検甲二、一、三)及び弁論の全趣旨によれば、原告容器ⅡないしⅥの意匠は、それぞれ次に摘示する点が異なるほかは、原告容器Ⅰの意匠と同一であることが認められる。

(一) 原告容器Ⅱ

<4> 収納凹部の下部に、収納凹部の左右側面から前面にわたる左右一対の補強用凹ビードが形成され、

<7> 収納凹部の幅対長さの比は約一対二・五であり、

<9> 前記補強用凹ビードは、前記付属品収納部の中央やや下寄りに設けられている。

<11> (なし)

(二) 原告容器Ⅲ

<7> 収納凹部の幅対長さの比は約一対九・〇であり、

<8> 収納凹部の上下端部外面の中央のトンネル形凸部の突出長さは、収納凹部の幅を一とすれば約〇・三三で、両外側の凸部の突出長さは、トンネル形凸部の約四分の一であり、凹溝の深さは、収納凹部の幅を一とすれば約〇・一であり、

<11> 収納凹部の上下方向中央からやや下端寄りに、左右対称に五対の凹リブが形成されている。

(三) 原告容器Ⅳ

<6> 収納凹部の上下端部中央のトンネル形凸部内に収納保持具が収納されている。

<10> 前記収納保持具は、透明の断面略L字形状の薄板で、一方の端片は、トンネル形凸部の内周に適合する外周形状を有し、その中央部に円筒状の内容物の上下端部の内面に適合する嵌合凸部が形成され、他方の端片は、長方形状である。

(四) 原告容器Ⅴ

<4><7><9><11>の点は原告容器Ⅱと同じであり、<6>及び<10>の点は原告容器Ⅳと同じである。

(五) 原告容器Ⅵ

<7><8><11>の点は原告容器Ⅲと同じであり、<6>及び<10>の点は原告容器Ⅳと同じである。

4  そこで、まず、原告容器Ⅰの意匠と本件登録意匠との類否について検討する。

(一) 原告容器Ⅰの意匠は、次の点で本件登録意匠と一致する。

(1) <1>の、長手方向全長にわたって外形を中高やや横長の蒲鉾形とし、開口縁にフランジを設けた透明な収納凹部からなる容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台板とからなるとの点、

(2) <2>の、収納凹部は、長手方向中央に沿って筒状の内容物(自動車用ウインドウフィルム)を収納した際に、長手方向全長にわたって収納凹部の側部内面と内容物との間に空間が形成されるとの点、

(3) <3>の、収納凹部の上下端部の外面は、中央の端面(トンネル形凸部)と両外側の端面(凸部)との間に、筒状の内容物の上下端部を保持する輪郭を有して台板に向かって(ほぼ)垂直方向に延びる大略U字状の凹溝が形成され、上端部の開口縁に設けたフランジは大きく張り出しているとの点(本件登録意匠の「垂直方向」と原告容器Ⅰの「ほぼ垂直方向」とは、実質的に同一といえる範囲である)、

(4) <4>の、収納凹部の上部及び下部に、それぞれ収納凹部の左右側面から前面にわたる左右一対の補強用凹ビードが形成されているとの点、

(5) <5>の、収納凹部の前面には、上部に左右一対の突起、下部に付属品収納部が形成されているとの点、

(6) <7>の、収納凹部の幅対長さの比は約一対六・一であるとの点。

(二) 一方、原告容器Ⅰの意匠は、次の点で本件登録意匠と相違する。

(1) 本件登録意匠では、収納凹部の内部に、収納凹部の長さの約四分の一の長さを有する断面台形状で、中央上下方向に半円形凹部が形成されている、内容物を保持する保持部材が収納されている(<6><10>)のに対し、原告容器Ⅰでは、そのような構成態様を欠くとの点、

(2) 構成態様<8>に関して、本件登録意匠では、収納凹部の上下端部外面の中央の端面と両外側の端面は同一平面上にあり、凹溝の深さは、収納凹部の幅を一とすれば約〇・〇六であり、下端部外面においては、中央の端面の裾から両側の凹溝を経て外側の端面に至る脚部に、外方に突出する凸ビードが形成されているのに対し、原告容器Ⅰでは、収納凹部の上下端部外面の中央のトンネル形凸部の突出長さは、収納凹部の幅を一とすれば約〇・二七で、両外側の凸部の突出長さは、トンネル形凸部の約四分の一であり、凹溝の深さは、収納凹部の幅を一とすれば約〇・〇八であり、下端部外面に本件登録意匠におけるような凸ビードは形成されていないとの点、

(3) 構成態様<9>に関して、本件登録意匠では、補強用凹ビードの上部側の一対は収納凹部の中央寄りに、下部側の一対は前記付属品収納部の中央側直近に設けられているのに対し、原告容器Ⅰでは、補強用凹ビードの上部側の一対は左右一対の突起の上端側直近に、下部側の一対は前記付属品収納部の略中央に設けられているとの点、

(4) 原告容器Ⅰでは、収納凹部の上下方向中央からやや下端寄りに、左右対称に三対の凸リブが形成されている(<11>)のに対し、本件登録意匠では、そのような構成態様を欠くとの点。

(三) しかして、本件登録意匠はブリスター包装用容器にかかるものであり、その形状は、本件明細書に本件考案の実施例として示されたものと一致するものと認められ、前記一2(二)説示のとおり、自動車用ウインドウフィルム等の筒状の内容物を収納する従来のブリスター包装容器は、開口縁にフランジを有し、内容物の形状にほぼ合わせた輪郭のふくらみを透明なプラスチックシートにより成形して容器本体とし、容器本体に内容物を収納した後に開口縁のフランジ部分を折り返した間に台板を挟み込んで包装するものであったところ、このようなブリスター包装容器においては、容器本体と内容物との間の空間、距離がほとんどないため、外部からの衝撃が内容物にまで及び易く、特に内容物が自動車用ウインドウフィルムのように紙製の中筒に薄手のプラスチックフィルムを巻回した筒状体の物品である場合には、筒状体の上下端部に臨む容器本体の上下端部が外部からの衝撃により凹んで筒状体の両端が傷つくと商品価値を損なうおそれがあるという欠点があり、一方、容器本体と内容物との間の空間を大きくすると、耐圧強度が弱くなり、外部からの衝撃により容器本体が凹み易いので内容物も凹み易いとともに、内容物の位置決めができず、包装容器内で内容物が動いた際に内壁に当たって傷つき易くなるという問題点があったため、本件考案は、容器本体の外形を「蒲鉾形」として容器本体の長手方向中央に沿って筒状の内容物を収納し、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されるようにすることにより、容器本体の両側からの外的衝撃が内容物にまで及びにくくして前記欠点を解消する一方、内容物の上下端部をそれぞれ保持する輪郭を有する大略U字状の凹ビードを設けることにより、内容物をその上下端部において長手方向及び両側方向に位置決めすることができるようにするとともに、大略U字状の凹ビードが台紙に向かって垂直方向に延びていることにより、容器本体の上下端部への容器本体上面からの外的衝撃に対する耐圧強度を高めて前記問題点を克服したものである。現に、証拠(甲九ないし一一の各1~3、一三の1・5~8)によれば、本件登録意匠の出願前の他社のブリスター包装容器は、右にいう従来のもの、すなわち、内容物の形状にほぼ合わせた輪郭のふくらみを透明なプラスチックシートにより成形して容器本体としたものであることが窺われ、また、右各証拠その他本件全証拠によるも、内容物の上下端部をそれぞれ保持する輪郭を有する大略U字状の凹ビードを設けたものが存在したことは認められない。したがって、本件登録意匠は、前記1(一)の<1>のように、長手方向全長にわたって収納凹部の外形を中高やや横長の蒲鉾形とし、そのことにより、同じく<2>のように、収納凹部は、長手方向中央に沿って筒状の内容物(自動車用ウインドウフィルム)を収納した際に、長手方向全長にわたって収納凹部の側部内面と内容物との間に空間が形成されるとの点、及び同じく<3>のように、収納凹部の上下端部の外面は、中央の端面と両外側の端面との間に、筒状の内容物の上下端部を保持する輪郭を有して台板に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹溝が形成されているとの点が、形態上の際だった特徴として看者の注意を強く惹くものといわなければならない。すなわち、本件登録意匠の要部は、右の点にあるというべきである。これに反する原告の主張は、採用することができない。

なお、検甲第五ないし第七号証の各1・2及び第八号証の1~3は、それぞれ口臭スプレー、ボルト脱着工具、フレキシブルビットの工具を収納した各ブリスター包装容器を撮影した写真であるが、これらの商品が本件登録意匠の出願前から販売されていたと認めるに足りる証拠がないのみならず、その上下端部の外面の形状は、本件登録意匠における上下端部の外面の形状とは全く異なるものであるから、右要部の認定を何ら左右するものではない。

そうすると、原告容器Ⅰの意匠は、前記(一)の一致点(1)ないし(3)のとおり、右の要部において本件登録意匠と一致することが明らかであり、本件登録意匠との類否に与える影響は極めて大きいものといわなければならず、そのほか、一致点(4)ないし(6)において一致するものである。

(四) これに対し、原告容器Ⅰの意匠と本件登録意匠の相違点についてみるに、まず、相違点(1)の、本件登録意匠では、収納凹部の内部に、収納凹部の長さの約四分の一の長さを有する断面台形状で、中央上下方向に半円形凹部が形成されている、内容物を保持する保持部材が収納されている(<6><10>)のに対し、原告容器Ⅰでは、そのような構成態様を欠くとの点については、本件登録意匠における保持部材は、透明で、収納凹部の内部に収納されているものであり、収納凹部自体も透明であるもののその外形が直接看者の目に入るのに対して、収納凹部を通してしか認識、把握しえないものであるから、看者の注意をほとんど惹かないものというべきである。

相違点(2)の、構成態様<8>に関して、本件登録意匠では、収納凹部の上下端部外面の中央の端面と両外側の端面は同一平面上にあり、凹溝の深さは、収納凹部の幅を一とすれば約〇・〇六であり、下端部外面においては、中央の端面の裾から両側の凹溝を経て外側の端面に至る脚部に、外方に突出する凸ビードが形成されているのに対し、原告容器Ⅰでは、収納凹部の上下端部外面の中央のトンネル形凸部の突出長さは、収納凹部の幅を一とすれば約〇・二七で、両外側の凸部の突出長さは、トンネル形凸部の約四分の一であり、凹溝の深さは、収納凹部の幅を一とすれば約〇・〇八であり、下端部外面に本件登録意匠におけるような凸ビードは形成されていないとの点は、この程度の相違では、前記要部において一致することによりもたらされる共通の美感を覆すに至らないというべきである。

相違点(3)の、構成態様<9>に関して、本件登録意匠では、補強用凹ビードの上部側の一対は収納凹部の中央寄りに、下部側の一対は前記付属品収納部の中央側直近に設けられているのに対し、原告容器Ⅰでは、補強用凹ビードの上部側の一対は左右一対の突起の上端側直近に、下部側の一対は前記付属品収納部の略中央に設けられているとの点は、補強用ビードの位置についての微差にとどまり、看者の注意を惹かないものであることが明らかである。

相違点(4)の、原告容器Ⅰでは、収納凹部の上下方向中央からやや下端寄りに、左右対称に三対の凸リブが形成されている(<11>)のに対し、本件登録意匠では、そのような構成態様を欠くとの点は、両意匠のもたらす印象に大きな影響を与えるものとは考えられない。

(五) 以上によれば、原告容器Ⅰの意匠と本件登録意匠は、前記一致点、特に要部において一致することにより、前記相違点のもたらす印象の差異を凌駕して、全体として共通の美感を起こさせるものであるから、原告容器Ⅰの意匠は、本件登録意匠に類似するものというべきである。

5  次に、原告容器Ⅱの意匠は、前記3(一)のとおり、

<4> 収納凹部の下部に、収納凹部の左右側面から前面にわたる左右一対の補強用凹ビードが形成され、

<7> 収納凹部の幅対長さの比は約一対二・五であり、

<9> 前記補強用凹ビードは、前記付属品収納部の中央やや下寄りに設けられている。

<11> (なし)

との各点で異なるほかは、原告容器Ⅰの意匠と同一である。

したがって、原告容器Ⅱの意匠を本件登録意匠と対比すると、原告容器Ⅰの場合と異なり、一致点(4)が、構成態様<4>に関して、本件登録意匠では、収納凹部の上部及び下部に、それぞれ収納凹部の左右側面から前面にわたる左右一対の補強用凹ビードが形成されているのに対し、原告容器Ⅱでは、収納凹部の下部に、収納凹部の左右側面から前面にわたる左右一対の補強用凹ビードが形成されているという相違点となり、一致点(6)が、構成態様<7>に関して、本件登録意匠では、収納凹部の幅対長さの比は約一対六・一であるのに対し、原告容器Ⅱでは、約一対二・五であるという相違点となり、相違点(3)が、構成態様<9>に関して、本件登録意匠では、補強用凹ビードの上部側の一対は収納凹部の中央寄りに、下部側の一対は前記付属品収納部の中央側直近に設けられているのに対し、原告容器Ⅱでは、補強用凹ビードは、前記付属品収納部の中央やや下寄りに設けられているという相違点となり、その一方で、相違点(4)について、原告容器Ⅱでは、原告容器Ⅰにおける、収納凹部の上下方向中央からやや下端寄りに、左右対称に三対の凸リブが形成されている(<11>)という構成態様を欠くので、本件登録意匠との相違点ではなくなることになるほかは、原告容器Ⅰの場合と同じである。

右の構成態様<4>及び<9>に関する補強用凹ビードの個数・位置についての相違点は、看者の注意を惹くものとはいい難く、本件登録意匠との類否判断に与える影響は極めて小さいというべきであり、また、構成態様<7>に関する収納凹部の幅対長さの比の差異は、相当大きいが、もともと収納凹部の長さは、そこに収納すべき筒状の内容物の長さに応じて種々のもののあることが予定されているものであるから、本件登録意匠との類否判断に影響を及ぼすことはないというべきである。

そうすると、原告容器Ⅱの意匠も、原告容器Ⅰの意匠と同様、前記一致点、特に要部において本件登録意匠と一致することにより、前記相違点のもたらす印象の差異を凌駕して、全体として本件登録意匠と共通の美感を起こさせるものであるから、本件登録意匠に類似するものというべきである。

6  原告容器Ⅲの意匠は、前記3(二)のとおり、

<7> 収納凹部の幅対長さの比は約一対九・〇であり、

<8> 収納凹部の上下端部外面の中央のトンネル形凸部の突出長さは、収納凹部の幅を一とすれば約〇・三三で、両外側の凸部の突出長さは、トンネル形凸部の約四分の一であり、凹溝の深さは、収納凹部の幅を一とすれば約〇・一であり、

<11> 収納凹部の上下方向中央からやや下端寄りに、左右対称に五対の凹リブが形成されている。

との各点で異なるほかは、原告容器Ⅰの意匠と同一である。

したがって、原告容器Ⅲの意匠を本件登録意匠と対比すると、原告容器Ⅰの場合と異なり、一致点(6)が、構成態様<7>に関して、本件登録意匠では、収納凹部の幅対長さの比は約一対六・一であるのに対して、原告容器Ⅲでは、約一対九・〇であるという相違点となり、相違点(2)が、構成態様<8>に関して、本件登録意匠では、収納凹部の上下端部外面の中央の端面と両外側の端面は同一平面上にあり、凹溝の深さは、収納凹部の幅を一とすれば約〇・〇六であり、下端部外面においては、中央の端面の裾から両側の凹溝を経て外側の端面に至る脚部に、外方に突出する凸ビードが形成されているのに対し、原告容器Ⅲでは、収納凹部の上下端部外面の中央のトンネル形凸部の突出長さは、収納凹部の幅を一とすれば約〇・三三で、両外側の凸部の突出長さは、トンネル形凸部の約四分の一であり、凹溝の深さは、収納凹部の幅を一とすれば約〇・一であり、下端部外面に本件登録意匠におけるような凸ビードは形成されていないという相違点となり、相違点(4)が、原告容器Ⅲでは、収納凹部の上下方向中央からやや下端寄りに、左右対称に五対の凹リブが形成されている(<11>)のに対し、本件登録意匠では、そのような構成態様を欠くという相違点となるほか、原告容器Ⅰの場合と同じである。

右の構成態様<7>に関する収納凹部の幅対長さの比の差異は、小さいものであるのみならず、前記5説示のとおり、もともと収納凹部の長さは、そこに収納すべき筒状の内容物の長さに応じて種々のもののあることが予定されているものであるから、本件登録意匠との類否判断に影響を及ぼすことはないというべきであり、相違点(2)については、原告容器Ⅲの構成態様<8>と原告容器Ⅰの構成態様<8>との差異は極めて小さいものであるから、原告容器Ⅰの場合と同様、前記要部において一致することによりもたらされる共通の美感を覆すに至らないというべきであり、相違点(4)も、原告容器Ⅰの場合と同様、両意匠のもたらす印象に大きな影響を与えるものとは考えられない。

そうすると、原告容器Ⅲの意匠も、原告容器Ⅰの意匠と同様、前記一致点、特に要部において本件登録意匠と一致することにより、前記相違点のもたらす印象の差異を凌駕して、全体として本件登録意匠と共通の美感を起こさせるものであるから、本件登録意匠に類似するものというべきである。

7  原告容器Ⅳ、原告容器Ⅴ又は原告容器Ⅵの意匠は、前記3(三)ないし(五)のとおり、

<6> 収納凹部の上下端部中央のトンネル形凸部内に収納保持具が収納されている。

<10> 前記収納保持具は、透明の断面略L字形状の薄板で、一方の端片は、トンネル形凸部の内周に適合する外周形状を有し、その中央部に円筒状の内容物の上下端部の内面に適合する嵌合凸部が形成され、他方の端片は、長方形状である。

との点が異なるほかは、それぞれ、原告容器Ⅰ、原告容器Ⅱ又は原告容器Ⅲの意匠と同一であるところ、原告容器Ⅳ、原告容器Ⅴ又は原告容器Ⅵにおける右の収納保持具は、本件登録意匠における保持部材と同様、透明で、収納凹部(トンネル形凸部)の内部に収納されているものであり、収納凹部の外形が直接看者の目に入るのに対して、収納凹部を通してしか認識、把握しえないものであるから、看者の注意をほとんど惹かないものというべきである。

したがって、原告容器Ⅰ、原告容器Ⅱ又は原告容器Ⅲの意匠が前示のとおり本件登録意匠に類似するものである以上、原告容器Ⅳ、原告容器Ⅴ又は原告容器Ⅵの意匠もまた、本件登録意匠に類似するものであることが明らかである。

8  以上のとおり、原告各容器の意匠は、いずれも本件登録に類似するものといわなければならない。

五  争点2(二)(本件登録意匠は、出願前公知の意匠であり、その意匠登録には無効事由があるか)について

原告は、仮に原告各容器の意匠が本件登録意匠に類似するとしても、本件考案の場合と同じ理由により、本件登録意匠は、その出願日である平成六年二月二八日より前に日本国内において公然知られた意匠であり、日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠であって、原告は公知の意匠を実施しているにすぎないから、本件意匠権を侵害するものではなく、あるいはその意匠登録には意匠法四八条一項一号、三条一項一号・二号の無効事由のあることが明らかであるから、かかる明白な無効事由のある本件意匠権に基づき原告各容器の製造販売等の差止め等を求めることは、権利の濫用に当たり許されない旨主張するが、前記二説示と同様の理由により、本件登録意匠は、その出願日である平成六年二月二八日より前に日本国内において公然知られた意匠であるとも、日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠であるともいえないから、これを前提とする原告の主張は、理由がないといわなければならない。

そうすると、原告各容器の意匠は、前記四説示のとおり本件登録意匠に類似するものであって、特段の抗弁事由も認められないことになるから、原告に対し、本件意匠権に基づき、原告各容器の製造、譲渡、貸渡し、輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出の差止め、並びに原告の本店、営業所及び工場に存する原告各容器及びその半製品(原告各容器の構造を具備しているが、製品として完成していないもの)の廃棄を求める被告の反訴請求は理由があるというべきである。

六  争点3(原告各商品の形態は、被告各商品の形態を模倣したものであるか)について

被告は、反訴請求として、不正競争防止法二条一項三号、三条、四条、五条二項二号に基づく差止・廃棄請求及び損害賠償請求もするところ、差止・廃棄請求については、被告各商品の販売開始の日が被告主張の平成六年三月八日であるとしても、既に右不正競争防止法二条一項三号に定める三年の期間を経過しているから、理由のないことが明らかであるので、これを棄却することとし、損害賠償請求については、後記七説示のとおり、本件実用新案権及び本件意匠権の侵害による損害賠償請求によって被告の反訴請求にかかる請求額がすべて認容されるべきものであるから、判断を要しない。

七  争点4(右争点1ないし3についての判断の結果、原告が損害賠償義務を負う場合に、被告に対し賠償すべき損害の額)について

1  以上説示したところによれば、原告は、原告各容器の製造、譲渡により本件実用新案権及び本件意匠権を侵害したものであるところ、以下のとおり、原告は、これによって被告の被った損害を賠償すべき義務があるというべきである。

まず、本件意匠権の侵害については、意匠法四〇条により原告に過失があったものと推定され、これを覆すに足りる主張立証はない。

本件実用新案権の侵害については、被告が原告に対し、本件考案にかかる実用新案技術評価書及び本件登録実用新案公報(甲三)を提示して、原告各容器が本件考案の技術的範囲に属するからその製造譲渡等は本件実用新案権を侵害するものである旨警告したのは、前記第二の一3のとおり平成八年二月一七日のことであるが、本件登録実用新案公報は、平成六年八月三〇日に発行されたものであり、乙第七号証及び弁論の全趣旨によれば、原告は前記のとおり平成七年三月頃から原告各容器に自動車用ウインドウフィルムを収納して原告各商品の販売を開始したものの、被告は、得意先関係に与える影響等を考慮して原告各容器が本件実用新案権の侵害品である旨の事実を警告することを躊躇していたが、ただ、同年三月、株式会社ドライバースタンド(東京都府中市)の社長に対してのみ右事実を知らせたところ、原告は、右株式会社ドライバースタンドに対してだけは、原告各容器を使用しないで旧タイプの容器に収納したウインドウフィルムの販売を継続したことが認められるから、原告は、右時期に本件実用新案権の存在を知ったものと推認することできる。したがって、原告は、右同年三月以降の本件実用新案権の侵害について過失があったというべきであり、右時期以降に被告の被った損害を賠償すべき義務があるといわなければならない。

2  そこで、原告の本件実用新案権及び本件意匠権の侵害によって被告が被った損害の額について検討する。

(一) 証拠(乙四、七)及び弁論の全趣旨によれば、原告のウインドウフイルムは、右株式会社ドライバースタンドに販売する分以外は、すべて原告各容器に収納して販売されるもの(原告各商品)であるところ、その平成七年八月期の年間売上額は約七九〇〇万円であることが認められるから、原告は、被告主張の平成七年三月から平成八年四月二二日(反訴状送達の日)までの間に原告各商品を販売して少なくとも右七九〇〇万円の売上げを得たものと認められ、そして、弁論の全趣旨によれば、本件考案の実施に対し、通常受けるべき金銭の額は、右売上額の五%と認めるのが相当である。

したがって、被告は、実用新案法二九条二項により、本件実用新案権の侵害による損害賠償として、右七九〇〇万円の五%に相当する三九五万円の支払いを求めることができるといわなければならない。

(二) 証拠(乙五の1・2、六の1~7、七)及び弁論の全趣旨によれば、原告が原告各容器を使用して原告各商品を販売したことにより、消費者が原告各商品を被告各商品と誤認するという事態が生じたので、被告は、消費者による誤認の防止を図るため、被告のウインドウフィルム(被告各商品)の販売店における陳列棚に被告のウインドウフィルムの品番・型式等を記入したプラスチック製小ボードを特殊金具(ポップ立て)で掛けることとし、平成八年一月二二日から四月一日の間に、全国の販売店約八〇〇店舗、陳列棚にして約二〇〇〇棚のうち、約一〇〇店舗の約二三〇棚の陳列棚に実施し、その費用として合計六五六万三〇〇〇円を支出することを余儀なくされ、同額の損害を被ったことが認められる。

右損害は、少なくとも、物品の形状の類似性を問題とする本件意匠権の侵害との間には、相当因果関係を肯定することができる。

したがって、原告は、本件意匠権の侵害による損害賠償として、右六五六万三〇〇〇円を支払うべき義務があるといわなければならない。

3  以上によれば、原告は、被告に対し、本件実用新案権及び本件意匠権の侵害による損害の賠償として、右2の(一)及び(二)の合計一〇五一万三〇〇〇円及びこれに対する不法行為の後の日である平成八年四月二三日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払うべき義務があるということになる。

第五  結論

よって、原告の被告に対する本訴請求をいずれも棄却し、被告の原告に対する反訴請求は、本件実用新案権及び本件意匠権に基づく差止・廃棄請求及び損害賠償請求を認容し、不正競争防止法二条一項三号、三条に基づく差止・廃棄請求を棄却することとし、主文のとおり判決する(平成九年九月四日口頭弁論終結)。

(裁判長裁判官 水野武 裁判官 小出啓子 裁判官田中俊次は、転補につき署名押印することができない。 裁判長裁判官 水野武)

物件目録Ⅰ

図面の説明

第1図 原告容器Ⅰの内容物を収納した正面図

第2図 原告容器Ⅰの内容物を収納した右側面図

第3図 原告容器Ⅰの内容物を収納した上端部を斜めから表した図

第4図 原告容器Ⅰの内容物を収納した下端部を斜めから表した図

第5図 原告容器Ⅰの内容物を収納した底面図

第6図 原告容器Ⅰの内容物を除いた正面図

第7図 原告容器Ⅰの内容物を除いた右側面図

第8図 原告容器Ⅰの内容物を除いた上端部を斜めから表した図

第9図 原告容器Ⅰの内容物を除いた下端部を斜めから表した図

第10図 原告容器Ⅰの内容物を除いた底面図

構成の説明

<1> 開口縁にフランジを有する横断面が略半月形の収納凹部を備えた透明なプラスチック製のブリスター容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて該容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台紙とからなるブリスター包装容器である。

<2> 収納凹部の長手方向中央に沿って筒状の内容物を収納でき、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されうる。

<3> 収納凹部は、長手方向両端面にトンネル形の凸部を形成しており、そのトンネル形の凸部の内面は、表面側約半分において筒状内容物の外面とほぼ一致する形状を有している。

<4> トンネル形の凸部の幅方向両側には溝部を介して畝部を形成している。

<5> 畝部の長手方向高さはトンネル形の凸部の長手方向高さの約四分の一である。

<6> トンネル形の凸部と畝部との間の溝部は、台紙に向かうに従いわずかに長手方向外向きに傾斜していて、収納凹部の開口側に向けてわずかに拡開状に形成されている。

<7> トンネル形の凸部と畝部との間の溝部の幅は、容器本体の表面側に向かうに従って拡開し、表面側頂部において左右の溝部が連続している。

<省略>

第3図

<省略>

第4図

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第5図

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<省略>

第8図

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第9図

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第10図

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物件目録Ⅱ

図面の説明

第1図 原告容器Ⅱの内容物を収納した正面図

第2図 原告容器Ⅱの内容物を収納した右側面図

第3図 原告容器Ⅱの内容物を収納した上端部を斜めから表した図

第4図 原告容器Ⅱの内容物を収納した下端部を斜めから表した図

第5図 原告容器Ⅱの内容物を収納した底面図

第6図 原告容器Ⅱの内容物を除いた正面図

第7図 原告容器Ⅱの内容物を除いた右側面図

第8図 原告容器Ⅱの内容物を除いた上端部を斜めから表した図

第9図 原告容器Ⅱの内容物を除いた下端部を斜めから表した図

第10図 原告容器Ⅱの内容物を除いた底面図

構成の説明

<1> 開口縁にフランジを有する横断面が略半月形の収納凹部を備えた透明なプラスチック製のブリスター容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて該容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台紙とからなるブリスター包装容器である。

<2> 収納凹部の長手方向中央に沿って筒状の内容物を収納でき、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されうる。

<3> 収納凹部は、長手方向両端面にトンネル形の凸部を形成しており、そのトンネル形の凸部の内面は、表面側約半分において筒状内容物の外面とほぼ一致する形状を有している。

<4> トンネル形の凸部の幅方向両側には溝部を介して畝部を形成している。

<5> 畝部の長手方向高さはトンネル形の凸部の長手方向高さの約四分の一である。

<6> トンネル形の凸部と畝部との間の溝部は、台紙に向かうに従いわずかに長手方向外向きに傾斜していて、収納凹部の開口側に向けてわずかに拡開状に形成されている。

<7> トンネル形の凸部と畝部との間の溝部の幅は、容器本体の表面側に向かうに従って拡開し、表面側頂部において左右の溝部が連続している。

<省略>

第3図

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第4図

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第5図

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第8図

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第9図

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第10図

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物件目録Ⅲ

図面の説明

第1図 原告容器Ⅲの内容物を収納した正面図

第2図 原告容器Ⅲの内容物を収納した右側面図

第3図 原告容器Ⅲの内容物を収納した上端部を斜めから表した図

第4図 原告容器Ⅲの内容物を収納した下端部を斜めから表した図

第5図 原告容器Ⅲの内容物を収納した底面図

第6図 原告容器Ⅲの内容物を除いた正面図

第7図 原告容器Ⅲの内容物を除いた右側面図

第8図 原告容器Ⅲの内容物を除いた上端部を斜めから表した図

第9図 原告容器Ⅲの内容物を除いた下端部を斜めから表した図

第10図 原告容器Ⅲの内容物を除いた底面図

構成の説明

<1> 開口縁にフランジを有する横断面が略半月形の収納凹部を備えた透明なプラスチック製のブリスター容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて該容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台紙とからなるブリスター包装容器である。

<2> 収納凹部の長手方向中央に沿って筒状の内容物を収納でき、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されうる。

<3> 収納凹部は、長手方向両端面にトンネル形の凸部を形成しており、そのトンネル形の凸部の内面は、表面側約半分において筒状内容物の外面とほぼ一致する形状を有している。

<4> トンネル形の凸部の幅方向両側には溝部を介して畝部を形成している。

<5> 畝部の長手方向高さはトンネル形の凸部の長手方向高さの約四分の一である。

<6> トンネル形の凸部と畝部との問の溝部は、台紙に向かうに従いわずかに長手方向外向きに傾斜していて、収納凹部の開口側に向けてわずかに拡開状に形成されている。

<7> トンネル形の凸部と畝部との間の溝部の幅は、容器本体の表面側に向かうに従って拡開し、表面側頂部において左右の溝部が連続している。

<省略>

第3図

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第4図

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第5図

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第8図

<省略>

第9図

<省略>

第10図

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物件目録Ⅳ

図面の説明

第1図 原告容器Ⅳの内容物及び収納保持具を収納した正面図

第2図 原告容器Ⅳの内容物及び収納保持具を収納した右側面図

第3図 原告容器Ⅳの内容物及び収納保持具を収納した上端部を斜めから表した図

第4図 原告容器Ⅳの内容物及び収納保持具を収納した下端部を斜めから表した図

第5図 原告容器Ⅳの内容物及び収納保持具を収納した底面図

第6図 原告容器Ⅳの内容物及び収納保持具を除いた正面図

第7図 原告容器Ⅳの内容物及び収納保持具を除いた右側面図

第8図 原告容器Ⅳの内容物及び収納保持具を除いた上端部を斜めから表した図

第9図 原告容器Ⅳの内容物及び収納保持具を除いた下端部を斜めから表した図

第10図 原告容器Ⅳの内容物及び収納保持具を除いた底面図

第11図 原告容器Ⅳの内容物及び収納保持具を収納した第1図のⅠ-Ⅰ線断面図

第12図 収納保持具を斜めから表した図

構成の説明

<1> 開口縁にフランジを有する横断面が略半月形の収納凹部を備えた透明なプラスチック製のブリスター容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて該容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台紙とからなるブリスター包装容器である。

<2> 収納凹部の長手方向中央に沿って筒状の内容物を収納でき、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されうる。

<3> 収納凹部は、長手方向両端面にトンネル形の凸部を形成しており、そのトンネル形の凸部の内面は、表面側約半分において筒状内容物の外面とほぼ一致する形状を有している。

<4> トンネル形の凸部の幅方向両側には溝部を介して畝部を形成している。

<5> 畝部の長手方向高さはトンネル形の凸部の長手方向高さの約四分の一である。

<6> トンネル形の凸部と畝部との間の溝部は、台紙に向かうに従いわずかに長手方向外向きに傾斜していて、収納凹部の開口側に向けてわずかに拡開状に形成されている。

<7> トンネル形の凸部と畝部との間の溝部の幅は、容器本体の表面側に向かうに従って拡開し、表面側頂部において左右の溝部が連続している。

<8> 収納凹部のトンネル形の凸部内には、収納保持具が取り付けられており、該収納保持具は、プラスチック製の薄板を略L字形に折り曲げてなり、一方の端片は、トンネル形の凸部の内周に適合する外周形状を有し、その中央部に円筒状の内容物の端面内部に適合する嵌合凸部が形成され、他方の端片は、内容物と台紙の間に沿わされる。

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第3図

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第4図

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第5図

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第8図

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第9図

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第10図

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第11図

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第12図

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物件目録Ⅴ

図面の説明

第1図 原告容器Ⅴの内容物及び収納保持具を収納した正面図

第2図 原告容器Ⅴの内容物及び収納保持具を収納した右側面図

第3図 原告容器Ⅴの内容物及び収納保持具を収納した上端部を斜めから表した図

第4図 原告容器Ⅴの内容物及び収納保持具を収納した下端部を斜めから表した図

第5図 原告容器Ⅴの内容物及び収納保持具を収納した底面図

第6図 原告容器Ⅴの内容物及び収納保持具を除いた正面図

第7図 原告容器Ⅴの内容物及び収納保持具を除いた右側面図

第8図 原告容器Ⅴの内容物及び収納保持具を除いた上端部を斜めから表した図

第9図 原告容器Ⅴの内容物及び収納保持具を除いた下端部を斜めから表した図

第10図 原告容器Ⅴの内容物及び収納保持具を除いた底面図

第11図 原告容器Ⅴの内容物及び収納保持具を収納した第1図のⅠ-Ⅰ線断面図

第12図 収納保持具を斜めから表した図

構成の説明

<1> 開口縁にフランジを有する横断面が略半月形の収納凹部を備えた透明なプラスチック製のブリスター容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて該容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台紙とからなるブリスター包装容器である。

<2> 収納凹部の長手方向中央に沿って筒状の内容物を収納でき、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されうる。

<3> 収納凹部は、長手方向両端面にトンネル形の凸部を形成しており、そのトンネル形の凸部の内面は、表面側約半分において筒状内容物の外面とほぼ一致する形状を有している。

<4> トンネル形の凸部の幅方向両側には溝部を介して畝部を形成している。

<5> 畝部の長手方向高さはトンネル形の凸部の長手方向高さの約四分の一である。

<6> トンネル形の凸部と畝部との間の溝部は、台紙に向かうに従いわずかに長手方向外向きに傾斜していて、収納凹部の開口側に向けてわずかに拡開状に形成されている。

<7> トンネル形の凸部と畝部との間の溝部の幅は、容器本体の表面側に向かうに従って拡開し、表面側頂部において左右の溝部が連続している。

<8> 収納凹部のトンネル形の凸部内には、収納保持具が取り付けられており、該収納保持具は、プラスチック製の薄板を略L字形に折り曲げてなり、一方の端片は、トンネル形の凸部の内周に適合する外周形状を有し、その中央部に円筒状の内容物の端面内部に適合する嵌合凸部が形成され、他方の端片は、内容物と台紙との間に沿わされる。

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第3図

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第4図

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第5図

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第8図

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第9図

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第10図

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第11図

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第12図

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物件目録Ⅵ

図面の説明

第1図 原告容器Ⅵの内容物及び収納保持具を収納した正面図

第2図 原告容器Ⅵの内容物及び収納保持具を収納した右側面図

第3図 原告容器Ⅵの内容物及び収納保持具を収納した上端部を斜めから表した図

第4図 原告容器Ⅵの内容物及び収納保持具を収納した下端部を斜めから表した図

第5図 原告容器Ⅵの内容物及び収納保持具を収納した底面図

第6図 原告容器Ⅵの内容物及び収納保持具を除いた正面図

第7図 原告容器Ⅵの内容物及び収納保持具を除いた右側面図

第8図 原告容器Ⅵの内容物及び収納保持具を除いた上端部を斜めから表した図

第9図 原告容器Ⅵの内容物及び収納保持具を除いた下端部を斜めから表した図

第10図 原告容器Ⅵの内容物及び収納保持具を除いた底面図

第11図 原告容器Ⅵの内容物及び収納保持具を収納した第1図のⅠ-Ⅰ線断面図

第12図 収納保持具を斜めから表した図

構成の説明

<1> 開口縁にフランジを有する横断面が略半月形の収納凹部を備えた透明なプラスチック製のブリスター容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて該容器本体の開口部を閉蓋する長方形状の台紙とからなるブリスター包装容器である。

<2> 収納凹部の長手方向中央に沿って筒状の内容物を収納でき、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されうる。

<3> 収納凹部は、長手方向両端面にトンネル形の凸部を形成しており、そのトンネル形の凸部の内面は、表面側約半分において筒状内容物の外面とほぼ一致する形状を有している。

<4> トンネル形の凸部の幅方向両側には溝部を介して畝部を形成している。

<5> 畝部の長手方向高さはトンネル形の凸部の長手方向高さの約四分の一である。

<6> トンネル形の凸部と畝部との間の溝部は、台紙に向かうに従いわずかに長手方向外向きに傾斜していて、収納凹部の開口側に向けてわずかに拡開状に形成されている。

<7> トンネル形の凸部と畝部との間の溝部の幅は、容器本体の表面側に向かうに従って拡開し、表面側頂部において左右の溝部が連続している。

<8> 収納凹部のトンネル形の凸部内には、収納保持具が取り付けられており、該収納保持具は、プラスチック製の薄板を略L字形に折り曲げてなり、一方の端片は、トンネル形の凸部の内周に適合する外周形状を有し、その中央部に円筒状の内容物の端面内部に適合する嵌合凸部が形成され、他方の端片は、内容物と台紙との間に沿わされる。

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第3図

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第4図

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第5図

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第8図

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第9図

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第10図

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第11図

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第12図

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物件目録Ⅶ

被告容器Ⅰの図面の説明

第1図 被告容器Ⅰの内容物を収納した正面図

第2図 被告容器Ⅰの内容物を収納した右側面図

第3図 被告容器Ⅰの内容物を収納した上端部を斜めから表した図

第4図 被告容器Ⅰの内容物を収納した下端部を斜めから表した図

第5図 被告容器Ⅰの内容物を収納した底面図

第6図 被告容器Ⅰの内容物を除いた正面図

第7図 被告容器Ⅰの内容物を除いた右側面図

第8図 被告容器Ⅰの内容物を除いた上端部を斜めから表した図

第9図 被告容器Ⅰの内容物を除いた下端部を斜めから表した図

第10図 被告容器Ⅰの内容物を除いた底面図

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第3図

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第4図

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第5図

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第8図

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第9図

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第10図

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物件日目録Ⅷ

被告容器Ⅱの図面の説明

第1図 被告容器Ⅱの内容物を収納した正面図

第2図 被告容器Ⅱの内容物を収納した右側面図

第3図 被告容器Ⅱの内容物を収納した上端部を斜めから表した図

第4図 被告容器Ⅱの内容物を収納した下端部を斜めから表した図

第5図 被告容器Ⅱの内容物を収納した底面図

第6図 被告容器Ⅱの内容物を除いた正面図

第7図 被告容器Ⅱの内容物を除いた右側面図

第8図 被告容器Ⅱの内容物を除いた上端部を斜めから表した図

第9図 被告容器Ⅱの内容物を除いた下端部を斜めから表した図

第10図 被告容器Ⅱの内容物を除いた底面図

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第3図

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第4図

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第5図

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第8図

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第9図

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第10図

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物件目録Ⅸ

被告容器Ⅲの図面の説明

第1図 被告容器Ⅲの内容物を収納した正面図

第2図 被告容器Ⅲの内容物を収納した右側面図

第3図 被告容器Ⅲの内容物を収納した上端部を斜めから表した図

第4図 被告容器Ⅲの内容物を収納した下端部を斜めから表した図

第5図 被告容器Ⅲの内容物を収納した底面図

第6図 被告容器Ⅲの内容物を除いた正面図

第7図 被告容器Ⅲの内容物を除いた右側面図

第8図 被告容器Ⅲの内容物を除いた上端部を斜めから表した図

第9図 被告容器Ⅲの内容物を除いた下端部を斜めから表した図

第10図 被告容器Ⅲの内容物を除いた底面図

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第3図

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第4図

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第5図

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第8図

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第9図

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第10図

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(19)日本国特許庁(JP) (12)登録実用新案公報(U) (11)実用新案登録番号

第3001540号

(45)発行日 平成6年(1994)8月30日 (24)登録日 平成6年(1994)6月22日

(51)Int.Cl.3B 6 5 D 75/36 識別記号 庁内整理番号 7191-3E FI 技術表示箇所

評価書の請求 未請求 請求項の数9 FD

(21)出願番号 実願平6-2754

(22)出願日 平成6年(1994)2月28日

(73)実用新案権者 593214420

株式会社ミラリード

東京都港区東麻布2-27-1

(72)考案者 三好茂

東京都港区東麻布2-27-1 株式会社ミラリード内

(74)代理人 弁理士 佐藤辰彦 (外1名)

(54)【考案の名称】 ブリスター包装容器

(57)【要約】

【目的】外部からの衝撃が内容物にまで及びにくく、耐圧強度が高く、内容物を所定の位置に位置決めできるブリスター包装容器を提供する.

【構成】ブリスター包装容器1は容器本体2に内容物4を収納し、容器本体2の開口縁に設けたフランジ7を折り返した間に台板3を挟み込んで閉蓋する.容器本体2の上端部8に設けた大略U字状の凹ビード11により、内容物4の上端部10が保持される.容器本体2の下端部9には大略U字状の凹ビード13と該凹ビード13の両脚部13a、13bに連なる一対の凸ビード14a、14bとが設けられ、内容物4の下端部12を保持する.容器本体2の上下端部8、9間には、容器本体2を横断して、内容物2の上部を係止する大略U字状の凹ビート15、16が設けられている.位置決め部材5は容器本体2の内側面と内容物4との間の空間Aに配されて台紙に固定される.容器本体2の上面には、付属品6を収容する付属品収容部17と、一対の突起18、19とが長手方向に間隔を存して設けられている.

FIG.1

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【実用新案登録請求の範囲】

【請求項1】開口緑にフランジを有する蒲鉾形の外形を備えるプラスチックのブリスター容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて該容器本体の開口部を閉蓋する台板とからなり、少なくとも容器本体の長手方向中央に沿って筒状の内容物を収納し、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されるブリスター包装容器であって、

容器本体に収納された内容物の上下端部が臨む容器本体の上下端部外面側に、内容物の上下端部を夫々保持する輪郭を有して台紙に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードを設けたことを特徴とするブリスター包装容器.

【請求項2】開口縁にフランジを有する蒲鉾形の外形を備えるプラスチックのブリスター容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて該容器本体の開口部を閉蓋する台板とからなり、少なくとも容器本体の長手方向中央に沿って筒状の内容物を収納し、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されるブリスター包装容器であって、

容器本体に収納された内容物の上下端部が臨む容器本体の上下端部外面側に、内容物の上下端部を夫々保持する輪郭を有して台紙に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードを設け、かつ該凹ビードの両脚部に連なり前記台板との間で外方へ突出する一対の凸ビードを設けたことを特徴とするブリスター包装容器.

【請求項3】開口縁にフランジを有する蒲鉾形の外形を備えるプラスチックのブリスター容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて該容器本体の開口部を閉蓋する台板とからなり、少なくとも容器本体の長手方向中央に沿って筒状の内容物を収納し、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されるブリスター包装容器であって、

容器本体に収納された内容物の上下端部が臨む容器本体の一方の端部外面側に、内容物の上下端部を夫々保持する輪郭を有して台紙に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードを設け、また、容器本体の他方の端部外面側に、内容物の上下端部を夫々保持する輪郭を有して台紙に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードと、該凹ビードの両脚部に連なり前記台板との間で外方へ突出する一対の凸ビードとを設けたことを特徴とするブリスター包装容器.

【請求項4】前記容器本体の上下端部間に、内容物の上部を係止する輪郭を有して容器本体を横断し、前記台板に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードを設けたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載のブリスター包装容器.

【請求項5】前記容器本体の上下端部間の左右内面と内容物との間の空間に配されて前記台板に固定され、該容器本体の上下端部間の内面に当接し且つ内容物を下方から保持する保持部を有する位置決め部材を備えたことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載のブリスター包装容器.

【請求項6】前記容器本体の上下端部間の上面に外側に突出した付属品収容部を設けたことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項記載のブリスター包装容器.

【請求項7】前記容器本体の上下端部間の上面に、外側に突出した付属品収容部と外側に突出した突起部とを容器本体の長手方向に間隔をあけて設けたことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項記載のブリスター包装容器.

【請求項8】前記容器本体の上下端部間の上面に該容器本体の長手方向に間隔を存して一対の外方へ突出する突起部を設けたことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項記載のブリスター包装容器.

【請求項9】前記内容物が紙製の筒状体に薄手のプラスチックフィルムを巻回したものであることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項記載のブリスター包装容器.

【図面の簡単な説明】

【図1】本施例の内容物を収納して閉蓋した状態の正面図.

【図2】図1のⅡ-Ⅱ線断面図.

【図3】本実施例の長手方向の上端部の参考斜視図.

【図4】本実施例の長手方向の下端部の参考斜視図.

【図5】本実施例の保護部材の参考斜視図.

【図6】図1のⅥ-Ⅵ線断面図.

【図7】図1のⅦ-Ⅶ線断面図.

【図8】図1のⅧ-Ⅷ線断面図.

【符号の説明】

1-ブリスター包装容器、2-容器本体、3-台板、4-内容物、5-位置決め部材、5a-保持部、6-付属品、7-フランジ、8-容器本体の上端部、9-容器本体の下端部、10-内容物の上端部、11-容器本体の上端部の凹ビート、12-内容物の下端部、13-容器本体の下端部の凹ビート、13a、13b-容器本体の下端部の凹ビートの両脚部、14-容器本体の下端部の凸ビート、14a、14b-容器本体の下端部の凸ビートの両脚部、15、16-容器本体の上下端部間の凹ビート、17-付属品収容部、18、19-突起部、A-容器本体の内側面と内容物との間の空間

【図1】

FIG.1

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【図2】

FIG.2

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【図3】

FIG.3

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【図4】

FIG.4

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【図5】

FIG.5

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【図6】

FIG.6

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【図7】

FIG.7

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【図8】

FIG.8

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【考案の詳細な説明】

【0001】

【産業上の利用分野】

本考案は、筒状の内容物を収納するブリスター包装容器に関する。

【0002】

【従来の技術】

従来、自動車のウインドウに貼着するフィルムなどの筒状の内容物を収納するブリスター包装器としては、内容物の形状にほぼ合わせた輪郭のふくらみを透明なプラスチックシートにより成形して容器本体とし、容器本体に内容物を収納した後、容器本体の開口縁のフランジ部分を折り返して台板を挟み込んで包装するものが知られている。

【0003】

しかしながら、このようなブリスター包装容器においては、容器本体と内容物との間の空間、距離がほとんどないため、外部からの衝撃が内容物にまで衝撃が及び易いという欠点がある。特に、内容物が自動車のウインドフィルムのように紙製の中筒に薄手のプラスチックフィルムを巻回した筒状体の物品である場合には、特に、筒状体の上下端部に臨む容器本体の上下端部からの衝撃により凹んで筒状体の両端が傷つくと、商品価値を損なうおそれがあった。

【0004】

一方、容器本体と内容物との間の空間を大きくすると、耐圧強度が弱くなり、外部からの衝撃により容器本体が凹み易く、内容物が外圧により凹み易い。また、容器本体と内容物との間の空間が大きいと、内容物の位置決めができず、包装容器内で内容物が動いた際に内壁に当たって傷つき易くなる。

【0005】

また、ブリスター包装容器を積み重ねて輸送や保管をする場合には、容器本体同士、又は容器本体と台紙とが擦れ合って容器本体が傷つき易くなり、容器本体の透明性が損なわれる。このため、互いに積み重ねた際に傷つきにくい包装容器が望まれる。

【0006】

【考案が解決しようとする課題】

本考案は、ブリスター包装容器の改良を目的とし、より具体的には、外部からの衝撃が内容物にまで及びにくく、容器本体の耐圧強度が高く、内容物を所定の位置に位置決めできるブリスター包装容器を提供することを目的とする。

【0007】

更に、本考案は、積み重ねた際に容器本体が傷つきにくいブリスター包装容器を提供することを目的とする。

【0008】

【課題を解決するための手段】

かかる目的を達成するために、本考案に係るブリスター包装容器の第1の態様は、開口縁にフランジを有する蒲鉾形の外形を備えるプラスチックのブリスター容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて該容器本体の開口部を閉蓋する台板とからなり、少なくとも容器本体の長手方向中央に沿って筒状の内容物を収納し、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されるブリスター包装容器であって、容器本体に収納された内容物の上下端部が臨む容器本体の上下端部外面側に、内容物の上下端部を夫々保持する輪郭を有して台紙に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードを設けたことを特徴とする。

【0009】

また、本考案の第2の態様は、開口縁にフランジを有する蒲鉾形の外形を備えるプラスチックのブリスター容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて該容器本体の開口部を閉蓋する台板とからなり、少なくとも容器本体の長手方向中央に沿って筒状の内容物を収納し、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されるブリスター包装容器であって、容器本体に収納された内容物の上下端部が臨む容器本体の上下端部外面側に、内容物の上下端部を夫々保持する輪郭を有して台紙に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードを設け、かつ該凹ビードの両脚部に連なり前記台板との間で外方へ突出する一対の凸ビードを設けたことを特徴とする。

【0010】

また、本考案の第3の態様は、開口縁にフランジを有する蒲鉾形の外形を備えるプラスチックのブリスター容器本体と、該フランジを内側に折り返した間に挟み込まれて該容器本体の開口部を閉蓋する台板とからなり、少なくとも容器本体の長手方向中央に沿って筒状の内容物を収納し、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成れるブリスター包装容器であって、容器本体に収納された内容物の上下端部が臨む容器本体の一方の端部外面側に、内容物の上下端部を夫々保持する輪郭を有して台紙に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードを設け、また、容器本体の他方の端部外面側に、内容物の上下端部を夫々保持する輪郭を有して台紙に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードと、該凹ビードの両脚部に連なり前記台板との間で外方へ突出する一対の凸ビードとを設けたことを特徴とする。

【0011】

なお、前記のブリスター包装容器においては、前記容器本体の上下端部間に、内容物の上部を係止する輪郭を有して容器本体を横断し、前記台板に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードを設けてもよい。

【0012】

更に、前記のブリスター包装容器においては、前記容器本体の上下端部間の左右内面と内容物との間の空間に配されて前記台板に固定され、該容器本体の上下端部間の内面に当接し且つ内容物を下方から保持する保持部を有する位置決め部材を備えてもよい。

【0013】

更に、前記のブリスター包装容器においては、前記容器本体の上下端部間の上面に外側に突出した付属品収容部を設けてもよい。

【0014】

また、前記容器本体の上下端部間の上面に、外側に突出した付属品収容部と外側に突出した突起部とを容器本体の長手方向に間隔をあけて設けてもよい。

【0015】

また、前記容器本体の上下端部間の上面に該容器本体の長手方向に間隔を存して一対の外方へ突出する突起部を設けてもよい。

【0016】

更に、前記のブリスター包装容器は、前記内容物が紙製の筒状体に薄手のプラスチックフィルムを巻回したものである場合に好適である。

【0017】

【作用】

本考案の第1の熊様に係るブリスター包装容器では、内容物は容器本体の長手方向中央に沿って収納され、容器本体の上下端部に設けられた大略U字状の凹ビードに内容物の上下端部が保持され、内容物は容器本体の長手方向及び両側方向に位置決めされ、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成される。そして、容器本体の開口縁のフランジを内側に折り返した間に台板が挟み込まれて該容器本体の開口部が閉蓋され、内容物は容器本体と台紙との間で位置決めされる。容器本体の側部内面と内容物との間に形成された空間は、容器本体の両側からの外的衝撃が内容物まで及びにくくしている。そして、容器本体の上下端部に設けた大略U字状の凹ビードは台紙に向かって垂直方向に延びており、容器本体の上下端部における容器本体上面側からの外的衝撃に対する耐圧強度を高めている。

【0018】

また、本考案の第2の態様は、容器本体の上下端部外面側に、台紙に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードと共に、該凹ビードの両脚部に連なり外方へ突出した一対の凸ビードを設けたことにより、容器本体の上下端部における容器本体上面側からの外的衝撃に対する耐圧強度を高めると共に、容器本体の上下端部正面への外的衝撃が内容物の上下端部にまで及びにくくしている。

【0019】

また、本考案の第3の態様は、容器本体の一方の端部外面側に、第1の熊様と同じく、台紙に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードを設け、容器本体の上下端部への容器本体上面からの外的衝撃に対する耐圧強度を高めている。そして、容器本体の他方の端部外面側に、第2の態様と同じく、台紙に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードと共に、該凹ビードの両脚部に連なり外方へ突出した一対の凸ビードを設け、容器本体の上下端部への容器本体上面からの外的衝撃に対する耐圧強度を高めると共に、容器本体の上下端部正面への外的衝撃が内容物の上下端部にまで及びにくくしている。

【0020】

前記のブリスター包装容器において、前記容器本体の上下端部間に、内容物の上部を係止する輪郭を有して容器本体を横断し、前記台板に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードを設けた場合には、該凹ビードにより容器本体上面及び両側面からの外的衝撃に対する耐圧強度が高まり、容器本体が外的衝撃により凹みにくくなる。従って、特に内容物が長尺物の場合には、容器本体の上下端部の中間部分における耐圧強度が向上する。また、該凹ビードの内容物の上部を係止する輪郭によって、容器本体の上下端部の中間においても内容物の位置決めがされる。

【0021】

更に、前記のブリスター包装容器において、容器本体の上下端部間の左右内面と内容物との間の空間に配され且つ固定される前記位置決め部材を備えた場合には、該位置決め部材が容器本体の上下端部間の左右内面と内容物との間の空間を埋めて、特に容器本体両側面からの外的衝撃に対する耐圧強度を高め、容器本体が外的衝撃により凹みにくくする。また、前記位置決め部材は、該容器本体の上下端部間の内面に当接し且つ内容物を下方から保持して、容器本体の上下端部間においても内容物の位置決めをする。

【0022】

更に、前記のブリスター包装容器において、前記容器本体の上下端部間の上面に外側に突出した付属品収容部を設けた場合には、付属品は該付属品収容部に収容されて、内容物との間で位置決めされる。

【0023】

また、前記容器本体の上下端部間の上面に外側に突出した付属品収容部と、外側に突出した突起部とを容器本体の長手方向に間隔をあけて設けた場合には、容器本体の上面に他の包装容器の台紙が載るように包装容器同士を順に積み重ねたとき、容器本体の上面の付属品収容部と突起部とが他の包装容器の台紙に当接し、容器本体の上面が他の包装容器の台紙と直接擦れ合うことを防ぐ。

【0024】

また、前記容器本体の上下端部間の上面に該容器本体の長手方向に間隔を存して一対の外方へ突出する突起部を設けた場合には、容器本体の上面の突起部が他の包装容器の台紙に当接し、容器本体の上面が他の包装容器の台紙と直接擦れ合うことを防ぐ。

【0025】

【実施例】

本考案の実施例を図1乃至図8を参照して説明する。図1は本施例の内容物を収納して閉蓋した状態の正面図、図2は図1のⅠⅠ-ⅠⅠ線断面図、図3は本実施例の長手方向の上端部の参考斜視図、図4は、本実施例の長手方向の下端部の参考斜視図、図5は本実施例の保護部材の参考斜視図、図6は図1のⅤⅠ-ⅤⅠ線断面図、図7は図1のⅤⅠⅠ-ⅤⅠⅠ線断面図、図8は図1のⅤⅠⅠⅠ-ⅤⅠⅠⅠ線断面図である。

【0026】

図1及び図2を参照して、1はブリスター包装容器、2はブリスター容器本体、3は台板、4は内容物、5は位置決め部材、6は付属品である。

【0027】

容器本体2は、開口縁に設けたフランジ7を有する蒲鉾形の外形を備えており、プラスチックのブリスター成形されている。台板3は、フランジ7の先端7aを折り返した間に挟み込まれて容器本体2の開口部を閉蓋する。内容物4は、紙製の筒状体に薄手のプラスチックフィルムを巻回したものであり、容器本体2の長手方向中央に沿って収納される。容器本体2の側部内面と内容物4との間には空間Aが形成される。

【0028】

図3示のように、容器本体2に収納された内容物4の上端部10が臨む容器本体2の上端部8の外面側には、内容物4の上端部10を保持する輪郭を有して台紙3に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビード11が設けられている。容器本体2の上端部8側のフランジ7bは、外側に大きく張り出しており、先端付近には包装容器1吊り下げ用の穴7cが設けられている。

【0029】

また、図4示のように、容器本体2の下端部9の外面側には、内容物4の下端部12を保持する輪郭を有して台紙に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビード13と、該凹ビードの両脚部13a、13bに連なり前記台板3との間で外方さ突出する一対の凸ビード14a、14bとが設けられている。容器本体2の下端部9側のフランジ7dは、張り出し部分がほとんどない。

【0030】

また、図5及び図6示のように、位置決め部材5は、容器本体2の上下端部8、9間の内面に当接し且つ内容物2を下方から保持する保持部5aを有しており、前記容器本体2の上下端部8、9間の左右内面と内容物4との間の空間Aに配され、且つ台板3に固定される。

【0031】

図7示のように、前記容器本体2の上下端部8、9間には、内容物4の上部を係止する輪郭を有して容器本体2を横断し、前記台板3に向かって垂直方向に延びる大略U字状の2個の凹ビード15、16が設けられている。

【0032】

図8示のように、容器本体2の下端部9付近の上面には、外側に突出した付属品収容部17が設けられている。

【0033】

図1及び図2を参照して、容器本体2の上端部8付近の上面には、外側に突出した左右一対の突起部18a、18bが設けられている。

【0034】

次に、本実施例の作動を説明する。

【0035】

本実施例のブリスター包装容器1によれば、内容物4は容器本体2の長手方向中央に沿って収納され、容器本体2の上端部8に設けられた大略U字状の凹ビード11の内側の輪郭に沿って内容物4の上端部10が保持される。そして、凹ビード11が台紙3に向かって垂直方向に延びており、容器本体2の上端部8への容器本体2上面からの外的衝撃に対する耐圧強度を高めている。フランジ7bが大きく張り出していて、容器本体2の上端部8正面へ外的衝撃が加わりにくくしている。

【0036】

容器本体2の下端部9には、台紙3に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビード13と共に、該凹ビード13の両脚部13a、13bに連なり外方へ突出した一対の凸ビード14a、14aが設けられており、容器本体2の下端部11への容器本体2上面からの外的衝撃に対する耐圧強度を高めると共に、容器本体2の下端部9正面への外的衝撃が内容物4の下端部12にまで及びにくくしている。そのため、フランジ7dの張り出しを小さくすることができている。

【0037】

容器本体2の前記上下端部8、9により内容物4の上下端部10、12が長手方向及び両側方向に位置決めされ、そして、容器本体2の開口縁のフランジ7の先端7dを内側に折り返した間に台板3が挟み込まれて該容器本体2の開口部が閉蓋されることにより、内容物4は容器本体2と台紙3との間で位置決めされる。そして、容器本体2の側部内面と内容物4との間に空間Aが形成されて、容器本体2の両側からの外的衝撃が内容物4まで及びにくくしている。

【0038】

容器本体2の上下端部8、9間に、容器本体2を横断する大略U字状の凹ビード15、16を設けたことにより、容器本体2への上面及び両側面からの外的衝撃に対する耐圧強度が高まり、容器本体2が外的衝撃により凹みにくくなる。従って、内容物4が前記のような筒状体の場合には、容器本体2の上下端部8、9の中間部分の耐圧強度が向上する。また、該凹ビード15、16が内容物4の上部を係止するため、容器本体2の上下端部8、9の中間部分においても内容物4が位置決めされる。

【0039】

更に、位置決め部材5が容器本体2の上下端部8、9間の左右内面と内容物4との間の空間Aを埋めることにより、特に容器本体2の両側面からの外的衝撃に対する耐圧強度を高め、容器本体2が外的衝撃により凹みにくくする。また、前記位置決め部材5は、容器本体2の上下端部8、9間の内面に当接し且つ内容物2を下方から保持して、容器本体2の上下端部8、9間においても内容物4の位置決めをする。

【0040】

更に、容器本体2の下端部9付近の上面に設けた付属品収容部17に付属品6が収容されて、内容物4との間で位置決めされる。

【0041】

また、容器本体2の上端部8付近の上面に左右一対の突起部18、19を設けたことにより、容器本体2の上面に他の包装容器の台紙が載るように包装容器同士を順に積み重ねたとき、付属品収容部17と突起部18、19とが他の包装容器の台紙に当接し、容器本体2の上面が他の包装容器の台紙と直接個擦れ合うことを防止する。

【0042】

なお、本考案は前記実施例に限られるものではなく、次のように変更してもよい。

【0043】

すなわち、本実施例においては、容器本体2の上端部8に大略U字状の凹ビード11を設け、容器本体2の下端部9には大略U字状の凹ビード13と、該凹ビード13の両脚部13a、13bに連なる一対の凸ビード14a、14bとを設けるようにしたが、これに限らず、容器本体2の上下端部8、9正面への外的衝撃が内容物4の上下端部10、12にまで及びにくくする必要が特にない場合には、容器本体2の上下端部8、9の両方に大略U字状の凹ビード11を設けるようにしてもよい。逆の場合には、容器本体2の上下端部8、9の両方に、大略U字状の凹ビード13と、該凹ビード13の両脚部13a、13bに連なる一対の凸ビード14a、14bとを設けるようにしてもよい。

【0044】

また、本実施例においては、容器本体2の上下端部8、9間に、容器本体2を横断する大略U字状の2個の凹ビード15、16を設けているが、内容物4の長さに応じて凹ビードの数を増やすことにより、外的衝撃に対する耐圧強度を高めることができる。逆に、内容物4の長さが短い場合には、凹ビードの数を減らしてもよい。

【0046】

また、本実施例においては、容器本体2の上下端部8、9間の左右内面と内容物4との間の空間Aに配される位置決め部材5を備えているが、内容物4の長さに応じて、位置決め部材5を備えない構成としてもよい。

【0046】

また、本実施例においては、容器本体2の上面の下端部9付近に付属品収容部17が設けられ、上端部8付近に左右一対の突起部18、19が設けられているが、これに限ることなく、突起部18、19の代わりに、上端部8付近にも付属品収容部を設けるようにしてもよい。逆に、容器本体2の上面に付属品収容部を設けずに、容器本体2の長手方向に間隔を存して一対の突起部18、19を複数箇所設けるようにしてもよい。これらの場合であっても、本実施例と同様に、容器本体の上面に他の包装容器の台紙が載るように包装容器同士を順に積み重ねたとき、容器本体の上面が他の包装容器の台紙と直接個擦れ合うことを防ぐことができる。

【0047】

【考案の効果】

上記の説明から明らかなように、本考案の第1の態様に係るブリスター包装容器によれば、内容物の上下端部を夫々保持する輪郭を有して台紙に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードを設けたことにより、包装された内容物がその上下端部において該凹ビードによって位置決めされ、更に、大略U字状の凹ビードが台紙に向かって垂直方向に延びていることにより、容器本体の上下端部への容器本体上面からの外的衝撃に対する耐圧強度が高められる。そして、容器本体の側部内面と内容物との間に空間が形成されることにより、容器本体の両側からの外的衝撃が内容物まで及びにくくなり、内容物の外的衝撃による損傷を防止することができる。

【0048】

本考案の第2の態様によれば、本考案の第1の態様による効果に加えて、容器本体の上下端部外面側に、内容物の上下端部を夫々保持する輪郭を有して台紙に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードと共に、該凹ビードの両脚部に連なり外方へ突出した一対の凸ビードを設けたことにより、容器本体の上下端部正面への外的衝撃が内容物の上下端部にまで及びにくくなり、内容物の外的衝撃による損傷を防止することができる。これにより容器本体の上下端部側のフランジを大きくする必要がなくなるため、包装容器全体を小型化することができる。

【0049】

本考案の第3の態様によれば、外的衝撃に対する耐圧強度を高める必要のある容器本体の端部の側だけに、第2の態様と同じ大略U字状の凹ビードと該凹ビードの両脚部に連なる一対の凸ビードとを設けて耐圧強度を高め、他方の端部には第1の態様と同じ大略U字状の凹ビードを設けて、容器本体の一方側におけて大きなフランジを不要とすることができる。

【0050】

更に、前記のブリスター包装容器において、前記容器本体の上下端部間に、内容物の上部を係止する輪郭を有して容器本体を横断し、前記台板に向かって垂直方向に延びる大略U字状の凹ビードを設けた場合には、容器本体上面及び両側面からの外的衝撃に対する耐圧強度を高めて、容器本体が外的衝撃により凹みにくくして外的衝撃から保護することができると共に、容器本体の上下端部の中間においても内容物の位置決めができ、内容物を安定して収納できる。

【0051】

更に、前記のブリスター包装容器において、容器本体の上下端部間の左右内面と内容物との間の空間に配され且つ固定される前記位置決め部材を備えた場合には、容器本体の上下端部間の両側面からの外的衝撃に対する耐圧強度を高めて、容器本体が外的衝撃により凹みにくくでき、内容物を外的衝撃から保護することができる。また、前記位置決め部材により、容器本体の上下端部間においても内容物の位置決めができ、内容物を確実に不動に収納することができる。

【0052】

なお、前記のブリスター包装容器において、前記容器本体の上下端部間の上面に外側に突出した付属品収容部を設けた場合には、付属品を容器本体の上面に収容するので、包装容器の長手方向及び左右方向に付属品を収容するための特別の空間を設ける必要がなく、包装容器をコンパクトにすることができる。

【0053】

また、前記容器本体の上下端部間の上面に前記付属品収容部と共に、突起部とを容器本体の長手方向に間隔をあけて設けた場合には、容器本体の上面に他の包装容器の台紙が載るように包装容器同士を順に積み重ねたとき、付属品収容部と突起部とが他の包装容器の台紙に当接するので、容器本体の上面が他の包装容器の台紙と直接個擦れ合って傷つくことを防ぐことができる。

【0054】

また、前記容器本体の上下端部間の上面に該容器本体の長手方向に間隔を存して一対の外方へ突出する突起部を設けた場合には、容器本体の上面の突起部が他の包装容器の台紙に当接し、容器本体の上面が他の包装容器の台紙と直接個擦れ合って傷つくことを防ぐことができる。

【0055】

前記のブリスター包装容器は、前記内容物が紙製の筒状体に薄手のプラスチックフィルムを巻回したもののように、傷つき易い内容物の場合に、好適である。

(19)日本国特許庁 (11)登録意匠番号 946244

(45)平成8年(1996)2月8日発行 (12)意匠公報(S) 946244

(52)F4-32

(21)意願 平6-5066 (22)出願 平6(1994)2月28日

(24)登録 平7(1995)11月24日

(72)創作者 三好茂 東京都港区東麻布2-27-1

(73)意匠権者 株式会社ミラリード 東京都港区東麻布2-27-1

(74)代理人 弁理士 佐藤辰彦 外1名

審査官 遠藤京子

(54)意匠に係る物品 包装用容器

(55)説明 本物品の保護カバーを開口部を上に向けて置き、この保護カバーに附属品(ゴムヘラ)を収納し、その上から自動車用ウインドウフイルムなどの筒状の内容物を収納し、その上から保護カバーと筒状の内容物との間の空間に位置決め部材を収納する。最後に、保護カバーの開口縁に設けられたフランジの折返し部で挟み込むようにして台板を装着し、保護カバーと台板と位置決めにより筒状の内容物や附属品を収納する。本物品は、台板部を除いて透明である。

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登録実用新案公報

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意匠公報

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