大阪地方裁判所 平成8年(行ウ)148号 判決 1998年7月29日
甲、乙事件原告
内田恵子(以下「原告内田」という。)
乙事件原告
丸山智也(以下「原告丸山」という。)
右訴訟代理人弁護士
大川一夫
松本健男
丹羽雅雄
養父知美
甲、乙事件被告
茨木労働基準監督署長豊村昭彦(以下「被告」という。)
右指定代理人
山崎敬二
大塚健三
吉川壽一
大寺正己
渡辺剛
田野岡肇
赤井一仁
主文
一 原告らの請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実
第一当事者の求める裁判
一 請求の趣旨
1 甲事件
(一) 被告が、原告内田に対し、平成八年四月一八日付けでした、賃金の支払の確保等に関する法律(昭和五一年法律第三四号)(以下「賃確法」という。)による確認に関する処分(以下「第一処分」という。)のうち、原告内田の基準退職日を平成七年一〇月二〇日とした部分、未払賃金の額につき、平成七年一〇月分定期賃金二二万円を超えて認めなかった部分、及び同法による未払賃金の立替払額につき一七万六〇〇〇円を超えて認めなかった部分をそれぞれ取り消す。
(二) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 乙事件
(一) 被告が、原告内田に対し、平成八年七月二二日付けでした、賃確法による確認に関する処分(以下「第二処分」という。)を取り消す。
(二) 被告が、原告丸山に対し、平成八年八月一二日付けでした、賃確法による確認に関する処分(以下「第四処分」という。)を取り消す。
(三) 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
主文同旨
第二当事者の主張
一 請求原因(甲、乙事件)
1 雇用契約
豊中管材株式会社(以下「豊中管材」という。)は、配管材料卸売業を目的とする株式会社である。
原告内田(昭和一九年八月六日生まれ)は、昭和五九年五月、豊中管材にパートとして雇用され、一般事務に従事していた。
原告丸山(昭和四七年三月一一日生まれ)は、平成三年四月、豊中管材に正社員として雇用され、配送業務に従事していた。
2 賃金請求権
(一) 豊中管材は、平成七年当時、代表取締役社長中元寺豊一(以下「中元寺」という。)と原告らの三名で業務を営んでいた。
中元寺は、平成七年一〇月二〇日ころ、突然豊中管材に出社しなくなり、行方不明となった。
(二) 原告らは、平成七年一〇月二〇日以降、豊中管材の事務所に暴力団員風の者が出入りするようになったため、事務所内での業務を遂行することはできなかったが、平成七年一一月三〇日ころまでは、電話で中元寺の指示を受けるなどして取引先からの売掛債権回収等の業務に従事していた。しかるに、原告らは、平成七年一一月三〇日ころ、中元寺が居所を伏せたまま、豊中管材の買掛先に対し、買掛金の支払いができない旨の詫び状を送付したことを知り、これによって、中元寺が事業継続意思をなくし、豊中管材を倒産させる意図であることを認識し、その結果、同人の指揮命令から離れることになった。
(三) 豊中管材における賃金は、毎月二〇日締切で当月二五日支払であった。
原告内田の賃金月額は二二万円、原告丸山の賃金月額は二三万二三〇〇円であった。
豊中管材は、平成七年一〇月分(一〇月二五日支給分)以降、原告らに対して賃金を支払わない。
(五)(ママ) したがって、原告内田は、豊中管材に対し、平成七年一〇月分(一〇月二五日支給分)二二万円、一一月分(一一月二五日支給分)二二万円の合計四四万円の賃金請求権を有し、原告丸山は、豊中管材に対し、平成七年一〇月分(一〇月二五日支給分)二三万二三〇〇円、一一月分(一一月二五日支給分)二三万二三〇〇円、一二月分(平成七年一一月二一日から同月三〇日に相当する分。一二月二五日支給分)七万七四三三円(二三万二三〇〇円÷三〇日×一〇日)の合計五四万二〇三三円の賃金請求権を有する。
3 退職金請求権
(一) 豊中管材には、明文の退職金規程は存在しなかった。しかし、中元寺は、原告らに対し、常々業界の相場並に退職金を支給すると明言し、もって雇用契約上、退職金の支払約束をした。
(二) 従前、豊中管材に雇用され、一一年間一般事務に従事した津田は、豊中管材の退職に当たり、退職金として一二三万円を受給した。
原告内田も、豊中管材で一一年間一般事務に従事してきたのであるから、豊中管材に対し、一二三万円の退職金請求権を有している。原告丸山は、期間、業務内容に照らして、少なくとも六〇万円の退職金請求権を有している。
4 原処分
(一) 倒産の認定
原告内田は、被告に対し、平成八年二月二日、賃金の支払の確保等に関する法律施行令(以下「賃確令」という。)に基づき、豊中管材の倒産認定の申請をした。
被告は、原告に対し、平成八年三月二七日、賃確令に基づき、豊中管材が倒産した旨認定した。
(二) 第一処分
(1) 原告内田は、被告に対し、平成八年三月二七日、賃確法に基づき、次のとおりの確認を求める旨の申請をした。
<1> 基準退職日 平成七年一〇月二〇日
<2> 未払賃金 定期賃金
平成七年一〇月分 二二万円
平成七年一一月分 二二万円
合計 四四万円
<3> 立替払額 三五万二〇〇〇円(四四万円×〇・八)
(2) 被告は、原告内田に対し、平成八年四月一八日、右申請につき、次のとおり確認する旨の処分(第一処分)をした。
<1> 基準退職日 平成七年一〇月二〇日
<2> 未払賃金 定期賃金
平成七年一〇月分 二二万円
<3> 立替払額 一七万六〇〇〇円(二二万円×〇・八)
(三) 第二処分
(1) 原告内田は、被告に対し、平成八年五月二日、賃確法に基づき、次のとおり確認する旨の申請をした。
<1> 基準退職日 平成七年一一月三〇日
<2> 未払賃金 退職手当 一二三万円
<3> 立替払額 九八万四〇〇〇円(一二三万円×〇・八)
(2) 被告は、原告内田に対し、平成八年七月二二日、右申請につき、<1>基準退職日及び<2>未払賃金をいずれも確認しない旨の処分(第二処分)をした。
(四) 第三処分
(1) 原告丸山は、被告に対し、平成八年三月二九日、賃確法に基づき、次のとおり確認する旨の申請をした。
<1> 基準退職日 平成七年一〇月二〇日
<2> 未払賃金 定期賃金
平成七年一〇月分 二三万二三〇〇円
<3> 立替払額 一八万五八四〇円(二三万二三〇〇円×〇・八)
(2) 被告は、原告丸山に対し、平成八年五月二日、右申請につき、これらをいずれも確認する旨の処分をした(以下「第三処分」という。)。
(五) 第四処分
(1) 原告丸山は、被告に対し、平成八年五月二日、賃確法に基づき、次のとおり確認する旨の申請をした。
<1> 基準退職日 平成七年一一月三〇日
<2> 未払賃金 定期賃金
平成七年一一月分 二三万二三〇〇円
平成七年一二月分 七万七四三三円
退職手当 六〇万円
合計 九〇万九七三三円
<3> 立替払額 五六万円(七〇万円×〇・八)
(原告丸山は、右基準退職日において三〇歳未満であるため、賃確令四条一項一号により、立替払の対象となる未払賃金総額に七〇万円の上限がある。)
(2) 被告は、原告丸山に対し、平成八年八月一二日、右申請に対し、<1>基準退職日及び<2>未払賃金をいずれも確認しない旨の処分(第四処分)をした。
5 審査請求
(一) 原告内田は、大阪労働基準局長に対し、平成八年五月三〇日、第一処分を不服として、行政不服審査法に基づき、審査請求を申し立てたが、大阪労働基準局長は、平成八年八月二日、基準退職日に係る審査請求、未払賃金の額のうち定期賃金に係る審査請求はいずれも棄却し、未払賃金のうち退職金に係る審査請求は却下する旨の裁決をした。
(二) 原告内田は、大阪労働基準局長に対し、平成八年七月二二日、第二処分を不服として、行政不服審査法に基づき、審査請求を申し立てたが、大阪労働基準局長は、平成八年一二月二六日、基準退職日に係る審査請求及び未払賃金の額のうち定期賃金に係る審査請求は却下し、未払賃金のうち退職手当に係る審査請求は棄却する旨の裁決をした。
(三) 原告丸山は、大阪労働基準局長に対し、平成八年九月一九日、第四処分を不服として、行政不服審査法に基づき、審査請求を申し立てたが、大阪労働基準局長は、平成八年一二月二六日、審査請求を棄却する旨の裁決をした。
6 第一、第二、第四処分の違法性
(一) 賃確法にいう退職とは、現実的に業務に従事したか否かにはかかわりなく、事業主の指揮命令系統から離れることをいい、したがって、基準退職日も、労働者が指揮命令系統から離れた日をいうと解すべきである。
原告らは、前記2記載のとおり、中元寺失踪後も、平成七年一一月三〇日までは、同人からの指示を待って待機し、あるいは現にその指示に従って豊中管材の業務に従事していたのであるから、原告らの基準退職日は、原告らが中元寺の指揮命令系統から離れた平成七年一一月三〇日であり、同日までの賃金請求権が賃確法の立替払の対象になるというべきである。
(二) また、原告らは、3記載のとおり、豊中管材に対し、退職金請求権を有する。
(三) したがって、第一、第二、第四処分は違法であって、取消しを免れない。
7 結論
よって、原告内田は、第一処分のうち、原告内田の基準退職日を平成七年一〇月二〇日とした部分、未払賃金の額につき二二万円を超えて認めなかった部分、及び、同法による未払賃金の立替払額につき一七万六〇〇〇円を超えて認めなかった部分、並びに、第二処分の各取消しを求め、原告丸山は、第四処分の取消しを求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1の事実は認める。
2(一) 同2(一)のうち、中元寺が豊中管材の代表取締役であったこと、平成七年一〇月二〇日ころ豊中管材に出社しなくなり行方不明となったことは認め、その余の事実は知らない。
(二) 同2(二)のうち、原告らが平成七年一〇月二〇日以降同年一一月三〇日まで豊中管材の業務に従事したとの点は否認し、その余の事実は知らない。
(三) 同2(三)の事実は認める。
(四) 同2(四)のうち、豊中管材に対し、原告内田が二二万円の、原告丸山が二三万二三〇〇円の各賃金請求権を有するとの限度で認め、その余の事実は否認する。
3(一) 同3(一)のうち、豊中管材に明文の退職金規程がなかったとの点は認め、その余の事実は否認する。
(二) 同3(二)の事実は不知ないし争う。
4 同4、5の各事実はいずれも認める。
5 同6は争う。
賃確法にいう退職とは、契約期間満了による自然退職や労働者の意思に基づく任意退職等の場合のみならず、解雇、定年制等、雇用契約が終了するすべての場合を指すと解すべきである。事業主が失踪したことにより事実上事業が廃止され、そのために労働者が失職した場合もこれに該当し、この場合の「退職の日」とは、労働者が実質的に労務に従事しないこととなった最初の日と解すべきである。
原告らは、平成七年一〇月二〇日以後、実質的に労務に従事しないこととなったので、同日が基準退職日であり、かつ、立替払の対象となるのは同日までの賃金請求権に限られる。
第三証拠
証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録のとおりであるから、これらの各記載を引用する。
理由
一 請求原因1、4、5について
請求原因1(雇用契約)、同2(三)(原告らの賃金額及び不支給の事実)、同4(原処分)、同5(審査請求)は、当事者間に争いがない。
二 請求原因2について
1 当事者間に争いのない事実に、(証拠略)、原告内田及び原告丸山の各本人尋問の結果(いずれも一部)に弁論の全趣旨を総合すると、以下の各事実が認められる。
(一) 豊中管材は、平成三年四月以降は、代表取締役の中元寺のほか、従業員は原告ら二名という小規模なものであったが、平成七年一月ころから資金繰りが悪化し、取引銀行から当座預金口座への入金の催促などを受けるようになっていた。平成七年一〇月二〇日、原告内田及び原告丸山は通常どおり豊中管材に出勤し、原告内田は一般事務に、また、原告丸山は自動車での配達業務等にそれぞれ従事していたが、中元寺は出社しておらず、銀行からの電話が頻繁にかかっていた。同日午後三時ころ及び午後五時ころ、重ねて中元寺から電話があり、原告内田は、会社関係書類を原告丸山に預けて事務所を閉めて帰宅するよう指示された。原告丸山は、原告内田から伝えられた中元寺からの指示どおり、会社関係の書類を持ち帰ったところ、同日夜、中元寺から電話連絡があり、自宅近くの診療所の駐車場において、中元寺と落ち合い、右書類一式を渡した。
中元寺は、それ以来所在不明となり、豊中管材は、右同日不渡手形を出して、同月二六日銀行取引停止処分を受けた。
(二) 原告らは、平成七年一〇月二三日(月曜日)、豊中管材に出勤したが、事務所は鍵が開いておらず、午後一時ころになると一見暴力団員風の男数名が来て原告らを追い返し、以後、事務所を占拠し続けるようになった。その後、原告らが右事務所において就労したことはない。
(三) 中元寺が出奔した当日、原告丸山は豊中管材の取引先である古林産業機具株式会社の担当者に中元寺が逃走して豊中管材は事実上倒産した旨知らせ、引き続いて翌二一日及び二二日、原告内田も交えて右担当者らと売掛金の回収等の相談をしており、その後まもなくから、原告らは、未払賃金に充当するためと称して、売掛金を原告らに支払って欲しい旨依頼して取引先を回ったりしている。
2 以上に対し、原告らは、その本人尋問において、ほぼ同様に、平成七年一一月二〇日ころまでは、中元寺から自宅に電話がかかってきたりするなどして連絡が取れており、その指示を受けて、事務所に出て事務を行ったり、あるいは配達業務を行ったり、さらには売掛債権回収に出向いたりしていたのであり、中元寺出奔後も使用従属関係が継続し、上司の指揮命令のもとに豊中管材の業務に従事していた旨の供述をし、その陳述を記載した(証拠略)にも同趣旨の記載がある。
しかしながら、(証拠略)、原告ら各本人尋問の結果によれば、原告らが売掛債権の回収に赴いた取引先では既に中元寺の代理人と称するものに支払済みであったり、債権譲渡がなされていたりして現実には債権回収はほとんどできておらず、また、被告の調査に対して、これら取引先からはほぼ一様に、前記認定のとおり、原告らが未払賃金回収のためと称して売掛金の支払を求めてきたことや平成七年一〇月二〇日以降の豊中管材との取引はないことなどの回答が得られており、これらに照らすと、中元寺出奔後も、電話連絡等でその指示を受けながら豊中管材の業務に従事してきたという原告らの右供述や陳述書の記載は採用することができない。
3 ところで、未払賃金立替制度は、労災保険の適用事業に該当する事業の事業主が破産の宣告を受け、その他賃確令で定める事由に該当することとなった場合において、当該事業に従事する労働者で、賃確令で定める期間内に当該事業を退職した者に係る未払賃金(支払期日の経過後、いまだ支払われていない賃金)があるとき、当該労働者の請求に基づき、当該未払賃金に係る債務のうち賃確令で定める範囲内のものを、事業主の出資による労働保険料を原資とする労働保険特別会計労災勘定を財源として(賃確法九条、労災保険法二四条)、国が当該労働者に支払うという制度である(賃確法七条)。立替払を受けることができる者は、企業の倒産に伴い退職し、未払賃金が二万円以上残っている者であって、かつ裁判所に対する破産等の申立日(法律上の倒産の場合)又は労働基準監督署長に対する倒産の認定申請日(事実上の倒産の場合)の六か月前から二年の間に、当該企業を退職した者であり(賃確法七条、賃確令三条、四条二項)、立替払の対象となる未払賃金は、右退職日を基準退職日として(賃確令四条一項一号)、その六か月前の日から国に対する立替払請求日の前日までの間に、支払期日が到達しながら未払となっている定期賃金及び退職手当である(賃確法七条、賃確令四条二項、賃確則一六条)。
そして、企業倒産等に伴う労働者の保護という賃確法の立法趣旨からするときは、右基準退職日の退職とは、契約期間満了による自然退職や労働者の意思に基づく任意退職のみならず、解雇その他により雇用契約が終了する場合や、法律上は雇用契約の明確な終了原因が存しない場合であっても労働者が事実上就労しなくなった場合も含まれると解すべきである。けだし、このような場合には、労務提供の受領拒絶は事業主の責に帰すべき事由によるものであるから、労働者が自ら解約の申出をしない限り、未払賃金は増大してゆくのであって、これを全て立替払の対象にすることは、現に就労していない労働者の保護として明らかに行き過ぎであり、ひいては未払賃金立替払制度の健全な運営を阻害することとなるからである。
これを本件においてみると、原告内田が平成八年二月二日、豊中管材の倒産認定を申請し、同年三月二七日被告が同認定を行ったことは当事者間に争いがなく、前記認定のとおり、平成七年一〇月二〇日、中元寺が出奔して後、豊中管材の事務所は閉鎖されたままで、原告らが同所において就労した事実はない上、中元寺の出奔を知った原告らが、その後直ちに自らの未払賃金回収のために奔走していたことは認められるものの、これを豊中管材の業務としてなしたとまではいえないもので、他に豊中管材の業務に従事していたと認めるに足りる証拠はない。
したがって、原告らは、賃確法の適用においては、豊中管材で就労していたと認められる最後の日である平成七年一〇月二〇日をもって退職したものと解すべきである。
以上によれば、原告らの基準退職日は、平成七年一〇月二〇日であり、その後の未払賃金は、いずれも立替払の対象とならないので、これと同旨の判断の下にした第一処分及び第四処分(ただし、基準退職日及び定期賃金に関する部分)はいずれも適法である。
三 請求原因3(退職手当)について
1 (証拠・人証略)、原告内田及び原告丸山各本人尋問の結果によれば、中元寺が、原告内田及び原告丸山に対し、その採用に当たり、業界並に退職金を支給すると述べていたこと、豊中管材において一一年間一般事務に従事してきた津田勝己が、平成三年三月三一日、退職に当たり、退職金として一二三万円を支給されたことが認められる。
しかしながら、豊中管材に退職金規程が存在しないことは当事者間に争いがなく、中元寺が述べた退職金の支給基準については業界並という曖昧なもので、算定根拠となるようなものではなく、これまでの支給例も一例にすぎず、その支給額の算定根拠も不明であって、支給基準は不明というほかなく、具体的な退職金請求権の根拠となるべき合意があったとまではいえず、退職金支給の慣行があったとも認められないところである。
2 以上によれば、原告らが、豊中管材に対し、具体的な退職金請求権を有していたとは認められず、これと同旨の判断の下にした第二処分及び第四処分(ただし、退職手当に関する部分のみ)は、いずれも適法である。
四 結語
以上のとおり、原告らの請求はいずれも理由がないので失当として棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条、六五条一項を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 松本哲泓 裁判官 松尾嘉倫 裁判官 森鍵一)