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大阪地方裁判所 平成8年(ワ)2735号 判決

主文

一  被告らは、原告X1に対し、各自六〇七万二七二七円及びこれに対する平成六年四月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、原告X2、原告X3、原告X4のそれぞれに対し、各自一八万円及びこれに対する平成六年四月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用はこれを五分し、その四を原告らの、その余を被告らの負担とする。

五  この判決の第一、第二項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告らは、原告X1に対し、各自三一〇〇万四五九八円及びうち二八五〇万四五九八円に対する平成六年四月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、原告X2に対し、各自一一〇万円及びうち一〇〇万円に対する平成六年四月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告らは、原告X3、原告X4のそれぞれに対し、各自二二万円及びうち二〇万円に対する平成六年四月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告X1(以下「原告X1」という。)の運転する自動車が、対向して進行してきた被告幸福交通株式会社(以下「被告会社」という。)が所有し、被告Y1(以下「被告Y1」という。)の運転する自動車と衝突し、これにより、原告X1のほか、同乗していた原告X2(以下「原告X2」という。)、原告X3(以下「原告X3」という。)、原告X4(以下「原告X4」という。)が傷害を負ったとして、原告らが、被告会社に対しては自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条及び民法七一五条に基づき、被告Y1に対しては民法七〇九条に基づき、それぞれ損害の賠償を求めた事案である。

一  争いのない事実等

以下のうち、1、3は当事者間に争いがなく、2は乙第二ないし第一〇号証により、4は甲第三号証、第五、第六号証、第八号証、第一〇号証、第一二号証、第一四号証、第一六ないし第二〇号証、乙第一八号証及び弁論の全趣旨により、それぞれ認めることができる。

1  被告Y1は、平成六年四月六日午後六時五〇分ころ、普通乗用自動車(なにわ○○う○○○○、以下「被告車両」という。)を運転して、大阪府箕面市船場西一丁目一番一号先道路(以下「本件道路」という。)を走行中、対向して走行してきた原告X1の運転する普通貨物自動車(大阪○○ね○○○○、以下「原告車両」という。)に被告車両を衝突させた(以下「本件事故」という。)。

2  本件事故は、被告Y1が、前記場所の信号機により交通整理の行われている交差点(以下「本件交差点」という。)を東から西に向かい直進すべく時速約四〇キロメートルで進行中、本件交差点の西詰の自車進路上に駐車している車両を認め同車を避けるため右に進路を変更して対向車線にはみ出して進行するに際し、左方道路の車両に気を奪われ、対向車両の有無及びその安全を確認しないまま前記速度で右に進路を変更した過失により、おりから対向車線を反対方向から対向して来た原告車両右前部に被告車両右前部を衝突させたというものである(本件事故現場の状況は別紙図面のとおり。)。

3  被告会社は、本件事故当時、被告車両を所有して、自己のために運行の用に供していた。また、被告Y1は、被告会社の従業員であり、本件事故当時、被告会社の業務の執行として被告車両を運転していた。

4  原告X1は、本件事故により、右股関節脱臼、右下腿打撲、挫滅創、両肩挫傷等の傷害を受け、平成六年四月六日から同年六月三〇日までの間茨木医誠会病院に入院し、同年七月一日から平成七年一一月一〇日まで(実日数八八日)同病院に通院して治療を受けた。

原告X2は原告X1の妻であり、原告X3及び原告X4は原告X1の子であり、いずれも本件事故当時原告車両に同乗していたが、本件事故により、原告X2は、頸部挫傷、右肘右前腕打撲の傷害を、原告X3は、頭部外傷Ⅰ型、左前額部、左手擦過傷の傷害を、原告X4は、右膝打撲、頭部外傷Ⅰ型、後頭部打撲等の傷害をそれぞれ受け、いずれも平成六年四月六日から同年六月二一日まで箕面市立病院に通院して治療を受けた。

二  争点

被告らは、原告らの損害額(ことに、原告X1の所得額及び後遺障害の程度)について争うほか、本件事故の発生には原告X1にも過失があるから、過失相殺をすべきである旨主張する。

第三当裁判所の判断

一  原告らの損害

1  原告X1

(一) 入院雑費 一一万一八〇〇円(請求一二万〇四〇〇円)

弁論の全趣旨によれば、原告X1は、茨木医誠会病院に入院中であった平成六年四月六日から同年六月三〇日までの八六日間に一日当たり一三〇〇円の雑費を支出したものと認められるところ、右の合計は一一万一八〇〇円となる。

(二) 入院付添費 一五万円(請求五一万六〇〇〇円)

原告X1本人尋問の結果によれば、原告X1の茨木医誠会病院への入院に際し、原告X1の母が付き添ったことが認められる。しかし、乙第一八号証によれば、原告X1は、平成六年四月六日に脱臼整復術を受け、同月二八日まで直達牽引を受けていたこと、同年五月一日には看護婦に離床を促され、同月三日には車椅子による移動を促されるようになり、同月六日には車椅子による移動が可能となり、同月一〇日には松葉杖による歩行が可能となったことが認められるところ、これによれば、原告X1は、入院当初は自由に動くこともできず付添が必要であったと認められるものの、一か月を経過した同月五日には付添は必要のない状態になっていたものと認められるから、右付添のうち、本件事故と相当因果関係が認められるのは平成六年四月六日から同年五月五日までの間の三〇日間に限られるというべきである。そして、右付添を金銭に換算すれば一日当たり五〇〇〇円とするのが相当であるから、その合計は一五万円となる。

(三) 通院交通費 二八万一一三〇円(請求どおり)

甲第二二号証の一ないし一〇三及び原告X1本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告X1は、茨木医誠会病院への通院に際しタクシーを利用し、そのために二八万一一三〇円を負担したものと認められる。

(四) 休業損害 四六七万八七六八円(請求六四三万〇六四七円)

甲第二号証、乙第一八号証及び弁論の全趣旨によれば、原告X1は、平成七年七月一日の検査では、自覚症状として違和感はあるが痛みはなく、変形性関節症も認められないとされ、同月二一日のCTでは骨折部位には明らかに骨折は認められず、同年八月一日のMRIによっても、脱臼部位の右大腿骨骨頭はほぼ正常範囲にまで回復しており、無菌性大腿骨骨頭壊死も存在しないとされ、平成七年一一月一〇日症状固定の診断を受けたことが認められる。そこで、原告X1の入院状況及びその後の治療経過に照らすと、原告X1は、本件事故の翌日である平成六年四月七日から茨木医誠会病院を退院した同年六月三〇日までの八五日間は労働能力の一〇〇パーセントを、同年七月一日から平成七年六月三〇日までの三六五日間は労働能力の五〇パーセントを、同年七月一日から症状の固定した同年一一月一〇日までの一三三日間は労働能力の二〇パーセントを喪失したものと認めるのが相当である。

ところで、甲第二一号証、第二四ないし第二八号証、第二九号証の一、二及び原告X1、原告X2各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告X1は、昭和三四年○月生まれで、本件事故当時a1工業の屋号で建築工事業を営み、確定申告に際し所轄の税務署に平成五年分の所得金額として七〇一万七〇〇〇円、平成六年分の所得金額として七五三万八六四〇円と申告していること、原告X1の所得は平成三年ころより毎年増加傾向にあったこと、原告X1は、本件事故当時六名の従業員を雇用していたほか、本件事故後は原告X2も原告X1の事業を手伝い、原告X1の入院中も事業が中断することはなく、原告X1が本件事故に遭ったにもかかわらず平成六年に原告X1の所得が減少しなかったのは原告X2の協力によるところが大きいこと、原告X1は、平成六年九月二〇日、a株式会社を設立して代表取締役に就任し、原告X2も同社の取締役に就任したこと、平成七年八月一日から平成八年七月三一日までの期間分の同社の役員報酬として、原告X1は六〇〇万円、原告X2は一八〇万円の支払を受けたことが認められる。右の事実によると、本件事故後原告X1の所得が減少していないことをもってただちに原告X1に休業損害が生じなかったとするのは相当でないが、もともと原告X1の所得のすべてが原告X1の労働の対価としての性格を有していたものとも認められないから、結局、原告X1の休業損害は、平成五年賃金センサス・産業計・企業規模計・男子労働者・学歴計・年齢三五歳ないし三九歳の平均年収額五八〇万六七〇〇円を基礎として、前記の労働能力喪失率及び期間をもとに算定するのが相当である。

そうすると、本件事故による原告X1の休業損害は四六七万八七六八円となる(円未満切捨て、以下同じ。)。

計算式 5,806,700÷365×(85+365×0.5+133×0.2)=4,678,768

(五) 逸失利益 二三〇万六七一一円(請求一八〇九万六四二一円)

甲第二号証及び原告X1本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告X1は、平成七年一一月一〇日、右股関節の可動域制限の後遺障害を残して症状が固定し、右後遺障害は自動車保険料率算定会調査事務所により自賠法施行令二条別表障害別等級表(以下「障害別等級表」という。)一二級七号に該当するとの認定を受けたことが認められる。

ところで、甲第二号証によれば、右症状固定時における原告X1の股関節の可動域は、その主要運動である屈伸及び内外転についてみると、右側が屈曲八〇度、伸展一〇度、外転四〇度、内転一〇度、左側は屈曲一〇五度、伸展二〇度、外転四〇度、内転二五度であることが認められ、これによると、右側の可動域は左側の四分の三以下に制限されていることになる。しかし、乙第一八号証によれば、原告X1の股関節の右側の屈曲の可動域は、退院後間もない平成六年七月八日には七〇度であったものが、同月一五日には八〇度になり、更に同年八月三一日には一〇〇度にまで回復したが、同年九月三〇日、同年一〇月二六日、平成七年七月二一日にはいずれも九〇度であったことが認められるところ、前記認定のとおり原告X1は平成七年七月ころには相当症状が軽減しており、その後症状が悪化したことは証拠上認められないことに照らすと、原告X1の股関節の右側の屈曲の可動域は症状固定時に少なくとも九〇度までには回復していたものと認めるのが相当である。そうすると、原告X1は、股関節の可動域が右側一五〇度、左側一九〇度であり、右側の可動域制限は左側の八割弱にとどまるから、股関節の機能に障害が残ったものとまではいえず、右可動域の制限をもって障害別等級表一二級七号に該当する後遺障害であるということはできない。しかし、甲第二号証及び乙第一八号証によれば、原告X1は、症状固定時においてもレントゲン写真上右大腿骨頭に変形があり、自覚症状としてしやがみ込んだ時に右股関節痛があることが認められるから、原告X1には、局部に神経症状を残すものとして、障害別等級表一四級一〇号に該当する後遺障害が残ったものと認めるのが相当である。

そして、原告X1は症状固定時三六歳であること、本件事故後も所得が減少していないこと等に照らすと、右後遺障害によって原告X1は、一〇年間にわたって労働能力の五パーセントを喪失したものと認めるのが相当であり、原告X1の年収額として前記の五八〇万六七〇〇円を基礎とし、右期間に相当する中間利息を新ホフマン方式により控除すると、原告X1の後遺障害による逸失利益は二三〇万六七一一円となる。

計算式 5,806,700×0.05×7.945=2,306,711

(六) 物損 三〇万円(請求どおり)

甲第二三号証、乙第五号証及び原告X1本人尋問の結果によれば、原告車両はもと原告X1の友人であるBが平成三年に約一二〇万円で購入したもので、これを本件事故の一〇日ないし二週間前に原告X1が同人から三〇万円で譲り受けたものであること、原告車両は本件事故により全損となったことが認められる。そうすると、原告車両の時価は本件事故当時においても三〇万円を下らなかったものと認められるから、右をもって本件事故による損害と認めるのが相当である。

(七) 慰藉料 三〇〇万円(請求五五〇万円(入通院三〇〇万円、後遺障害二五〇万円))

本件に顕れた一切の事情を考慮すれば、原告X1が本件事故によって受けた精神的苦痛を慰謝するためには、三〇〇万円の慰藉料をもってするのが相当である。

2  原告X2

慰藉料 二〇万円(請求一〇〇万円)

原告X2は、本件事故により障害別等級表一四級一〇号に該当する後遺障害を残したと主張し、現在でも曇りの日に頭部に鈍痛があると供述する。しかし、甲第一六号証によれば、原告X2は、平成七年八月三日に症状固定の診断を受けたが、両上肢腱反射は正常で、知覚障害もない等他覚的所見がなかったことが認められるほか、前記のとおり、原告X1の休業中もその事業を助け原告X1の所得を増加させたことに照らすと、原告X2に右のような後遺障害が残ったものとは認められない。

その他本件に顕れた一切の事情を考慮すれば、原告X2が本件事故によって受けた精神的苦痛を慰謝するためには、二〇万円の慰藉料をもってするのが相当である。

3  原告X3

慰藉料 二〇万円(請求どおり)

本件に顕れた一切の事情を考慮すれば、原告X3が本件事故によって受けた精神的苦痛を慰謝するためには、二〇万円の慰藉料をもってするのが相当である。

4  原告X4

慰藉料 二〇万円(請求どおり)

本件に顕れた一切の事情を考慮すれば、原告X4が本件事故によって受けた精神的苦痛を慰謝するためには、二〇万円の慰藉料をもってするのが相当である。

二  過失相殺

乙第二ないし第一〇号証及び弁論の全趣旨によれば、原告車両と被告車両との衝突地点は、本件交差点のほぼ中心地点で、本件道路の中央線の延長線上より約〇・八ないし〇・九メートル東行車線側にはみ出した付近であること、本件道路の東行車線は幅三・五メートルであり、原告車両の車幅は一・三九メートルであったこと、原告X1は、原告車両を運転して本件交差点を西から東へ向けて進行するにあたり、中央線寄りを対向から進行して来る被告車両を認めたが、自車は中央線より左側を走行しているので衝突することはないものと思い、そのまま時速約四〇キロメートルで進行したことが認められる。右事実及び既に認定した本件事故の態様に照らせば、被告Y1には前記のような過失があるものの、被告Y1が東行車線側にはみ出して走行した点は進路前方に駐車車両がありこれを回避するためにやむをえなかったものと認められる一方、原告X1は、被告車両の動静に注意し、減速しあるいは左側に進路変更する等の措置を講じることによって容易に本件事故を回避することができたものと認められ、これらの事情を考慮すれば、本件事故の発生には、原告X1にも二割の過失があるというべきである。

三  結論

1  原告X1の損害は一〇八二万八四〇九円となるところ、これに被告らが原告X1が受けた治療費として茨木医誠会病院に支払った二〇〇万円(争いがない。)を加えると一二八二万八四〇九円となる。これより、過失相殺として二割を控除すると一〇二六万二七二七円となり、原告が自動車損害賠償責任保険から支払を受けた二七四万円(右の限度で争いがない。被告らは右額を三四四万円と主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。)及び前記治療費二〇〇万円を控除すると、残額は五五二万二七二七円となる。

本件の性格及び認容額に照らすと、弁護士費用は五五万円とするのが相当であるから、原告X1は、被告ら各自に対し、六〇七万二七二七円及びこれに対する本件事故の翌日である平成六年四月七日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。

2  原告X2、原告X3、原告X4の損害は、各二〇万円となるところ、原告X1には前記のとおり本件事故の発生について二割の過失があるので、これを過失相殺として右より控除すると残額は各一六万円となる。本件の性格及び認容額に照らすと、弁護士費用は各二万円とするのが相当であるから、原告X2、原告X3、原告X4は、それぞれ被告ら各自に対し、一八万円及びこれに対する本件事故の翌日である平成六年四月七日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。

3  よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 濱口浩)

<以下省略>

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