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大阪地方裁判所 昭和24年(ワ)1479号 判決

原告 横山修 外四名

被告 ナシヨナル與業株式会社

一、主  文

被告が原告横山修に対し金参拾万円及びこれに対する昭和二十三年五月二十九日以降、同栃木二郎に対し金弐拾八万円及びこれに対する右同日以降、同小橋偉志に対し金拾七万円及びこれに対する右同日以降、同林正章に対し、金拾参万円及びこれに対する同年十月八日以降、同持田誠に対し金拾万円及びこれに対する同年五月三十日以降、いずれも支拂ずみに至るまで年六分の割合による金員を支拂うことを命ずる。

原告等のその余の請求は、これを棄却する。

訴訟費用は全部被告の負担とする。

この判決は原告等勝訴の部分に限り、原告横山修が金拾万円の、同栃木二郎が金九万参千円の、同小橋偉志が金五万七千円の、同林正章が金四万参千円の、同持田誠が金参万参千円の各担保を供するときは、それぞれ仮に執行することができる。

二、事  実

原告等訴訟代理人は、「被告が原告横山修に対し金三十万円及びこれに対する昭和二十三年五月二十九日以降、同栃木二郎に対し金二十八万円及びこれに対する右同日以降、同小橋偉志に対し金十七万円及びこれに対する右同日以降、同林正章に対し金十三万円及びこれに対する同年十月八日以降、同持田誠に対し金十万円及びこれに対する同年五月三十日以降、いずれも支拂ずみに至るまで月一割五分の割合による金員を支拂うことを命ずる。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決ならびに仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、被告はホテル業を営むことを目的とする株式会社であるが原告横山は昭和二十三年四月十二日金三十万円を、同栃木二郎は右同日金二十八万円を、同小橋偉志は右同日金十七万円を、同持田誠は右同日金十万円を、同林正章は同月二日金十三万円を、いずれも被告に対しその営業資金に充てるため、弁済期同月三十日、利息及び弁済期後の遅延損害金各一ケ月一割五分の定で貸與したが、被告からはその弁済期後に数回に計金十三万三千円の支拂を受けたので、原告等はこれを原告持田の昭和二十三年五月二十九日までの、その余の各原告の同月二十八日までの、いずれも弁済期の翌日以降の約定遅延損害金に充当し、また原告林は被告に対しその店舗において飲食し、代金八万四千四百五円五十銭を支拂うべき債務を負つたのでこれを同原告の昭和二十三年五月二十九日以降同年十月七日までの約定損害金に相殺充当し、よつて原告等は被告に対し右各貸金にこれに対する右各充当ずみの日の翌日以降支拂ずみに至るまで月一割五分の割合による約定遅延損害金を附してその返済を求める。

と陳述した。<立証省略>

被告訴訟代理人は請求棄却の判決を求め、答弁として、

被告が原告林を除くその余の各原告からその主張の日その主張の金員を借受けたこと、

右原告等に対し金十三万三千円を支拂いまた原告林に対しその主張の飲食代債権を取得したことは、いずれもこれを認めるけれども、原告林主張の貸金債権ならびに同原告以外の各原告主張の利息及び損害金の特約は、いずれもこれを否認する。仮に右特約がつけられていたとしてもそれは利息制限法の趣旨により年一割に引直さるべきものである。そうして被告は林以外の原告等に対し、(一)昭和二十三年八月三十一日金十万円、(二)同年十月六日金五千円、(三)同月十一日金三千円、(四)同月十五日、(五)同月二十一日、(六)同年十一月六日、(七)同月十六日、(八)同月二十六日、各金五千円、以上合計金十三万三千円を元金に対し内入弁済したから、これらの各原告に対する計算関係相違し、よつて原告等の本訴請求に應ずることはできない。

と陳述した。<立証省略>

三、理  由

原告等がその主張の日その主張の金員を被告に対し、弁済期昭和二十三年四月三十日の定で(利息及び弁済期後の遅延損害金に関する特約は暫くこれを措く)貸與したことは、そのうち林を除くその余の各原告に係る分については当事者間に爭がなく、原告林に係る分については成立に爭のない甲第四号証、原告林本人訊問の結果及びこれによつて眞正に成立したと認められる甲第六、第八号証によつて認められ、証人田村省三の証言中右に牴触する部分はこれを措信せず、他に右認定を覆し前記甲第四号証が仮装の若くは錯誤により振出された約束手形であつて原告林については前記消費貸借が成立していないとの被告主張の事実を認めるに足りる証拠はない。

つぎに原告等の右貸金の利息及び損害金について判断するが、これについて原告等は月一割五分の定があつたと主張し、原告林本人訊問の結果及び前示甲第六号証によるとかかる特約の存する事実を認めることができるけれども、右は異常に高率であつて暴利の契約というべく公序良俗に反し無効であり從つて法律上何等の特約なきに帰し、なお本件消費貸借が被告会社の営業資金に充てるためのものであることは被告においてこれを明らかに爭わないから、その利息及び損害金は商法の規定によつて年六分の割合によるべきものである。この点について原告代理人は貸金業者が月一割五分の利息を取得すること許容せられていることからみても右特約が公序良俗に反するものではないと主張し、右の事実は新聞紙であることに爭がないから眞正に成立したと認められる甲第九号証の一乃至四によつてこれを窺知することができるけれども、これは貸金業等の取締に関する法律による届出を受理せられ営業上同法所定の諸種の監督を受ける貸金業者に対し偶々許容せられた措置にすぎず、これをもつて貸金業者に非ざる一般人が右と同率の利息及び損害金を取得しうることの理由とはなし難く、又公正証書たることに爭がないから眞正に成立したと認められる甲第七号証(他人間の金銭消費貸借公正証書)によると弁済期後の遅延損害金として金百円につき一日金三十五銭の割合による金員を支拂うことの特約をつけた金銭消費貸借につき公正証書の作成せられた事例の存することが認められ、さらに雑誌たることに爭がないから眞正に成立したと認められる甲第十号証によると物價統制令違反被告事件の判決において月三割以上の利息の特約をつけた金銭消費貸借のみを摘出して有罪と認定せられた事例の存することが認められるけれども、これらの事例の存することから本件における特約を適法と認定しなければならないというわけではなく、從つて前記法律に定められた貸金業者であることの主張及び立証のない本件原告等の消費貸借における前記特約を有効とする原告代理人の右主張は失当である。因に右特約が無効であるとしても利息制限法に則り又はその趣旨に準拠し(商事債権の遅延損害金の場合)これを同法所定の制限内に引直すべきものとの論があるかも知れないが、同法の制限に反する利息の特約が必ずしも常に暴利行爲となつて公序良俗に反するものではなく、その超過の度合により或は然ることがあり、或は然らざることがあるのであつて右利息制限法によりその制限内に引直さるべきは後者の場合に限ると解するのを正当とするから右の論もまた失当である。

そこで被告の弁済の抗弁について判断するが、そのうち原告等が被告から数回に合計金十三万三千円の支拂を受けたこと及び原告林が被告に対し金八万四千四百五円五十銭の飲食代金を支拂う義務を負つたことは原告等の認めるところであるけれども、これらが(右代金債務は相殺により)本訴貸金の元金に充当せられたことは(充当は相手方に対する意思表示によつてなされなければならない。民法第四百八十八條)第三項証人田村省三の証言及び成立に爭のない乙第一号証によつてもこれを確認することができず他にこれを認められる証拠なく、反て前示甲第八号証及び原告林本人訊問の結果を綜合すると被告会社においては右支拂及び代金債権取得の後なる昭和二十四年九月三十日における原告等に対する債務の額として、これらを元金額から減算するとともに元金全額に対する右同日までの月一分の割合による損害金を加算し結局これらを先ず損害金に充当したと同一の計算をなしその計算書を原告等に提示しこの数額を基礎としてその三割を免除せられることを求めたこと、從つてその損害金の率はとも角として(右率が月一割五分の定であることは前認定のとおりである。)右支拂金などを先ず損害金に充当することは被告においてもこれを承諾していたこと及び他方原告等においてもこれを先ず損害金に充当すべきものとしていたことが、それぞれ認められ、これらの事実を総合すると前記支拂金などは先ずこれを約定損害金に充当することの合意が本件当事者間に成立していたものと推認するのを相当とすべく、そうして前記特約が無効であつても既に支拂を了した分については被告がその返還を求めえないこと民法第七百八條の定めるところであるから、右被告の抗弁は失当である。そうすると被告が原告等に対し右貸金及びこれに対する原告等主張の日以降支拂ずみに至るまで商法に定める年六分の割合による遅延損害金を支拂う義務があること計数上明白であるから、原告等の本訴請求中右の限度を超えない部分は正当としてこれを認容すべく、その余は失当としてこれを棄却すべきものとし、なお原告等の本訴請求中右棄却すべき部分は本來附帶の請求の一部であつてその部分の存否は本訴の訴訟費用に消長を及ぼさないから、その負担について民事訴訟法第九十二條但書、また仮執行の宣言について同法第百九十六條を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 竹内貞次)

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