大阪地方裁判所 平成9年(ワ)6579号 判決 1998年10月13日
原告
山田眞利子
被告
西川正秀
ほか一名
主文
一 被告らは、原告に対し、各自金四二八万八四〇七円及びこれに対する平成五年六月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、これを一〇分し、その九を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
被告らは、原告に対し、各自金五一八三万一三三七円及びこれに対する平成五年六月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、被告西川正秀運転の普通貨物自動車(被告西川慶治保有)が原告運転の足踏式自転車に衝突して原告が負傷した事故につき、原告が、被告西川正秀に対しては、民法七〇九条に基づき、被告西川慶治に対しては、自賠法三条に基づき、それぞれ損害賠償を請求した事案である。
一 争いのない事実等(証拠により比較的容易に認められる事実を含む)
1 事故の発生
左記事故(以下「本件事故」という。)が発生した。
記
日時 平成五年六月三〇日午後三時四〇分頃
場所 大阪府和泉市府中町八六〇番地の一先路上(以下「本件事故現場」という。)
加害車両 自家用軽貨物自動車(和泉四一け五一六〇)(以下「被告車両」という。)(甲二3)
右運転者 被告西川正秀(以下「被告正秀」という。)
被害車両 足踏式自転車(以下「原告車両」という。)
右運転者 原告
事故態様 本件事故現場の横断歩道上において被告車両が原告車両に衝突した。
2 被告西川慶治の責任原因
被告西川慶治(以下「被告慶治」という。)は、本件事故当時、被告車両を保有し、これを自己のために運行の用に供していたものである。
3 損害の填補
原告は、本件事故に関し、被告側の保険会社から五八四万二五七三円、自賠責保険会社から一二九六万円、合計一八八〇万二五七三円の支払をうけた。
二 争点
1 本件事故の態様(被告正秀の過失、原告の過失)
(原告の主張)
原告が本件事故現場の自転車横断帯が設置されている横断歩道上を青信号に従い(但し、歩行者用信号は青点滅)原告車両に乗って南東から北西に横断中、交差点を渡りきる直前において南西方向から北西方向に左折するため信号待ちしていた被告車両が急に発進して原告車両後輪に衝突し、原告を道路上に転倒させた。
被告正秀は、前方信号機の表示に従って進行すべき運転者の基本的注意義務を怠り漫然と信号を無視して発進した過失により本件事故を発生させたものである。
(被告らの主張)
被告正秀は、青信号に従って交差点に進入したのに対し、原告は赤信号を無視して横断を開始したのであるから、この点に限って考えても八〇パーセントの過失相殺がなされるべきである。
2 原告の損害額
(原告の主張)
(一) 治療費 三五二万一三三〇円
(二) 装具代 二万四三八〇円
(三) 休業損害 六三七万七七〇〇円
原告は、本件事故当時四一歳の女性で主婦として家事労働を行っていたのであり、本件事故に遭わなければ実通院日数(六七四日間)について平成五年度賃金センサス第一巻第一表の全国女子労働者(学歴計)の平均年収である三四五万三八〇〇円程度の財産上の収益を上げることが可能であったものであるから、右年額を算定の基礎として休業損害を算出すると六三七万七七〇〇円となる。
(計算式) 3,453,800×674/365=6,377,700
(四) 後遺障害逸失利益 四〇八二万〇五〇〇円
原告は、本件事故の結果、平成九年一月九日、<1>左肩関節の著しい機能障害、<2>左手関節の著しい機能障害、<3>左手指関節五指の用廃、<4>右肩関節の著しい機能障害という後遺障害を残して症状を固定するに至った。右後遺障害中、<1><2>の各障害はそれぞれ自賠責障害等級一〇級一〇号に該当し両者併合して九級相当、<3>の障害は七級七号に該当し、<3>の障害は<1>及び<2>の障害と同一系列の障害として併合して六級相当、<4>の障害は一〇級一〇号に該当し、<1>ないし<3>の障害の六級と併合して五級に相当する。なお、自算会は、<4>の障害につき、本件事故との間の因果関係を否定しているが、不自由となった利き手である左手をかばうために右上肢に過負荷が生じ最も炎症を来たしやすい肩関節に可動域制限を来したものであり、<4>の障害と本件事故との間には因果関係が存する。
原告は、症状固定時四五歳の主婦であり、本件事故に遭わなければ六七歳まで二二年間稼働することができ、その間三五四万四〇〇〇円程度の収入を得ることができたはずであるところ、本件事故による後遺障害のために労働能力の七九パーセントを喪失した。
(計算式) 3,544,000×0.79×14.580=40,820,500
(五) 通院慰謝料 一六八万円
(六) 後遺障害慰藉料 一三五〇万円
(七) 弁護士費用 四七一万円
よって、原告は、被告らに対し、連帯して右損害金合計額七〇六三万三九一〇円から填補額一八八〇万二五七三円を控除した五一八三万一三三七円及びこれに対する本件事故日である平成五年六月三〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
(被告らの主張)
不知。
本件事故による受傷は、原告の左肩等に集中しており、右肩に関しては本件事故から約四年を経過した平成九年五月三〇日に「右肩関節周囲炎」の診断がされているにすぎない。後遺障害診断書にも、傷病名・自覚症状には右肩に関する記載は全くなく、検査結果のところで「二次的と考えられるが」という留保付で右肩関節の可動域制限を指摘するにとどまっている。原告代理人の医療照会に対しても、担当医は発症の医学的原因を明確にしておらず、あまつさえ四十肩という年齢的素因も掲げており、結局明確には不明というにすぎないものである。いずれにせよ、右肩に関する障害については、本件事故との間の因果関係を認めない自算会の判断を覆すに足りるものではない。
第三争点に対する判断(一部争いのない事実を含む)
一 争点1について(本件事故の態様)
1 前記争いのない事実、証拠(甲二二、乙一ないし三、原告本人(後記措信しがたい部分を除く。)、被告正秀本人)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
本件事故現場は、大阪府和泉市府中町八六〇番地の一先路上であり、その付近の概況は別紙図面記載のとおりである。本件事故現場は、南北方向の道路(以下「南北道路」という。)と東西方向の道路(以下「東西道路」という。)とがほぼ垂直に交わる信号機による交通整理の行われている交差点である。南北道路は、片側二車線であり、北行車線の幅員は第一車線が三・七メートル、第二単線が三・二メートルである。
被告正秀は、平成五年六月三〇日午後三時四〇分頃、被告車両を運転し、南北道路を南から北に向けて走行し、本件交差点手前で信号待ちのため、別紙図面<1>地点で停止した。その際、横の第二車線には被告車両よりも背の高いワンボックスカーが同図面地点に停止していた。対面信号が青色に変わったので、被告車両は発進し、ワンボックスカーも同様に発進した。被告車両が同図面<2>地点にきた時、被告正秀は、右方から原告車両が同図面<イ>地点まで進行しているのを発見し、急ブレーキをかけたが間に合わず、同図面<×>地点で原告車両に衝突した(右衝突時における被告車両の位置は、同図面<3>地点、原告車両の位置は、同図面<ウ>地点である。)。被告車両は同図面<4>地点に停止し、原告車両は同図面<エ>地点に転倒した。右衝突により、被告車両は、前バンパー(左端から〇・三及び〇・六メートル、高さ〇・四九メートル)に擦過、前ナンバープレート凹損擦過の損傷を破り、原告車両も左側チエンステ(後から〇・五から〇・七メートル、高さ〇・三二メートル)擦過、後左ホーク擦過の損傷を被った。
本件事故当時は雨が降っており、原告は、左手に傘を持ったまま原告車両を運転し、交差点に進入する前、同図面<ア>地点で同図面信号機甲の黄色表示を見てそのまま進行した。
以上のとおり認められる。原告は、横断歩道上を青信号(但し、歩行者用信号は青点滅)に従って横断していたと主張し、原告本人尋問中にはこれに沿う部分もある。しかしながら、右供述内容は、乙第三号証(実況見分調書)における原告の指示説明の記載内容とも相違する上、仮に右主張の事故態様であれば、既に治療を開始し、しかも被告の氏名・住所を知っていながら、本件事故後一〇日以上も警察に行かずにいた(乙一、二、原告本人)のは不自然というべきであり、右供述を信用することはできない、他に前認定を覆すに足りる証拠はない。
2 前認定事実によれば、本件事故は、被告正秀が右方ないし前方の安全確認を十分にすることなく交差点に進入したという過失がその一つの原因であったと認められる。しかしながら、原告としても、同図面<ア>地点で対面信号が黄色であることを確認しているのであるから、少なくとも横断開始後間もなく同信号が赤色に変わるであろうことは容易に予想することができたはずであるから(横断開始時点で既に同信号が赤色に変わっていたことを積極的に認定し得るまでの証拠はない。)、原告に生じた損害の全てを被告らの負担とするのは公平に失するといわざるを得ない。
よって、本件においては、右認定にかかる一切の事情を斟酌し、六割の過失相殺を行うのが相当である。
二 争点2について(原告の損害額)
1 証拠(甲三、四、一六1、2、一七1ないし5、二一3、証人小西英樹、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(一) 治療経過等
原告(昭和二六年八月二七日生、本件事故当時四一歳)は、本件事故当日である平成五年六月三〇日、生長会府中病院で診察を受け、左肩・左肘・左臀部打撲、左肘・左大腿部擦過創、頸椎捻挫、左腕神経層・正中神経障害の傷病名で通院による治療(主として理学療法、作業療法)が開始された。原告の主訴は、左肩・左肘・左手の痛みであったが、平成六年六月二日には、右上腕二頭筋・僧帽筋の圧痛を訴え、平成七年三月九日には、右手の疼痛があるとされた。また、同年六月二二日には、右肩周囲の疼痛、右肘外側上顆の圧痛があるとされ、これにつき、同病院の小西医師は、左をかばうため右手に負担がかかっているからであろうと説明した。同月二九日には、両側の肩甲下筋に自発痛と圧痛があり、両肘の外側上顆に圧痛があるとされた。途中、平成五年一〇月一二日からは、反射性交感神経性ジストロフィー(外傷后)の傷病名も追加された。以上掲げられた傷病名は、頸椎捻挫を除き、いずれも左肩・左肘・左手に関するものであり、右肩に関するものではない。
反射性交感神経性ジストロフィーとは、医学会の専門家の間でも未だ一定の見解が得られていない領域の疾患である。傷害部から発せられた疼痛刺激は脊髄を介して反射的に遠心性交感神経刺激を傷害部に送り返すところ、正常な交感神経反射は、組織損傷の発生時にはまず血管収縮を起こし、さらに数時間後には修復機転を促進するために血管拡張に働くようになっているが、何らかの原因でこの正常な交感神経反射の閉鎖が起こらずにそのまま増強して自己強化回路を形成してしまうと、強い交感神経刺激状態が続いて血管収縮状態の継続により阻血状態を生じ、その結果発生する疼痛は再び求心性疼痛刺激となって交感神経反射弓をさらに増強する悪循環が生ずる。こうしてできた病的な交感神経性疼痛反射によって反射性交感神経性ジストロフィーが惹き起こされるという説明が一般に行われている。
小西医師は、平成七年二月一〇日時点で同月いっぱいで症状固定の診断をすることも可能であると考え、また、同年六月二日の時点でも同年五月末で症状固定と診断しても問題なしと考えたが、結局、平成七年七月二一日をもって原告の症状が固定した旨の後遺障害診断書(診断日平成七年七月二一日、診断書発行日同日)を作成した。同診断書によれば、左肩・左肘・左臀部打撲、左肘・左大腿部擦過創、頸椎捻挫、左腕神経層・正中神経障害、反射性交感神経性ジストロフィー(外傷后)の傷病名で、自覚症状としては、左肩・左肘・左手指関節の自発痛、運動時痛あり、家事一般に困難あり、日常生活動作においては、服の着脱、入浴、食事等に著明な制限あり(左手が利き手である)とされ、他覚症状及び検査結果としては、<1>左手が利き手であるにもかかわらず、握力の著明な低下あり、<2>左肩・左手・左手指関節の可動域の著明な制限あり、<3>X線写真上、右手に比較して骨萎縮あり、<4>神経伝達速度の遅延ありという趣旨の所見が述べられている。この時点における右肩関節の可動域は自動で屈曲一七〇度、伸展四〇度、外転一七〇度、内転〇度であり、特に問題ない状態であった。
ところが、原告の右肩関節の可動域は、平成七年八月頃には、原告の右肩関節の可動域は健常者の三分の二程度と悪化し(外転が他動で九〇度ないし一〇〇度)、同年一一月一五日には、自動で屈曲一二〇度まで回復したり、平成八年五月二日には、屈曲六〇度、外転四〇度と健常者の二分の一程度に落ち込んだりして、軽快憎悪を繰り返した。
そこで、小西医師は、再び平成九年一月九日をもって原告の症状が固定した旨の後遺障害診断書(診断日平成九年一月九日、診断書発行日同月二〇日)を作成した。同診断書の内容は、「二次的と考えられるが、右手の使用頻度高くなったため、右肩関節の可動域制限を生じている」として、右肩関節の可動域が自動で屈曲六〇度、伸展〇度、外転五〇度、内転〇度とされている外、前回の後遺障害診断書の内容とほとんど同じである。
その後、小西医師は、原告代理人の医療照会に対し、平成九年八月一五日付の回答書において、原告の右肩関節の可動域制限が生じた原因につき、不自由となった利き手である左手をかばうために右上肢に過負荷が生じ最も炎症を来たしやすい肩関節に可動域制限を来したものと判断されるとし、また、年齢的にも肩関節周囲炎を発症しやすいことなども寄与しているものと推察されると回答した。
自算会調査事務所は、原告の後遺障害につき、<1>左肩関節が自賠責保険に用いられる後遺障害等級表一〇級一〇号(一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの)、<2>左手関節が一〇級一〇号(一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの)、<3>左手指が七級七号(一手の五の手指又はおや指及びひとさし指を含み四の手指の用を廃したもの)に該当し、併合して六級に相当するものと認定した。
平成九年五月三〇日からは、生長会府中病院において、原告の傷病名として右肩関節周囲炎が掲げられ、これに対する治療が開始された。
小西医師は、その証人尋問において、原告の右肩の症状につき、肩関節周囲炎(いわゆる四十肩や五十肩)の症状と非常によく似ており、当初は肩関節周囲炎と判断していたが、四十肩や五十肩は通例長期間かかって改善してくるケースが多いところ、原告はこのような改善がみられず、単純な肩関節周囲炎だけと判断して正しかったのかどうかは少し疑問に感じており、また、反射性交感神経ジストロフィーのミラー現象(傷害部から発せられた疼痛刺激は脊髄を介して反射的に遠心性交感神経刺激を傷害部に送り返すが、その際、反対側にも遠心性交感神経刺激が送り込まれ、鏡のような形で両側に症状が出ること)によるものという考え方もありうるが、原告代理人の医療照会に対する前記回答書には、ミラー現象によるという説明は記載しておらず、これに記載するほどの自信はなかったと述べている。
以上のとおり認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
(二) 後遺障害等級、症状固定時期
右認定事実によれば、原告の症状は、平成七年七月二一日に固定したものであり、その後遺障害は、<1>左肩関節が自賠責保険に用いられる後遺障害等級表一〇級一〇号(一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの)、<2>左手関節が一〇級一〇号(一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの)、<3>左手指が七級七号(一手の五の手指又はおや指及びひとさし指を含み四の手指の用を廃したもの)に該当し、併合して六級に該当するものと認められる。
この点、原告は、右肩関節についても、一〇級一〇号(一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの)に該当するとし、平成九年一月九日に症状固定したことを前提とする主張をする。しかしながら、右肩関節の可動域制限については、本件事故から右肩関節に可動域制限が生ずるに至る機序について原告側で少なくともその高度の蓋然性を証する必要がある。右機序としては、<1>不自由となった利き手である左手をかばうために右上肢に過負荷が生じて炎症を来たしたという考え方、<2>反射性交感神経ジストロフィーのミラー現象によるという考え方、<3>肩関節周囲炎によるという考え方がありうるが、<1>の考え方については、そもそも小西医師も当初は肩関節周囲炎による症状であると考えていたこと、平成七年七月二一日作成の後遺障害診断書時点では、小西医師は原告の右肩について特に問題意識をもっていなかったとうかがわれること、左手が不自由な場合に右手に一層の負荷がかかることは容易に想定し得るものの、左手分の日常の生活動作をカバーすることで右肩関節に著しい機能障害を惹き起こすまでの過負荷が生ずるのか疑問の余地があることを指摘することができるし、<2>の考え方については、小西医師も自信をもっているわけではなく、いずれも推測の域にとどまり、高度の蓋然性まで認めることはできないといわざるを得ない。したがって、原告の右主張を採用することはできない。
2 損害額
(一) 治療費 三三〇万二七四〇円
原告は、本件事故による治療費として三三〇万二七四〇円を要したと認められる(甲五ないし一四)
(二) 装具代 二万四三八〇円
原告は、本件事故による装具費として二万四三八〇円を要したと認められる(甲一八)
(三) 休業損害 五六九万二六一九円
前認定事実によれば、原告は、本件事故日である平成五年六月三〇日から症状固定日である平成七年七月二一日までの七五二日間につき、平均して八〇パーセント労働能力が低下した状態であったと認められる。
次に、原告の休業損害算定上の基礎収入について判断するに、原告は、本件事故当時、パート勤務をしながら、主婦業に従事していたから(原告本人)、原告の基礎収入としては、平成五年度賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計女子労働者(四〇ないし四四歳)の平均年収である三四五万三八〇〇円(公知の事実)とみるのが相当である。
以上を前提として、原告の休業損害を算定すると、次の計算式のとおりとなる。
(計算式) 3,453,800×0.8×752/365=5,692,619
(一円未満切捨て)
(四) 後遺障害逸失利益 三五八六万七七一三円
前認定のとおり、原告の後遺障害は、自賠責保険に用いられる後遺障害別等級の併合六級に相当し、原告は、右後遺障害により、その労働能力の六七パーセントを症状固定時(四三歳)から二四年間喪失したものと認められる。
原告の逸失利益算定上の基礎収入(年収)は、前記のとおり三四五万三八〇〇円であるところ、新ホフマン式計算法により、年五分の割合による中間利息を控除して、後遺障害による逸失利益を算出すると、次の計算式のとおりとなる。
(計算式) 3,453,800×0.67×15.500=35,867,713
(五) 通院慰謝料 一三四万円
原告の被った傷害の程度、治療状況等の事情を考慮すると、右慰謝料は一三四万円が相当である。
(六) 後遺障害慰藉料 一〇五〇万円
前記のとおり、原告の後遺障害は、自賠責保険に用いられる後遺障害別等級表六級に相当するものであり、原告の右後遺障害の内容及び程度を考慮すると、右慰謝料は、一〇五〇万円が相当である。
3 損害額(過失相殺後) 二二六九万〇九八〇円
以上掲げた原告の損害額の合計は、五六七二万七四五二円であるところ、前記の次第でその六割を控除すると、二二六九万〇九八〇円(一円未満切捨て)となる。
4 損害額(損害の填補分を控除後) 三八八万八四〇七円
原告は、本件事故に関し、合計一八八〇万二五七三円の支払を受けているから、これらを前記過失相殺後の金額二二六九万〇九八〇円から控除すると、残額は三八八万八四〇七円となる。
5 弁護士費用 四〇万円
本件事故の態様、本件の審理経過、認容額等に照らし、相手方に負担させるべき原告の弁護士費用は四〇万円をもって相当と認める。
6 まとめ
よって、原告の損害賠償請求権の元本金額は四二八万八四〇七円となる。
三 結論
以上の次第で、原告の各被告らに対する請求は、四二八万八四〇七円及びこれに対する本件事故日である平成五年六月三〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるので、主文のとおり判決する。
(裁判官 山口浩司)
交通事故現場見取図