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大阪地方裁判所 平成9年(ワ)10915号 判決 1997年12月04日

参加人 Z

右代表者代表取締役 A

右訴訟代理人弁護士 三木俊博

脱退原告 B

被告 有限会社イイダヤモータープール

右代表者代表取締役 C

右訴訟代理人弁護士 神田俊之

主文

一  被告と参加人との間において、参加人が別紙物件目録第3記載の建物の所有権及び別紙物件目録第1記載の土地につき法定地上権を有することを確認する。

二  被告は、参加人に対し、別紙物件目録第2記載の土地を明渡し、かつ平成八年一〇月二三日から同土地明渡し済みまで一か月金四万円の割合による金員を支払え。

三  参加人のその余の請求を棄却する。

四  参加後の訴訟費用はこれを五分し、その一を参加人の負担とし、その余を被告の負担とする。

五  この判決は二項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  主文一項同旨

2  被告は、参加人に対して、別紙物件目録第2記載の土地を明渡し、かつ平成八年一〇月二三日から明渡し済みまで一か月金一〇万円の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

4  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  参加人の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は参加人の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1(一)  別紙物件目録第1記載の土地(以下「本件第1土地」という。)及び本件第1土地上の同目録第3記載の建物(以下「本件建物」という。)は、もと訴外Dの所有であった。

(二)  昭和六三年一〇月七日、訴外Eの申立により本件第1土地及び本件建物の強制競売が開始され、その後平成元年八月七日、訴外a有限会社が本件建物のみの売却を受けて、その所有者となった。

(三)  次いで、本件建物について、平成七年五月八日に強制競売が開始され、同八年七月三一日、訴外Fが売却により取得した。

(四)  訴外Fは、平成八年一〇月二三日、脱退原告に本件建物を売渡し、同日その旨の所有権移転登記を了した。

2  被告は、平成七年一月三〇日から、本件第1土地の一部である別紙物件目録第2記載の土地(以下「本件第2土地」という。)を占有している。

3  本件第2土地の賃料相当損害金は一か月金一〇万円である。

4  脱退原告は、参加人に対して、平成九年七月七日、本件建物及び脱退原告の被告に対する賃料相当損害金請求権を譲渡し、同年一〇月二四日被告に到達した書面で債権譲渡の通知をなし、さらに同年七月八日、参加人に対し本件建物の所有権移転登記を了した。

5  よって、参加人は被告に対して、本件建物の所有権及び本件第1土地の法定地上権の確認を求めるとともに、右法定地上権に基づく妨害排除請求として本件第2土地の明渡ならびに脱退原告が本件建物を購入した平成八年一〇月二三日から被告の本件第2土地明渡し済みまで不法行為に基づく賃料相当損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1及び2の各事実は認め、同3の事実は否認し、同4の事実中、参加人主張の債権譲渡の通知を受けたことは認めるが、その余は不知。

ただし、本件建物を利用するのに必要な法定地上権の対象となる範囲は、本件第1土地のうち本件第2土地を除いた本件建物直下の土地であり、本件第2土地は法定地上権の対象とならない。

三  抗弁-短期賃貸借権

仮に脱退原告、次いで参加人が本件第2土地について地上権を有するとしても、被告は、訴外a有限会社との間で、平成七年一月三〇日、本件第2土地を次の約定で賃借する旨合意し、右合意に基づき本件第2土地の引渡を受けたから、右賃借権を脱退原告及び参加人に対抗できるというべきである。

1  賃料 一か月四万円

2  期間 五年

四  抗弁に対する認否

抗弁の事実は不知。法的主張は争う。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

一  請求原因について

1  請求原因1、2の各事実は、当事者間に争いがない。

ところで、被告は本件第2土地は法定地上権の対象とならない旨主張するので判断するに、民事執行法八一条に基づく法定地上権の対象となる土地の範囲は、必ずしもその建物直下の土地のみに限定されるものではなく、建物として利用するに必要な限度においては右以外にも及び、その判断基準は、一般に建物の買受人が競売の際に考慮するであろう建物の利用価値を基準として定めるのが相当であるところ、<証拠省略>によれば、平成元年八月七日の時点において、本件第2土地は、本件第1土地の一部として周囲を塀で囲われていたうえ、その内部に庭木が植えられて、本件建物の敷地である庭園として建物と一体となって使用されていたこと、ところが、平成七年一月三〇日に被告が訴外有限会社aから本件第2土地を月額四万円で賃借し、その東側の道路に面している塀を取り除いて内部にコンクリート舗装を施し、右土地は現在に至るまで被告賃貸の月極青空駐車場として使用されていることがそれぞれ認められる。

右の認定事実によれば、有限会社aの本件建物取得時は、本件第2土地は本件建物を利用するに必要な範囲に含まれ、法定地上権の対象となっていた事実が認められる。そうとすれば、有限会社aが本件第1土地につき法定地上権を取得していたところ、その後本件建物と右法定地上権は強制競売による売却によりFに、次いで平成八年一〇月二三日売買によりFから脱退原告に譲渡され、かつ本件建物につきその旨の所有権移転登記が経由されているから、脱退原告は、借地借家法附則四条、廃止前の建物保護に関する法律一条により、その法定地上権を被告に対抗できるというべきものである。

2  請求原因3の事実について判断するに、前記認定のとおり被告は訴外有限会社aから本件第2土地を一か月金四万円で賃借していたのだから、本件第2土地の賃料相当損害金は一か月金四万円と認めるのが相当である。

3  請求原因4の事実のうち、脱退原告から参加人に対する本件建物譲渡及びその旨の所有権移転登記の経由された事実については、<証拠省略>により認められるから、脱退原告から参加人に対して本件建物所有権とともに右法定地上権も有効に移転したというべきであり、また、脱退原告から被告に対する債権譲渡の通知がなされた事実は当事者間に争いがない。

4  被告は、いうところの賃借権に基づき本件第2土地の引渡しを受けたと主張するが、賃借権の登記を了した旨の主張、立証はないから、抗弁は主張自体失当である。

二  結論

以上によれば、参加人の本訴請求は、主文一、二項掲記の限度で理由があるから認容するが、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 渡邉安一)

<以下省略>

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