大阪地方裁判所 昭和24年(行)122号 決定 1950年4月10日
尼崎市南城内二百十二番地
原告
小寺忠正
右訴訟代理人
弁護士
米田嘉一郞
同市東町
被告
尼崎税務署長
吉田敏樹
右当事者間の昭和二十四年(行)第一二二号所得決定取消請求事件について原告の申立により当裁判所は次の通り決定する。
主文
本件を神戸地方裁判所に移送する。
理由
原告訴訟代理人は「被告が原告に対し昭和二十二年度原告の所得金額一万六千円、所得税額二千七百七円十銭とする所得税賦課訂正決定はこれを取消す。訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求め、その請求原因として陳述した事実の要旨は「原告は昭和十一年頃から肩書地で琴の師匠をしている者であるが被告は昭和二十三年二月二十一日附で原告に対し昭和二十二年度原告の芸能所得金額二万五千円、所得税額四千八百二十円とする所得税賦課決定を通知して来たが当時原告は年收金額僅かに金三千六百円で右決定額と雲泥の差違があつたので同年三月二十日被告に対し審査の請求をしたところ被告は右決定が誤謬であることを認め同年四月十九日附で右決定を取消し原告に対する課税を免除した。然るに原告は同年十二月二十一日附で原告の芸名菊義仲正名義で昭和二十二年度の芸能所得金額二万六千円、所得税額七千三百七十七円五十銭とする更正決定の通知を受けたので不審に思い早速尼崎税務署に出頭して先に課税免除になつている事情を述べてその諒解を得たので更に右更正決定に対し審査の請求はしなかつたところ昭和二十四年三月大阪財務局(後に大阪国税局となる)から呼出を受け事情を聽取されたので原告は同局係官に対し実情を訴えて諒解を求めたが同局係官は頑として聞き入れず昭和二十二年度原告の芸能所得金額を一万六千円に減額するからこれを承認せよとて承認を強要され止むなくこれを承認した結果被告は原告に対し昭和二十四年五月二十一日附で昭和二十二年度原告の芸能所得一万六千円、所得税額二千七百七円十銭とする誤謬訂正決定をして同年六月三日原告に通知して来たものである。然し被告が右の様な決定をするに至つたのは本件とは別途に原告が昭和二十三年度原告の芸能所得金額及び所得税額の決定に対し提出した審査請求書の記載を基礎として勝手に昭和二十二年度の所得金額を算定し所得税額を決定したものであり当時の原告の所得の実情に全然即しない違法の所得税賦課決定であるからこれが取消を求める」というのである。
原告の本訴請求は尼崎税務署長の原告に対する所得税賦課決定の違法を理由としてその取消を求めるものであるから行政事件訴訟特例法第二條に定むる行政庁の違法な処分の取消を求める訴に該当するから同法第四條によつて行政庁の所在地の裁判所である神戸地方裁判所の專属管轄に属すること明かであり、当裁判所の管轄に属しないものである。よつて民事訴訟法第三十條によつて主文の通り決定する。
(裁判長裁判官 山下朝一 裁判官 相賀照之 裁判官 山本一郞)