大阪地方裁判所 平成9年(わ)4053号 1998年3月20日
本籍
神戸市兵庫区松原通二丁目七番地
住居
大阪府東大阪市岩田町六丁目四番五〇号
会社役員
外池義明
昭和一六年六月四日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官北岡克哉、弁護人兵頭厚子(主任)及び同赤木明夫出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金三五〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、大阪府東大阪市岩田町六丁目四番五〇号ほか一か所において「サカエ屋サンミート」等の名称で精肉卸売業等を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て
第一 平成四年分の実際の総所得金額が一億〇三五三万一六四八円(別紙1の1修正損益計算書(1))で、これに対する所得税額が四七三〇万五五〇〇円(別紙2の1税額計算書(1))であるにもかかわらず、総所得金額が一〇三四万八三一〇円で、これに対する所得税額が一八九万九三〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を作成し、その所得の一部を秘匿した上、平成五年三月一五日、同市永和二丁目三番八号所在の所轄東大阪税務署において、同署署長に対し、右所得税確定申告書を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、平成四年分の所得税四五四〇万六二〇〇円を免れ
第二 平成五年分の実際の総所得金額が一億〇三九二万五一九八円(別紙1の2修正損益計算書(2))で、これに対する所得税額が四七六〇万五五〇〇円(別紙2の2税額計算書(2))であるにもかかわらず、総所得金額が一六九七万三三五六円で、これに対する所得税額が四五二万三六〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を作成し、その所得の一部を秘匿した上、平成六年三月一五日、前記所轄東大阪税務署において、同署署長に対し、右所得税確定申告書を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、平成五年分の所得税四三〇八万一九〇〇円を免れ
第三 平成六年分の実際の総所得金額が一億五五一〇万二四〇九円(別紙1の3修正損益計算書(3))で、これに対する所得税額が七一一二万九五〇〇円(別紙2の3税額計算書(3))であるにもかかわらず、総所得金額が三二四四万四一四九円で、これに対する所得税額が九八五万二〇〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を作成し、その所得の一部を秘匿した上、平成七年三月一五日、前記所轄東大阪税務署において、同署署長に対し、右所得税確定申告書を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、平成六年分の所得税六一二七万七五〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
注・以下において、証拠中、末尾の括弧内に記載した漢数字は、証拠等関係カードの検察官請求番号を示している。
判示事実全部について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書二通(五六、五七)
一 被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書(五五)
一 坂上行男、笹野功、外池義政及び外池マサミ(三通)の検察官に対する各供述調書(四九ないし五四)
一 「所轄税務署の所在地について」と題する書面(八)
一 査察官調査書三二通(一五ないし四六)
判示第一の事実について
一 脱税額計算書(二)
一 証明書(五)
一 査察官調査書二通(九、一二)
判示第二の事実について
一 脱税額計算書(三)
一 証明書(六)
一 査察官調査書二通(一〇、一三)
判示第三の事実について
一 脱税額計算書(四)
一 証明書(七)
一 査察官調査書二通(一一、一四)
(法令の適用)
被告人の判示第一ないし第三の各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、いずれの罪についても懲役と罰金を併科し、情状により、いずれの罪についても同法二三八条二項を適用して、罰金の額はその免れた所得税の額に相当する額以下とし、以上は平成七年法律第九一号附則二条一項本文により同法による改正前の刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示各罪の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年六月及び罰金三五〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
(量刑の理由)
本件は、個人で精肉業や焼き肉店を営んでいた被告人が、三年度にわたり、所得税の過少申告を行い、所得税約一億四九〇〇万円をほ脱したという事案があり、その動機や経緯に酌量すべき事情は乏しいし、ほ脱した税額が多額にのぼる上に、税のほ逋脱率は全体で約九〇パーセントと極めて高率であり、被告人の行為は厳しい非難を免れないものといわざるを得ない。
しかしながら、被告人は事実を素直に認めるとともに、修正申告を行って、本税を完納しているほか、そのほかの税についてもきちんと納税する姿勢を示し、真摯な反省の態度を示している。
そこで、本件については、以上のほか、被告人に懲役前科のないことなど、諸般の情状をも総合して勘案し、主文掲記のとおり量刑するとともに、懲役刑については、その執行を猶予するのが相当と判断した次第である。
(求刑 懲役一年六月及び罰金五〇〇〇万円)
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 石井俊和)
別紙1の1
修正損益計算書(1)
自 平成4年1月1日
至 平成4年12月31日
(外池義明)
<省略>
別紙1の2
修正損益計算書(2)
自 平成5年1月1日
至 平成5年12月31日
(外池義明)
<省略>
別紙1の3
修正損益計算書(3)
自 平成6年1月1日
至 平成6年12月31日
(外池義明)
<省略>
別紙2の1 税額計算書(1)
犯則税額の内訳(所得税)
<省略>
別紙2の2 税額計算書(2)
犯則税額の内訳(所得税)
<省略>
別紙2の3 税額計算書(3)
犯則税額の内訳(所得税)
<省略>