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大阪地方裁判所 昭和24年(ヨ)823号 決定 1949年8月17日

申請人

日本通信工業株式会社

別紙目録記載二十三名の選定当事者

被申請人

西川秀一

被申請人

全日本電気工業労働組合大阪支部

日本通信工業大阪工場分会

右代表者

組合長

主文

別紙物件表記載の物件に対する被申請人等および別紙記載の二十三名の者の占有を解いてこれを申請人の委任する執行吏に保管を命じる。

執行吏は申請人の申出のあつた場合には、右物件の現状を変更しないことを条件として申請人に使用を許すことができ、更に被申請人等および別紙記載の二十三名の者の申出により申請人が同意した場合には、執行吏は被申請人等および別紙記載の二十三名の者が申請人の指示に従つて右土地建物内において労務に従事することを許さねばならない。

右の各場合に執行吏はその保管することを公示するため適当な方法をとらねばならない。

被申請人等および別紙記載の二十三名の者は前掲申請人の同意によつて執行吏から許可せられた場合を除く外右不動産内に立入り又は設備機械器具什器を使用し、又は材料製品の占有を移転しもしくは処分してはならない。

申請費用は被申請人等の負担とする。

理由

被申請人等および別紙記載の二十三名の者が別紙記載の申請人会社大阪工場を占有し、その製品ならびに資材を申請人の同意なくして他に売却しつつあることについては、その数量、金額を除いて当事者間に争のないところである。申請人の主張によれば、被申請人等および別紙記載の二十三名の者は、申請人が被申請人西川秀一および別紙記載の二十三名を含む全従業員を解雇し、工場を閉鎖したにもかかわらず、別紙記載の工場設備を占拠し、擅に材料製品を売却しているというのであるが、申請人が被申請人西川外二十三名等に対して為したという解雇の意思表示が効力を発生しているかについては申請人の未だ充分に疎明するところではなく、却つてその自認するように昭和二十四年六月三十日大阪地方労働委員会の斡旋において申請人大阪工場長安雲芳三と同従業員組合大阪工場分会長西川秀一との間に、会社は工場の閉鎖を本社責任者が来阪し、団体交渉を持つまで延期すること、という協定が成立したことから見ても(申請人は七月五日右協定取消の意志表示をしたと主張するが、右のような契約を一方的に取消し得るに足る理由となるような事実は申請人の疎明しないところである)、申請人は被申請人西川外二十三名等に対する解雇を一応撤回したのでないかという疑がある。然し、仮に申請人の被申請人西川外二十三名等に対する解雇が有効に行われておらず、従つて両者の間に雇傭契約がなお存続するとしても、疏甲第一号証第二号証の一、二第三、四号証、第六号証の一乃至五第十一、十六号証を総合すると、申請人は経営状況悪化のため企業再建計画にもとずき、その有する両工場のうち大阪工場を閉鎖して機械器具を残存する川崎工場に移転し、同工場において経営を存続することとなり、大阪工場の操業をやめたことを認めることができる。このような事情の下において被申請人等が申請人の意思に反してその工場、設備を占拠し、製品資材を売却することはとくに正当の理由がないかぎり違法であるといわなければならぬ。被申請人等はこれを生産管理と主張するのであるが、疏甲第三号証によれば被申請人外二十三名は大阪工場の従業員数の三分の一に満たず、疏乙第二号証によつても、被申請人等が七月十日から八月十二日までの間に資材製品を売却して得た代金二十一万九千八百五十円のうち金十六万五千百六十円は申請人会社の営業目的である電話機の製品の販売に依るものでなくその製造に用うべき材料そのままを売却して得ているのであつて、このような事実から見て到底それは被申請人等の団体によつて適法に生産管理なる争議行為をしているものとは認め難く他に被申請人等の右占拠を正当ずける事実の疏明がない。さすれば申請人の被申請人及別紙表示の者等に対する占有回収の本案判決あるまでの間別紙物件表記載の物件に対する申請人の権利関係につき現在の危険を防止排除しその現状を維持しようとする仮処分申請は理由があるといわなければならない。然し、前記のように、被申請人西川外二十三名の者に対する解雇の効力については申請人の充分に疏明しないところであるから、この点についての本案判決が確定するまでの間、被申請人等が申請人の同意を得てその指示に従い、操業閉止以前の正常な操業に従事することを許しても申請人の権利保全の目的は達せられると認められるから、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条第九十二条第九十五条を適用し主文の通り決定する。

別紙目録省略

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