大判例

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大阪地方裁判所 昭和24年(レ)67号 判決

控訴代理人は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は被控訴代理人において「被控訴人は昭和十五年七月十日被控訴人主張の家屋を賃料を一ケ月金三十七円と定め敷金百五十円を受取つて訴外松原將登に賃貸したところ、訴外松原は被控訴人に無断で昭和二十一年十二月頃控訴人にこれを轉貸したものである。被控訴人が控訴人より賃料を受取つたとの点は否認する。その余の事実は知らない。被控訴人は訴外松原に対し昭和二十五年三月十六日到達の書面で訴外松原の前記無断轉貸を理由に本件家屋の賃貸借契約を解除した。」と述べ、控訴代理人において「控訴人が被控訴人主張の家屋(以下本件家屋と称する)の内階下奥四疊半の間と二階六疊の間二間に居住してこれを占有していることは認めるが、控訴人のその余の部分の占有はこれを否認する。本件家屋は訴外松原將登が昭和十五年三月被控訴人より賃料を一箇月金三十七円、敷金を金百五十円とし、期間の定めなく借受け同年七月被控訴人の承諾を得てこれを瓦斯熔接工場に改造し、訴外朴[王基]煥等と右工場を共同経営していたが、終戰後その経営を控訴人、訴外青松判臠等との共同経営に移し、その事業の都合上控訴人に本件家屋の一部を轉貸したものである。被控訴人は本件家屋の南隣りに居住し、以上の事情をよく知つており、賃料を控訴人が持参しても何等の異議なく受取つて平穏に推移して來たのであるから、訴外松原の控訴人に対する前記轉貸を暗黙の中に承諾したものであり、かりに承諾の意思がないとしても、今日のように住宅の拂底している時期に以上のような事情からその事業の共同経営者に事業場の一部を轉貸することは何等賃借人の義務に違反するものでなく、從つて契約解除の理由にはならないから被控訴人の請求は失当である。」と述べたほか原判決事実摘示と同一(但し右の主張と矛盾する部分を除く)であるからこれを引用する。と述べた。

<立証省略>

三、理  由

本件家屋が被控訴人の所有である旨の被控訴人の主張は控訴人の明らかに爭わず、弁論の全趣旨に徴して爭うものと認められないから、控訴人はこれを自白したものと認める。

訴外松原將登が昭和十五年被控訴人より本件家屋を控訴人主張の約旨で賃借したこと及び控訴人が昭和二十一年十二月頃右訴外人より本件家屋のうち階下四疊半及二階六疊の二室を轉借して使用していることは控訴人の認めるところであるが控訴人がその余の部分を轉借使用している旨の被控訴人の主張については被控訴人本人のこれに副う供述(第二回)はその成立に爭のない乙第三号証及び当審における証人松原將登の証言及び控訴本人訊問の結果に照し信用することができないし、ほかにこれを認めるに足る証拠がないから、この部分に対する被控訴人の請求はその余の爭点について判断するまでもなく失当である。

そこで控訴人の前認定の占有部分に対する被控訴人の本訴請求について判断しよう。控訴人が右轉貸につき被控訴人より控訴人主張のような黙示の承諾を受けたとの点については、これを認めるに足る証拠がない。しかしながらその成立に爭のない乙第三号証に当審証人松原將登の証言及び控訴本人訊問の結果によれば、訴外松原將登は本件家屋を賃借後、被控訴人の承諾を得てその階下店の間を瓦斯熔接工場に改造してこれを経営中終戰により一旦中止したのであるが、その後控訴人、訴外青松判臠等と共同して右工場でフアスナー製造等の事業を再開することとなつた関係上控訴人は訴外松原の諒解を得て前認定の二部屋に移り住むようになつたこと、訴外松原は控訴人が自己の共同経営者であり、右の事業を営むことについては既に被控訴人の承諾を得ている関係から控訴人に右の二部屋を轉貸するについて改めて被控訴人の諒解を求める必要がないと考えて、特に被控訴人の承諾を求めることをしなかつたこと、本件家屋の内二階四疊半の一室は訴外松原が依然としてその居住に使用しており階下店の間は右の共同事業の工場に、控訴人に轉貸した階下奥四疊半の間は、右共同事業の事務所、應接間、食事場等のためにも随時使用していることがそれぞれ認められる。以上のようにある事業に使用するために家屋を賃貸した場合には、後に至つて賃借人がその事業を第三者との共同経営に移し、共同経営者の一人に家屋の一部を住居用に轉貸使用させるようなことになつても、依然として賃借人が事業共同経営上の主要な地位を占めるものであり、右の共同経営者による事業場たる家屋の一部使用が事業経営上の便宜に出たものである限り、第三者によるこの一部使用は当初賃貸借当事者の意思に反するものではなく、寧ろ賃貸人はかような事態をも予想して賃貸したものと解するのを相当とするから、從つてかような場合には賃貸借の当初から予め承諾があつたものと認めるべきであつて、賃貸人はこれを理由として賃貸借を解除することを得ないものと考える。要するに本件の轉貸借は被控訴人の現実の承諾の意思表示はなかつたけれども、承諾があつたと同一の法律効果を與えるべき場合に該当すると考えられるから、本件の轉貸借が無断轉貸であることを前提とする他の爭点について判断するまでもなく控訴人は適法にこれを占有するものといわなければならず、被控訴人の本訴請求中この部分の明渡を求める部分も失当である。

從つて被控訴人の請求は全部その理由がないからこれを棄却すべきであり、被控訴人の請求を認容した原判決は失当として取消を免れない。

よつて、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九十六條、第八十九條を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 浜本一夫 鈴木敏夫 坂井芳雄)

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