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大阪地方裁判所 平成9年(わ)3992号 1998年11月06日

本店所在地

大阪府岸和田市尾生町五二三番地の二

大和建設株式会社

(右代表者代表取締役 久禮重一)

本籍

大阪府岸和田市三ケ山町三〇番地

住居

大阪府岸和田市尾生町五二三番地の二

会社員(元会社役員)

久禮勝彦

昭和三六年一一月一一日生

主文

被告人大和建設株式会社を罰金二〇〇〇万円に、被告人久禮勝彦を懲役一年に処する。

被告人久禮勝彦に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人大和建設株式会社(以下「被告会社」という。)は、大阪府岸和田市尾生町五二三番地の二に本店を置き、土木工事業等を営む資本金六二〇〇万円(当時)の株式会社、被告人久禮勝彦(以下、単に「被告人」という。)は、被告会社の支配人としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、

第一  平成五年一〇月一日から平成六年九月三〇日までの事業年度における実際の所得金額が四七七二万八七一二円(別紙1の修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が一六八五万三九〇〇円(別紙3の税額計算書参照)であるにもかかわらず、架空の外注費等を計上するなどの行為により、右所得の一部を秘匿した上、平成六年一一月三〇日、同市土生町二丁目二八番一号所在の所轄岸和田税務署において、同署署長に対し、右事業年度の所得金額が二七六八万九〇一三円で、これに対する法人税額が九三三万九二〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により右事業年度の法人税七五一万四七〇〇円(右税額計算書参照)を免れ、

第二  平成六年一〇月一日から平成七年九月三〇日までの事業年度における実際の所得金額が二億三三五七万六六八三円(別紙2の修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が八六六五万五四〇〇円(別紙4の税額計算書参照)であるにもかかわらず、前同様の行為により、右所得一部を秘匿した上、平成七年一一月三〇日、前記所轄岸和田税務署において、同署署長に対し、右事業年度の所得金額が三七八九万五一三五円で、これに対する法人税額が一三二七万五一〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により右事業年度の法人税七三三八万〇三〇〇円(右税額計算書参照)を免れ、

たものである。

(証拠の目)(括弧内の甲乙の数字は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。)

全部の事実について

一  被告人及び被告会社代表者久禮重一の各公判供述

一  被告人の検察官調書

一  久禮正子及び久禮チヅ子の各検察官調書(甲二九、三〇)

一  査察官調査書二二通(甲七~二八)

一  「所轄税務署の所在地について」と題する書面(甲六)

一  登記簿謄本(乙一)

第一の事実について

一  税額計算書(甲二)

一  証明書(甲四)

第二の事実について

一  税額計算書(甲三)

一  証明書(甲五)

(法令の適用)

罰条 被告人の各行為

いずれも平成一〇年法律第二四号による改正前の法人税法一五九条一項

被告人会社につき

いずれも右法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項

刑種の選択 被告人につき、懲役刑を選択

併合罪の処理 被告会社につき

刑法四五条前段、四八条二項

被告人につき

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い第二の罪の刑に法定の加重)

執行猶予 被告人につき、刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、被告人が実質的に経営する被告会社において、二事業年度にわたり法人税合計八〇八九万五〇〇〇円を不正に免れたという法人税法違反の事案である。

被告人は、被告会社が一度倒産した後に父親からその実権を譲り受け、以来相応の努力をもってこれを盛り立て、多額の利益を生じるようになったものであるが、再び倒産の憂き目に遭いたくないなどの思いから不正な手段によってその利益を留保しようと企て、経理事務を担当していた母親や妹に指示し、架空の外注先をねつ造した上、虚偽の請求書や領収書を作成するなどして、本件脱税工作を行わせていたのであって、その動機、態様等に斟酌すべき点は乏しく、特に本件第二事実に関しては、ほ脱額が約七三〇〇万円、いわゆるほ脱に至っては八〇パーセントを超えており、この種事案の中にあってとりわけ重大かつ悪質といわなければならない。したがって、被告人らの刑事責任は重く、相応の処罰は免れないところであるが、他方、被告人らが本件脱税の各事実を素直に認め、反省の情を示していること、本件発覚後修正申告を行い、本税のほか重加算税及び延滞税の全額を支払ったこと、今後の再発防止措置をとったこと等有利な事情も認められるので、これらの情状を総合考慮の上、被告人及び被告会社を主文の刑に処するとともに、被告人の刑の執行を猶予するのが相当と判断した次第である。

(検察官花﨑政之、私選弁護人渡邉悟朗各出席。求刑・被告会社に対し罰金二五〇〇万円、被告人に対し懲役一年)

(裁判官 畑山靖)

別紙1

修正損益計算書

自 平成5年10月1日

至 平成6年9月30日

大和建設株式会社

<省略>

別紙2

修正損益計算書

自 平成6年10月1日

至 平成7年9月30日

大和建設株式会社

<省略>

別紙3

税額計算書

自 平成5年10月1日

至 平成6年9月30日

大和建設株式会社

<省略>

別紙4

税額計算書

自 平成6年10月1日

至 平成7年9月30日

大和建設株式会社

<省略>

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