大阪地方裁判所 平成8年(ワ)8042号 判決 1998年7月08日
第一事件原告
霜竹美樹夫
第一事件被告
上芝守
第二事件原告
東京海上火災保険株式会社
第二事件被告
霜竹美樹夫
主文
一 被告上芝は、原告霜竹に対し、金一九四八万七五三三円及びうち金一七六八万七五三三円に対する平成四年一〇月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告霜竹のその余の第一事件請求を棄却する。
三 原告霜竹は、原告東京海上に対し、金三七万九五五五円及びこれに対する平成四年一二月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 原告東京海上のその余の第二事件請求を棄却する。
五 訴訟費用は、第一、第二事件を通じ、これを二分し、その一を原告霜竹の、その余を被告上芝及び原告東京海上の負担とする。
六 この判決は、一、三項に限り仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
(第一事件)
一 請求の趣旨
1 被告上芝は、原告霜竹に対し、金六三八七万〇二七六円及びうち金五八八七万〇二七六円に対する平成四年一〇月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告上芝の負担とする。
3 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告霜竹の第一事件請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告霜竹の負担とする。
(第二事件)
一 請求の趣旨
1 原告霜竹は、原告東京海上に対し、金七五万九一一〇円及びこれに対する平成四年一二月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は原告霜竹の負担とする。
3 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告東京海上の第二事件請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告東京海上の負担とする。
第二当事者の主張
(第一事件)
一 請求原因
1(本件事故)
(一) 日時 平成四年一〇月一一日午後三時一五分ころ
(二) 場所 大阪府茨木市泉原四番地の三先十字路交差点
(三) 被告車両 普通乗用自動車(なにわ五七に二二八六)
(四) 右運転者 被告上芝
(五) 原告車両 自動二輪車(一大阪な二九五五)
(六) 右運転者 原告霜竹
(七) 態様 被告上芝は、被告車両を運転し、本件事故現場の信号機のある十字路交差点を右折しようとした際、折から対向車線を直進してきた原告霜竹運転の原告車両と衝突した。
2(責任)
(一) 被告上芝は、被告車両の運行供用者であり、自動車損害賠償保障法三条に基づく責任がある。
(二) 被告上芝は、右折するに際し、対向車線を前方から直進してくる車両がないことなどを注視・確認すべき義務があるのにこれを怠り、漫然と右折した過失があり、同過失により本件事故は発生したものであるから、民法七〇九条に基づく責任がある。
3(傷病、治療経過、後遺障害)
(一) 原告霜竹は、本件事故により、左橈骨骨折、左眼瞼部裂傷、腹部挫傷、右第四・五中手骨骨折、左腕神経叢損傷の傷害を負った。
(二) 原告霜竹は、右傷害の治療のため、次のとおり入通院治療を受けた。
(1)<1> 茨木医誠会病院
平成四年一〇月一一日から同年一一月一二日まで入院三三日間
<2> 寺元記念病院
平成五年七月一二日から同年八月二八日まで入院四八日間
(2)<1> 摂津医誠会病院
平成四年一一月一三日から平成九年八月一三日まで通院
<2> 大阪市立大学附属病院
平成四年一〇月一三日から平成五年六月一五日まで通院
<3> 寺元記念病院
平成五年八月二九日から同月三一日まで通院
<4> 越川病院
平成五年九月七日から平成九年八月一三日まで通院
(三) 後遺障害の内容と等級
原告は、平成九年八月一三日、症状固定し、後遺障害等級六級相当(右手指五指用廃〔七級七号〕と左手関節の機能の著しい障害〔一〇級一〇号〕の併合)と認定された。
なお、右の他に一四級(左右下肢醜状痕)の後遺障害も存するが、加級されていない。
4(損害)
(一) 治療費 八八万三〇三〇円
(1) 茨木医誠会病院 一六万六四七〇円(既払い)
(2) 大阪市立大学附属病院 七五〇〇円(既払い)
(3) 摂津医誠会病院 三九万九三五〇円(未払い)
(4) 寺元記念病院 三〇万〇九六〇円(既払い)
(5) 越川病院 八七五〇円(未払い)
(二) 付添看護費 三万五〇〇〇円
平成五年七月一七日から同月二三日までの七日間
5000円×7日=3万5000円
(三) 入院雑費 九万七二〇〇円
1200円×81日=9万7200円
(四) 交通費 五〇万九三四〇円
(1) 大阪市立大学附属病院 一万二六〇〇円
通院期間 平成四年一一月から平成五年六月まで
通院日数 七日
電車利用 (北千里~天王寺)片道四五〇円
14回×450円=6300円(原告分)
14回×450円=6300円(付添人分)
(2) 摂津医誠会病院 三九万七六〇〇円
通院期間 平成四年一一月から平成八年五月まで
通院日数 六七七日(〔39回+1315回〕÷2=677)
タクシー利用(三九回) 六万八八五〇円
電車利用 (北千里~正雀)片道二五〇円(一三一五回)
1315回×250円=32万8750円
(3) 寺元記念病院 六万四五八〇円
通院期間 平成五年七月から同年八月まで
通院日数 三〇日
電車利用 (北千里~千里中央~難波~河内長野)往復一九八〇円
1980円×30回=5万9400円(原告分)
1980円×1回=1980円(付添人分)
(4) 越川病院 三万四五六〇円
通院期間 平成五年九月から平成八年六月まで
通院日数 一八日
電車利用 (北千里~西田辺)片道四八〇円
36回×480円=1万7280円(原告分)
36回×480円=1万7280円(付添人分)
(五) 入通院慰謝料 三〇〇万円
(六) 休業損害 二二九万〇三四二円
原告霜竹は、本件事故前、アルバイトにより、平成四年七月三万三四七〇円、同年八月一〇万七八二三円、同年九月八万七五四八円の収入を得ていたが(一日当たり二五四二円)、平成四年一〇月一一日から平成七年三月三一日までの九〇一日間の休業を余儀なくされた。
(七) 逸失利益 五一四七万七三六四円
原告霜竹は、症状固定時(平成九年八月一三日)二二歳であったところ、平成七年賃金センサス高校卒業男子の平均賃金は、三三〇万七三〇〇円であり、労働能力喪失率六七パーセント、新ホフマン係数二三・二三一として、原告の逸失利益の現価を計算すると、次の計算式のとおり、五一四七万七三六四円となる。
330万7300円×0.67×23.231=5147万7364円
(八) 後遺障害慰謝料 一一五〇万円
(九) 物損 四〇万六〇〇〇円
(1) 廃車引上費用 二万円
(2) 原告車両(事故時評価額) 二八万六六〇〇円
(3) タンクバッグ 一万二八〇〇円
(4) ヘルメット 三万七八〇〇円
(5) ジーパン 一万二〇〇〇円
(6) ジャケット 九八〇〇円
(7) グローブ 一万二〇〇〇円
(8) スニーカー 一万五〇〇〇円
(一〇) 弁護士費用 五〇〇万円
よって、原告霜竹は被告上芝に対し、民法七〇九条、自動車損害賠償保障法三条による損害賠償請求権に基き、金六三八七万〇二七六円及びこれから弁護士費用を控除した金五八八七万〇二七六円に対する本件事故の日である平成四年一〇月一一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1、2は認める。
2 同3(一)、(二)(1)は認め、(2)は知らず、(三)は認める。
3 同4(一)は認め、その余は争う。
三 抗弁
1(過失相殺)
(一) 本件事故現場交差点は、片側一車線のセンターラインのある南北道路に、西方向から東に向けて幅員六メートルの道路が突き当たり、東方向から西に向けては幅員二メートルの道路があるものの、この道路は自動車道ではないため、自動車道としては、南北道路に西からの道路が交差した三差路交差点である。
被告上芝は、被告車両を運転して北から南へ進行し、本件交差点で西へ右折するべく、前方の青色信号に従って本件交差点に進入したが、対向車線を北進する自動車が何台かあったため、この通過を交差点内で停止して待っていたところ、対面信号が黄色に変わるとともに、対向車線の単車二台が減速して停止しつつあるのを見て、右折するべく発進した。
ところが、その直後に、右二台の単車とは別に、対向車線を原告の運転する原告車両が時速七〇ないし八〇キロメートルで交差点内に進入してくるのを発見し、直ちに急制動措置をとるも間に合わず、原告車両前部と被告車両左前輪部とが衝突した。
(二) 原告は制限速度をはるかに超える速度で、かつ、対面信号機が黄色表示に変わっているにもかかわらず、全く減速せず、漫然と右折待機車が自車を通過させてくれるだろうと軽信し、そのまま交差点に進入した過失がある。
従って、基本割合が原告の六〇パーセントであるが、高速度で減速せずに交差点に進行した過失は大きく、本件の場合、原告の過失割合は、右過失を二〇パーセント加算して、八〇パーセントを下ることはない。
2(損害填補)
原告は自賠責保険金一〇七六万三二〇五円及び被告から一〇三万九七二五円の合計一一八〇万二九三〇円の支払を受けた。
四 抗弁に対する認否
1 抗弁1は争う。
第二事件抗弁と同じ
2 同2は認める。
(第二事件)
一 請求原因
1(本件事故)
第一事件請求原因1と同じ
2(責任)
(一) 被告上芝が、右日時において、被告上芝所有の被告車両を運転し、本件事故現場の信号機のある交差点を北から西へ右折しようとした際、原告霜竹運転の原告車両が、前方の信号が黄色となっているにもかかわらず、猛スピードで前方不注視のまま対向車線を南から北へ直進してきたため、被告車両の左前部と原告車両の前輪とが衝突し、被告車両が損傷した。
(二) 本件事故は、原告霜竹の徐行義務違反、前方不注視の過失により生じたものであり、原告霜竹は民法七〇九条により、被告車両の損傷に伴う損害を賠償する義務がある。
3(損害)
被告車両は、その左フロントパネル等の損傷により、修理費、レッカー代等合計七五万九一一〇円相当の損害を被った。
4(保険代位)
原告東京海上は、被告上芝との間で、被告上芝の所有する被告車両が受けた損害を填補する損害保険契約を締結しており、同契約に基づき、被告上芝に対し、平成四年一二月三日、被告車両の前記損害七五万九一一〇円を支払ったので、商法六六二条により、右金額の範囲内で原告霜竹に対する損害賠償請求権を取得した。
よって、原告東京海上は原告霜竹に対し、金七五万九一一〇円及びこれに対する保険金支払日である平成四年一二月三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1は認める。
2 同2(一)のうち、信号機のある交差点を右折中の被告車両と、直進中の原告車両が衝突したこと、被告車両が損傷したことは認め、その余は否認する。
同2(二)は争う。
3 同3は知らないないし争う。
4 同4は知らない。
三 抗弁
(過失相殺)
(一) 基本割合
本件事故は、直進の原告車両が黄色信号で進入し、被告車両が青色信号で進入し、黄色信号で右折した場合ではある(この場合の基本過失割合は原告車両側が六〇パーセントとされている。)が、黄色信号に変わったのは、原告車両が停止線付近に差し掛かったところであり、交差点の手前で停止できない場合として、交差点への進入が禁止されていないから(道路交通法二条一項)、青色信号進入とほぼ同視でき、基本過失割合は、原告霜竹が二〇パーセント、被告上芝が八〇パーセントであるというべきである。
少なくとも、原告霜竹四〇パーセント、被告上芝六〇パーセントと見るべきである。
(二) 修正要素
(1) 原告霜竹側
原告車両の速度違反はない。
仮にあったとしても、せいぜい一〇キロメートル前後であり、最大で一〇パーセントである。
(2) 被告上芝側
<1> 被告上芝は、対面信号が青色から黄色に変わった時点で、原告車両の先行車両が通過し、その他に南北の進行車両がなかったにもかかわらず、直ちに右折せず、原告車両が交差点に進入し、至近距離に迫ってきてから突如右折を開始しており、「直近右折」として一〇パーセントの加算がある。
<2> 被告上芝は、本件事故現場の見通しは抜群によいにもかかわらず、交差点に進入し直進してくる原告車両に全く気づかず右折を開始しており、原告車両と衝突するまで、原告車両を発見できなかった。その意味で被告上芝の前方不注意の程度は甚だしく、「著しい過失あり」と言え、一〇パーセントの加算がある。
(三) 以上、本件事故の過失割合は、原告霜竹二〇パーセント、被告上芝八〇パーセントである。
仮に、本件の基本過失割合を原告霜竹四〇パーセント、被告上芝六〇パーセントとするとしても、前記修正を加えると、原告霜竹三〇パーセント、被告上芝七〇パーセントとなる。
四 抗弁に対する認否
抗弁は争う。
第三証拠
本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。
理由
第一第一事件
一 請求原因1(本件事故)、2(責任)は当事者間に争いがない。
二 請求原因3(傷病、治療経過、後遺障害)
1 原告霜竹は、本件事故により、左橈骨骨折、左眼瞼部裂傷、腹部挫傷、右第四・五中手骨骨折、左腕神経叢損傷の傷害を負った(当事者間に争いがない。)。
2 証拠(甲四、五、六の1、七、一五、原告霜竹本人、弁論の全趣旨)によれば、原告霜竹は、本件事故による負傷治療のため、次のとおり入通院したことが認められる(争いのない事実を含む。)
(一)(1) 茨木医誠会病院
平成四年一〇月一一日から同年一一月一二日まで入院三三日間
(2) 寺元記念病院
平成五年七月一二日から同年八月二八日まで入院四八日間
(当事者間に争いがない。)
(二)(1) 摂津医誠会病院
平成四年一一月一三日から平成九年八月一三日まで通院
(2) 大阪市立大学附属病院
平成四年一〇月一三日から平成五年六月一五日まで通院(実通院日数七日)
(3) 寺元記念病院
平成五年八月三〇日、同月三一日通院
(4) 越川病院
平成五年九月七日から平成九年八月一三日まで通院(実通院日数二四日)
(三) 原告は、平成九年八月一三日、症状固定し、後遺障害等級六級相当(右手指五指用廃〔七級七号〕と左手関節の機能の著しい障害〔一〇級一〇号〕の併合)と認定され、右の他に一四級(左右下肢醜状痕)の後遺障害も存する(当事者間に争いがない。)。
三 請求原因4(損害)
1 治療費 八八万三〇三〇円
当事者間に争いがない。
2 付添看護費
証拠(甲一一)によれば、原告が寺本記念病院に入院中の平成五年七月一七日から同月二三日までの七日間、原告の母である霜竹節子が付添看護をしたことが認められるところであるが、右付添看護が医学的に必要であったことを認めるに足りる証拠はないから、付添看護費は認められない。
3 入院雑費 九万七二〇〇円
1日1200円×81日=9万7200円
4 交通費 三六万六〇四〇円
(一) 大阪市立大学附属病院 六三〇〇円
弁論の全趣旨によれば、右への通院に要する片道の費用は四五〇円であることが認められ、通院日数は前記認定のとおり七日であるから、次のとおり六三〇〇円となる。
450円×2×7日=6300円
なお、通院付添の必要性を認めるに足りる証拠はないから、付添人分の交通費については、本件事故と相当因果関係を認めることはできない。
(二) 摂津医誠会病院 三三万八五〇〇円
弁論の全趣旨によれば、平成四年一一月から平成八年五月までの通院日数は六七七日で、通院に電車を利用する場合は片道二五〇円であることが認められるから、交通費は、次のとおり三三万八五〇〇円となる。
250円×2×677日=33万8500円
なお、原告霜竹は、右通院にタクシーを利用したことも認められるところではあるが、その必要性についてはこれを認めるに足りる証拠はなく、タクシー利用の交通費までは認められない。
(三) 寺元記念病院 三九六〇円
寺元記念病院への通院は、前記認定のとおり二日であるところ、弁論の全趣旨によれば、右に要する交通費は、往復一九八〇円であると認められるから、交通費は三九六〇円となる。
なお、通院付添の必要性を認めるに足りる証拠はないから、付添人分の交通費については、本件事故と相当因果関係を認めることはできない。
(四) 越川病院 一万七二八〇円
弁論の全趣旨によれば、平成五年九月から平成八年六月までの通院日数は一八日で、通院に電車を利用する場合は片道四八〇円であることが認められるから、交通費、次のとおり一万七二八〇円となる。
480円×2×18日=1万7280円
5 入通院慰謝料 三〇〇万円
前記認定の本件事故による原告霜竹の入通院状況等からすると、原告霜竹の入通院慰謝料は三〇〇万円と認めるのが相当である。
6 休業損害 一八五万〇六五四円
証拠(甲一二、原告霜竹本人、弁論の全趣旨)によれば、原告は、株式会社大丸ピーコック千里中央店にアルバイトとして勤務し、平成四年一月一日から同年九月三〇日までの九か月間(二七四日間)に合計五六万二八六四円の給与を得ていたことが認められるから、一日当たりの収入額は、二〇五四円(一円未満切り捨て、以下同じ。)となり、また、原告霜竹は平成四年一〇月一一日から平成七年三月三一日までの間九〇一日間就業することができなかったことが認められる。
右によれば、原告霜竹の休業損害は、次のとおり一八五万〇六五四円となる。
2054円×901日=185万0654円
7 逸失利益 四一五一万四〇〇二円
証拠(原告本人)によれば、原告霜竹は、症状固定時(平成九年八月一三日)満二二歳であったことが認められ、平成七年度賃金センサスによれば、旧中・新高卒男子の二〇ないし二四歳の年収は三三〇万七三〇〇円であり、原告霜竹の前記後遺障害の部位、程度等によれば、労働能力喪失率は六七パーセント、就労可能期間六七歳までの四五年間と認めるべきであるから、これを基礎に原告霜竹の逸失利益の本件事故時の現価(本件事故から症状固定までは四年一〇か月〔四・八年〕)をホフマン式計算法により算出すると、次の計算式により四一五一万四〇〇二円となる。
330万7300円×0.67×23.231≒5147万7363円
5147万7363円×1/(1+4.8×0.05)≒4151万4002円
8 後遺障害慰謝料 一一〇〇万円
原告霜竹の前記後遺障害の部位、程度等からすると、原告霜竹の後遺障害慰謝料は一一〇〇万円と認めるのが相当である。
9 以上原告霜竹の人身損害を合計すると、五八七一万〇九二六円となる。
10 物損 二七万円
証拠(甲一〇の1ないし3、弁論の全趣旨)によれば、原告車両は全損し、その引上費用二万円、原告車両の本件事故時の時価額は二五万円であったころが認められ、その余の物損については、これを認めるに足りる的確な証拠はない。
四 抗弁1(過失相殺)
前記争いのない事実(請求原因1、2)に証拠(甲一四、乙一、二、六、七の1ないし5、原告霜竹本人、被告上芝本人)を総合すると、次の事実が認められる。
1 本件事故現場は、南北方向の府道余野茨木線(片側一車線)(以下「本件道路」という。)に西から幅員六メートルの泉原橋からの道路が交差する信号機により交通整理の行われている交差点(東側には幅員二メートルの道路が斜めに接続している。)(以下「本件交差点」という。)であり、本件道路は指定最高速度を時速四〇キロメートルに制限されている(別紙交通事故現場見取図参照。以下地点を示す場合は同図面による。)。
2 被告上芝は、被告車両を運転して、本件道路を北から南に向けて進行し、本件交差点に至り、対面信号機の青色表示に従い、右折進行するために本件交差点に進入し、対向車の通過を<1>地点に停止して待った。
被告上芝は、対面信号機が黄色表示に変わったため、右折のために発進し、<×>地点(被告車両は<2>地点、原告車両は<ア>地点)で被告車両左前側部に対向車線を直進してきた原告車両前部が衝突した。
被告上芝は、右衝突時点まで原告車両に気づかなかった(被告車両から南方向の見通しは良好であった。)。
3 原告霜竹は、原告車両を運転して、本件道路を南から北に向けて時速約六〇キロメートルで進行し、本件交差点手前の停止線まで約二五メートルの地点で対面信号機が青色から黄色に変わったのを見たが、その時には、対向車線を北から南に向かい進行し、<1>地点で右ウィンカーを出して右折のために対向車待ちをしている被告車両の存在を認識していた。
原告霜竹は、被告車両が原告車両の通過を待ってくれるものと考え、特段減速等することなくそのままの速度で直進し、対面信号機が黄色表示にもかかわらず本件交差点に進入し、被告車両が右折のため発進するのを見て危険を感じ急制動の措置を講じたが間に合わず、<×>地点で被告車両に衝突した。以上の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
なお、原告霜竹本人尋問の結果中には、原告車両の速度は時速約四〇キロメートルであった旨、対面信号機が青色から黄色に変わったのは本件交差点手前の停止線付近であった旨の供述部分が存するが、原告霜竹は、平成四年一〇月一三日の大阪市立大学附属病院での初診時には担当の医師に対し、原告車両の速度を時速七〇キロメートルであった旨を述べていること(甲五)、原告車両のスリップ痕は約八・五メートルあったこと、原告車両、被告車両の破損の程度からして、時速約四〇キロメートルであった旨の右供述部分は採用できず、また、対面信号機が黄色に変わった時点での原告車両の位置については、実況見分において警察官に対してした指示説明と異なり、この供述部分も採用できない。
右に認定の事実によれば、本件事故については、原告霜竹には制限速度違反及び信号表示に従わなかった過失が認められ、被告上芝には対向車線の車両の動静に対する注視義務違反の過失があることからすると、本件事故についての過失割合は一対一というべきである。
そこで、前記認定の原告霜竹の人身損害の額五八七一万〇九二六円及び物損額二七万円のそれぞれからその五割を控除すると、人身損害二九三五万五四六三円、物損一三万五〇〇〇円となる。
五 抗弁2(損害填補)(自賠責保険金一〇七六万三二〇五円及び被告からの一〇三万九七二五円の支払)は当事者間に争いがないから、前記人身損害二九三五万五四六三円から自賠責保険金一〇七六万三二〇五円を控除すると、一八五九万二二五八円となり、これに物損一三万五〇〇〇円を加算すると、一八七二万七二五八円となり、これから被告からの支払分一〇三万九七二五円を控除すると一七六八万七五三三円となる。
六 弁護士費用(請求原因4(一〇))
本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は一八〇万円が相当である。
七 したがって、原告霜竹の第一事件請求は、金一九四八万七五三三円及びこれから弁護士費用を除いた金一七六八万七五三三円に対する本件事故の日である平成四年一〇月一一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。
第二第二事件
一 請求原因1(本件事故)は当事者間に争いがない。
二 請求原因2(責任)
本件事故の態様は、第一事件抗弁1において認定したとおりであり、本件事故について原告霜竹は過失が認められるから、民法七〇九条の責任がある。
三 請求原因3(損害)
証拠(乙一、三の1、2、七の3ないし5、被告上芝本人)によれば、被告車両は本件事故により左フロントホイールハウス・左フロントサイドフレーム大破、左フロントドアパネル後退等の損傷を負い、その修理費用及びレッカー代の合計七五万九一一〇円を要したことが認められる。
四 請求原因4(保険代位)
証拠(乙四、五、被告上芝本人)によれば、原告東京海上は、被告上芝と被告上芝所有の被告車両が受けた損害を填補する損害保険契約を締結しており、同契約に基づき、被告上芝に対し、平成四年一二月三日、被告車両の前記損害七五万九一一〇円を支払ったことが認められる。
五 抗弁(過失相殺)
第一事件抗弁1で判断したとおり、本件事故については、原告霜竹と被告上芝の過失割合は一対一と考えるべきであるから、前記損害額七五万九一一〇円からその五割を控除すると三七万九五五五円となる。
六 したがって、原告東京海上の第二事件請求は、金三七万九五五五円及びこれに対する保険金支払日である平成四年一二月三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。
第三結論
以上の次第で、第一事件、第二事件について、前記の限度で認容し、その余を棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法六一条、六四条、六五条を、仮執行宣言について同法二五九条一項を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 吉波佳希)
交通事故現場見取図