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大阪地方裁判所 平成9年(ワ)1372号 判決 1998年10月30日

原告

大井屋宏治

右訴訟代理人弁護士

村田喬

被告

株式会社産業工学研究所

右代表者代表取締役

武田正典

右訴訟代理人弁護士

中嶋進治

主文

一  被告は、原告に対し、金六六一万〇五二四円及びこれに対する平成八年九月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを一〇分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

1  主文第一項と同旨

2  別紙株式目録<略>記載の株式(以下「本件株式」という。)は原告の所有であることを確認する。

第二事案の概要

本件は、被告を退職した原告が、被告から支給された退職金は、被告の退職金規定によって本来支給されるべき金額に不足すると主張してその差額の一部の支払いを請求するとともに、被告退職に当たって、本件株式を額面価額で被告に譲渡したが、右譲渡は被告代表者の詐欺によるものであるから取り消す、そうでないとしても錯誤によるもので無効であると主張して本件株式所有の確認を求めた事案である。

一  争いのない事実等

1  被告は、昭和四六年七月一五日に設立された会社であり(<証拠略>)、従業員約一〇〇名を擁し、都市再開発及び用地取得に伴う補償積算業務等を行うことを目的としている。

原告は、昭和五五年八月、被告に入社し、主として営業部門を担当していたが、平成三年に取締役兼営業部長に就任し、平成八年八月一五日、自己都合により被告を退職した(原告の入社日及び取締役就任月日には争いがある)。

2  被告は、原告に対し、平成八年九月二〇日頃、退職金等として、次のとおり、合計八五四万三四〇〇円を支払った(<証拠略>)。

従業員退職金 五〇六万三四〇〇円

取締役退職慰労金 三四八万円

なお、被告には、従業員等の退職金支給について、別紙退職金規定<略>(以下「退職金規定」という。)が定められている(<証拠略>)。

3  原告は、本件株式を有していたが、平成八年七月一七日、被告に対し、これを額面価額一二万五〇〇〇円で売却した。

二  争点

1  原告の退職金は、原告が取締役に就任した以後の期間を勤務年数に含めて算定すべきか。

(一) 原告の主張

退職金規定には、適用範囲として「社員及び兼務役員が退職した場合」(第二条)、勤続年数の算出として「入社の日より退社の日まで」と規定されており、兼務役員の兼務期間について制限はないので、同規定によって原告の退職金を算定すると、別紙社員部分退職金計算書<略>記載のとおり一二三一万三九二四円となるところ、原(ママ)告は五〇六万三四〇〇円しか支給していないので七二五万〇五二四円が未払である。

なお、原告は、右退職金とは別に取締役退職慰労金として被告から三四八万円を支給されているが、原(ママ)告が有効であると主張する取締役退職慰労金規定によれば、原告の取締役退職慰労金は二八四万円であり、六四万円の過払いを受けていることになるので、これを控除した六六一万〇五二四円の限度で退職金の支払いを求める。

(二) 被告の主張

法律上、取締役を兼務する従業員という地位はあり得ず、従業員が取締役に就任したときは、従業員としての地位を喪失して、取締役としての地位のみとなる。

従って、退職金規定がその適用範囲に兼務役員を含めているのは誤記であるか、退職金の支給時期を規定したものに過ぎない。

また、被告では平成八年八月一五日の株主総会で取締役退職慰労金規定(<証拠略>、以下「新慰労金規定」という。)を制定したが、その際、従来曖昧であった兼務役員を認めないこととし、退職金規定が適用されるのは従業員が取締役になるまでであり、取締役就任後は新慰労金規定のみが適用されることを確定させた。退職金規定が、新慰労金規定制定後も、兼務役員の兼務期間に適用されることとなれば、右期間については退職金と取締役退職慰労金とで二重に計算することになって不合理である。

退職金規定によって原告が取締役に就任するまでの退職金を算定すると五〇六万三四〇〇円となり、未払いはない。

2  原告の本件株式売却は、被告代表者の詐欺、そうでないとしても原告の錯誤によるものか。

(一) 原告の主張

本件株式の時価は、一株五〇〇〇円を下らないところ、原告は、被告を退職するに当たり、当時の被告代表取締役であった武田勉(以下「勉」という。)から、本件株式を額面価格で被告に譲渡すれば退職金に功労金を上乗せして支給する等という申出を受け、これを承諾して売却したところ、被告からは功労金の支給どころか退職金規定にも満たない退職金支給しかなかった。

従って、本件株式売買は、勉の詐欺によるものであるからこれを取り消す。また、詐欺に該当しないとしても、勉の言を信じた原告には重大な錯誤があり、右売買は無効である。

(二) 被告の主張

原告は、退職時には額面で被告に売却するとの約定で被告から本件株式を額面価額で取得していたものであり、この約定に基づいて、被告に額面価格で売却したものである。従って、本件株式売買に詐欺や錯誤の瑕疵はない。

第三争点に対する判断

一  争点1について

1  証拠(<証拠・人証略>、原告本人、被告代表者)によれば、以下の事実が認められる。

(一) 原告は、昭和五五年八月九日被告に雇用され、平成三年頃には営業部長の職についていたが、被告からの要請で同年五月一日から取締役を兼務するようになった(なお、原告の入社日及び取締役就任月日については争いがあるが、<証拠略>からは右認定のとおり認められ、これを覆すに足る証拠はない)。

原告は、取締役に就任したことにより、年俸が増加するなどの待遇の違いはあったものの、従前どおり営業部長としての職務も担当し、勤務時間や有給休暇の適用も受け、被告からは、利益処分である取締役報酬としてではなく、経費として処理される賃金として給与支給を受けていた。

原告退職時の月例賃金のうち、部長手当及び役員手当を控除した基本給は五五万五〇〇〇円であった。

(二) 被告には取締役退職慰労金の支給規定が存しなかったところ、平成七年一月頃、当時の被告代表者武田勉は、入退院を繰返し自らの退職を検討していたこともあって、当時の専務取締役八木文子(以下「八木」という。)に退職慰労金規定の作成を指示するなどした。そして、同年七月頃には、原告同様取締役及び部長を兼務していた吉村洋一(以下「吉村」という。)が退職意思を表明していたことも加わって同規定の作成が急がれることとなり、同年八月一五日、勉は取締役らを召集して役員会を開催し、自ら作成した「役員退職金(案)」を提示した。右勉案では、計算方法がその一、その二と二とおり提案されていたが、そのいずれも、従業員を兼務しない専業役員と兼務する社員役員とに分けて退職慰労金算定基準を作成することとされ、社員役員の退職慰労金については、退職金規定に従い取締役兼務期間をも勤続年数に含めて計算した「社員部分退職金」が支給されることを前提にして「役員部分退職慰労金」を算出しようとするものであった。

右役員会では、社員役員退職慰労金について、計算方法その一またはその二のいずれを採用するかは原告ら従業員兼務取締役で検討することとなり、これを受けて、翌一六日、原告らはその一の計算方法を希望するとの意見書を提出した。

被告では右役員会の審議経過に沿った取締役退職慰労金規定(<証拠略>)が文書に作成され、同年九月一五日に退職した吉村及び同年一〇月一五日に退職した八木に対し、右規定によって算定した退職慰労金等が支払われた。

(三) 被告は、平成八年五月頃、八木らが、被告と競業関係にある株式会社信栄補償設計(以下「信栄補償設計」という。)で稼働していることを知り、その頃から八木らに支給した退職慰労金等の返還請求を検討するようになった。

被告では、従前、会社運営上の重要事項は、勉が主催し、部長以上の役職者らが出席する役員会で決定されてきていたが、経営コンサルタントで公認会計士である谷川昌司(以下「谷川」という。)の助言により、同年六月頃から取締役会や株主総会を開催するようになった。同月二一日、開催された取締役会では、同年七月一〇日に臨時株主総会を開催することが議決されたが、その際、同席した谷川から取締役が従業員を兼務することはあり得ないとの発言がなされた。

同年七月一〇日の臨時株主総会では、取締役新任議案が審議されたが、その席上、原告は、取締役の辞任及び同年八月一五日付退職を申し出た。

そして、右総会に引き続き開催された取締役会で、取締役退職慰労金規定の作成や八木らに対する退職慰労金の返還請求等が審議され、さらに、同月一三日開催の取締役会において、勉から取締役退職慰労金規定の案が提示され、これが可決された。右案は平成八年八月一五日に開催された臨時株主総会において最終的に可決され、同時に、八木らに支給した退職慰労金等の返還請求も議決された。

新慰労金規定では、取締役退職慰労金は、退任時の報酬月額(退任時の年俸を一二分したもの)に役員在任年数及び役職ごとに定められた退任時の役員係数(社長を一・五とし、通常の取締役を〇・六等と規定されている。)を乗じた額とされ、文言上は兼務役員について従業員退職金部分を控除するとの体裁は取られていない。

他方、従業員等に適用される退職金規定は何ら修正されることはなかった。

(四) 被告は、原告に対し、平成八年九月二〇日頃、右規定によって算定した取締役退職慰労金三四八万円及び被告が原告の入社日であると主張している昭和五五年八月二一日から同じく取締役就任日であると主張している平成三年四月二二日までを従業員期間として、退職金規定によって算定した従業員部分退職金五〇六万三三一(ママ)〇円を支給した。

なお、被告は、右支給まで、右規定の新設したことを原告に知らせることはなかった。

2  右認定事実及び前記争いのない事実等によって検討するに、

(一) 退職金規定は、昭和六三年九月一日より実施されているものであるが、第二条本文に「この規定による退職金は、社員及び兼務役員が退職した場合に適用する。」、第五条一項に「勤続年数は入社の日より退社の日までとする。」と規定されており、文言上は、兼務役員即ち取締役を兼務する従業員の存在を予定し、これにも通常の社員同様適用されること、退職金算定の基礎となる勤続年数の算定についても、兼務役員について別段の取扱をすることは予定されていないことが認められる。

(二) これに対し、被告は、取締役が従業員を兼務することはあり得ず、右規定が兼務役員を適用範囲し(ママ)ているのは誤記であるか、支給時期を規定するに過ぎないものと主張するが、少なくとも代表取締役でない通常の取締役が使用人を兼ねることが株式会社の機関の本質に反するものとは解されず、法律上当然に従業員を兼務する取締役の存在が否定されなければならないものではないし、被告では、原告のみならず取締役に就任していながら現に部長職等を兼務している従業員が存し、この点は新慰労金規定作成後も同様である。

このような取締役を兼務する従業員について、従業員部分の賃金や退職金と取締役部分の取締役報酬や退職慰労金とをいかに支給するかは、商法等の制限に反しない範囲で当該会社の運用に委ねられているというべきであるが、被告においては、前記認定のとおり、平成七年八月頃の役員会で審議した勉提案にかかる取締役退職慰労金規定の案でも、専業役員と社員役員とが区別され、社員役員の従業員部分退職金は退職金規定に基づいて支給されることが前提にされていたのであるから、右規定の適用範囲に兼務役員が記載されていることは、誤記や支給時期を記載したに過ぎないものでないばかりか、むしろ、兼務役員にも退職金規定がそのまま適用されることは、勉以下、当時被告の株主総会や取締役会を代行していた役員会の構成員に共通の理解であったと認められる。

従って、別紙退職金規定は兼務役員に適用されることを予定していない旨いう被告の右主張は到底採用できない。

(三) また、被告は、新慰労金規定によって、従来曖昧であった兼務役員の存在は否定され、従業員は取締役に就任することによって従業員たる地位を失い、以後は取締役としての処遇のみを受けることが明らかにされたと主張する。

確かに、新慰労金規定は、谷川から、取締役が従業員を兼務することはあり得ないとの発言がなされた後に作成されていること、新慰労金規定の算式では、兼務役員の退職慰労金についても従業員としての賃金部分を控除することなく退任時の報酬月額をもとにして退職慰労金を算定することとされていることなどからすると、新慰労金規定は、退職金規定が兼務役員の兼務期間に適用されることを排除する趣旨を有するものと解されなくはない。

しかしながら、新慰労金規定は、退任時の報酬月額を退職慰労金算定の基礎としているとはいえ、これに役員係数を乗じることとされており、これが通常の取締役では〇・六と低く抑えられることによって、結局報酬月額の六割しか考慮されていないのであるから、実質的には従業員部分に支給される退職金との調整が図られているとも解されないではなく、新規定の制定によって、兼務役員に対する退職金規定の兼務期間適用排除が明らかにされたとは必ずしもいえないところである。

しかも、退職金規定は、就業規則に基づいて制定されているところ(第一条)、前記のとおり、同規定の文言からは、兼務役員の兼務期間を勤続年数から排除すべき理由はないし、被告の役員会構成員の理解としても、同規定は兼務役員の兼務期間にも適用されると解されていたことが認められるのであるから、同規定どおり退職金を支給すべきことは、既に原被告間の雇用契約の内容となっていたものと解され、被告がこれを一方的に不利益に変更することは原則として許されないというべきである。しかるに、原告の退職金を同規定に従って算定すると、別紙計算書のとおり、一二三一万三九二四円となるところ、被告が新規定を適用した結果であるとして原告の退職にともなって支給した金額は、従業員退職金に取締役退職慰労金を加算しても八五四万三四〇〇円に過ぎず、入社日及び取締役就任月日の誤認があることを考慮しても、原告の不利益は明らかであって、退職金規定を、その文言に反してまで、被告が主張するように限定的に解すべき合理性は何ら認められない。

この点に関して、被告は二重計算の不合理を主張するが、右のとおり退職金との調整は図られているとみるべき余地もあるうえ、仮に被告が主張するような不合理が生じるとしても、それは後に制定した新慰労金規定の内容に問題があるからであって、これを理由に被告が退職金規定の限定解釈を主張するものであるとすれば、それは本末転倒というべきである。

また、退職金規定の付則では、同規定の改廃は社員代表者の意見を聞いて行うこととされているところ、このような手続もとられていない(尤も、影響を受けるのは、従業員を兼務している取締役であり、新規定が取締役会の議決を経ていることからすると、実質的には右にいう意見聴取がなされているとみることができないではないが、右取締役会の議決当時、原告は退職意思を表明していたのであるから、最も重大な利害関係を有していたと認められるにもかかわらず、前記認定のとおり、新慰労金規定の制定が原告に知らされることすらなかったのであり、原告が出席しない取締役会の決議が原告の意思をも代表するものであったとは認められない)。

以上のとおりであり、新慰労金規定の制定が、被告が主張するように退職金規定を兼務役員の兼務期間に適用しないことを明らかにしたものであるとすると、実質的には合理性のない就業規則の不利益変更というほかなく、文言に反してまでそのように解しなければならない理由は認めれず、右被告の主張は採用できない。

(三)(ママ) 退職金規定による原告の退職金は、前記のとおり、一二三一万三九二四円であり、これに対して被告が支給した退職金は五〇六万三四〇〇円であるから、七二五万〇五二四円が未払いであり、同規定第九条一項によれば、退職金の支給は退職後一か月以内とされており、原告の退職日が平成八年八月一五日であるから、同年九月一七日には既に弁済期は経過しているので、未払退職金の一部である六六一万〇五二四円及びこれに対する右同日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める原告の請求は理由がある。

二  争点2について

1  証拠(<証拠・人証略>、原告本人、被告代表者)によれば以下の事実が認められる。

被告では、その株式の取得については取締役会の承認を要するとの譲渡制限がなされており、被告株式の多くは勉や八木が所有していたが、昭和五八年に社員持株制度が導入され、発行済株式の約六パーセント程度を数名の従業員がそれぞれ僅かな株式数で所有することになり、原告も本件株式を取得した(なお、吉村の後任として被告取締役に就任した餅井清二も同制度の導入によって被告株式二五〇株を額面価額で取得しており、原告も、同様に、額面価格で取得したものと推認される)。

原告は、平成八年七月一〇日、被告に対し、同年八月一五日付で退職する意思を表明したが、その際、勉から、本件株式を被告に売却するようにとの申出を受け、これを了承した。さらに、原告は、同月一二日、勉から社長室に呼び出され、信栄補償設計に就職しないこと等を条件に功労金を支給するとの申出を受けたが、これを拒否した。

そして、原告は、同月一七日、本件株式を額面価額で被告に売却する旨の売買契約書を作成して、現金一二万五〇〇〇円を受領し、領収書を被告に渡した。

2  以上認定事実に対し、原告作成の陳述書(<証拠略>)には、原告が退職を申し出た平成八年七月一〇日に勉から相応額での譲渡の申出がなされ、原告はこれを了承したこと、同月一二日には、勉から、信栄補償設計に行かないことに加え、完全な引継ぎを行うこと及び額面価額で本件株式を譲渡することを条件に功労金支給の申出がなされたが、原告はこれを拒否したこと、さらに同月一七日には、勉から退職金は配慮して払うからとの申出がなされ、退職金で有利な取扱を受けられるものと信じて、額面価額で本件株式を売却した旨記載しており、原告本人尋問においてもほぼ同旨の供述がある。

しかしながら、弁論の全趣旨からして被告株式の価格は額面を少なからず超えるものとは認めらる(ママ)ものの、原告が退職を申し出た時期は、前記のとおり、被告から八木らに対する退職慰労金の返還請求等が検討されている時期であって、勉の申出などからして、原告が被告を退社した後信栄補償設計に移ることを警戒されているということは当然理解していたはずであり、そのような状況の中で、功労金支給や退職金の有利扱いの申出がなされたからといって、具体的内容は何ら取り決められていないのに、単に勉の言からこれらを期待して本件株式を売却したというのは不可解であり、他方、原告(ママ)前記餅井作成の陳述書(<証拠略>)には、従業員持株制度によって取得した被告株式については退職時に被告に売り渡す約定があった旨の記載があり、かつ、同人は証人尋問でも同旨の証言をしていること、武田正典作成の陳述書(<証拠略>)にも、本件株式譲渡の際、勉が、退職時には被告に額面で売却する約定であったことの確認を求め、原告がこれに同意した旨の記載があり、かつ、右武田は被告代表者本人尋問においても同旨の供述していること、これらに加え、前記のとおり、被告株式には譲渡制限があり流通が予定されていないこと、原告が本件株式を取得した経緯が従業員持株制度の導入によるものであること、その取得価格は額面価格であったと推認されることなどからすると、被告が主張するように、本件株式については被告退職の際に被告へ額面価額で売却することが約定されていたと認めるのが相当であって、功労金支給等が本件株式売買の前提であったという原告作成の陳述書の記載や原告本人の供述はたやすく信用できない。

以上によれば、原告の本件株式の売却が、勉の詐欺や原告の錯誤に基づくものとは認められず、本件株式所有の確認を求める原告の請求は理由がない。

(裁判官 松尾嘉倫)

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