大判例

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大阪地方裁判所 昭和23年(ワ)488号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(事実)

原告の主張によると、原告は被告から五・五耗ロツドと称する鉄線をナマシ及び伸線加工の上引渡を受ける約束で買受け、代金十六万四千円、加工賃の一部一万五千円、運賃千円を支払つたが、被告は履行しないで内金五万円の返還をしたのみである。

原告は契約を解除して残金の返還を求める。

被告は、右契約は原告と杉本芳太郞との間に締結されたものであり、仮に原被告間に締結されたとしても五・五耗ロツドは統制品であつて、原告が交付した金員は不法原因給付であると抗争する。

原告は、本件は五・五耗ロツドを加工した「ミスロール線」の取引であつて統制外であり、仮に目的物が統制品であつたとしても被告は前記金員の返還を約したとし、予備的に右返還契約に基き残金の支払を求める。

被告は、仮に返還契約をしたとしても原告が交付した金員が不法原因給付である以上無効であると反駁する。

(判斷)

原告敗訴。判決は原告が被告から五・五耗ロツドを買受けた上そのナマシ及び伸線加工を他に注文することを被告は一任したものであることを認めた上右売買契約に基き支払われた代金は不法原因給付であるとして次のように判断した。

「而して臨時物資需給調整法に基く昭和二十二年一月二十四日公布の指定生産資材割当規則及び同年二月十五日公布の商工農林省令第三号指定生産資材割当規則の附表第一制定の件に依れば、鉄線は昭和二十二年二月十五日以後『重要鋼材二次製品』として指定生産資材に指定せられ、需要者は割当証明書と引換に非ざれば之を販売業者から讓受けることを得ず、且つ割当証明書は他に讓渡することを得ず、又割当証明書と引換に讓受けた指定生産資材は之を他に讓渡し又は讓受けることを得すと定められたのであつて、原告は本件売買契約締結の昭和二十二年四月二日当時需要者として鉄線に付斯る配給統制が存すことを知悉していたことは弁論の全趣旨に徴して明である。

而して臨時物資需給調整法に基き指定生産資材に付斯る経済統制が行はれた所以のものは、戦後産業の囘復及び振興に関し、経済安定本部が定める基本的な政策及び計画の実施を確保するために、重要資材又は特に供給の不足する物資を産業復興に欠くことの出来ない用途に重点的に割当配給し、以つて産業の復興と経済秩序の安定を計らんとしたものであつて、斯る趣旨に出た配給統制に違背する行為は経済秩序を紊すものとして民法第九十条の所謂公の秩序に反するものと謂ふべく、従つて斯る配給統制違反の売買契約に基き原告から被告に支払はれた売買代金十六万四千円(加工賃一萬五千圓及び運賃千圓については後に述べる)は民法第七百八条本文は所謂不法原因給付として法律上返還請求を認め得ないものと謂はねばならない。

そして原告の予備的請求については、被告が受取つた金員を返還することを約したことを認めたが、代金支払が不法原因給付である以上かかる返還契約は公益規定に反して無効であるとし、なお本件売買契約に附隨して原告が加工の注文方を依頼して交付した加工賃及び運賃は不法原因給付には当らないが、被告が返還した五万円に含まれていると判断した。

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