大阪地方裁判所 平成9年(ワ)4293号 判決 1998年6月25日
原告
小野敬司
ほか一名
被告
川村和広
ほか一名
主文
一 被告川村和広は、原告小野敬司に対し、金一五九一万三二九八円及びこれに対する平成九年五月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告川村和広は、原告小野節子に対し、金一五一八万六五七九円及びこれに対する平成九年五月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告らの被告川村和広に対するその余の請求及び被告川村有子に対する請求をいずれも棄却する。
四 訴訟費用は、原告らに生じた費用の四分の三、被告川村和広に生じた費用の二分の一及び被告川村有子に生じた費用を原告らの負担とし、原告らに生じたその余の費用及び被告川村和広に生じたその余の費用を被告川村和広の負担とする。
五 この判決は、第一項及び第二項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
一 被告らは、原告小野敬司に対し、各自金三一五七万〇八〇八円及びこれに対する平成九年五月二二日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告らは、原告小野節子に対し、各自金二九九九万二九四三円及びこれに対する平成九年五月二二日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、被告川村和広運転の普通乗用自動車(助手席に小野泰正同乗)と訴外森井茂行運転の普通乗用自動車とが衝突し、小野泰正が死亡した事故につき、小野泰正の相続人である原告らが、被告らに対し、民法七〇九条に基づき、損害賠償を請求した事案である。
一 争いのない事実
1 事故の発生
左記交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。
記
日時 平成八年一一月二〇日午後九時二〇分頃
場所 大阪府枚方市南中振三丁目四番三号先路上(道路名国道一七〇号線)(以下「本件事故現場」という。)
関係車両一 普通乗用自動車(大阪三三は六二一八)(以下「本件事故車両」という。)
右運転者 被告川村和広(以下「被告和広」という。)
右同乗者 小野泰正(以下「亡泰正」という。)
右所有者 原告小野敬司(以下「原告敬司」という。)
関係車両二 普通乗用自動車(大阪三五ろ四四一八)(以下「森井車両」という。)
右運転者 森井茂行(以下「森井」という。)
態様 被告和広は、本件事故車両を運転して、森井車両に本件事故車両側面を衝突させた。
2 亡泰正の死亡及び相続
(一) 亡泰正は、本件事故により 平成八年一一月二〇日、死亡した。
(二) 亡泰正の死亡当時、原告敬司はその父、同小野節子(以下「原告節子」という。)はその母であった。
二 争点
1 被告和広の過失
(原告らの主張)
被告和広は、本件事故車両を運転し、北から南にむけて走行していたが、制限速度時速五〇キロメートルのところ、時速一〇〇キロメートル以上のスピードを出し、急ブレーキ、急ハンドル操作を行ったことにより 道路右側に車体が滑走して行き、制御不能となり、センターラインをオーバーし、森井車両に衝突したものである。
被告和広は、本件事故車両の運転をするに際しては、制限速度を遵守して運転し、前方左右を注視し、危険に対しては的確に制動措置を採った上、ハンドルを切るなどの回避措置を採る注意義務があるにもかかわらず、これらの義務を怠ったまま漫然と運転し、ハンドル操作を誤った過失により、折から南から北に向かって走行中の森井車両に本件事故車両を衝突させたものであり、被告和広には、民法七〇九条の責任がある。
(被告和広の主張)
争う。
被告和広は、片側二車線の国道一七〇号線の左側車線を本件事故車両を運転して走行中、前車が制限速度よりもかなり遅い速度で走行していたため、これを追い越そうとして右側に車線変更し、加速して追い越しをした後に左側車線に戻るためにハンドルを左に切ったところ、ハンドルがとられて車体が左側の歩道に向かって滑っていく状態となった。そのため、被告和広は急いでハンドルを右に切ったところ、今度は右側に車体が滑って行き、全くハンドル操作がきかない状態となり、左にハンドルを切ったにもかかわらず対向車線に進入して対向車である森井車両と衝突したのである。
2 被告川村有子の過失
(原告らの主張)
被告和広(昭和五二年七月一四日生)は、本件事故当時、未成年者であり、被告川村有子(以下「被告有子」という。)は、その親権者であった。
被告和広は、平成七年一二月に普通免許を取得したが、被告有子は、そのころ、被告和広に日産シーマという普通乗用自動車を買い与えた。被告和広は、平成八年に入ってから、同車両を運転中、T字路を四叉路と勘違いして突っ込み、同車両を全損させる事故を起こしたが、これは被告和広の無謀運転が原因であった。また、被告和広は、平成八年の本件事故前、傷害事件を起こし、少年鑑別所に送致されたこともある。
かかる事情から考えて、被告和広には、いまだ規範意識、特に交通規範に対する遵法精神に欠けていた面が存することは明らかである。被告有子は、かかる事情を熟知していたのであるから、親権者として被告和広の生活態度、特に、車両の運転に対する態度については、注意深く指導監督すべき義務を負っていたといえる。しかるに、被告有子は、かかる義務を果たすことなく、被告和広を放任したために、同人が本件事故車両を運転し、本件事故を発生させたのであるから、右監督義務違反と本件事故との間には、相当因果関係があるので、被告有子は民法七〇九条に基づく責任を負う。
(被告有子の主張)
争う。
被告和広が平成八年に入ってから本件事故前に起こした事故とは、夜間、幅員の狭い道路を運転中、脇見をしたために田圃に落ちたというものである。また、車両は全損したのではなく 修理費用が高額になるので、廃車にしようと考えたものである。
被告有子は、日頃から被告和広に対し、規範・法律の遵守、自動車の安全運転、その他生活態度について十分に指導監督しており、監督義務違反行為は存しない。
さらに、本件事故は被告和広の無謀運転に原因があるものではないので、被告有子の行為と本件事故との間に相当因果関係は存しない。
3 損害額
(原告らの主張)
(一) 亡泰正逸失利益 三〇五四万五八八七円
(二) 亡泰正死亡慰謝料 二四〇〇万円
(原告敬司の主張)
(一) 亡泰正治療関係費 一七万七八六五円
(二) 本件事故車両損 一二〇万円
(三) レッカー費用、車両解体廃車費用 五万円
(四) 弁護士費用 二八七万円
(原告節子の主張)
(一) 弁護士費用 二七二万円
(被告らの主張)
亡泰正逸失利益、亡泰正死亡慰謝料は否認し、その余は不知。
4 亡泰正の過失
(被告らの主張)―欠陥車両、異種タイヤ装着、シートベルト不装着
本件事故車両は、いわゆる改造車であった。すなわち、本件事故車両には、エアサスキットなる装置が取り付けられていた。本件事故車両には、本来コンピューターの自動制御によって車高を調整するエアーサスペンションという装置が装備されていた。エアサスキットは、このエアーサスペンションを制御するコンピューターに信号を送り、運転者が任意に前後の車高を独立して上下に調節することができるという機能を有するものであり、最も低くすると車体の底と地面の間がタバコケースを縦に置いた位となり、逆に最も高くすると正常な自動車の状態よりまだ高くなるというものである。
本件事故発生時には、このエアーサスペンションないしエアサスキットが壊れており、車体の前部は最も高い位置に、車体の後部は最も低い位置に固定され、調整がきかない状態となっていた。つまり、車体の前の方が極端に上がった状態にあった。このような状態では、車両の重量が後輪に大きくかかり、逆に前輪には余り重量がかからないことになる。そのため、ハンドルが軽くなり、ハンドルによる車両の進行方向のコントロールがしづらい状態となっていた。
また、本件事故車両のタイヤのうち、後輪の右側タイヤのみ他のタイヤ(スポーツ仕様のタイヤ)と異なるもの(ノーマルタイヤ)が装着されていた。
被告和広が本件事故車両運転中にハンドルをとられたのは、以上のような本件事故車両の状態に原因があったものである。
亡泰正は、自己の占有管理する本件事故車両が右のような状態にあることを知りながら、被告和広に運転させたのであるから、本件事故の主たる原因は亡泰正側にあるといわざるを得ない。
また、亡泰正は、本件事故当時、助手席にてシートベルトを装着していなかった。亡泰正がシートベルトを装着していたら、死亡には至らなかったものと考えられる。本件事故車両は、亡泰正の占有管理しているものであり、シートベルト不装着は亡泰正の重大な過失である。
(原告らの主張)
争う。
確かに、本件事故車両にはエアーサスペンションが取り付けられていたが、エアサスキットという装置が取り付けられていたかどうかは知らない。原告らは、このエアーサスペンションの効用については、走行中の車両のスピードに応じて、車体が沈み、走行が安定するものと認識していた。現に原告敬司は、頻繁に本件事故車両を運転していたが、そのような効用しか認識しなかった。また、本件事故当時、エアーサスペンションないしエアサスキットが故障して車体の全部が極端に上がった状態に固定されていたという事実は全くない。したがって、本件事故車両は、本件事故当時、何ら故障はなく、欠陥車両でもなかった。
本件事故車両のタイヤのうち、後輪の右側タイヤのみ他のタイヤと異なるものが装着されていたことはそのとおりであるが、これは、本件事故の一ないし二か月前、後輪の右側タイヤがパンクし、亡泰正がノーマルタイヤに交換したものである。右ノーマルタイヤは、スペアタイヤではなく 車輪の大きさ自体はすべて同一であり 何ら操縦性能に影響するものではない。
亡泰正がシートベルトをしていなかったことは知らない。本件事故は側面衝突事故であり、亡泰正が乗車していた助手席ドア側からの衝撃によって亡泰正は致命傷を負ったものである。したがって、亡泰正のシートベルト装着の有無とその死亡とは無関係である。
5 好意同乗
(被告らの主張)
亡泰正は、中学校時代の同級生である友人らと遊びに出かけるため被告和広を自宅に誘いに来て、遊びに行く途中で運転を代わることを同被告に勧め、同被告がこれに応じて運転を開始した後に本件事故が発生したものである。しかも、亡泰正は、前記のような欠陥が車両にあることを知りながら、あえて被告和広の運転する本件事故車両に同乗したものである。
(原告らの主張)
争う。
亡泰正は、自動車の運転が非常に好きであり、まして、自己が普段より占有している車両を、自ら被告和広に勧めて運転させるとは考えられない。被告和広は、平成八年に入ってから、被告有子から買い与えられていた車両の全損事故を起こし、自動車の運転をしたいが、それもままならない状態だったのであり、このような事情から考えて、本件事故車両の運転の交代は、むしろ、被告和広が亡泰正に対して強いて頼んだために行われたものである。
6 原告敬司の管理責任
(被告らの主張)
原告敬司は、本件事故車両の所有者であるが、同車両には前記のような欠陥があったのであるから、所有者としての管理責任を十分に果たしていなかったというべきである。したがって、原告敬司の固有の慰謝料請求については相当程度減額されるべきである。
(原告らの主張)
争う。
本件事故車両には、前記のとおり、何ら欠陥はなく、原告敬司の慰謝料額が減額される理由はない。
第三争点に対する判断(一部争いのない事実を含む)
一 争点1、4ないし6について(本件事故の態様)
1 前記争いのない事実、証拠(乙一、二、三[後記措信できない部分を除く]、四、六)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
本件事故現場は、大阪府枚方市南中振三丁目四番三号先路上(道路名国道一七〇号線)であり、その付近の概況は別紙図面記載のとおりである。本件事故現場付近の道路は、南北方向に直線の片側二車線の道路(以下「本件道路」という。)であり、各車線の幅員は三・〇メートルである。本件道路の中央には、いわゆるゼブラゾーンが設けられている。本件事故当時、本件道路の速度制限は時速五〇キロメートルとされており、本件事故現場付近における前方左右の見通しはよかった。
本件事故車両は、本件事故の一週間ほど前からエアーサスペンション(もともと車両に備えられている装置であり、コンピューター制御により、速度に応じて車高を自動的にコントロールするもの)あるいは亡泰正の取り付けたエアサスキット(エアーサスペンションを制御するコンピューターに疑似信号を送り、前後の車高を任意に手動調節することを可能とする装置)の調子がおかしく、前輪の方が最も高い位置で、後輪の方が最も低い位置で固定された状態であり、車体後部の方は車体の底と地面の間がタバコケースを縦に置いた位の高さとなっていた。また、本件事故の一ないし二か月前、本件事故車両の後輪の右側タイヤがパンクしたため、亡泰正がタイヤ交換した結果、本件事故車両のタイヤのうち、後輪の右側タイヤを除くタイヤはスポーツ仕様のタイヤ(ホイール径が大きく、その分タイヤの厚みは小さくなり、太さも太い)であったが、後輪の右側タイヤのみ他のタイヤと異なり、ノーマルタイヤが装着されていた。
被告和広は、本件事故日である平成八年一一月二〇日夜、自宅にいたところ、友人の田辺から遊びに行こうと誘いを受け、自宅で待っていると、池田、田辺、亡泰正、中西が亡泰正の運転する本件事故車両と池田の運転する車両とに乗って迎えに来た。本件事故車両のエアーサスペンションの調子がおかしく、前輪の方が上がって後輪の方が下がっている状態であり、車体後部の方は車体の底と地面の間がタバコケースを縦に置いた位の高さとなっていたので、修理を頼もうということになり、亡泰正の運転する本件事故車両と池田の運転する車両とに分乗して、ガソリンスタンドに寄った。しかし、ガソリンスタンドでは、修理ができないと言われ、被告和広が本件事故車両の運転席、亡泰正が助手席に替わり、池田が池田車両を運転し、寝屋川方面にドライブに向かった。そして、被告和広は、平成八年一一月二〇日午後九時二〇分頃、本件事故車両を運転し、本件道路の南行車線の第一車線を時速約五〇ないし六五キロメートルで走行していたが、時速約五〇キロメートルで走行していた前車を追い越し、南に二つ目の信号機のある交差点を青信号のうちに左折しようと考え、別紙図面<1>地点からハンドルを右に切り、第二車線の方に進路を変え、アクセルを強く踏み込んで急加速して時速一〇〇キロメートル程度の速度で前車を一気に追い越した後、同図面<2>地点で元の第一車線に戻ろうと左にハンドルを切った時、本件事故車両の後部が右に振られ、同図面<3>地点で本件道路左側の縁石に衝突しそうな危険を感じたため、右にハンドルを切り、ブレーキをかけたところ、同図面<4>地点で本件事故車両が横向きになり、あわてて左にハンドルを切ったが、そのまま横すべりの状態で対向車線に滑走して行き、同図面<×>地点で本件事故車両の左側ドア(同図面<5>地点)が森井車両の前部(同図面<イ>地点)に衝突し、本件事故車両は同図面<6>地点の歩道上に前部を乗り上げて停止し、森井車両は同図面<ウ>地点に停止した。
以上のとおり認められ、乙第三及び第五号証中右認定に反する記載部分があるが、前掲各証拠に照らして措信しえず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
2 右認定事実によれば、本件事故は、被告和広が、安全な速度を遵守するとともに適切なハンドル操作を行うべき注意義務があったにもかかわらず、これを怠った過失のために起きたものであると認められる。しかしながら、他面において、本件事故車両は前記のとおりエアーサスペンションあるいは亡泰正の取り付けたエアサスキットの調子がおかしく、前輪の方が最も高い位置で、後輪の方が最も低い位置で固定された状態であり(前認定事実)、車両の重量が後輪に大きくかかり、逆に前輪には余り重量がかからないことになるため、ハンドルが軽くなり、ハンドルによる車両の進行方向のコントロールがしづらい状態となっていたこと(乙二)、本件事故車両のタイヤのうち、後輪の右側タイヤのみ他のタイヤと異なり、ノーマルタイヤが装着されており(前認定事実)、グリップ力が後輪の右側タイヤのみ低く、走行上のバランスが悪いこと(乙二)が認められるから、本件においては、これらの事情を斟酌し、四割の過失相殺を行うのが相当である。
なお、被告和広は、亡泰正のシートベルト不装着をも問題とするが、亡泰正がシートベルトを装着していなかったと認めるに足りる証拠はない上、本件事故状況(本件事故車両の左側ドアに森井車両が衝突し、本件事故車両大破)に照らすと、仮に亡泰正がシートベルトを装着していなかったとしても、これと同人の死亡との間に相当因果関係を認めるには足りないから、亡泰正がシートベルトを装着していなかったことを前提として、過失相殺率を定めることはできない。
また、被告和広は、いわゆる好意同乗減額を主張するが、亡泰正の方から本件事故車両の運転を被告泰正に勧めたという事実を認めるに足りる証拠はないし、単に亡泰正が同乗したことのみを捉えて減額の理由とすることはできない。(前記のとおり、亡泰正が本件事故車両に問題点があることを知りながら乗車したことについては、過失相殺として考慮している。)。
さらに、被告和広は、原告敬司の固有の慰謝料請求に対して、本件事故車両の所有者としての管理責任を問題にして、減額を主張しているが、右管理責任の具体的内容となる本件事故車両の問題点については、前記のとおり、被害者側の過失として既に考慮済みであるから、重ねて減額の理由とすることはできない。
二 争点2について(被告有子の過失)
証拠(乙四、五)及び弁論の全趣旨によれば、被告和広が、本件事故当時、未成年者であって、被告有子がその親権者であったこと、被告和広には、交通関係の前歴として、ヘルメット不装着、自動二輪車の無免許運転、トラックの積載違反があることが認められるが、被告和広が本件事故当時既に一九歳であったこと(甲一)、本件事故を起こした本件事故車両は原告敬司が亡泰正に買い与えたものであること(乙四)に照らすと、右認定事実から、被告有子につき、本件事故に関する不法行為を構成すべき注意義務違反を認めることはできず、他に右注意義務違反を肯定すべき事実を認めるに足りる証拠はない。
したがって、原告らの被告有子に対する請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。
三 争点3について(損害額)
1 亡泰正の損害額(過失相殺前)
(一) 亡泰正逸失利益 二六九五万五二六四円
証拠(甲一、五)及び弁論の全趣旨によれば、亡泰正(昭和五二年一二月二日生)は、本件事故当時一八歳の独身で、死亡直前の収入は月額一八万四〇〇〇円であったことが認められる。亡泰正は、本件事故に遭わなければ、六七歳まで稼働することができたと認められるから、右収入を基礎に、生活費控除率を五割として、新ホフマン式計算法により、年五分の割合による中間利息を控除して、右稼働期間内の逸失利益の現価を算出すると、二六九五万五二六四円となる。
(計算式) 184,000×12×(1-0.5)×24.416=26,955,264
(二) 亡泰正死亡慰謝料 一九〇〇万円
本件事故の態様、亡泰正の年齢、家族状況その他本件に表れた一切の事情を考慮すると、亡泰正の死亡慰謝料は、一九〇〇万円が相当である。
2 原告敬司固有の損害額(過失相殺前)
(一) 亡泰正治療関係費 一七万七八六五円
原告敬司は、本件事故による亡泰正の治療関係費として、一七万七八六五円を要したと認められる(甲六、弁論の全趣旨)。
(二) 本件事故車両損 九〇万円
原告敬司は、本件事故によってその所有にかかる本件事故車両が全損し、その時価九〇万円相当の損害を被ったものと認められる(甲九1、2、弁論の全趣旨)。
(三) レッカー費用、車両解体廃車費用 五万円
原告敬司は、本件事故車両のレッカー費用、車両解体廃車費用として、合計五万円を要したものと認められる(甲一〇1、2)。
3 原告らの損害額(過失相殺後)
亡泰正の損害額(前記1)の合計は、四五九五万五二六四円であるところ、前記一の次第でその四割を控除すると、二七五七万三一五八円(一円未満切捨て)となる。これを原告らはそれぞれ二分の一の割合(一三七八万六五七九円)で相続により承継したことになる。この外、原告敬司固有の損害額(前記2)の合計は、一一二万七八六五円であるところ、前記一の次第でその四割を控除すると、六七万六七一九円となる。したがって、過失相殺後の損害額は、原告敬司につき一四四六万三二九八円、原告節子につき一三七八万六五七九円となる。
4 弁護士費用
本件事故の態様、本件の審理経過、認容額等に照らし、相手方に負担させるべき原告らの弁護士費用は、原告敬司につき一四五万円、原告節子につき一四〇万円をもって相当と認める。
四 結論
以上の次第で、原告敬司の被告川村和広に対する請求は、一五九一万三二九八円及びこれに対する本件不法行為日後である平成九年五月二二日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、原告節子の被告川村和広に対する請求は、一五一八万六五七九円及びこれに対する本件不法行為日後である平成九年五月二二日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、原告らの被告川村有子に対する請求はいずれも理由がないので、主文のとおり判決する。
(裁判官 山口浩司)
別紙 交通事故現場の概況 現場見取図