大判例

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大阪地方裁判所 昭和25年(ワ)1581号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(事實)

原告は昭和七年十月被告会社に工員として入社し、昭和十五年八月手(職員)に昇進し、旋盤の仕事をすると共に、その責任者として工員の指導に当つており、昭和二十三年一月二十九日まで出勤していたが、翌三十日より会社に出勤しなくなつたものである。

本訴は原告が被告会社を退職したから会社所定の職員退職手当規程による退職金の支拂を求めるというのであつて、原告の欠勤は、一月二十九日朝、朝礼の席上で原告が被告会社社長より侮辱せられたので会社に行けなくなつたためであると主張した。

被告は、原告が一月三十日以降屡々出社を勧めても無断欠勤を続け被告会社と同業の大阪造船所に勤務するに至つたので、同年五月十一日原告を懲戒解雇したのであるから、前記規程によるも退職金は支給できないと抗爭した。

(判斷)

判決は原告が欠勤するに至つた事情を認定し、このような事情の下に欠勤したのは、被告会社に対する退職の意思表示であつてそれによつて退職の効力が生じ、それが被告会社の懲戒解雇の意思表示以前であるところから、原告の任意退職を理由とする退職金請求を認容した。即ち

「昭和二十三年の初め頃は電力事情が悪かつたため、被告会社では原告の係りである旋盤は発動機を使用して廻す状態であつたが、右発動機は暖めなければ廻転せず、暖めるには一時間余もかかる有樣であつたので、右発動機の始動業務がうまく行われなかつた。ところで、被告会社には発動機を暖めて旋盤を廻転させる係員が別にあつたのに拘らず、被告会社の取締役会長名村某は右発動機始動業務の不首尾を原告の責任だとして、同年一月二十九日被告会社の朝礼の席上多数の工員等の面前で、右発動機の始動業務をやらない樣な無責任な原告が手とか職員とか言つてよくまともに歩いているな等と原告を罵しつたため、原告はその名誉を毀損せられたものとして翌日から被告会社に出勤しなくなつた。原告は被告会社へ最初から旋盤の責任者として入り当時迄に既に工員として七年十ケ月手に昇進してから七年六ケ月合計十五年四ケ月精勤に勤務し居り、部下へのしめしがつかないから辞めろと言われるよりつらいと残念がつていた。以上の事実と乙二号証を総合すると、原告が右の樣に被告会社に出勤しないことは、原告が被告会社に対し原被告間の雇傭契約を解除する意思表示を暗默になしたものと解せられる。そして前記事情よりすれば原告はその名誉を毀損せられたものというべく、已むを得ない事由があつたものとして右契約解除は素より有効で、この時原被告間の雇傭契約は消滅したものと言わねばならない。」

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